(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054876
(43)【公開日】2023-04-17
(54)【発明の名称】マイクロ流路デバイス
(51)【国際特許分類】
G01N 35/08 20060101AFI20230410BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20230410BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
C12M1/34 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163827
(22)【出願日】2021-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 一平
【テーマコード(参考)】
2G058
4B029
【Fターム(参考)】
2G058DA07
2G058EA14
4B029AA07
4B029BB02
4B029CC01
4B029FA01
(57)【要約】
【課題】マイクロ流路間で発生する試験液の流れを抑えることができるマイクロ流路デバイスを提供する。
【解決手段】マイクロ流路デバイス2は、試験液が圧入される開口22と、本流路23と、複数のマイクロ流路24と、貯留部25と、開口26と、ガス透過膜27と、を備える。複数のマイクロ流路24は、第1グループおよび第2グループの各々に含まれるマイクロ流路24は、マイクロ流路デバイス2を平面視した場合のX軸方向に並んで配置され、第1グループおよび第2グループは、X軸方向に対して直交するY軸方向に並んで配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を含む試験液と薬剤と作用させる試験に用いる板状のマイクロ流路デバイスであって、
前記試験液が圧入される第1開口と、
前記第1開口と連通する入口側端部と、前記入口側端部と反対側に位置する出口側端部とを有し、圧入した前記試験液が流動可能な本流路と、
それぞれ、前記本流路に連通する第1側端部、および、前記第1側端部と反対側に位置する第2側端部を有する複数のマイクロ流路と、
各マイクロ流路の前記第2側端部と連通する第2開口と、
各マイクロ流路に設けられ、前記薬剤が貯留される貯留部と、
複数の前記第2開口のうち少なくとも1つを被うガス透過膜と、を備え、
前記複数のマイクロ流路は、第1グループおよび第2グループを含み、
前記第1グループおよび前記第2グループの各々に含まれるマイクロ流路は、前記マイクロ流路デバイスを平面視した場合の第1方向に並んで配置され、
前記第1グループおよび前記第2グループは、前記第1方向に対して直交する第2方向に並んで配置される、マイクロ流路デバイス。
【請求項2】
前記出口側端部に設けられ、前記試験液の一部を回収する回収部と、
前記回収部に設けられる第3開口と、をさらに備える、請求項1に記載のマイクロ流路デバイス。
【請求項3】
前記マイクロ流路デバイスを平面視した場合に、前記第1グループに含まれる前記第2開口と、前記第2グループに含まれる前記第2開口とが各々向かい合うように配置され、
1本の前記本流路が前記複数のマイクロ流路の外側を囲む位置に配置される、請求項1または請求項2に記載のマイクロ流路デバイス。
【請求項4】
前記ガス透過膜は、前記第1グループに含まれる前記第2開口と、前記第2グループに含まれる前記第2開口とを1枚の膜で被う、請求項3に記載のマイクロ流路デバイス。
【請求項5】
前記マイクロ流路デバイスを平面視した場合に、前記第1グループに含まれる前記第2開口と、前記第2グループに含まれる前記第2開口とが前記マイクロ流路デバイスの対向する辺側にそれぞれ配置され、
1本の前記本流路が前記マイクロ流路デバイスの中央部分に配置される、請求項1に記載のマイクロ流路デバイス。
【請求項6】
前記マイクロ流路デバイスを平面視した場合に、前記第1グループに含まれる前記第2開口が前記マイクロ流路デバイスの中央部分に配置され、前記第2グループに含まれる前記第2開口が前記マイクロ流路デバイスの一方の辺側に配置され、
1本の前記本流路が前記第1グループの外側を通り、前記マイクロ流路デバイスの中央部分を通る位置に配置される、請求項1に記載のマイクロ流路デバイス。
【請求項7】
前記回収部は、前記本流路の体積より大きいバッファ空間である、請求項2に記載のマイクロ流路デバイス。
【請求項8】
前記バッファ空間に吸水部材が設けられる、請求項7に記載のマイクロ流路デバイス。
【請求項9】
前記マイクロ流路の流路抵抗は、前記本流路の流路抵抗より大きい、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のマイクロ流路デバイス。
【請求項10】
前記ガス透過膜は、前記第3開口をさらに被う、請求項2、請求項7、および請求項8のいずれか1項に記載のマイクロ流路デバイス。
【請求項11】
前記複数のマイクロ流路は、第3グループをさらに含む、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載のマイクロ流路デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検体を含む試験液と薬剤と作用させる試験に用いる板状のマイクロ流路デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
