(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054930
(43)【公開日】2023-04-17
(54)【発明の名称】回転ガントリーの整線装置、回転ガントリーの整線方法および粒子線治療システム
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20230410BHJP
B65H 75/38 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
A61N5/10 H
B65H75/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163944
(22)【出願日】2021-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富田 和仁
(72)【発明者】
【氏名】湯口 康弘
(72)【発明者】
【氏名】高真 新一
(72)【発明者】
【氏名】北川 希代彦
(72)【発明者】
【氏名】信岡 慶重
(72)【発明者】
【氏名】石渡 道孝
【テーマコード(参考)】
3F068
4C082
【Fターム(参考)】
3F068AA05
3F068AA12
3F068BA12
3F068CA04
3F068DA05
3F068EA01
3F068FA06
3F068HA03
3F068HA08
3F068JA01
3F068JA02
4C082AA01
4C082AC04
4C082AE01
4C082AG52
4C082AR05
4C082AT01
(57)【要約】
【課題】ケーブルの乱巻き状態を抑制しつつ、ケーブルの摩耗を抑制することができる回転ガントリーの整線技術を提供する。
【解決手段】回転ガントリーの整線装置60は、粒子線ビーム7を照射する照射ノズル13と照射ノズル13に粒子線ビーム7を輸送する輸送部14とを支持して水平方向を向く水平軸9を中心に回転する回転ガントリー5と、一端が回転ガントリー5に接続されて他端が静止している装置30に接続されている複数のケーブル22と、回転ガントリー5に設けられ、ケーブル22の巻き取りまたは繰り出しを行うスプール23と、スプール23に近接する位置に静止した状態で設けられ、複数のケーブル22を仕切り、外周面にケーブル22が接触する円筒形状を成す回転可能な複数の回転体64を有する整線ユニット61を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子線ビームを照射する照射ノズルと前記照射ノズルに前記粒子線ビームを輸送する輸送部とを支持して水平方向を向く水平軸を中心に回転する回転ガントリーと、
一端が前記回転ガントリーに接続されて他端が静止している装置に接続されている複数のケーブルと、
前記回転ガントリーに設けられ、前記ケーブルの巻き取りまたは繰り出しを行うスプールと、
前記スプールに近接する位置に静止した状態で設けられ、複数の前記ケーブルを仕切り、外周面に前記ケーブルが接触する円筒形状を成す回転可能な複数の回転体を有する整線ユニットと、
を備える、
回転ガントリーの整線装置。
【請求項2】
前記回転体は、前記回転ガントリーの径方向と軸方向の少なくともいずれかの方向に並ぶ複数の前記ケーブルを仕切る、
請求項1に記載の回転ガントリーの整線装置。
【請求項3】
前記整線ユニットは、前記ケーブルが前記スプールから垂れ下がる特定範囲に配置されており、
前記スプールから垂れ下がる前記ケーブルが、前記ケーブルが延びる方向に対して交差する方向に並べられた前記回転体の間を垂直方向に通過する、
請求項1または請求項2に記載の回転ガントリーの整線装置。
【請求項4】
前記整線ユニットは、前記ケーブルが前記スプールから垂れ下がる特定範囲から水平方向に変位して配置されており、
前記スプールから垂れ下がる前記ケーブルが、前記ケーブルが延びる方向に対して交差する方向に並べられた前記回転体の間を垂直方向に通過し、かつ前記巻き取りまたは前記繰り出しのいずれの場合も前記回転体に対して一方向から前記ケーブルが接触する、
請求項1または請求項2に記載の回転ガントリーの整線装置。
【請求項5】
前記回転体は、前記外周面に前記ケーブルが接触する凹部が形成されている、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の回転ガントリーの整線装置。
【請求項6】
前記整線ユニットは、前記回転ガントリーの径方向に前記ケーブルを仕切る前記回転体が回転可能に支持されるフレームを有する、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の回転ガントリーの整線装置。
【請求項7】
前記整線ユニットは、それぞれのマス目に前記ケーブルが個別に通され、前記マス目の少なくとも1辺に前記回転体が回転可能に支持される格子状のフレームを有する、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の回転ガントリーの整線装置。
【請求項8】
前記フレームは、水平方向に対して傾いた状態で設けられており、
前記回転ガントリーの径方向に並ぶ複数の前記ケーブルを仕切る複数の前記回転体が設けられる高さ位置が異なっている、
請求項6または請求項7に記載の回転ガントリーの整線装置。
【請求項9】
複数の前記フレームは、前記ケーブルが延びる方向に積層して設けられている、
請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の回転ガントリーの整線装置。
【請求項10】
少なくとも1段の前記フレームは、前記ケーブルが延びる方向に対して交差する方向に移動可能となっている、
請求項9に記載の回転ガントリーの整線装置。
