(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054706
(43)【公開日】2023-04-14
(54)【発明の名称】肌美容用化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20230407BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230407BHJP
A61K 8/68 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/00
A61K8/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163719
(22)【出願日】2021-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】594081375
【氏名又は名称】オカヤス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083301
【弁理士】
【氏名又は名称】草間 攻
(72)【発明者】
【氏名】岡安 武蔵
(72)【発明者】
【氏名】徳武 昌一
(72)【発明者】
【氏名】山川 淳子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AC641
4C083CC02
4C083EE12
4C083EE16
(57)【要約】
【課題】 モモ由来セラミドのチロシナーゼ活性抑制効果及びエラスターゼ活性抑制効果に基づく肌美容用化粧料を提供すること、特に美白効果、シワの抑制効果および肌のハリの保持効果を発揮する肌美容用化粧料を提供することを課題とする。
【解決手段】 モモ由来セラミド組成物のチロシナーゼ阻害活性作用及びエラスターゼ阻害活性作用に基づく肌美容用化粧料であって、チロシナーゼ阻害活性作用による肌表皮のメラニン生成の抑制に基づく美白効果、エラスターゼ阻害活性作用による、肌表皮のエラスチン分解の抑制することによるシワ防止・ハリの保持用化粧料としての肌美容用化粧料である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モモ由来セラミド組成物のチロシナーゼ阻害活性作用及びエラスターゼ阻害活性作用に基づくことを特徴とする、肌美容用化粧料。
【請求項2】
チロシナーゼ阻害活性作用による、肌表皮のメラニン生成の抑制に基づく美白用化粧料としての請求項1に記載の肌美容用化粧料。
【請求項3】
エラスターゼ阻害活性作用による、肌表皮のエラスチン分解の抑制に基づくシワ防止・ハリの保持用化粧料としての請求項1に記載の肌美容用化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌美容用化粧料に係り、詳細には、モモ由来セラミドからなる肌美容用化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
植物性セラミは、動物性セラミドと比較して安全性が高く、種々の機能性を有する生理活性成分として脚光を浴びており、例えば、植物性セラミドの経口摂取による保湿効果が提案されている(非特許文献1)。
また、植物性セラミとして、特にモモ由来セラミドに関して、皮膚の保湿改善・ハリ回復効果も提案されており(非特許文献2)、さらに本発明者らによりモモ由来セラミドの蛋白糖化抑制作用、活性酸素[DPPH(ジフェニルピクリルヒドラジル)活性]抑制作用等も提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】間 和彦ら、細胞、538号、42-44 (2009)
【非特許文献2】小林 祐樹ら、FOOD Style21, Vol.19, No.6, 22-26 (2015)
【0005】
このようにモモ由来セラミドには種々の生理活性を有するものではあるが、いまだその詳細についてあまり検討されていないのが現状である。
本発明者らは高純度のモモ由来セラミドを、種々の機能性を有する食品・化粧品素材として商品化(ピーチセラミド:登録商標)し、提供を行っているが、モモ由来セラミドについて更なる機能性を開発するべく検討を行ってきている。
【0006】
その検討の結果、モモ由来セラミドにこれまで知られていなかったチロシナーゼ活性阻害(メラニン合成抑制)、エラスターゼ活性阻害があることを新規に見出し、かかる作用によりモモ由来セラミドは優れた肌美容用化粧料として有用なものであることを確認し、本発明を完成させるに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明は、新たに見出したモモ由来セラミドのチロシナーゼ活性抑制効果およびエラスターゼ活性抑制効果に基づく肌美容用化粧料を提供すること、特に美白効果、シワの抑制効果および肌のハリの保持効果を発揮する肌美容用化粧料を提供することを課題とする。
