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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005476
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】目地用ガスケット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/06 20060101AFI20230111BHJP
   E04B 1/684 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
F16J15/06 E
F16J15/06 H
E04B1/684 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107414
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若松 洋平
(72)【発明者】
【氏名】川西 康之
【テーマコード(参考)】
2E001
3J040
【Fターム(参考)】
2E001DA01
2E001FA04
2E001FA09
2E001FA51
2E001FA68
2E001GA67
2E001GA72
2E001HD11
2E001LA03
2E001LA09
2E001MA02
2E001MA04
3J040AA01
3J040BA07
3J040EA02
3J040EA16
3J040FA06
3J040HA03
3J040HA30
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で目地に挿入し易い目地用ガスケットを提供する。
【解決手段】目地用ガスケット1は、目地9をシールする目地用ガスケット1であって、設置状態で外観部分となるカバー部3と、カバー部3の下面側に配され、目地9内に挿入される断面柱状の基材部5と、基材部5から斜め上方へ延びる止水用の第1リップ部11及び第2リップ部13と、を備えている。基材部5のショアA硬度は、第1リップ部11及び第2リップ部13のショアA硬度よりも大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目地をシールする目地用ガスケットであって、
設置状態で外観部分となるカバー部と、
前記カバー部の下面側に配され、前記目地内に挿入される断面柱状の基材部と、
前記基材部から斜め上方へ延びる止水用のリップ部と、
を備え、
前記基材部のショアA硬度は、前記リップ部のショアA硬度よりも大きい、目地用ガスケット。
【請求項2】
前記基材部のショアA硬度は、70以上95以下であり、
前記リップ部のショアA硬度は、50以上90以下である、請求項1に記載の目地用ガスケット。
【請求項3】
前記基材部の上端部は、目地幅方向に幅広状である、請求項1又は請求項2に記載の目地用ガスケット。
【請求項4】
前記リップ部は、少なくとも第1リップ部と、前記第1リップ部よりも下側に位置する第2リップ部と、を備えて構成され、
前記第1リップ部と前記第2リップ部とは、ブリッジ部により連結されており、
前記第1リップ部と前記ブリッジ部とが接続する第1接続位置よりも第1リップ部基端側の位置であって、前記第1接続位置に隣接する位置における前記第1リップ部の厚さをAとし、
前記第2リップ部と前記ブリッジ部とが接続する第2接続位置よりも第2リップ部先端側の位置であって、前記第2接続位置に隣接する位置における前記第2リップ部の厚さをBとし、
前記ブリッジ部における最も厚みの小さい部分の厚さをCとすると、
C<A<B
の関係式を満たす、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の目地用ガスケット。
【請求項5】
前記基材部の下端は、目地幅方向の幅が末広がりの幅広部とされ、
前記幅広部の傾斜面に前記リップ部の根元が配されている、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の目地用ガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、目地用ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
目地用ガスケットは、建築物の外壁パネル間などに形成される溝(目地)に嵌めて用いられる。目地用ガスケットは、目地に挿入された状態で表面に露出する意匠部と、目地に嵌まり止水の機能を果たすリップ部と、意匠部およびリップ部を支持する基材部と、を備えている。
【0003】