抗菌薬に対する細菌の感受性などを試験するため、特許文献1等のようにマイクロ流路デバイスを用いて試験する方法が知られている。例えば、特許文献1では、外部に連通する導入口および排出口と、導入口から供給された試験液が排出口側に流れる流路と、を備えるマイクロ流路デバイスに、導入口から流路の内部に空気を圧入して先に導入した試験液を微細な流路に押し込む。流路には、導入口から供給された試験液が貯留される反応部が設けられ、当該反応部に配置された薬剤が細菌に作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マイクロ流路に試験液を満たす場合、毛細管現象や圧力を用いる方法が知られているが、特許文献1のように空気を圧入する方法がマイクロ流路に確実かつ迅速に試験液を充填できる有効な方法である。しかし、1つの導入口から複数の流路に分岐するマイクロ流路デバイスに試験液を圧入した場合、導入口から各流路に至る距離などの差により、各流路間で液面の高さ(液頭)に差が生じる場合がある。各流路間で液面の高さに差が生じると、一の流路に圧入された試験液が他の流路に流れることがある。他の流路に設けられた反応部に、一の流路の試験液が流れ込むと、正しい結果を観察することができなくなる可能性がある。
【0005】
本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、マイクロ流路間で発生する試験液の流れを抑えることができるマイクロ流路デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のマイクロ流路デバイスは、検体を含む試験液と薬剤と作用させる試験に用いる板状のマイクロ流路デバイスである。マイクロ流路デバイスは、試験液が圧入される第1開口と、第1開口と連通する入口側端部と、入口側端部と反対側に位置する出口側端部とを有し、圧入した試験液が流動可能な本流路と、それぞれ、本流路に連通する第1側端部、および、第1側端部と反対側に位置する第2側端部を有する複数のマイクロ流路と、各マイクロ流路の第2側端部と連通する第2開口と、各マイクロ流路に設けられ、薬剤が貯留される貯留部と、複数の第2開口のうち少なくとも1つを被うガス透過膜と、を備える。複数のマイクロ流路は、第1グループおよび第2グループを含み、第1グループおよび第2グループの各々に含まれるマイクロ流路は、マイクロ流路デバイスを平面視した場合の第1方向に並んで配置され、第1グループおよび第2グループは、第1方向に対して直交する第2方向に並んで配置される。
【発明の効果】
【0007】
上記のマイクロ流路デバイスによれば、マイクロ流路間で発生する試験液の流れを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に従うマイクロ流路デバイスの構成例を示す図である。
【
図2】実施の形態に従う試験装置の全体構成例を示す図である。
【
図3】実施の形態に従う試験装置におけるピペットノズルの周辺構成例を示す図である。
【
図4】実施の形態に従う試験装置の制御を説明するためのブロック図である。
【
図5】実施の形態に従うマイクロ流路デバイスの流路に試験液を圧入した構成例を示す図である。
【
図6】実施の形態に従うマイクロ流路デバイスの流路に試験液を圧入した後の状態を示す図である。
【
図7】実施の形態に従うマイクロ流路デバイスの本流路から試験液を排出した後の状態を示す図である。
【
図8】実施の形態に従うマイクロ流路デバイスの本流路から試験液を排出する方法を説明するための図である。
【
図9】マイクロ流路デバイスの構成の変形例を示す図である。
【
図10】マイクロ流路デバイスの構成の別の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0010】
[マイクロ流路デバイスの構成]
図1は、実施の形態に従うマイクロ流路デバイスの構成例を示す図である。
図1では、マイクロ流路デバイス2の平面図を示している。マイクロ流路デバイス2は、後述する試験装置のテーブルに載置され、複数のマイクロ流路のそれぞれに検体を含む試験液が圧入される。
【0011】
図1に示すように、マイクロ流路デバイス2は、板状部材20と、流路構造とを備える。流路構造は、開口22(第1開口)、本流路23、マイクロ流路24、貯留部25、開口26(第2開口)、ガス透過膜27、回収部28、および開口29(第3開口)を備える。なお、マイクロ流路デバイス2は、開口26(第2開口)を有していない構成であってもよい。
【0012】
開口22は、本流路23の一方の端部に接続され、本流路23と連通している。流体圧を用いて試験液が開口22から本流路23へと圧入される。本流路23に圧入された試験液は、さらにマイクロ流路24へと圧入される。本実施の形態では、流体圧として空気圧が用いられる。開口22は、例えば、断面が円形状に形成される。開口22の直径は、例えば5μm~5mmである。本実施の形態では、開口22に1本の本流路23が接続される。1本の本流路23は、複数のマイクロ流路24の外側を囲む位置に配置されている。
【0013】
本流路23は、開口22と連通する入口側端部23aと、入口側端部23aと反対側に位置する出口側端部23bとを有する。開口22から延びた本流路23は、さらに複数のマイクロ流路24に分岐する。本流路23は、複数のマイクロ流路24に対して試験液が流動可能に接続されている。開口22から流入した試験液は、本流路23を経て分岐した複数のマイクロ流路24に流動する。本流路23およびマイクロ流路24の断面は矩形状であり、本流路23およびマイクロ流路24の幅は、例えば1μm~1mmである。しかし、本流路23とマイクロ流路24とで深さ(高さ)が異なる。例えば、本流路23の深さが0.5mmであるのに対して、マイクロ流路24の深さが0.025mmと小さい。そのため、本流路23に比べマイクロ流路24の流路抵抗が大きくなっている。本流路23に比べマイクロ流路24の流路抵抗を大きくすることで、後述するように開口22から流入した試験液が、一旦本流路23を満たした後に、複数のマイクロ流路24に対してほぼ一斉に流入することができる。
