(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005481
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】圧縮空気貯蔵発電装置
(51)【国際特許分類】
F03B 17/02 20060101AFI20230111BHJP
F03B 13/26 20060101ALI20230111BHJP
F02C 6/16 20060101ALI20230111BHJP
F02C 1/02 20060101ALI20230111BHJP
F02C 6/00 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
F03B17/02
F03B13/26
F02C6/16
F02C1/02
F02C6/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107426
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】521362885
【氏名又は名称】コベルコ・コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】中村 元
(72)【発明者】
【氏名】松村 昌義
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA06
3H074AA10
3H074AA12
3H074BB07
3H074CC16
3H074CC34
(57)【要約】
【課題】圧縮空気貯蔵発電装置において、圧縮空気を膨張させることによる発電に加え、蓄圧部の圧縮空気の増減に伴う水の流入出を利用して発電する。
【解決手段】圧縮空気貯蔵発電装置1は、再生可能エネルギーを利用して発電する発電設備20と、発電設備20で発電した電力によって駆動される電動機30と、電動機30で駆動されることによって空気を圧縮する圧縮機40と、圧縮機40から吐出された圧縮空気を貯蔵し、少なくとも一部が水面2より低位になるように地面11a,12との相対位置を固定して配置されている蓄圧部50と、蓄圧部50で貯蔵した圧縮空気を膨張させる膨張機60と、膨張機60によって駆動される発電機70と、水面2より低位となる位置において、一端が蓄圧部50に接続され他端が水中3に開放されている通水路7と、通水路7に設けられ、蓄圧部50の圧縮空気の増減に伴って通水路7内に発生する水流によって駆動され、発電する水流発電機90とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギーを利用して発電する発電設備と、
前記発電設備で発電した電力によって駆動される電動機と、
前記電動機で駆動されることによって空気を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機から吐出された圧縮空気を貯蔵し、少なくとも一部が水面より低位になるように地面との相対位置を固定して配置されている蓄圧部と、
前記蓄圧部で貯蔵した前記圧縮空気を膨張させる膨張機と、
前記膨張機によって駆動される発電機と、
前記水面より低位となる位置において、一端が前記蓄圧部に接続され他端が水中に開放されている通水路と、
前記通水路に設けられ、前記蓄圧部の前記圧縮空気の増減に伴って前記通水路内に発生する水流によって駆動され、発電する水流発電機と
を備える、圧縮空気貯蔵発電装置。
【請求項2】
前記通水路の前記一端は、前記蓄圧部の底部に接続されている、請求項1に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
【請求項3】
前記水面が海面であって、
前記蓄圧部は、前記蓄圧部の前記少なくとも一部が満潮時の水位と干潮時の水位との間に位置するように配置され、
前記水流発電機は、潮の満ち引きに伴って前記通水路内に発生する水流によって駆動され、発電する、請求項1又は2に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
【請求項4】
前記蓄圧部と前記水中とを流体的に連通または遮断する開閉弁が、前記通水路に設けられている、請求項3に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
【請求項5】
前記蓄圧部は、前記水中と陸域とに接し前記地面に対して固定的に配置されている構造物に設けられている、請求項1又は2に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
【請求項6】
