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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054681
(43)【公開日】2023-04-14
(54)【発明の名称】ウォータージェット用噴射液
(51)【国際特許分類】
   B26F 3/00 20060101AFI20230407BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20230407BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20230407BHJP
   B23P 17/00 20060101ALN20230407BHJP
【FI】
B26F3/00 J
B26F3/00 S
E04G23/08 E
E04G23/02 Z
B23P17/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163678
(22)【出願日】2021-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000216025
【氏名又は名称】鉄建建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】岩城 圭介
(72)【発明者】
【氏名】西脇 敬一
(72)【発明者】
【氏名】福岡 瑛莉奈
(72)【発明者】
【氏名】山川 勉
(72)【発明者】
【氏名】清水 靖也
(72)【発明者】
【氏名】加古 昌之
(72)【発明者】
【氏名】菅原 広道
(72)【発明者】
【氏名】津福 均
(72)【発明者】
【氏名】杉田 崇
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 博文
【テーマコード(参考)】
2E176
3C060
【Fターム(参考)】
2E176AA01
2E176BB04
2E176BB36
2E176DD28
3C060AA14
3C060CE02
3C060CE20
3C060CE23
(57)【要約】
【課題】ウォータージェット工法におけるコンクリート構造物Cの加工効率を向上できるウォータージェット用噴射液Wを提供することを目的とする。
【解決手段】ウォータージェット工法において、コンクリート構造物Cへ向けてノズル71を介して噴射されるウォータージェット用噴射液Wであって、ノズル71から噴射された噴流の衝突エネルギーを増加させる水溶性の混和剤(界面活性剤、凝結遅延性有機化合物)が、所定量溶解した水溶液であることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物へ向けてノズルを介して噴射されるウォータージェット用噴射液であって、
ノズルから噴射された噴流の衝突エネルギーを増加させる水溶性の混和剤が、所定量溶解した水溶液である
ウォータージェット用噴射液。
【請求項2】
前記水溶性の混和剤が、界面活性剤である
請求項1に記載のウォータージェット用噴射液。
【請求項3】
前記界面活性剤は、
ポリアルキレングリコール誘導体を主成分として含有するものである
請求項2に記載のウォータージェット用噴射液。
【請求項4】
水の90%以下の表面張力となる所定量の前記界面活性剤が溶解された
請求項2または請求項3に記載のウォータージェット用噴射液。
【請求項5】
前記水溶性の混和剤が、
セメント凝結を遅延させる有機化合物である凝結遅延性有機化合物である
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のウォータージェット用噴射液。
【請求項6】
前記凝結遅延性有機化合物は、
オキシカルボン酸系、オキシカルボン酸塩系、及び糖類のうち、少なくとも1つである
請求項5に記載のウォータージェット用噴射液。
【請求項7】
前記水溶液の密度が1.02g/cm以上となる所定量の前記凝結遅延性有機化合物が溶解された
請求項5または請求項6に記載のウォータージェット用噴射液。
【請求項8】
凝結時間が24時間以上となる所定量の前記凝結遅延性有機化合物が溶解された
請求項5から請求項7のいずれか1つに記載のウォータージェット用噴射液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばコンクリート構造物に噴射して各種加工を行うウォータージェット工法で用いられるようなウォータージェット用噴射液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート構造物の補修などのために、コンクリート構造物の表層を除去する作業、所謂、はつり作業をウォータージェット工法で行うことが知られている。
具体的には、ウォータージェット工法は、水などの噴射液を超高圧に加圧してノズルからコンクリート構造物へ向けて噴射し、噴射液がコンクリート構造物に衝突した際の噴流の衝突エネルギーによって、コンクリート構造物を加工する工法である。
【0003】
