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特開2023-54789高い光分散性を有する弾性エンボス形成ラッカー
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  • 特開-高い光分散性を有する弾性エンボス形成ラッカー 図1
  • 特開-高い光分散性を有する弾性エンボス形成ラッカー 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054789
(43)【公開日】2023-04-14
(54)【発明の名称】高い光分散性を有する弾性エンボス形成ラッカー
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20230407BHJP
   B29C 59/04 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
C08F290/06
B29C59/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022159628
(22)【出願日】2022-10-03
(31)【優先権主張番号】21200658
(32)【優先日】2021-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】517204173
【氏名又は名称】ヨアネウム・リサーチ・フォーシュングスゲゼルシャフト・エムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ディーター・ネース
(72)【発明者】
【氏名】ウルズラ・パルフィンガー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ルトロフ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・ゲッツ
【テーマコード(参考)】
4F209
4J127
【Fターム(参考)】
4F209AA44A
4F209AF01
4F209AG01
4F209AG05
4F209PA03
4F209PB02
4F209PJ06
4F209PN09
4J127AA03
4J127BA01
4J127BA041
4J127BB031
4J127BB032
4J127BB091
4J127BB092
4J127BB221
4J127BB222
4J127BC021
4J127BC022
4J127BC131
4J127BC132
4J127BD221
4J127BD442
4J127BG051
4J127BG131
4J127BG141
4J127BG272
4J127BG282
4J127CC031
4J127CC032
4J127CC111
4J127CC112
4J127EA13
4J127FA01
4J127FA08
(57)【要約】
【課題】本発明の根底にある課題は、高い光学的分散及び高い弾性の両方を有するポリマーをもたらすエンボス形成ラッカーを提供することであった。
【解決手段】少なくとも20質量%の全芳香族含有量を有し、以下のラジカル重合性化合物(A)~(D)を含有するエンボス形成ラッカー:少なくとも40質量%の芳香族含有量を有する非架橋性化合物である化合物(A);それぞれが200~2000g/モルの分子量を有する1つ以上の脂肪族鎖を介して架橋を形成する架橋性化合物である化合物(B)(ここで、化合物(B)中の脂肪族鎖の含有量は少なくとも40質量%である);任意選択により場合によっては、架橋性化合物であり、且つ少なくとも30質量%の芳香族含有量を有する、化合物(C);及び、任意選択により場合によっては、ウレタン基を有する化合物(D)。硬化されたエンボス形成ラッカーを含む装飾物品、及びその装飾物品の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも20質量%の全芳香族含有量を有し、下記のラジカル重合性化合物(A)~(D)を合計100質量部含有するエンボス形成ラッカー:
ラジカル重合反応において非架橋性化合物であり、かつ少なくとも40質量%の芳香族含有量を有する化合物(A) 20~80質量部、
それぞれが120~2000g/モルの分子量を有し、且つそれぞれが、ポリエーテル、ポリチオエーテル、ポリエステル、ポリチオエステル、ポリアセテート、ポリカーボネート、及び炭化水素からなる群から選択される1つ又は複数の脂肪族鎖を介して架橋を形成する、ラジカル重合反応において架橋性の化合物である化合物(B)(ここで、化合物(B)中の前記脂肪族鎖の含有量は少なくとも40質量%である) 10~60質量部、
ラジカル重合反応において架橋性の化合物であり、且つ少なくとも30質量%の芳香族含有量を有し、且つ化合物(B)定義に入らない化合物(C) 0~50質量部、及び
化合物(A)~(C)のいずれの定義にも入らず、且つウレタン基を有する化合物(D) 0~10質量部。
【請求項2】
化合物(A)が単一の重合性炭素-炭素二重結合を含み、且つ化合物(B)が2つ以上の重合性炭素-炭素二重結合を含む、請求項1に記載のエンボス形成ラッカー。
【請求項3】
化合物(A)~(D)の芳香族含有量がフェニル基によって構成されている、請求項1又は2に記載のエンボス形成ラッカー。
【請求項4】
化合物(B)が、脂肪族鎖として2つのポリエーテル鎖を含み、前記2つのポリエーテル鎖が、少なくとも2つの芳香族基を含む基によって分離されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のエンボス形成ラッカー。
【請求項5】
化合物(A)が少なくとも2つの芳香族基及び350g/モル未満の分子量を有し、化合物(B)が600g/モル~2000g/モルの分子量を有し且つ脂肪族鎖として2つのポリエーテル鎖を含み、ここで、前記2つのポリエーテル鎖は、2つの芳香族基を含む残基によって分離されており、且つ化合物(C)は少なくとも2つの芳香族基及び600g/モル未満の分子量を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のエンボス形成ラッカー。
【請求項6】
化合物(A)が単一の(メタ)アクリレート基を有し、化合物(B)が少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を有し、化合物(C)が少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を有し、かつ、化合物(D)はラジカル重合性基(1又は複数)としてウレタン(メタ)アクリレート基を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のエンボス形成ラッカー。
【請求項7】
化合物(B)が:
【化1】
(式中、a及びbは、互いに独立に、3~25の範囲の整数である)
である、請求項1~6のいずれか一項に記載のエンボス形成ラッカー。
【請求項8】
化合物(A)を20~70質量部、化合物(B)を10~50質量部、化合物(C)を10~50質量部、及び化合物(D)を0~10質量部含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のエンボス形成ラッカー。
【請求項9】
