IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鉄住金エンジニアリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-鋸断装置及び鋸断方法 図1
  • 特開-鋸断装置及び鋸断方法 図2
  • 特開-鋸断装置及び鋸断方法 図3
  • 特開-鋸断装置及び鋸断方法 図4
  • 特開-鋸断装置及び鋸断方法 図5
  • 特開-鋸断装置及び鋸断方法 図6
  • 特開-鋸断装置及び鋸断方法 図7
  • 特開-鋸断装置及び鋸断方法 図8
  • 特開-鋸断装置及び鋸断方法 図9
  • 特開-鋸断装置及び鋸断方法 図10
  • 特開-鋸断装置及び鋸断方法 図11
  • 特開-鋸断装置及び鋸断方法 図12
  • 特開-鋸断装置及び鋸断方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054660
(43)【公開日】2023-04-14
(54)【発明の名称】鋸断装置及び鋸断方法
(51)【国際特許分類】
   B23D 47/00 20060101AFI20230407BHJP
【FI】
B23D47/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163640
(22)【出願日】2021-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】池▲崎▼ 徹
(72)【発明者】
【氏名】須田 清次
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 誠司
【テーマコード(参考)】
3C040
【Fターム(参考)】
3C040AA01
3C040CC02
3C040CC03
3C040FF06
3C040GG21
3C040JJ05
(57)【要約】
【課題】バリの抑制に有効な鋸断方法を提供する。
【解決手段】鋸断方法は、鋸歯11を周縁12に有するブレード10により、ワークを鋸断する方法であって、ワークを切削した鋸歯11が直ちにワーク外に出るようにブレード10を駆動させる第一モードの切削により、ワークに切込溝を形成することと、ワークを切削した鋸歯11が切込溝を経てワーク外に出るようにブレード10を駆動する第二モードの切削により、ワークを鋸断することと、を含む。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋸歯を周縁に有するブレードにより、ワークを鋸断する方法であって、
前記ワークを切削した鋸歯が直ちに前記ワーク外に出るように前記ブレードを駆動させる第一モードの切削により、前記ワークに切込溝を形成することと、
前記ワークを切削した鋸歯が前記切込溝を経て前記ワーク外に出るように前記ブレードを駆動する第二モードの切削により、前記ワークを鋸断することと、を含む、鋸断方法。
【請求項2】
前記ブレードを前記切込溝内に位置させた状態で、前記第一モードの切削を前記第二モードの切削に移行させることを更に含む、請求項1記載の鋸断方法。
【請求項3】
前記第一モードの切削においては、前記ワークを切削する鋸歯が前記ワークの第二面から前記ワーク内に入り、前記ワークの第一面から前記ワーク外に出る状態まで前記ワークを切削し、
前記第二モードの切削においては、前記ワークを切削する鋸歯が前記第二面から前記ワーク内に入り、前記切込溝を経て前記ワーク外に出る状態から、前記ワークを切削する鋸歯が前記第一面から前記ワーク内に入り、前記切込溝を経て前記ワーク外に出る状態に移行する、請求項1又は2記載の鋸断方法。
【請求項4】
鋸歯を周縁に有するブレードと、
前記ブレードを駆動する駆動装置と、
ワークを切削した鋸歯が直ちに前記ワーク外に出るように前記ブレードを駆動させる第一モードの切削により、前記ワークに切込溝を形成するように前記駆動装置を制御する第一切削制御部と、
前記ワークを切削した鋸歯が前記切込溝を経て前記ワーク外に出るように前記ブレードを駆動する第二モードの切削により、前記ワークを鋸断するように前記駆動装置を制御する第二切削制御部と、
前記ブレードを前記切込溝内に留めた状態で、前記第一モードの切削を前記第二モードの切削に移行させるように前記駆動装置を制御する移行制御部と、を備える鋸断装置。
【請求項5】
前記駆動装置は、
前記周縁に沿った第一循環方向に前記鋸歯を循環させるように、前記周縁の中心を通る回転軸線まわりに前記ブレードを回転させる回転駆動部と、
前記回転軸線に垂直な第一進行方向に沿って前記ブレードを移動させる第一変位駆動部と、
前記回転軸線に垂直で前記第一進行方向に交差する第二進行方向に沿って前記ブレードを移動させる第二変位駆動部と、を有し、
前記第一切削制御部は、前記第一モードの切削において、前記第一変位駆動部によって前記ブレードを移動させ、
