(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005470
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】二酸化炭素輸送用容器および二酸化炭素輸送方法
(51)【国際特許分類】
B65D 88/06 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
B65D88/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107401
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】520145034
【氏名又は名称】松宮 昭
(71)【出願人】
【識別番号】520429543
【氏名又は名称】タケシ マツミヤ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】松宮 昭
【テーマコード(参考)】
3E170
【Fターム(参考)】
3E170AA03
3E170AB30
3E170DA01
3E170DA08
3E170KB02
3E170KC03
3E170NA01
3E170WG06
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素を収容していない状態での積載空間の利用効率が良く且つ軽量な二酸化炭素輸送用容器等を提供すること。
【解決手段】本発明によれば、剛性のアウタサポート部内に配置される二酸化炭素輸送用容器2であって、容器が、両端が閉鎖された剛性の筒状のタンク部4と、風船形状を有し吹込み口をタンク部の一端に接続した状態でタンク部内に配置されタンク部内で膨張収縮可能な二酸化炭素収容用の可撓性のインナチューブ6と、を備え、タンク部が、金属で形成された外側層8a、10a・・・と、ファイバー素材で形成され外側層の内側に配置された内側補強層8b、10b・・・とを含む二層構造を有し、タンク部の本体がタンクの長手方向軸線に沿って分解可能に構成されている二酸化炭素輸送用容器が提供される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性のアウタサポート部内に配置される二酸化炭素輸送用容器であって、
前記容器が、
両端が閉鎖された剛性の筒状のタンク部と、
風船形状を有し吹込み口を前記タンク部の一端に接続した状態で前記タンク部内に配置され前記タンク部内で膨張収縮可能な二酸化炭素収容用の可撓性のインナチューブと、を備え、
前記タンク部が、金属で形成された外側層と、ファイバー素材で形成され前記外側層の内側に配置された内側補強層とを含む二層構造を有し、前記タンク部の本体が該タンクの長手方向軸線に沿って分解可能に構成されている、
ことを特徴とする二酸化炭素輸送用容器。
【請求項2】
前記タンク部が、半円筒状の上半部と、半円筒状の下半部と、前記タンク部の一端側を閉鎖する一端側キャップと、前記タンク部の他端側を閉鎖する他端側キャップとを備え、
前記上半部と前記下半部と前記一端側キャップと前記他端側キャップとが取り外し可能に連結されている、
請求項1に記載の二酸化炭素輸送用容器。
【請求項3】
前記上半部と下半部の前記内側補強層は、該内側補強層を形成する前記ファイバー素材の繊維が、前記タンク部の長手方向軸線に直交する方向に沿って延びるように構成されている、
請求項2に記載の二酸化炭素輸送用容器。
【請求項4】
前記上半部が、周方向の開口端の各々から径方向外方に向かって延びるフランジを有し、前記下半部が、周方向の開口端の各々から径方向外方に向かって延びるフランジを有し、
前記上半部と下半部とが、前記フランジ同士を当接させた状態で連結される、
請求項2または3に記載の二酸化炭素輸送用容器。
【請求項5】
前記上半部のフランジと下半部のフランジを結合する結合手段を備えている、
請求項4に記載の二酸化炭素輸送用容器。
【請求項6】
前記結合手段が、前記上半部と下半部とが連結状態にあるとき整列するように前記上半部のフランジと下半部のフランジのそれぞれに設けられた複数の貫通孔と、整列して前記貫通孔に挿通され前記上半部のフランジと下半部のフランジを連結固定する連結具とを有している、
請求項5に記載の二酸化炭素輸送用容器。
【請求項7】
前記連結具が、整列された貫通孔に挿通されるボルトと、該ボルトに取付けられるナットとを有している、
請求項6に記載の二酸化炭素輸送用容器。
【請求項8】
前記内側補強層に形成されている前記貫通孔の内周面を覆う円筒状の保護用カラーを更に備えている、