このようなウォータージェット工法を可能にする装置として、例えば特許文献1には、噴射液を超高圧に加圧するウォータージェットポンプと、ノズルが設けられた架台と、架台を移動可能に支持するとともに、コンクリート構造物に取り付けられるレールなどで構成されたウォータージェット装置が開示されている。
【0004】
ところで、ウォータージェット工法におけるコンクリート構造物の加工効率を向上する場合、例えばウォータージェット装置のポンプユニット(特許文献1のウォータージェットポンプ)を交換して、噴射液をより高圧に加圧して噴射することが考えられる。
【0005】
しかしながら、この場合、ポンプユニットが大型化して、既存のポンプユニットと交換できないおそれがあった。このため、特許文献1のようなウォータージェット装置では、ウォータージェット工法における加工効率の向上が容易ではないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-133316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑み、ウォータージェット工法における加工効率を向上できるウォータージェット用噴射液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、コンクリート構造物へ向けてノズルを介して噴射されるウォータージェット用噴射液であって、ノズルから噴射された噴流の衝突エネルギーを増加させる水溶性の混和剤が、所定量溶解した水溶液であることを特徴とする。
上記衝突エネルギーは、コンクリート構造物に衝突する際にウォータージェット用噴射液が有するエネルギーのことをいう。
【0009】
この発明によれば、水溶性の混和剤によって、コンクリート構造物に衝突する際の噴流の衝突エネルギーを水に比べて大きくできるため、ウォータージェット用噴射液は、例えば既存のポンプユニットを用いた場合であっても、ウォータージェット工法における加工効率を向上することができる。
【0010】
この発明の態様として、前記水溶性の混和剤が、界面活性剤であってもよい。
上記界面活性剤は、例えばコンクリート用の収縮低減剤などのことをいう。
この構成によれば、界面活性剤により、ウォータージェット用噴射液の表面張力が水に比べて小さくなるとともに、界面の摩擦が小さくなる。このため、界面活性剤は、ウォータージェット用噴射液とノズルとの摩擦抵抗を水に比べて小さくして、ウォータージェット用噴射液の吐出速度を速くすることができる。
【0011】
さらに、界面活性剤は、ノズルから噴射された噴流を細粒化させ易いため、噴流の速度が空気抵抗によって低下することを抑制できる。
これにより、速い吐出速度でノズルから噴射された噴流が、大きく速度低下することなくコンクリート構造物に衝突するため、界面活性剤は、コンクリート構造物に衝突する際の噴流の衝突エネルギーを水に比べて大きくすることができる。
【0012】
加えて、表面張力の低下によってウォータージェット用噴射液の濡れ性が向上するため、コンクリート構造物の表面にウォータージェット用噴射液が付着した場合、ウォータージェット用噴射液は、コンクリート構造物の表面に形成される水膜を薄膜化することができる。このため、ノズルから噴射されたウォータージェット用噴射液が水膜を介してコンクリート構造物に衝突した際、噴流の衝突エネルギーが、コンクリート構造物に形成された水膜によって吸収されることを抑制できる。
【0013】
さらにまた、界面活性剤は、様々な分野及び用途で使用されており、かつ比較的入手が容易である。このため、界面活性剤は、入手が難しい混和剤を溶解させた場合に比べて、ウォータージェット用噴射液の品質を安定させることができる。
したがって、ウォータージェット用噴射液は、例えば既存のポンプユニットを用いた場合であっても、ウォータージェット工法における加工効率を安定して向上することができる。
【0014】
またこの発明の態様として、前記界面活性剤は、ポリアルキレングリコール誘導体を主成分として含有するものであってもよい。
上記ポリアルキレングリコール誘導体は、コンクリート用の収縮低減剤の主成分であって、例えば低級アルコールのアルキレンオキシド付加物、ポリエーテル誘導体、グリコールエーテル誘導体などのことをいう。
この構成によれば、ポリアルキレングリコール誘導体は、例えば粉末状であっても良好な溶解性を有するため、ウォータージェット用噴射液の粘度を水の粘度と略同等にすることができる。
【0015】
さらに、例えば加工効率を向上する目的で粉末のポリアクリルアミド系高分子を水に溶解させたウォータージェット用噴射液の場合、ポリアクリルアミド系高分子が水に溶解し難いため、ポリアクリルアミド系高分子のダマが水溶液中に生じるとともに、水溶液の粘度が水よりも高くなる。
【0016】
これに対して、ポリアルキレングリコール誘導体は、良好な溶解性により水溶液中でダマになり難い。このため、ポリアルキレングリコール誘導体は、ウォータージェット用噴射液の表面張力をより均質化させるとともに、ウォータージェット用噴射液の粘度をより安定させることができる。
【0017】
ここで、例えば水に比べて粘度が高い水溶液の場合、水溶液が床面や路面に付着すると、床面や路面が滑り易くなる。このため、粘度が高い水溶液が床面や路面に付着した場合、大量の水で床面や路面を洗浄して水溶液を除去する必要があった。
【0018】
