(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054873
(43)【公開日】2023-04-17
(54)【発明の名称】スポンジローラ
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20230410BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20230410BHJP
F16C 13/00 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
G03G15/00 551
G03G15/16 103
F16C13/00 B
F16C13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163823
(22)【出願日】2021-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓弥
【テーマコード(参考)】
2H171
2H200
3J103
【Fターム(参考)】
2H171FA26
2H171FA30
2H171TA03
2H171UA02
2H171UA08
2H171XA02
2H171XA16
2H200FA18
2H200JB10
2H200MA02
2H200MA03
2H200MA12
2H200MB01
3J103AA02
3J103AA12
3J103AA23
3J103AA24
3J103AA36
3J103AA85
3J103BA41
3J103BA46
3J103CA03
3J103EA02
3J103EA03
3J103EA11
3J103FA30
3J103GA02
3J103GA57
3J103GA58
3J103GA60
3J103GA74
3J103HA03
3J103HA06
3J103HA12
3J103HA15
3J103HA20
3J103HA33
3J103HA36
3J103HA37
3J103HA41
3J103HA52
3J103HA53
3J103HA55
(57)【要約】
【課題】通電時の抵抗値の上昇が抑制されたスポンジローラを提供する。
【解決手段】本発明は、軸体2と、軸体2の外周に設けられた発泡弾性層3とを備えるスポンジローラで1あって、発泡弾性層が、オルガノポリシロキサン、カーボンブラック、化学発泡剤、未膨張マイクロバルーン、及びカーボンブラックとは別の導電性粒子を含み、1kVで15時間通電後の発泡弾性層3の抵抗値の上昇率が、10%以下であるスポンジローラである。カーボンブラックとは別の導電性粒子は、酸化亜鉛粒子であり、発泡弾性層用樹脂組成物100質量部中15質量部以上50質量部以下含有することが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、前記軸体の外周に設けられた発泡弾性層とを備えるスポンジローラであって、
前記発泡弾性層が、ベースゴム、カーボンブラック、化学発泡剤、未膨張マイクロバルーン、及び前記カーボンブラックとは別の導電性粒子を含み、
1kVで15時間通電後の前記発泡弾性層の抵抗値の上昇率が、10%以下であるスポンジローラ。
【請求項2】
前記導電性粒子が、酸化亜鉛粒子であり、
前記酸化亜鉛粒子が、前記発泡弾性層を形成する発泡弾性層用樹脂組成物100質量部中15質量部以上50質量部以下含有する請求項1記載のスポンジローラ。
【請求項3】
前記発泡弾性層が、シリコーンゴムを含む請求項1又は2記載のスポンジローラ。
【請求項4】
前記発泡弾性層のセル径が、30μm以上150μm以下である請求項1から3いずれか1項記載のスポンジローラ。
【請求項5】
転写ローラである請求項1から4いずれか1項記載のスポンジローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポンジローラに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンター及びビデオプリンター等のプリンター、複写機、ファクシミリ、これらの複合機には、電子写真方式を利用した各種の画像形成装置が採用されている。電子写真方式を利用した画像形成装置は、軸体とその外周面に形成された弾性層とを有する、例えば、クリーニングローラ、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、二次転写ローラ、加圧ローラ、紙送り搬送ローラ、定着ローラ等の各種印刷用スポンジローラを備えている。
【0003】
これらのローラの中でも、転写ローラ及び二次転写ローラ等の導電性のローラは、画像形成装置に装着されたときに、現像剤を担持した像担持体、二次転写ベルト等から記録体に現像剤を転写させて、記録体上に高品質の画像を形成することができるように、帯電特性に優れていることが要求される。
【0004】
