IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 沢井製薬株式会社の特許一覧

特開2023-54766アピキサバン含有粒子、それを含む医薬組成物、及びそれらの製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054766
(43)【公開日】2023-04-14
(54)【発明の名称】アピキサバン含有粒子、それを含む医薬組成物、及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4545 20060101AFI20230407BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20230407BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230407BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
A61K31/4545
A61P7/02
A61K9/14
A61K47/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156767
(22)【出願日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2021163343
(32)【優先日】2021-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000209049
【氏名又は名称】沢井製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】隈元 信貴
(72)【発明者】
【氏名】生野 浩平
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076BB01
4C076CC14
4C076DD27
4C076DD29
4C076FF02
4C076FF63
4C076GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA41
4C086MA52
4C086NA03
4C086ZA54
(57)【要約】
【課題】一実施形態において、より簡便な手段を用いて、アピキサバンの非晶質安定性を向上させたアピキサバン含有粒子又はそれを含む医薬組成物を提供する。または、一実施形態において、アピキサバンの非晶質安定性を向上させたアピキサバン含有粒子又はそれを含む医薬組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態によると、アピキサバン含有粒子は、非晶質のアピキサバンと、担体として多孔質のケイ酸塩と、を含む。また、非晶質のアピキサバンの重量に対して、100重量%以上の多孔質のケイ酸塩を担体として含んでもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質のアピキサバンと、担体として多孔質のケイ酸塩と、を含む、アピキサバン含有粒子。
【請求項2】
前記非晶質のアピキサバンの重量に対して、100重量%以上の前記多孔質のケイ酸塩を担体として含む、請求項1に記載のアピキサバン含有粒子。
【請求項3】
前記多孔質のケイ酸塩は、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、及びアルミニウムケイ酸塩からなる群から選択される一つ以上の多孔質のケイ酸塩である、請求項1又は2に記載のアピキサバン含有粒子。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一に記載のアピキサバン含有粒子と、医薬的に許容される1つ以上の添加剤と、を含む、アピキサバン含有医薬組成物。
【請求項5】
アピキサバンを、酢酸を含む溶媒に溶解して溶液を調製し、
前記溶液を多孔質のケイ酸塩に添加して、溶媒を除去し、
非晶質のアピキサバンと、前記多孔質のケイ酸塩と、を含む粒子を得る、アピキサバン含有粒子の製造方法。
【請求項6】
前記多孔質のケイ酸塩は、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、及びアルミニウムケイ酸塩からなる群から選択される一つ以上の多孔質のケイ酸塩である、請求項5に記載のアピキサバン含有粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のアピキサバン含有粒子の製造方法により製造したアピキサバン含有粒子と、医薬的に許容される1つ以上の添加剤と、を混合して、打錠する、アピキサバン含有医薬組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、アピキサバン含有粒子に関する、または、本発明の一実施形態は、アピキサバン含有粒子を含む医薬組成物に関する。