これに対して、ポリアルキレングリコール誘導体を主成分とする界面活性剤が溶解したウォータージェット用噴射液は、水と略同等の粘度のため、床面や路面に付着した場合であっても、床面や路面が滑り易くなるのを抑えることができる。
このため、ウォータージェット用噴射液は、床面や路面を洗浄して、飛散した水溶液やコンクリート構造物を加工した後の廃液を除去する手間を軽減することができる。
【0019】
またこの発明の態様として、水の90%以下の表面張力となる所定量の前記界面活性剤が溶解されてもよい。
この構成によれば、ノズルから噴射された噴流の速度が確実に向上するため、界面活性剤は、コンクリート構造物に衝突する際の噴流の衝突エネルギーをより大きくすることができる。このため、ウォータージェット用噴射液は、ウォータージェット工法における加工効率をより向上することができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記水溶性の混和剤が、セメント凝結を遅延させる有機化合物である凝結遅延性有機化合物であってもよい。
この構成によれば、凝結遅延性有機化合物は、水への溶解性が良好で、水溶液の比重を水に比べて大きくすることができる。
【0021】
このため、凝結遅延性有機化合物は、コンクリート構造物に衝突する際の噴流の衝突エネルギーを水に比べて大きくすることができる。
これにより、ウォータージェット用噴射液は、例えば既存のポンプユニットを用いた場合であっても、ウォータージェット工法における加工効率を向上することができる。
【0022】
加えて、ウォータージェット用噴射液は、コンクリート構造物を加工した後のノロに未水和セメントが含まれる場合であっても、未水和セメントが凝結する時間を、凝結遅延性有機化合物によって遅延させることができる。このため、ウォータージェット用噴射液は、床面や路面を洗浄して、床面や路面に付着したノロを含む廃液を除去する手間を軽減することができる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記凝結遅延性有機化合物は、オキシカルボン酸系、オキシカルボン酸塩系、及び糖類のうち、少なくとも1つであってもよい。
この構成によれば、オキシカルボン酸系、オキシカルボン酸塩系、及び糖類は、いずれも水への溶解度が高いため、水溶液の比重をより大きくすることができる。
【0024】
このため、凝結遅延性有機化合物は、コンクリート構造物に衝突する際の噴流の衝突エネルギーを確実に増加させることができる。これにより、ウォータージェット用噴射液は、ウォータージェット工法における加工効率をより向上することができる。
【0025】
加えて、オキシカルボン酸系、オキシカルボン酸塩系、及び糖類は、いずれも水溶液の粘度を水の粘度と略同等にすることができる。このため、ウォータージェット用噴射液は、床面や路面に付着した場合であっても、床面や路面が滑り易くなるのを抑えることができる。
【0026】
またこの発明の態様として、前記水溶液の密度が1.02g/cm以上となる所定量の前記凝結遅延性有機化合物が溶解されてもよい。
この構成によれば、水溶液の比重を確実に大きくできるため、凝結遅延性有機化合物は、コンクリート構造物に衝突する際の噴流の衝突エネルギーを確実に大きくすることができる。このため、ウォータージェット用噴射液は、ウォータージェット工法における加工効率をより向上することができる。
【0027】
またこの発明の態様として、凝結時間が24時間以上となる所定量の前記凝結遅延性有機化合物が溶解されてもよい。
上記凝結時間は、水和反応の反応時間、また水和反応の開始時刻、あるいは水和反応の開始時刻及び反応時間のことをいう。
【0028】
この構成によれば、ウォータージェット用噴射液は、ノロに含まれる未水和セメントが凝結することを十分に遅延させることができる。このため、ウォータージェット用噴射液は、ノロの処理に必要な時間を容易に確保することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、ウォータージェット工法における加工効率を向上できるウォータージェット用噴射液を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】ウォータージェット装置の概略を説明する説明図。
図2】ポリアルキレングリコール誘導体の特性を説明する説明図。
図3】グルコン酸ナトリウムの特性を説明する説明図。
図4】はつり試験の概略を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
本実施形態は、コンクリート構造物Cに噴射して穿孔、切断、はつりなどの各種加工を行うウォータージェット工法で用いられるようなウォータージェット用噴射液について説明する。
【0032】
まず、ウォータージェット工法で用いられるウォータージェット装置1について、ウォータージェット装置1の概略を説明する説明図を示す図1を用いて簡単に説明する。
ウォータージェット装置1は、図1に示すように、ウォータージェット用噴射液Wが貯留された貯水タンク2と、車両3に積載されたポンプユニット4と、貯水タンク2をポンプユニット4に接続する上流ホース5とを備えている。
【0033】