【請求項11】
上下に積層された少なくとも2段の前記フレームが設けられ、上段の前記フレームが固定され、下段の前記フレームが移動可能となっている、
請求項9または請求項10に記載の回転ガントリーの整線装置。
【請求項12】
一方の前記フレームに前記回転ガントリーの径方向に前記ケーブルを仕切る前記回転体が設けられており、
他方の前記フレームに前記回転ガントリーの軸方向に前記ケーブルを仕切る前記回転体が設けられている、
請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の回転ガントリーの整線装置。
【請求項13】
前記輸送部は、前記粒子線ビームを輸送する経路を形成する磁場を発生させる超電導電磁石を備え、
少なくとも1本の前記ケーブルは、前記超電導電磁石に冷却材を供給するフレキシブルホースである、
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の回転ガントリーの整線装置。
【請求項14】
粒子線ビームを照射する照射ノズルと前記照射ノズルに前記粒子線ビームを輸送する輸送部とを支持する回転ガントリーが、水平方向を向く水平軸を中心に回転するステップと、
前記回転ガントリーに設けられたスプールが、一端が前記回転ガントリーに接続されて他端が静止している装置に接続されている複数のケーブルの巻き取りまたは繰り出しを行うステップと、
前記スプールに近接する位置に静止した状態で設けられ、外周面に前記ケーブルが接触する円筒形状を成す回転可能な複数の回転体を有する整線ユニットが、複数の前記ケーブルを仕切るステップと、
を含む、
回転ガントリーの整線方法。
【請求項15】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の前記回転ガントリーの整線装置と、
前記輸送部により前記水平軸に対して直交する方向に導かれる前記粒子線ビームの照射位置に患者を移動して位置合わせを行う治療台と、
前記粒子線ビームを生成するビーム発生器と、
前記粒子線ビームを加速する加速器と、
を備える、
粒子線治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転ガントリーの整線技術に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子線治療システムにおいて、回転ガントリーの治療台を採用すると、患者が静止した状態で粒子線を照射できるため、固定治療台に比べて患者の負担が軽減される。しかし、回転ガントリーには多くの機器が組み込まれ、これらの機器は回転ガントリーと一緒に回転する。そこで、電源、制御、通信のために必要な多くのケーブルを、回転ガントリーと静止している外部の機器との間で接続する必要がある。回転ガントリーでは、その回転の度にスプールに対するケーブルの巻き取りまたは繰り出しが行われる。
【0003】
しかし、多くのケーブルが設けられていると、乱巻き状態になる場合がある。そこで、ケーブルの乱巻き状態を未然に防ぐ技術が知られている。例えば、平板または棒材のセパレータで複数のケーブルを個別に仕切るものがある。しかし、セパレータが平板または棒材などの剛性を有する部材であると、これらのセパレータにケーブルが擦れてしまい、ケーブルが摩耗してしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ケーブルの乱巻き状態を抑制しつつ、ケーブルの摩耗を抑制することができる回転ガントリーの整線技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る回転ガントリーの整線装置は、粒子線ビームを照射する照射ノズルと前記照射ノズルに前記粒子線ビームを輸送する輸送部とを支持して水平方向を向く水平軸を中心に回転する回転ガントリーと、一端が前記回転ガントリーに接続されて他端が静止している装置に接続されている複数のケーブルと、前記回転ガントリーに設けられ、前記ケーブルの巻き取りまたは繰り出しを行うスプールと、前記スプールに近接する位置に静止した状態で設けられ、複数の前記ケーブルを仕切り、外周面に前記ケーブルが接触する円筒形状を成す回転可能な複数の回転体を有する整線ユニットと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態により、ケーブルの乱巻き状態を抑制しつつ、ケーブルの摩耗を抑制することができる回転ガントリーの整線技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の粒子線治療システムの全体構成を示す平面図。
【
図4】
図3のIV-IV断面に対応する回転ガントリーの背面図。
【
図8】回転ガントリーの整線方法を示すフローチャート。
【
図10】第2実施形態の整線ユニットを示す平面図。
【
図11】第2実施形態の整線ユニットを示す背面図。
【
図12】第3実施形態のケーブル巻き取り時の整線ユニットを示す背面図。
【
図13】第3実施形態のケーブル繰り出し時の整線ユニットを示す背面図。
【
図14】第4実施形態の整線ユニットを示す平面図。
【
図17】第5実施形態の整線ユニットを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら、粒子線治療システムおよび回転ガントリーの実施形態について詳細に説明する。まず、第1実施形態について
図1から
図8を用いて説明する。なお、
図2、
図3、
図5の紙面左側を回転ガントリーの正面側(前方側)とし、紙面右側を回転ガントリーの背面側(後方側)として説明する。図面では、直交座標系において、回転ガントリーの軸方向をZ方向とした場合に、これに直交する垂直方向(上下方向)をY方向とし、これらに直交する水平方向をX方向として図示している。なお、X方向およびY方向を回転ガントリーの径方向と称する場合がある。さらに、回転ガントリーの外周面に沿って軸回りに回転する方向を周方向と称する場合がある。