または、本発明の一実施形態は、アピキサバン含有粒子の製造方法に関する、または、本発明の一実施形態は、アピキサバン含有粒子を含む医薬組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アピキサバン(1-(4-Methoxyphenyl)-7-oxo-6-[4-(2-oxopiperidin-1-yl)phenyl]-4,5,6,7-tetrahydro-1H-pyrazolo [3,4-c]pyridine-3-carboxamide)は、血液凝固活性化第X因子(FXa)を可逆的に阻害する経口抗凝固薬であり、血栓塞栓性疾患の治療に有効である(特許文献1)。アピキサバンは難溶性薬物であるため、特許文献1においては、非晶質のアピキサバンと、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択されるポリマーとを含む固体非晶質分散物を用いることで、アピキサバンの溶解性を改善している。しかし、特許文献1においては、アピキサバン含有製剤からのアピキサバンの放出制御を課題としており、アピキサバン非晶質の安定性についての記載はなく、製剤中でアピキサバンが非晶質状態で維持されているかについては一切の検討がなされていない。
【0003】
特許文献1の記載から、アピキサバンは難溶性薬物であり、アピキサバン固体分散体を用いることにより、アピキサバンの溶解性の改善が見込まれる。一方で、本発明者らが検討した結果、アピキサバンは非晶質形態では安定性が低く、固体分散体中であっても結晶化しやすいことが明らかとなった。
【0004】
また、特許文献1において、アピキサバン固体非晶質分散物の製造方法が開示されているが、製造過程でスプレードライヤーと呼ばれる特殊な機械が必要であるとともに、製造に長時間かかることが示されている。製造時間が長い程、製造数量は少なくなる。そのため、固体分散体以外のより簡便な製造方法で製造可能なアピキサバンの非晶質安定性を向上させた医薬組成物の開発が望まれる。
【0005】
例えば、多孔質体に原薬を吸着させる方法は、高速撹拌造粒機などの一般的に使用されている機械を用いて、より短い時間で製造可能であり、固体分散体に比べて簡便な方法といえる。多孔質体に原薬を吸着させる場合、溶媒が吸着物内に残留することから、通常、溶媒としては精製水等が用いられる。しかし、アピキサバンは難溶性薬物であることから、それらの溶媒に溶解させるためには、多量の溶媒が必要となり、多孔質体の吸着限界を超えることとなる。このため、多孔質体吸着法をアピキサバンに適用することはこれまで行われていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許5775071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するものであって、固体分散体以外の簡便な手段を用いて、アピキサバンの非晶質安定性を向上させたアピキサバン含有粒子又はそれを含む医薬組成物を提供することを目的の一つとする。または、一実施形態において、アピキサバンの非晶質安定性を向上させたアピキサバン含有粒子又はそれを含む医薬組成物の製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によると、非晶質のアピキサバンと、担体として多孔質のケイ酸塩と、を含む、アピキサバン含有粒子が提供される。
【0009】
非晶質のアピキサバンの重量に対して、100重量%以上の多孔質のケイ酸塩を担体として含んでもよい。
【0010】
多孔質のケイ酸塩は、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、及びアルミニウムケイ酸塩からなる群から選択される一つ以上の多孔質のケイ酸塩であってもよい。
【0011】
本発明の一実施形態によると、前記何れかに記載のアピキサバン含有粒子と、医薬的に許容される1つ以上の添加剤と、を含む、アピキサバン含有医薬組成物が提供される。
【0012】
本発明の一実施形態によると、アピキサバンを、酢酸を含む溶媒に溶解した溶液を調製し、前記溶液を多孔質のケイ酸塩に添加して、溶媒を除去し、非晶質のアピキサバンと、担体として多孔質のケイ酸塩と、を含む粒子を得る、アピキサバン含有粒子の製造方法が提供される。
【0013】
アピキサバン含有粒子に含まれる非晶質のアピキサバンの重量に対して、100重量%以上の多孔質のケイ酸塩を担体として含むように、非晶質のアピキサバンと、担体として多孔質のケイ酸塩と、を含む粒子を調製してもよい。
【0014】
多孔質のケイ酸塩は、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、及びアルミニウムケイ酸塩からなる群から選択される一つ以上の多孔質のケイ酸塩であってもよい。
【0015】