さらに、ウォータージェット装置1は、図1に示すように、ポンプユニット4から延びる下流ホース6と、下流ホース6の先端に接続された噴射ユニット7と、噴射ユニット7の動作を制御する制御ユニット8とを備えている。
【0034】
具体的には、ポンプユニット4は、例えばエンジン駆動式の高圧ポンプであって、貯水タンク2に貯蔵されたウォータージェット用噴射液Wを、上流ホース5を介して吸い上げる機能を有している。
【0035】
さらに、ポンプユニット4は、吸い上げたウォータージェット用噴射液Wを超高圧に加圧する機能と、加圧したウォータージェット用噴射液Wを、下流ホース6を介して噴射ユニット7に圧送する機能とを有している。
【0036】
また、噴射ユニット7は、図1に示すように、コンクリート構造物Cに装着されるとともに、下流ホース6を介して供給されたウォータージェット用噴射液Wを、コンクリート構造物Cの加工対象面へ向けて超高圧で噴射するノズル71を備えている。この噴射ユニット7は、コンクリート構造物Cの加工対象面に略平行で、互いに直交する二方向へ向けてノズル71を移動可能に構成されている。
【0037】
より詳しくは、噴射ユニット7は、詳細な図示を省略するが、コンクリート構造物Cに装着されるレール部72と、ノズル71を有するとともに、下流ホース6が接続される本体部73とを備えている。
【0038】
レール部72は、例えばコンクリート構造物Cの加工対象面に取付けられるとともに、短手方向に所定間隔を隔てて配置した長尺形状の一対の第1レールと、長手方向が第1レールの短手方向に略一致するように配置された長尺形状の第2レールとで略H字状に構成されている。
【0039】
さらに、レール部72は、第1レールに沿って第2レールを移動させるレール駆動部を備えている。
一方、本体部73は、例えばレール部72の第2レール上を移動可能に取り付けられるとともに、第2レール上を移動するための本体駆動部(図示省略)を備えている。
【0040】
また、制御ユニット8は、噴射ユニット7に電気的に接続され、本体部73に電力を供給する機能と、レール部72の動作を制御する機能と、本体部73の動作を制御する機能とを有している。なお、制御ユニット8は、図1に示すように、発電機9の電力によって動作するとともに、発電機9の電力を噴射ユニット7に供給している。
【0041】
また、ウォータージェット用噴射液Wは、ノズル71から噴射された噴流の衝突エネルギーを増加させる水溶性の混和剤が、所定量溶解した水溶液である。ここで、衝突エネルギーは、コンクリート構造物Cに衝突する際にウォータージェット用噴射液Wが有するエネルギーとする。
【0042】
なお、本実施形態では、水溶性の混和剤として、界面活性剤、またはセメントの凝結時間を遅延させる凝結遅延性を有する凝結遅延性有機化合物、あるいは界面活性剤及び凝結遅延性有機化合物の双方を溶解させている。
【0043】
引き続き、上述したウォータージェット用噴射液Wとして、本発明である実施例1から実施例3のウォータージェット用噴射液と、比較例のウォータージェット用噴射液とについて表1及び表2、並びに図2及び図3を用いてさらに詳述する。
【0044】
なお、表1はウォータージェット用噴射液の成分の一覧を表し、表2はウォータージェット用噴射液の特性の一覧を表している。
また、図2はポリアルキレングリコール誘導体の特性を説明する説明図を示し、図3はグルコン酸ナトリウムの特性を説明する説明図を示している。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
表2に示した実施例1から実施例3のウォータージェット用噴射液は、溶媒及び溶質をバケツに投入し、ハンドミキサを用いて均質化して得た100Lの水溶液の特性を計測したものである。
【0047】
また、表2において、濃度欄の値が水溶液中の溶質の濃度を示し、密度欄の値が浮ひょうで測定した温度20℃の水溶液の密度を示し、粘度欄の値がB型回転粘度計(ロータ回転数20rpm)で測定した温度20℃の水溶液の粘度を示し、表面張力欄の値がプレート法で測定した温度25℃の水溶液の表面張力を示している。さらに、表2のポンプ吸込み性は、ポンプユニット4がウォータージェット用噴射液を吸い込む際の吸込み易さを、比較例(水道水)と比較した結果を示している。
【0048】
比較例のウォータージェット用噴射液は、表1に示すように、水道水である。より詳しくは、比較例のウォータージェット用噴射液は、表2に示すように、密度が1.00g/cm、粘度が1.0mPa・sec、表面張力が72mN/mの水道水である。
【0049】
また、実施例1のウォータージェット用噴射液は、表1に示すように、水道水を溶媒、界面活性剤を溶質とする水溶液であって、水道水に対する溶解性が良好な界面活性剤の一種であるポリアルキレングリコール誘導体の粉末を、水道水に溶解させて生成している。
【0050】
なお、実施例1では、ポリオキシアルキレン化合物を主成分とする日油株式会社製のシュドックス(登録商標)DF-40を、ポリアルキレングリコール誘導体として使用している。
【0051】
このポリアルキレングリコール誘導体は、コンクリートの混和剤の一つである収縮低減剤の主成分として用いられている。このため、ポリアルキレングリコール誘導体は、溶媒に溶解した状態において、溶媒の表面張力を低減させる効果を有している。