【0010】
図1の符号1は、本実施形態の粒子線治療システムである。この粒子線治療システム1では、炭素イオンなどの粒子線ビームを被検体としての患者の病巣組織(がん)に照射して治療を行う。
【0011】
粒子線治療システム1を用いた放射線治療技術は、重粒子線がん治療技術などとも称される。この技術は、がん病巣(患部)を炭素イオンがピンポイントで狙い撃ちし、がん病巣にダメージを与えながら、正常細胞へのダメージを最小限に抑えることが可能とされる。なお、粒子線とは、放射線のなかでも電子より重いものと定義され、陽子線、重粒子線などが含まれる。このうち重粒子線は、ヘリウム原子より重いものと定義される。
【0012】
重粒子線を用いるがん治療では、従来のエックス線、ガンマ線、陽子線を用いたがん治療と比較してがん病巣を殺傷する能力が高く、患者の体の表面では放射線量が弱く、がん病巣において放射線量がピークになる特性を有している。そのため、照射回数と副作用を少なくすることができ、治療期間をより短くすることができる。
【0013】
図1に示すように、粒子線治療システム1は、ビーム発生器2と円形加速器3とビーム輸送ライン4と回転ガントリー5とを備える。
【0014】
ビーム発生器2は、荷電粒子である炭素イオンのイオン源を有し、この炭素イオンによって粒子線ビーム7(
図2)を生成する。円形加速器3は、平面視でリング状を成し、ビーム発生器2で生成された粒子線ビーム7を加速する。ビーム輸送ライン4は、円形加速器3で加速された粒子線ビーム7を回転ガントリー5に輸送する。回転ガントリー5には、粒子線ビーム7が照射される患者8(
図2)が配置される。
【0015】
この粒子線治療システム1では、まず、ビーム発生器2で生成された炭素イオンの粒子線ビーム7が、ビーム発生器2から円形加速器3に入射される。この粒子線ビーム7は、円形加速器3を約百万回周回する間に光速の約70%まで加速される。そして、この粒子線ビーム7がビーム輸送ライン4を介して回転ガントリー5まで導かれる。
【0016】
ビーム発生器2と円形加速器3とビーム輸送ライン4は、内部が真空にされる真空ダクト6(ビームパイプ)を備える。この真空ダクト6の内部を粒子線ビーム7が進行する。ビーム発生器2と円形加速器3とビーム輸送ライン4が有する真空ダクト6が一体となり、粒子線ビーム7を回転ガントリー5まで導く輸送経路が形成される。つまり、真空ダクト6は、粒子線ビーム7を通過させるために、充分な真空度を有する密閉された連続空間である。
【0017】
図2の断面図に示すように、回転ガントリー5は、円筒形状を成す大型の装置である。この回転ガントリー5は、その円筒の軸9が水平方向を向くように設置される。この水平軸9を中心として回転ガントリー5が回転可能となっている。
【0018】
回転ガントリー5は、粒子線治療システム1が設けられている治療施設を構成する建屋の躯体10に支持されている。例えば、この回転ガントリー5の本体部の前部と後部には、エンドリング11が固定されている。これらのエンドリング11の下方位置には、エンドリング11を回転可能な状態で支持し、かつ駆動モータを備える回転駆動部12が設けられている。これらの回転駆動部12は、躯体10に支持されている。回転駆動部12の駆動力は、エンドリング11を介して回転ガントリー5に与えられ、回転ガントリー5が水平軸9周りに回転される。
【0019】
回転ガントリー5には、ビーム輸送ライン4(
図1)から延びる真空ダクト6が設けられている。真空ダクト6は、まず、回転ガントリー5の後方側からその水平軸9に沿って内部に導かれる。そして、真空ダクト6は、回転ガントリー5の外周面よりも外側に向けて一旦延びた後、再び回転ガントリー5の内側に向けて延びる。この真空ダクト6の先端部は、患者8に近接する位置まで延びる。
【0020】
なお、特に図示はしないが、真空ダクト6において、回転ガントリー5の水平軸9に沿う部分には、所定の回転機構が設けられている。真空ダクト6は、この回転機構よりも外側の部分が静止した状態であり、この回転機構よりも内側の部分が回転ガントリー5の回転とともに回転するようになっている。
【0021】
また、回転ガントリー5には、粒子線ビーム7を患者8に向けて照射する照射ノズル13と、この照射ノズル13に粒子線ビーム7を輸送する輸送部14とが設けられている。つまり、照射ノズル13と輸送部14は、回転ガントリー5に支持されている。
【0022】
さらに、輸送部14は、粒子線ビーム7を輸送する経路を形成する磁場を発生させる超電導電磁石15を備えている。これらの超電導電磁石15は、例えば、真空ダクト6に沿って粒子線ビーム7の進行方向を変更する偏向電磁石、または、粒子線ビーム7の収束および発散を制御する四極電磁石などである。
【0023】
照射ノズル13は、真空ダクト6の先端部に設けられ、輸送部14により導かれた粒子線ビーム7を患者8に向けて照射する。この照射ノズル13は、回転ガントリー5の内周面に固定されている。なお、粒子線ビーム7は、照射ノズル13から水平軸9に対して直交する方向に照射される。
【0024】
回転ガントリー5の内部には、粒子線治療を行う治療空間16が設けられる。患者8は、この治療空間16に設けられた治療台17に載置される。この治療台17は、患者8を載置した状態で移動可能となっている。この治療台17の移動によって患者8を粒子線ビーム7の照射位置に移動させて位置合わせを行うことができる。そのため、患者8の病巣組織など、適切な部位に粒子線ビーム7を照射することができる。
【0025】