請求項6または7に記載の二酸化炭素輸送用容器。
【請求項9】
前記外側層と内側補強層との間に、ヤング率が低い接着剤で形成された接着層が配置されている、
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の二酸化炭素輸送用容器。
【請求項10】
前記アウタサポートが、貨物輸送用コンテナである、
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の二酸化炭素輸送用容器。
【請求項11】
前記アウタサポートが、略矩形状の剛性フレームである、
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の二酸化炭素輸送用容器。
【請求項12】
前記剛性フレームが組み立て式である、
請求項11に記載の二酸化炭素輸送用容器。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の二酸化炭素輸送用容器に加圧された二酸化炭素を充填して輸送する、
ことを特徴とする二酸化炭素輸送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素輸送用容器および二酸化炭素輸送方法に関し、詳細には、既存の貨物輸送用コンテナの内部空間に配置可能な大きさの比較的、小容量の二酸化炭素輸送用容器、及びこのような容器を使用した二酸化炭素輸送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
温暖化防止の観点から二酸化炭素を大気中に放出することが問題視されてきている。このような問題に対処するため、火力発電所等で発生した二酸化炭素を回収し、貯留することが提案されている。
【0003】
一般に、二酸化炭素を貯留する貯留地は、二酸化炭素発生場所である火力発電所等から離れた場所にあることが多い。従って、火力発電所等の二酸化炭素発生場所から回収した二酸化炭素を遠隔の貯留地まで輸送することが必要となる。この輸送は、車両、鉄道などによる輸送の他、貨物船による海上輸送を含むこととなる。
【0004】
輸送効率の点からは、このような二酸化炭素の輸送は、大容量の容器あるいはタンクに収容して行なうことが望ましい。
【0005】
しかしながら、二酸化炭素の発生場所あるいは二酸化炭素の貯留地が、このような大容量の容器あるいはタンクを持ち込むことが困難な場所に位置する場合がある。このような場合には、例えば、貨物輸送で使用されるコンテナ程度のサイズを有する小容量の容器あるいはタンクを二酸化炭素輸送用容器として多数、準備し、これらに二酸化炭素を収容して、車両、鉄道等で輸送を行なうことが考えられる。
【0006】
ここで、二酸化炭素は、高圧状態で輸送することが輸送効率の観点から好ましいため、輸送に用いられる容器あるいはタンクとしては、金属等で形成された高い耐圧性を有する容器あるいはタンクが使用されることになる。そして、このような高い耐圧性を有する容器あるいはタンクは、通常、高剛性である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような高い耐圧性を有する容器あるいはタンクは、往路において、火力発電所等の二酸化炭素の発生場所から貯留地に二酸化炭素を搬送した後、次の二酸化炭素搬送のため、二酸化炭素の発生場所に戻される。
【0008】
この復路の輸送において、二酸化炭素輸送用の高剛性の容器あるいはタンクに収容して二酸化炭素の発生場所に搬送すべき適当な積荷が無い場合、金属等で形成された高い耐圧性を有する容器あるいはタンクは、空の状態で貯留場所から発生場所に運送されることになる。
【0009】
金属等で形成された高剛性の容器あるいはタンクは、嵩張るため、空の容器またはタンクを二酸化炭素の発生場所に戻す運送は、貨物船等の積載空間の利用効率が極めて悪いものとなる。さらに、このような容器あるいはタンクは、不使用時に保管する場合に、広い保管場所が必要になるという問題があった。
【0010】
さらに、金属等で形成された高剛性の容器あるいはタンクは、容器あるいはタンク自身の重量が重くなるため、特に、車両(トレーラ)等での輸送が困難になる場合がある。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、二酸化炭素を収容していない状態での積載空間の利用効率が良く且つ軽量な二酸化炭素輸送用容器を提供することを目的としている。
【0012】