本発明の一実施形態によると、前記何れかに記載のアピキサバン含有粒子の製造方法により製造したアピキサバン含有粒子と、医薬的に許容される1つ以上の添加剤と、を混合して、打錠する、アピキサバン含有医薬組成物の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施形態によると、より簡便な手段を用いて、アピキサバンの非晶質安定性を向上させたアピキサバン含有粒子又はそれを含む医薬組成物が提供される。または、本発明の一実施形態によると、アピキサバンの非晶質安定性を向上させたアピキサバン含有粒子又はそれを含む医薬組成物の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るアピキサバン含有粒子及びそれを含む医薬組成物について詳細に説明する。ただし、本発明のアピキサバン含有粒子及びそれを含む医薬組成物は、以下に示す実施形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0018】
本発明に係るアピキサバン含有粒子は、非晶質のアピキサバンと、担体として多孔質のケイ酸塩と、を含む。本明細書において、「多孔質のケイ酸塩」とは、表面に多数の孔が形成された、吸着能を有するケイ酸塩の粒子である。一実施形態において、多孔質のケイ酸塩は、医薬的に許容された多孔質のケイ酸塩であり、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、及びアルミニウムケイ酸塩からなる群から選択することができる。
【0019】
一実施形態において、アピキサバン含有粒子は、多孔質のケイ酸塩の表面及び/又は孔の内部に非晶質の状態のアピキサバンが吸着した粒子である。本実施形態においては、アピキサバン含有粒子が、非晶質のアピキサバンが多孔質のケイ酸塩の表面及び/又は孔の内部に吸着した吸着体であることにより、アピキサバン含有粒子において、アピキサバンの非晶質の状態を維持することができる。
【0020】
一実施形態において、アピキサバン含有粒子に含まれる非晶質のアピキサバンの重量に対して、100重量%以上の多孔質のケイ酸塩が担体としてアピキサバン含有粒子に含まれる。一実施形態において、アピキサバン含有粒子に含まれる非晶質のアピキサバンの重量に対して900重量%以下の多孔質のケイ酸塩が担体としてアピキサバン含有粒子に含まれてもよい。一方、アピキサバン含有粒子に含まれる非晶質のアピキサバンに対して、多孔質のケイ酸塩が100重量%より少ない場合には、アピキサバン含有粒子を得ることは困難である。また、アピキサバン含有粒子に含まれる非晶質のアピキサバンに対して、多孔質のケイ酸塩を1000重量%以上にすることも可能であるが、一錠中のケイ酸塩の含有量が多くなり、結果として得られる錠剤の硬度が低くなることによって、打錠に問題が生じるため、好ましくない。
【0021】
[医薬組成物]
本発明に係るアピキサバン含有医薬組成物は、上述したアピキサバン含有粒子を含む。本発明に係るアピキサバン含有医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等であってもよく、特には限定されない。一実施形態において、本発明に係るアピキサバン含有医薬組成物は、医薬的に許容される1つ以上の添加剤を含む。アピキサバン含有医薬組成物は、1錠あたりアピキサバンを2.5mg又は5mg含むが、これらに限定されず、必要に応じて処方を変更することも可能である。
【0022】
アピキサバン含有医薬組成物が含む医薬的に許容される添加剤としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、安定化剤、矯味剤、滑沢剤及び香料等が挙げられるが、特には限定されない。これらの添加剤から、1つ以上を選択してアピキサバン含有錠剤を構成することができる。また、これらの添加剤の2種以上を組み合わせて事前に混合した添加剤を含んでもよい。
【0023】
賦形剤は、例えば、糖類、糖アルコール類、デンプン類、セルロース類、カルメロース類、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、リン酸塩、炭酸塩及び硫酸塩等から選択することができる。糖類としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、トレハロース、マルトース等が挙げられる。糖アルコール類としては、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、イソマルト等が挙げられる。また、デンプン類としては、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、デキストリン等が挙げられる。セルロース類としては、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。カルメロース類としては、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム等が挙げられる。リン酸塩としては、リン酸水素カルシウム等が挙げられる。炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。硫酸塩としては、硫酸カルシウム等が挙げられる。これらの賦形剤は、単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0024】