化合物(A)を20~70質量部、化合物(B)を10~50質量部、化合物(C)を10~50質量部、及び化合物(D)を1~10質量部含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のエンボス形成ラッカー。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のエンボス形成ラッカーをラジカル重合反応に付すステップを含む、重合されたエンボス形成ラッカーの製造方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載のエンボス形成ラッカーをラジカル重合反応において重合することによって得られる、重合されたエンボス形成ラッカー。
【請求項12】
支持体と、支持体上の微細構造層とを含み、前記微細構造層が、請求項1~9のいずれか一項に記載のエンボス形成ラッカーをエンボス加工し且つ重合したものから構成されている、装飾物品。
【請求項13】
支持体及び微細構造層を含む装飾物品の製造方法であって、
(i)請求項1~9のいずれか一項に記載のエンボス形成ラッカーを支持体上に適用して、コーティングされた支持体を得るステップ、
(ii)前記のコーティングされた支持体上のエンボス形成ラッカーをエンボス加工してエンボス加工されたラッカー層を得るステップ、及び
(iii)前記のエンボス加工されたラッカー層を硬化させて微細構造層を得て、それによって装飾品物品を得るステップ、を含む製造方法。
【請求項14】
支持体としてポリマーフィルムを使用するロール・ツー・ロール(roll-to-roll)プロセスを含む、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の製造方法によって得られる装飾物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンボス形成ラッカー(embossing lacquer)、重合されたエンボス形成ラッカーの製造方法、重合されたエンボスラッカー、装飾品、及び装飾品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2021/009381A1号は、装飾的なクリスタル構成要素又は宝石のものに非常に近い視覚的外観及び光学的特性を有する装飾品を開示している。その装飾物品は、支持体と、微細構造表面を有する層とを含むことができる。その微細構造は、エンボス形成ラッカーの層をエンボス加工及び硬化させることによって得ることができる。それらはファセットの連続パターンを作り出す複数の溝を含み、それによりファセットが入射光をスペクトル色に分割することができる。ファセットは、おそらく光の波長に応じて、さまざまな角度において反射及び屈折を含めた興味深い光学効果を生み出すことができる。有利な光学的効果は、高い芳香族含有量、したがって高い光学分散を有するエンボス形成ラッカーを使用することによって達成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/009381号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
国際公開第2021/009381A1号に開示された微細構造層は、低い弾性を有する架橋したポリマーから構成されている。したがって、これらの微細構造層を含む装飾品は、高い弾性を必要とする用途、例えば織物への適用に使用することはできない。これらの欠陥に照らすと、本発明の根底にある課題は、高い光学的分散及び高い弾性の両方を有するポリマーをもたらすエンボス形成ラッカーを提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明の根底にある課題は、高い芳香族含有量を有し、且つポリマー主鎖を形成することができる重合性化合物、及びポリマー主鎖を架橋して弾性ポリマーネットワークを形成することができる長い柔軟な脂肪族又はポリエーテル基を有する重合性化合物を含むエンボス形成ラッカーを提供することによって解決された。
【0006】
本出願は、以下の[1]~[15]の点を網羅する。
【0007】
[1] 少なくとも20質量%の全芳香族含有量を有し、下記のラジカル重合性化合物(A)~(D)を合計100質量部含有するエンボス形成ラッカー:
ラジカル重合反応において非架橋性化合物であり、かつ少なくとも40質量%の芳香族含有量を有する化合物(A) 20~80質量部、
1つ以上の、好ましくは非分岐かつ飽和の、120~2000g/モル、好ましくは200~2000g/モルの分子量をそれぞれが有し、且つそれぞれが、ポリエーテル、ポリチオエーテル、ポリエステル、ポリチオエステル、ポリアセテート、ポリカーボネート、及び炭化水素からなる群から選択される脂肪族鎖を介して架橋を形成する、ラジカル重合反応において架橋性の化合物である化合物(B)(ここで、化合物(B)中の脂肪族鎖の含有量は少なくとも40質量%である) 10~60質量部、
ラジカル重合反応において架橋性の化合物であり、且つ少なくとも30質量%の芳香族含有量を有し、化合物(B)定義に入らない化合物(C) 0~50質量部、及び
化合物(A)~(C)のいずれの定義にも入らず、且つウレタン基を有する化合物(D) 0~10質量部。
【0008】
[1-1] 好ましくは、化合物(A)~(D)は、ポイント[1]のエンボス形成ラッカーの少なくとも90質量%を構成する。[1-2] 好ましくは、化合物(A)~(D)は、ポイント[1]のエンボス形成ラッカー中で、少なくとも25質量%の全芳香族含有量を有する。[1-3] 好ましくは、ポイント[1]のエンボス形成ラッカーの化合物(B)において、上記の1つ以上の脂肪族鎖がポリエーテルである。[1-4] [1-1]及び[1-2]の特徴の組み合わせが好ましい。[1-5] [1-1]、[1-2]、及び[1-3]の特徴の組み合わせがさらに好ましい。
【0009】
[2] 化合物(A)が単一の重合性炭素-炭素二重結合を含み、且つ化合物(B)が2つ以上の重合性炭素-炭素二重結合を含む、[1]~[1-5]のいずれかによるエンボス形成ラッカー。
【0010】
[2-1] [1-4]及び[2]の特徴の組み合わせが好ましい。[2-2] [1-5]及び[2]の特徴の組み合わせがさらに好ましい。
【0011】
[3] 化合物(A)~(D)の芳香族含有量がフェニル基によって構成されている[1]~[2-2]のいずれかによるエンボス形成ラッカー。
【0012】
[4] 化合物(B)が、脂肪族鎖として2つのポリエーテル鎖を含み、その2つのポリエーテル鎖が、少なくとも2つの芳香族基を含む基によって分離されている、上記のポイントのいずれかによるエンボス形成ラッカー。
【0013】
[5] 化合物(A)が少なくとも2つの芳香族基及び350g/モル未満の分子量を有し、化合物(B)が600g/モル~2000g/モルの分子量を有し且つ脂肪族鎖として2つのポリエーテル鎖を含み、ここで、その2つのポリエーテル鎖は、2つの芳香族基を含む残基によって分離されており、且つ化合物(C)は少なくとも2つの芳香族基及び600g/モル未満の分子量を有する、[1]~[4]のいずれかのエンボス形成ラッカー。
【0014】
[5-1] [5]、[2]、及び[1-1]の特徴の組み合わせが好ましい。[5-2] [5]、[2]、及び[1-2]の特徴の組み合わせがさらに好ましい。
【0015】