また、二酸化炭素を収容していない状態での積載空間の利用効率が良く且つ軽量な二酸化炭素輸送用容器を使用した二酸化炭素輸送方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、
剛性のアウタサポート部内に配置される二酸化炭素輸送用容器であって、
前記容器が、
両端が閉鎖された剛性の筒状のタンク部と、
風船形状を有し吹込み口を前記タンク部の一端に接続した状態で前記タンク部内に配置され前記タンク部内で膨張収縮可能な二酸化炭素収容用の可撓性のインナチューブと、を備え、
前記タンク部が、金属で形成された外側層と、ファイバー素材で形成され前記外側層の内側に配置された内側補強層とを含む二層構造を有し、前記タンク部の本体が該タンクの長手方向軸線に沿って分解可能に構成されている、
ことを特徴とする二酸化炭素輸送用容器が提供される。
【0014】
このような構成によれば、インナチューブによって、流動体である二酸化炭素の漏れを防止し、加圧状態でインナチューブに収容される二酸化炭素からの圧力をインナチューブの外部に位置する剛性のタンク部によって受けることができるので、加圧された二酸化炭素を安全に収容することができる。
【0015】
また、圧力を受けるタンク部が分解可能であるので、二酸化炭素を貯留場所に搬送した後、剛性のタンク部を分解し、収納スペースを減らした状態で貨物船等に積載して二酸化炭素の発生場所に運送することができ、復路の輸送手段の積載空間の利用効率が向上する。さらに、タンク部が分解可能であり収納スペースを小さくなることにより、二酸化炭素輸送用容器として使用しないときの保管スペースも小さくなり保管スペースの利用効率が良くなる。
【0016】
さらに、ファイバー素材で形成され外側層の内側に配置された内側補強層によって耐圧性を向上させているので、外側の金属層を薄くして、軽量化を図ることが可能となる。
【0017】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記タンク部が、半円筒状の上半部と、半円筒状の下半部と、前記タンク部の一端側を閉鎖する一端側キャップと、前記タンク部の他端側を閉鎖する他端側キャップとを備え、
前記上半部と前記下半部と前記一端側キャップと前記他端側キャップとが取り外し可能に連結されている。
【0018】
このような構成によれば、タンク部をより小さな部品に分解することができるので、復路の輸送手段の積載空間の利用効率がより高くなる。
【0019】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記上半部と下半部の前記内側補強層は、該内側補強層を形成する前記ファイバー素材の繊維が、前記タンク部の長手方向軸線に直交する方向に沿って延びるように構成されている。
【0020】
ファイバー素材としては、カーボンファイバー、グラスファイバー等が挙げられる。例えば、カーボンファイバーは、繊維が延びるスレッド方向において鉄の10倍程度の引張強度を有しながら、鉄より70%ほど軽量であるので、カーボンファイバーを使用することにより、高い耐圧性を確保しながら軽量化を図ることができる。
【0021】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記上半部が、周方向の開口端の各々から径方向外方に向かって延びるフランジを有し、前記下半部が、周方向の開口端の各々から径方向外方に向かって延びるフランジを有し、
前記上半部と下半部とが、前記フランジ同士を当接させた状態で連結される。
【0022】
このような構成によれば、フランジを利用することにより、耐圧性が求められるタンク部を容易に分解状態から組み立てることが可能となる。
【0023】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記上半部のフランジと下半部のフランジを結合する結合手段を備えている、
【0024】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記結合手段が、前記上半部と下半部とが連結状態にあるとき整列するように前記上半部のフランジと下半部のフランジのそれぞれに設けられた複数の貫通孔と、整列して前記貫通孔に挿通され前記上半部のフランジと下半部のフランジを連結固定する連結具とを有している。
【0025】
このような構成によれば、フランジに設けられた貫通孔と貫通孔に挿通される連結具を利用することにより、耐圧性が求められるタンク部を容易に分解状態から組み立てることが可能となる。
【0026】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記連結具が、整列された貫通孔に挿通されるボルトと、該ボルトに取付けられるナットとを有している。
