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特開2023-54687容量センサ装置及び容量センサ装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054687
(43)【公開日】2023-04-14
(54)【発明の名称】容量センサ装置及び容量センサ装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/26 20060101AFI20230407BHJP
   G01N 27/22 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
G01R27/26 C
G01N27/22 C
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163690
(22)【出願日】2021-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】594157142
【氏名又は名称】オー・エイチ・ティー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】安田 俊朗
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕一
(72)【発明者】
【氏名】須川 成利
(72)【発明者】
【氏名】黒田 理人
(72)【発明者】
【氏名】後藤 哲也
【テーマコード(参考)】
2G028
2G060
【Fターム(参考)】
2G028BC01
2G028CG07
2G060AA08
2G060AF10
2G060AG11
2G060GA01
2G060JA07
2G060KA09
(57)【要約】
【課題】検出サイズを大きくすることができる容量センサ装置及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】容量センサ装置1では、2次元状に配置されてそれぞれが対向した検査対象との間の静電容量を検出する複数の画素を含む複数の容量センサ素子20が、プリント配線基板10の上に間隔を空けて2次元状に複数配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元状に配置されてそれぞれが対向した検査対象との間の静電容量を検出する複数の画素を含む複数の容量センサ素子が、プリント配線基板の上に間隔を空けて2次元状に複数配置されている容量センサ装置。
【請求項2】
複数の前記容量センサ素子は、間隔を空けて正方状又は矩形状に配置されている、
請求項1に記載の容量センサ装置。
【請求項3】
複数の前記容量センサ素子は、間隔を空けて千鳥状に配置されている、請求項1に記載の容量センサ装置。
【請求項4】
前記間隔は1つの前記容量センサ素子の検出エリアのサイズに相当する間隔であり、
前記プリント配線基板に対するそれぞれの前記容量センサ素子の平面度は±5μm以下である、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の容量センサ装置。
【請求項5】
平面度が±5μm以下である定盤と、2次元状に配置されてそれぞれが対向した検査対象との間の静電容量を検出する複数の画素を含む複数の容量センサ素子との位置を合わせて複数の前記容量センサ素子の第1の面を前記定盤に配置することと、
それぞれの前記第1の面と逆側の面であるそれぞれの前記容量センサ素子の第2の面に接着剤を塗布することと、
前記定盤とプリント配線基板との位置を合わせてそれぞれの前記容量センサ素子の第2の面に前記プリント配線基板を接触させることと、
前記プリント配線基板と接触したときに前記定盤と当接するように構成された押圧部材によって前記プリント配線基板を押圧することと、
前記押圧部材によって前記プリント配線基板が押圧された状態で前記接着剤を硬化させることと、
を具備する容量センサ装置の製造方法。
【請求項6】
前記接着剤は、常温硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤の何れか又は熱硬化型接着剤と紫外線硬化型接着剤の組み合わせである、
請求項5に記載の容量センサ装置の製造方法。
【請求項7】
前記押圧部材の前記プリント配線基板と接触する面には前記プリント配線基板に対して所定の付勢力を与える付勢部が形成されている、
請求項5又は6に記載の容量センサ装置の製造方法。
