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  • 特開-データ処理装置およびデータ処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054690
(43)【公開日】2023-04-14
(54)【発明の名称】データ処理装置およびデータ処理方法
(51)【国際特許分類】
   G09B 29/00 20060101AFI20230407BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20230407BHJP
   G01C 21/20 20060101ALI20230407BHJP
   G08G 5/04 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
G09B29/00 Z
G01M99/00 Z
G01C21/20
G08G5/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163693
(22)【出願日】2021-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000102728
【氏名又は名称】株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】紙本 斉士
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 亮平
(72)【発明者】
【氏名】黛 知也
(72)【発明者】
【氏名】吉羽 進
(72)【発明者】
【氏名】武井 紹彦
(72)【発明者】
【氏名】秋本 了
(72)【発明者】
【氏名】丸山 明彦
(72)【発明者】
【氏名】須田 康介
(72)【発明者】
【氏名】大石 怜奈
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 睦実
(72)【発明者】
【氏名】藤田 将史
【テーマコード(参考)】
2C032
2F129
2G024
5H181
【Fターム(参考)】
2C032HB07
2C032HB11
2F129AA11
2F129DD40
2F129DD53
2F129DD62
2F129EE52
2F129EE95
2G024AD34
2G024BA01
2G024CA01
2G024CA30
2G024FA01
5H181AA26
5H181CC03
5H181CC14
5H181LL01
(57)【要約】
【課題】ドローン等の無人航空機の飛行計画作成および空域管理のためのデータ処理装置およびデータ処理方法を提供する。
【解決手段】データ処理装置は、鉄塔および送電線に関する設備情報を記憶する設備情報記憶部と、鉄塔および鉄塔の周囲の物体を3次元計測して取得した点群データを記憶する点群データ記憶部と、設備情報に基づき、点群データから鉄塔を特定し、鉄塔に関する所定の座標を採録する座標採録部と、設備情報と点群データとを照合し、照合の結果に応じて、新たな設備情報を作成する照合部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ処理装置であって、
鉄塔および送電線に関する設備情報を記憶する設備情報記憶部と、
前記鉄塔および前記鉄塔の周囲の物体を3次元計測して取得した点群データを記憶する点群データ記憶部と、
前記設備情報に基づき、前記点群データから前記鉄塔を特定し、前記鉄塔に関する所定の座標を採録する座標採録部と、
前記設備情報と前記点群データとを照合し、照合の結果に応じて、新たな設備情報を作成する照合部と、
を有するデータ処理装置。
【請求項2】
前記設備情報は、前記鉄塔の緯度および経度、鉄塔高、前記鉄塔の海抜高ならびに前記鉄塔の水平角度を含む、
請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記点群データは、前記鉄塔の中心座標、前記鉄塔の頂部座標、前記鉄塔の中心地盤座標および前記鉄塔の脚部座標を含む、
請求項1または2に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記鉄塔の位置情報に関しては、前記照合部は、前記点群データに基づいて前記新たな設備情報を作成し、