【0027】
このような構成によれば、整列した貫通孔にボルトを挿通し、ナットを締めるという簡単な作業で、上半部と下半部を連結固定することができる。
【0028】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記内側補強層に形成されている前記貫通孔の内周面を覆う円筒状の保護用カラーを更に備えている。
【0029】
このような構成によれば、ファイバー素材で形成された内側補強層の貫通孔部分がボルトによって破損等することが、保護用カラーによって抑制される。
【0030】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記アウタサポートが、貨物輸送用コンテナである。
【0031】
このような構成によれば、既存の貨物輸送用コンテナを利用して二酸化炭素を輸送することが可能となる。
【0032】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記アウタサポートが、略矩形状の剛性フレームである。
【0033】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記剛性フレームが組み立て式である。
【0034】
このような構成によれば、二酸化炭素輸送用容器を支持する剛性のアウタサポートも帰路においては、分解してコンパクトにして輸送することが可能となる。
【0035】
本発明の他の好ましい態様によれば、
上記いずれかの二酸化炭素輸送用容器に加圧された二酸化炭素を充填して輸送する、
ことを特徴とする二酸化炭素輸送方法が提供される。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、二酸化炭素を収容していない状態での積載空間の利用効率が良く且つ軽量な二酸化炭素輸送用容器が提供される。
【0037】
また、本発明によれば、二酸化炭素を収容していない状態での積載空間の利用効率が良く且つ軽量な二酸化炭素輸送用容器を使用した二酸化炭素輸送方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】貨物輸送用コンテナ内に配置された本発明の好ましい態様の二酸化炭素輸送用容器の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図2】
図1の二酸化炭素輸送用容器の分解斜視図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿った二酸化炭素輸送用容器の断面図である。
【
図4】二酸化炭素輸送用容器の矩形フランジの貫通孔の構成を説明するための部分断面図である。
【
図5】二酸化炭素輸送用容器の貨物輸送用コンテナへの取付けを説明する模式的な断面図である。
【
図6】インナチューブの内部に二酸化炭素が充填されていない状態での二酸化炭素輸送用容器の模式的な断面図である。
【
図7】インナチューブの内部に二酸化炭素が充填された状態での二酸化炭素輸送用容器の
図6と同様の模式的な断面図である。
【
図8】貨物輸送用コンテナに代わるアウタサポート部として使用される矩形状フレームの概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面に沿って本願発明の好ましい実施形態の二酸化炭素輸送用容器について説明する。
図1は、アウタサポート部である貨物輸送用コンテナ1内に配置された本実施形態の二酸化炭素輸送用容器2の構成を示す模式的な斜視図であり、
図2は、
図1の二酸化炭素輸送用容器2の分解斜視図であり、
図1のIII-III線に沿った二酸化炭素輸送用容器の断面図である。
【0040】
また、本明細書において二酸化炭素とは、純粋な二酸化炭素のみならず、二酸化炭素を主成分とする流体全般を意味する。
【0041】
本実施形態に剛性のアウタサポート部である貨物輸送用コンテナ1は、例えば、鋼鉄、アルミニウムなどで製造され規格化された直方体形状のISO規格に基づく貨物輸送用コンテナが使用されるのが好ましい。本実施形態では、貨物輸送用コンテナ1として、幅2.352m、高さ2.395m、奥行き12.03mの貨物輸送用コンテナ(所謂40フィートコンテナ)が想定されているが、アウタサポート部の寸法、種類は、これに限定されるものではない。
【0042】
また、輸送中に、二酸化炭素を低温で輸送する場合には、内部の二酸化炭素の温度上昇を抑制するため、貨物輸送用コンテナ1は、内部の温度調整が可能な所謂リーファー・コンテナでもよい。