【請求項8】
それぞれの前記容量センサ素子を真空吸着によって前記定盤に吸着することをさらに具備する請求項5乃至7の何れか1項に記載の容量センサ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量センサ装置及び容量センサ装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容量センサ素子は、検査対象にセンサ電極を近接させたときの検査対象とセンサ電極との間の静電容量に応じた信号から、検査対象の種々の状態を検出するセンサである。この種の容量センサ素子は、例えば回路基板に形成された導電パターンの良否判定のための検査装置に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-326424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検査装置の検査タクトは重要なスペックである。検査タクトを向上させる手段として検出サイズを大きくすることが有効であると考えられる。しかしながら、容量センサ素子はCMOSプロセスで製造されるために歩留りが生じ、また、製造装置によって製造可能なサイズの制約もある。
【0005】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであり、検出サイズを大きくすることができる容量センサ装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の容量センサ装置は、2次元状に配置されてそれぞれが対向した検査対象との間の静電容量を検出する複数の画素を含む複数の容量センサ素子が、プリント配線基板の上に間隔を空けて2次元状に複数配置されている。
【0007】
本発明の第2の態様の容量センサ装置の製造方法は、平面度が±5μm以下である定盤と、2次元状に配置されてそれぞれが対向した検査対象との間の静電容量を検出する複数の画素を含む複数の容量センサ素子との位置を合わせて複数の容量センサ素子の第1の面を定盤に配置することと、それぞれの第1の面と逆側の面であるそれぞれの容量センサ素子の第2の面に接着剤を塗布することと、定盤とプリント配線基板との位置を合わせてそれぞれの容量センサ素子の第2の面にプリント配線基板を接触させることと、プリント配線基板と接触したときに定盤と当接するように構成された押圧部材によってプリント配線基板を押圧することと、押圧部材によってプリント配線基板が押圧された状態で接着剤を硬化させることとを具備する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、検出サイズを大きくすることができる容量センサ装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る容量センサ装置について示す図である。
図2図2は、画素について説明するための模式図である。
図3図3は、容量センサ装置を含む検査装置の概念的な構成を示す図である。
図4図4は、容量センサ装置の製造装置の一例の構成を示す図である。
図5図5は、容量センサ装置の製造方法を示すフローチャートである。
図6図6は、変形例に係る容量センサ装置について示す図である。
図7図7は、変形例に係る容量センサ装置について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。図1は、一実施形態に係る容量センサ装置について示す図である。容量センサ装置1は、検査対象と近接され、検査対象との間の静電容量に応じた信号を出力するように構成されたセンサ装置である。容量センサ装置1は、プリント配線基板10に容量センサ素子20が間隔を空けて2次元状に配置、すなわちタイリングされることで構成されている。プリント配線基板10は、セラミック基板、シリコン基板等の平面状の基板であってよい。容量センサ素子20は、2次元状に配置されてそれぞれが対向した検査対象との間の静電容量を検出する複数の画素21からなるセンサチップである。つまり、容量センサ素子20は、素子単体で面での静電容量の検出をすることができる。
【0011】