前記第二切削制御部は、前記第二モードの切削において、前記第二変位駆動部によって前記ブレードを移動させる、請求項4記載の鋸断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鋸断装置及び鋸断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、H 形鋼、I 形鋼、山形鋼、及び溝形鋼のいずれか1 からなる形鋼を、回転駆動される円形の鋸歯を用いて、発生する切断バリを無くすか又は少なくして切断する方法であって、前記形鋼に切断線に沿って表側から溝状の切れ目を入れ、次に該切れ目が形成された該形鋼を、裏側から前記切断線に沿って切断することを特徴とする形鋼の鋸歯による切断方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-246666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、バリの抑制に有効な鋸断方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る鋸断方法は、鋸歯を周縁に有するブレードにより、ワークを鋸断する方法であって、ワークを切削した鋸歯が直ちにワーク外に出るようにブレードを駆動させる第一モードの切削により、ワークに切込溝を形成することと、ワークを切削した鋸歯が切込溝を経てワーク外に出るようにブレードを駆動する第二モードの切削により、ワークを鋸断することと、を含む。
【0006】
第一モードの切削でワークの鋸断に至る場合、切削の最終段階で薄くなった切り残し部分が、鋸歯につられてワーク外に逃げ、バリとして残る場合がある。一方、第二モードの切削でワークの鋸断に至る場合、鋸歯は切り残し部分を切込溝に引き込むように作用するため、切り残し部分のワーク外への逃げが鋸断に至るまで抑制される。このため、第一モードの切削で切込溝を形成し、第二モードの切削で鋸断に至る鋸断方法は、バリの抑制に有効である。
【0007】
ブレードを切込溝内に位置させた状態で、第一モードの切削を第二モードの切削に移行させることを更に含んでもよい。第一モードの切削から第二モードの切削への移行において、ブレードを切込溝外に出してしまうと、ブレードが切込溝内に再進入する際にワークに欠けが生じ易くなる。ブレードを切込溝に位置させた状態で第一モードの切削を第二モードの切削に移行させる鋸断方法によれば、ワークの欠けを更に抑制することができる。また、ブレードを切込溝内に留めることで、第一モードの切削から第二モードの切削へ移行させるためのブレードの移動が小さくなるので、この鋸断方法は鋸断時間の短縮と装置の占有面積の削減にも有効である。
【0008】
第一モードの切削においては、ワークを切削する鋸歯がワークの第二面からワーク内に入り、ワークの第一面からワーク外に出る状態までワークを切削し、第二モードの切削においては、ワークを切削する鋸歯が第二面からワーク内に入り、切込溝を経てワーク外に出る状態から、ワークを切削する鋸歯が第一面からワーク内に入り、切込溝を経てワーク外に出る状態に移行してもよい。この場合、第二モードでの切削期間を長くして、バリを更に抑制することができる。
【0009】
本開示の他の側面に係る鋸断装置は、鋸歯を周縁に有するブレードと、ブレードを駆動する駆動装置と、ワークを切削した鋸歯が直ちにワーク外に出るようにブレードを駆動させる第一モードの切削により、ワークに切込溝を形成するように駆動装置を制御する第一切削制御部と、ワークを切削した鋸歯が切込溝を経てワーク外に出るようにブレードを駆動する第二モードの切削により、ワークを鋸断するように駆動装置を制御する第二切削制御部と、ブレードを切込溝内に留めた状態で、第一モードの切削を第二モードの切削に移行させるように駆動装置を制御する移行制御部と、を備える。この鋸断装置によれば、第一モードの切削及び第二モードの切削によるバリの抑制を、高い再現性で容易に図ることができる。
【0010】
駆動装置は、周縁に沿った第一循環方向に鋸歯を循環させるように、周縁の中心を通る回転軸線まわりにブレードを回転させる回転駆動部と、回転軸線に垂直な第一進行方向に沿ってブレードを移動させる第一変位駆動部と、回転軸線に垂直で第一進行方向に交差する第二進行方向に沿ってブレードを移動させる第二変位駆動部と、を有し、第一切削制御部は、第一モードの切削において、少なくとも第一変位駆動部によってブレードを移動させ、第二切削制御部は、第二モードの切削において、少なくとも第二変位駆動部によってブレードを移動させてもよい。この場合、第一変位駆動部及び第二変動駆動部を組み合わせた簡素な構成によって、第一モードの切削及び第二モードの切削によるバリの抑制を容易に図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、バリの抑制に有効な鋸断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】鋸断装置の構成を例示する模式図である。
図2】鋸歯の拡大図である。
図3】第二変位駆動部の構成を例示する断面図である。
図4】高さ調節部の構成を例示する断面図である。
図5】第一モードの切削を例示する模式図である。
図6】第一モードの切削から第二モードの切削への移行を例示する模式図である。
図7】第一モードの切削範囲が不適切であるため、第二モードの切削の開始直後を例示する模式図である。
図8】第一モードの切削範囲が不適切であるため、第二モードの切削の完了直前を例示する模式図である。