前記蓄圧部は、中空状の構造体の内部空間である、請求項5に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
【請求項7】
前記蓄圧部は、陸域を介して前記水中と隣接し前記地面に対して固定的に配置されている構造体の内部空間である、請求項1又は2に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
【請求項8】
前記圧縮機と前記膨張機とは、前記構造物上に配置されている、請求項5又は6に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
【請求項9】
前記圧縮機と前記膨張機とは、前記陸域上に配置されている、請求項7に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
【請求項10】
前記圧縮機と前記膨張機とは、圧縮膨張兼用機として一体に構成されている、請求項8又は9に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
【請求項11】
前記蓄圧部における前記水の流入出量を調整するための調整弁が、前記通水路に設けられている、請求項1から10のいずれかに記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気貯蔵発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーを利用した発電の出力を安定させるための圧縮空気貯蔵(CAES:compressed air energy storage)発電装置が知られている。CAES発電装置では、再生可能エネルギーを用いて発電した電力によって圧縮機を駆動し、圧縮機によって作られた圧縮空気をタンクなどの蓄圧部に貯蔵する。そして、必要なときに蓄圧部の圧縮空気を利用することによって、タービン発電機を駆動し、適時の発電を可能とする。
【0003】
特許文献1には、再生可能エネルギーを用いて発電した電力によって陸上に設けられた圧縮機を駆動し、圧縮空気を海中に設置されたタンクに蓄える装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された装置では、陸上に設けられた圧縮機から海中に設置されたタンクまで空気配管を介して圧縮空気を圧送している。そのため、空気配管を陸上と海中とにまたがって配置する必要があり、圧縮機とタンクとを流体的に接続することが困難である。
【0006】
また、特許文献1に開示された装置では、タンクに圧縮空気を貯蔵し、その圧縮空気を利用して発電することについては記載されているが、他の態様の発電との併用については特段の開示がない。
【0007】
本発明は、圧縮空気貯蔵発電装置において、圧縮空気を膨張させることによる発電に加え、蓄圧部の圧縮空気の増減に伴う水の流入出を利用して発電することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、再生可能エネルギーを利用して発電する発電設備と、前記発電設備で発電した電力によって駆動される電動機と、前記電動機で駆動されることによって空気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機から吐出された圧縮空気を貯蔵し、少なくとも一部が水面より低位になるように地面との相対位置を固定して配置されている蓄圧部と、前記蓄圧部で貯蔵した前記圧縮空気を膨張させる膨張機と、前記膨張機によって駆動される発電機と、前記水面より低位となる位置において、一端が前記蓄圧部に接続され他端が水中に開放されている通水路と、前記通水路に設けられ、前記蓄圧部の前記圧縮空気の増減に伴って前記通水路内に発生する水流によって駆動され、発電する水流発電機とを備える、圧縮空気貯蔵発電装置を提供する。
【0009】
本発明に係る圧縮空気貯蔵発電装置によれば、蓄圧部に圧縮空気が供給される際、水は通水路を介して蓄圧部から流出する。また、蓄圧部から圧縮空気が排気される際、水は通水路を介して蓄圧部に流入する。すなわち、蓄圧部の圧縮空気の増減に伴って、通水路内に水流が生じる。通水路に水流発電機が設けられているため、通水路内に生じた水流が有するエネルギーを回収し発電することができる。従って、膨張機による発電に加え、水流発電機でも発電することができる。また、圧縮空気の圧力が水の水頭圧を下回っていれば、通水路は水で満たされており、圧縮空気が水中に漏出することが抑制ないし防止され得る。
【0010】
前記通水路の前記一端は、前記蓄圧部の底部に接続されていてもよい。
【0011】