特許文献1のガスケットは、中央柱部と、第1シールリップ部と、第1シールリップ部の下方側に配される第2シールリップ部と、第1シールリップ部と第2シールリップ部とを連結するブリッジ部と、を備えている。ブリッジ部は、第1シールリップ部及び第2シールリップ部から剥がし取り可能になっている。例えば、ガスケットが目地幅の比較的狭い目地に挿入される場合に、挿入可能になるようにブリッジ部が剥がし取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-22036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のガスケットでは、異なる目地幅の目地に対応させるために、ブリッジ部を剥がし取る作業が必要になる。また、ブリッジ部を剥がし取る分、材料が無駄になってしまう。そこで、異なる目地幅の目地であっても簡易な構成で挿入し易いガスケットが求められている。
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で目地に挿入し易い目地用ガスケットを提供することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔1〕目地をシールする目地用ガスケットであって、
設置状態で外観部分となるカバー部と、
前記カバー部の下面側に配され、前記目地内に挿入される断面柱状の基材部と、
前記基材部から斜め上方へ延びる止水用のリップ部と、
を備え、
前記基材部のショアA硬度は、前記リップ部のショアA硬度よりも大きい、目地用ガスケット。
【発明の効果】
【0007】
本開示の目地用ガスケットは、簡易な構成で目地に挿入し易い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】目地用ガスケットの一例を示す断面図である。
図2】目地用ガスケットの一例の取り付け状態を示す断面図である。
図3】目地用ガスケットの第1リップ部、第2リップ部及びブリッジ部の形状を説明するための断面図である。
図4】比較例1の目地用ガスケットを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
〔2〕前記基材部のショアA硬度は、70以上95以下であり、
前記リップ部のショアA硬度は、50以上90以下である、目地用ガスケット。
〔3〕前記基材部の上端部は、目地幅方向に幅広状である、目地用ガスケット。
〔4〕前記リップ部は、少なくとも第1リップ部と、前記第1リップ部よりも下側に位置する第2リップ部と、を備えて構成され、
前記第1リップ部と前記第2リップ部とは、ブリッジ部により連結されており、
前記第1リップ部と前記ブリッジ部とが接続する第1接続位置よりも第1リップ部基端側の位置であって、前記第1接続位置に隣接する位置における前記第1リップ部の厚さをAとし、
前記第2リップ部と前記ブリッジ部とが接続する第2接続位置よりも第2リップ部先端側の位置であって、前記第2接続位置に隣接する位置における前記第2リップ部の厚さをBとし、
前記ブリッジ部における最も厚みの小さい部分の厚さをCとすると、
C<A<B
の関係式を満たす、目地用ガスケット。
〔5〕前記基材部の下端は、目地幅方向の幅が末広がりの幅広部とされ、
前記幅広部の傾斜面に前記リップ部の根元が配されている、目地用ガスケット。
【0010】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「~」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10~20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10~20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0011】
1.目地用ガスケット1
本開示の目地用ガスケット1の一例を、図1に示す。目地用ガスケット1は、目地をシールするガスケットである。目地用ガスケット1は、建築物の外壁パネル間などに形成される溝(目地)に嵌めて用いられる。なお、目地用ガスケット1は、外壁パネル間に形成される目地に限られず、ユニットバスの内壁パネル間に形成される目地など、様々な目地への取り付けに適用できる。目地用ガスケット1は、帯状とされている。目地用ガスケット1は、図1に示されるように、カバー部3と、基材部5と、一対の第1リップ部11,11と、一対の第2リップ部13,13と、一対のブリッジ部15,15と、を備えている。第1リップ部11及び第2リップ部13は、本開示の「リップ部」に相当する。
【0012】
カバー部3は、目地用ガスケット1の表皮である。カバー部3は、図2に示すように、目地用ガスケット1が目地9に設置された状態で、目地用ガスケット1の外観部分となる。すなわち、カバー部3は、目地用ガスケット1が目地9に挿入された状態で、外部に露出する。
【0013】
基材部5は、カバー部3の下面側(裏面側)に配されている。基材部5は、目地用ガスケット1の断面柱状の本体とされている。基材部5は、目地9内に挿入される。基材部5の上端部5Aは、中腹部よりも目地幅方向に幅広状であることが好ましい。目地幅方向とは、図2に示すような目地9の断面において、一対の側壁9A,9Aが対向する方向である。図1に示すように、上端部5Aの目地幅方向の幅は、上方に向かって末広がりに広がっている。上端部5Aの表面(上面)は、上方に凸となる湾曲形状である。上端部5Aの表面にはカバー部3が配置されている。目地用ガスケット1の目地9への挿入時に、上端部5Aがカバー部3を介して広い範囲で押圧力を受けることができ、目地用ガスケット1の挿入時の挿入感を得やすくなる。
