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特開2023-54899膨張タービン及びそれを用いた冷凍装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054899
(43)【公開日】2023-04-17
(54)【発明の名称】膨張タービン及びそれを用いた冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/24 20060101AFI20230410BHJP
   B01D 45/12 20060101ALI20230410BHJP
   B01D 45/08 20060101ALI20230410BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20230410BHJP
   F01D 25/30 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
F01D25/24 T
B01D45/12
B01D45/08 Z
F01D25/00 P
F01D25/30 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163874
(22)【出願日】2021-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100168273
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 昌稔
(72)【発明者】
【氏名】田口 英俊
(72)【発明者】
【氏名】倉本 哲英
(72)【発明者】
【氏名】本間 雅也
(72)【発明者】
【氏名】引地 巧
【テーマコード(参考)】
4D031
【Fターム(参考)】
4D031AB02
4D031AC06
4D031DA01
4D031EA01
(57)【要約】
【課題】膨張タービンの性能の低下を抑制しながら、作動流体から凝縮水及び/又は氷片を除去するための技術を提供する。
【解決手段】本開示の膨張タービン100は、膨張タービン翼車10と、膨張タービン翼車10を周方向に囲んで作動流体の流路を形成しているタービンハウジング20と、タービンハウジング20における作動流体の吐出側に膨張タービン翼車10と同軸に配置されたタービンディフューザ30と、を備え、タービンディフューザ30が遠心分離機を兼ねる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張タービン翼車と、
前記膨張タービン翼車を周方向に囲んで作動流体の流路を形成しているタービンハウジングと、
前記タービンハウジングにおける前記作動流体の吐出側に前記膨張タービン翼車と同軸に配置されたタービンディフューザと、
を備え、
前記タービンディフューザが遠心分離機を兼ねる、膨張タービン。
【請求項2】
前記タービンディフューザの内周面又は前記タービンディフューザに続く流路部材の内周面に開口した入口を有する流路であって、前記膨張タービンの外部に連通している分離流路をさらに備えた、
請求項1に記載の膨張タービン。
【請求項3】
前記分離流路は、前記タービンディフューザの前記内周面又は前記流路部材の内周面よりも半径方向の外側に位置する分離室と、前記入口と前記分離室とを連通している上流部分と、前記分離室と前記膨張タービンの前記外部とを連通している下流部分とをさらに有する、
請求項2に記載の膨張タービン。
【請求項4】
前記分離室は、前記膨張タービン翼車と同軸の環形状を有する、
請求項3に記載の膨張タービン。
【請求項5】
前記分離室の内部に配置された邪魔板をさらに備えた、
請求項3又は4に記載の膨張タービン。
【請求項6】
前記邪魔板は、前記膨張タービン翼車の回転軸に対して傾斜した主面を有する、
請求項5に記載の膨張タービン。
【請求項7】
前記膨張タービン翼車の前記回転軸に垂直な方向から見たとき、前記回転軸と前記主面とのなす角度が45度以上90度未満の範囲にある、
請求項6に記載の膨張タービン。
【請求項8】
前記分離流路に流入した前記作動流体を前記作動流体の主流に合流させる戻り流路をさらに備えた、
請求項3から7のいずれか1項に記載の膨張タービン。
【請求項9】
前記分離流路に流入した前記作動流体を前記作動流体の主流に合流させる戻り流路をさらに備え、
前記戻り流路は、前記邪魔板よりも下流において前記分離室に向かって開口している、
請求項5から7のいずれか1項に記載の膨張タービン。
【請求項10】
前記分離室は、第1内面、第2内面、及び、前記第1内面に設けられた環状又は円弧状の溝を有し、
前記第1内面及び前記第2内面は、それぞれ、前記膨張タービン翼車の回転軸の周方向に沿う面であり、
前記回転軸から前記第2内面までの距離は、前記回転軸から前記第1内面までの距離よりも短く、
前記環状又は円弧状の溝において、前記分離室に前記分離流路の前記下流部分が接続されている、
請求項3から9のいずれか1項に記載の膨張タービン。
【請求項11】
前記分離室は、第1内面及び第2内面を有し、
前記第1内面及び前記第2内面は、それぞれ、前記膨張タービン翼車の回転軸の周方向に沿う面であり、
前記回転軸から前記第2内面までの距離は、前記回転軸から前記第1内面までの距離よりも短く、
前記膨張タービンは、前記第2内面から前記第1内面まで延びて前記分離室を区切り、前記分離流路の前記下流部分に達している隔壁をさらに備えた、
請求項3から10のいずれか1項に記載の膨張タービン。
【請求項12】
前記分離室は、前記第2内面に設けられた環状又は円弧状の溝をさらに有する、
請求項11に記載の膨張タービン。
【請求項13】
前記膨張タービンがラジアルタービンである、
請求項1から12のいずれか1項に記載の膨張タービン。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の膨張タービンを備え、
前記作動流体が空気である、
冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、膨張タービン及びそれを用いた冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、蒸気タービンの作動流体である蒸気流に含まれた水分を取り除くための装置を開示する。この装置は、ベーン、すくい出し溝孔、及びくせ取りベーンを備えている。ベーンは、高圧タービンの下流かつ低圧タービンの上流に配置され、高圧タービンから吐出された蒸気にタービン軸の軸方向と平行な軸を持つ旋回流を発生させる。すくい出し溝孔は、旋回流に起因する遠心力によって装置の内壁面に衝突した水分を誘導する。くせ取りベーンは、旋回流を解消するための部材である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-187205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、膨張タービンの性能の低下を抑制しながら、作動流体から凝縮水及び/又は氷片を除去するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の膨張タービンは、