前記鉄塔の位置情報以外に関しては、前記照合部は、前記設備情報と前記点群データとの誤差が所定値未満であれば、前記点群データに基づいて前記新たな設備情報を作成する、
請求項1から3のいずれかに記載のデータ処理装置。
【請求項5】
データ処理装置を用いたデータ処理方法であって、
前記データ処理装置の座標採録部により、鉄塔および送電線に関する設備情報を取り込み、
前記座標採録部により、前記鉄塔および前記鉄塔の周囲の物体を3次元計測して取得した点群データを取り込み、
前記座標採録部により、前記設備情報に基づき、前記点群データから前記鉄塔を特定し、前記鉄塔に関する所定の座標を採録し、
前記データ処理装置の照合部により、前記設備情報と前記点群データとを照合し、照合の結果に応じて、新たな設備情報を作成する、
データ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドローン等の無人航空機の飛行計画作成および空域管理のためのデータ処理装置およびデータ処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ドローンは、宅配サービス、農薬や肥料の散布、災害調査、報道等さまざまな分野に応用されている。
ドローンを飛行させるためには事前にドローンの飛行ルートを作成する必要がある。例えば特許文献1には、地図を参照してドローンの飛行ルートを決定および設定することを可能にするシステムが提案されている。
【0003】
国土地理院地図には、鉄塔や樹木等の障害物情報がないため、従来、出願人は、国土地理院地図から地盤標高データを取得し、そのデータに出願人が保有する鉄塔および送電線等に関する設備情報を加えて、ドローンの飛行計画を作成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-117018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、国土地理院地図の地盤標高データは、誤差が最大5m程度存在する。また、出願人が保有する鉄塔および送電線等に関する設備情報は、手作業により入力されているため、データが誤っているおそれがある。また、設備情報のうち、鉄塔の緯度および経度の位置情報に関しては、小数点以下何桁まで入力するかに依存して誤差が数mに及ぶことがある。さらに、設備施工精度誤差は、最大で数cmである。
従来のように、国土地理院地図の地盤標高データと設備情報とに基づいて、ドローン飛行のための空域を設定すると、その空域に誤差が生ずるおそれがあった。そこで、本発明は、安心安全なドローンの飛行計画作成および空域管理のための正確な設備情報を作成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のデータ処理装置は、
鉄塔および送電線に関する設備情報を記憶する設備情報記憶部と、
前記鉄塔および前記鉄塔の周囲の物体を3次元計測して取得した点群データを記憶する点群データ記憶部と、
前記設備情報に基づき、前記点群データから前記鉄塔を特定し、前記鉄塔に関する所定の座標を採録する座標採録部と、
前記設備情報と前記点群データとを照合し、照合の結果に応じて、新たな設備情報を作成する照合部と、
を有する。
【0007】
本発明のデータ処理装置では、
前記設備情報は、前記鉄塔の緯度および経度、鉄塔高、前記鉄塔の海抜高ならびに前記鉄塔の水平角度を含むことが好ましい。
【0008】
本発明のデータ処理装置では、
前記点群データは、前記鉄塔の中心座標、前記鉄塔の頂部座標、前記鉄塔の中心地盤座標および前記鉄塔の脚部座標を含むことが好ましい。
【0009】
本発明のデータ処理装置では、
前記鉄塔の位置情報に関しては、前記照合部は、前記点群データに基づいて前記新たな設備情報を作成し、
前記鉄塔の位置情報以外に関しては、前記照合部は、前記設備情報と前記点群データとの誤差が所定値未満であれば、前記点群データに基づいて前記新たな設備情報を作成することが好ましい。
【0010】
本発明のデータ処理装置を用いたデータ処理方法では、
前記データ処理装置の座標採録部により、鉄塔および送電線に関する設備情報を取り込み、
前記座標採録部により、前記鉄塔および前記鉄塔の周囲の物体を3次元計測して取得した点群データを取り込み、
前記座標採録部により、前記設備情報に基づき、前記点群データから前記鉄塔を特定し、前記鉄塔に関する所定の座標を採録し、