さらに、ポリアルキレングリコール誘導体は、その良好な溶解性により、水溶液中でダマになり難く、水溶液の粘度の上昇を抑える効果を有している。
【0052】
例えば、上述した日油株式会社製のシュドックス(登録商標)DF-40を純水に溶解した水溶液は、図2に示すように、ポリアルキレングリコール誘導体の濃度が0.05%以上において、その表面張力が純水の表面張力の90%以下、すなわち65mN/m以下となる。
【0053】
さらに詳述すると、実施例1のウォータージェット用噴射液は、表2に示すように、ポリアルキレングリコール誘導体の濃度が0.05%、密度が1.00g/cm、粘度が1.0mPa・sec、表面張力が63mN/mの水溶液である。
【0054】
このように、実施例1のウォータージェット用噴射液は、密度及び粘度が比較例(水道水)と同等であり、表面張力が比較例の90%以下となっている。さらに、実施例1のウォータージェット用噴射液は、ポンプ吸込み性が比較例と同等であり、かつ発泡も生じていない。
【0055】
また、実施例2のウォータージェット用噴射液は、表1に示すように、水道水を溶媒、凝結遅延性有機化合物を溶質とする水溶液であって、凝結遅延性有機化合物として水道水に対する溶解性が良好なグルコン酸ナトリウムの粉末を溶解させて生成している。
【0056】
このグルコン酸ナトリウムは、コンクリートの混和剤の成分として使用されるオキシカルボン酸塩系の有機化合物であって、水和反応の開始時刻である凝結時間を遅延させる特性を有している。
例えば、水セメント比W/C=4.0のセメントペースに添加したグルコン酸ナトリウムは、図3(a)に示すように、その濃度が0.025%以上において、セメントペースの凝結時間を24時間以上遅延する特性を有している。
【0057】
なお、凝結時間は、例えば日本産業規格のJISA1147の「コンクリートの凝結時間試験方法」で測定した時間、あるいは坂井悦郎著の「熱量測定とセメント・コンクリートの性能」(日本熱測定学会 学会誌「熱測定」Vol.39 15頁~21頁 2012年発行)に記載の「コンダクションカロリメータによるセメント中のエーライトの反応の発熱速度が最大となる時間t1」などがある。
【0058】
さらに、グルコン酸ナトリウムは、水への溶解度が高く、密度の高い水溶液を得られ易いという特性がある。
例えば、グルコン酸ナトリウムが溶解した水溶液は、図3(b)に示すように、グルコン酸ナトリウムの濃度が4.0%以上において、水溶液の密度が1.02g/cm以上となる特性を有している。
【0059】
さらに詳述すると、実施例2のウォータージェット用噴射液は、表2に示すように、グルコン酸ナトリウムの濃度が4.0%、密度が1.02g/cm、粘度が1.1mPa・sec、表面張力が72mN/mの水溶液である。
【0060】
このように、実施例2のウォータージェット用噴射液は、グルコン酸ナトリウムの濃度が4.0%のため、未水和セメントとの水和反応の開始時刻を24時間以上遅延させる特性を有している。さらに、実施例2のウォータージェット用噴射液は、密度及び粘度が比較例(水道水)に比べて略同等といえる程度に僅かに増加し、表面張力が比較例(水道水)と同等となっている。加えて、実施例2のウォータージェット用噴射液は、やや発泡が生じているが、比較例と同様のポンプ吸込み性を有している。
【0061】
また、実施例3のウォータージェット用噴射液は、表1に示すように、水道水を溶媒、界面活性剤及び凝結遅延性有機化合物を溶質とする水溶液であって、上述したポリアルキレングリコール誘導体の粉末、及びグルコン酸ナトリウムの粉末を溶解させて生成している。
【0062】
より詳しくは、実施例3のウォータージェット用噴射液は、表2に示すように、ポリアルキレングリコール誘導体の濃度が0.1%、グルコン酸ナトリウムの濃度が4.0%、密度が1.02g/cm、粘度が1.1mPa・sec、表面張力が63mN/mの水溶液である。
【0063】
このように、実施例3のウォータージェット用噴射液は、グルコン酸ナトリウムの濃度が4.0%のため、未水和セメントとの水和反応の開始時刻を24時間以上遅延させる特性を有している。さらに、実施例3のウォータージェット用噴射液は、密度及び粘度が比較例(水道水)に比べて略同等といえる程度に僅かに増加し、表面張力が比較例の90%以下となっている。加えて、実施例3のウォータージェット用噴射液は、ポンプ吸込み性が比較例と同等であり、かつ発泡も生じていない。
【0064】
引き続き、上述した比較例のウォータージェット用噴射液、及び実施例1から実施例3のウォータージェット用噴射液を用いた比較試験として、コンクリート構造物Cの供試体S(図4参照)に対してはつり作業を実施した結果について説明する。
【0065】
まず、供試体Sは、コンクリート配合27-18-20Nで形成された厚さ0.2mの平板状であって、1.7m四方の大きさに形成されている。なお、試験前の供試体Sの圧縮強度は、約30N/mmであった。
この供試体Sは、はつり試験の概略を説明する説明図を示す図4のように、主面が略鉛直となるように配置され、対向する主面のうち、型枠面をはつり作業の対象面とした。
【0066】