膨張タービン翼車と、
前記膨張タービン翼車を周方向に囲んで作動流体の流路を形成しているタービンハウジングと、
前記タービンハウジングにおける前記作動流体の吐出側に前記膨張タービン翼車と同軸に配置されたタービンディフューザと、
を備え、
前記タービンディフューザが遠心分離機を兼ねる。
【0006】
別の側面において、本開示の冷凍装置は、
上記本開示の膨張タービンを備え、
前記作動流体が空気である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、膨張タービンの性能の低下を抑制しながら、作動流体から凝縮水及び/又は氷片を除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1における膨張タービンの断面図
図2】ラジアルタービンにおける速度三角形を示す図
図3A】膨張タービン翼車への作動流体の流入時における速度三角形を平面上に表した図
図3B】膨張タービン翼車からの作動流体の吐出時における速度三角形を平面上に表した図
図4A】実施の形態2における膨張タービンの断面図
図4B】内側部品の半断面図
図4C】内側部品の平面図
図5A】実施の形態3における膨張タービンの断面図
図5B】内側部品の半断面図
図5C】内側部品の平面図
図6A】実施の形態4における膨張タービンの断面図
図6B】実施の形態4における膨張タービンの平面図
図6C図6Aの部分拡大図
図7A】実施の形態5における膨張タービンの断面図
図7B】実施の形態5における膨張タービンのA-A線に沿った断面図
図8】実施の形態6における冷凍装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、冷熱、特に氷点以下の温度を有する冷熱を出力する空気又はその他の気体を作動流体として有し、且つその作動流体を冷熱源として直接利用する冷凍装置が知られていた。この種の冷凍装置において、冷凍庫と熱交換器との間の流路上に凝縮水及び/又は氷片を捕集するための構造が設けられていた。当該構造によれば、冷凍サイクルの熱力学過程において作動流体に含まれた水蒸気が凝縮して冷熱の出力先である冷凍庫等の内壁面等に霜状に付着することを防止できる。これにより、低温冷熱の出力時においても冷凍装置の機能が維持されうる。
【0010】
しかし、凝縮水及び/又は氷片を捕集するための追加の構造を設けると、作動流体の流れが阻害されて冷凍装置の性能が低下するとともに、経済性にも劣る。このことに気付いた発明者らは、作動流体の流れを利用して作動流体中の凝縮水及び/又は氷片を除去することを想到し、優れた利便性及び経済性を冷凍装置に付与可能な膨張タービンを完成させた。
【0011】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、又は、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0012】
なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0013】
(実施の形態1)
以下、図1から図3Bを用いて実施の形態1を説明する。
【0014】
[1-1.構成]
図1は、実施の形態1における膨張タービン100の断面図である。膨張タービン100は、膨張タービン翼車10、タービンハウジング20及びタービンディフューザ30を備えている。タービンハウジング20は、膨張タービン翼車10を周方向に囲んで作動流体の流路を形成している。タービンディフューザ30は、タービンハウジング20における作動流体の吐出側に膨張タービン翼車10と同軸に配置されている。タービンディフューザ30は遠心分離機を兼ねている。
【0015】
膨張タービン100は、膨張タービン翼車10よりも下流、すなわちタービンディフューザ30において、作動流体の流れ方向に平行な軸を持つ作動流体の旋回成分を利用して、作動流体に含まれた凝縮水及び/又は氷片を作動流体の主流F1から分離することができる。そのため、冷熱生成サイクルの最終過程に膨張タービン100を使用したとき、膨張タービン100から凝縮水及び/又は氷片が吐出されにくい。膨張タービン100の下流に配管、冷凍庫等の構成要素が配置されている場合、それらの構成要素の内壁面への着霜を抑制できる。場合によっては、凝縮水及び/又は氷片を分離するための機構を省略又は簡略化できるので、膨張タービン100を用いた冷凍装置の費用を削減できる。着霜を抑制することによって、除霜のための冷凍装置のダウンタイムも削減でき、利便性が向上する。
【0016】
また、タービンディフューザ30の圧力回復機能を阻害する部材(特許文献1に記載されたような部材)を追加する必要が無いので、作動流体の圧力損失を抑制できる。これにより、膨張タービン100の効率が向上する。
【0017】
以下において、「凝縮水及び/又は氷片」を単に「凝縮水」と記載する。本開示の技術によって、主に凝縮水が捕集され、膨張タービン100の外部に排出される。温度に応じて、凝縮水に氷片が混ざることがあり、氷片が主に捕集されることもある。
【0018】
膨張タービン翼車10は、シャフト12に取り付けられており、シャフト12とともに回転する。
【0019】
タービンハウジング20は、膨張タービン100の入口を含む渦巻き室22を有する。膨張タービン翼車10の周囲には、タービンノズル21が配置されている。渦巻き室22及びタービンノズル21は、膨張タービン100の入口から膨張タービン翼車10に至る流路を形成している。
【0020】
タービンディフューザ30は、膨張タービン翼車10の下流端10pに対応する位置から回転軸Oに平行な方向に延びる筒状の部材である。タービンディフューザ30は、内部流路30fを有する。タービンディフューザ30の内周面30aは、回転軸Oに対して傾斜している。内部流路30fの断面積は、作動流体の流れ方向の下流に向かって連続的に拡大している。タービンディフューザ30において、作動流体の速度が徐々に低下し、作動流体の圧力が徐々に回復する。タービンハウジング20とタービンディフューザ30とが一体化されていてもよい。つまり、タービンハウジング20及びタービンディフューザ30が単一の部品であってもよい。
【0021】