【0014】
基材部5の下端は、目地幅方向の幅が中腹部よりも広くなった末広がりの幅広部5Bであることが好ましい。幅広部5Bの両側面は、外側に向かって斜め下方に傾斜する傾斜面5Cであることが好ましい。基材部5は、鉄、ステンレス、真鍮等からなる帯状の金属製の芯材や、ガラス繊維やナイロン繊維、カーボン繊維からなる芯材などを内蔵してもよい。基材部5は、第1リップ部11及び第2リップ部13に接続されている。
【0015】
第1リップ部11,11及び第2リップ部13,13は、基材部5の両側面から斜め上方へ延びている。第1リップ部11及び第2リップ部13は、目地9に嵌まって止水の機能を果たす。第1リップ部11及び第2リップ部13は、弾性変形可能である。第1リップ部11は、図1に示す断面構造を見たときの基材部5の長手方向における中央付近から延びている。第2リップ部13は、第1リップ部11よりも下側に位置している。第2リップ部13の根元(基端)13Aは、幅広部5Bの傾斜面5Cに配されている。これにより、基材部5と第2リップ部13との間の剥がれを抑制し易くなる。ブリッジ部15は、第1リップ部11と第2リップ部13とを連結している。
【0016】
目地用ガスケット1は、図2に示されるように、例えば建築物の外壁パネル間などに形成される溝(目地9)に取り付けられる。詳細には、目地9に、基材部5の下端側部分、第1リップ部11及び第2リップ部13が嵌め込まれる。カバー部3は、目地9を塞いで外壁パネルなどの表面に配置される。目地9の目地幅は、一対の第1リップ部11,11の先端間の距離、及び一対の第2リップ部13,13の先端間の距離よりも狭くされている。目地9内に挿入された第1リップ部11及び第2リップ部13が弾性復元することで、第1リップ部11及び第2リップ部13が目地9内の側壁9Aを押圧して、目地用ガスケット1が目地9に固定される。
【0017】
(1)カバー部3
カバー部3は、ポリオレフィンエラストマーを含有することが好ましい。ポリオレフィンエラストマーは、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)であることが好ましい。
【0018】
オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)として、以下のものが例示される。
・三菱ケミカル社製 Trexprene(登録商標) A74
・ExxоnMobile社製 Santprene 691-73W175
・ダウ・ケミカル社製 INFUSE(登録商標) 9500
・三井化学社製 ミラストマー 8030NS
【0019】
カバー部3は、耐候安定剤、滑剤、酸化防止剤等の他の成分を含有できる。
耐候安定剤は、光エネルギーにより励起し生じるラジカルを補足して劣化連鎖反応を抑制する。耐候安定剤は、例えば、マスターバッチとして添加される。マスターバッチにおける有効成分の濃度は特に限定されない。有効成分の濃度は、通常5質量%以上30質量%である。耐候安定剤のマスターバッチの配合量は、カバー部3に含まれる樹脂成分の合計100質量部に対して、通常0.1質量部以上3.0質量部以下である。
滑剤としては、例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド、ベヘニン酸アミド、ステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸系の滑剤等が用いられる。滑剤を配合することで、カバー部3に傷が付くことが抑制される。
なお、カバー部3は、顔料を含有してもよい。カバー部3に顔料を含有させることで、好みの外観とすることができる。
【0020】
カバー部3のショアA硬度は、十分な挿入感を得る観点および目地の段差に追従するための柔軟性を担保する観点から、55以上85以下が好ましく、60以上80以下がより好ましく、65以上75以下が更に好ましい。
【0021】
(2)基材部5
基材部5は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)およびポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)からなる群より選ばれた1種以上であることが好ましい。オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)は、架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)であることが好ましい。
【0022】
基材部5は、加工助剤、耐候剤、酸化防止剤、滑剤、顔料等の添加剤を含有していてもよい。
加工助剤としては、例えば、アクリル系滑剤が挙げられる。アクリル系滑剤の市販品としては、例えば、アクリル系高分子外部滑剤(商品名「メタブレンL」、三菱ケミカル株式会社製)等が挙げられる。