結合剤は、例えば、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、エチルセルロースおよびメチルセルロースなどのセルロース類、ポビドン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール完全けん化物、ポリビニルアルコール部分けん化物、カルボキシビニルポリマー、ポリ塩化ビニルなどのビニル系高分子物質、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(E、RS)、メタクリル酸コポリマー(L、S、LD)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液などのアクリル系高分子物質、ステアリルアルコール、ゼラチン、デキストリン、アラビアゴム、プルラン、マクロゴール、デンプン等から選択することができる。
【0025】
崩壊剤は、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウムおよびメチルセルロースなどのセルロース類、部分アルファー化デンプンおよびトウモロコシデンプンなどのデンプン類、クロスポビドン等から選択することができる。
【0026】
安定化剤は、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスパラギン酸、アスパラギン酸ナトリウム、アルギニン、エデト酸ナトリウム、無水クエン酸、クエン酸水和物、クエン酸ナトリウム水和物、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、ステアリン酸、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム等から選択することができる。
【0027】
矯味剤は、例えば、アスコルビン酸、アスパラギン酸、アスパラギン酸ナトリウム、アスパルテーム、カラメル、還元麦芽糖水アメ、グリチルリチン酸、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビア抽出精製物、精製白糖、メントール等から選択することができる。
【0028】
滑沢剤は、例えば、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ロイシン等から選択することができる。
【0029】
本実施形態に係るアピキサバン含有医薬組成物は、非晶質のアピキサバンが多孔質のケイ酸塩の表面及び/又は孔の内部に吸着した吸着体であるアピキサバン含有粒子を含むことにより、アピキサバンの非晶質の状態を維持することができる。このようなアピキサバンの吸着体を用いるアピキサバン含有医薬組成物は、これまでに知られておらず、本願において初めて実現される。
【0030】
[アピキサバン含有粒子の製造方法]
本実施形態に係るアピキサバン含有粒子は、多孔質のケイ酸塩の表面及び/又は孔の内部に非晶質の状態のアピキサバンが吸着した粒子である。例えば、アピキサバンを、酢酸を含む溶媒に溶解した溶液を調製する。溶液を多孔質のケイ酸塩に添加して、溶媒を除去する。なお、本実施形態においては、アピキサバン含有粒子の非晶質が維持されれば、アピキサバン含有粒子を製造するための原料として用いるアピキサバンは、非晶質のアピキサバンであってもよく、アピキサバン結晶であってもよい。
【0031】
多孔質体に原薬を吸着させる場合、溶媒が吸着物内に残留しやすいことから、通常、溶媒としては精製水等が用いられる。一方、アピキサバンは難溶性薬物であることから、それらの溶媒に溶解させるためには、多量の溶媒が必要となり、多孔質体の吸着限界を超えることとなるため、精製水等は溶媒としては不適切である。本実施形態においては、アピキサバンを酢酸に溶解して、多孔質のケイ酸塩に吸着させることができる。また、酢酸を含む溶媒を用いることにより、アピキサバンを溶解するとともに、非晶質のアピキサバンを多孔質のケイ酸塩に吸着させて、アピキサバンの非晶質状態を維持することができる。
【0032】