タービンハウジング20及びタービンディフューザ30は、膨張タービン翼車10と同軸に配置されている。膨張タービン翼車10の回転軸Oがタービンハウジング20及びタービンディフューザ30の中心を通っている。膨張タービン翼車10の回転軸Oは、例えば、水平方向に平行である。
【0022】
膨張タービン100は、詳細には、ラジアルタービンである。ラジアルタービンに本開示の技術を適用すると、作動流体から凝縮水を効率的に除去できる。
【0023】
作動流体の種類は特に限定されない。作動流体は、例えば、空気である。空気が作動流体である場合、膨張タービン100で作り出された低温空気が冷凍庫などの対象空間にそのまま供給される(実施の形態6を参照)。
【0024】
膨張タービン100は、遠心分離機を兼ねるために、分離流路50をさらに備えている。本実施の形態において、膨張タービン100は、タービンディフューザ30に続く流路部材40をさらに有する。流路部材40に分離流路50が設けられている。流路部材40も膨張タービン翼車10と同軸に配置されている。流路部材40の内周面40aも回転軸Oに対して傾斜している。流路部材40の内部流路40fの断面積も作動流体の流れ方向の下流に向かって連続的に拡大している。つまり、本実施の形態において、流路部材40は、ディフューザの一部でありうる。ただし、流路部材40がディフューザの機能を有していることは必須ではない。流路部材40の内部流路40fの断面積が作動流体の流れ方向に沿って一定であってもよい。言い換えれば、図1の断面において、流路部材40の内周面40aが回転軸Oに平行であってもよい。また、流路部材40が省略されていてもよい。
【0025】
回転軸Oに対する内周面30aの傾斜角度αは、回転軸Oに対する内周面40aの傾斜角度に等しい。傾斜角度は、例えば、7.5度から15度の範囲にある。内周面30aと内周面40aとの間に段差は設けられていない。
【0026】
分離流路50は、流路部材40の内周面40aに開口した入口41を有し、膨張タービン100の外部に連通している。分離流路50は、内部流路30f及び内部流路40fとは別の流路である。凝縮水は、入口41を通じて分離流路50に流入する。流路部材40が省略されている場合、分離流路50の入口41は、タービンディフューザ30の内周面30aに開口していてもよい。分離流路50は、作動流体の主流F1から分離された凝縮水を捕集して外部に排出する役割を担う。分離流路50は、凝縮水を連続的に外部に排出することを可能にする。タービンディフューザ30と分離流路50が協働して遠心分離機の機能を発揮する。
【0027】
なお、「膨張タービン100の外部」とは、膨張タービン100を用いた機器、例えば冷凍装置の外部であることを意味する。膨張タービン100の外部は、例えば、分離された凝縮水を排出するべき外部雰囲気又はドレンである。
【0028】
分離流路50の入口41は、例えば、以下に説明する範囲に位置している。内部流路30f及び内部流路40fが共に連続的に拡大する断面積を有するとき、すなわち、流路部材40がディフューザの機能を有するとき、入口41は、内部流路30f及び内部流路40fの全長Lの中間位置(L/2の位置)よりも下流側の範囲にある。このような位置に入口41が設けられていると、膨張タービン100の性能の低下を抑制しながら、凝縮水を効率的に捕集できる。作動流体の流れ方向の下流端10pにおける膨張タービン翼車10の半径がr1であるとき、入口41は、下流端10pの位置を基準(=0)として、1.4r1から4.5r1の範囲に設けられていてもよい。
【0029】
分離流路50の入口41の大きさは特に限定されない。凝縮水を十分に捕集しつつ、作動流体の流入量を減らすことができるように入口41の大きさが調整されうる。
【0030】
本実施の形態において、入口41は、回転軸Oの周方向の360度にわたって設けられている。つまり、入口41は、内周面40a(又は内周面30a)に沿った環形状を有する。このような構成によれば、凝縮水を確実に捕集できる。ただし、入口41の形状は特に限定されない。入口41は、複数の部分に分かれていてもよい。複数の部分のそれぞれは、円弧形状を有していてもよく、平面視で円形状であってもよい。
【0031】
分離流路50は、さらに、分離室42、上流部分43及び下流部分44を有する。分離室42は、流路部材40の内周面40a(又はタービンディフューザ30の内周面30a)よりも半径方向の外側に位置している。上流部分43は、入口41と分離室42とを連通している部分である。下流部分44は、分離室42と膨張タービン100の外部とを連通している部分である。このような構成によれば、凝縮水が少量の作動流体とともに入口41を通じて分離流路50に流入したとき、作動流体が分離室42の内面に衝突する。これにより、作動流体が更なる分離作用を受けるので、凝縮水を確実に捕集及び排出できる。
【0032】
上流部分43の流路断面積(最大部分)は、分離室42の流路断面積(最小部分)よりも小さい。上流部分43の流路断面積は、上流部分43を通り、かつ、回転軸Oに垂直な任意の断面における上流部分43の面積である。同様に、分離室42の流路断面積は、分離室42を通り、かつ、回転軸Oに垂直な断面における分離室42の面積である。このような構成によれば、作動流体の流れが上流部分43で減速されにくい。
【0033】
下流部分44の流路断面積の大きさは特に限定されない。本実施の形態では、分離室42の一部と膨張タービン100の外部とを連通しており、下流部分44の流路断面積が分離室42の流路断面積よりも小さい。
【0034】
分離室42は、膨張タービン翼車10と同軸の環形状を有する。このような構成によれば、タービンディフューザ30の内周面30a又は流路部材40の内周面40aの全周にわたって凝縮水を捕集することができる。そのため、凝縮水をより確実に捕集することができる。このことは、膨張タービン100の下流に配置された構成要素の内壁面への着霜を十分に抑制することを可能にする。
【0035】
上流部分43は、入口41から分離室42に向かって斜めに延びている。本実施の形態において、回転軸Oに平行な方向に関して、膨張タービン翼車10から入口41までの距離が膨張タービン翼車10から分離室42までの距離よりも短い。したがって、上流部分43は、回転軸Oに対して傾斜した方向かつ回転軸Oから遠ざかる方向に延びている。図1の断面において、回転軸Oに対する上流部分の傾斜角度は、例えば、30度から60度である。下流部分44は、流路部材40の端面40q(又はタービンディフューザ30の端面)に開口している。下流部分44は、鉛直方向の最下部において分離室42に連通している。これにより、凝縮水が分離室42から下流部分44にスムーズに集められる。
【0036】
下流部分44は、半径方向の外向きに延びていてもよい。下流部分44は、流路部材40の外周面又はタービンディフューザ30の外周面に開口していてもよい。例えば、下流部分44が鉛直方向の下方に向かって延びていてもよい。この場合、下流部分44に凝縮水が集まりやすい。