【0014】
なお、マイクロ流路デバイス2を
図1に示すように平面視した場合、図面の横方向をX軸方向、図面の縦方向をY軸方向、図面に対して奥行き方向をZ軸方向としている。本実施の形態では、X軸方向に並んで配置され32本のマイクロ流路24を1つのグループとし、Y軸方向に2つのグループが並んで配置されている。つまり、マイクロ流路デバイス2は、上段のグループ(第1グループ)と、下段のグループ(第1グループ)とを有している。なお、Y軸の矢印方向を上側とする。複数のマイクロ流路24は、それぞれ、本流路23に連通する第1側端部24a、および、第1側端部24aと反対側に位置する第2側端部24bを有する。
【0015】
上段のグループに含まれる複数のマイクロ流路24は、マイクロ流路デバイス2の上側に配置された本流路23にそれぞれ接続されている。そのため、上段のグループに含まれる複数のマイクロ流路24は、Y軸の下側方向に配置されており、本流路23から分岐した試験液がY軸の下側方向に流入する。一方、下段のグループに含まれる複数のマイクロ流路24は、マイクロ流路デバイス2の下側に配置された本流路23にそれぞれ接続されている。そのため、下段のグループに含まれる複数のマイクロ流路24は、Y軸の上側方向に配置されており、本流路23から分岐した試験液がY軸の上側方向に流入する。
【0016】
本流路23から複数のマイクロ流路24に分岐した後、マイクロ流路24の途中に貯留部25がそれぞれ設けられている。そのため、開口22から流入した試験液は、本流路23、マイクロ流路24を経て、各々の貯留部25に流動することになる。
【0017】
貯留部25は、薬剤が配置され、本流路23およびマイクロ流路24を介して開口22と接続され、開口22から流入した試験液を貯留する。貯留部25において、試験液は薬剤と反応する。薬剤は、例えば、抗菌薬である。薬剤は、固体であってもよいし、液体であってもよい。薬剤は、貯留部25に、予め載置される。すなわち、貯留部25に試験液が流入する前に、薬剤は貯留部25に載置される。本実施の形態では、薬剤は貯留部25の全体に塗布されている。
【0018】
貯留部25は、直方体状に形成される。貯留部25の一辺の長さは、例えば10μm~10mmである。
【0019】
図1では、板状部材20に64個(=32個×2)の貯留部25が形成されている。56個の貯留部25に貯留される試験液の容量は互いに同一である。一方、64個の貯留部25に載置される薬剤の種類および薬剤の量は、互いに同一であってもよいし、互いに相違してもよい。
【0020】
貯留部25から、さらに開口26までの間にマイクロ流路24が配置されている。このマイクロ流路24は、Y軸方向に沿って配置され、一方の端部が貯留部25に接続され、他方の端部(第2側端部24b)が開口26に接続されている。このマイクロ流路24は、貯留部25に流入した試験液をさらに開口26まで流動させる。
【0021】
開口26は、マイクロ流路24の他方の端部(第2側端部24b)に接続される。開口26は、例えば、断面が円形状に形成される。開口26の直径は、例えば5μm~5mmである。
【0022】
開口26は、ガス透過膜27で被われる。具体的に、
図1では、上段のグループに含まれる複数のマイクロ流路24に接続された32個の開口26と、下段のグループに含まれる複数のマイクロ流路24に接続された32個の開口26とが各々向かい合うように配置されている。そのため、64個(=32個×2)の開口26がマイクロ流路デバイス2の中央部分でX軸方向に沿って配置される。この64個の開口26が1枚のガス透過膜27で被われている。なお、ガス透過膜27は、64個の開口26を1枚で被うのではなく、上段のグループに含まれる32個の開口26と、下段のグループに含まれる32個の開口26とに分けて2枚で被ってもよい。また、ガス透過膜27は、64個の開口26のうち少なくとも1つを被ってもよい。
【0023】
ガス透過膜27は、気体を透過させ、且つ液体を透過させない機能を有する。ガス透過膜27の材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。ガス透過膜27は、撥水性を有することが好ましい。ガス透過膜27の厚みは、1mm以下である。
【0024】
ガス透過膜27は、板状部材20に、接着剤による接着、超音波融着等で固定される。接着剤としては、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、感圧性樹脂等が挙げられる。
【0025】
開口22に接続された1本の本流路23が、マイクロ流路24の外側を囲むように配置され回収部28に接続されている。回収部28は、本流路23の出口側端部23bに設けられている。回収部28は、開口22から本流路23に流入した試験液の一部を回収する。回収部28は、直方体状に形成される。回収部28の一辺の長さは、例えば10μm~10mmである。回収部28にスポンジなどの水分を吸収する部材(吸水部材)が設けられてもよい。これにより、回収部28から本流路23への逆流を防止できるとともに、本流路23からの試験液の揮発を防止できる。
【0026】