【0043】
本実施形態の二酸化炭素輸送用容器2は、このような貨物輸送用コンテナ1内に配置され、内部に高圧の二酸化炭素を収容する搬送容器である。
【0044】
図1ないし
図3に示されているように、二酸化炭素輸送用容器2は、剛性のタンク部4を備えている。本実施形態のタンク部4は、両端が閉鎖された略円筒形状を備え、貨物輸送用コンテナ1の内部空間を略満たす寸法を有している。
【0045】
タンク部4は、ステンレス鋼等の金属等と補強用繊維とを含むの剛性材料で形成された耐圧容器であり、両端が閉鎖された略円筒の容器本体の外形を構成している。タンク部4の外面又は内面には、断熱塗料、断熱材等による断熱層が、必要に応じて設けられる。
【0046】
本実施形態の二酸化炭素輸送用容器2は、さらに、タンク部4内に配置された二酸化炭素収容用のインナチューブ6を備えている。
また、インナチューブ6は、二酸化炭素を透過させない特性を有するゴム等の可撓性および伸縮性を有する材料で形成され、風船状の形状を有している。
【0047】
タンク部4は、高剛性の金属で形成された外側層と、ファイバー素材で形成され外側層の内側に配置された内側補強層とを含む二層構造を有している。高剛性の金属としては、本実施形態では、ステンレス鋼等が使用され、ファイバー素材としては、カーボンファイバーが使用されている。ファイバー素材としてグラスファイバー等を使用してもよい。
40フィートコンテナに収容される本実施形態の二酸化炭素輸送用容器2では、ステンレス鋼製の外側層は厚さ5mm程度、カーボンファイバー製の内側補強層は厚さ11.6mm程度に設定されている。尚、この外側層および内側補強層によって得られる、最大100Bar程度の耐圧強度をステンレス鋼製の一層のみで得ようとすると、厚さ約93mmのステンレス鋼製の層が必要となる。
【0048】
タンク部4は、
図2に示されているように、タンク部4の中央を構成する上半部8と下半部10に2分割可能な円筒状のタンク本体12と、タンク本体12の一端側を閉鎖する一端側キャップ14と、タンク本体12の他端側を閉鎖する他端側キャップ16とを備えている。一端側キャップ14の中央には、開口18が形成されている。
【0049】
本実施形態の二酸化炭素輸送用容器2では、上半部8と下半部10は、略同一形状の半円筒形状を有している。
上半部8と下半部10は、それぞれが、周方向の開口端の各々から径方向外方に向かって延びる矩形フランジ20、22を有している。各矩形フランジ20、22は、細長い矩形形状を有し、上半部8と下半部10の周方向の開口端の軸方向の両端を除き、その全長に亘って伸びている。上半部8と下半部10は、矩形フランジ20、22同士を重ねた状態で連結され、円筒状のタンク本体12を構成することになる。
【0050】
さらに、上半部8と下半部10は、それぞれが、軸線方向の開口端の各々から径方向外方に向かって延びる半環状フランジ24、26を有している。各半環状フランジ24、26は、上半部8と下半部10の軸線方向の開口端の全長に亘って伸びている。上半部8と下半部10が連結されると、半環状フランジ24、26は、タンク本体12の環状フランジを形成することになる。
【0051】
一方、一端が開口した浅い有底円筒形状を有する一端側キャップ14と他端側キャップ16の開口端には、半環状フランジ24、26によって形成された環状フランジに対応する形状の環状フランジ14a、16aが形成されている。この環状フランジ14a、16aを、半環状フランジ24、26によって形成されたタンク本体12の環状フランジに接合することにより、タンク本体12の両端が閉鎖され、タンク部4が形成される。
【0052】
本実施形態の二酸化炭素輸送用容器2では、タンク部4の上半部8は、全体が、金属で形成され半円筒形状を有し上記外側層を構成する上半部外側層8aと、カーボンファイバーで形成され上記内側補強層を構成する半円筒形状を有する上半部内側補強層8bとを有する二層構造を備えている。
上半部内側補強層8b中では、カーボンファイバーの繊維が半円筒状の上半部内側補強層8b内で、
図3に矢印Cで示す周方向に、即ちタンク部4の長手方向軸線に直交する方向に延びるように配置されている。
【0053】
上半部外側層8aと上半部内側補強層8bとは、ヤング率が低い接着剤によって接着固定されているため、上半部外側層8aと上半部内側補強層8bの間には、ヤング率が低い接着剤(弾性接着剤)による接着層Aが形成されている。具体的には、シラン変性ポリマーを主成分とする接着剤であり、例えば、ヘンケル社が販売する商品名「テロソンMS9399」のようなものが挙げられる。
【0054】