【0037】
[1-2.動作]
以上のように構成された膨張タービン100について、以下その動作、作用を説明する。
【0038】
図2は、ラジアルタービンにおける速度三角形を示す図である。ラジアルタービンにおいて、作動流体は、膨張タービン翼車10の外周部から流入相対速度W1で膨張タービン翼車10に流入し、膨張タービン翼車10の翼間流路を通過し、タービンディフューザ30に向けて吐出絶対速度C2で吐出される。流入相対速度W1で流入する作動流体による膨張タービン翼車10に対する衝動、及び、吐出相対速度W2で作動流体が吐出される際に膨張タービン翼車10に与えられる反動によって、膨張タービン翼車10が回転方向11に回転する。
【0039】
膨張タービン翼車10が回転するとき、作動流体が膨張タービン翼車10に流入する位置において、膨張タービン翼車10は周速度U1を有する。作動流体が膨張タービン翼車10から吐出される位置において、膨張タービン翼車10は周速度U2を有する。したがって、作動流体は、周速度U1と流入絶対速度C1との合成速度である流入相対速度W1で膨張タービン翼車10に流入する。作動流体が膨張タービン翼車10から吐出される際には、膨張タービン翼車10の翼間流路から吐出相対速度W2で作動流体が吐出される。したがって、作動流体は、吐出相対速度W2と角度をなす吐出方向に向かって、周速度U2と吐出相対速度W2との合成速度である吐出絶対速度C2で膨張タービン翼車10から吐出される。このように、膨張タービン翼車10への流入時及び膨張タービン翼車10からの吐出時における作動流体の流れ方向の関係を表したベクトル図を速度三角形と称する。速度三角形は、膨張タービンの設計において、出力及び性能を決定する設計因子の1つである。
【0040】
図3Aは、膨張タービン翼車10への作動流体の流入時における速度三角形を平面上に表した図である。図3Bは、膨張タービン翼車10からの作動流体の吐出時における速度三角形を平面上に表した図である。
【0041】
図3A及び図3Bに示すように、作動流体は、膨張タービン翼車10の外周部から流入相対速度W1で膨張タービン翼車10に流入し、膨張タービン翼車10の翼間流路を通過し、タービンディフューザ30に向けて吐出絶対速度C2で吐出される。流入相対速度W1で流入する作動流体による膨張タービン翼車10に対する衝動、及び、吐出相対速度W2で作動流体が吐出される際に膨張タービン翼車10に与えられる反動によって、膨張タービン翼車10が回転方向11に回転する。
【0042】
膨張タービン翼車10が回転するとき、作動流体が膨張タービン翼車10に流入する位置において、膨張タービン翼車10は周速度U1を有する。作動流体が膨張タービン翼車10から吐出される位置において、膨張タービン翼車10は周速度U2を有する。したがって、作動流体は、周速度U1と流入絶対速度C1との合成速度である流入相対速度W1で膨張タービン翼車10に流入する。作動流体が膨張タービン翼車10から吐出される際には、膨張タービン翼車10の翼間流路から吐出相対速度W2で作動流体が吐出される。したがって、作動流体は、吐出相対速度W2に対して吐出流れ角度α2をなす吐出方向に向かって、周速度U2と吐出相対速度W2との合成速度である吐出絶対速度C2で膨張タービン翼車10から吐出される。
【0043】
このような流れ方向の関係性を有する膨張タービン100において、作動流体の温度が低下する場合を考える。膨張タービン翼車10に流入する作動流体の温度が低下すると、作動流体の密度が上昇する。膨張タービン翼車10に対して作動流体を吹き付けるための絞り機構(タービンノズル)の絞り面積が作動流体の密度に応じて変更される可変形式ではない限り、流入絶対速度C1は減速して低温時の流入絶対速度C1’に変化する。そのため、周速度U1が一定である場合には、流入相対速度W1は低温時の流入相対速度W1’へと変化する。同様に、膨張タービン翼車10の吐出側においては、作動流体の密度が温度の低下に従って低下することにより、吐出相対速度W2が低温時の吐出相対速度W2’へと変化する。吐出絶対速度C2は低温時の吐出絶対速度C2’へと変化する。その際、吐出相対速度W2と吐出絶対速度C2とのなす角度である吐出流れ角度α2は、より大きい角度を有する低温時の吐出流れ角度α2’へと変化する(α2’>α2)。つまり、作動流体の温度が低下すると、回転軸Oに対する作動流体の流れ方向の傾き角度が増加し、且つ作動流体の流れの旋回成分の強度も増す。
【0044】
作動流体の温度を低下させることを目的に膨張タービンが使用されることがある。例えば、膨張タービンの下流に配置された空間の温度を低下させることが目的であることがある。作動流体の温度を所望の温度まで低下させる方法として、下流の空間に作動流体を流入させること、下流の空間から作動流体を吸引して圧縮すること、及び、圧縮された作動流体を膨張タービンで再度膨張させることを反復する方法がある。作動流体の温度が低下するにつれて、膨張タービン翼車10から吐出される作動流体の流れの旋回成分が連続的に増加する。特に、作動流体の圧力に応じた露点温度以下に作動流体の温度が低下した場合には、膨張タービン翼車10から吐出される作動流体には凝縮水が含まれる。作動流体の温度が氷点を下回った場合には、作動流体の流れには氷片が含まれうる。作動流体が空気であり、空気と凝縮水(及び/又は氷片)との温度が等しい場合、両者の間には約103倍程度の密度の差がある。そのため、空気及び凝縮水(及び/又は氷片)が同一の旋回速度を有する流れ場において、凝縮水(及び/又は氷片)には、空気と比べて、旋回成分の接線方向により強い慣性力が作用する。
【0045】
凝縮水は、作動流体とともに膨張タービン翼車10の翼間流路から吐出される。その後、凝縮水を含む作動流体は、タービンディフューザ30の内周面30aの近傍に分布する流れ成分であって、内周面30aの接線方向に指向した流れ成分を持ちながら下流に向かって流れる。本実施の形態の膨張タービン100において、タービンディフューザ30は、遠心分離機を兼ねている。詳細には、膨張タービン100は、分離流路50を備えている。タービンディフューザ30の内周面30aの近傍に凝縮水を含む作動流体が集中する。作動流体に含まれる凝縮水が分離流路50の入口41から分離室42に作動流体の一部と共に捕集され、分離流路50の下流部分44から膨張タービン100の外部に排出される。これにより、作動流体の主流F1から凝縮水を分離することができる。
【0046】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、タービンディフューザ30が遠心分離機を兼ねている。これにより、膨張タービン100の性能の低下を抑制しながら、作動流体から凝縮水を除去できる。
【0047】