開口29は、本流路23が接続される端と反対側の回収部28の端に接続されている。開口22から開口29までは、本流路23および回収部28により試験液が流動可能に構成される。また、開口29は、後述する試験装置の開閉部により塞ぐことができる。開口29を閉じることで、本流路23に流入した試験液が回収部28および開口29に排出されないように制御し、開口29を開けることで本流路23に残った試験液を回収部28に排出させて回収することができる。
【0027】
[装置構成]
次に、マイクロ流路デバイス2を用いて、検体を含む試験液と薬剤と作用させる試験を行う試験装置について説明する。
図2は、実施の形態に従う試験装置の全体構成例を示す図である。
図3は、実施の形態に従う試験装置におけるピペットノズルの周辺構成例を示す図である。
図4は、実施の形態に従う試験装置の制御を説明するためのブロック図である。なお、本開示の試験装置は、マイクロ流路デバイス2のマイクロ流路に検体を含む試験液を圧入して試験液を測定する装置であり、抗菌薬(薬剤)に対する細菌の感受性を測定するために試験液がマイクロ流路に圧入される例を一例として以下説明する。試験液は、検体を含む。検体は、菌(具体例では病原菌)であってもよい。具体例では、試験液は、細菌の懸濁液であってもよい。もちろん、本開示の試験装置は、マイクロ流路デバイス2のマイクロ流路に圧入される試験液であれば、上述の試験液に限定されない。
【0028】
図2~
図4を参照して、試験装置100は、試験液設置部10、ピペットノズル駆動部12、テーブル駆動部13、ポンプ14、ピペットノズル15、テーブル16、開閉部30、開閉駆動部31、塗布部32、ポンプ33、塗布駆動部34および制御部50を含む。
【0029】
試験液設置部10は、試験液を収容した試験液容器5を複数並べることができるラックである。試験液設置部10は、試験装置100に対してラック単位で複数の試験液容器5をセットすることができる。
【0030】
ピペットノズル15は、着脱可能なピペットチップ1を取り付け、ピペットチップ1の先端部を通じて試験液容器5から試験液を吸引または排出する。ピペットノズル駆動部12は、ピペットノズル15に接続されたポンプ14と、ピペットノズル15を水平移動、および昇降移動させる。ピペットノズル駆動部12は、例えば、ソレノイドアクチュエータやステッピングモータによってピペットノズル15を自在に移動させることができる。
【0031】
テーブル16は、マイクロ流路デバイス2を載置するための支持部材である。テーブル16は、平板状に形成され、マイクロ流路デバイス2を上面に固定する。テーブル駆動部13は、テーブル16を水平方向に移動させることができる。テーブル駆動部13は、例えば、ソレノイドアクチュエータやステッピングモータによってテーブル16を自在に移動させることができる。もちろん、テーブル駆動部13は、テーブル16を昇降移動させるようにして、ピペットノズル15を昇降移動させないようにしてもよい。なお、少なくともピペットノズル駆動部12およびテーブル駆動部13は、ピペットノズル15とマイクロ流路デバイス2との相対位置を変更するための移動機構である。
【0032】
ポンプ14は、図示していないが、例えばシリンジと、シリンジ内を往復動作可能なプランジャと、プランジャを駆動する駆動モータとを含む。ポンプ14は、配管を介してピペットノズル15に接続した状態で、プランジャを往復運動させることによって、ピペットチップ1内の空気圧を調整して試験液をピペットチップ1内に吸入させたり、ピペットチップ1内の試験液を外部に排出させたりすることができる。また、ポンプ14は、ピペットチップ1内の試験液を外部に排出した状態で、さらにプランジャをシリンジ内に押し込む方向に移動させることで、ピペットチップ1外に空気を送り出すことができる。
【0033】
開閉部30は、マイクロ流路デバイス2の開口29(第3開口)を開閉する機構である。具体的に、開閉部30は、弾性部材で開口を塞ぐことで閉じた状態に制御する機構であって、例えば、棒状の支持部の先にシリコーン樹脂30aが設けてある。開閉部30は、ピペットノズル15に対して予め定められた位置に取り付けてあるので、ピペットノズル15をマイクロ流路デバイス2の開口22(第1開口)に移動させることで開口29の位置に移動する。開閉駆動部31は、開口29の位置に移動した開閉部30を駆動し、シリコーン樹脂30aを昇降移動させ開口29にシリコーン樹脂30aを押し当てて塞ぎ、開口29を閉じた状態に制御する。なお、
図2および
図3に示す試験装置100では、マイクロ流路デバイス2の構成に合わせて開閉部30を1つのみ設けているが、開閉の必要がある開口29の数に合わせて複数の開閉部30を設けてもよい。また、開閉駆動部31は、シリコーン樹脂30aを昇降移動させるだけでなく、ピペットノズル15に対して開閉部30を相対的に移動させてもよい。
【0034】
塗布部32は、マイクロ流路デバイス2の開口22,29などから圧入した試験液が揮発することを抑える目的で、当該開口などに封止材を塗布する。具体的に、塗布部32は、例えばシリコーンオイルなどの封止材を開口などに排出するノズルであり、ポンプ33によって当該ノズルで封止材を開口などに塗布する。塗布部32の構成はこれに限定されず、ブラシなどで封止材を開口などに塗布する機構でもよい。塗布駆動部34は、封止材を塗布するマイクロ流路デバイス2の開口22,29などの位置に塗布部32を移動させ、ポンプ33を駆動する。
図2および
図3では、塗布部32がピペットノズル15と同じ移動機構に設けられる構成で図示されているが、塗布部32をピペットノズル15と異なる移動機構に設け、塗布駆動部34で塗布部32を移動させてもよい。なお、試験液の揮発が問題にならなければ、試験装置100に塗布部32を設けなくてもよい。
【0035】