患者8は水平軸9の位置に配置され、回転ガントリー5を回転させることで、静止している患者8を中心として照射ノズル13を回転させることができる。例えば、患者8(水平軸9)を中心として照射ノズル13を、背面視で時計回り(右回り)または反時計回り(左回り)に185度ずつ回転させることができる。そして、患者8の周囲のいずれの方向からも粒子線ビーム7を照射させることができる。つまり、回転ガントリー5は、ビーム輸送ライン4により導かれた粒子線ビーム7の患者8に対する照射方向を変更可能な装置である。そのため、患者8の負担を軽減しつつ、適切な方向から粒子線ビーム7をより高い精度で患部に照射することができる。
【0026】
粒子線ビーム7は、患者8の体内を通過する際に運動エネルギーを失って速度が低下するとともに、速度の二乗にほぼ反比例する抵抗を受け、ある一定の速度まで低下すると急激に停止する。この粒子線ビーム7の停止点はブラッグピークと呼ばれ、高エネルギーが放出される。粒子線治療システム1は、このブラッグピークを患者8の病巣組織(患部)の位置に合わせることにより、正常組織のダメージを抑えつつ、病巣組織のみを死滅させることができる。
【0027】
回転ガントリー5の内部に設けられた治療空間16は、回転ガントリー5の正面側にある治療室18と一体を成すように形成されている。なお、治療台17は、静止している治療室18の床19に固定されている。つまり、回転ガントリー5および照射ノズル13が回転されても、治療台17の位置は変化しないようになっている。
【0028】
回転ガントリー5の外周面において、輸送部14が設けられた部分の反対側には、カウンターウエイト20が固定されている。このカウンターウエイト20は、回転ガントリー5と中心として輸送部14とのバランスをとるために設けられている。つまり、カウンターウエイト20の重量は、輸送部14の重量に対応して設定されている。また、回転ガントリー5の下方位置には、躯体10に凹状に形成され、回転ガントリー5の回転とともに、カウンターウエイト20が通過可能なウエイトピット21が設けられている。
【0029】
さらに、回転ガントリー5には、外部から複数のケーブル22が導かれている。これらのケーブル22は、例えば、給電ケーブル、信号線、冷却材用フレキシブルホースなどであり、回転ガントリー5に設けられた所定の機器に対して電力を供給したり、制御信号を伝達したりするために設けられている。これらのケーブル22には、輸送部14が有する超電導電磁石15に冷却材を供給するフレキシブルホースが含まれている。
【0030】
回転ガントリー5の後部には、回転ガントリー5の回転とともに、ケーブル22の巻き取りまたは繰り出しを行うスプール23が設けられている。なお、スプール23の軸は、回転ガントリー5の水平軸9と一致している。
【0031】
スプール23の下方位置には、躯体10に凹状に形成され、スプール23から垂れ下がるケーブル22を配置可能なケーブルピット24が設けられている。ケーブルピット24のX方向の幅寸法は、スプール23の直径よりも大きくなるように設定される。
【0032】
図3の断面図に示すように、スプール23は、回転ガントリー5の後部から後方に向かって突出して設けられている。このスプール23は、円筒形状を成す部分であり、回転ガントリー5の本体部の直径よりも小径を成すように形成されている。このスプール23は、円盤状を成す1枚のフランジ25と、円盤状を成す複数のツバリング26と、ケーブル22を保持する凹状を成す複数のレーン27(
図5)とを備える。
【0033】
フランジ25は、スプール23の後端部に設けられている。複数のツバリング26は、フランジ25と回転ガントリー5との間で軸方向(Z方向)に並んで配置されている。これらのツバリング26は、フランジ25の直径よりも小径を成すように形成されている。また、最もフランジ25に近接している後側のツバリング26は、フランジ25から離間された位置に設けられている。複数のレーン27(
図5)は、それぞれのツバリング26の間に形成されている。
【0034】
図5の断面図に示すように、それぞれのレーン27には、複数のケーブル22が収容される。例えば、1つのレーン27に対して、2~3本のケーブル22が収容されている。なお、1つのレーン27に対して、4本以上のケーブル22が収容されても良い。
【0035】
スプール23の周方向にケーブル22が巻き回された場合には、ツバリング26およびレーン27の配置に合わせて、複数のケーブル22が、スプール23の軸方向(Z方向)に並んで配置されるとともに、スプール23の径方向(X方向およびY方向)に並んで配置される。また、スプール23からケーブル22が垂れ下がる場合には、複数のケーブル22が、スプール23の軸方向(Z方向)に並んで配置されるとともに、水平方向(X方向)に並んで配置される(
図6)。
【0036】
なお、それぞれのレーン27の幅は、収容されるケーブル22の本数または太さに応じて、それぞれ異なっていても良い。また、1つのレーン27に対して、種類または太さが異なる複数のケーブル22が収容されても良い。
【0037】
それぞれのツバリング26の周面28において、その両角部が切り欠かれて面取部29(ベベル)が形成されている。つまり、ツバリング26の周縁に面取りされた面取部29が形成されている。このようにすれば、ケーブル22がレーン27に収容されるときに、ケーブル22がツバリング26に引っ掛かり難くなり、ツバリング26への引っ掛かりによって生じるケーブル22への摩擦または張力を低減させることができ、乱巻きを抑制することができる。
【0038】
例えば、面取部29は、ツバリング26の突出方向に対して約45°の傾きを有する傾斜面となっている。これらの面取部29が設けられることで、レーン27の間口が広がるようになり、ケーブル22がスムーズにレーン27に収容されるようになる。
【0039】