画素21は、センサ電極22と、画素回路23とを有している。センサ電極22は、検査対象との間の静電容量に応じた電圧を出力するように構成された例えば正方状の電極である。センサ電極22によって検出エリア22aが構成されている。画素回路23は、センサ電極22において発生した電圧信号の読み出しを行い、画素回路23は、検出エリア22aの外側に形成された周辺回路に接続される。周辺回路は、それぞれの画素回路23からの出力を束ねる回路等であり、それぞれの画素回路23の出力電圧信号の読み出し、ノイズ除去、増幅といった後段の判定処理のための前処理等をする回路である。周辺回路とプリント配線基板10との接続は、例えばワイヤボンディング、バンプボンディング、フリップチップボンディングといった種々の手法で行われ得る。
【0012】
例えば、図1の例では、8個の容量センサ素子20が矩形状に配置されている。ここで、1つの容量センサ素子20の幅がW、容量センサ素子20の高さがH、検出エリア22aの幅がPW、検出エリア22aの高さがPH、検出エリア22aの間隔がPI、容量センサ素子20の配置の間隔がCIであるとき、例えば、検出エリア22aの間隔PIが検出エリア22aのサイズ、すなわち検出エリア22aの幅PW及び高さPHと等しくなるように、容量センサ素子20の配置の間隔が決められてよい。実際には、容量センサ素子20の配置の間隔は容量センサ素子20の検出エリアのサイズ以下であることが好ましい。また、例えばセンサ電極22が正方状でなく、検出エリア22aの幅PWと高さPHとが等しくない場合には、検出エリアの間隔PIは幅方向と高さ方向とで異なっていてもよい。容量センサ素子20が配置されていない区間では信号が検出できない。信号が検出できなかった区間で信号を得るためには、実際にその場所まで容量センサ素子20を移動させる必要がある。容量センサ素子20の配置の間隔が容量センサ素子の検出エリアのサイズ以下であることにより、検出エリアのサイズ相当分だけ容量センサ装置1を移動させることで信号が検出できなかった区間の場所に容量センサ素子20を位置させることができる。
【0013】
図2は、画素21について説明するための模式図である。前述したように、画素21は、センサ電極22と、画素回路23とを有している。センサ電極22は、検査対象Tとの間の静電容量に応じた電圧を出力するように構成されている。例えば、検査対象Tが回路基板の導電パターンであるとき、この導電パターンには検査用の信号Vinが印加される。この状態でセンサ電極22が導電パターンに近づけられると、センサ電極22と導電パターンとの間でキャパシタが形成される。このとき、センサ電極22は、導電パターンとの静電容量に応じた電圧を画素回路23に出力する。ここで、それぞれのセンサ電極22の表面は保護膜によって覆われていてもよい。センサ電極22の表面が保護膜によって覆われていることにより、センサ電極22が直接的に検査対象Tに接触してしまうことによって損傷又は摩耗したり、汚れたりするのが防止され得る。
【0014】
図2に示すような画素21において、例えば、1つのセンサ電極22と検査対象Tとの距離をd、このセンサ電極22の検査対象Tと向き合う面の面積をS、このセンサ電極22と検査対象Tとの間に介在する媒質、例えば空気の誘電率εとしたとき、キャパシタの静電容量Csは、Cs=εS/dである。つまり、静電容量Csは、距離dによって変化する。例えば、回路基板における導電パターンが断線していたり、短絡していたりといった故障箇所を有する場合、この故障箇所における距離dは本来の想定される距離の値とは異なっている。このため、故障箇所の静電容量Csは本来の想定される値から変化する。そして、この静電容量Csの変化に応じてセンサ電極22には電圧が発生する。この電圧の変化から例えば回路基板の導電パターンにおける故障箇所の有無が判定され得る。
【0015】
ここで、図1では、8個の容量センサ素子20が配置されている。容量センサ素子20の数は、8個に限定されるものではない。例えば、2個、4個、6個といった容量センサ素子20が矩形状に配置されていてもよいし、10個以上の容量センサ素子20が配置されていてもよい。また、容量センサ素子20の数は、必ずしも偶数でなく、奇数であってもよい。さらには、図1では、2つの行に4個ずつの容量センサ素子20が配置されている。容量センサ素子20の行数は、2行に限るものではない。
【0016】
図3は、容量センサ装置1を含む検査装置の概念的な構成を示す図である。検査装置は、容量センサ装置1と、ステージ2とを有している。また、検査装置は、給電回路3と、駆動機構4と、メカ制御回路5と、計測回路6と、判定回路7と、表示装置8と、制御回路9とを含む信号処理装置を有している。ここで、メカ制御回路5と、計測回路6と、判定回路7と、制御回路9とは、必ずしもハードウェアで構成されている必要はない。メカ制御回路5と、計測回路6と、判定回路7と、制御回路9と同等の動作がCPU等によって実行されるソフトウェアによって実現されてもよい。