本実施の形態において、膨張タービン100は、タービンディフューザ30の内周面30a又はタービンディフューザ30に続く流路部材40の内周面40aに開口した入口41を有する流路であって、膨張タービン100の外部に連通している分離流路50をさらに備えていてもよい。分離流路50は、凝縮水を連続的に外部に排出することを可能にする。
【0048】
本実施の形態において、分離流路50は、タービンディフューザ30の内周面30a又は流路部材40の内周面40aよりも半径方向の外側に配置された分離室42と、入口41と分離室42とを連通している上流部分43と、分離室42と膨張タービン100の外部とを連通している下流部分44とをさらに有していてもよい。このような構成によれば、作動流体が更なる分離作用を受けるので、凝縮水を確実に捕集及び排出できる。
【0049】
本実施の形態において、分離室42は、膨張タービン翼車10と同軸の環形状を有していてもよい。このような構成によれば、タービンディフューザ30の内周面30a又は流路部材40の内周面40aの全周にわたって凝縮水を捕集することができる。
【0050】
(実施の形態2)
以下、図4A図4B及び図4Cを用いて、実施の形態2を説明する。
【0051】
[2-1.構成]
図4Aは、実施の形態2における膨張タービン200の断面図である。膨張タービン200は、分離室42の内部に配置された邪魔板45をさらに備えている。邪魔板45は、作動流体からの凝縮水の分離を促進する。邪魔板45を除き、膨張タービン200の構成は、実施の形態1の膨張タービン100の構成と共通である。
【0052】
膨張タービン200は、詳細には、複数の邪魔板45を備えている。複数の邪魔板45が回転軸Oの周方向に沿って環状の分離室42に配置されている。複数の邪魔板45は、等角度間隔で分離室42に配置されていてもよい。ただし、単一の邪魔板45が分離室42に配置されていてもよい。
【0053】
流路部材40は、内側部品401及び外側部品402を有する。外側部品402は、すり鉢状の内周面を有する部品である。内側部品401は、内部流路40fを有する筒状の部品である。外側部品402に内側部品401が嵌め合わされている。外側部品402に内側部品401を嵌め合わせたときに両者の間に分離流路50が確保されるように、内側部品401及び外側部品402の形状が定められている。
【0054】
図4Bは、内側部品401の半断面図である。図4Cは、内側部品401の平面図である。内側部品401は、筒状体46を有する。筒状体46の外周面46qから複数の邪魔板45のそれぞれが半径方向の外向きに延びている。回転軸Oの周方向に沿って、筒状体46の外周面46qの上に複数の邪魔板45が配置されている。周方向において互いに隣り合う邪魔板45の間にすき間Gが確保されている。すき間Gを通って、作動流体が分離流路50の下流に向かって流れる。邪魔板45の主面は回転軸Oに垂直である。「主面」は、最も広い面積を有する面を意味する。
【0055】
典型的には、邪魔板45は、筒状体46に一体に形成されている。つまり、邪魔板45が内側部品401の一部である。ただし、邪魔板45は、内側部品401から分離可能な別部品であってもよい。また、邪魔板45は、外側部品402に一体に形成されていてもよい。
【0056】
図4Aに示すように、邪魔板45は、分離室42の第2内面42qから分離室42の第1内面42pまで延びている。これにより、凝縮水をより確実に捕集できる。第1内面42p及び第2内面42qは、それぞれ、膨張タービン翼車10の回転軸Oの周方向に沿う面である。回転軸Oから第2内面42qまでの距離は、回転軸Oから第1内面42pまでの距離よりも短い。つまり、第1内面42pが半径方向の外側に位置する内面である。第2内面42qが半径方向の内側に位置する内面である。第2内面42qは、内側部品401の筒状体46の外周面46qの一部である。第1内面42pは、外側部品402の内周面の一部である。第1内面42p及び第2内面42qは、半径方向において互いに向かい合っている。
【0057】
[2-2.動作]
以上のように構成された膨張タービン200について、以下その動作、作用を説明する。
【0058】
実施の形態1で説明したように、凝縮水は、作動流体の一部とともに入口41を通じて分離流路50に流入する。作動流体に含まれた凝縮水は、分離室42において邪魔板45に衝突する。これにより、作動流体からの凝縮水の分離が促進される。分離された凝縮水は、分離室42の内部の圧力及び重力によって分離流路50の下流部分44に集められ、膨張タービン200の外部へと排出される。
【0059】
分離室42においては、凝縮水を含む作動流体が邪魔板45に衝突し、その流れ方向が急峻に偏向する。作動流体と凝縮水との間には密度差があるので、作動流体に作用する慣性力と凝縮水に作用する慣性力との間にも差がある。慣性力に差があるので、流れの態様及び流れの方向にも違いがある。特に、大きい慣性力を有する凝縮水は、邪魔板45の表面又は分離室42の内面に衝突して付着する。その結果、凝縮水の速度は急速に減少する。一方、気相の作動流体の密度は小さいので、作動流体に作用する慣性力も小さい。そのため、作動流体の速度の大幅な低下は生じにくい。作動流体と凝縮水との速度差により、両者は分離室42に流入した直後に分離される。すなわち、分離室42に流入した作動流体から凝縮水が更に分離されうる。凝縮水を作動流体から十分に捕集して外部に排出することができる。このことは、膨張タービン200の下流に配置された構成要素の内壁面への着霜を更に抑制することを可能にする。凝縮水は、分離室42の内部の圧力及び重力によって下流部分44へと運ばれ、膨張タービン200の外部へと排出される。
【0060】
[2-3.効果等]
本実施の形態において、膨張タービン200は、分離室42の内部に配置された邪魔板45をさらに備えていてもよい。邪魔板45は、作動流体からの凝縮水の分離を促進する。分離室42に流入した作動流体から凝縮水が更に分離されうる。
【0061】
(実施の形態3)
以下、図5A図5B及び図5Cを用いて、実施の形態5を説明する。
【0062】
[3-1.構成]
図5Aは、実施の形態3における膨張タービン300の断面図である。図5Bは、内側部品403の半断面図である。図5Cは、内側部品403の平面図である。膨張タービン300は、分離室42の内部に配置された邪魔板45を備えている。邪魔板45は、作動流体からの凝縮水の分離を促進する。邪魔板45は、膨張タービン翼車10の回転軸Oに対して傾斜した主面45pを有する。このような構成によれば、上流部分43を通じて分離室42に達した作動流体が邪魔板45に垂直に近い角度で衝突する。そのため、作動流体からの凝縮水の分離が更に促進されうる。邪魔板45の角度を除き、膨張タービン300の構成は、実施の形態2の膨張タービン200の構成と共通である。
【0063】