一実施形態において、アピキサバン含有粒子に含まれる非晶質のアピキサバンの重量に対して、100重量%以上の多孔質のケイ酸塩を担体として含むように、非晶質のアピキサバンと、担体として多孔質のケイ酸塩と、を含む粒子を調製する。一実施形態において、アピキサバン含有粒子に含まれる非晶質のアピキサバンの重量に対して900重量%以下の多孔質のケイ酸塩を担体として含むように、非晶質のアピキサバンと、担体として多孔質のケイ酸塩と、を含む粒子を調製してもよい。アピキサバン含有粒子に含まれる非晶質のアピキサバンに対して、多孔質のケイ酸塩が100重量%より少ない場合には、アピキサバン含有粒子を得ることは困難である。また、アピキサバン含有粒子に含まれる非晶質のアピキサバンに対して、多孔質のケイ酸塩を1000重量%以上にすることも可能であるが、一錠中のケイ酸塩の含有量が多くなり、結果として得られる医薬組成物の硬度が低くなることによって、打錠に問題が生じるため、好ましくない。
【0033】
溶液から溶媒を除去することにより、非晶質のアピキサバンと、担体として多孔質のケイ酸塩と、を含む粒子を得ることができる。溶媒を除去する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、棚式乾燥機を用いることができる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態の製造方法においては、スプレードライヤーを用いない、より簡便な方法でアピキサバン含有粒子を含む医薬組成物を製造することができる。
【0035】
[アピキサバン含有医薬組成物の製造方法]
本実施形態に係るアピキサバン含有医薬組成物は、アピキサバン含有粒子と、上述した医薬的に許容される1つ以上の添加剤と、を混合し、得られた混合物を打錠することにより製造することができる。また、添加剤の2種以上を組み合わせて事前に混合した添加剤を用いてもよい。
【0036】
本実施形態においては、非晶質のアピキサバンが多孔質のケイ酸塩の表面及び/又は孔の内部に吸着した吸着体であるアピキサバン含有粒子を含むことにより、アピキサバン含有医薬組成物においてアピキサバンの非晶質の状態を維持することができる。
【0037】
[非晶質の評価]
アピキサバンの非晶質状態は、粉末X線回折測定法にて評価することができる。本明細書において、「非晶質」とは、粉末X線回折測定法により得られた回折パターンにおいて、結晶成分に由来するピークが検出されないことを意味する。「ピークが検出されない」とは、回折パターンにおいて、ベースラインに対してブロードなハローパターンが観察され、結晶成分に由来する顕著なピークが観察されないことを意味する。
【実施例0038】
[多孔質のケイ酸塩の検討]
アピキサバン含有粒子に用いる多孔質のケイ酸塩を検討した。
【0039】
[実施例1]
多孔質のケイ酸塩として、含水二酸化ケイ素を用いた。アピキサバン結晶 4gを酢酸 25gに溶解させた。乳鉢を用いて、得られた溶液を含水二酸化ケイ素(SYLOPURE(登録商標)P100、富士シリシア化学株式会社) 16gに添加して、アピキサバンを含水二酸化ケイ素に吸着させた。その後、アピキサバンを吸着させた含水二酸化ケイ素を棚式乾燥機で乾燥させ、溶媒を除去し、非晶質のアピキサバンに対して、400重量%の含水二酸化ケイ素を含む、実施例1のアピキサバン含有粒子を得た。
【0040】
[実施例2]
多孔質のケイ酸塩を含水二酸化ケイ素(Fujisil(登録商標)、富士化学工業株式会社)に変更したこと以外は、実施例1と同様の製造方法により、非晶質のアピキサバンに対して、400重量%の含水二酸化ケイ素を含む、実施例2のアピキサバン含有粒子を得た。
【0041】
[実施例3]
多孔質のケイ酸塩を含水二酸化ケイ素(Parteck(登録商標)SLC、Merck Millipore社)に変更したこと以外は、実施例1と同様の製造方法により、非晶質のアピキサバンに対して、400重量%の含水二酸化ケイ素を含む、実施例3のアピキサバン含有粒子を得た。
【0042】
[実施例4]
多孔質のケイ酸塩を軽質無水ケイ酸(アドソリダー(登録商標)101、フロイント産業株式会社)に変更したこと以外は、実施例1と同様の製造方法により、非晶質のアピキサバンに対して、400重量%の軽質無水ケイ酸を含む、実施例4のアピキサバン含有粒子を得た。
【0043】
[実施例5]
多孔質のケイ酸塩をメタケイ酸アルミン酸マグネシウム(ノイシリン(登録商標)UFL2、富士化学工業株式会社)に変更したこと以外は、実施例1と同様の製造方法により、非晶質のアピキサバンに対して、400重量%のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含む、実施例5のアピキサバン含有粒子を得た。
【0044】
[非晶質の評価]
粉末X線回折測定法にて、実施例1~5のアピキサバン含有粒子が非晶質状態であることを確認した。また、それぞれのアピキサバン含有粒子を、25℃、相対湿度75%の開放条件下で1ヶ月間保存し、粉末X線回折測定法にて、非晶質状態を確認した。なお、比較例1として、非晶質のアピキサバン単体も評価した。測定には、粉末X線回折装置Bruker D8 ADVANCEを用い、Cu-Ka線、管電圧40kV、管電流40mA、測定範囲:2θ=10.0~25.0°、スキャンスピード:1sec/step、ステップサイズ:0.015°の条件により測定した。