図9】第一モードの切削範囲が不適切であるため、第二モードの切削で鋸断を完了できない場合を例示する模式図である。
図10】第二モードの切削で鋸断を完了できない場合を例示する模式図である。
図11】第二モードの切削で鋸断を完了できない場合を例示する模式図である。
図12】コントローラのハードウェア構成を例示するブロック図である。
図13】鋸断手順を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
〔鋸断装置〕
図1に示す鋸断装置1は、長尺の鋼材を鋸断する装置である。鋼材の具体例としては、丸形鋼、角形鋼等の形鋼が挙げられる。鋸断装置1は、ブレード10と、駆動装置20と、コントローラ100とを有する。
【0015】
ブレード10は、鋸歯11を周縁12に有する。例えばブレード10は、ディスク形状を有し、周縁12が円形である。ブレード10は、周縁に沿って並ぶ複数の鋸歯11を有してもよい(図2参照)。
【0016】
駆動装置20は、ブレード10を駆動する。例えば駆動装置20は、可動支持台30と、固定支持台40と、回転駆動部50と、第一変位駆動部60と、第二変位駆動部70と、高さ変更部80とを有する。
【0017】
回転駆動部50は、周縁12に沿った第一循環方向RD1に鋸歯11を循環させるように、周縁12の中心を通る回転軸線51まわりにブレード10を回転させる。例えば回転駆動部50は、周縁12の中心においてブレード10と直交する回転軸線51まわりにブレード10を回転させる。一例として、回転駆動部50は、電動式の回転アクチュエータにより、回転軸線51まわりにブレード10を回転させる。
【0018】
可動支持台30は、回転軸線51が水平となるように回転駆動部50及びブレード10を支持する。このため、回転駆動部50は、水平な回転軸線51まわりにブレード10を回転させる。固定支持台40は、回転軸線51に垂直な第一進行方向MD1に沿って変位し得るように可動支持台30を支持する。例えば固定支持台40は、水平な第一進行方向MD1に沿って変位し得るように可動支持台30を支持する。
【0019】
以下、説明の便宜上、第一進行方向MD1を鋸断装置1の前後方向とする。ブレード10は、可動支持台30の前端の近傍に配置されている。固定支持台40の前方には、ワーク支持台90が配置される。ワーク支持台90は、鋸断対象のワーク91を支持する。固定支持台40に対し可動支持台30が前進すると、ワーク91に対してブレード10が前進する。固定支持台40に対し可動支持台30が後退すると、ワーク91に対してブレード10が後退する。
【0020】
固定支持台40は、複数の支持ローラ41を有する。複数の支持ローラ41は、少なくとも前後に並ぶ二つの支持ローラ41を含む。複数の支持ローラ41のそれぞれは、回転軸線51に平行な回転軸42まわりに回転可能である。回転軸線51まわりに支持ローラ41が回転可能であることによって、可動支持台30が第一進行方向MD1に沿って変位可能となっている。
【0021】
第一変位駆動部60は、第一進行方向MD1に沿ってブレード10を移動させる。例えば第一変位駆動部60は、進退アクチュエータ61を有する。進退アクチュエータ61は、第一進行方向MD1に沿って可動支持台30を変位させるように固定支持台40上に設けられている。進退アクチュエータ61の具体例としては、油圧シリンダが挙げられるがこれに限られない。例えば進退アクチュエータ61は、電動式のリニアアクチュエータであってもよい。
【0022】
第二変位駆動部70は、回転軸線51に垂直で第一進行方向MD1に交差する第二進行方向MD2に沿ってブレード10を移動させる。例えば第二変位駆動部70は、水平面に交差する第二進行方向MD2に沿ってブレード10を昇降させる、一例として、第二変位駆動部70は、水平面に垂直な(鉛直な)第二進行方向MD2に沿ってブレード10を昇降させる。なお、水平面に交差する第二進行方向MD2は、鉛直な第二進行方向MD2に限られない。第二変位駆動部70は、鉛直方向に対して傾いた第二進行方向MD2に沿ってブレード10を昇降させるように構成されていてもよい。
【0023】
例えば鋸断装置1は、複数の支持ローラ41にそれぞれ対応する複数の第二変位駆動部70を備える。複数の第二変位駆動部70のそれぞれは、対応する支持ローラ41を昇降させる。支持ローラ41の昇降に応じ、可動支持台30が昇降し、可動支持台30に支持されたブレード10も昇降する。
【0024】
複数の第二変位駆動部70のそれぞれは、例えば図3に示すように、昇降用回転軸71と、昇降アクチュエータ72とを有する。昇降用回転軸71は、支持ローラ41の回転軸42に固定され、回転軸42に平行に延びている。昇降用回転軸71の中心軸線74は、回転軸42の中心軸線43から離れている。昇降アクチュエータ72は、例えば電動式又は油圧式の回転アクチュエータであり、昇降用回転軸71をその中心軸線74まわりに回転させる。昇降用回転軸71の中心軸線74が、回転軸42の中心軸線43から離れているので、昇降用回転軸71が中心軸線74まわりに回転することで、回転軸42の中心軸線43が昇降する。
【0025】
第二変位駆動部70は、可動支持台30を必要なストークで移動させ得る限り、いかに構成されていてもよい。例えば第二変位駆動部70は、支持ローラ41を昇降させる電動式のリニアアクチュエータであってもよく、支持ローラ41を昇降させる油圧シリンダであってもよい。