なお、面取部29が設けられる場合でも、ツバリング26の周面28の一部は残されている。例えば、ツバリング26の先端の周面28が残されている。このようにすれば、仮に、ケーブル22がツバリング26に引っ掛かった場合でも、ケーブル22が切断されたり、ケーブル22が摩耗したりすることを抑制できる。
【0040】
図4に示すように、それぞれのケーブル22は、一端が回転ガントリー5のスプール23に接続されて他端が静止している固定装置30に接続されている。固定装置30は、例えば、躯体10に固定されている。複数のケーブル22は、例えば、電力を供給する電力線、制御信号を伝達する信号線、冷却材を供給するフレキシブルホースなどで構成されている。固定装置30は、例えば、電源、ターミナルブロック、冷却材供給用ポンプなどで構成されている。なお、
図4は回転ガントリー5の背面図であるが、理解を助けるために、回転ガントリー5の本体部、回転駆動部12、輸送部14などの図示を省略している。
【0041】
ケーブル22の一端は、スプール23に形成された貫通部31を介して回転ガントリー5の内部に導入される。そして、ケーブル22は、回転ガントリー5に設けられた超電導電磁石15(
図2)などの機器に接続される。なお、ケーブル22の一端は、貫通部31の部分に固定されている。それぞれのケーブル22は、固定された貫通部31の部分からスプール23の外周に沿って周方向に巻き回される。
【0042】
本実施形態では、ケーブル22としてフレキシブルホースを例示して説明する。フレキシブルホースは、内部が中空であり(
図5)、液体ヘリウムまたは液体窒素などの冷却材を超電導電磁石15(
図2)に供給するために設けられている。このフレキシブルホースは、金属製のワイヤーが編み込まれて耐圧性を高めた耐圧ホースとなっており、所定の圧力で冷却材を供給することができる。
【0043】
図3および
図4に示すように、複数のケーブル22は、第1群G1と第2群G2とに分けられている。第1群G1と第2群G2とは、ケーブル22の種類毎に分けても良いし、ケーブル22の接続先となる機器毎に分けても良い。これに合わせて、第1群G1の複数のケーブル22が巻き回される複数のツバリング26と、第2群G2の複数のケーブル22が巻き回される複数のツバリング26とが設けられている。
【0044】
第1群G1のケーブル22と第2群G2のケーブル22とは、スプール23に巻き回される方向が異なっている。例えば、背面視において、回転ガントリー5が反時計回りに回転した場合に、第1群G1のケーブル22がスプール23に巻き取られ、第2群G2のケーブル22がスプール23から繰り出される。一方、回転ガントリー5が時計回りに回転した場合に、第1群G1のケーブル22がスプール23から繰り出され、第2群G2のケーブル22がスプール23に巻き取られる。
【0045】
なお、
図4では、理解を助けるために、第1群G1のケーブル22のみを図示し、第2群G2のケーブル22の図示を省略している。実際の背面視では、スプール23から垂れ下がる第1群G1のケーブル22と第2群G2のケーブル22とがケーブルピット24で交差して見える。
【0046】
本実施形態の粒子線治療システム1には、回転ガントリー5の整線装置60が設けられている。この整線装置60は、整線ユニット61を備える。この整線ユニット61を複数のケーブル22が通過する。そして、整線装置60は、複数のケーブル22を整線し、ケーブル22の乱巻き状態を抑制しつつ、ケーブル22の摩耗を抑制するために設けられている。
【0047】
整線ユニット61は、第1群G1のケーブル22を整線するためのものと、第2群G2のケーブル22を整線するためのものとが設けられている。なお、
図4では、理解を助けるために、第1群G1の整線ユニット61のみを図示し、第2群G2の整線ユニット61の図示を省略している。整線ユニット61は、第1群G1のものと第2群G2のものとで同一構成であり、回転ガントリー5を中心として左右対称の配置となっている。
【0048】
また、
図4では、理解を助けるために、整線ユニット61の横幅寸法を誇張して図示している。しかし、実際の整線ユニット61は、
図4で図示したものよりも小型の装置となっている。この整線ユニット61は、少なくとも複数のケーブル22が通過可能な横幅寸法を有していれば良い。整線ユニット61の横幅寸法は、通過するケーブル22の太さおよび本数に応じて適宜設定される。
【0049】
ケーブルピット24が形成されている躯体10には、ケーブルピット24の底面から上方に延びるユニット用架台62が固定されている。例えば、1つの整線ユニット61に対してX方向に離間された左右一対のユニット用架台62が設けられる。これらのユニット用架台62の上端近傍に整線ユニット61が支持される。第1実施形態では、整線ユニット61の連結部63(
図6)がユニット用架台62に固定されている。つまり、この整線ユニット61は、スプール23に近接する位置に静止した状態で設けられている。
【0050】
また、整線ユニット61は、水平方向に対して傾いた状態で設けられている。例えば、整線ユニット61の一方の連結部63が他方の連結部63よりも高くなるようにユニット用架台62に固定されている。第1実施形態では、整線ユニット61が、スプール23の外周面において、ケーブル22が垂れ下がる位置からスプール23の中心の直下の位置に亘って設けられている。そして、整線ユニット61は、スプール23の中心の直下の位置に近い方の端部が反対側の端部よりも低くなるように傾いている。
【0051】
図6に示すように、整線ユニット61は、複数の回転体64とフレーム65とを有する。回転体64は、円筒形状を成す部材である。これらの回転体64は、ケーブル22を案内するためのガイド車輪を構成する。これらの回転体64がフレーム65に対して回転可能な状態で支持される。つまり、これらの回転体64は、複数のケーブル22を仕切り、外周面にケーブル22が接触し、ケーブル22の移動に応じて回転可能な部材である。