[6] 化合物(A)が単一の(メタ)アクリレート基を有し、化合物(B)が少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を有し、化合物(C)が少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を有し、かつ、化合物(D)はラジカル重合性基(1又は複数)としてウレタン(メタ)アクリレート基を有する、[1]~[5-2]のいずれかのエンボス形成ラッカー。
【0016】
[7] 化合物(B)が:
【化1】
(式中、a及びbは、互いに独立に、3~25、好ましくは5~25の範囲の整数である)
のみからなる、又はこれを含む、[1]~[6]のいずれかのエンボス形成ラッカー。
【0017】
[7-1] 化合物(A)がオルト-フェニル-フェノール-エチル-アクリレートのみからなるか又はそれを含有し、化合物(C)がビスフェノール-A-ジ(又はトリ) -エトキシ-ジ-メタクリレートのみからなるか又はそれを含有する、[7]のエンボス形成ラッカー。好ましくは、化合物(A)~(C)のそれぞれは、言及した化合物に基づくか、又はそれらのみからなる。
【0018】
[8] 化合物(A)を20~70質量部、化合物(B)を10~50質量部、化合物(C)を10~50質量部、及び化合物(D)を0~10質量部含有する、[1]~[7-1]のいずれかのエンボス形成ラッカー。
【0019】
[8-1] [1-1]及び[8]の特徴の組み合わせが好ましい。[8-2] [1-3]及び[8]の特徴の組み合わせがさらに好ましい。[8-3] [2]、[1-3]、及び[8]の特徴の組み合わせが好ましいことがありうる。
【0020】
[9] 化合物(A)を20~70質量部、化合物(B)を10~50質量部、化合物(C)を10~50質量部、及び化合物(D)を1~10質量部含有する、[1]~[8-3]のいずれかのエンボス形成ラッカー。
【0021】
[9-1] [1-1]及び[9]の特徴の組み合わせが好ましい。[9-2] [1-3]及び[9]の特徴の組み合わせがさらに好ましい。[9-3] [2]、[1-3]、及び[9]の特徴の組み合わせが好ましいことがありうる。
【0022】
[10] [1]~[9-3]のいずれかのエンボス形成ラッカーをラジカル重合反応に付す工程を含む、重合されたエンボス形成ラッカーの製造方法。
【0023】
[11] [1]~[9-3]のいずれかのエンボス形成ラッカーをラジカル重合反応において重合することによって得られる、重合されたエンボス形成ラッカー。
【0024】
[12] 支持体と、支持体上の微細構造層とを含み、微細構造層が、[1]~[9-3]のいずれかのエンボス形成ラッカーをエンボス形成し且つ重合したものから構成されている、装飾物品。
【0025】
[13] 支持体及び微細構造層を含む装飾物品の製造方法であって、(i)[1]~[9-3]のいずれかのエンボス形成ラッカーを支持体上に適用してコーティングされた支持体を得るステップ、 (ii)コーティングされた支持体上のエンボス形成ラッカーをエンボス加工してエンボス加工されたラッカー層を得るステップ、及び(iii)エンボス加工されたラッカー層を硬化させて微細構造層を得て、それによって装飾品物品を得るステップ、を含む製造方法。
【0026】
[14] 支持体としてポリマーフィルムを使用するロール・ツー・ロール(roll-to-roll)プロセスを含む、[13]の方法。
【0027】
[15] [13]又は[14]の方法によって得られる装飾物品。
【発明の効果】
【0028】
本発明の利点
本発明のエンボスラッカーは、エンボス加工及び重合して、高い光学分散と高い柔軟性及び弾性の優れたバランスを有する微細構造層を得ることができる。
【0029】
エンボス形成ラッカーはラジカル重合性であり、UV光を使用することによって便利に重合することができる。エンボス形成ラッカーは、ナノインプリントリソグラフィー(NIL)において使用して、所望の光学特性を有する微細構造層を得るのに特に有利である。さらに、エンボス形成ラッカーは低粘度を有し、例えばロール・ツー・ロール(R2R)プロセスにおいて、支持体上に薄く均一なコーティングフィルムとして塗布することができる。したがって、本発明のエンボス形成ラッカーは、R2R-UV-NILプロセスで特に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、エンボス形成ラッカー NILcureHD17 (「HD17」)、NILcureHDflex01 (「HDflex01」)、及びNILcureHDflex02 (「HDflex02」) の屈折率を、分光エリプソメトリーによって測定した波長に応じて示している。
図2図2A~2Cは、NILcureHD17(図2A)、NILcureHDflex01(図2B)、及びNILcureHDflex02(図2C)のUV可視透過スペクトルを示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態
本発明によるエンボス形成ラッカーは、少なくとも20質量%の全芳香族含有量を有するラジカル重合性化合物(A)~(D)を含有し、長い脂肪族鎖を介して架橋されうる。
【0032】
本発明は、エンボス形成ラッカーをラジカル重合反応に供するステップを含む、重合された、すなわち硬化されたエンボス形成ラッカーを製造する方法を提供する。この方法の結果は、本発明による重合されたエンボス形成ラッカーである。
【0033】
本発明による装飾物品は、支持体と、支持体上の微細構造層とを含み、その微細構造層は、本発明のエンボス形成ラッカーから得られるエンボス加工され且つ硬化された樹脂から構成される。
【0034】
本発明による装飾物品は、エンボス形成ラッカーをエンボス加工し且つ硬化させることを含む方法で調製することができ、この方法は好ましくはロール・ツー・ロールプロセスを含む。
【0035】
本明細書において使用する場合、単数形の用語(英語明細書の“a”、 “an”、 及び“the”にあたる)は、文脈が明らかにそうでないことを示していない限り、複数形も含むことを意図し得る。例えば、成分及び化合物は一般に単数形で記述される。そのような単数形の慣用表現は、別段の指示がない限り、指示された化合物又は成分を1つより多く含みうることを意味する。
【0036】
「含む」、「含んでいる」、「包含する」、及び「有する」という用語は包括的であり、したがって、記載された特徴、ステップ、操作、構成要素、及び/又は化合物の存在を特定するが、1つ以上のその他の特徴、ステップ、操作、構成要素、化合物、及び/又はそれらからなる群の存在又は追加を排除しない。本明細書に記載された方法のステップ、プロセス、及び操作は、実施の順序として具体的に特定されていない限り、説明又は図示された特定の順序でそれらを実施することを必ず必要とすると解釈されるべきではない。追加又は代替のステップを使用しうることも理解されるべきである。
【0037】
本明細書において、「アクリレート」という用語は、別段の指示がない限り、アクリレート及び(メタ)アクリレート基の両方を包含する。
【0038】
本明細書の記載との関連で、個々の構成成分又は構成要素が特定の材料に基づいている、又は特定の物質から作られていると言及されているときはいつでも、これは、その成分の主な構成成分を形成するそれぞれの材料として解釈されるべきであり、その他の成分もまた少量で存在してもよい。実施形態において、特定の物質に「基づく」又はそれ「から作られている」という用語は、50質量%より多い、好ましくは90質量%より多い、より好ましくは95質量%より多い含有量を意味する。
【0039】
「及び/又は」という用語は、その用語に伴って列挙された項目の1つ以上の全ての組み合わせを含む。