前記の構成によれば、蓄圧部に圧縮空気が供給される際、水が蓄圧部の底部から流出するため、蓄圧部に水が滞留することが抑制され得る。そのため、通水路内を通過する水量が増加し、水流発電機による発電量が増加し得る。
【0012】
前記水面が海面であって、前記蓄圧部は、前記蓄圧部の前記少なくとも一部が満潮時の水位と干潮時の水位との間に位置するように配置され、前記水流発電機は、潮の満ち引きに伴って前記通水路内に発生する水流によって駆動され、発電してもよい。
【0013】
前記の構成によれば、潮の満ち引きを利用して発電できる。そのため、水流発電機では、圧縮空気によって発生する水流を利用した発電に加え、潮力を利用した発電も行われ得る。
【0014】
前記蓄圧部と前記水中とを流体的に連通または遮断する開閉弁が、前記通水路に設けられていてもよい。
【0015】
前記の構成によれば、開閉弁を操作することで、水と圧縮空気とが通水路内を通過することを許容又は遮断できる。そのため、干潮時の水頭圧が低い場合、または水頭圧がない場合であっても開閉弁を閉状態とすることで、蓄圧部に圧縮空気を貯蔵できる。また、干潮時から満潮時に至るまで開閉弁を閉状態で維持し、満潮時に開状態とすることで、潮力による発電を効率的に行うことができる。
【0016】
前記蓄圧部は、前記水中と陸域とに接し前記地面に対して固定的に配置されている構造物に設けられていてもよい。
【0017】
前記の構成によれば、構造物を製造する際に蓄圧部を設けることができる。つまり、蓄圧部が構成された構造物を製造することができる。そのため、構造物と蓄圧部とを同時に製造でき、工数を低減できる。また、既存の構造物に蓄圧部を追加して設ける場合であっても、構造物の設計図を基に設計や施工できるため、蓄圧部を容易に設けることができる。
【0018】
前記蓄圧部は、中空状の構造体の内部空間であってもよい。
【0019】
前記の構成によれば、圧縮空気の貯蔵を目的に構造体を製造できるため、圧縮空気を確実に貯蔵できる。
【0020】
前記蓄圧部は、陸域を介して前記水中と隣接し前記地面に対して固定的に配置されている構造体の内部空間であってもよい。
【0021】
前記の構成によれば、圧縮空気の貯蔵を目的に構造体を製造できるため、圧縮空気を確実に貯蔵できる。また、構造体を製造してから配置することができるため、容易に施工できる。
【0022】
前記圧縮機と前記膨張機とは、前記構造物上に配置されていてもよい。
【0023】
前記圧縮機と前記膨張機とは、前記陸域上に配置されていてもよい。
【0024】
前記の構成によれば、圧縮機、膨張機、および蓄圧部が相対的に近い領域に配置されている。そのため、圧縮機および膨張機と、蓄圧部とを容易に流体的に接続できる。
【0025】
前記圧縮機と前記膨張機とは、圧縮膨張兼用機として一体に構成されていてもよい。
【0026】
前記の構成によれば、圧縮機および膨張機(圧縮膨張兼用機)の設置スペースを減少させることができる。
【0027】
前記蓄圧部における前記水の流入出量を調整するための調整弁が、前記通水路に設けられていてもよい。
【0028】
前記の構成によれば、通水路内を通過する水量を調整することができる。そのため、水流発電機の発電効率が高くなるように流量を調整できる。従って、水流発電機の発電量を増加させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の圧縮空気貯蔵発電装置によれば、圧縮空気を膨張させることによる発電に加え、蓄圧部の圧縮空気の増減に伴う水の流入出を利用して発電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る圧縮空気貯蔵発電装置の概略構成図。
【
図2A】第2実施形態に係る圧縮空気貯蔵発電装置の概略構成図。
【
図3】第3実施形態に係る圧縮空気貯蔵発電装置の概略構成図。
【
図4】第4実施形態に係る圧縮空気貯蔵発電装置の概略構成図。
【
図5】第5実施形態に係る圧縮空気貯蔵発電装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0032】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態におけるCAES発電装置1の概略構成図である。
【0033】
本実施形態では、圧縮空気貯蔵(CAES)発電装置1は、海や湖などの水中と陸域11とに接する岸壁(構造物)10に配置されている。CAES発電装置1は、水中と接する他の箇所、例えば防波堤などの水中の地面12に設けられ、陸域11と直接的に繋がっていない構造物に配置されてもよい。また、岸壁10や防波堤は、ケーソンやセルラーブロックなどを用いて建造されたものを含む。また、CAES発電装置1は、ダム、湖、河川、人工池、または貯水プールの貯水部(水中)と接する箇所に配置されてもよい。