【0026】
高さ変更部80は、第一モードの切削におけるブレード10の高さを変更する。高さ変更部80は、第二変位駆動部70を昇降させるように構成されていてもよい。これにより、高さ変更部80が定めた高さに対して、第二変位駆動部70による昇降を加えることが可能となる。
【0027】
高さ変更部80は、例えば図4に示すように、複数の下ウエッジ81と、スライドスペーサ82と、スライドアクチュエータ83とを有する。複数の下ウエッジ81は、複数の第二変位駆動部70にそれぞれ対応する。複数の下ウエッジ81のそれぞれは、対応する第二変位駆動部70の下方に設けられており、前から後に向かうにつれて徐々に高くなる上面84を有する。スライドスペーサ82は、複数の下ウエッジ81と複数の第二変位駆動部70との間に介在する。スライドスペーサ82の下部には、複数の下ウエッジ81にそれぞれ対応する複数の上ウエッジ85が設けられている。複数の上ウエッジ85のそれぞれは、前から後に向かうにつれて徐々に高くなる下面86を有する。下面86は、対応する下ウエッジ81の上面84に接する。
【0028】
スライドアクチュエータ83は、例えば油圧シリンダであり、前後方向に沿ってスライドスペーサ82をスライドさせる。スライドアクチュエータ83がスライドスペーサ82を後方にスライドさせると、複数の上ウエッジ85のそれぞれが、下ウエッジ81の上面84を滑り上って上昇する。これに応じ、上ウエッジ85の上の第二変位駆動部70が上昇する。スライドアクチュエータ83がスライドスペーサ82を前方にスライドさせると、複数の上ウエッジ85のそれぞれが、下ウエッジ81の上面84を滑り下って下降する。これに応じ、上ウエッジ85の上の第二変位駆動部70が下降する。
【0029】
高さ変更部80は、ブレード10の高さを変更し得る限りいかに構成されていてもよい。例えば高さ変更部80は、電動式のリニアアクチュエータによりスライドスペーサ82をスライドさせるように構成されていてもよい。また、高さ変更部80は、スライドスペーサ82を介することなく、油圧シリンダ又は電動式のリニアアクチュエータにより第二変位駆動部70を直接昇降させるように構成されていてもよい。
【0030】
コントローラ100は、駆動装置20を制御する。上述した第一モードの切削でワーク91の鋸断に至る場合、切削の最終段階で薄くなった切り残し部分が、鋸歯11につられてワーク91外に逃げ、バリとして残る場合がある。一方、第二モードの切削でワーク91の鋸断に至る場合、鋸歯11は切り残し部分を切込溝に引き込むように作用するため、切り残し部分のワーク91外への逃げが鋸断に至るまで抑制される。そこで、コントローラ100は、上記第一モードの切削により、ワーク91に切込溝を形成するように駆動装置20を制御することと、上記第二モードの切削により、ワーク91を鋸断するように駆動装置20を制御することと、を実行するように構成されている。これにより、ワーク91の鋸断によるバリの発生を抑制することができる。
【0031】
図1に示すように、コントローラ100は、機能上の構成(以下、「機能ブロック」という。)として、第一切削制御部111と、第二切削制御部112と、移行制御部113とを有する。第一切削制御部111は、ワーク91を切削した鋸歯11が直ちにワーク91外に出るようにブレード10を駆動させる第一モードの切削により、ワーク91に切込溝を形成するように駆動装置20を制御する。ワーク91を切削した鋸歯11が直ちにワーク91外に出ることは、ワーク91内に入り、ワーク91外に出るまでに鋸歯11が移動する軌跡が、ワーク91の外面に達するまでワーク91の切り残し部分に入り込んでいることを意味する。
【0032】
第一切削制御部111は、第一モードの切削において、周縁12に沿った第一循環方向RD1に鋸歯11を循環させながらブレード10を移動させるように駆動装置20を制御する。例えば第一切削制御部111は、第一循環方向RD1に鋸歯11を循環させるために、周縁12の中心を通る回転軸線51まわりにブレード10を回転させるように回転駆動部50を制御する。
【0033】
第一切削制御部111は、第一モードの切削において、第一進行方向MD1に沿ってブレード10を移動させるように駆動装置20を制御する。第一切削制御部111は、第一進行方向MD1に沿い且つワーク91から離れた第一ラインML1上に回転軸線51を位置させながらブレード10を移動させるように駆動装置20を制御する。この場合、第一切削制御部111は、ワーク91の断面全域が、ブレード10の移動範囲内に入るように定められた第一ラインML1上に回転軸線51を位置させる。
【0034】
一例として、第一切削制御部111は、水平な第一進行方向MD1に沿って、ブレード10を前進させるように駆動装置20を制御する。例えば第一切削制御部111は、第一変位駆動部60によって可動支持台30を移動させることで、第一進行方向MD1に沿ってブレード10を移動させる。第一切削制御部111は、回転軸線51がワーク91よりも上方に位置し、ブレード10の下端がワーク91の下端よりも下方に位置した状態でブレード10を前進させるように駆動装置20を制御する。例えば、回転軸線51がワーク91よりも上方に位置し、ブレード10の下端がワーク91の下端よりも下方に位置するように、高さ変更部80によりブレード10の高さが調節された状態で、第一変位駆動部60により可動支持台30を前進させる。