一方、近年の高精細化に伴い、トナーの微細化が進み、セル径は微細で均一であることが要求されている。例えば、セル径を所望の範囲に調整するため、未膨張マイクロバルーン及び化学発泡剤を併用して発泡弾性層を形成することが広く知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、セル径の調整において、発泡バランスによっては、発泡弾性層の電気抵抗値のばらつきが大きくなる場合がある。さらには、導電性のスポンジローラは、主にカーボンブラックで抵抗値の調整が行われているが、カーボン導電による発泡弾性層は、通電によって抵抗値が上昇するという問題がある。導電性のスポンジローラにおいては、通電時の抵抗値の上昇は、画質に悪影響を及ぼす場合があるため、安定した電気特性を有することが求められる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、通電時の抵抗値の上昇が抑制されたスポンジローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、カーボンブラック、化学発泡剤、及び未膨張マイクロバルーンを含む発泡弾性層に、さらにカーボンブラックとは別の導電性粒子を含有させることで、通電後の抵抗値上昇を抑制し、安定した気特性が得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、軸体と、軸体の外周に設けられた発泡弾性層とを備えるスポンジローラであって、発泡弾性層が、ベースゴム、カーボンブラック、化学発泡剤、未膨張マイクロバルーン、及びカーボンブラックとは別の導電性粒子を含み、1kVで15時間通電後の発泡弾性層の抵抗値の上昇率が、10%以下であるスポンジローラである。
【0008】
導電性粒子は、酸化亜鉛粒子であり、酸化亜鉛粒子は、発泡弾性層を形成する発泡弾性層用樹脂組成物100質量部中15質量部以上50質量部以下含有することが好ましい。
【0009】
発泡弾性層は、シリコーンゴムを含むことが好ましい。
【0010】
発泡弾性層のセル径は、30μm以上150μm以下であることが好ましい。
【0011】
本発明のスポンジローラは、転写ローラであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、通電時の抵抗値の上昇が抑制されたスポンジローラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のスポンジローラの一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】スポンジローラの表面の抵抗値を測定する装置を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
[スポンジローラ]
図1に示すように、本発明のスポンジローラ1は、軸体2と、軸体2の外周に設けられた発泡弾性層3とを備える。発泡弾性層3は、ベースゴム、カーボンブラック、化学発泡剤、未膨張マイクロバルーン、及びカーボンブラックとは別の導電性粒子を含み、1kVで15時間通電後の発泡弾性層の抵抗値の上昇率が、10%以下である。
以下に、各構成の詳細を説明する。
【0015】
<軸体>
軸体2は、好ましくは、導電特性を有する、従来公知のスポンジローラに用いられる軸体を用いることができる。軸体2は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、及び真鍮からなる群より選択される少なくとも1種の金属で構成されていることが好ましい。なお、このような軸体2は、一般に、「芯金」の名称でも知られている。
【0016】
軸体2は、絶縁性樹脂を含むものであってもよい。絶縁性樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。軸体2は、例えば、絶縁性樹脂からなる芯体と、この芯体上に設けられたメッキ層と、を備えるものであってよい。このような軸体2は、例えば、絶縁性樹脂からなる芯体にメッキを施して導電化することにより得ることができる。
軸体2は、良好な導電特性を得るために、芯金であることが好ましい。
【0017】
軸体2の形状は、例えば、棒状、管状等であることが好ましい。軸体2の断面形状は、例えば、円形、楕円形であってもよく、多角形等の非円形であってもよい。軸体2の外周面には、洗浄処理、脱脂処理、プライマー処理等の処理が施されていてもよい。
【0018】
軸体2の軸方向の長さは特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整してもよい。また、軸体2の直径(外接円の直径)も特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整すればよい。
【0019】
<発泡弾性層>
発泡弾性層3は、感光体の表面に形成された静電潜像にトナーを過不足なく供給することができるように、適切なニップ幅とニップ圧をもって感光体に押圧可能な硬度や弾性をスポンジローラ1に付与するために設けられる。
発泡弾性層3は、発泡弾性層用樹脂組成物を発泡及び架橋させることによって形成することができる。
【0020】
発泡弾性層3のベースゴムとしては、種々のゴムを用いることができる。ゴムとしては、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリルニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、NBRの水素化物、ウレタンゴム以下が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。この中でも、押圧による圧縮応力歪みの小さいシリコーンゴムが好ましい。シリコーンゴムとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルトリフルオロプロピルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリフェニルビニルシロキサン、これらのシロキサンの共重合体が挙げられる。