図1では、水面を符号2で示し、水中を符号3で示し、水上を符号4で示している。これは以降の図でも同様である。また、本実施形態では、満潮および干潮による潮位差、すなわち、水面2の位置変動が生じない場合を例示する。そのため、以下の説明では、水面2の位置は一定である。
【0034】
CAES発電装置1は、発電設備20と、モータ(電動機)30と、圧縮機40と、蓄圧部50と、膨張機60と、発電機70とを有している。
図1では、図示を明瞭にするため、岸壁10および蓄圧部50を画定する構造体49を断面図としてハッチングを付して示している。
【0035】
発電設備20は、再生可能エネルギーを利用して発電する。本実施形態では、発電設備20は、風力発電機能を有している。代替的には、発電設備20は、水温差発電、潮力発電、または太陽光発電などの機能を有していてもよい。
【0036】
本実施形態では、発電設備20は、岸壁10上に配置されている。また、詳細を図示しないが、発電設備20は、岸壁10から離れた場所、例えば、山上や水上に配置されてもよい。発電設備20はモータ30と配線5aを介して電気的に接続されている。発電設備20で発電した電力は、配線5aを介してモータ30に供給される。
【0037】
モータ30は、発電設備20で発電した電力によって駆動される。モータ30は、圧縮機40と機械的に接続されている。
【0038】
圧縮機40は、モータ30によって駆動される。圧縮機40は、吸気口41から外部の空気を吸気し、内部で圧縮し、吐出口42から圧縮空気を吐出する。圧縮機40の吐出口42は、配管6aを介して蓄圧部50と流体的に接続されている。配管6aには図示されない電磁弁が設けられている。電磁弁を開いたとき、蓄圧部50に圧縮空気が供給され、閉じたとき、圧縮空気の供給が遮断される。圧縮機40の種類は、特に限定されないが、スクリュ式であってもよい。
【0039】
本実施形態では、蓄圧部50は、水中3と陸域11とに接し地面11aに対して固定的に配置されている岸壁10に設けられている。蓄圧部50は、圧縮機40から吐出された圧縮空気を貯蔵する空間である。本実施形態では、蓄圧部50は、タンク状(中空状)の構造体49の内部空間であり、略直方体の形をしている。タンク状の構造体49は、内部空間の一部が水面2より低位になるように岸壁10に埋め込まれている。すなわち、蓄圧部50は、陸域11の地面11aとの相対位置を固定して配置されている。蓄圧部50は、海中の地面12との相対位置を固定して配置されていてもよい。また、蓄圧部50は、蓄圧部50全体が水面2より低位になるように配置されていてもよい。
【0040】
蓄圧部50には、他端が水中3に開放された通水路7の一端が、水面2より低位となる位置において接続されている。すなわち、蓄圧部50は、通水路7を介して水中3に開放されている。後述するように、蓄圧部50の内部への圧縮空気の流出入に伴い、通水路7を介して水が蓄圧部50へ流入出する。従って、蓄圧部50は、貯蔵されている圧縮空気の量に応じて空気層S1と水層S2とに分かれている。
【0041】
本実施形態では、蓄圧部50は、内部空間の底側の部分である底部50aを有する。底部50aは、構造体49の内側の底面49aに接する部分である。通水路7の一端は、底部50aの底面49a付近に接続されている。
【0042】
蓄圧部50は、膨張機60の給気口61と配管6bを介して流体的に接続されている。配管6bには図示されない電磁弁が設けられている。電磁弁を開いたとき、膨張機60に圧縮空気が供給され、閉じたとき、圧縮空気の供給が遮断される。
【0043】
通水路7には、水流発電機90が設けられている。水流発電機90は、蓄圧部50の圧縮空気の増減に伴って通水路7内に発生する水流によって駆動され、発電する。水流発電機90は、配線5cによって図示しない電力系統に電気的に接続されている。水流発電機90で発電した電力は、配線5cおよび電力系統を介して供給先に供給される。なお、水流発電機90の構造は、特に限定されず、公知のものを使用できる。
【0044】
本実施形態では、通水路7には、流量調整弁(調整弁)8が設けられている。流量調整弁8は、蓄圧部50における水の流入出量を調整する。すなわち、流量調整弁8の開度を大きくすることで通水路7内を流れる水量が増加し、流量調整弁8の開度を小さくすることで通水路7内を流れる水量が減少する。
【0045】
本実施形態では、タンク状の構造体49、通水路7、流量調整弁8、および水流発電機90は、岸壁10の建造時に設置される。タンク状の構造体49、通水路7、流量調整弁8、および水流発電機90は、岸壁10の建造後に追加工事によって設置されてもよい。また、タンク状の構造体49を設けずに、岸壁10を構成するコンクリート等によって蓄圧部50を構成してもよい。