【0035】
回転軸線51がワーク91よりも上方に位置し、ブレード10の下端がワーク91の下面よりも下方に位置する場合、上述の第一ラインML1は、ワーク91から上方に離れていることとなり、且つワーク91の断面全域がブレード10の移動範囲内に入ることとなる。第一ラインML1がワーク91から上方に離れている場合、第一切削制御部111は、ワーク91を切削する鋸歯11が下降する第一循環方向RD1に鋸歯11を循環させるように回転駆動部50を制御する。例えば第一切削制御部111は、前方の鋸歯11が下降し、後方の鋸歯11が上昇する第一循環方向RD1に鋸歯11を循環させるように回転駆動部50を制御する。
【0036】
第二切削制御部112は、ワーク91を切削した鋸歯11が切込溝を経てワーク91外に出るようにブレード10を駆動する第二モードの切削により、ワーク91を鋸断するように駆動装置20を制御する。鋸断するとは、鋸歯11による切削によってワーク91を二体に分断することを意味する。ワーク91を切削した鋸歯11が切込溝を経てワーク91外に出ることは、ワーク91内に入り、ワーク91外に出るまでに鋸歯11が移動する軌跡が、切り残し部分を通過した後、ワーク91の外面に達するまでの間に切込溝を通過することを意味する。
【0037】
第一切削制御部111は、ワーク91を切削した鋸歯11がワーク91の第一面からワーク91外に出る状態までワーク91を切削し、第一モードの切削を完了させる場合がある。この場合、第二切削制御部112は、第二モードの切削において、ワーク91を切削する鋸歯11が第一面からワーク91内に入る状態でワーク91の鋸断を完了するように駆動装置20を制御することになる。第一切削制御部111は、ワーク91を切削する鋸歯11がワーク91の第二面からワーク91内に入り、ワーク91の第一面からワーク91外に出る状態までワーク91を切削し、第一モードの切削を完了させる場合がある。この場合、第二切削制御部112は、第二モードの切削において、ワーク91を切削する鋸歯11が第二面からワーク91内に入り、切込溝を経てワーク91外に出る状態から、ワーク91を切削する鋸歯11が第一面からワーク91内に入り、切込溝を経てワーク91外に出る状態に移行させるように駆動装置20を制御することになる。
【0038】
第二切削制御部112は、第二モードの切削においても、第一循環方向RD1に鋸歯11を循環させながらブレード10を移動させるように駆動装置20を制御する。例えば第二切削制御部112は、第一循環方向RD1に鋸歯11を循環させるために、周縁12の中心を通る回転軸線51まわりにブレード10を回転させるように回転駆動部50を制御することになる。
【0039】
第二切削制御部112は、第二モードの切削において、第一進行方向MD1に交差する第二進行方向MD2に沿ってブレード10を移動させるように駆動装置20を制御してもよい。例えば、第一切削制御部111が、第一モードの切削の一部において、水平な第一進行方向MD1に沿ってブレード10を前進させるように駆動装置20を制御する。第二切削制御部112は、第二モードの切削の一部において、水平面に交差する第二進行方向MD2に沿ってブレード10を移動させるように駆動装置20を制御する。一例として、第二切削制御部112は、第二モードの切削において、第二変位駆動部70により可動支持台30を昇降させる。
【0040】
移行制御部113は、ブレード10を切込溝内に留めた状態で、第一モードの切削を第二モードの切削に移行させるように駆動装置20を制御する。移行制御部113は、第一モードから第二モードへの移行期間(以下、単に「移行期間」という。)においても、第一循環方向RD1に鋸歯11を循環させながらブレード10を移動させるように駆動装置20を制御する。例えば移行制御部113は、第一循環方向RD1に鋸歯11を循環させるために、周縁12の中心を通る回転軸線51まわりにブレード10を回転させるように回転駆動部50を制御することになる。
【0041】
移行制御部113は、移行期間において、ワーク91における切り残し部分を迂回するように、駆動装置20によりブレード10を移動させる。移行制御部113は、移行期間において、第二進行方向MD2に沿い且つ回転軸線51を通る第二ラインML2がワーク91の切り残し部分を通過するまでブレード10を移動させる。移行制御部113がブレード10の移動を完了させることで、第二ラインML2の位置が定まる。第二切削制御部112は、第二モードの切削において、第二ラインML2上に回転軸線51を位置させながらブレード10を移動させるように駆動装置20を制御する。移行制御部113は、ワーク91の断面全域が、第二モードの切削におけるブレード10の移動範囲に入る位置に第二ラインML2を定めてもよい。
【0042】
移行制御部113は、移行期間においても、鋸歯11によるワーク91の切り残し部分の切削を継続させながらブレード10を移動させるように駆動装置20を制御する。例えば移行制御部113は、移行期間において、鋸歯11を徐々に切り残し部分に切り込ませる軌跡に沿ってブレード10を移動させるように駆動装置20を制御することになる。