【0021】
発泡弾性層3は、発泡弾性層用樹脂組成物を加熱及び架橋させることによって形成することができる。発泡弾性層用樹脂組成物は、例えば、シリコーンゴムの場合は、(a)ベースゴムとしての(a)オルガノポリシロキサン、(b)カーボンブラック、(c)化学発泡剤、(d)未膨張マイクロバルーン、及び(e)カーボンブラックとは別の導電性粒子を含むことができる。
以下、(a)ベースゴム、(b)カーボンブラック、及び(e)カーボンブラックとは別の導電性粒子を含む材料を、「ベース材」と記載する場合がある。
【0022】
(a)オルガノポリシロキサン
オルガノポリシロキサンとしては、下記平均組成式(I)で表される重合度が100以上のオルガノポリシロキサンが好ましい。
R1
aSiO(4-a)/2 (I)
(式中、R1は同一又は異種の非置換若しくは置換の一価炭化水素基を示し、aは1.95以上2.05以下の正数である。)
【0023】
R1としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、β-フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。また、R1は、これらの炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部が置換基で置換された基であってもよい。置換基は、例えばハロゲン原子、シアノ基等であってよい。置換基を有する炭化水素基としては、例えば、クロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0024】
オルガノポリシロキサンは、分子鎖末端が、トリメチルシリル基等のトリアルキルシリル基、ジメチルビニルシリル基等のジアルキルアラルキルシリル基、ジメチルヒドロキシシリル基等のジアルキルヒドロキシシリル基、トリビニルシリル基等のトリアラルキルシリル基などで封鎖されていることが好ましい。
【0025】
オルガノポリシロキサンは、分子中に2つ以上のアルケニル基を有することが好ましい。オルガノポリシロキサンは、R1のうち0.001モル%以上5モル%以下(より好ましくは0.01モル%以上0.5モル%以下)のアルケニル基を有することが好ましい。オルガノポリシロキサンが有するアルケニル基としてはビニル基が特に好ましい。
【0026】
オルガノポリシロキサンは、例えば、オルガノハロシランの1種若しくは2種以上を共加水分解縮合することによって、又は、シロキサンの3量体若しくは4量体等の環状ポリシロキサンを開環重合することによって得ることができる。オルガノポリシロキサンは、基本的には直鎖状のジオルガノポリシロキサンであってよく、一部分岐していてもよい。また、オルガノポリシロキサンは、分子構造の異なる2種又はそれ以上の混合物であってもよい。
【0027】
オルガノポリシロキサンは、25℃における動粘度が100cSt以上であることが好ましく、100000cSt以上10000000cSt以下であることがより好ましい。また、オルガノポリシロキサンの重合度は、例えば100cSt以上であることが好ましく、3000cSt以上10000cSt以下であることがより好ましい。
【0028】
(b)カーボンブラック
カーボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラック(登録商標)等のファーネスブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック等を挙げることができる。
【0029】
(c)化学発泡剤
化学発泡剤としては、無機系発泡剤と有機系発泡剤のいずれもでもよい。無機系発泡剤としては、重炭酸ソーダ、炭酸アンモニウム等が挙げられ、有機系発泡剤としては、ジアゾアミノ誘導体、アゾニトリル誘導体、アゾジカルボン酸誘導体等の有機アゾ化合物等が挙げられる。有機アゾ化合物の中でも、アゾジカルボン酸アミド、アゾビス-イソブチロニトリル等が好適に使用される。特に、アゾビス-イソブチロニトリルが好適に使用できる。
【0030】
(d)未膨張マイクロバルーン
未膨張マイクロバルーンとして、樹脂マイクロバルーンを挙げることができる。樹脂マイクロバルーンとしては、外殻に熱可塑性樹脂を用いたものが好ましく用いられる。外殻を構成する熱可塑性樹脂としては、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体、メチルメタクリレート/アクリロニトリル共重合体、メタアクリロニトリル/アクリロニトリル共重合体等を挙げることができる。シリコーンゴムの硬化温度に合わせて、外殻となる樹脂の軟化温度が適当な範囲内にある樹脂マイクロバルーンを用いることが好ましい。また、内包される蒸発性物質としては、ブタン、イソブタン等の炭化水素を挙げることができる。