制御部50は、試験装置100の動作を制御する。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサーと、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random access memory)のようなメモリーを備える。メモリーは、制御プログラムを記憶する。プロセッサーが、制御プログラムを実行することによって、試験装置100の動作を制御する。なお、制御部50のメモリーが、HDD(Hard Disk Drive)を備えてもよい。
【0036】
制御部50は、マイクロ流路デバイス2を所定の位置となるように、テーブル駆動部13のモータを制御してテーブル16を移動させる。また、制御部50は、マイクロ流路デバイス2を所定の位置まで移動した後、マイクロ流路デバイス2のマイクロ流路24の開口22に試験液を圧入させるため、ピペットノズル駆動部12のモータを制御してピペットノズル15を移動させる。さらに、制御部50は、開閉駆動部31を制御してマイクロ流路デバイス2の開口29の開閉の状態を切り替える。また、制御部50は、塗布駆動部34を制御してマイクロ流路デバイス2の開口22,29などに封止材を塗布する。
【0037】
具体的には、制御部50は、ピペットノズル駆動部12のモータを制御して、所定の試験液容器5の位置にピペットノズル15を移動させ、ポンプ14を制御して試験液容器5内の試験液をピペットチップ1の先端部から吸引する。その後、制御部50は、ピペットノズル駆動部12のモータを制御して、マイクロ流路デバイス2の開口22の位置にピペットノズル15を移動させ、ポンプ14を制御して試験液がピペットチップ1の先端部から開口22に圧入される。
【0038】
制御部50は、パーソナルコンピュータ(PC)や専用のコンピュータによって実現される演算処理装置200と接続することができる。使用者が、演算処理装置200を介して、試験装置100を管理することができる。例えば、演算処理装置200では、テーブル駆動部13によるテーブル16の移動量、ピペットノズル駆動部12によるピペットノズル15の移動量、ポンプ14によるピペットチップ1の先端部から吸引または排出する試験液の量などを設定することができる。演算処理装置200は、試験装置100に隣接して配置された他の装置と電気的に接続され試験システムを構成してもよい。
【0039】
[マイクロ流路デバイスへの試験液の圧入]
次に、試験装置100を用いてマイクロ流路デバイス2に試験液が圧入される方法について説明する。
図5は、実施の形態に従うマイクロ流路デバイス2の流路に試験液を圧入した構成例を示す図である。マイクロ流路デバイス2の板状部材20は、
図5の上側の第1板状部材20aと下側の第2板状部材20bとを備える。第2板状部材20bは、第1板状部材20aに積層される。第2板状部材20bは、第1板状部材20aに対して
図1に示すZ軸の負方向(下方向)に配置される。
【0040】
第1板状部材20aおよび第2板状部材20bは、透明な材料で矩形板状に形成される。第1板状部材20aおよび第2板状部材20bの材料としては、ポリメタクリル酸メチル樹脂のようなアクリル樹脂、ガラスなどが挙げられる。第1板状部材20aには、流路構造が形成される。具体的に、第1板状部材20aには、開口22、本流路23、マイクロ流路24、貯留部25、開口26、および回収部28(
図1参照)が形成される。第2板状部材20bは、開口22、本流路23、マイクロ流路24、貯留部25、開口26、および回収部28の下面として機能する。第1板状部材20aおよび第2板状部材20bの厚みは、特に限定されないが、例えば、0.5mm~3mmに設定される。なお、第2板状部材20bは、超音波溶融により第1板状部材20aに直接固定されるが、接着剤を介して固定されてもよい。
【0041】
本実施の形態では、ピペットチップ1で吸入した試験液が、空気圧で加圧して開口22からマイクロ流路24に圧入される。
図5に示すように、ピペットチップ1から流入された試験液は、開口22、本流路23を経てマイクロ流路24、貯留部25、および開口26を満たす。しかし、マイクロ流路デバイス2は、複数のマイクロ流路24が本流路23を介して連通している。そのため、1つの開口22から本流路23を経て複数のマイクロ流路24に分岐するマイクロ流路デバイス2に試験液を圧入した場合、各流路間で液面の高さ(液頭)に差が生じ、当該差により流路間で試験液に流れが発生する。
【0042】
図6は、実施の形態に従うマイクロ流路デバイス2の流路に試験液を圧入した後の状態を示す図である。
図6に示す上側の経路を経路A、下側の経路を経路Bとする。開口22から流入した試験液は、本流路23を経て経路Aのマイクロ流路24、経路Bのマイクロ流路24に分かれ、各々の開口26に至る。
図6に示すように経路Bの方が経路Aより開口22からの距離が長いため、経路Aの開口26の液頭の方が、経路Bの開口26の液頭より高くなっている。経路Aと経路Bとで液頭に差が生じているので、当該差を解消するために経路Aと経路Bとの間で試験液に流れが発生する。経路Aおよび経路Bの貯留部25内で試験液に流れが発生すると、正しい結果を観察することができなくなる可能性がある。
【0043】
そこで、本実施の形態では、複数のマイクロ流路24に試験液を圧入した後に本流路23に残った試験液を回収部28に排出する。本流路23に残った試験液を排出することで各流路を独立させ、本流路23を介して複数のマイクロ流路24が1つの流路とならないようにして液頭差による流れを防止する。
【0044】
図7は、実施の形態に従うマイクロ流路デバイス2の本流路23から試験液を排出した後の状態を示す図である。