【0040】
エンボス形成ラッカー及び微細構造
本発明のエンボス形成ラッカーは、高い芳香族含有量を有する。一般に、高い芳香族含有量は、重合された、すなわち硬化されたエンボス形成ラッカーの高い屈折率及び高い光分散をもたらす。高い光分散をもつ材料の使用は有利であり、なぜなら白色光がエンボス加工された微細構造化層の小面(ファセット)において屈折するときに発生する色の分解を大きくするからである。重合された材料の高い光学分散は、低いアッベ数に対応する。物質のアッベ数は、例えばエリプソメトリーによって決定することができる。特に、少なくとも可視範囲内の複数の波長における物質の屈折率は、例えば、可変角分光エリプソメトリーを使用して測定することができ、アッベ数は次のように計算することができる。
【数1】
式中、n、nF’、及びnC’は、フラウンホーファー e-(Hg光源)、F’- (Cd光源)、及びC’- (Cd光源) スペクトル線の波長(それぞれ、546.07nm、479.99nm、及び643.86nm)におけるその物質の屈折率である。
【0041】
好ましくは、本発明の重合したエンボス形成ラッカーは、60未満、好ましくは50未満、40未満、又は35未満のアッベ数を有する。
【0042】
本発明のエンボス形成ラッカーは、化合物(A)及び化合物(B)を必須成分として含有し、かつ、化合物(C)及び/又は化合物(D)を任意成分として含有してもよい。エンボス形成ラッカーは、ラジカル重合反応において重合、すなわち硬化されうる。化合物(A)~(D)は、ラジカル重合反応において、ポリマー鎖と、そのポリマー鎖間の架橋を形成するためのラジカル(共)重合可能な化合物である。「ラジカル重合可能な」(あるいはラジカル重合性)という用語は、ある化合物が、電磁放射線が開始するフリーラジカル重合のための部位を提供する1つ又は複数の官能基を含むことを意味する。フリーラジカル重合は、紫外(UV) 光などの電磁放射の影響下で起こる。したがって、ラジカル重合性化合物は、光硬化性、特にUV硬化性である。化合物(A)及び(B)のそれぞれ、及び、存在する場合には化合物(C)及び(D)のそれぞれは、ラジカル重合反応において他の化合物のそれぞれの少なくとも1つの基と共重合可能な少なくとも1つの基を有する。そのような基は、炭素-炭素二重結合である。化合物(A)~(D)のそれぞれにおいて、ラジカル重合性基は、好ましくは末端基、すなわち、ビニル基、例えば(メタ)アクリレート基中のビニル基である。
【0043】
本明細書において、化合物(A)~(D)のそれぞれは、別段の規定がない限り、他の化合物から独立して、モノマー、オリゴマー、又はポリマーであることができる。好ましくは、化合物(A)及び(C)はモノマーである。ここで、「ラジカル重合性化合物」という用語は、別段の規定がない限り、重合性化合物(A)~(D)の全て、及び独立に各々を意味する。
【0044】
化合物(A)は非架橋性化合物であり、化合物(B)及び(C)は架橋性化合物であり、化合物(D)は架橋性又は非架橋性化合物であり得る。
【0045】
本明細書において、非架橋性化合物は、ラジカル重合反応において他の化合物と反応して鎖延長を可能にし、それによって線状ポリマーを形成する能力に加えて、ラジカル重合反応において他の化合物と反応する追加の官能基を持たない化合物である。したがって、非架橋性ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合反応において、鎖延長に関与することができるが、鎖間の架橋を形成することができない化合物である。言い換えれば、「非架橋」とは「架橋を形成することができない」ことを意味する。他のモノマー、オリゴマー、又はポリマーと反応する能力に関して、非架橋性化合物は、それが、正確に2つのラジカル重合性基と反応して鎖延長を可能にすることができるという意味で二官能性である。例えば、単一の炭素-炭素二重結合を含む基は、二官能基であり得る。したがって、非架橋性化合物の例には、単一の(メタ)アクリレートが含まれる。
【0046】
本明細書において、架橋性化合物は、ラジカル重合反応において他の化合物と反応して鎖延長を可能にし、それによって線状ポリマーを形成する能力に加えて、ラジカル重合反応において他の化合物とそれらが反応して、それによってポリマー鎖間に架橋を形成することを可能にする官能基を有する化合物である。言い換えると、「架橋性」とは「架橋を形成することができる」ことを意味する。したがって、架橋性化合物は、他のモノマー、オリゴマー、又はポリマーと反応する能力に関して、二官能よりも多官能である。本発明で用いられるラジカル重合反応において、架橋性化合物の例は、少なくとも2つの炭素-炭素二重結合、例えば少なくとも2つの(メタ)アクリレートを含む化合物である。
【0047】
ラジカル重合性化合物(A)~(D)中の重合性基は、アクリレート、メタクリレート、ビニルエーテル類、アリルエーテル類、プロペニルエーテル類、アルケン、ジエン、不飽和エステル、アリルトリアジン類、アリルイソシアネート類、及びN-ビニルアミド類からなる群から選択できる炭素-炭素二重結合である。これらの化合物を使用すると、光開始剤によって開始されるラジカル重合において、ビラジカル酸素分子との急速な反応が起こる。ラジカル重合性化合物は、ウレタンアクリレート、ビニルアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリアクリレート、ポリエーテルアクリレート、及びポリオレフィンアクリレートからなる群から選択され得るプレポリマーであってもよい。ウレタンアクリレートが好ましい場合がある。本発明において有用なウレタンアクリレートは、好ましくはウレタンアクリレートオリゴマーである。約300g/モル~2500g/モルの分子量を有するウレタンアクリレートオリゴマーを、少なくとも1つ重合性二重結合をもつモノマー又はオリゴマー成分として用いてもよい。ウレタンアクリレートオリゴマーの特に好ましい種類には、脂肪族又は芳香族であることができるヒドロキシル末端NCO延長ポリエステル又はポリエーテルの二官能又はそれより多官能のアクリレートエステルが含まれる。ウレタンアクリレートの使用は、従来の層と比較して、その後のポリマー層のコーティング又は適用のためにムラのない一貫した層の厚さを可能にするプレポリマー組成物を特に提供することを可能にする。このプレポリマー組成物は、容易に加工可能な粘度を有する。一方では粘度が高すぎず、他方では層が厚くなりすぎないことを確実にするため、特に、均一な層の厚さを達成し、かつ特に粘度を上げすぎないようにするために、アクリレートモノマー又はビニルエステルモノマーを反応性希釈剤として高分子量のウレタンアクリレートオリゴマーに添加してもよい。
【0048】