耐候剤としては、例えば、NOR型ヒンダードアミン系化合物が好適に用いられる。NOR型ヒンダードアミン系化合物を主成分とする光安定剤は、例えば、高分子量型ヒンダードアミン系光安定剤と立体障害ヒンダードアミン系光安定剤の混合物であり、低塩基性の耐候安定剤システムである、BASF社製の「TINUVIN XT855 FF」を好適に用いることができる。なお、NOR型ヒンダードアミン系化合物とは、ピペリジン環のイミノ基(>N-H)のHがアルコキシル基(-OR)に置換されたヒンダードアミン系化合物である。
酸化防止剤として、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤が好適に用いられる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、アデカスタブAO-60(株式会社ADEKA製)が好適に例示される。アデカスタブAO-60は、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを含有する。ホスファイト系酸化防止剤としては、アデカスタブ2112(株式会社ADEKA製)が好適に例示される。アデカスタブ2112は、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトを含有する。
滑剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド、ベヘニン酸アミド、ステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド等が好適に用いられる。
【0023】
基材部5のショアA硬度は、第1リップ部11のショアA硬度及び第2リップ部13のショアA硬度よりも大きい。そのため、目地用ガスケット1の目地9への挿入時に、第1リップ部11及び第2リップ部13の撓み変形に伴って基材部5が変形しにくくなる。そのため、目地用ガスケット1を目地9に挿入し易くなる。基材部5のショアA硬度は、基材部5の変形を抑制する観点から、70以上が好ましく、80以上がより好ましく、85以上が更に好ましい。基材部5のショアA硬度は、基材部5の弾力性を確保する観点から、95以下が好ましく、93以下がより好ましく、90以下が更に好ましい。よって、基材部5のショアA硬度は、70以上95以下が好ましく、80以上93以下がより好ましく、85以上90以下が更に好ましい。
【0024】
基材部5の目地幅方向の厚さ(上端部5Aおよび幅広部5Bを除く部分の厚さ)は、図1のXの矢印で示す厚さである。基材部5の目地幅方向の厚さは、基材部5の変形を抑制する観点から、1.0mm以上が好ましく、1.2mm以上がより好ましく、1.4mm以上が更に好ましい。基材部5の目地幅方向の厚さは、基材部5の弾力性を確保する観点から、2.4mm以下が好ましく、2.2mm以下がより好ましく、2.0mm以下が更に好ましい。よって、基材部5の目地幅方向の厚さは、1.0mm以上2.4mm以下が好ましく、1.2mm以上2.2mm以下がより好ましく、1.4mm以上2.0mm以下が更に好ましい。
【0025】
基材部5において、上端部5Aを異なる材料で構成してもよい。例えば、上端部5Aは、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)を含有する構成としてもよい。
【0026】
基材部5の上端部5Aの目地幅方向への広がり幅(図1のXの厚みを有する部分よりも目地幅方向へ広がる大きさ)は、目地用ガスケット1の挿入感を確保する観点から、0.5mm以上が好ましく、0.8mm以上がより好ましく、1.0mm以上が更に好ましい。なお、基材部5の上端部5Aは、カバー部3の全体と重なるように幅広になっていてもよい。
【0027】
(3)第1リップ部11、第2リップ部13、及びブリッジ部15
第1リップ部11、第2リップ部13、及びブリッジ部15は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)およびポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)からなる群より選ばれた1種以上であることが好ましい。オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)は、架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)であることが好ましく、止水性能の観点から、シラン架橋ポリオレフィンエラストマーであることがより好ましい。第1リップ部11、第2リップ部13、及びブリッジ部15は、カバー部3および基材部5と複層押出にて一体的に成形されることが好ましい。
【0028】
第1リップ部11、第2リップ部13、及びブリッジ部15には、必要に応じ、所望の物性を損なわない範囲内で、樹脂に通常用いられる添加成分、例えば強化剤、難燃剤、帯電防止剤、酸化防止剤、充填剤(炭酸カルシウム等)等を添加することができる。
【0029】