【0043】
例えば、第一切削制御部111が、第一モードの切削において、水平な第一進行方向MD1に沿ってブレード10を前進させるように駆動装置20を制御する場合、移行制御部113は、移行期間において、上方まわりでワーク91の切り残し部分を迂回させながらブレード10を更に前進させるように駆動装置20を制御する。この場合、第二切削制御部112は、第二モードの切削において、第二進行方向MD2に沿ってブレード10を下降させるように駆動装置20を制御してもよい。
【0044】
一例として、移行制御部113は、移行期間において、第二変位駆動部70により可動支持台30を上昇させ、第一変位駆動部60により可動支持台30を前進させてもよい。これにより、移行期間においてはブレード10が上昇し、前進することとなる。移行制御部113は、第二変位駆動部70により可動支持台30を上昇させる上昇期間の後に、第一変位駆動部60により可動支持台30を前進させる。移行制御部113は、第二変位駆動部70により可動支持台30を上昇させる上昇期間と、第一変位駆動部60により可動支持台30を前進させる前進期間とを少なくとも部分的に重複させる。上昇期間と前進期間との重複期間においては、可動支持台30が斜め上方に向かって前進することとなる。
【0045】
以下、第一切削制御部111、第二切削制御部112及び移行制御部113が駆動装置20に実行させる第一モードの切削、第一モードの切削から第二モードの切削への移行、及び第二モードの切削を、より具体的に例示する。図5は第一モードの切削を例示する模式図である。図5において、ワーク91は、概略、矩形の断面形状を有し、下方に面する第一面92と、前方に面する第二面93と、上方に面する第三面94と、後方に面する第四面95とを有する。ブレード10の高さは、回転軸線51がワーク91よりも上方に位置し、ブレード10の下端がワーク91の下面(第一面92)よりも下方に位置するように定められている。第一モードの切削開始時において、鋸歯11は、第三面94と第四面95とが交わる部分を切削して切込溝96を形成する。その後、ブレード10が前進するにつれて、第一モードの切削は、ワーク91を切削する鋸歯11が第三面94からワーク91内に入り、第四面95からワーク91外に出る状態に移行する。更にその後、第一モードの切削は、図5に示すように、ワーク91を切削する鋸歯11が第二面93からワーク91内に入り、第一面92からワーク91外に出る状態に移行する。
【0046】
図6は、第一モードの切削から第二モードの切削への移行を例示する模式図である。移行制御部113は、ワーク91の切り残し部分97の上方に迂回させるように、第二変位駆動部70によりブレード10を上昇させ、第一変位駆動部60によりブレード10を前進させる。図6に示すように、移行制御部113は、第二変位駆動部70及び第一変位駆動部60の組合せにより、ブレード10を斜め上方に向かって前進させる。また、移行制御部113は、第二変位駆動部70及び第一変位駆動部60の組合せにより、切り残し部分97を迂回する曲線状の軌道に沿ってブレード10を前進させる。移行制御部113は、鉛直な第二進行方向MD2に沿い且つ回転軸線51を通る第二ラインML2が切り残し部分97を通過するまでブレード10を前進させる(図7参照)。
【0047】
図7は、第二モードの切削の開始直後を例示する模式図である。第二切削制御部112は、第二変位駆動部70によりブレード10を下降させる。これにより、第二モードの切削が開始される。第二モードの切削開始時において、ワーク91を切削する鋸歯11は第二面93からワーク91内に入り、切り残し部分97を切削した後、切込溝96を経てワーク91外に出る。
【0048】
その後、ブレード10が下降するにつれて、第二モードの切削は、ワーク91を切削する鋸歯11が第一面92からワーク91内に入り、切り残し部分97を切削した後、切込溝96を経てワーク91外に出る状態に移行する。図8は、第二モードの切削の完了直前を例示する模式図である。図8から明らかであるように、ワーク91を切削する鋸歯11が第一面92からワーク91内に入り、切り残し部分97を切削した後、切込溝96を経てワーク91外に出る状態は、ワーク91が鋸断されるまで(切り残し部分97の全域が切削されるまで)維持される。
【0049】
図9図10及び図11を参照し、第一モードの切削範囲が不適切であるため、第二モードの切削で鋸断を完了することができない場合も例示する。図9は、第一モードの切削を例示している。図9において、ブレード10の高さは、ブレード10の下端がワーク91の下面(第一面92)よりも上方に位置するように定められている。この状態で、第一切削制御部111は、第一変位駆動部60によりブレード10を前進させることによって、ワーク91の上部に切込溝96を形成し、ワーク91の下部に切り残し部分97を形成する。
【0050】
図10は、第一モードの切削から第二モードの切削への移行を例示している。図10に示すように、移行制御部113は、第二変位駆動部70によりブレード10を下降させる。これにより、第一モードの切削が第二モードの切削に移行する。移行完了時において、ワーク91を切削する鋸歯11は、第一面92からワーク91内に入り、切り残し部分97を切削した後、切込溝96を経てワーク91外に出る。