同様に、タンク部4の下半部10は、全体が、金属で形成され半円筒形状を有し上記外側層を構成する下半部外側層10aと、カーボンファイバーで形成され形成され半円筒形状を有し上記内側補強層を構成する下半部内側補強層10bとを備えている。
下半部内側補強層10b中では、カーボンファイバーの繊維が半円筒状の下半部内側補強層10b内でも
図3に矢印Cで示す周方向に、即ちタンク部4の長手方向軸線に直交する方向に延びるように配置されている。
【0055】
下半部外側層10aと下半部内側補強層10bとは、ヤング率が低い接着剤によって接着固定されているため、下半部外側層10aと下半部内側補強層10bの間には、ヤング率が低い接着剤による接着層Aが形成されている。
【0056】
また、タンク本体12の一端側を閉鎖する一端側キャップ14も、上半部8と下半部10と同様に、ステンレス鋼等の金属で形成された一端側キャップ外側層と、カーボンファイバで形成された一端側キャップ内側補強層とを備えた二層構造を有している。一端側キャップ外側層と一端側キャップ内側補強層の厚さは、それぞれ、上記外側層および内側補強層と同様に5mm程度および11.6mm程度に設定されている
本実施形態の二酸化炭素輸送用容器では、一端側キャップ内側補強層14bは、繊維の配向方向が
図2のX方向である第1層と、
図2のY方向である第2層とが積層された構造を有している。
【0057】
一端側キャップ内側補強層14bは、ファイバー繊維が中心から放射状に、即ち、直径方向に延びるように配置されたカーボンファイバー層によって構成されてもよい。
【0058】
一端側キャップ外側層と一端側キャップ内側補強層とは、ヤング率が低い接着剤によって接着固定されているため、一端側キャップ外側層と一端側キャップ内側補強層の間には、ヤング率が低い接着剤による接着層(図示せず)が形成されている。
【0059】
さらに、タンク本体12の他端側を閉鎖する他端側キャップ16も、一端側キャップ14と同様の内部構造を有するものであり、金属で形成された他端側キャップ外側層と、カーボンファイバで形成された他端側キャップ内側補強層とを備えている。
【0060】
他端側キャップ外側層と他端側キャップ内側補強層とは、ヤング率が低い接着剤によって接着固定されているため、一端側キャップ外側層と一端側キャップ内側補強層の間には、ヤング率が低い接着剤による接着層(図示せず)が形成されている。
【0061】
図2に示されているように、上半部8の左右2枚の矩形フランジ20、20には、複数(本実施形態では6つ)の貫通孔28が等間隔で形成されている。また、下半部10の2枚のフランジ22、22にも、同様に、複数(本実施形態では6つ)の貫通孔30が等間隔で形成されている。
【0062】
上半部8の2枚の矩形フランジ20、20の各貫通孔28と、下半部10の2枚の矩形フランジ22、22の各貫通孔30は、上半部8の矩形フランジ20と下半部10の矩形フランジ22を重ねたとき、整列するように配置されている。
【0063】
本実施形態の二酸化炭素輸送用容器2では、上記のように整列した各貫通孔28、30に連結具を構成するボルト32が挿通され、ナット34をボルト32に螺合することよって上半部8の矩形フランジ20と下半部10の矩形フランジ22が締結され(
図3)、上半部8と下半部10が連結固定される。この連結具として、シャーナットを使用してもよい。
【0064】
このような構成によれば、ボルト32およびナット34による連結を解除することによって、タンク本体12の上半部8と下半部10は、分割することが可能となる。
【0065】
また、上半部8と下半部10の軸線方向両端の半環状フランジ24、26によって形成されるタンク本体12の環状フランジには、複数の貫通孔36が形成され、一端側キャップ14と他端側キャップ16の環状フランジ14a、16aにも、貫通孔36に対応する複数の貫通孔38が形成されている。
【0066】
本実施形態の二酸化炭素輸送用容器2では、貫通孔38が、タンク本体12の環状フランジの貫通孔36と整列するように、一端側キャップ14と他端側キャップ16の環状フランジと、タンク本体12の環状フランジを接合し、整列した貫通孔にボルト40を挿通しナット42で締めることによって、一端側キャップ14と他端側キャップ16がタンク本体12に連結固定され、両端が閉鎖されたタンク部4が形成される。
【0067】
このような構成によれば、ボルト40およびナット42による連結を解除することによって、一端側キャップ14および他端側キャップ16のそれぞれをタンク本体12から取外すことが可能となる。
【0068】