【0045】
非晶質状態の評価結果を表1に示す。
【表1】
【0046】
表1の結果より、多孔質のケイ酸塩として含水二酸化ケイ素を用いた実施例1~3及び多孔質のケイ酸塩として軽質無水ケイ酸を用いた実施例4並びに多孔質のケイ酸塩としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを用いた実施例5のアピキサバン含有粒子は、1ヶ月の保存後においてもアピキサバンが非晶質状態を維持することが示された。一方、非晶質のアピキサバン単体の比較例1では、アピキサバンの非晶質状態を維持することはできず、担体である多孔質のケイ酸塩に吸着させる必要があることが明らかとなった。以上の結果より、本発明に係るアピキサバン含有粒子においては、多孔質のケイ酸塩の種類にかかわらず、担体として多孔質のケイ酸塩を含むことにより、アピキサバンの非晶質状態を維持することができることが明らかとなった。
【0047】
上記の実施例1~5のアピキサバン含有粒子を用いて、アピキサバン含有医薬組成物を製造した。また、比較例2として、多孔質のケイ酸塩に代えてD-マンニトールを用いたアピキサバン含有医薬組成物を製造した。
【0048】
[実施例6]
実施例1のアピキサバン含有粒子 6.25g、ラウリル硫酸ナトリウム(エマールOS、花王株式会社) 0.5g、D-マンニトール(マンニット-P、三菱商事ライフサイエンス株式会社) 34.6275g、結晶セルロース(CEOLUS(登録商標)PH-101、旭化成株式会社) 4.275g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC(登録商標)NBD-022、信越化学工業株式会社) 2.1375g、クロスポビドン(Kollidon(登録商標)CL-F、BASFジャパン) 0.855g、クロスポビドン(Kollidon(登録商標)CL-M、BASFジャパン) 0.855g、及びステアリン酸マグネシウム(植物性、太平化学産業株式会社) 0.5gをビニール袋中で混合し、ロータリー式打錠機(株式会社菊水製作所)にて打錠し、100mgの実施例6のアピキサバン含有医薬組成物を得た。
【0049】
[実施例7]
実施例2のアピキサバン含有粒子を用いたこと以外は、実施例6と同様の製造方法により、実施例7のアピキサバン含有医薬組成物を得た。
【0050】
[実施例8]
実施例3のアピキサバン含有粒子を用いたこと以外は、実施例6と同様の製造方法により、実施例8のアピキサバン含有医薬組成物を得た。
【0051】
[実施例9]
実施例4のアピキサバン含有粒子を用いたこと以外は、実施例6と同様の製造方法により、実施例9のアピキサバン含有医薬組成物を得た。
【0052】
[実施例10]
実施例5のアピキサバン含有粒子を用いたこと以外は、実施例6と同様の製造方法により、実施例10のアピキサバン含有医薬組成物を得た。
【0053】
[比較例2]
多孔質のケイ酸塩に代えてD-マンニトールを用いた。非晶質のアピキサバン 1.25g、D-マンニトール(グラニュトールF、フロイント産業株式会社) 5g、ラウリル硫酸ナトリウム(エマールOS、花王株式会社) 0.5g、D-マンニトール(マンニット-P、三菱商事ライフサイエンス株式会社) 34.6275g、結晶セルロース(CEOLUS(登録商標)PH-101、旭化成株式会社) 4.275g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC(登録商標)NBD-022、信越化学工業株式会社) 2.1375g、クロスポビドン(Kollidon(登録商標)CL-F、BASFジャパン) 0.855g、クロスポビドン(Kollidon(登録商標)CL-M、BASFジャパン) 0.855g、及びステアリン酸マグネシウム(植物性、太平化学産業株式会社) 0.5gをビニール袋中で混合し、ロータリー式打錠機(株式会社菊水製作所)にて打錠し、100mgの比較例2のアピキサバン含有医薬組成物を得た。
【0054】
[非晶質の評価]
粉末X線回折測定法にて、実施例6~10及び比較例2のアピキサバン含有医薬組成物が非晶質状態であることを確認した。また、それぞれのアピキサバン含有粒子を、25℃、相対湿度75%の開放条件下で1ヶ月間保存し、粉末X線回折測定法にて、非晶質状態を確認した。測定には、粉末X線回折装置Bruker D8 ADVANCEを用い、Cu-Ka線、管電圧40kV、管電流40mA、測定範囲:2θ=10.0~25.0°、スキャンスピード:1sec/step、ステップサイズ:0.015°の条件により測定した。
【0055】
非晶質状態の評価結果を表2に示す。
【表2】
【0056】