【0046】
膨張機60は、給気口61から蓄圧部50で貯蔵した圧縮空気を給気され、内部で膨張させ、排気口62から外部へ排気する。膨張機60の種類は、特に限定されないが、スクリュ式であってもよい。膨張機60は、発電機70と機械的に接続されている。
【0047】
発電機70は、膨張機60によって駆動されることによって発電する。発電機70は、配線5bによって図示しない電力系統に電気的に接続されている。発電機70で発電した電力は、配線5bおよび電力系統を介して供給先に供給される。
【0048】
本実施形態では、モータ30および圧縮機40と、膨張機60および発電機70とが、岸壁10上に配置されている。詳細には、モータ30および圧縮機40と、膨張機60および発電機70とは、蓄圧部50の上方に配置されている。
【0049】
本実施形態に係るCAES発電装置1によれば、風力を利用して発電設備20が発電すると、電力需要がある場合には、供給先(図示されないグリッド)へ電力を供給する。一方電力需要が無く、蓄電する場合には、発電した電力はモータ30に供給される。モータ30によって圧縮機40が駆動されると、圧縮機40から蓄圧部50に圧縮空気が供給される。これにより、蓄圧部50から通水路7を介して水が流出し、蓄圧部50の水位が低下する。
【0050】
また、蓄圧部50から膨張機60に圧縮空気が供給されると、膨張機60が発電機70を駆動する。発電機70で発電した電力は、図示しない供給先に供給される。このとき、蓄圧部50の圧縮空気量の低下に伴って蓄圧部50には通水路7を介して水が流入し、蓄圧部50の水位が上昇する。このとき、通水路7内を流れる水が、水流発電機90を駆動し、発電した電力は図示しない供給先に供給される。
【0051】
本実施形態に係るCAES発電装置1によれば、蓄圧部50に圧縮空気が供給される際、水は通水路7を介して蓄圧部50から流出する。また、蓄圧部50から圧縮空気が排気される際、水は通水路7を介して蓄圧部50に流入する。すなわち、蓄圧部50の圧縮空気の増減に伴って、通水路7内に水流が生じる。通水路7に水流発電機90が設けられているため、通水路7内に生じた水流が有するエネルギーを回収し発電することができる。従って、膨張機60による発電に加え、水流発電機90でも発電することができる。また、圧縮空気の圧力が水の水頭圧を下回っていれば、通水路7は水で満たされており、圧縮空気が水中に漏出することが抑制ないし防止され得る。
【0052】
また、蓄圧部50に圧縮空気が供給される際、水が蓄圧部50の底部50aから流出するため、蓄圧部50に水が滞留することが抑制され得る。そのため、通水路7内を通過する水量が増加し、水流発電機90による発電量が増加し得る。
【0053】
また、岸壁10に蓄圧部50が設けられているため、岸壁10を建造する際に蓄圧部50を設けることができる。つまり、例えば、ケーソンの内部空間に蓄圧部50を設けることによって、蓄圧部50が構成された岸壁10を製造することができる。そのため、岸壁10と蓄圧部50とを同時に建造でき、工数を低減できる。また、既存の岸壁10に蓄圧部50を追加工事で設ける場合であっても、岸壁10の設計図を基に設計や施工できるため、蓄圧部50を容易に設けることができる。
【0054】
また、圧縮空気の貯蔵を目的にタンク状の構造体49を製造できるため、圧縮空気を確実に貯蔵できる。
【0055】
また、通水路7に流量調整弁8が設けられているため、通水路7内を通過する水量を調整することができる。そのため、水流発電機90の発電効率が高くなるように流量を調整できる。従って、水流発電機90の発電量を増加させることができる。
【0056】
また、圧縮機40、膨張機60、および蓄圧部50が同じ岸壁10に配置されている。そのため、圧縮空気を流すための配管6a,6bの取り回しを岸壁10の近傍で完結させることができる。従って、圧縮機40および膨張機60と、蓄圧部50とを容易に流体的に接続できる。
【0057】
(第2実施形態)
図2Aに示す第2実施形態に係るCAES発電装置1は、満潮および干潮による潮位差が生じる海に接する箇所に配置され、開閉弁9を有している。これに関する構成以外は、第1実施形態と実質的に同じである。従って、第1実施形態にて示した部分については説明を省略する場合がある。
【0058】
第2実施形態では、水面(海面)2の位置は、満潮および干潮によって変動する。換言すると、水面2は、満潮時の水位H1と干潮時の水位H2との間で変動する。
【0059】