【0052】
回転体64は、回転ガントリー5の径方向および軸方向に並ぶ複数のケーブル22を仕切る。このようにすれば、ケーブル22が回転ガントリー5の径方向および軸方向に仕切られるため、乱巻き状態を充分に抑制することができる。なお、回転体64は、回転ガントリー5の径方向と軸方向の少なくともいずれかの方向に並ぶ複数のケーブル22を仕切る態様であれば良い。
【0053】
フレーム65は、格子状を成す部材である。例えば、フレーム65には、回転体64を回転可能に支持する棒状の複数の軸部66,67が設けられている。フレーム65には、回転ガントリー5の軸方向(Z方向)に延び、かつ径方向(X方向)に並ぶ複数の軸部66と、回転ガントリー5の径方向(X方向)に延び、かつ軸方向(Z方向)に並ぶ複数の軸部67とが設けられている。これらの軸部66,67が互いに直角に交差することで、複数のマス目68が形成されている。
【0054】
それぞれのマス目68には、ケーブル22が個別に通される。1つのマス目68には、1本のケーブル22が通される。また、マス目68の4辺のそれぞれに対応する軸部66,67には、回転体64が回転可能な状態で支持される。1本のケーブル22の外周面には、4つの回転体64が接触可能となっている。このようにすれば、マス目68により複数のケーブル22が分けられるようになり、回転体64によりケーブル22を摺動させることができる。そして、ケーブル22が仕切られ、意図しないケーブル22同士の接触が抑制されるため、乱巻き状態となることを充分に抑制することができる。
【0055】
つまり、整線ユニット61は、回転ガントリー5の径方向(X方向)にケーブル22を仕切る回転体64が回転可能に支持されるフレーム65(軸部66,67)を有している。このようにすれば、フレーム65により複数のケーブル22が径方向に分けられるようになり、回転体64によりケーブル22を摺動させつつ、乱巻き状態を充分に抑制することができる。
【0056】
図4に示すように、本実施形態では、ケーブル22がスプール23から垂れ下がる特定範囲Rが予め設定される。例えば、スプール23におけるX方向の端部からケーブル22が垂れ下がる。この部分を含む所定の範囲が特定範囲Rとして設定される。この特定範囲Rは、ケーブル22が自重によりほぼ垂直を成して垂れ下がる範囲である。整線ユニット61は、この特定範囲Rに配置されている。
【0057】
図7に示すように、スプール23から垂れ下がるケーブル22が、ケーブル22が延びる方向に対して交差する方向(X方向およびZ方向)に並べられた回転体64の間を垂直方向に通過する。このようにすれば、スプール23から垂れ下がる複数のケーブル22を仕切ることができる。
【0058】
また、フレーム65は、水平方向に対して傾いた状態で設けられている。そして、背面視において、それぞれの回転体64が設けられる高さ位置が異なっている。つまり、回転ガントリー5の径方向に並ぶ複数のケーブル22を仕切る複数の回転体64が設けられる高さ位置が異なっている。このようにすれば、ケーブル22がスムーズに回転体64に接触しながら整線ユニット61を通過するようになる。
【0059】
次に、整線装置60を用いて実行される回転ガントリー5の整線方法について
図8のフローチャートを用いて説明する。なお、前述の図面を適宜参照する。
【0060】
まず、ステップS1において、粒子線ビーム7を照射する照射ノズル13と、この照射ノズル13に粒子線ビーム7を輸送する輸送部14とを支持する回転ガントリー5が、水平方向を向く水平軸9を中心に回転する。
【0061】
次のステップS2において、回転ガントリー5に設けられたスプール23が、一端が回転ガントリー5に接続されて他端が静止している固定装置30に接続されている複数のケーブル22の巻き取りまたは繰り出しを行う。
【0062】
次のステップS3において、スプール23に近接する位置に静止した状態で設けられ、外周面にケーブル22が接触する円筒形状を成す回転可能な複数の回転体64を有する整線ユニット61が、複数のケーブル22を仕切る。
【0063】
そして、整線方法を終了する。この整線方法は、回転ガントリー5が動作中であるときに、常時実行され、繰り返される。なお、以上のステップは、整線方法に含まれる少なくとも一部であり、他のステップが整線方法に含まれていても良い。
【0064】
なお、第1実施形態のフローチャートにおいて、各ステップが直列に実行される形態を例示しているが、必ずしも各ステップの前後関係が固定されるものでなく、一部のステップの前後関係が入れ替わっても良い。また、一部のステップが他のステップと並列に実行されても良い。
【0065】
第1実施形態では、整線装置60で、ケーブル22の乱巻き状態を抑制しつつ、ケーブル22の摩耗を抑制することができる。例えば、ケーブル22として、冷却材を供給するために中空なフレキシブルホースを用いた場合において、このフレキシブルホースが乱巻きで捩じれてしまうと、超電導電磁石15に対する冷却材の供給が滞ることなる。そこで、本実施形態では、フレキシブルホースが乱巻き状態となることを抑制し、超電導電磁石15に対する冷却材の供給が滞ることを防ぐようにしている。
【0066】
なお、第1実施形態では、整線ユニット61が、スプール23の中心の直下の位置に近い方の端部が反対側の端部よりも低くなるように傾いているが、その他の態様であっても良い。例えば、整線ユニット61が、スプール23の中心の直下の位置に近い方の端部が反対側の端部よりも高くなるように傾いていても良い。
【0067】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について
図9から
図11を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0068】