図7に示す上側の経路を経路A、下側の経路を経路Bとする。本流路23から試験液を排出することで、経路Aのマイクロ流路24と、経路Bのマイクロ流路24とは本流路23を介して1つの流路とならない。そのため、経路Aの開口26の液頭の方が、経路Bの開口26の液頭より高くなっていても、当該差を解消するために経路Aと経路Bとの間で試験液の流れは発生しない。
【0045】
図8は、実施の形態に従うマイクロ流路デバイス2の本流路23から試験液を排出する方法を説明するための図である。
図8では、本流路23に複数のマイクロ流路24が接続され、本流路23の一方の端(出口側端部23b)に回収部28が設けられている。回収部28には、本流路23と接続される端と反対側の端に開口29が設けられている。図示していないが、本流路23は、回収部28が接続される端と反対側の端で開口22と接続している。
【0046】
本流路23に試験液が流入されると、本流路23に比べ各々のマイクロ流路24の流路抵抗が大きいので、本流路23をすべて試験液で満たした後でないと、各々のマイクロ流路24に試験液が流入しない。本流路23に比べ各々のマイクロ流路24の流路抵抗を大きくするには、本流路23の断面積を各々のマイクロ流路24の断面積より大きくすればよい。本流路23の幅と各々のマイクロ流路24の幅とが同じであれば、本流路23の深さを各々のマイクロ流路24の深さより深くする。例えば、本流路23の深さを0.5mmとすると、各々のマイクロ流路24の深さを0.001mmとすれば、本流路23の断面積を各々のマイクロ流路24の断面積の500倍とすることができる。
【0047】
本流路23に試験液を流入する場合、開口29は開閉部30のシリコーン樹脂30aで塞がれ閉じられた状態にする。そのため、本流路23に流入した試験液は、この段階では回収部28へ排出されない。本流路23をすべて試験液で満たした後、
図8に示すように、試験液は、各々のマイクロ流路24にほぼ一斉に流入する。これにより、各々のマイクロ流路24および各々の貯留部25に試験液が流入する。
【0048】
その後、開口29を塞いでいる開閉部30のシリコーン樹脂30aを取り除き、開口29を開いた状態で開口22から空気を送り込むことで、
図8に示すように本流路23内に残った試験液を回収部28に排出する。なお、開口22から送り込む空気は、試験液を圧入するためにピペットチップ1から排出する空気を利用することができる。回収部28は、排出される本流路23内の試験液を保持する空間(バッファ空間)があり、当該空間は本流路23の体積よりも大きい。
【0049】
回収部28に本流路23内の試験液を排出するか否かは、開口29の開閉により制御することができる。本流路23内に残った試験液は、開口22から空気によって回収部28へ排出される。
【0050】
なお、本実施の形態では、各々のマイクロ流路24に試験液を圧入し、本流路23内に残った試験液を回収部28に排出した後、開口22、開口26、開口29などにシリコーンオイルなどの封止材を塗布する。開口22、開口26、開口29などに塗布する封止材は、シリコーンオイル33aに限定されず、開口22、開口26、開口29などに留まり試験液の揮発を抑える材料であれば何れの材料でもよい。
【0051】
マイクロ流路デバイス2は、
図1で示したように、1本の本流路23にすべてのマイクロ流路24が連通する構成である。そのため、回収部28に回収する試験液は、1本の本流路23内に残った試験液のみである。しかし、マイクロ流路デバイスの構成によっては、複数の本流路を設け、複数のマイクロ流路24を各々の本流路に分けて連通させる場合がある。例えば、試験液が圧入される開口(第1開口)に4つの本流路が連通している場合、たとえ同形状の本流路であったとしても微妙な流路抵抗に差が生じる。流路抵抗に差がある4つの本流路に対して試験液を排出するために開口(第1開口)から空気が圧入されると、圧入される空気の条件によっては試験液を排出できない本流路が1本残る可能性がある。
【0052】
4つの本流路のうち1本の本流路に試験液が残った場合、その後、開口(第1開口)から空気を圧入しても、試験液を排出できた本流路から空気が抜けてしまい、試験液が残った本流路から排出することができなくなる。試験液が残った本流路に連通する複数のマイクロ流路24は、上述したように、流路間の液頭の差を解消するために経路間で試験液の流れが発生する。
【0053】
そこで、本実施の形態では、試験液が圧入される開口22(第1開口)の数と本流路23の本数とを一致させ、複数のグループの各々に含まれるマイクロ流路24を1本の本流路23にすべて連通させるように配置している。つまり、直線に延びた流路を1本設けて、すべてのマイクロ流路をその流路に連通させるのではなく、板状部材20上に複数のグループに分けて配置された複数のマイクロ流路24を1本の流路で繋ぐように本流路23を配置してある。直線に延びた流路にすべてのマイクロ流路を連通させると、マイクロ流路デバイスの1辺の長さが
図1に示したマイクロ流路デバイス2の1辺の長さの約2倍となり、試験する試験装置や保管する冷蔵庫を大型化する必要がある。一方、マイクロ流路デバイス2のように1本の本流路23を配置することで、外形寸法を変更することなく、本流路23の試験液をすべての回収部28に排出することができる。
【0054】
また、
図1に示したマイクロ流路デバイス2では、上段のグループに含まれる複数の開口26と、下段のグループに含まれる複数の開口26とが各々向かい合うように配置されている。そのため、すべての開口26がマイクロ流路デバイス2の中央部分でX軸方向に沿って配置されるので、1枚のガス透過膜27ですべての開口26を被うことができ、ガス透過膜27の数を減らすことも可能である。
【0055】
[マイクロ流路デバイスの変形例]