第2実施形態では、蓄圧部50は、蓄圧部50の一部が水位H1と水位H2との間に位置するように配置されている。具体的には、構造体49の内側の底面49aが水位H1と水位H2との間に位置し、構造体49の内側の天面49bが水位H1より上に位置するように配置されている。
【0060】
図2B、
図2C、および
図2Dを参照して、蓄圧部50の位置に関する変形例を説明する。
図2B~Dは、蓄圧部50と、水位H1および水位H2との位置関係に関する変形例を示す概略図である。位置関係を明瞭に説明するために、岸壁10、陸域11、構造体49、蓄圧部50以外の構成の図示は省略している。
【0061】
図2Bに示すように、蓄圧部50は、底面49aが水位H2より下に位置し、天面49bが水位H1と水位H2との間に位置するように配置されてもよい。
【0062】
図2Cに示すように、蓄圧部50は、底面49aが水位H2より下に位置し、天面49bが水位H1より上に位置するように配置されてもよい。
【0063】
図2Bおよび
図2Cに示すように、蓄圧部50の底部に開放している通水路7の一端は、干潮時においても水位H2よりも低位(干潮時の水面よりも下)に位置することが望ましい。また、水中側で開放している通水路7の他端(水中開放端)は、干潮時においても水中に位置するように、水位H2よりも低位(干潮時の水面よりも下)に位置することが望ましい。このように構成することで、干潮時においても水中から蓄圧部50へ向かう水流を形成することができるため、水流発電機稼働率を上げることができる。
【0064】
図2Dに示すように、蓄圧部50は、底面49aと天面49bとが水位H1と水位H2との間にそれぞれ位置するように配置されてもよい。
【0065】
図2Aを参照すると、第2実施形態では、通水路7に開閉弁9が設けられている。開閉弁9は、蓄圧部50と水中3とを流体的に連通または遮断する。すなわち、開閉弁9を開状態とすることで、蓄圧部50は水中3に開放され、開閉弁9を閉状態とすることで、蓄圧部50は水中3から遮断される。
【0066】
第2実施形態に係るCAES発電装置1の発電方法の一例を以下に説明する。
【0067】
干潮時、すなわち、水面2が水位H2に位置し、蓄圧部50に水が概ね無いとき、開閉弁9を閉状態し、圧縮空気を蓄圧部50に貯蔵する。干潮時から満潮時に至るまでの間、すなわち、水面2が水位H2から水位H1まで変動する間、開閉弁9を閉状態で維持する。満潮時に、開閉弁9を開状態とし、同時に蓄圧部50の圧縮空気を膨張機60に給気することで、水中3から蓄圧部50に水が流れる。
【0068】
この時、圧縮空気が膨張機60に給気されることで、発電機70で発電される。また、水中3から蓄圧部50に流れる水によって水流発電機90が駆動され、発電される。換言すると、水流発電機90は、潮の満ち引き伴って通水路内に発生する水流によって駆動され、発電する。
【0069】
水流発電機90では、構造体49の内側の底面49aから満潮時の水位H1までの高さ分の水頭圧が有する位置エネルギーが回収され、発電される。また、蓄圧部50に水が流入する際、蓄圧部50の圧縮空気を膨張機60に押し出すように水の位置エネルギーが付加されるため、発電機70における発電量も増加する。換言すると、発電機70では、蓄圧部50に貯蔵された圧縮空気のエネルギーに加え、構造体49の内側の底面49aから満潮時の水位H1までの高さ分の水頭圧が有する位置エネルギーの一部で発電される。
【0070】
ここで、干潮時に開閉弁9を閉状態とし、満潮時に開閉弁9を開状態としているが、これは潮位差による位置エネルギーを最も有効に活用するためである。すなわち、位置エネルギーが生じるように開閉弁9の開閉状態を切り替えれば、開閉弁9の開閉状態を切り替えるタイミングは、干潮時および満潮時に限らない。また、蓄圧部50の圧縮空気を膨張機60に給気するタイミングは、満潮時に限らない。
【0071】
第2実施形態に係るCAES発電装置1によれば、潮の満ち引きを利用して発電できる。そのため、水流発電機90では、圧縮空気によって発生する水流を利用した発電に加え、潮力を利用した発電も行われ得る。
【0072】
また、開閉弁9を操作することで、水と圧縮空気とが通水路7内を通過することを許容又は遮断できる。そのため、干潮時の水頭圧が低い場合、または水頭圧がない場合であっても開閉弁9を閉状態とすることで、蓄圧部50に圧縮空気を貯蔵できる。また、干潮時から満潮時に至るまで開閉弁9を閉状態で維持し、満潮時に開状態とすることで、潮力による発電を効率的に行うことができる。
【0073】
(第3実施形態)
図3に示す第3実施形態に係るCAES発電装置1は、圧縮膨張兼用機80を有している。これに関する構成以外は、第1実施形態と実質的に同じである。従って、第1実施形態にて示した部分については説明を省略する場合がある。
【0074】