流路部材40は、内側部品403及び外側部品402を有する。外側部品402の構造は、実施の形態2で説明した通りである。内側部品403の構造は、邪魔板45の角度を除き、実施の形態2で説明した通りである。
【0064】
図5Bに示すように、膨張タービン翼車10の回転軸Oに垂直な方向から見たとき、回転軸Oと邪魔板45の主面45pとのなす角度θが45度以上90度未満の範囲にある。角度θがこのような範囲にあれば、主面45pを分離流路50の上流部分43に正対させることができる。凝縮水を含む作動流体が邪魔板45に垂直に近い角度で衝突しうる。その結果、作動流体からの凝縮水の分離が更に促進されうる。
【0065】
邪魔板45の角度θは、分離流路50の上流部分43の角度θ1に応じて決められてもよい。上流部分43の角度θ1とは、図5Aの断面に示すように、上流部分43が延びる方向と回転軸Oとのなす角度である。角度θと角度θ1とが等しいとき、凝縮水を含む作動流体が邪魔板45の主面に垂直に衝突しうる。したがって、角度θ1を基準として、角度θは、θ=θ1±5°を満たしてもよい。
【0066】
[3-2.動作]
以上のように構成された膨張タービン300について、以下その動作、作用を説明する。
【0067】
実施の形態1で説明したように、凝縮水は、作動流体の一部とともに入口41を通じて分離流路50に流入する。凝縮水を含む作動流体は、分離室42に流入した後も旋回成分を保持している。図5Bに矢印で示すように、縮水を含む作動流体は、角度θで傾斜している邪魔板45の主面45pに対して垂直又は垂直に近い角度で衝突する。邪魔板45に衝突すると、作動流体の流れ方向は、邪魔板45の主面45pに沿う方向へと急峻に偏向する。他方、凝縮水に作用する慣性力は、作動流体に作用する慣性力よりも十分に大きい。そのため、凝縮水の流れ方向の偏向は緩慢である。その結果、邪魔板45の主面45pに衝突後、凝縮水は、作動流体と異なる速度で邪魔板45、分離室42の内面42p及び分離室42の内面42qに沿って、主として分離室42の内部の圧力及び重力によって、下流部分44へと運ばれる。凝縮水は、その後、膨張タービン300の外部へと排出される。膨張タービン翼車10の回転方向は、図3Bに矢印で示す方向への作動流体の流れが形成されるように定められている。この場合、邪魔板45の効果が最も高まる。ただし、邪魔板45の傾斜方向と膨張タービン翼車10の回転方向との関係は限定されない。
【0068】
[3-3.効果等]
本実施の形態において、邪魔板45は、膨張タービン翼車10の回転軸Oに対して傾斜した主面45pを有していてもよい。このような構成によれば、作動流体からの凝縮水の分離が更に促進されうる。
【0069】
本実施の形態において、膨張タービン翼車10の回転軸Oに垂直な方向から見たとき、回転軸Oと主面45pとのなす角度θが45度以上90度未満の範囲にあってもよい。このような構成によれば、作動流体からの凝縮水の分離が更に促進されうる。
【0070】
(実施の形態4)
以下、図6A及び図6Bを用いて、実施の形態4を説明する。
【0071】
[4-1.構成]
図6Aは、実施の形態4における膨張タービン400の断面図である。図6Bは、実施の形態4における膨張タービン400の平面図である。図6Bの平面図は、膨張タービン翼車10を下流側から見たときの平面図である。膨張タービン400において、分離室42は、第1内面42pに設けられた環状又は円弧状の溝52を有する。図4Aを参照して説明したように、第1内面42pは、半径方向の外側に位置する内面である。溝52において、分離室42に分離流路50の下流部分44が接続されている。このような構成によれば、凝縮水が溝52に集まりやすい。凝縮水は、溝52に沿って流れ、分離流路50の下流部分44を通じて膨張タービン400の外部に排出される。
【0072】
溝52は、例えば、回転軸Oに平行な方向において、邪魔板45に重なっている。この場合、邪魔板45に付着した凝縮水が溝52に集まりやすい。溝52に集められた凝縮水は、溝52に沿って下方に流れ、下流部分44を通じて外部に排出される。なお、邪魔板45が省略されたとしても、溝52による一定の効果が期待できる。
【0073】
図6Cは、図6Aの部分拡大図である。溝52の深さ及び溝52の幅は特に限定されない。一例において、回転軸Oに垂直な方向に関する分離室42の最大寸法d1を基準として、溝52の深さd2は、(0.4×d1)≦d2≦(0.8×d1)を満たすように調整されていてもよい。回転軸Oに平行な方向に関する分離室42の最大寸法w1を基準として、溝52の幅w2は、(0.2×w1)≦w2≦(0.6×w1)を満たすように調整されていてもよい。溝52の深さは、回転軸Oに垂直な方向の溝52の深さを意味する。溝52の幅は、回転軸Oに平行な方向の溝52の幅を意味する。
【0074】
回転軸Oに平行な方向に関する溝52の中心位置は、回転軸Oに平行な方向に関する分離室42の中心位置に一致していてもよい。回転軸Oに平行な方向に関する溝52の中心位置は、回転軸Oに平行な方向に関する邪魔板45の中心位置に一致していてもよい。これにより、作動流体の圧力損失を抑制しつつ、作動流体から凝縮水を効率的に分離することができる。
【0075】
分離流路50の下流部分44は、鉛直方向における分離室42の最下部に接続されている。そのため、溝52に集まった凝縮水が下流部分44にスムーズに流入する。
【0076】
図6Bに示すように、下流部分44は、流路部材40の端面40qに開口している。流路部材40が省略された場合、下流部分44は、タービンディフューザ30の端面に開口していてもよい。下流部分44は、半径方向の外向きに延びていてもよい。下流部分44は、流路部材40の外周面又はタービンディフューザ30の外周面に開口していてもよい。
【0077】
膨張タービン400は、戻り流路48をさらに備えている。戻り流路48は、分離流路50に流入した作動流体を当該作動流体の主流F1に合流させる役割を担う。戻り流路48によれば、冷熱を外部に破棄せずに済むので、膨張タービン400の効率が向上する。戻り流路48は、例えば、他の実施の形態の膨張タービン100,200又は300に設けられていてもよい。
【0078】
図6Bに示すように、戻り流路48は、流路部材40の端面40qに開口している。つまり、戻り流路48は、邪魔板45よりも下流において分離室42に向かって開口している。このような構成によれば、凝縮水が十分に取り除かれた後の作動流体を主流F1に戻すことができる。
【0079】
流路部材40が省略された場合、戻り流路48は、タービンディフューザ30の端面に開口していてもよい。戻り流路48は、平面視で、内部流路30f及び40fの周方向に沿った円弧形状を有する。本実施の形態では、戻り流路48が複数の部分(3つの部分)に分かれている。ただし、戻り流路48は単一の流路であってもよい。また、邪魔板45が設けられていない膨張タービン100(実施の形態1)にも戻り流路48は適用されうる。