【0017】
容量センサ装置1は、メカ制御回路5の制御の下、検査対象Tである例えば回路基板の導電パターンと対向する位置に配置される。そして、容量センサ装置1のそれぞれの容量センサ素子20は、検査対象Tである導電パターンとの静電容量に応じた電圧信号を計測回路6に出力する。
【0018】
ステージ2は、検査対象Tを載置するためのステージである。ステージ2は、固定のステージであってもよいし、可動のステージであってもよい。可動なステージであれば、検査対象Tの交換等が自動的に行われるようにも構成され得る。
【0019】
給電回路3は、例えば検査対象Tとしての導電パターンに検査信号Vinを印加するための電源である。検査信号は、例えば所定の定電圧である。給電回路3によって導電パターンに検査信号が印加されることにより、それぞれの容量センサ素子20の画素21は、導電パターンとの静電容量に応じた電圧信号を出力する。
【0020】
駆動機構4は、容量センサ装置1を検査対象Tとしての導電パターンと平行な面方向であるXY方向及び導電パターンと垂直な方向であるZ方向に移動させるように構成されている。駆動機構4は、例えばZ移動機構と、Y移動機構と、支持部と、X移動機構とを有している。Z移動機構は、Z方向に延びるように形成され、Y移動機構をZ方向に移動させるアクチュエータを備えた機構である。Y移動機構は、Y方向に延びるように形成され、支持部をY方向に移動させるアクチュエータを備えた機構である。支持部は、X移動機構を支持している部材である。X移動機構は、X方向に延びるように形成され、容量センサ装置1をX方向に移動させるアクチュエータを備えた機構である。駆動機構4の構成は、ここで説明した構成に限るものではない。駆動機構4の構成は、検査対象Tに応じて決定されてよい。
【0021】
メカ制御回路5は、容量センサ装置1を検査対象Tの上の検査位置に移動させるように駆動機構4を制御する。例えば、メカ制御回路5は、制御回路9によって指定される座標に容量センサ装置1が移動するように駆動機構4に指令を出す。
【0022】
計測回路6は、容量センサ装置1のそれぞれの容量センサ素子20から出力される電圧信号に基づき計測のための処理を行う。例えば、計測回路6は、検査画像を生成する。検査画像は、それぞれの容量センサ素子20の各画素21の出力に基づいて生成される値を画素値とする画像である。例えば、計測回路6は、それぞれの容量センサ素子20から出力される電圧信号を多値化し、多値化した信号に画素の座標と輝度の値を割り当てることで検査画像を生成する。図1で示したように、容量センサ素子20の間の区間では電圧信号が検出されないため、この区間については画像に抜けが生じる。計測回路6は、制御回路9によって指定される座標に従って多値化した信号に割り当てる画素の座標の値を決める。
【0023】
判定回路7は、検査画像と基準画像とを比較することで、例えば導電パターンにおける断線箇所、短絡箇所といった不良箇所の有無を判定する。基準画像は、例えば不良箇所のない導電パターンの画像である。この場合、検査画像と基準画像との間の画素の値の差のある箇所が不良箇所になる。
【0024】
表示装置8は、液晶ディスプレイ等の表示装置である。表示装置8は、例えば判定回路7による判定結果を表示する。判定結果の表示は、検査画像と基準画像との差の箇所が強調された画像の表示である。表示装置8は、信号処理装置とは別体で設けられていてもよい。
【0025】
制御回路9は、CPU等のプロセッサ、ASIC、FPGA等であり、信号処理装置の全体の制御をする。例えば、制御回路9は、容量センサ装置1の動作の制御のための信号を出力する。また、制御回路9は、メカ制御回路5及び計測回路6に容量センサ装置1の座標を指定するための信号を出力する。
【0026】
次に、実施形態に係る容量センサ装置1の製造方法を説明する。前述したように、容量センサ装置1のそれぞれの容量センサ素子20を構成する画素21は、検査対象Tとの距離に応じた電圧信号を出力する。したがって、容量センサ装置1の検出エリアが平面でないと、仮に平面の検査対象Tに対して容量センサ素子20が平行に配置されたとしてもそれぞれの画素21と検査対象Tの距離は一様にはならずにばらつきが生じる。このため、1つの容量センサ素子20は可能な限り平面に配置される必要がある。例えば、1つの容量センサ素子20を構成する画素21の平面度は、所定値、例えば予め定めた基準の平面に対して±5μm以下である必要がある。1つの容量センサ素子20の中での画素21の平面度の条件は、例えばCMOSプロセスにおける製造条件を同一とすることによって達成し得る。