本発明において有用なアクリル化エポキシ材料は、好ましくはアクリレートエポキシオリゴマーである。アクリル化エポキシオリゴマーには、例として、エポキシ樹脂の二官能以上のアクリレートエステル、例えば、ビスフェノールAエポキシ樹脂のジアクリレートエステルが含まれる。アクリル化エポキシ樹脂は、UV硬化性前駆体を硬化させることによって得られるポリマー材料の引張強度及び破断伸びを改善する傾向がある。ポリアクリレートは、後続の反応のためにフリーラジカルを形成することができる反応性のペンダント又は末端アクリル酸基を有するアクリルオリゴマー又はアクリルポリマーである。本発明において有用なポリアクリレート材料は、好ましくはポリアクリレートポリマーである。アクリル化エポキシ材料と同様に、ポリアクリレートは一般に、UV硬化性前駆体を硬化させることによって得られる材料の引張強度を向上させる。同様に、アクリル化オレフィンオリゴマー又はポリマーは、架橋又は連鎖延長のためのフリーラジカルを形成できる反応性のペンダント又は末端のアクリル酸基を有する不飽和オリゴマー又は不飽和ポリマー材料である。アクリル化オレフィンは、一般に、UV硬化性前駆体を硬化させることによって得られる材料の引張強度及び破断伸びを向上させる傾向がある。有用なアクリル化オレフィンの例には、ポリブタジエンアクリルオリゴマーが含まれる。本発明において適したポリエステルアクリレートオリゴマー又はポリマーは、一般に、それぞれアクリル酸とポリオール又はポリエステルとの間の縮合反応によって調製することができる。アクリル化ポリエーテル樹脂は、UV硬化性前駆体を硬化させることによって得られるエラストマー材料の柔軟性及び破断伸びを向上させる傾向がある。シリコーンアクリレートオリゴマー又はポリマーは、構造化された表面の弾性及び伸びを向上させる傾向があるが、引張強度及び堅牢性を損なう傾向がある。高官能性シリコーンアクリレートは、その低い表面エネルギー特性のため、しばしば使用される。
【0049】
得られる構造化された表面の機械的特性は、硬化性オリゴマー又はポリマーの化学組成だけでなく、それぞれの架橋密度によっても影響を受ける。より高い架橋密度は、通常、より硬くかつより脆い材料をもたらす一方、より低い架橋密度は、より柔らかくかつより順応性が高い材料をもたらす。
【0050】
ラジカル重合性化合物(A)~(D)を重合させるために使用されるラジカル重合は、チオール-エン反応、すなわちチオール基と炭素-炭素二重結合との反応を含むか、又はそれのみからなってもよい。
【0051】
ラジカル重合性化合物(A)~(D)のそれぞれ、又は化合物(A)~(D)を含む組成物における重合性基は、チオール基及び炭素-炭素二重結合の混合であってもよい。
【0052】
本発明において用いられるラジカル重合性化合物は、炭素-炭素二重結合を含む成分、例えばプレポリマーに加えて、少なくとも2つのチオール基を有する成分を含んでいてもよい。そのプレポリマーの二重結合は、チオール含有成分と反応して、ポリマーを形成することができる。例えば、非架橋性化合物(A)は、正確に2つのチオール基を有する化合物と正確に2つの炭素-炭素二重結合を有する化合物の混合物であってよい。例えば、正確に2つのチオール基を有するモノマーは、グリコールジ(3-メルカプトプロピオネート)(GDMP)である。チオール基を含む化合物のその他の例は、3-メルカプトプロピオネート、3-メルカプトアセテート、チオグリコレート、及びアルキルチオールである。化合物(A)において、少なくとも2つのチオール基を有する多官能性モノマー成分は、1~50質量%、特に5質量%~30質量%の量で含まれていてもよく、少なくとも2つの重合性二重結合を有するモノマー又はオリゴマー成分が、1質量%~90質量%、特に10質量%~50質量%の合計量で含まれていてもよい。
【0053】
エンボス形成ラッカーは、好ましくは0.01~10Pa・s、より好ましくは10~2000mPa・s、最も好ましくは50~1000mPa・sの粘度を有する。この範囲内の粘度は、エンボス形成ラッカーの良好な流動性及び表面の均一なコーティングをもたらす。本発明において、粘度は、DIN EN ISO 2555(ブルックフィールド法)に準拠して23℃において測定される。
【0054】
化合物(A)
化合物(A)は、単一種の化合物であっても、それぞれが化合物(A)の定義に含まれる化合物の混合物であってもよい。
【0055】
化合物(A)は非架橋性のラジカル重合性化合物であり、かつ非常に高い芳香族含有量を有する。例えば、化合物(A)は、少なくとも50質量%、少なくとも60質量%、又は少なくとも70質量%の芳香族含量を有していてよい。
【0056】
化合物(A)は、硬化した樹脂の屈折率及び分散を高め、かつ、未硬化の樹脂の粘度を下げることに寄与する。化合物(A)は、室温において200mPasより低い粘度を有し得る。
【0057】
実施形態において、化合物(A)は、単一の(メタ)アクリレート基を含み得る。化合物(A)として使用するのに適したモノマーには、オルト-フェニル-フェノール-エチル-アクリレート(MIWON Miramer M1142として入手可能、屈折率RI(ND25)=1.577、25℃における粘度=110~160mPas)、及び2-フェノキシエチル-アクリレート (MIWON Miramer M140 として入手可能、屈折率RI(ND25)=1.517、25℃における粘度=10~20mPas)が含まれうる。さらなる適切なモノマーには、フェニルエポキシアクリレート(MIRAMER PE 110として入手可能)、ベンジルアクリレート(MIRAMER M1182として入手可能)、ベンジルメタクリレート(MIRAMER M1183として入手可能)、フェノキシベンジルアクリレート(MIRAMER M1122として入手可能)、及び2-(フェニルチオ)エチルアクリレート(MIRAMER M1162として入手可能)が含まれる。好ましい実施形態では、組成物は、唯一の化合物(A)としてオルト-フェニル-フェノール-エチル-アクリレートを含む。
【0058】
化合物(B)
化合物(B)は、単一種の化合物であっても、それぞれが化合物(B)の定義内にはいる化合物の混合物であってもよい。
【0059】
化合物(B)は架橋性ラジカル重合性化合物であり、かつ、架橋しうる基(複数)の間に脂肪族鎖を有する。その架橋官能性によって、化合物(B)は、硬化した樹脂の熱的、機械的、及び/又は化学的安定性に寄与する。
【0060】
化合物(B)は、1つ以上の脂肪族鎖を介して架橋を形成することができる。ここで、脂肪族鎖とは、芳香族基を含まず、かつ、環状基を含まない直鎖状の有機構造である。その脂肪族鎖は、炭化水素に限定されず、主鎖中に炭素に加えて酸素及び/又は硫黄を有する鎖もその範囲に含む。その主鎖は、単結合によって結合された少なくとも8個の原子、好ましくは少なくとも10個の原子によって構成されていてもよく、前記の原子は、炭素原子及び任意選択により場合によって酸素及び/又は硫黄原子である。その脂肪族主鎖は分岐していても分岐していなくてもよい。その主鎖は好ましくは完全に飽和しており、すなわち主鎖はアルケニル又はアルキニル基を全く含まない。脂肪族鎖のそれぞれは、ポリエーテル、ポリチオエーテル、ポリエステル、ポリチオエステル、ポリアセテート、ポリカーボネート、及び炭化水素からなる群から独立して選択される。ここで、ポリエーテル等のポリマーとは、少なくとも2つの繰り返し単位を有する分子をいう。したがって、「ポリエーテル」などの用語は、別段の規定がない限り、オリゴエーテルとポリエーテルの両方を包含する。好ましくは、その1つ以上の脂肪族鎖は、ポリエーテル、ポリチオエーテル、ポリエステル、ポリチオエステル、ポリアセテート、及びポリカーボネートからなる群から選択される。好ましくは、これらのポリマーは、少なくとも3つ、より好ましくは少なくとも6つの繰り返し単位を含む。より好ましくは、脂肪族鎖は、少なくとも3つ又は少なくとも6つの繰り返し単位、例えばエトキシ単位を有するポリエーテルである。さらに好ましいのは、それぞれが少なくとも3つ又は少なくとも6つのエトキシ繰り返し単位を有する1つ又は2つの脂肪族ポリエーテルを有し、そのポリエーテルの総含有量が少なくとも50質量%である化合物(B)である。化合物(A)~(D)の合計に対する化合物(B)の1つ以上の脂肪族鎖の合計含有量は、好ましくは少なくとも8質量%である。