【0080】
戻り流路48は、タービンディフューザ30の下流側に配置された構成要素に接続されうる。そのような構成要素は、配管であってもよく、冷凍庫であってもよい。また、戻り流路48は、分離室42とタービンディフューザ30の内部流路30fとを連通する流路であってもよく、分離室42とタービンディフューザ30に続く流路部材40とを連通する流路であってもよい。
【0081】
[4-2.動作]
以上のように構成された膨張タービン400について、以下その動作、作用を説明する。
【0082】
作動流体から分離された凝縮水は、作動流体に押されることによって分離室42の内面に沿って溝52に流入する。分離流路50の下流部分44が溝52に接続されているので、凝縮水は、分離室42の内部の圧力及び重力によって溝52を伝わって下流部分44へと運ばれ、膨張タービン400の外部へと排出される。溝52の中を流れる凝縮水に作動流体が触れにくいので、主流F1に戻る前の作動流体に凝縮水が再混入しにくい。
【0083】
[4-3.効果等]
本実施の形態において、膨張タービン400は、分離流路50に流入した作動流体を作動流体の主流F1に合流させる戻り流路48をさらに備えていてもよい。
【0084】
溝52は、作動流体から分離された凝縮水が分離流路50の下流部分44に至るまでの経路において作動流体と再合流することを防止する。このことは、作動流体を主流F1に戻す場合に特に有効である。すなわち、膨張タービン400の下流に配置された構成要素の内壁面への着霜を更に抑制することができる。
【0085】
また、作動流体が戻り流路48を通じて主流F1に再合流する。戻り流路48によれば、冷熱を外部に破棄せずに済むので、膨張タービン400の効率が向上する。
【0086】
本実施の形態において、戻り流路48は、邪魔板45よりも下流において分離室42に向かって開口していてもよい。このような構成によれば、凝縮水が十分に取り除かれた作動流体を主流F1に戻すことができる。
【0087】
本実施の形態において、分離室42は、第1内面42p、第2内面42q、及び、第1内面42pに設けられた環状又は円弧状の溝52を有していてもよい。第1内面42p及び第2内面42qは、それぞれ、膨張タービン翼車10の回転軸Oの周方向に沿う面である。回転軸Oから第2内面42qまでの距離は、回転軸Oから第1内面42pまでの距離よりも短い。環状又は円弧状の溝52において、分離室42に分離流路50の下流部分44が接続されていてもよい。このような構成によれば、凝縮水が溝52に集まりやすい。凝縮水は、溝52に沿って流れ、分離流路50の下流部分44を通じて膨張タービン400の外部に排出される。
【0088】
(実施の形態5)
以下、図7A及び図7Bを用いて、実施の形態5を説明する。
【0089】
[5-1.構成]
図7Aは、実施の形態5における膨張タービン500の断面図である。図7Bは、実施の形態5における膨張タービン500のA-A線に沿った断面図である。図7Bに示すように、膨張タービン500は、分離室42に配置された隔壁54をさらに備えている。隔壁54は、第2内面42qから第1内面42pまで延びて分離室42を区切り、分離流路50の下流部分44に達している。隔壁54は、第2内面42qの接線方向に沿って延びている。隔壁54が設けられていると、分離流路50の下流部分44に向かう一方向流れが分離室42に形成される。一方向流れによって、凝縮水が下流部分44に導かれる。
【0090】
分離室42は、第2内面42qに設けられた環状又は円弧状の溝53をさらに有する。凝縮水は、溝53に沿って流れ、分離流路50の下流部分44を通じて膨張タービン500の外部に排出される。
【0091】
溝53から分離流路50の下流部分44に向かって隔壁54が延びている。つまり、隔壁54が溝53と下流部分44との橋渡しをしている。溝53の働きと隔壁54の働きとが相俟って、凝縮水が下流部分44に集まりやすい。
【0092】
分離室42は、実施の形態4で説明した溝52も有している。したがって、溝52の効果も得られる。ただし、溝52は省略されていてもよい。
【0093】
溝52と同様、溝53の深さ及び溝53の幅も特に限定されない。一例において、回転軸Oに垂直な方向に関する分離室42の最大寸法d1を基準として、溝53の深さd3は、(0.4×d1)≦d3≦(0.8×d1)を満たすように調整されていてもよい。回転軸Oに平行な方向に関する分離室42の最大寸法w1を基準として、溝53の幅w3は、(0.2×w1)≦w3≦(0.6×w1)を満たすように調整されていてもよい。溝53の深さは、回転軸Oに垂直な方向の溝53の深さを意味する。溝53の幅は、回転軸Oに平行な方向の溝53の幅を意味する。
【0094】
回転軸Oに平行な方向に関する溝53の中心位置は、回転軸Oに平行な方向に関する分離室42の中心位置に一致していてもよい。回転軸Oに平行な方向に関する溝53の中心位置は、回転軸Oに平行な方向に関する邪魔板45の中心位置に一致していてもよい。これにより、作動流体の圧力損失を抑制しつつ、作動流体から凝縮水を効率的に分離することができる。
【0095】
[5-2.動作]
以上のように構成された膨張タービン500について、以下その動作、作用を説明する。
【0096】
作動流体から分離された凝縮水は、作動流体に押されることによって分離室42の内面に沿って溝53に流入する。分離流路50の下流部分44が溝52に接続されているので、凝縮水は、分離室42の内部の圧力及び重力によって溝52を伝わって下流部分44へと運ばれ、膨張タービン500の外部へと排出される。溝52の中を流れる凝縮水に作動流体が触れにくい。
【0097】
同様に、分離室42の内周側の溝53にも凝縮水が流入する。分離室42の内部の圧力と外部との圧力差に加え、傾斜した邪魔板45によって惹起される膨張タービン翼車10の回転方向と逆向きの一方向流れによって、凝縮水が隔壁54まで流動する。凝縮水は、隔壁54を伝わり、分離流路50の下流部分44を経由し、膨張タービン500の外部へと排出される。
【0098】
[5-3.効果等]
本実施の形態において、膨張タービン500は、第2内面42qから第1内面42pまで延びて分離室42を区切り、分離流路50の下流部分44に達している隔壁54をさらに備えていてもよい。隔壁54が設けられていると、分離流路50の下流部分44に向かう一方向流れが分離室42に形成される。一方向流れによって、凝縮水が下流部分44に導かれる。
【0099】
本実施の形態において、分離室42は、第2内面42qに設けられた環状又は円弧状の溝53をさらに有していてもよい。凝縮水は、溝53に沿って流れ、分離流路50の下流部分44を通じて膨張タービン500の外部に排出される。
【0100】
(実施の形態6)
以下、図8を用いて、実施の形態6を説明する。
【0101】