更には、モモ由来セラミドのコラーゲンやエラスチンの糖化抑制効果による肌のくすみや黄ばみの防止効果、およびDPPH活性抑制効果に基づく活性酸素による肌の老化抑制効果などを利用した、肌美容用化粧をも提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するための本発明は、基本的に以下の態様からなる。
(1)モモ由来セラミド組成物のチロシナーゼ阻害活性作用及びエラスターゼ阻害活性作用に基づくことを特徴とする、肌美容用化粧料、
(2)チロシナーゼ阻害活性作用による、肌表皮のメラニン生成の抑制に基づく美白用化粧料としての上記(1)に記載の肌美容用化粧料、
(3)エラスターゼ阻害活性作用による、肌表皮のエラスチン分解の抑制に基づくシワ防止・ハリの保持用化粧料としての上記(1)に記載の肌美容用化粧料、
である。
【0009】
モモ由来セラミドには種々の有用な機能が考えられているが、本発明が提案するチロシナーゼ阻害活性作用及びエラスターゼ阻害活性作用としての機能は、本発明者らにより初めて見出されたものであり、極めて特異的なものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明が提案する肌美容用化粧料の有効成分ともいえるモモ由来セラミドには、一つの機能性特性としてのチロシナーゼ活性阻害により、メラニン生成が抑制され、その結果肌の美白効果が得られる。
更に別の機能性特性としてのエラスターゼ活性阻害による表皮蛋白繊維(エラスチン)の分解が抑制され、その弾性力の維持効果により、シワの抑制やハリの保持効果が発揮される。
したがって、モモ由来セラミドを用いた極めて特異的な肌美容用化粧料が提供される。
【0011】
また、モモ由来セラミドが有している肌表皮の構成蛋白質であるコラーゲンやエラスチンに対する糖化効果抑制効果により、肌のくすみや黄ばみの防止効果、更にはDPPH活性抑制効果による活性酸素が原因の肌老化抑制効果なども発揮し得る点で、本発明は特に優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】試験例1のチロシナーゼ活性試験におけるチロシナーゼ活性率の結果を示した図である。
【
図2】試験例2のエラスターゼ阻害活性試験におけるエラスターゼ活性率の結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は上記したようにその基本は、モモ由来セラミド組成物のチロシナーゼ阻害活性作用及びエラスターゼ阻害活性作用に基づくことを特徴とする、肌美容用化粧料である。
【0014】
本発明のモモ由来セラミドのチロシナーゼ阻害活性作用による美白効果は以下のように説明することができる。
チロシナーゼとは、メラニン色素をつくり出す色素細胞(メラノサイト)が持っている酵素である。一般にシミ・ソバカスは、メラニン色素が過剰に生成・蓄積されることによって引き起こされ、そのメラニン色素の生成は次のようなメカニズムで起こるとされている。
すなわち、太陽光の中の紫外線、ストレス、大気汚染などに曝されると皮膚の表面で活性酸素が発生する。するとその刺激によってメラノサイトが活性化され、チロシナーゼが生成され、生成されたチロシナーゼはアミノ酸の一種であるチロシンと反応し、さらにいくつかの段階を経てメラニンを生成する。
したがって、本発明のモモ由来セラミドはチロシナーゼ阻害活性を発揮することにより、メラニン生成が抑制され、美白効果が発揮されることとなる。
【0015】
また、本発明のモモ由来セラミドのエラスターゼ阻害活性作用によるシワの抑制やハリの保持効果は以下のように説明することができる。
すなわち、エラスチンは、網目状に構成されるコラーゲンを結びつけ、コラーゲンとともに肌のハリを維持しており、別名、「弾力繊維」と呼ばれ、ゴムのように伸縮する。そのため、加齢や紫外線、活性酸素、ストレス、エラスチン分解酵素(エラスターゼ)などによってエラスチンが減少すると、シワやたるみなど老化の原因となる。
このことから、エラスターゼを阻害する本発明のモモ由来セラミドには、エラスチンの分解を抑制し、肌のハリを回復または維持させ、その結果肌を若々しく保たせる効果が発揮される。
【0016】
本発明で使用するモモ由来セラミドは、本出願人であるオカヤス株式会社が種々の機能性を有する食品・化粧品素材として商品化し、提供しているモモ由来セラミド(商品名:「ピーチセラミド(登録商標)」を使用することができるが、具体的には以下のようにして調製される。
すなわち、成熟桃から種子及び果汁を取り除いた線維部分を含む桃加工残渣をエタノール抽出、又はエタノール/ヘキサン混液で抽出して、得られた抽出液を、さらにヘキサン/水により分配抽出することを特徴とする、活性酸素症機能を有し、且つ、スフィンゴ糖脂質(セラミド成分)を含有するモモ抽出物の製造方法により得られたモモセラミド組成物である。
【0017】
なお、本発明が提案する肌美容用化粧料は、モモ由来セラミドを有効成分として含有するものであるが、その化粧料の形態としては、当該化粧品分野において汎用されている基礎化粧品、メークアップ化粧品等におけるクリーム、ローション、化粧水等の形態をとることができる。