第1リップ部11、第2リップ部13、及びブリッジ部15の厚さの関係について説明する。図3に示すように、第1リップ部11とブリッジ部15とが接続する第1接続位置L1よりも第1リップ部基端11A側の位置であって、第1接続位置L1に隣接する位置N1における第1リップ部11の厚さをAとする。位置N1は、ブリッジ部15と重ならない位置である。第2リップ部13とブリッジ部15とが接続する第2接続位置L2よりも第2リップ部先端13B側の位置であって、第2接続位置L2に隣接する位置N2における第2リップ部13の厚さをBとする。位置N2は、ブリッジ部15と重ならない位置である。ブリッジ部15における最も厚みの小さい部分の厚さをCとする。例えば、図3に示す目地用ガスケット1では、第1接続位置L1から第2接続位置L2に亘ってブリッジ部15の厚さが均一である。そのため、ブリッジ部15の任意の部分の厚さがCとなる。A、B、Cが、C<A<Bの関係式を満たすことが好ましい。ブリッジ部15、第1リップ部11、第2リップ部13の順に止水性への寄与が大きくなるため、C<A<Bの関係式を満たすことで、目地用ガスケット1の止水性を担保し易くなる。また、C<A<Bの関係式を満たすことで、ブリッジ部15の厚さを比較的小さくできる。そのため、ブリッジ部15は、変形度合いの異なる第1リップ部11及び第2リップ部13の姿勢をある程度保ちつつ、第1リップ部11及び第2リップ部13の撓み変形に追従し易くなる。
【0030】
2.目地用ガスケット1の効果
本開示の目地用ガスケット1において、基材部5のショアA硬度は、第1リップ部11のショアA硬度及び第2リップ部13のショアA硬度よりも大きい。そのため、目地用ガスケット1の目地9への挿入時に、第1リップ部11及び第2リップ部13の撓み変形に伴って基材部5が変形しにくくなる。これにより、目地用ガスケット1を目地9に挿入し易くなる。特に、別途複雑な構造を追加する構成はでないため、簡易な構成で目地用ガスケット1の目地9への挿入のし易さを向上できる。
本開示の目地用ガスケット1において、基材部5のショアA硬度が70以上95以下であり、第1リップ部11のショアA硬度及び第2リップ部13のショアA硬度が50以上90以下である。これにより、目地用ガスケット1は、基材部5の変形を抑制しつつ、第1リップ部11及び第2リップ部13が撓み変形し易い構成となる。
本開示の目地用ガスケット1において、基材部5の上端部5Aは、目地幅方向に幅広状である。これにより、基材部5の上端部5Aは、比較的硬度の高い基材部5の一部として構成される上、目地幅方向に幅広状となる。そのため、目地用ガスケット1の目地9への挿入時に、カバー部3を介して広い範囲で押圧力を受けることができ、目地用ガスケット1の挿入時の挿入感を得やすくなる。
本開示の目地用ガスケット1において、第1接続位置L1よりも第1リップ部基端11A側の位置であって、第1接続位置L1に隣接する位置N1における第1リップ部11の厚さをAとする。第2接続位置L2よりも第2リップ部先端13B側の位置であって、第2接続位置L2に隣接する位置N2における第2リップ部13の厚さをBとする。ブリッジ部15における最も厚みの小さい部分の厚さをCとする。A、B、Cが、C<A<Bの関係式を満たす。ブリッジ部15、第1リップ部11、第2リップ部13の順に止水性への寄与が大きくなるため、C<A<Bの関係式を満たすことで、目地用ガスケット1の止水性を担保し易くなる。また、C<A<Bの関係式を満たすことで、ブリッジ部15の厚さを比較的小さくできる。そのため、ブリッジ部15は、変形度合いの異なる第1リップ部11及び第2リップ部13の姿勢をある程度保ちつつ、第1リップ部11及び第2リップ部13の撓み変形に追従し易くなる。
本開示の目地用ガスケット1において、基材部5の下端は、目地幅方向の幅が末広がりの幅広部5Bとされている。幅広部5Bの傾斜面5Cに第2リップ部13の根元が配されている。これにより、幅広部5Bが設けられない基材部5の下端(上下に延びる側面)に第2リップ部13の根元が配される構成に比べて、基材部5と第2リップ部13との間の剥がれを抑制し易くなる。
【実施例0031】
以下、実施例を示し、本開示をさらに具体的に説明する。ただし、本開示は、この実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0032】
1.目地用ガスケットの作製
表1に示すカバー部、基材部、第1リップ部、第2リップ部およびブリッジ部の組み合わせで実施例1および比較例1の目地用ガスケットを作製した。実施例1の目地用ガスケットは、図1に示す目地用ガスケットの形状と同じである。比較例1の目地用ガスケットは、図4に示す形状となっている。
【0033】
【表1】
【0034】
2.実施例1の目地用ガスケット
(2-1)カバー部
カバー部には、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)を用いた。具体的には、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)として、ExxоnMobile社の製品Santprene 691-73W175を用いた。
【0035】
カバー部の硬度は、ショアA硬度を測定した。ショアA硬度は、ASKER社の製品ショアA硬度計(デュロメータータイプA)を用いてJIS K 6253-1997によって測定した。カバー部のショアA硬度は、70であった。
【0036】
(2-2)基材部