【0027】
一方、実施形態のように複数の容量センサ素子20がプリント配線基板10にタイリングされる場合、容量センサ素子20の間の画素21の平面度も所定値、例えば5μm以下である必要がある。ここで、容量センサ素子20を1つずつプリント配線基板10にタイリングしようとした場合、個々の容量センサ素子の平面度が±5μm以下であったとしてもタイリングの際に容量センサ素子20の間で平面度がばらついてしまう。このばらつきの大きさは±30μm程になり、単体の容量センサ素子20の中での平面度のばらつきよりもはるかに大きい。つまり、容量センサ素子20を1つずつプリント配線基板10にタイリングする手法では、容量センサ装置として要求される平面度の条件を満たすことは困難である。
【0028】
そこで、実施形態では、容量センサ素子20が1つずつタイリングされるのではなく、同一の製造条件でまとめてタイリングされる。これにより、容量センサ素子20の間での平面度のばらつきが抑えられる。
【0029】
図4は、容量センサ装置1の製造装置の一例の構成を示す図である。図4に示す製造装置は、複数の容量センサ素子20をプリント配線基板10にまとめてタイリングする装置である。それぞれの容量センサ素子20は、予め平面度が±5μm以下となるように製造されているものとする。また、それぞれの容量センサ素子20にはアライメントマークが形成されているものとする。同様に、プリント配線基板10にもアライメントマークが形成されているものとする。
【0030】
製造装置は、定盤101と、真空吸着機構102と、真空ポンプ103と、押圧部材104とを有している。
【0031】
定盤101は、容量センサ素子20が配置される板状部材である。定盤101の容量センサ素子20と接する面の平面度は、少なくとも±5μm以下であり、好ましくは±5μmよりも小さい。定盤101においてそれぞれの容量センサ素子20が配置されるべき場所の例えば中心位置には、貫通孔101aが形成されている。また、定盤101においてそれぞれの容量センサ素子20が配置されるべき場所の近傍にはアライメントマークが形成されている。さらに、定盤101にはプリント配線基板10の位置合わせのためのアライメントマークも形成されている。
【0032】
真空吸着機構102は、例えば定盤101の容量センサ素子20と接する面と逆側の面に取り付けられる機構であって、定盤101の容量センサ素子20と接する面と逆側の面を気密にする。真空吸着機構102は、真空ポンプ103に取り付けられている。真空ポンプ103は、真空吸着機構102を介して貫通孔101aから空気を排出させることによって真空吸着機構102の内部及び貫通孔101aを真空状態にし、これによって定盤101に配置される容量センサ素子20を定盤101に吸着させる。
【0033】
押圧部材104は、定盤101の容量センサ素子20と接する面の側から定盤101を押圧する部材である。押圧部材104は、接着剤11が塗布された容量センサ素子20に対して位置合わせがされた状態のプリント配線基板10を押圧する。押圧部材104のプリント配線基板10と接する面には付勢部105が形成されている。また、押圧部材104のプリント配線基板10と接する面の周囲には、押圧時に定盤101に当接するように突出した当接部104aが形成されている。
【0034】
付勢部105は、プリント配線基板10との接触時にプリント配線基板10に対して付勢力を与えることで押圧部材104からプリント配線基板10に与えられる荷重を一様にする。付勢部105は、例えば圧縮ばねといった付勢部材、空気圧ピストンといった機構等によって構成され得る。付勢部105の構成は、特定の構成に限定されるものではない。
【0035】
図5は、容量センサ装置1の製造方法を示すフローチャートである。ステップS1において、定盤101とそれぞれの容量センサ素子20のチップとに形成されたアライメントマークを例えばカメラで認識することによって、定盤101とそれぞれの容量センサ素子20のチップとが位置合わせされる。そして、それぞれの位置合わせされた状態の容量センサ素子20のチップは、検出エリアが定盤101を向くように定盤101の上に配置される。
【0036】
ステップS102において、真空ポンプ103によってそれぞれの容量センサ素子20が定盤101に真空吸着される。これにより、容量センサ素子20は、定盤101に固定される。
【0037】