架橋は、形成されたポリマー、例えば化合物(A)によって形成されたポリマーの少なくとも2つの主鎖の間に形成される。その架橋部分は、ポリマーの主鎖に組み込まれている2つの官能基の間の部分である。例えば、化合物(B)が2つのビニル基、すなわち末端の炭素-炭素二重結合を含む場合、架橋部分は、その2つのビニル基を除いて全ての化合物(B)である。架橋部分は、その主鎖中に「120~2000g/モルの分子量を有する1つ以上の脂肪族鎖(複数でもよい)」を必ず含み、かつ、任意選択により場合によっては、脂肪族及び/又は直鎖ではない他の基、例えば、芳香族基又は(ヘテロ)環式脂肪族基、又は脂肪族ではあるが120g/モル未満の分子量を有するもの、例えば、エチレン基を含んでもよい。化合物(B)中の脂肪族鎖の含有量は、少なくとも40質量%、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも60質量%である。例えば、架橋部分は、1つ以上の芳香族基によって分離された2つの前記の脂肪族鎖を含んでもよい(例えば、 BPA(EO)10DA(ビスフェノール-A-デカ-エトキシ-ジ-アクリレート)。BPA(EO)10DAにおいては、脂肪族鎖の含有量は約60質量%である。
【0061】
化合物(C)
化合物(C)は、単一種の化合物であっても、それぞれが化合物(C)の定義に入る化合物の混合物であってもよい。
【0062】
化合物(C)は架橋性基間に脂肪族鎖を有しない架橋性のラジカル重合性化合物である。化合物(B)と同様に、化合物(C)は、硬化した樹脂の熱的、機械的、及び/又は化学的安定性に寄与する。
【0063】
化合物(C)は、室温において1,000mPasより高い粘度を有することができ、かつ、少なくとも約1.51の屈折率を有していてもよい。適切なモノマーには、エトキシル化(3)ビスフェノール-A-ジメタクリレート(Sartomer SR348Cとして入手可能、屈折率RI(ND25)=1.53)が含まれる。さらなる適切なモノマーには、エトキシル化(2)ビスフェノール-A-ジメタクリレート (Sartomer SR348L として入手可能、60℃における粘度=1,600mPas、エトキシル化 (3)ビスフェノール-A-ジメタクリレートと同様の屈折率) ;エトキシル化(3)ビスフェノール-A-ジアクリレート (Sartomer SR349 又は Miwon MIRAMER 244 として入手可能);エトキシル化(4)ビスフェノール-A-ジアクリレート (Miwon MIRAMER M240 として入手可能);ビスフェノール-A-ジエポキシアクリレート (Miwon MIRAMER PE210 として入手可能、60℃における粘度=5000mPas);及びビスフェノール-A-ジエポキシメタクリレート (Miwon MIRAMER PE250 として入手可能、60℃における粘度=5000mPas)が含まれる。好ましい実施形態では、(メタ)アクリレートモノマーは、60℃で約3,000mPas未満、好ましくは約2,000mPas未満の粘度を有するように選択することができる。好ましい実施形態では、硬化性樹脂組成物は、唯一の化合物(C)としてエトキシル化(3)ビスフェノール-A-ジメタクリレートを含む。
【0064】
化合物(D)
化合物(D)は架橋性化合物又は非架橋性化合物であることができる。化合物(D)は、単一種の化合物、又はそれぞれが化合物(D)の定義内に入る化合物の混合物である。適切なモノマーには、芳香族ウレタンジアクリレートオリゴマー、例えば、Allnex Ebecryl 210 (E210; 屈折率RI(ND25)=約1.52)が含まれる。
【0065】
光開始剤
本発明によるエンボス形成ラッカーは、光開始剤を含有してもよい。光開始剤は、エンボス形成ラッカーの総質量の少なくとも0.1質量%、好ましくは0.5~3質量%の濃度で含有され得る。本発明において使用するのに適した光開始剤には、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィネート(TPO-L);ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドと1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンとのブレンド物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド;ベンジルジメチルケタール 2,2-メトキシ-1,2-ジフェニルエタノン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン (DMHA);1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Irgacure 184);及び1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンのブレンド物 (Additol BCPK)が含まれる。これらの中で、Irgacure 184、DMHA、及びAdditol BCPKなどの化合物が有利でありえ、なぜならそれらは、完全な可視スペクトルにおいて完全に透明である微細構造層をもたらしうるからである。さらに、Additol BCPK などのブレンド物の使用は、PET又はPEなどの支持体に対する微細構造層の接着性を高める。
【0066】
その他の添加物
本発明のエンボス形成ラッカーは、より容易な加工を可能にするため、又はエンボス形成ラッカーもしくは硬化したポリマーもしくは微細構造層に対して特定の所望の特性をもたらすための他の添加剤を含有してもよい。そのような添加剤の例は、着色剤、レオロジー調製添加剤、レベリング剤、皮張り防止剤、UV安定剤、抗酸化剤、及び消泡添加剤である。
【0067】
表面活性・粘着防止添加剤
ある実施形態では、本発明のエンボス形成ラッカーは表面活性・粘着防止添加剤を含まず、これらは本明細書において単に界面活性剤という場合がある。
【0068】
界面活性剤を含まない組成物は、微細構造層と支持体の間の良好な接着をもたらし得る。特に、微細構造層の硬化したエンボス形成ラッカーと支持体の間の結合は、温度変化及び/又は湿度への暴露に対して抵抗しうる。
【0069】
好ましくは、エンボス形成ラッカーは、エンボス加工工程においてエンボス化スタンプなどのエンボス形成ツールへのエンボス形成ラッカーの付着を低減する又は完全に防止するために、少なくとも1つの界面活性剤を含有する。エンボス形成ラッカーに含まれる界面活性剤は、好ましくは、化合物(A)~(D)のいずれの定義にも入らない化合物であり、かつエンボス形成ラッカーの表面エネルギーを低下させる効果を有する。したがって、界面活性剤を含むエンボス形成ラッカーの表面エネルギーは、界面活性剤を含まないエンボスラッカーの表面エネルギーよりも低い。
【0070】
一般に、界面活性剤は、(i)化合物(A)~(D)に追加の成分として、及び/又は(ii)化合物(A)~(D)の少なくとも1つの成分として、エンボス形成ラッカーに含有され得る。(i)の場合、それは、本発明の方法におけるラジカル重合反応において化合物(A)~(D)と好ましくは共重合可能であって、ポリマーネットワークのなかへのその界面活性剤の組み込みを可能にする。その目的のために、界面活性剤は、炭素-炭素二重結合などの官能基を含むことができる。好ましくは、界面活性剤は(メタ)アクリレート官能化された化合物である。(ii)の場合、界面活性剤は、それを含む組成物の他の成分とは構造的に異なる。