なお、マイクロ流路デバイスの構成は、
図1に示した構成に限定されない。
図9は、マイクロ流路デバイスの構成の変形例を示す図である。
図9に示すマイクロ流路デバイス2Aは、板状部材20と、流路構造とを備える。流路構造は、開口22(第1開口)、本流路23A、マイクロ流路24、貯留部25、開口26(第2開口)、ガス透過膜27、回収部28、および開口29(第3開口)を備える。なお、マイクロ流路デバイス2Aは、
図1に示すマイクロ流路デバイス2と同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0056】
マイクロ流路デバイス2Aでは、1本の本流路23Aがマイクロ流路デバイス2Aの中央部分でX軸方向に沿って配置される。本流路23Aの一端に開口22が接続され、本流路23Aの他端に回収部28が接続されている。複数のマイクロ流路24は、中央部分に配置された本流路23Aにそれぞれ連通している。具体的に、上段のグループに含まれる複数のマイクロ流路24は、本流路23Aと連通している部分からY軸の上側方向に配置されており、本流路23Aから分岐した試験液がY軸の上側方向に流入する。一方、下段のグループに含まれる複数のマイクロ流路24は、本流路23Aと連通している部分からY軸の下側方向に配置されており、本流路23Aから分岐した試験液がY軸の下側方向に流入する。なお、マイクロ流路デバイス2Aの本流路23Aの長さは、マイクロ流路デバイス2の本流路23の長さよりも短くできる。
【0057】
図9では、上段のグループに含まれる複数のマイクロ流路24に接続された32個の開口26と、下段のグループに含まれる複数のマイクロ流路24に接続された32個の開口26とがマイクロ流路デバイス2Aの対向する辺側にそれぞれ配置されている。そのため、ガス透過膜27は、上段のグループに含まれる32個の開口26を被う1枚と、下段のグループに含まれる32個の開口26を被う1枚との計2枚必要である。
【0058】
次に、
図10は、マイクロ流路デバイスの構成の別の変形例を示す図である。
図10に示すマイクロ流路デバイス2Bは、板状部材20と、流路構造とを備える。流路構造は、開口22(第1開口)、本流路23B、マイクロ流路24、貯留部25、開口26(第2開口)、ガス透過膜27、回収部28、および開口29(第3開口)を備える。なお、マイクロ流路デバイス2Bは、
図1に示すマイクロ流路デバイス2と同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0059】
マイクロ流路デバイス2Bでは、1本の本流路23Bが上段のグループの外側を通り、マイクロ流路デバイス2Bの中央部分を通る位置に配置される。本流路23Bの一端に開口22が接続され、本流路23Bの他端に回収部28が接続されている。複数のマイクロ流路24は、上段のグループが外側に配置された本流路23Bに、下段のグループが中央部分に配置された本流路23Bにそれぞれ連通している。具体的に、上段のグループに含まれる複数のマイクロ流路24は、外側の本流路23Bと連通している部分からY軸の下側方向に配置されており、本流路23Bから分岐した試験液がY軸の下側方向に流入する。一方、下段のグループに含まれる複数のマイクロ流路24は、中央部分の本流路23Bと連通している部分からY軸の下側方向に配置されており、本流路23Bから分岐した試験液がY軸の下側方向に流入する。なお、マイクロ流路デバイス2Bの本流路23Bの長さは、マイクロ流路デバイス2の本流路23の長さよりも短くできる。
【0060】
図10では、上段のグループに含まれる複数のマイクロ流路24に接続された32個の開口26がマイクロ流路デバイス2Bの中央部分に配置され、下段のグループに含まれる複数のマイクロ流路24に接続された32個の開口26がマイクロ流路デバイス2Bの一方の辺側に配置されている。そのため、ガス透過膜27は、上段のグループに含まれる32個の開口26を被う1枚と、下段のグループに含まれる32個の開口26を被う1枚との計2枚必要である。
【0061】
[その他の変形例]
(1)実施の形態に係る試験装置100では、開口29を開閉部30のシリコーン樹脂30aで塞いで開口29を閉じた状態としたが、これに限定されず、開口29の開閉の状態を切り替える構成であればいずれの構成でもよい。例えば、マイクロ流路デバイス2の開口29に予め開閉機構(シャッターなど)が設けられている場合、開閉部30は、当該開閉機構の状態を切り替える構成でもよい。
【0062】
(2)実施の形態に係る試験装置100では、開口22,26,29に封止材を塗布すると説明したが、これに限定されず、試験液の揮発を抑えることができればいずれの構成でもよい。例えば、開口22,26,29にあらかじめ用意したカバーを付けることで、試験液の揮発を抑えてもよい。
【0063】
(3)開口29の断面が円形状に形成され、回収部28と連通している。そのため、開口29を開いた状態で開口22から空気を送り込み本流路23内に残った試験液を回収部28に排出する場合、送り込む空気の圧力によっては、試験液が回収部28に排出されるだけでなく、開口29から溢れ出る可能性がある。そこで、開口29をガス透過膜で被ってもよい。
【0064】
図1では、本流路23が接続される端と反対側の回収部28の端に開口29が設けられているが、回収部28自体に開口部を設けることで開口29を設けない構成でもよい。さらに、回収部28に設けた開口部を、ガス透過膜で被ってもよい。また、本流路23の出口側端部23bに回収部28自体を設けなくてもよい。
【0065】
[態様]
上述した実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0066】