図9に示すように、第2実施形態の整線装置60Aは、上下2段の整線ユニット61A,61Bを備える。それぞれの整線ユニット61A,61Bの連結部63がユニット用架台62に固定されている。つまり、両方の整線ユニット61A,61Bが、スプール23に近接する位置に静止した状態で設けられている。なお、両方の整線ユニット61A,61Bの傾きは同一にしてある。
【0069】
図10および
図11に示すように、それぞれの整線ユニット61A,61Bを構成するフレーム65A,65Bであって、上下2段(複数)のフレーム65A,65Bが、ケーブル22が延びる方向に積層して設けられている。これらのフレーム65A,65Bの離間幅は、ケーブル22の種類、太さ、硬さ(剛性)に応じて適宜設定される。例えば、硬くて曲がり難いケーブル22を案内する場合は、フレーム65A,65B同士の離間幅が大きくなるように設定し、整線ユニット61A,61Bの部分でケーブル22が大きく曲がらないようにする。
【0070】
また、上段のフレーム65Aの直下に下段のフレーム65Bが設けられている。なお、下段のフレーム65Bを上段のフレーム65Aの直下の位置から水平方向にずらして配置しても良い。例えば、ケーブル22が曲がる方向に対して、下段のフレーム65Bを配置しても良い。
【0071】
上段のフレーム65Aには、軸方向(Z方向)に延び、かつ径方向(X方向)に並ぶ複数の軸部66が設けられている。これらの軸部66に回転体64Aが回転可能に支持される。一方、下段のフレーム65Bには、径方向(X方向)に延び、かつ軸方向(Z方向)に並ぶ複数の軸部67が設けられている。これらの軸部67に回転体64Bが回転可能に支持される。
【0072】
これらのフレーム65A,65Bが上下に積層されることで、平面視で軸部66,67同士が格子状を成す配置となる。そして、軸部66,67に支持された回転体64A,64Bによりケーブル22が軸方向および径方向に仕切られる。1本のケーブル22の外周面には、4つの回転体64A,64Bが接触可能となっている。
【0073】
第2実施形態では、一方の上段のフレーム65Aに回転ガントリー5の径方向(X方向)にケーブル22を仕切る回転体64Aが設けられており、他方の下段のフレーム65Bに回転ガントリー5の軸方向(Z方向)にケーブル22を仕切る回転体64Bが設けられている。このようにすれば、複数の回転体64A,64Bをコンパクトにまとめた構成にし、整線ユニット61A,61Bの縦横寸法を小さくすることができる。
【0074】
また、上下2段の整線ユニット61A,61Bが設けられているため、整線ユニット61A,61Bに案内される部分でケーブル22が急激に曲げられることが無く、ケーブル22の摩耗を抑制することができる。
【0075】
なお、第2実施形態では、上下2段の整線ユニット61A,61Bが設けられているが、その他の態様でも良い。例えば、3段以上の整線ユニットが積層して配置されていても良い。
【0076】
なお、第2実施形態では、上段と下段の整線ユニット61A,61Bの傾きは同一にしてあるが、その他の態様でも良い。例えば、上段と下段の整線ユニット61A,61Bの傾きを異ならせても良い。特に、背面視において、上段と下段の整線ユニット61A,61Bがそれぞれケーブル22の延びる方向に対して直角に交差するように傾いていても良い。
【0077】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について
図12から
図13を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0078】
図12に示すように、第3実施形態の整線装置60Bは、上下2段の整線ユニット61A,61Bを備える。上段の整線ユニット61Aは、ユニット用架台62に固定されている。一方、下段の整線ユニット61Bは、ユニット用架台62に対して移動可能な状態で支持されている。なお、それぞれの整線ユニット61A,61Bにおいて、回転体64A,64Bの配置態様は、前述の第2実施形態と同様である(例えば、
図10および
図11参照)。
【0079】
例えば、上段のフレーム65Aの連結部63は、ユニット用架台62に固定されているが、下段のフレーム65Bの連結部63は、ユニット用架台62に形成されたスリット孔69を介して支持されている。スリット孔69は、横方向に延び、かつ下段のフレーム65Bを横方向に案内するガイド部となっている。
【0080】
スリット孔69は、水平方向に対して傾いた状態で設けられている。この傾きは、整線ユニット61A,61Bの傾きと同一である。例えば、下段のフレーム65Bに負荷が加わっていない場合には、下段のフレーム65Bが、自重で斜め下方(
図12では左側)に移動されている。
【0081】
そして、
図13に示すように、ケーブル22がスプール23(
図4)から繰り出される場合には、下段のフレーム65Bが、ケーブル22が延びる方向に従って斜め上方(
図13では右側)に移動される。例えば、ケーブル22がスプール23から繰り出されるときには、ケーブル22がスプール23から離れる方向に膨出されるように曲がるため、その曲がり具合に従って下段のフレーム65Bが移動する。
【0082】
一方、
図12に示すように、ケーブル22がスプール23(
図4)に巻き取られる場合には、下段のフレーム65Bが、ケーブル22が延びる方向に従って斜め下方(
図12では左側)に移動される。例えば、ケーブル22がスプール23から巻き取られるときには、ケーブル22がスプール23に引き付けられる方向に曲がるため、その曲がり具合に従って下段のフレーム65Bが移動する。
【0083】