【0071】
界面活性剤は、シリコーン含有添加剤又はフッ素含有添加剤を含む群から選択される少なくとも1つのものであり得る。具体例には、非イオン性界面活性剤、例えば、ポリエーテルシロキサン、ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル等の脂肪族アルコールエトキシレート、単官能ポリジメチルシロキサン(メタ)アクリレート、パーフルオロn-アルキル(メタ)アクリレート、及びパーフルオロポリエーテル(メタ)アクリレートが含まれる。シリコーン含有又はフッ素含有添加剤は、エンボス化ツールへの接着力を低下させ、及びエンボス化ツールからの硬化したエンボス形成ラッカーの剥離を容易にするのを助け、特にパーフルオロ化添加剤がとりわけ好ましく、あるパターンについて複数の印象を確実に可能にすることが判明している。好ましくは、界面活性剤は、アルキル(メタ)アクリレート、ポリシロキサン(メタ)アクリレート、パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート、パーフルオロポリエーテル(メタ)アクリレート、アルキルビニルエーテル、ポリシロキサンビニルエーテル、パーフルオロアルキルビニルエーテル、及びパーフルオロポリエーテルビニルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つのものであり得る。具体的な界面活性剤には、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルアクリレート;1H,1H,5H-オクタフルオロペンチルアクリレート;(PFPE)-ウレタンアクリレート;ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン;及び、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェニル-ポリエチレングリコールが含まれる。これらの界面活性剤は有利には無色(透明)であり、かつ、支持体表面(例えば、PET又はPE表面)上に、その表面に対して十分な接着性を示す硬化したポリマーの生成を可能にする。
【0072】
エンボス形成ラッカーは、エンボス形成ラッカーの表面エネルギーを適切な程度にまで確実に低下させるために、0.01質量%~5質量%、特に0.1質量%~3質量%の量で界面活性剤を含むことができる。
【0073】
界面活性剤は、樹脂組成物がPE又はPETなどのポリマー表面に適用された場合に、界面活性剤が、ポリマー-樹脂界面においてよりも、露出した樹脂表面においてより多く分離してくるように選択されることが好ましい。ある実施形態では、界面活性剤は、硬化した樹脂組成物の透明性を低下させない。
【0074】
エンボス化ツール(エンボス形成ツール)へのエンボス形成ラッカーの付着は、エンボス化ツール、特にエンボス化ダイの表面をその疎水性に関して改質することによっても防ぐことができる。
【0075】
本発明による装飾物品の製造方法において、エンボス化ツールへのエンボス形成ラッカーの接着は、表面活性な接着防止添加剤及び/又は表面を疎水性改質したエンボス化ツールを使用することによって低減することができる。
【0076】
反応性希釈剤
化合物(A)~(D)のそれぞれは、オリゴマー又はポリマーであることができる。その場合、エンボス形成ラッカーの粘度が高すぎることがありうる。慣例的に、エンボス形成ラッカーの粘度は、エンボス形成ラッカーの他の重合性成分と共重合可能な反応性希釈剤の添加によって低下される。反応性希釈剤は、例えばアクリレートモノマーのように、例えば500g/モル未満の低い分子量を有していてよい。したがって、エンボス形成ラッカーの粘度は、反応性希釈剤の含有量を変えることによって調整することができる。
【0077】
本発明のエンボス形成ラッカーにおいて、化合物(A)及び(C)は低分子化合物であることが好ましい。特に、化合物(A)は、350g/モル未満の好ましい分子量を有し、したがって反応性希釈剤として機能し得る。したがって、本発明のエンボス形成ラッカーの化合物は、化合物(A)~(D)のいずれかの定義に入る化合物に加えて反応性希釈剤を添加する必要を避けるように適切に選択することができる。好ましい実施形態では、本発明のエンボス形成ラッカーは、500g/モル未満の分子量を有し、かつ化合物(A)~(D)のいずれの定義にも入らないラジカル重合性化合物を含まない。
【0078】
支持体
支持体は実質的に平坦な構造、例えば、材料のパネル、シート、又はフィルムである。
【0079】
支持体は、任意の材料から作られていてよい。例えば、支持体は、ガラス、例えば、クリスタルガラス、極薄ガラス、化学強化ガラスなどのガラス、又は有機ポリマー、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PMMA(ポリ(メチルメタクリレート))、又はPE(ポリエチレン)、あるいはそれらの組み合わせから選択される材料から、例えば、1つ以上のガラスの層及び/又は1つ以上のポリマーの層から作られていることができる。例えば、支持体は、透明な弾性材料の層によって分離された2つのガラス層を含む安全ガラスパネルであってもよい。好ましくは、支持体は、PET、PMMA、又はPEなどの有機ポリマーから作られた可撓性のフィルムである。可撓性フィルムの使用は、ロール・ツー・ロールプロセスにおいて装飾物品を製造することを可能にする。
【0080】
支持体は透明であってよく、すなわち、支持体は、光、好ましくは少なくとも可視光の透過を可能にする。好ましくは、その材料は従来の意味で透明であり、すなわち(少なくとも目に見える)光が散乱されることなくその材料を通過することを可能にする。
【0081】
微細構造層は透明であってもよい。本発明の装飾物品は、透明な支持体及び透明な微細構造層を含むことができ、全体として透明であってもよい。
【0082】
支持体は、微細構造層の塗布面上に、又は裏面上に、又は両方の面上に、反射層又は半透明反射層を含んでいてもよい。反射層は、微細構造に入射する及び/又は微細構造を通過する光の少なくとも一部を反射するように構成される。反射層は、金属、好ましくは銀及び/又はアルミニウムからできた層、あるいは誘電体ミラーを形成する材料から作られた複数の層であってもよい。その少なくとも部分的に反射する層は、物理気相堆積(PVD)又は化学気相堆積(CVD)によって適用することができる。反射層の厚さは、20nm~1μmであってよい。反射層は可撓性であってもよい。
【0083】
装飾物品は、支持体及び/又は少なくとも部分的に反射層によって互いに分離された2つの重ねられた微細構造を含んでいてもよい。その場合、装飾物品それ自体が、第2の微細構造層を適用するための支持体となり得る。
【0084】
支持体は、有機ポリマーから作られ、かつ、2mm以下、好ましくは1mm以下、又は500μm以下の厚さを有する可撓性フィルム(フレキシブルフィルム)であってもよい。好ましくは、そのフィルムは、100μm~500μm、又は100μm~200μmの厚さを有する。可撓性フィルムは、薄く、したがって可撓性の反射層を含んでいることができる。
【0085】
任意選択によって可撓性の反射層でコーティングされていてもよい、可撓性の微細構造層を支持している可撓性フィルム、すなわち本発明の装飾物品は、可撓性の材料、例えば、布帛(テキスタイル)又は(人工)皮革の上に有利に適用することができる。
【0086】