(第1項)
一態様に係るマイクロ流路デバイスは、検体を含む試験液と薬剤と作用させる試験に用いる板状のマイクロ流路デバイスであって、試験液が圧入される第1開口と、第1開口と連通する入口側端部と、入口側端部と反対側に位置する出口側端部とを有し、圧入した試験液が流動可能な本流路と、それぞれ、本流路に連通する第1側端部、および、第1側端部と反対側に位置する第2側端部を有する複数のマイクロ流路と、各マイクロ流路の第2側端部と連通する第2開口と、各マイクロ流路に設けられ、薬剤が貯留される貯留部と、複数の第2開口のうち少なくとも1つを被うガス透過膜と、を備え、複数のマイクロ流路は、第1グループおよび第2グループを含み、第1グループおよび第2グループの各々に含まれるマイクロ流路は、マイクロ流路デバイスを平面視した場合の第1方向に並んで配置され、第1グループおよび第2グループは、第1方向に対して直交する第2方向に並んで配置される。
【0067】
第1項に記載のマイクロ流路デバイスによれば、本流路の試験液をすべて排出することができるので、マイクロ流路間で発生する試験液の流れを抑えることができる。
【0068】
(第2項)
第1項に記載のマイクロ流路デバイスであって、出口側端部に設けられ、試験液の一部を回収する回収部と、回収部に設けられる第3開口と、をさらに備える。
【0069】
第2項に記載のマイクロ流路デバイスによれば、本流路から排出された試験液をすべて回収部に回収することができる。
【0070】
(第3項)
第1項または第2項に記載のマイクロ流路デバイスであって、マイクロ流路デバイスを平面視した場合に、第1グループに含まれる第2開口と、第2グループに含まれる第2開口とが各々向かい合うように配置され、1本の本流路が複数のマイクロ流路の外側を囲む位置に配置される。
【0071】
第3項に記載のマイクロ流路デバイスによれば、第1グループに含まれる第2開口と、第2グループに含まれる第2開口とが各々向かい合うように配置されるので、ガス透過膜27の数を減らすことができる。
【0072】
(第4項)
第3項に記載のマイクロ流路デバイスであって、ガス透過膜は、第1グループに含まれる第2開口と、第2グループに含まれる第2開口とを1枚の膜で被う。
【0073】
第4項に記載のマイクロ流路デバイスによれば、第2開口を被うガス透過膜の枚数を1枚にすることができる。
【0074】
(第5項)
第1項に記載のマイクロ流路デバイスであって、マイクロ流路デバイスを平面視した場合に、第1グループに含まれる第2開口と、第2グループに含まれる第2開口とがマイクロ流路デバイスの対向する辺側にそれぞれ配置され、1本の本流路がマイクロ流路デバイスの中央部分に配置される。
【0075】
第5項に記載のマイクロ流路デバイスによれば、1本の本流路の長さを短くすることができる。
【0076】
(第6項)
第1項に記載のマイクロ流路デバイスであって、マイクロ流路デバイスを平面視した場合に、第1グループに含まれる第2開口がマイクロ流路デバイスの中央部分に配置され、第2グループに含まれる第2開口がマイクロ流路デバイスの一方の辺側に配置され、1本の本流路が第1グループの外側を通り、マイクロ流路デバイスの中央部分を通る位置に配置される。
【0077】
第6項に記載のマイクロ流路デバイスによれば、1本の本流路の長さを短くすることができる。
【0078】
(第7項)
第2項に記載のマイクロ流路デバイスであって、回収部は、本流路の体積より大きいバッファ空間である。
【0079】
第7項に記載のマイクロ流路デバイスによれば、回収部が、本流路の体積より大きいバッファ空間であるので、本流路内に残った試験液をすべて回収することができる。
【0080】
(第8項)
第7項に記載のマイクロ流路デバイスであって、バッファ空間に吸水部材が設けられる。
【0081】
第8項に記載のマイクロ流路デバイスによれば、回収部から本流路への逆流を防止できるとともに、本流路からの試験液の揮発を防止できる。
【0082】
(第9項)
第1項~第8項のいずれか1項に記載のマイクロ流路デバイスであって、マイクロ流路の流路抵抗は、本流路の流路抵抗より大きい。
【0083】
第9項に記載のマイクロ流路デバイスによれば、マイクロ流路の流路抵抗が、本流路の流路抵抗より大きいので、本流路の試験液を各々のマイクロ流路にほぼ一斉に流入させることができる。
【0084】
(第10項)
第2項、第7項、および第8項のいずれか1項に記載のマイクロ流路デバイスであって、ガス透過膜は、第3開口をさらに被う。
【0085】
第10項に記載のマイクロ流路デバイスによれば、本流路内に残った試験液を回収部に排出する際に、試験液が回収部に留まらず第3開口から排出されてしまうリスクを低減することができる。
【0086】
(第11項)
第1項~第10項のいずれか1項に記載のマイクロ流路デバイスであって、複数のマイクロ流路は、第3グループをさらに含む。
【0087】
第11項に記載のマイクロ流路デバイスによれば、さらに多くのマイクロ流路を設けることができる。
【0088】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0089】
1 ピペットチップ、2,2A,2B マイクロ流路デバイス、5 試験液容器、10 試験液設置部、12 ピペットノズル駆動部、13 テーブル駆動部、14,33 ポンプ、15 ピペットノズル、16 テーブル、22,26,29 開口、23 本流路、24 マイクロ流路、25 貯留部、27 ガス透過膜、28 回収部、30 開閉部、31 開閉駆動部、32 塗布部、34 塗布駆動部、50 制御部、100 試験装置、200 演算処理装置。