未膨張マイクロバルーンの平均粒子径は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、5μm以上25μm以下であることがより好ましい。
【0031】
本発明に好適な未膨張マイクロバルーンは、「マツモトマイクロスフェアーFシリーズ」(松本油脂製薬株式会社製)、「エクスパンセルシリーズ」(エクスパンセル社製)等として市販されている。この発明に好適な未膨張の樹脂マイクロバルーンは、弾性層を形成するのに使用される化学発泡剤の分解温度よりも高い温度で膨張する機能を有する樹脂マイクロバルーンから選択される。
発泡剤の配合量は、発泡弾性層用樹脂組成物100質量部に対しての低比重でありながら、大きさが均一なセルを得る観点から、0.5質量%以上6質量%以下であることが好ましい。
【0032】
(e)カーボンブラックとは別の導電性粒子
導電性粒子としては、酸化亜鉛粒子、酸化スズが好ましく、酸化亜鉛粒子がより好ましい。これらの粒子は、単独で用いてもよく、2種以上を混合しても用いてもよい。導電性粒子は、発泡弾性層用樹脂組成物100質量部中15質量部以上50質量部以下であることが好ましく、17質量部以上40質量部以下であることがより好ましく、17質量部以上30質量部以下であることが更に好ましい。導電性粒子の含有量が上記範囲であることによって、通電後の抵抗値の上昇率を小さくすることができ、長期に亘って高品質な画像を提供することができる。
【0033】
(その他の成分)
発泡弾性層用樹脂組成物は、架橋剤を含有してもよい。架橋剤としては、付加反応架橋剤、有機過酸化物架橋剤等を挙げることができる。
付加反応架橋剤として、例えば、一分子中に二個以上のSiH基(SiH結合)を有する付加反応型の架橋剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好適に挙げられる。付加反応架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
付加反応架橋剤の配合量は、通常、発泡弾性層用樹脂組成物100質量部に対して0.1質量部以上7質量部以下である。
【0034】
付加反応架橋剤を使用する場合、有機過酸化物架橋剤は、単独でミラブル型シリコーンゴムを架橋させることも可能であるが、付加反応架橋剤の補助架橋剤として併用すると、得られるトナー供給ローラの強度、歪み等の物性をより一層向上させることができる。有機過酸化物架橋剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ビス-2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。
有機過酸化物架橋剤の配合量は、通常、発泡弾性層用樹脂組成物100質量部に対して0.1質量部以上7質量部以下である。有機過酸化物架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0035】
付加反応架橋剤は、付加反応触媒を併用するのが好ましい。付加反応触媒は白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられる。なお、この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができる。
【0036】
また、発泡弾性層用樹脂組成物は、各種の添加剤が含有されてもよい。各種の添加剤として、例えば鎖延長剤等の助剤、触媒、分散剤、老化防止剤、酸化防止剤、シリカ系以外の充填材として、例えばガラスビーズ、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。これらの各種添加剤は、通常用いられる添加剤であってもよく、用途に応じて特別に用いられる添加剤であってもよい。
【0037】
発泡弾性層3は、公知の成形方法によって、加熱硬化と成形とを同時に又は連続して行い、軸体2の外周面に形成される。発泡弾性層用樹脂組成物の硬化方法はゴム組成物の硬化に必要な熱を加えられる方法であればよい。また、発泡弾性層3の成形方法も、押出成形による連続加硫、プレス、インジェクションによる型成形等、特に制限されるものではない。例えば、押出成形等を選択することができる。また、軸体2上に形成された発泡弾性層3を研削又は研磨等してもよい。
【0038】
発泡弾性層用樹脂組成物を加硫させる際の加熱温度は、100℃以上500℃以下が好ましく、120℃以上300℃以下がより好ましい。加熱時間は数秒以上1時間以下が好ましく、10秒以上35分以下がより好ましい。また、必要に応じ、二次加硫してもよい。更に三次加硫として180~280℃、特に200~250℃で1~15分間時間加熱してもよい。このように複数の回数をもって加熱すると未膨張マイクロバルーンの膨張、ミラブル型シリコーンゴムの硬化、残留する低分子シロキサンの排除、膨張したマイクロバルーンの熱収縮を必要に応じてコントロールすることが可能となって好ましい。このように複数回の加熱操作を行うことにより、未膨張マイクロバルーンが膨張すると同時にミラブル型シリコーンゴムが硬化してセル壁が形成され、その後に膨張したマイクロバルーンのみ熱収縮された状態となって平均セル径を150μm以下に調整することができる。また、ゴム組成物は既知の方法で発泡硬化させることにより、気泡を有する発泡弾性層3を容易に形成することもできる。