【0051】
移行完了後、第二切削制御部112は、第一変位駆動部60によりブレード10を後退させる。以後、第二モードの切削が継続するが、ワーク91を切削する鋸歯11が第四面95に近付くにつれて、図11に示すように、第二モードの切削が第一モードの切削に戻る。第一モードの切削においては、ワーク91を切削した鋸歯11が直ちに第四面95からワーク91外に出る。このように、ワーク91の鋸断前に、第二モードの切削が第一モードの切削に戻ってしまうので、図9図10及び図11に示した例では、第二モードの切削でワーク91を鋸断することができない。
【0052】
以上、第一モードの切削、第一モードの切削から第二モードの切削への移行、及び第二モードの切削を具体的に例示したが、各期間におけるブレード10の移動方向はあくまで一例である。
【0053】
コントローラ100は、高さ変更部80によりブレード10の高さを調節することを更に実行するように構成されていてもよい。例えばコントローラ100は、図1に示すように、機能ブロックとして高さ調節部114を更に有する。例えば高さ調節部114は、後述の入力デバイス196に対し入力された目標高さにブレード10の高さを合わせるように高さ変更部80を制御してもよい。
【0054】
高さ調節部114は、ブレード10の外径に基づいて、目標高さを自動設定し、設定した目標高さにブレード10の高さを合わせるように高さ変更部80を制御してもよい。この場合、鋸断装置1は、ブレード10の外径を検出する外径センサ52を更に有してもよく、高さ調節部114は外径センサ52による検出結果に基づいて目標高さを自動設定してもよい。
【0055】
図12は、コントローラ100のハードウェア構成を例示するブロック図である。図12に示すように、コントローラ100は回路190を備える。回路190は、一以上のプロセッサ191と、メモリ192と、ストレージ193と、入出力ポート194と、表示デバイス195と、入力デバイス196とを有する。
【0056】
ストレージ193は、上記第一モードの切削により、ワーク91に切込溝を形成するように駆動装置20を制御することと、上記第二モードの切削により、ワーク91を鋸断するように駆動装置20を制御することと、をコントローラ100に実行させるためのプログラムを記憶している。例えばストレージ193は、上述した各機能ブロックをコントローラ100に構成させるためのプログラムを記憶している。
【0057】
メモリ192は、ストレージ193からロードされたプログラムを一時的に記憶する。一以上のプロセッサ191は、メモリ192が記憶するプログラムを実行し、上述した各機能ブロックを構成する。なお、一以上のプロセッサ191は、プログラムの実行過程で生成した途中演算結果を適宜メモリ192に記憶させ、後続の処理でそれを参照する。
【0058】
入出力ポート194は、一以上のプロセッサ191からの要求に応じて、回転駆動部50,第一変位駆動部60、第二変位駆動部70、高さ変更部80及び外径センサ52との間で情報の入出力を行う。表示デバイス195は、オペレータに対する情報の表示を行う。表示デバイス195の具体例としては液晶モニタ等が挙げられる。入力デバイス196は、オペレータによる入力を取得する。入力デバイス196の具体例としては、マウス、キーボード等が挙げられる。入力デバイス196は、所謂タッチパネルとして表示デバイス195と一体化されていてもよい。表示デバイス195及び入力デバイス196は、インターネット等のネットワーク回線を介して一以上のプロセッサ191と接続されていてもよい。
【0059】
以上に示したコントローラ100のハードウェア構成はあくまで一例であり、適宜変更可能である。例えば、少なくとも一部の機能ブロックが、一以上のプロセッサ191ではなく、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用の論理回路素子により構成されていてもよい。
【0060】
〔鋸断方法〕
続いて、鋸断方法の一例として、コントローラ100が実行する制御手順を例示する。この手順は、上記第一モードの切削により、ワーク91に切込溝を形成するように駆動装置20を制御することと、上記第二モードの切削により、ワーク91を鋸断するように駆動装置20を制御することと、を含む。
【0061】
図13に示すように、コントローラ100は、まずステップS01,S02を実行する。ステップS01では、高さ調節部114が、第一モードの切削におけるブレード10の高さを高さ変更部80により調節する。ステップS02では、第一切削制御部111が、第一循環方向RD1に鋸歯11を循環させるように、回転駆動部50によるブレード10の回転を開始させる。
【0062】
次に、コントローラ100は、ステップS03,S04,S05を実行する。ステップS03では、第一切削制御部111が、回転するブレード10を第一変位駆動部60により前進させることで、第一モードの切削によりワーク91に切込溝を形成する。ステップS04では、移行制御部113が、切り残し部分97を上方に迂回するように、第二変位駆動部70及び第一変位駆動部60によりブレード10を移動させることで、第一モードの切削を第二モードの切削に移行させる。ステップS05では、第二切削制御部112が、ブレード10を第二変位駆動部70により下降させることで、第二モードの切削によりワーク91を鋸断する。