また、ウォータージェット装置1のポンプユニット4は、最大圧力が240MPa、最大水量が25L/minのものを用いた。さらに、ウォータージェット装置1の噴射ユニット7は、図4に示すように、水平方向を回転軸として回転するテーブル73aに複数のノズル71が設けられ、かつノズル71が水平方向に対して傾斜した射角噴射型を用いている。なお、ウォータージェット装置1は、試験直前に噴射圧力、及びノズル距離のキャリブレーションを行っている。
【0067】
上述したようなウォータージェット装置1を用いて、比較例、及び実施例1から実施例3のウォータージェット用噴射液を、それぞれ供試体Sの100mm×150mmの範囲に噴射してはつりを実施した。この際、噴射ユニット7の本体部73を1分間で1往復させている。
【0068】
その後、はつりを実施した供試体Sを、3Dスキャナを用いて1cm間隔のメッシュで切削深さを測定して、ウォータージェット用噴射液で削られた部分の容積である切削容積、最も浅い切削深さである最小切削深さ、及び切削深さのばらつき(変動係数比)を算出した(表3参照)。
【0069】
【表3】
なお、表3において、切削容積欄の値、最小切削深さ欄の値、及び深さのばらつき欄の値は、比較例のウォータージェット用噴射液を用いたはつり試験結果を「1.00」とし、実施例1から実施例3のウォータージェット用噴射液のはつり試験結果を、比較例に対する比率で示している。
【0070】
表3によれば、実施例1のウォータージェット用噴射液は、切削容積が比較例に対して1.05倍となり、最小切削深さが比較例に対して1.10倍となっていることから、コンクリート構造物Cに衝突する際の噴流の衝突エネルギーが比較例に比べて増加していることがわかる。
【0071】
さらに、実施例1のウォータージェット用噴射液は、切削深さのばらつきが比較例に対して0.85倍と低減されていることから、ノズル71から噴射された噴流がポリアルキレングリコール誘導体によって細粒化されているといえる。
一方で、実施例1のウォータージェット用噴射液は、24時間経過後のノロの状態が、比較例と同様に固結するという結果が得られた。
【0072】
また、実施例2のウォータージェット用噴射液は、切削深さのばらつきが比較例と同等であるが、切削容積が比較例に対して1.10倍となり、最小切削深さが比較例に対して1.20倍となっていることから、コンクリート構造物Cに衝突する際の噴流の衝突エネルギーが比較例及び実施例1に比べて増加していることがわかる。
【0073】
加えて、実施例2のウォータージェット用噴射液は、24時間経過後のノロの状態が固結していないことから、グルコン酸ナトリウムの凝結遅延効果によって凝結時間が大幅に遅延しているといえる。
【0074】
また、実施例3のウォータージェット用噴射液は、切削容積が比較例に対して1.10倍となり、最小切削深さが比較例に対して1.25倍となっていることから、コンクリート構造物Cに衝突する際の噴流の衝突エネルギーが比較例に比べて増加していることがわかる。
【0075】
特に、実施例3のウォータージェット用噴射液は、最小切削深さが実施例1及び実施例2を上回っていることから、ポリアルキレングリコール誘導体による表面張力の低減、及びグルコン酸ナトリウムによる密度増加の相乗効果により、コンクリート構造物Cに衝突する際の噴流の衝突エネルギーが向上しているといえる。
【0076】
さらに、実施例3のウォータージェット用噴射液は、切削深さのばらつきが比較例に対して0.90倍と低減されていることから、ノズル71から噴射された噴流がポリアルキレングリコール誘導体によって細粒化されているといえる。
加えて、実施例3のウォータージェット用噴射液は、24時間経過後のノロの状態が固結していないことから、実施例2と同様に、グルコン酸ナトリウムの凝結遅延効果によって凝結時間が遅延している。
【0077】
このように実施例1から実施例3のウォータージェット用噴射液は、ポンプユニット4の性能に関わらず、コンクリート構造物Cに衝突する際の噴流の衝突エネルギーを比較例に比べて増加でき、ウォータージェット工法におけるコンクリート構造物Cの加工効率を向上していることがわかる。
【0078】
以上のように、本実施形態のウォータージェット用噴射液Wは、ウォータージェット工法において、コンクリート構造物Cへ向けてノズル71を介して噴射される噴射液である。
このウォータージェット用噴射液Wは、ノズル71から噴射された噴流の衝突エネルギーを増加させる水溶性の混和剤が、所定量溶解した水溶液である。
【0079】
この構成によれば、水溶性の混和剤によってコンクリート構造物Cに衝突する際の噴流の衝突エネルギーを比較例(水道水)に比べて大きくできるため、ウォータージェット用噴射液Wは、例えば既存のポンプユニット4を用いた場合であっても、ウォータージェット工法における加工効率を向上することができる。
【0080】
また、実施例1及び実施例3のウォータージェット用噴射液Wは、水溶性の混和剤として界面活性剤を溶解させたものである。
この構成によれば、界面活性剤により、ウォータージェット用噴射液Wの表面張力が水に比べて小さくなるとともに、界面の摩擦が小さくなる。このため、界面活性剤は、ウォータージェット用噴射液Wとノズル71との摩擦抵抗を水に比べて小さくして、ウォータージェット用噴射液Wの吐出速度を速くすることができる。
【0081】
さらに、界面活性剤は、ノズル71から噴射された噴流を細粒化させ易いため、噴流の速度が空気抵抗によって低下することを抑制できる。