[6-1.構成]
図8は、実施の形態6における冷凍装置600の構成図である。冷凍装置600は、回転機械700、第1熱交換器601及び第2熱交換器602を備えている。
【0102】
回転機械700は、膨張タービン400及び圧縮機101を有する。膨張タービン400は、実施の形態4で説明した膨張タービン400である。膨張タービン400に代えて、他の実施の形態の膨張タービン100,200,300又は500が使用されてもよい。圧縮機101は、例えば、遠心圧縮機である。回転機械700は、膨張タービン400で回収された動力が圧縮機101の動力の一部として消費されるように構成されている。
【0103】
第1熱交換器601は、他の流体によって冷媒(作動流体)を冷却する役割を担う。他の流体は、気体であってもよく、液体であってもよい。第2熱交換器602は、冷媒の冷熱を回収するための内部熱交換器である。第1熱交換器601及び第2熱交換器602としては、フィンチューブ式熱交換器、プレート式熱交換器、二重管式熱交換器、シェルアンドチューブ式熱交換器などが挙げられる。
【0104】
冷凍装置600の熱サイクルは、冷媒として空気を使用する空気冷凍サイクルである。冷凍装置600によって生成された低温の空気は、対象空間603に導かれる。対象空間603は、例えば、冷凍庫である。冷凍装置600は、航空機の客室用空調に使用されてもよい。空気のGWP(Global Warming Potential)はゼロなので、地球環境を保護する観点から、空気を冷媒として使用することは望ましい。また、冷媒として空気を使用すれば、冷凍装置600を開放型のシステムとして構築することが可能である。
【0105】
回転機械700、第1熱交換器601及び第2熱交換器602は、流路4aから4fによって互いに接続されている。流路4aは、圧縮機101の吐出口と第1熱交換器601の冷媒入口とを接続している。流路4bは、第1熱交換器601の冷媒出口と第2熱交換器602の高圧側入口とを接続している。流路4cは、第2熱交換器602の高圧側出口と膨張タービン400の吸入口とを接続している。流路4dは、膨張タービン400の吐出口と対象空間603とを接続している。流路4eは、対象空間603と第2熱交換器602の低圧側入口とを接続している。流路4fは、第2熱交換器602の低圧側出口と圧縮機101の吸入口とを接続している。流路4aから4fには、別の熱交換器、霜取り装置などの他の機器が配置されていてもよい。
【0106】
圧縮機101で圧縮された冷媒は、第1熱交換器601及び第2熱交換器602において冷却される。冷却された冷媒は、膨張タービン400において膨張する。これにより、冷媒の温度がさらに低下する。低温の冷媒は、対象空間603に供給されて所望の用途に使用される。対象空間603から排出された冷媒は、第2熱交換器602において加熱され、その後、圧縮機101に導入される。一例において、圧縮機101の吸入口における冷媒の温度は、20℃である。圧縮機101の吐出口における冷媒の温度は、85℃である。第1熱交換器601の冷媒出口における冷媒の温度は、40℃である。膨張タービン400の吸入口における冷媒の温度は、-30℃である。膨張タービン400の吐出口における冷媒の温度は、-70℃である。
【0107】
膨張タービン400の戻り流路48は、流路4dに接続されている。これにより、冷熱を外部に破棄せずに済むので、冷凍装置600の効率が向上する。膨張タービン400で作動流体から分離された凝縮水は、分離流路50の下流部分44を通じて、冷凍装置600の外部に排出される。
【0108】
[6-2.効果等]
本実施の形態の冷凍装置600は、膨張タービン400を備えている。膨張タービン400によれば、流路4d及び対象空間603への着霜を抑制することができる。着霜を抑制することによって、除霜のための冷凍装置のダウンタイムも削減でき、利便性が向上する。凝縮水を分離するための機構を省略又は簡略化できるので、膨張タービン400を用いた冷凍装置600の費用を削減できる。
【0109】
本実施の形態において、冷媒が空気であってもよい。地球環境を保護する観点から、空気を冷媒として使用することは望ましい。また、冷媒として空気を使用すれば、冷凍装置600を開放型のシステムとして構築することが可能である。
【0110】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1から6を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1から6で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0111】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0112】
分離流路50の入口41は、一定の流路断面積を有する直管に設けられていてもよい。作動流体が膨張タービン翼車10から吐出される際に旋回成分を有している場合には、流路断面積が一定であったとしても旋回成分は保存される。
【0113】
邪魔板45は、平板であってもよく、孔あき板であってもよい。この場合、分離室42に流入した作動流体が邪魔板45に衝突した際の圧力損失が減少する。
【0114】
邪魔板45は、回転軸Oに平行な方向において、複数の列で配置されていてもよい。このような構成によれば、凝縮水をより十分に捕集及び排出することができる。
【0115】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本開示の技術は、作動流体から作動流体以外の液体及び固体を分離するのに適している。そのため、本開示の技術は、排気ガスタービン過給機、ガスタービン機関、蒸気タービン発電機などの膨張タービン以外の流体機械にも適用可能である。
【符号の説明】
【0117】
4a,4b,4c,4d,4e,4f 流路
10 膨張タービン翼車
10p 下流端
11 回転方向
12 シャフト
20 タービンハウジング
21 タービンノズル
22 渦巻き室
30 タービンディフューザ
30a 内周面
30f 内部流路
40 流路部材
40a 内周面
40f 内部流路
40q 端面
41 入口
42 分離室
42p 第1内面
42q 第2内面
43 上流部分
44 下流部分
45 邪魔板
45p 主面
46 筒状体
46q 外周面
48 戻り流路
50 分離流路
52,53 溝
54 隔壁
100,200,300,400,500 膨張タービン
101 圧縮機
401,403 内側部品
402 外側部品
600 冷凍装置
601 第1熱交換器
602 第2熱交換器
603 対象空間
700 回転機械
O 回転軸
G すき間
F1 主流
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8