基材部には、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)を用いた。具体的には、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)として、リケンテクノス社の製品LVA0248Tを用いた。
【0037】
基材部の硬度は、カバー部の硬度と同様に測定し、90であった。
【0038】
基材部の厚さは、目地幅方向の厚さ(図1参照)である。具体的には、図1に示すように、上端部5Aおよび幅広部5Bを除く部分の厚さであり、Xの矢印で示す厚さである。基材部の厚さは、1.6mmあった。
【0039】
基材部の上端部は、目地幅方向に幅広状である(図1の上端部5A参照)。基材部の下端(幅広部)において、目地幅方向の幅が末広がりになっている。
【0040】
(2-3)第1リップ部、第2リップ部およびブリッジ部
第1リップ部、第2リップ部およびブリッジ部には、シラン架橋ポリオレフィンエラストマーを用いた。
【0041】
第1リップ部、第2リップ部およびブリッジ部の硬度は、カバー部の硬度と同様に測定し、75であった。
【0042】
第2リップ部の根元は、基材部の下端(幅広部)の傾斜面に配されている(図1の根元13A参照)。
【0043】
3.比較例1の目地用ガスケット
(3-1)カバー部
カバー部には、TPO(ExxоnMobile社の製品Santprene 691-73W175)を用いた。
【0044】
カバー部の硬度は、実施例1のカバー部の硬度と同様に測定し、70であった。
【0045】
(3-2)基材部
基材部には、TPO(シラン架橋ポリオレフィンエラストマーをドメイン、ポリプロピレンまたはポリエチレンをマトリクスとした、海島構造を持つ架橋型熱可塑性エラストマー)を用いた。
【0046】
基材部の硬度は、カバー部の硬度と同様に測定し、75であった。
【0047】
基材部の厚さは、実施例の基材部の厚さと同様に測定し、2.4mmであった。
【0048】
基材部の上端部は、目地幅方向に幅広状である(図4の上端部25A参照)。実施例1の目地用ガスケットの基材部の上端部(図1の上端部5A参照)よりも目地幅方向への突出量が小さい。
【0049】
(3-3)第1リップ部、第2リップ部およびブリッジ部
第1リップ部、第2リップ部およびブリッジ部は、基材部と一体に形成されている。第1リップ部、第2リップ部およびブリッジ部の材料および硬度は、基材部と同じである。
【0050】
4.評価
実施例1および比較例1の目地用ガスケットにおいて、目地幅の異なる目地への挿入を試みた。実施例1の目地用ガスケットは、7mm目地幅への挿入結果、および10mm目地幅への挿入結果は、ともに「挿入可能」であった。「挿入可能」とは、基材部が目地に挿入され、カバー部によって目地が覆われ、第1リップ部及び第2リップ部によってシール性を確保できることである。比較例1の目地用ガスケットは、7mm目地幅への挿入結果は「挿入不可」であり、10mm目地幅への挿入結果は「挿入可能」であった。実施例1では、基材部の硬度を比較的高くしつつ、基材部の厚さを比較的小さくした。そのため、基材部の変形を抑制しつつ、第1リップ部及び第2リップ部の長さを大きくして撓み変形し易くできた。これにより、実施例1の目地用ガスケットは、小さい目地幅(7mmの目地幅)の目地でも挿入可能であったと考えられる。
【0051】
10mm目地幅への挿入結果において、実施例1は挿入荷重が20Nであるのに対し、比較例1は挿入荷重が36Nであった。実施例1では、基材部の硬度を比較的高くしつつ、基材部の厚さを比較的小さくした。そのため、基材部の変形を抑制しつつ、第1リップ部及び第2リップ部の長さを大きくして撓み変形し易くできた。これにより、実施例1の目地用ガスケットは、10mm目地幅の目地に対して、比較例1よりも大幅に小さい挿入荷重で挿入できたと考えられる。
【0052】
5.実施例の効果
実施例1の目地用ガスケットは、目地に挿入し易かった。
実施例1の目地用ガスケットは、細い目地幅(7mm)の目地に対して、加工等をすることなく小さい挿入荷重で挿入できた。
実施例1の目地用ガスケットは、外形を変えることなく異なる目地幅の目地へ挿入することができたため、異なる目地幅の目地への挿入状態でシール性が確保できた。
実施例1の目地用ガスケットは、1種類の形状で、目地幅の異なる目地に対して広く対応することができた。
【0053】
[他の実施形態]
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、様々な変形又は変更が可能である。
上記実施形態において、目地用ガスケット1は、第1リップ部11及び第2リップ部13を備えていたが、これら以外のリップ部を更に備えていてもよい。すなわち、リップ部の数は特に限定されない。
【符号の説明】
【0054】
1 …目地用ガスケット
3 …カバー部
5 …基材部
5B …幅広部
5C …傾斜面
9 …目地
11 …第1リップ部(リップ部)
11A …第1リップ部基端
13 …第2リップ部(リップ部)
13A …根元(基端)
13B …第2リップ部先端
15 …ブリッジ部
図1
図2
図3
図4