これにより、速い吐出速度でノズル71から噴射された噴流が、大きく速度低下することなくコンクリート構造物Cに衝突するため、界面活性剤は、コンクリート構造物Cに衝突する際の噴流の衝突エネルギーを比較例(水道水)に比べて大きくすることができる。
【0082】
加えて、表面張力の低下によってウォータージェット用噴射液Wの濡れ性が向上するため、コンクリート構造物Cの表面にウォータージェット用噴射液Wが付着した場合、実施例1及び実施例3のウォータージェット用噴射液Wは、コンクリート構造物Cの表面に形成される水膜を薄膜化することができる。このため、ノズル71から噴射されたウォータージェット用噴射液Wが水膜を介してコンクリート構造物Cに衝突した際、噴流の衝突エネルギーが、コンクリート構造物Cに形成された水膜によって吸収されることを抑制できる。
【0083】
さらにまた、界面活性剤は、様々な分野及び用途で使用されており、かつ比較的入手が容易である。このため、界面活性剤は、入手が難しい混和剤を溶解させた場合に比べて、ウォータージェット用噴射液Wの品質を安定させることができる。
【0084】
したがって、実施例1及び実施例3のウォータージェット用噴射液Wは、例えば既存のポンプユニット4を用いた場合であっても、ウォータージェット工法における加工効率を安定して向上することができる。
【0085】
また、界面活性剤は、ポリアルキレングリコール誘導体を主成分として含有するものである。
この構成によれば、ポリアルキレングリコール誘導体は、例えば粉末状であっても良好な溶解性を有するため、ウォータージェット用噴射液Wの粘度を比較例(水道水)の粘度と略同等にすることができる。
【0086】
さらに、例えば加工効率を向上する目的で粉末のポリアクリルアミド系高分子を水に溶解させたウォータージェット用噴射液の場合、ポリアクリルアミド系高分子が水に溶解し難いため、ポリアクリルアミド系高分子のダマが水溶液中に生じるとともに、水溶液の粘度が水よりも高くなる。
【0087】
これに対して、ポリアルキレングリコール誘導体は、良好な溶解性により水溶液中でダマになり難い。このため、ポリアルキレングリコール誘導体は、ウォータージェット用噴射液Wの表面張力をより均質化させるとともに、ウォータージェット用噴射液Wの粘度をより安定させることができる。
【0088】
ここで、例えば比較例(水道水)に比べて粘度が高い水溶液の場合、水溶液が床面や路面に付着すると、床面や路面が滑り易くなる。このため、粘度が高い水溶液が床面や路面に付着した場合、大量の水で床面や路面を洗浄して水溶液を除去する必要があった。
【0089】
これに対して、ポリアルキレングリコール誘導体を主成分とする界面活性剤が溶解した実施例1及び実施例3のウォータージェット用噴射液Wは、比較例(水道水)と略同等の粘度のため、床面や路面に付着した場合であっても、床面や路面が滑り易くなるのを抑えることができる。
【0090】
このため、実施例1及び実施例3のウォータージェット用噴射液Wは、床面や路面を洗浄して、飛散した水溶液やコンクリート構造物Cを加工した後の廃液を除去する手間を軽減することができる。
【0091】
また、実施例1及び実施例3のウォータージェット用噴射液Wは、比較例(水道水)の90%以下の表面張力となる所定量の界面活性剤が溶解されたものである。
この構成によれば、ノズル71から噴射された噴流の速度が確実に向上するため、界面活性剤は、コンクリート構造物Cに衝突する際の噴流の衝突エネルギーをより大きくすることができる。このため、実施例1及び実施例3のウォータージェット用噴射液Wは、ウォータージェット工法における加工効率をより向上することができる。
【0092】
また、実施例2及び実施例3のウォータージェット用噴射液Wは、水溶性の混和剤として、セメント凝結を遅延させる有機化合物である凝結遅延性有機化合物を溶解したものである。
この構成によれば、凝結遅延性有機化合物は、水への溶解性が良好で、水溶液の比重を比較例(水道水)に比べて大きくすることができる。
【0093】
このため、凝結遅延性有機化合物は、コンクリート構造物Cに衝突する際の噴流の衝突エネルギーを比較例(水道水)に比べて大きくすることができる。
これにより、実施例2及び実施例3のウォータージェット用噴射液Wは、例えば既存のポンプユニット4を用いた場合であっても、ウォータージェット工法における加工効率を向上することができる。
【0094】
加えて、実施例2及び実施例3のウォータージェット用噴射液Wは、コンクリート構造物Cを加工した後のノロに未水和セメントが含まれる場合であっても、未水和セメントが凝結する時間を、凝結遅延性有機化合物によって遅延させることができる。このため、実施例2及び実施例3のウォータージェット用噴射液Wは、床面や路面を洗浄して、床面や路面に付着したノロを含む廃液を除去する手間を軽減することができる。
【0095】
また、凝結遅延性有機化合物は、グルコン酸ナトリウム(オキシカルボン酸塩系)である。
この構成によれば、グルコン酸ナトリウム(オキシカルボン酸塩系)は、水への溶解度が高いため、水溶液の比重をより大きくすることができる。
【0096】