第3実施形態では、第1実施形態における圧縮機40(
図1参照)および膨張機60(
図1参照)が、圧縮膨張兼用機80として一体に構成されている。圧縮膨張兼用機80は、スクリュ式であってもよい。また、第1実施形態におけるモータ30(
図1参照)および発電機70(
図1参照)が、電動発電兼用機81として一体に構成されている。
【0075】
第3実施形態によれば、第1実施形態における圧縮機40(
図1参照)および膨張機60(
図1参照)の設置スペースを減少させることができる。
【0076】
(第4実施形態)
図4に示す第4実施形態に係るCAES発電装置1は、蓄圧部50に関して第1実施形態と異なる。これらに関する構成以外は、第1実施形態と実質的に同じである。従って、第1実施形態にて示した部分については説明を省略する場合がある。
【0077】
第4実施形態では、蓄圧部50がタンク51~54の内部空間51a~54aによって構成されている。
【0078】
タンク51~54の内部空間51a~54aには、水中3に開放された通水路7が流体的に接続されている。タンク51~54の内部空間51a~54aの圧縮空気の増減に伴って、通水路7を介してタンク51~54の内部空間51a~54aに水が出入りする。
【0079】
第4実施形態によれば、タンク51~54の内部空間51a~54aからなる蓄圧部50を岸壁10に埋めることができるので、施工が容易である。
【0080】
配管6a及び配管6bと、各タンク51~54とを接続する各枝管51b~54bに電磁弁を設けてもよく、各タンク51~54と水流発電機90とを接続する通水路7の各枝管7a~7dに電磁弁を設けてもよい。このように構成することにより、各タンク51~54毎に、圧縮空気または水の貯蔵量を増減させて、蓄圧及び発電、または水流発電を制御することができる。
【0081】
(第5実施形態)
図5に示す第5実施形態に係るCAES発電装置1は、設置場所に関して第1実施形態と異なる。これらに関する構成以外は、第1実施形態と実質的に同じである。従って、第1実施形態にて示した部分については説明を省略する場合がある。
【0082】
第5実施形態では、蓄圧部50は水中3と接する、例えば自然海岸などの陸域11に埋設されている。それに限らず、蓄圧部50は堤防を介して水中3と隔てられた陸域11に埋設されてもよい。すなわち、蓄圧部50は、陸域11を介して水中3と隣接し、地面11aとの相対位置を固定して配置されているタンク状の構造体49の内部空間である。
【0083】
通水路7、流量調整弁8、および水流発電機90は、水流発電ユニット91として一体に構成されている。水中3と蓄圧部50との間の陸域11を掘削し、その掘削した箇所に水流発電ユニット91を設置することで、蓄圧部50と水中3とを連通させる。代替的には、掘削した箇所に通水路7、流量調整弁8、および水流発電機90を配置し、陸域11との間に生じている隙間をコンクリート等で埋めてもよい。つまり、水流発電ユニット91を構成せずに、通水路7、流量調整弁8、および水流発電機90を別体で陸域11に設置してもよい。
【0084】
また、第5実施形態では、圧縮機40と膨張機60とは、陸域11上に設けられている。
【0085】
第5実施形態によれば、例えば風速が速い陸域11に、風力発電で発電するCAES発電装置1を設置することができる。そのため、再生可能エネルギーによる発電量を増やしつつ、発電した電力を圧縮空気として蓄圧部50に貯蔵することができる。
【0086】
また、構造体49は、圧縮空気の貯蔵を目的に製造され得るため、圧縮空気を確実に貯蔵できる。また、構造体49を製造してから陸域11に配置することができるため、容易に施工できる。
【0087】
以上より、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、個々の実施形態の内容を適宜組み合わせたものを、この発明の一実施形態としてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 圧縮空気貯蔵発電装置(CAES発電装置)
2 水面
3 水中
4 水上
5a,5b,5c 配線
6a,6b 配管
7 通水路
7a~7d 枝管
8 流量調整弁(調整弁)
9 開閉弁
10 岸壁(構造物)
11 陸域
11a 地面
12 地面
20 発電設備
30 モータ(電動機)
40 圧縮機
41 吸気口
42 吐出口
49 構造体
49a 底面
49b 天面
50 蓄圧部
50a 底部
51~54 タンク(構造体)
51a~54a 内部空間
51b~54b 枝管
60 膨張機
61 給気口
62 排気口
70 発電機
80 圧縮膨張兼用機
81 電動発電兼用機
90 水流発電機
91 水流発電ユニット