可撓性であることに加えて、支持体として使用されるフィルムは、弾性があることが好ましい。微細構造層もまた弾性であるから、本発明の装飾物品は、布帛(テキスタイル)などの弾性材料の上に有利に適用することができる。
【0087】
その他の層
上で論じたとおり、本発明の装飾物品は、少なくとも1つの部分的に又は完全に反射する層を含むことができる。
【0088】
さらに、本発明の装飾物品は、その装飾物品、特に装飾物品上の微細構造層を機械的及び/又は化学的な損傷から保護する保護層を含んでいてもよい。保護層は、エポキシラッカー、一成分形ポリウレタンラッカー、二成分形ポリウレタンラッカー、アクリルラッカー、UV硬化性ラッカー、及びゾルゲルコーティングからなる群から選択されるラッカーを含むことができる。保護層は、任意に選択によって着色されていてもよい。保護層は、4~14μmの厚さを有することができ、かつ、噴霧(スプレー)、デジタル印刷、ロールコーティング、カーテンコーティング、又は他の二次元適用方法によって適用することができる。
【0089】
調製プロセス
本発明は、支持体及び微細構造層を含む装飾物品を製造する方法に関連し、その方法は、(i)本発明のエンボス形成ラッカーを支持体上に適用して、コーティングされた支持体を得るステップ、(ii)コーティングされた支持体上のエンボス形成ラッカーをエンボス加工してエンボスが形成されたラッカー層を得るステップ、及び(iii)そのエンボスが形成されたラッカー層を硬化させて微細構造層を得て、それによって装飾物品を得るステップを含む。好ましくは、この方法は、支持体としてポリマーフィルムを使用するロール・ツー・ロール(roll-to-roll)プロセスを含む。特に、ステップ(ii)は、ロール・ツー・ロールプロセスで実施することができる。
【0090】
さらに、本発明は、本発明のエンボス形成ラッカーをラジカル重合反応に供するステップを含む、重合されたエンボス形成ラッカーを調製する方法に関する。この方法は、上記方法のステップ(iii)で実施される。
【0091】
微細構造層は、支持体の平坦な表面上にエンボス形成ラッカーの層を適用し、スタンプを使用してエンボス形成ラッカーの層に微細構造をエンボス加工することによって形成することができる。スタンプはローラー上に設けることができる。
【0092】
ステップ(i)において、エンボス形成ラッカーは、ローラーを使用して、支持体の平坦な表面上に適用され得る。支持体はローラー上に配置することができ、微細構造をエンボス加工するステップ(ii)は、ロール・ツー・ロールプロセスを使用して実施することができる。エンボス形成ラッカーは、エンボス加工中又はエンボス加工後に硬化される。好ましくは、エンボス形成ラッカーは、エンボス加工と同時に硬化される。ラジカル重合性化合物は、電磁放射線、例えば、UV光を用いて、重合、すなわち硬化させることができる。
【0093】
スタンプは、ポリマー材料、例えば、ポリウレタン-アクリレート樹脂又はPDMS(ポリジメチルシロキサン)、あるいは金属含有材料、例えば、ニッケル又はニッケルリン合金から作製され得る。スタンプは、約100nm未満、好ましくは約50nm未満、約20nm未満、約10nm未満、または約5nm未満の表面粗さRaを有し得る。スタンプは、2μm未満、好ましくは1μm未満、800nm未満、500nm未満、又は200nm未満の平面度(flatness deviation)dfを有することができる。
【0094】
エンボス形成ラッカーの層の厚さは、30μm~200μm、例えば50μm~150μmであることができる。
【0095】
好ましくは、エンボス形成ラッカーは、支持体を通してエンボスラッカーを電磁放射線に曝露することによって、少なくとも部分的に硬化され得る。その場合、支持体は、エンボス形成ラッカーを硬化させるのに適した波長範囲の電磁放射線に対して透明であることが好ましい。
【0096】
少なくとも部分的に反射する層は、微細構造の上に及び/又はその微細構造を形成する前又は形成した後に支持体の平坦な表面の1つ以上の上に設けられてもよい。
【実施例0097】

様々な組成のエンボス形成ラッカーを調製し、それらの光学的及び物理的特性を比較した。エンボス形成ラッカーを調製するために、以下の化合物を用いた。
【0098】
OPPEA(オルト-フェニル-フェノール-エトキシ-アクリレート;Miwon, M1142)は、本発明のエンボス形成ラッカーに含まれる化合物(A)の代表である:
【化2】
【0099】
BPA(EO)10DA(ビスフェノール-A-デカ-エトキシ-ジ-アクリレート)は、本発明のエンボス形成ラッカーに含まれる化合物(B)の代表である:
【化3】
式中、a及びbは、互いに独立に、3~25の範囲の整数である。
【0100】
BPA(EO)2DMA(ビスフェノール-A-ジ-エトキシ-ジ-メタクリレート;Sartomer SR348L)は、本発明のエンボス形成ラッカーに任意選択によって含まれていてもよい化合物(C)の代表である:
【化4】
【0101】
Ebecryl 210 (Allnex E210) は、約1.52の屈折率(ND25)を有する芳香族ウレタンジアクリレートオリゴマーである。
【0102】
TPO-L (エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート) は、UV-Aの範囲に高い吸収を有する液状光開始剤である。
【0103】
表1は、エンボス形成ラッカーの組成及び硬化したエンボス形成ラッカーの光学的及び機械的特性を示す。
【0104】
【表1】
【0105】
NILcureHD17は、国際公開第2021/009381A1号に開示されており、比較のエンボス形成ラッカーである。NILcureHD17配合の硬化したエンボス形成ラッカーは、高い光学的分散、高い耐溶剤性、及び高い引張強度を示す。 BPA(EO)2DMA中の2つの芳香族ベンゼン環は剛直な構造であり、緊密な架橋と一緒になって、これは、硬化した生成物の低弾性あるいは高脆性を必然的にもたらす。
【0106】
本発明によるエンボス形成ラッカーNILcureHDflex01では、NILcureHD17に含まれる芳香族モノマーBPA(EO)2DMAを、柔軟なポリエトキシ鎖を含むBPA(EO)10DAで部分的に置き換えた。高い光学分散の原因となる芳香族コアと反応性アクリレート基の間のこれらの柔軟なポリエトキシ鎖は、高い光学分散、高い耐溶剤性、及び高い引張強度を維持しながら、硬化した生成物の弾性の顕著な増大を引き起こす。
【0107】
本発明によるエンボス形成ラッカーNILcureHDflex02では、芳香族ウレタンアクリレート(Ebecryl 210)を添加して、基材との接着を向上させた。
【0108】
図1は、分光エリプソメトリーによって測定した上記3つのエンボス形成ラッカーの光学分散を示している。アッベ数(表1)は、上述したように、光学分散から計算した。
【0109】
表1のデータは、本発明による硬化したエンボス形成ラッカーが高い弾性を示すことを示している。屈折率及び光学分散は、芳香族部分の減少により、比較生成物よりも幾分低い。
【0110】
図2A~2Cは、硬化したエンボス形成ラッカーが、下は430nmまでの可視波長範囲において完全な光透過性を有することを示している。可視範囲での透過の欠如(100%ではなく約90%)は、フィルムの両面上でのフレネル反射によって引き起こされ、約 380nmにおけるUV-A範囲での透過率の低下は、TPO-L光開始剤によって引き起こされている。
図1
図2
【外国語明細書】