このため、凝結遅延性有機化合物は、コンクリート構造物Cに衝突する際の噴流の衝突エネルギーを確実に増加させることができる。これにより、実施例2及び実施例3のウォータージェット用噴射液Wは、ウォータージェット工法における加工効率をより向上することができる。
【0097】
加えて、グルコン酸ナトリウム(オキシカルボン酸塩系)は、水溶液の粘度を比較例(水道水)の粘度と略同等にすることができる。このため、実施例2及び実施例3のウォータージェット用噴射液Wは、床面や路面に付着した場合であっても、床面や路面が滑り易くなるのを抑えることができる。
【0098】
また、実施例2及び実施例3のウォータージェット用噴射液Wは、水溶液の密度が1.02g/cm以上となる所定量の凝結遅延性有機化合物が溶解されたものである。
この構成によれば、水溶液の比重を確実に大きくできるため、凝結遅延性有機化合物は、コンクリート構造物Cに衝突する際の噴流の衝突エネルギーを確実に大きくすることができる。このため、実施例2及び実施例3のウォータージェット用噴射液Wは、ウォータージェット工法における加工効率をより向上することができる。
【0099】
また、実施例2及び実施例3のウォータージェット用噴射液Wは、凝結時間が24時間以上となる所定量の凝結遅延性有機化合物が溶解されたものである。
この構成によれば、実施例2及び実施例3のウォータージェット用噴射液Wは、ノロに含まれる未水和セメントが凝結することを十分に遅延させることができる。このため、ウォータージェット用噴射液Wは、ノロの処理に必要な時間を容易に確保することができる。
【0100】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の凝結遅延性有機化合物及びオキシカルボン酸塩系は、実施形態のグルコン酸ナトリウムに対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0101】
例えば、上述した実施形態において、コンクリート構造物Cに装着された噴射ユニット7のノズル71から噴射されるウォータージェット用噴射液Wとしたが、これに限定せず、作業員が把持する使用するウォータージェットガンのノズルから噴射されるウォータージェット用噴射液であってもよい。
また、車両3に積載されたポンプユニット4としたが、これに限定せず、車両3に搭載不要のポンプユニット4であってもよい。
【0102】
また、実施例1及び実施例3のウォータージェット用噴射液において、ポリオキシアルキレン化合物を主成分とする日油株式会社製のシュドックス(登録商標)DF-40を、ポリアルキレングリコール誘導体として使用したが、これに限定しない。
【0103】
例えば、ポリアルキレングリコール誘導体を主成分とする日油株式会社製のシュドックス(登録商標)DF-40以外の界面活性剤、あるいはポリアルキレングリコール誘導体以外の適宜の成分の界面活性剤であってもよい。
また、ポリアルキレングリコール誘導体としは、例えば低級アルコールのアルキレンオキシド付加物、ポリエーテル誘導体、グリコールエーテル誘導体などであってもよい。
この場合であっても、上述した実施例1及び実施例3のウォータージェット用噴射液と同様の効果を奏することができる。
【0104】
また、実施例2及び実施例3のウォータージェット用噴射液において、グルコン酸ナトリウム(オキシカルボン酸塩系)を凝結遅延性有機化合物として溶解させたが、これに限定せず、他のオキシカルボン酸塩系を凝結遅延性有機化合物として溶解させてもよい。
あるいは、オキシカルボン酸系(例えばグルコン酸、クエン酸)、または糖類(例えばブドウ糖、ショ糖)を凝結遅延性有機化合物として溶解させてもよい。
【0105】
この構成によれば、オキシカルボン酸系、オキシカルボン酸塩系、及び糖類は、いずれも水への溶解度が高いため、水溶液の比重をより大きくすることができる。このため、オキシカルボン酸系、オキシカルボン酸塩系、及び糖類は、上述した実施例2及び実施例3のウォータージェット用噴射液と同様の効果を奏することができる。
【0106】
また、実施例2及び実施例3のウォータージェット用噴射液において、水和反応の開始時刻である凝結時間を24時間以上遅延させる量のグルコン酸ナトリウムを溶解させたが、これに限定せず、水和反応の反応時間を24時間以上遅延させる量、あるいは水和反応の開始時刻及び反応時間の双方を24時間以上遅延させる量のグルコン酸ナトリウムを溶解させてもよい。
【0107】
また、界面活性剤を溶解させた水溶液、凝結遅延性有機化合物を溶解させた水溶液、または界面活性剤及び凝結遅延性有機化合物の双方を溶解させた水溶液に、研磨材を加えてウォータージェット用噴射液としてもよい。
これにより、ウォータージェット用噴射液は、水溶性の混和剤と研磨材との相乗効果によって、コンクリート構造物をより大きく削れるため、ウォータージェット工法における加工効率をより向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本実施形態のウォータージェット用噴射液は、ウォータージェット工法におけるコンクリート構造物の加工に用いるだけでなく、コンクリート構造物の表面の洗浄、あるいはコンクリート打設後のモルタルの除去などに用いてもよい。
【符号の説明】
【0109】
71…ノズル
C…コンクリート構造物
S…供試体
W…ウォータージェット用噴射液
図1
図2
図3
図4