前記データ処理装置の照合部により、前記設備情報と前記点群データとを照合し、照合の結果に応じて、新たな設備情報を作成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、安心安全なドローンの飛行計画作成および空域管理のための正確な設備情報を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のデータ処理装置の構成を示すブロック図である。
図2】(a)は点群データの計測方法を示し、(b)は点群データのイメージを示す。
図3】点群データから鉄塔および送電線に関する所定の座標を採録する方法を示す。
図4】本発明のデータ処理方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、さまざまな変形が可能である。
【0014】
図1は、本発明のデータ処理装置の構成を示すブロック図である。
データ処理装置10は、設備情報記憶部1と、点群データ記憶部2と、設備情報管理記憶部3と、座標採録部4と、照合部5と、を有する。
データ処理装置10は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)、サーバ、タブレット端末およびスマートフォン等の情報処理装置によって実現することができる。データ処理装置10は、ハードウェア資源として、CPU、メモリ、入出力装置および通信インタフェース等を有し、ソフトウェアと協働して動作する。
【0015】
電力会社である出願人は、上述したように、自身の所有物である鉄塔および送電線等に関する設備情報を保有している。設備情報記憶部1は、この設備情報を記憶している。
設備情報は、送電線名称、線路電圧、設備所管箇所組織、支持物名称、集合設備分類(単、併架)、鉄塔の緯度および経度、鉄塔高、鉄塔の海抜高、鉄塔の腕下高、鉄塔の水平角度、鉄塔繋がり先送電線名称、鉄塔繋がり先送電線支持物番号等を含む。また、設備情報は、この他、任意の情報を含むことができる。
【0016】
点群データ記憶部2は、鉄塔および鉄塔の周囲の物体を3次元計測して取得した点群データを記憶している。
図2(a)は点群データの計測方法を示し、図2(b)は点群データのイメージを示す。
図2(a)に示すように、例えば、高度400m、速度70km/hで飛行するヘリコプターH等からレーザパルスを照射し、反射波を位置座標として3次元計測することにより、図2(b)に示すように、鉄塔および鉄塔の周囲の物体(送電線、樹木等)の点群データを取得する。
点群データは、鉄塔を中心に左右に230mの範囲に及ぶ。なお、現在は、鉄塔を中心に左右に100mの範囲の点群データは、送電線の保守等のために利用されているが、その他の範囲の点群データは利用されていない。本発明では、ドローンの飛行計画作成および空域管理のために、鉄塔を中心に左右に230mの範囲に及ぶ全点群データを利用する。
なお、本発明では、既存の点群データを利用することを例に説明するが、新たに点群データを取得することもできる。また、点群データの数値範囲は一例である。
【0017】
図3は、点群データから鉄塔および送電線に関する所定の座標を採録する方法を示す。
座標採録部4は、鉄塔の緯度および経度に関する設備情報に基づき、点群データから当該鉄塔を特定し、当該鉄塔に関する所定の座標を採録する。具体的には、座標採録部4は、点群データから、鉄塔の最上端点である鉄塔頂部の座標A(x1、y1、z1)、鉄塔の最外側点である腕金先端の座標B(x2、y2、z2)、C(x3、y3、z3)および同一高さの鉄塔の4脚座標である鉄塔脚部座標D(x4、y4、z4)、E(x5、y5、z5)、F(x6、y6、z6)、G(x7、y7、z7)を採録する。
なお、図示を省略するが、座標採録部4は、鉄塔の中心座標および鉄塔の中心地盤座標である海抜高も採録することができる。座標採録部4は、この他、任意の座標を採録することができる。座標採録部4は、採録した座標から、鉄塔の緯度および経度、鉄塔高、腕金幅、根開き等の航路情報を定義する。
また、座標採録部4は、鉄塔と鉄塔との接続に関する設備情報に基づき、点群データの送電線の経路座標を求めることもできる。
座標の採録は、手動で行ってもよいし、ソフトウェアにより自動で行ってもよい。
【0018】
照合部5は、設備情報と点群データとを照合する。
例えば、照合部5は、設備情報の鉄塔の緯度および経度と、点群データの鉄塔の中心座標と、を照合する。