【0063】
次に、コントローラ100はステップS06、ステップS07を実行する。ステップS06では、第二切削制御部112が、ステップS03の開始前の位置にブレード10を復帰させるように第二変位駆動部70及び第一変位駆動部60を制御する。ステップS07では、回転駆動部50がブレード10の回転を停止させる。以上で、第一モードの切削と、第二モードの切削とによりワーク91の鋸断が完了する。なお、鋸断箇所が一箇所である場合の手順を例示したが、鋸断箇所が複数である場合には、ステップS07の前に、全ての鋸断箇所を鋸断するまでステップS03~S06を繰り返してもよい。
【0064】
〔本実施形態の効果〕
以上に説明した鋸断装置1による鋸断方法は、鋸歯11を周縁12に有するブレード10により、ワークを鋸断する方法であって、ワークを切削した鋸歯11が直ちにワーク外に出るようにブレード10を駆動させる第一モードの切削により、ワークに切込溝を形成することと、ワークを切削した鋸歯11が切込溝を経てワーク外に出るようにブレード10を駆動する第二モードの切削により、ワークを鋸断することと、を含む。
【0065】
第一モードの切削でワークの鋸断に至る場合、切削の最終段階で薄くなった切り残し部分が、鋸歯11につられてワーク外に逃げ、バリとして残る場合がある。一方、第二モードの切削でワークの鋸断に至る場合、鋸歯11は切り残し部分を切込溝に引き込むように作用するため、切り残し部分のワーク外への逃げが鋸断に至るまで抑制される。このため、第一モードの切削で切込溝を形成し、第二モードの切削で鋸断に至る鋸断方法は、バリの抑制に有効である。
【0066】
ブレード10を切込溝内に位置させた状態で、第一モードの切削を第二モードの切削に移行させることを更に含んでもよい。第一モードの切削から第二モードの切削への移行において、ブレード10を切込溝外に出してしまうと、ブレード10が切込溝内に再進入する際にワークに欠けが生じ易くなる。ブレード10を切込溝に位置させた状態で第一モードの切削を第二モードの切削に移行させる鋸断方法によれば、ワークの欠けを更に抑制することができる。また、ブレード10を切込溝内に留めることで、第一モードの切削から第二モードの切削へ移行させるためのブレード10の移動が小さくなるので、この鋸断方法は鋸断時間の短縮にも有効である。
【0067】
第一モードの切削においては、ワークを切削する鋸歯11がワークの第二面からワーク内に入り、ワークの第一面からワーク外に出る状態までワークを切削し、第二モードの切削においては、ワークを切削する鋸歯11が第二面からワーク内に入り、切込溝を経てワーク外に出る状態から、ワークを切削する鋸歯11が第一面からワーク内に入り、切込溝を経てワーク外に出る状態に移行してもよい。この場合、第二モードでの切削期間を長くして、バリを更に抑制することができる。
【0068】
鋸断装置1は、鋸歯11を周縁12に有するブレード10と、ブレード10を駆動する駆動装置20と、ワークを切削した鋸歯11が直ちにワーク外に出るようにブレード10を駆動させる第一モードの切削により、ワークに切込溝を形成するように駆動装置20を制御する第一切削制御部と、ワークを切削した鋸歯11が切込溝を経てワーク外に出るようにブレード10を駆動する第二モードの切削により、ワークを鋸断するように駆動装置20を制御する第二切削制御部と、ブレード10を切込溝内に留めた状態で、第一モードの切削を第二モードの切削に移行させるように駆動装置20を制御する移行制御部と、を備える。この鋸断装置1によれば、第一モードの切削及び第二モードの切削によるバリの抑制を、高い再現性で容易に図ることができる。
【0069】
駆動装置20は、周縁12に沿った第一循環方向RD1に鋸歯11を循環させるように、周縁12の中心を通る回転軸線まわりにブレード10を回転させる回転駆動部50と、回転軸線に垂直な第一進行方向MD1に沿ってブレード10を移動させる第一変位駆動部60と、回転軸線に垂直で第一進行方向MD1に交差する第二進行方向MD2に沿ってブレード10を移動させる第二変位駆動部70と、を有し、第一切削制御部は、第一モードの切削において、第一変位駆動部60によってブレード10を移動させ、第二切削制御部は、第二モードの切削において、第二変位駆動部70によってブレード10を移動させてもよい。この場合、第一変位駆動部60及び第二変動駆動部を組み合わせた簡素な構成によって、第一モードの切削及び第二モードの切削によるバリの抑制を容易に図ることができる。
【0070】
以上、実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1…鋸断装置、10…ブレード、11…鋸歯、12…周縁、20…駆動装置、50…回転駆動部、RD1…第一循環方向、MD1…第一進行方向、MD2…第二進行方向、60…第一変位駆動部、ML1…第一ライン、70…第二変位駆動部、ML2…第二ライン、80…高さ変更部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13