【0039】
このようにして得られるスポンジローラを更に研磨工程に供してもよい。研磨工程は、軸体の外周面に形成されたスポンジローラの形状を、軸体の軸線方向においてスポンジローラの厚みを軸体の中央に向かって徐々に増大させ、軸体の中央から軸体の先端に向かって徐々に減少させる形状、つまり逆クラウン形状、或いは軸体の中央から軸体の両端に向かってスポンジローラの厚み増加させる形状、つまり逆クラウン形状に調整する工程である。
【0040】
(セル径)
発泡弾性層3のセル径は、30μm以上150μm以下であることが好ましく、30μm以上110μm以下がより好ましく、30μm以上100μm以下であることが更に好ましい。
【0041】
(抵抗値)
発泡弾性層3の表面の抵抗値は、3.0(logΩ)以上9.0(logΩ)以下であることが好ましく、4.0(logΩ)以上9.0(logΩ)以下であることがより好ましい。抵抗値は、カーボン等の導電性付与剤及び導電性粒子で調整することができる。
【0042】
(通電後の抵抗値の上昇率)
本発明のスポンジローラ1の発泡弾性層3は、1kVで15時間通電後の発泡弾性層の抵抗値の上昇率が、10%以下であり、5%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。
通電後の抵抗値の上昇率が、10%以下であることにより、安定した電気特性を得ることができるので、長期に亘って高品質な画像を提供することができる。
抵抗値の測定方法は、後述の実施例で説明する方法である。
【0043】
本発明のスポンジローラは、画像形成装置の、例えば定着装置の転写ローラとして組み込むことができ、安定した電気特定を有するため、高品質な画像を提供に寄与する。
【実施例0044】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0045】
[実施例1]
以下の手順により、実施例1のスポンジローラを作製した。
(プライマー層の形成)
無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体(SUM23製、直径10mm、長さ274.2mm)をエタノールで洗浄し、その表面にシリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。プライマー処理した軸体を、ギヤオーブンを用いて、150℃の温度にて10分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体の外周面にプライマー層を形成した。
【0046】
(発泡弾性層の形成)
表1に示す材料を含有する発泡弾性層用樹脂組成物を用いて、押出成形により、軸体の外周面上にゴム材料からなる発泡弾性層を成形した。なお、押出成形では、樹脂組成物を、正外線加熱炉(IR炉)を用いて270℃で5分間加熱し、更に、ギヤオーブンを用いて200℃で4時間加熱して硬化させた。これにより、プライマー処理された軸体の外周面上にシリコーンゴムからなる発泡弾性層を形成した。発泡弾性層の厚さは、4mmであった。
【0047】
発泡弾性層用樹脂組成物の詳細は、以下のとおりである。
(1)ベース材 KE87C-40PU(導電性付与剤、信越化学工業株式会社製)
65質量部
KE-78VBS(シリコーン生ゴム、信越化学工業株式会社製) 17.5質量部
酸化亜鉛粒子 17.5質量部
(2)架橋剤、触媒及び発泡剤
C-3(架橋剤、信越化学工業株式会社製) 5質量部
C-25B(架橋剤、信越化学工業株式会社製) 2質量部
C-25A(白金触媒、信越化学工業株式会社製) 2質量部
F-35D(未膨張マイクロバルーン、松本油脂製薬株式会社製) 0.6質量部
AIBN(化学発泡剤、大塚化学株式会社製) 0.4質量部
【0048】
[実施例2、比較例1~4]
表1に示す配合で、発泡弾性層を形成したこと以外は実施例1と同様にスポンジローラを作製した。
【0049】
[評価]
上記実施例及び比較例について、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0050】
(セル径の測定方法)
スポンジローラの発泡弾性層の切断面を光学顕微鏡で50倍~200倍に拡大して観測し、ランダムに選んだ10個のセルについてセル径を測定し、その平均値を「発泡弾性層のセル径」とした。
【0051】
(発泡弾性層の抵抗値の上昇率)
上記実施例及び比較例について、スポンジローラの発泡弾性層の抵抗値の上昇率を測定した。
図2に測定装置の正面概略図を示す。
図2に示すように、金メッキ板51上に、スポンジローラ1を乗せ、両端部に重さ500gのおもり52を掛け、印加電圧1kVでシャフト53と金メッキ板51との抵抗値を、超高抵抗/微少電流計「5450」(株式会社エーディーシー製)54を用いて、初期の抵抗値と15時間通電後の抵抗値を測定した。そして、抵抗値の上昇率(%)を以下の式により求めた。
抵抗値の上昇率(%)=(通電後抵抗値-初期抵抗値)/初期抵抗値×100
【0052】
【0053】
表1に示すように、発泡弾性層に、ベースゴム、カーボンブラック、化学発泡剤、未膨張マイクロバルーンに加え、酸化亜鉛粒子をさらに含む実施例1及び2は、酸化亜鉛粒子を含まない比較例1に比べて、抵抗値上昇率が格段に抑えられていることがわかる。