表2の結果より、非晶質のアピキサバンを多孔質のケイ酸塩である含水二酸化ケイ素に吸着させたアピキサバン含有粒子を含む実施例6~8及び非晶質のアピキサバンを軽質無水ケイ酸に吸着させたアピキサバン含有粒子を含む実施例9並びに非晶質のアピキサバンをメタケイ酸アルミン酸マグネシウムに吸着させたアピキサバン含有粒子を含む実施例10のアピキサバン含有医薬組成物は、1ヶ月の保存後においてもアピキサバンが非晶質状態を維持することが示された。一方、非晶質アピキサバンを単体として含む比較例2のアピキサバン含有医薬組成物は、1ヶ月の保存後においてはアピキサバンが非晶質状態を維持することができないことが明らかとなった。
【0057】
[実施例11]
非晶質のアピキサバンに対する多孔質のケイ酸塩の比率と、アピキサバンの非晶質状態の維持との関係について、更に検討した。一例として、含水二酸化ケイ素(Fujisil(登録商標)、富士化学工業株式会社)を用いた。アピキサバン結晶 7.50gを酢酸 15.8gに溶解させたことと、含水二酸化ケイ素(Fujisil(登録商標)、富士化学工業株式会社) 7.50gに変更したこと以外は、実施例1と同様の製造方法により、非晶質のアピキサバンに対して、100重量%の含水二酸化ケイ素を含む、実施例11のアピキサバン含有粒子を得た。
【0058】
[実施例12]
アピキサバン結晶 7.50gを酢酸 23.4gに溶解させたことと、含水二酸化ケイ素(Fujisil(登録商標)、富士化学工業株式会社)11.25gに変更したこと以外は、実施例1と同様の製造方法により、非晶質のアピキサバンに対して、150重量%の含水二酸化ケイ素を含む、実施例12のアピキサバン含有粒子を得た。
【0059】
[実施例13]
アピキサバン結晶 5gを酢酸 20gに溶解させたことと、含水二酸化ケイ素(Fujisil(登録商標)、富士化学工業株式会社) 11.6gに変更したこと以外は、実施例1と同様の製造方法により、非晶質のアピキサバンに対して、232重量%の含水二酸化ケイ素を含む、実施例13のアピキサバン含有粒子を得た。
【0060】
[実施例14]
アピキサバン結晶 2gを酢酸 25gに溶解させたことと、含水二酸化ケイ素(Fujisil(登録商標)、富士化学工業株式会社) 18gに変更したこと以外は、実施例1と同様の製造方法により、非晶質のアピキサバンに対して、900重量%の含水二酸化ケイ素を含む、実施例14のアピキサバン含有粒子を得た。
【0061】
[非晶質の評価]
粉末X線回折測定法にて、実施例11~14のアピキサバン含有粒子が非晶質状態であることを確認した。また、それぞれのアピキサバン含有粒子を、25℃、相対湿度75%の開放条件下で1ヶ月間保存し、粉末X線回折測定法にて、非晶質状態を確認した。測定には、粉末X線回折装置Bruker D8 ADVANCEを用い、Cu-Ka線、管電圧40kV、管電流40mA、測定範囲:2θ=10.0~25.0°、スキャンスピード:1sec/step、ステップサイズ:0.015°の条件により測定した。
【0062】
非晶質状態の評価結果を表3に示す。また、実施例2及び比較例1の評価結果を再掲する。
【表3】
【0063】
表3の結果より、非晶質のアピキサバンに対して、多孔質のケイ酸塩を100重量%~900重量%含む実施例2及び11~14のアピキサバン含有粒子は、1ヶ月の保存後においてもアピキサバンが非晶質状態を維持することが示された。
【0064】
上記の実施例2及び11~14のアピキサバン含有粒子を用いて、アピキサバン含有医薬組成物を製造した。
【0065】
[実施例15]
実施例11のアピキサバン含有粒子を用いたこと以外は、実施例6と同様の製造方法により、実施例15のアピキサバン含有医薬組成物を得た。
【0066】
[実施例16]
実施例12のアピキサバン含有粒子を用いたこと以外は、実施例6と同様の製造方法により、実施例16のアピキサバン含有医薬組成物を得た。
【0067】
[実施例17]
実施例13のアピキサバン含有粒子を用いたこと以外は、実施例6と同様の製造方法により、実施例17のアピキサバン含有医薬組成物を得た。
【0068】
[実施例18]
実施例14のアピキサバン含有粒子を用いたこと以外は、実施例6と同様の製造方法により、実施例18のアピキサバン含有医薬組成物を得た。
【0069】
[非晶質の評価]
粉末X線回折測定法にて、実施例15~18のアピキサバン含有医薬組成物が非晶質状態であることを確認した。また、それぞれのアピキサバン含有粒子を、25℃、相対湿度75%の開放条件下で1ヶ月間保存し、粉末X線回折測定法にて、非晶質状態を確認した。測定には、粉末X線回折装置Bruker D8 ADVANCEを用い、Cu-Ka線、管電圧40kV、管電流40mA、測定範囲:2θ=10.0~25.0°、スキャンスピード:1sec/step、ステップサイズ:0.015°の条件により測定した。
【0070】
非晶質状態の評価結果を表4に示す。また、実施例7及び比較例2の評価結果を再掲する。
【表4】
【0071】
表4の結果より、非晶質のアピキサバンに対して、多孔質のケイ酸塩を100重量%~900重量%含むアピキサバン含有粒子を用いた実施例7及び15~18のアピキサバン含有医薬組成物は、1ヶ月の保存後においてもアピキサバンが非晶質状態を維持することが示された。