上述したように、設備情報は、手入力のため誤っているおそれがあり、特に、鉄塔の緯度および経度の位置情報に関しては誤差が大きいことがある。そこで、位置情報に関しては、照合部5は、照合の結果、点群データを正として採録し、点群データに基づいて新たな設備情報を作成する。
【0019】
また、照合部5は、設備情報の鉄塔高と点群データの鉄塔頂部の座標A(x1、y1、z1)とを照合し、設備情報の鉄塔の海抜高と点群データの鉄塔の中心地盤座標とを照合し、設備情報の鉄塔の水平角度と点群データの鉄塔の脚部座標D(x4、y4、z4)、E(x5、y5、z5)、F(x6、y6、z6)、G(x7、y7、z7)とを照合する。照合部5は、この他、任意の設備情報と点群データとを照合することができる。
これらの位置情報以外に関しては、照合部5は、照合の結果、設備情報と点群データとの誤差が所定値、例えば0.3m未満であれば、点群データを正として採録し、点群データに基づいて新たな設備情報を作成する。一方、誤差が0.3m以上であれば、設備設計図面を確認後、現地確認等を行った上で判断する。
なお、0.3mという数値は一例であり、基準は、計測制度および施工精度を考慮して適宜変更可能である。
【0020】
新たな設備情報は、設備情報管理記憶部3に保存される。なお、必要により、設備情報記憶部1に保存されている設備情報が更新されてもよい。
また、照合部5は、鉄塔と鉄塔との接続に関する設備情報と点群データの送電線の経路座標とを照合することにより、新たな設備情報に誤りがないことを確認することができる。
【0021】
このように、本発明では、設備情報と点群データとを照合することにより、安心安全なドローンの飛行計画作成および空域管理のための正確な設備情報を作成することができる。
【0022】
図4は、本発明のデータ処理方法のフローチャートを示す。
ステップS1において、座標採録部4は、設備情報を取り込む。
ステップS2において、座標採録部4は、点群データを取り込む。
ステップS3において、座標採録部4は、鉄塔の緯度および経度に関する設備情報に基づき、点群データから当該鉄塔を特定し、当該鉄塔に関する所定の座標を採録する。
ここで、座標採録部4は、データ処理装置10の航空写真記憶部(図示せず)から航空写真を取り込み、航空写真を画像認識させることにより、鉄塔周辺の地表障害物や樹木の植生を識別することもできる。
【0023】
ステップS4において、照合部5は、設備情報と点群データとを照合する。
ステップS5において、照合したデータが鉄塔の位置情報の場合(YES)、ステップS6において、照合部5は、点群データを正として採録する。
一方、ステップS5において、照合したデータが鉄塔の位置情報以外の場合(NO)、ステップS7に進む。
ステップS7において、設備情報と点群データとの誤差が0.3m未満の場合(YES)、ステップS6に進む。
一方、ステップS7において、設備情報と点群データとの誤差が0.3m以上の場合(NO)、ステップS8において、設備設計図面を確認後、現地確認等を行った上で判断する。
ステップS9において、照合部5は、正として採録した点群データに基づき、新たな設備情報を作成し、設備情報管理記憶部3に保存する。
【0024】
点群データは、以下のように利用することもできる。
例えば、点群データの時間経過に伴う変化を調べることにより、設備の健全性を確認することができる。具体的には、台風や豪雨後に、鉄塔周辺の地表面の土砂等が大きく流出することがあるが、台風や豪雨の前後の点群データを比較することにより、土砂の流出量を定量的に把握することができる。これにより、設備の健全性を定量的に評価することができ、迅速な1次対応が可能となる。
【0025】
また、設備情報は、設備設計図面に基づくものであるが、実際の設備は、時間経過に伴い変化する場合がある。例えば、鉄塔は、わずかではあっても徐々に傾くおそれがある。そこで、現在は、電気事業法(電気設備の技術基準)に基づく規制値を満たしていることを確認するために、現地において測量等を行い、実態を把握している。しかしながら、点群データを用いることにより、図面に現れない設備の実際の位置情報を把握することができ、個別測量確認が不要となる。
【符号の説明】
【0026】
1…設備情報記憶部、2…点群データ記憶部、3…設備情報管理記憶部、4…座標採録部、5…照合部、10…データ処理装置、H…ヘリコプター
図1
図2
図3
図4