インナチューブ6は、上述のようにゴム等の可撓性の材料で形成された風船状の部材であり、吹き込み口44を通して内部に二酸化炭素を出し入れすることができるように構成されている。
インナチューブ6は、タンク部4の内部空間の寸法より大きな体積まで膨張可能であるので、高圧の二酸化炭素がタンク部4に収容されているインナチューブ6に充填されていくと、インナチューブ6は、タンク部4の内周面に当接する寸法まで膨張し、タンク部4によって更なる膨張が制限される。したがって、この状態では、高圧の二酸化炭素によるインナチューブ6の内圧が、タンク部4によって支持されることになる。
【0069】
また、インナチューブ6の吹込み口44は、タンク部4の一端側キャップ14に形成された開口18に着脱自在に取付けられる。
【0070】
次に、
図4に沿って、上半部8の矩形フランジ20の貫通孔28と上半部8の矩形フランジ22の貫通孔30の構成について、詳細に説明する。
図4は、接合状態にある、上半部8の矩形フランジ20と下半部10の矩形フランジ22を示す断面図である。
【0071】
上述したように、本実施形態の上半部8は、ヤング率が低い接着剤によって接着固定された上半部外側層8aと上半部内側補強層8bとを備えているので、矩形フランジ20においても、2層構造を備えている。したがって、貫通孔28は、上半部外側層8aと上半部内側補強層8bの2層を貫通して延びている。
【0072】
本実施形態の二酸化炭素輸送用容器2では、矩形フランジ20を貫通するに貫通孔28の上半部内側補強層8bを通過する部分に、貫通孔28の内周面を覆う円筒状のカラー46が取付けられている。このカラー46によって、貫通孔28のうちのカーボンファイバー製の上半部内側補強層8bを通過する部分が、貫通孔28に挿通されるボルト32による摩耗から保護される。
【0073】
更に、本実施形態の二酸化炭素輸送用容器2は、
図5に示すように、タンク部4が、貨物輸送用コンテナ1の対向する角部のそれぞれとタンク部4とを連結する補強ブラケット48を備えている。
【0074】
補強ブラケット48は、タンク部4に設けられた矩形フランジ20、22とコンテナ1のフレーム固定部1aとの間に配置されたフランジ受け調整ギアユニット50を備え、ボルト32と干渉しない複数の位置に設けられている。
【0075】
図5に示されているように、フランジ受け調整ギアユニット50は、外周に螺旋が切られ、矢印aで示すように長手方向軸線を中心に回転可能な調整ロッド50aを有している。調整ロッド50aは、一端がタンク部4に設けられた矩形フランジ20、22に、他端がコンテナ1のフレーム固定部1aに、ねじ込まれている。本実施形態は、調整ロッド50aが回転することにより、タンク部4に設けられた矩形フランジ20、22とコンテナ1のフレーム固定部1aとの間の張力を調整することができるように構成されている。
【0076】
調整ロッド50aには、調整ロッド50aと一体的に回転する調整ギア50bが固定されている。
【0077】
フランジ受け調整ギアユニット50は、更に、外周に螺旋が切られ、図示しない動力源によって矢印b方向に回転駆動させられる作動ロッド50cを備えている。作動ロッド50cの外周の螺旋部は、調整ギア50bに噛合っている。
この結果、作動ロッド50cの回転が、調整ギア50bを介して、調整ロッド50aの回転に変換され、タンク部4に設けられた矩形フランジ20、22とコンテナ1のフレーム固定部1aとの間の張力を調整することになる。
【0078】
次に、二酸化炭素輸送用容器2への二酸化炭素の充填と二酸化炭素輸送用容器2からの二酸化炭素の排出について説明する。
【0079】
図6は、インナチューブ6の内部に二酸化炭素が充填されていない状態での二酸化炭素輸送用容器2の模式的な断面図であり、
図7は、インナチューブ6の内部に二酸化炭素が充填された状態での二酸化炭素輸送用容器2の
図6と同様の模式的な断面図である。
【0080】
貨物輸送用コンテナ1内に配置されている二酸化炭素輸送用容器2(
図6)に二酸化炭素を導入する際には、貨物輸送用コンテナ1の一部を開放し、一端側キャップ14に取付けられているインナチューブ6の吹込み口44から、インナチューブ6内に、例えば、100Bar程度の圧力の二酸化炭素を導入する。
【0081】
導入された二酸化炭素によってインナチューブ6が膨張してタンク部4の内部空間を完全に満たした段階(
図7)で、二酸化炭素の導入を終了し、インナチューブ6の吹込み口44に設けられている高圧バルブ(図示せず)を閉鎖することによって、インナチューブの吹込み口44を閉鎖する。
【0082】
次いで、貨物輸送用コンテナ1を閉鎖して、トラック、船舶等の輸送手段によって二酸化炭素輸送用容器2を収容した貨物輸送用コンテナ1を二酸化炭素の貯留地等の目的地に搬送する。