ステップS3において、それぞれの容量センサ素子20の裏面に接着剤11が塗布される。接着剤11は、常温硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤の何れか又は熱硬化型接着剤と紫外線硬化型接着剤の組み合わせの中から選択され得る。
【0038】
ステップS4において、定盤101とプリント配線基板10とに形成されたアライメントマークを例えばカメラで認識することによって定盤101とプリント配線基板10とが位置合わせされる。そして、接着剤11が塗布されたそれぞれの容量センサ素子20の上にプリント配線基板10が配置される。
【0039】
ステップS5において、押圧部材104によってプリント配線基板10が押圧されながら、接着剤11を硬化するための処理が実施される。これにより、容量センサ装置1が製造される。接着剤11を硬化するための処理として、例えば、接着剤11が熱硬化型接着剤であれば押圧部材104による押圧に加えて接着剤11の加熱が実施される。また、接着剤11が紫外線硬化型接着剤であれば押圧部材104による押圧に加えて接着剤11への紫外線の照射が実施される。一方、接着剤11が常温硬化型接着剤であれば加熱及び紫外線の照射は不要である。
【0040】
以上説明したように実施形態によれば、2次元状に配置されてそれぞれが対向した検査対象との間の静電容量を検出する複数の画素を含む複数の容量センサ素子がプリント配線基板の上に間隔を空けて2次元状に配置されることで容量センサ装置が構成されている。これにより、それぞれの容量センサ素子のチップサイズを必要以上に大きくする必要はない。したがって、歩留りや製造装置による容量センサ素子のサイズ的な制約によらずに検出サイズを大きくすることができる。
【0041】
ここで、複数の容量センサ素子をプリント配線基板にタイリングする場合、平面度をある範囲内に抑えることが単体の容量センサ素子の場合よりも難しくなる。そこで、実施形態では複数の容量センサ素子を同時にタイリングすることによって平面度のばらつきを小さくすることができる。また、製造の際には真空吸着によって容量センサ素子20が平らな盤面に固定された状態でプリント配線基板に荷重をかけつつ複数の容量センサ素子とプリント配線基板とが接着される。さらに、押圧の際には付勢部材によってプリント配線基板に付勢力が与えられつつ、押圧部に形成された当接部が定盤に当接することによって必要以上の荷重がプリント配線基板に加えられることが抑制される。これらによっても平面度のばらつきを小さくすることができる。結果として、複数の容量センサ素子をタイリングする場合であっても容量センサ装置1として要求される平面度の条件が満足される。
【0042】
また、実施形態では、定盤、容量センサ素子、プリント配線基板のそれぞれに形成されたアライメントマークによって位置合わせが行われる。つまり、実施形態では定盤と容量センサ素子とが位置合わせされた上で容量センサ素子が定盤に固定され、さらに定盤とプリント配線基板とが位置合わせされた上で容量センサ素子がプリント配線基板に接着される。このような2段階の位置合わせにより、これにより、プリント配線基板に対してそれぞれの容量センサ素子が正しい位置でかつて正しい向きで配置され得る。これによっても計測の際の誤差の抑制につながる。
【0043】
[変形例]
実施形態の変形例を説明する。実施形態では容量センサ装置の製造方法によって容量センサ装置に必要とされる平面度の条件が達成される。これに対し、例えば容量センサ装置を構成する3つ以上の容量センサ素子と検査対象との距離が計測され、この距離の計測結果に従って容量センサ装置と検査対象とが平行となるように容量センサ装置又は検査対象の姿勢が制御されてもよい。距離の計測対象となる3つ以上の容量センサ素子の間の距離は可能な限り離れていることが望ましい。例えば、図1では、左上端、左下端、右下端の容量センサ素子が距離の計測対象として選択されてよい。また、容量センサ装置の姿勢制御の手法としては、例えばエア浮上ユニットによって容量センサ装置を浮上させる手法が考えられ得る。なお、距離の計測は、例えば容量センサ装置1のプリント配線基板10に埋め込まれたフォトインタラプタ等の距離センサを用いて行われ得る。
【0044】
また、実施形態では、容量センサ素子20は矩形状に配置されるとされている。これに対し、容量センサ素子20は、必ずしも矩形状に配置されなくてよい。例えば、図6に示すように、9個の容量センサ素子20が正方状に配置されてもよい。また、図7に示すように、11個の容量センサ素子20が千鳥状に配置されてもよい。正方状及び千鳥状の配置においても容量センサ素子20の数は特定の数に限定されない。