その場合におけるモモ由来セラミドの含有量は、目的に応じて種々設定できることは言うまでもない。
【実施例0018】
以下に本発明のチロシナーゼ阻害活性作用、エラスターゼ阻害活性作用の検討結果を実施例に代えて記載することによって、本発明を詳細に説明する。
【0019】
試験例1:チロシナーゼ活性
Dihydroxyphenylalanine(DOPA)を基質としたチロシナーゼ活性に及ぼすモモ由来セラミド(被試験品:Lot, PC-03-03-03, 純度:28.9% by HPLC)の効果を評価した。
<方法>
1.5 mLチューブ(Eppendorf製、独)に100μLの被試験品または対照(DMSO)、160μLの40 units/mLチロシナーゼ(Sigma-Aldrich, USA)溶液および50μLの100 mMリン酸buffer(pH6.8)を加え、ボルデックスミキサーを用いて溶液を混合し、23℃で50分間インキュベートした。ブランクはチロシナーゼ溶液の代替として100 mMリン酸bufferを用いた。1つの処理群に対し、32ウェルを使用した。
【0020】
3分後、200μLの3,4-L-Dihydroxyphenylalanine(L-DOPA)(Wako, Japan)溶液を加えて、ボルデックスミキサーを用いて溶液を混合した後、12,000×gで3分間遠心した。上清を1.5mLチューブに回収したものを96ウェルプレート(Corning, USA)に100μLずつ分取し、マイクロプレートリーダー(TECAN、スイス)を用いて490 nmの吸光度(OD490)を測定した。
【0021】
測定したプレートを23℃で10分間インキュベートし、10分後、490 nmの吸光度(OD490)を測定した。
【0022】
被験品、対照の吸光度(OD490)から被験品のチロシナーゼ活性率およびチロシナーゼ阻害活性率を、次式により算出した。
【0023】
【0024】
試験2:エラスターゼ阻害活性
Suc(OMe)-Ala-Ala-Pro-Val-MCAを基質としたエラスターゼ活性に及ぼす被験品の効果を評価した。
<方法>
1.5 mLチューブ(Eppendorf製、独)に300μLの被試験品または対照(DMSO)、200μLの5mU/mLエラスターゼ酵素(Sigma-Aldrich, USA)溶液、300μLの100 mM Tris-HCl buffer, 400μLのSuc(OMe)-Ala-Ala-Pro-Val-MCA(ペプチド研究所)溶液を加え、ボルデックスミキサーを用いて溶液を混合した後、36℃で15分間インキュベートした。ブランクはエラスターゼ酵素の代替として100 mM Tris-HCl bufferを用いた。1つの処理群に対し、32ウェルを使用した。
【0025】
15分後、12,000×gで3分間遠心し、上清を96ウェルプレートに100μLずつ分注した後、マイクロプレートリーダーを用いて蛍光強度(Ex/Em:360/465nm)を測定した。
【0026】
被験品、対照のOD415から被験品のエラスターゼ活性率およびエラスターゼ阻害活性率を、次式により算出した。
【0027】
【0028】
<有意差検定>
試験ごとに、対照と被験品添加群を対応のないt-検定で有意差検定を実施した。検定はいずれも両側で有意水準を5%未満とした。
【0029】
<各試験の結果>
1.試験例1:チロシナーゼ活性の結果
対照のチロシナーゼ活性率を100%とした被試験品のチロシナーゼ活性率、チロシナーゼ阻害活性率の平均および標準偏差を、下記表1「表1 被試験品のチロシナーゼ活性率および阻害活性率」として示し、チロシナーゼ活性率を棒グラフにした図を
図1として示した。
【0030】
2.試験2:エラスターゼ阻害活性の結果
対照のエラスターゼ活性率を100%とした被試験品のエラスターゼ活性率、エラスターゼ阻害活性率の平均および標準偏差を、下記表2「表2 被試験品のエラスターゼ活性率および阻害活性率」として示し、エラスターゼ活性率を棒グラフにした図を
図2として示した。
【0031】
【0032】
【0033】
以上に示した試験結果から、本発明のモモ由来セラミドは、優れたチロシナーゼ活性抑制作用が認められ、その作用により肌表皮におけるメラニンの生成が抑制されることから美白効果を効率よく発揮するものであることが確認された。
また、エラスターゼ活性阻害効果により、肌表皮のエラスチンの分解を抑制し、シワの防止、肌表面のハリの保持を促すことから、肌美容用組成物として有用なものであることも確認された。
本発明が提案する肌美容用化粧料は、モモ由来セラミドの機能性特性としてのチロシナーゼ活性阻害により、メラニン生成が抑制されることより美白効果が発揮され、また、エラスターゼ活性阻害作用によりエラスチンの分解が抑制され、シワの抑制やハリの保持効果が発揮される。したがって、モモ由来セラミドを用いた極めて特異的な肌美容用化粧料が提供される点で産業上の利用性は多大なものである。