【0083】
貨物輸送用コンテナ1が温度等の内部環境を調整できるリーファー・コンテナ等である場合には、適宜、貨物輸送用コンテナ1内の内部環境を調整しながら搬送が行なわれる。
【0084】
二酸化炭素を収容した二酸化炭素輸送用容器2が、二酸化炭素の貯留地等の目的地に到着すると、二酸化炭素輸送用容器2から二酸化炭素を排出させる。
【0085】
上述したように、二酸化炭素は、二酸化炭素輸送用容器2内に加圧状態で収容されているため、インナチューブ6の吹込み口44を開放することにより、インナチューブ6内の二酸化炭素の圧力が大気圧近傍の圧力に低下するまで二酸化炭素輸送用容器2の出入り口から自噴する。
【0086】
インナチューブ6内の二酸化炭素の圧力が大気圧近傍の圧力まで低下すると、二酸化炭素輸送用容器2の出入口から自噴の速度が低下する。この状態で、インナチューブ6を後方から押圧する、外部から真空ポンプでインナチューブ6内を吸引する等して、インナチューブ6内の二酸化炭素の排出を促進させ、インナチューブ6から二酸化炭素を完全に排出し、排出作業を終了する。
【0087】
本発明の前記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内で種々の変更、変形が可能である。
【0088】
上記実施形態では、一端側キャップ14および他端側キャップ16が、フランジ同士の接合によってタンク本体12に連結されていたが、他の手段によって、一端側キャップ14および他端側キャップ16がタンク本体12に連結されるものでもよい。
【0089】
例えば、一端側キャップおよび他端側キャップの開口端の内周面に雌ねじ部を設け、タンク本体の開口端の外周面に、キャップの雌ねじ部と螺合可能な雌ねじを設け、一端側キャップおよび他端側キャップの雌ねじ部をタンク本体の雌ねじにねじ込むことによって、一端側キャップおよび他端側キャップをタンク本体に着脱可能に取付けける構成でもよい。
【0090】
上記実施形態の二酸化炭素輸送用容器2の説明では、剛性のアウタサポート部が貨物輸送用コンテナであったが、アウタサポート部は、貨物輸送用コンテナに限定されるものではなく、
図8に示されるような組立て式の剛性の矩形状フレーム400であってもよい。
【0091】
矩形状フレーム400は、角部に配置された連結部材402に対して、12本の棒状部材404が着脱自在に連結されることによって構成されたフレームである。連結部材402、および棒状部材404は、金属その他の剛性が高い材料で構成されている。
【0092】
矩形状フレーム400に囲まれた内部空間は、二酸化炭素輸送用容器2を収容可能な寸法を有している。矩形状フレーム400全体の寸法形状を上述した貨物輸送用コンテナの寸法形状と同一にすることが好ましい。このような構成により、二酸化炭素輸送用容器2を収容した矩形状フレーム400を、貨物輸送用コンテナ用のトラック、貨車、船舶等で運搬したり、貨物輸送用コンテナと混載したりすることが可能となる。
【0093】
矩形状フレーム400に囲まれた内部空間に収容された二酸化炭素輸送用容器2(タンク部4)は、上述した補強ブラケットのような固定具によって、矩形状フレーム400に対して固定されることになる。
【0094】
また、矩形フレームは、所謂40フィートコンテナあるいは他の寸法のISOコンテナを上下に2本重ねた寸法形状のものとし、内部に2本の二酸化炭素輸送用容器2を上下に並列配置してもよい。さらに、所謂40フィートコンテナを複数本まとめた寸法形状のフレームでもよい。
このような構成であれば、港湾に設置されているガントリクレーン等の既存の施設を利用して船舶への積み込み等が可能となる。また、コンテナ船上において、他のコンテナとの混載が容易となる。
【0095】
また、コンテナ船の規格に合う大きなタンクを、船舶が直接アクセス可能な海岸に位置する火力発電所等から排出された二酸化炭素の搬送に使用することも可能である。
【符号の説明】
【0096】
1:貨物輸送用コンテナ
2:二酸化炭素輸送用容器
4:タンク部
6:インナチューブ
8:上半部
10:下半部
12:タンク本体
14:一端側キャップ
16:他端側キャップ
18:開口
20:上半部の矩形フランジ
22:下半部の矩形フランジ
24:上半部の半環状フランジ
26:下半部の半環状フランジ
28:矩形フランジの貫通孔
30:矩形フランジの貫通孔
32:ボルト
34:ナット
36:半環状フランジ24、26の貫通孔
38:半環状フランジ14a、16aの貫通孔
40:ボルト
42:ナット
44:吹き込み口
46:カラー