【0045】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0046】
1 容量センサ装置、2 ステージ、3 給電回路、4 駆動機構、5 メカ制御回路、6 計測回路、7 判定回路、8 表示装置、9 制御回路、10 プリント配線基板、11 接着剤、20 容量センサ素子、21 画素、22 センサ電極、23 画素回路、101 定盤、101a 貫通孔、102 真空吸着機構、103 真空ポンプ、104 押圧部材、104a 当接部、105 付勢部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-11-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元状に配置されてそれぞれが対向した検査対象との間の静電容量をそれぞれ検出する複数の画素を含む複数の容量センサ素子が、プリント配線基板の上に間隔を空けて2次元状に複数配置されている容量センサ装置。
【請求項2】
複数の前記容量センサ素子は、間隔を空けて正方状又は矩形状に配置されている、
請求項1に記載の容量センサ装置。
【請求項3】
複数の前記容量センサ素子は、間隔を空けて千鳥状に配置されている、請求項1に記載の容量センサ装置。
【請求項4】
前記間隔は1つの前記容量センサ素子の検出エリアのサイズに相当する間隔であり、
前記プリント配線基板に対するそれぞれの前記容量センサ素子の平面度は±5μm以下である、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の容量センサ装置。
【請求項5】
平面度が±5μm以下である定盤と、2次元状に配置されてそれぞれが対向した検査対象との間の静電容量をそれぞれ検出する複数の画素を含む複数の容量センサ素子との位置を合わせて複数の前記容量センサ素子の第1の面を前記定盤に配置することと、
それぞれの前記第1の面と逆側の面であるそれぞれの前記容量センサ素子の第2の面に接着剤を塗布することと、
前記定盤とプリント配線基板との位置を合わせてそれぞれの前記容量センサ素子の第2の面に前記プリント配線基板を接触させることと、
前記プリント配線基板と接触したときに前記定盤と当接するように構成された押圧部材によって前記プリント配線基板を押圧することと、
前記押圧部材によって前記プリント配線基板が押圧された状態で前記接着剤を硬化させることと、
を具備する容量センサ装置の製造方法。
【請求項6】
前記接着剤は、常温硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤の何れか又は熱硬化型接着剤と紫外線硬化型接着剤の組み合わせである、
請求項5に記載の容量センサ装置の製造方法。
【請求項7】
前記押圧部材の前記プリント配線基板と接触する面には前記プリント配線基板に対して所定の付勢力を与える付勢部が形成されている、
請求項5又は6に記載の容量センサ装置の製造方法。
【請求項8】
それぞれの前記容量センサ素子を真空吸着によって前記定盤に吸着することをさらに具備する請求項5乃至7の何れか1項に記載の容量センサ装置の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の第1の態様の容量センサ装置は、2次元状に配置されてそれぞれが対向した検査対象との間の静電容量をそれぞれ検出する複数の画素を含む複数の容量センサ素子が、プリント配線基板の上に間隔を空けて2次元状に複数配置されている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の第2の態様の容量センサ装置の製造方法は、平面度が±5μm以下である定盤と、2次元状に配置されてそれぞれが対向した検査対象との間の静電容量をそれぞれ検出する複数の画素を含む複数の容量センサ素子との位置を合わせて複数の容量センサ素子の第1の面を定盤に配置することと、それぞれの第1の面と逆側の面であるそれぞれの容量センサ素子の第2の面に接着剤を塗布することと、定盤とプリント配線基板との位置を合わせてそれぞれの容量センサ素子の第2の面にプリント配線基板を接触させることと、プリント配線基板と接触したときに定盤と当接するように構成された押圧部材によってプリント配線基板を押圧することと、押圧部材によってプリント配線基板が押圧された状態で接着剤を硬化させることとを具備する。