第3実施形態では、上段のフレーム65Aが固定され、下段のフレーム65Bが移動可能となっている。そのため、ケーブル22が延びる方向に対して2段のフレーム65A,65Bの位置関係が調整されるようになり、それぞれのフレーム65A,65Bがケーブル22に対して適したな位置に移動される。そして、回転体64A,64B(
図10および
図11)の間を、適切な角度でケーブル22が通過するようになる。特に、下段のフレーム65Bは、ケーブル22が延びる方向に対して交差する方向に移動可能となっている。このようにすれば、ケーブル22の移動に合わせてフレーム65Bが移動し、整線ユニット61A,61Bの部分でケーブル22に負荷がかかることがなくなる。
【0084】
なお、第3実施形態では、上段のフレーム65Aが固定され、下段のフレーム65Bが移動可能となっているが、その他の態様でも良い。例えば、下段のフレーム65Bが固定され、上段のフレーム65Aが移動可能となっていても良い。また、上段と下段の両方のフレーム65A,65Bが移動可能となっていても良い。
【0085】
なお、第3実施形態では、下段のフレーム65B(整線ユニット61B)を移動させる構成として、ユニット用架台62にスリット孔69を設けているが、その他の態様でも良い。例えば、ユニット用架台62に下段のフレーム65Bを移動させるレール(凸部)を設けても良い。
【0086】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について
図14から
図15を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0087】
図14に示すように、第4実施形態の整線装置60Cは、1段の整線ユニット61Cを備える。なお、スプール23に対する整線ユニット61Cの配置態様は、前述の第1実施形態と同様である(例えば、
図4参照)。
【0088】
整線ユニット61Cのフレーム65Cには、軸方向(Z方向)に延び、かつ径方向(X方向)に並ぶ複数の軸部66が設けられている。これらの軸部66に回転体64Cが回転可能に支持される。
【0089】
図15に示すように、回転体64Cは、その外周面にケーブル22が接触する凹部70が形成されている。つまり、これらの回転体64Cは、ケーブル22を案内するための鞍型のガイド車輪を構成する。例えば、1つの回転体64Cは、中央の円柱形状を成す部分の両端に、それぞれ円錐台の先端が取り付けられたような形状を成す。そして、少なくとも2つの回転体64Cで、1本のケーブル22を径方向(X方向)から挟み込むように保持することができる。
【0090】
第4実施形態では、回転体64Cの外周面に凹部70が形成されているため、ケーブル22が、回転体64Cに接触している位置からずれてしまうことを抑制できる。例えば、ケーブル22の外周の一部が、回転体64Cの凹部70に遊嵌されるため、ケーブル22が横方向(軸部66が延びる方向)にずれることがない。
【0091】
また、1本のケーブル22を保持するために、径方向(X方向)から挟み込むように配置された2つの回転体64Cを設けるだけで済む。そのため、1つの整線ユニット61Cに設ける回転体64Cの設置数を低減させることができる。
【0092】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について
図16から
図17を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0093】
図16に示すように、第5実施形態の整線装置60Dは、1段の整線ユニット61Dを備える。この整線ユニット61Dは、ユニット用架台62に固定されている。
【0094】
なお、第5実施形態では、整線ユニット61Dが、ケーブル22がスプール23から垂れ下がる特定範囲Rから水平方向に変位して配置されている。例えば、整線ユニット61Dは、スプール23から径方向(X方向)に離れる方向に変位して配置されている。言い換えれば、整線ユニット61Dは、固定装置30から離れる方向に変位して配置されている。
【0095】
図17に示すように、整線ユニット61Dのフレーム65Dには、軸方向(Z方向)に延び、かつ径方向(X方向)に並ぶ複数の軸部66が設けられている。これらの軸部66に回転体64Cが回転可能に支持される。なお、回転体64Cは、第4実施形態と同様に、その外周面にケーブル22が接触する凹部70(
図15)が形成されている。これらの回転体64Cは、鞍型のガイド車輪である。
【0096】
図16および
図17に示すように、整線ユニット61Dのフレーム65Dが特定範囲Rから水平方向に変位して配置されていることで、ケーブル22は、スプール23に対して斜め下方から巻き取られる。また、ケーブル22は、スプール23から斜め下方に向かって繰り出される。それぞれの回転体64Cに対して常に一方向からケーブル22が接触するようになる。
【0097】
フレーム65Dがスプール23から離れる方向に変位していると、ケーブル22には、その自重によりスプール23に近づく方向に負荷が加わることになる。例えば、
図17の紙面左側に移動しようとする力がケーブル22に作用する。そのため、それぞれの回転体64Cの外周面において、常に同じ面にケーブル22が接触する。
【0098】
第5実施形態では、スプール23から垂れ下がるケーブル22が、ケーブル22が延びる方向に対して交差する方向に並べられた回転体64Cの間を垂直方向に通過し、かつ巻き取りまたは繰り出しのいずれの場合も回転体64Cに対して一方向からケーブル22が接触する。このようにすれば、巻き取りまたは繰り出しのいずれの場合も回転体64Cの一方の面にケーブル22が接触するため、回転体64Cの設置数を低減させることができる。言い換えれば、1本のケーブル22を案内するためには、1つの回転体64Cを設けるだけで済む。そのため、整線ユニット61Dの構成が簡素化され、かつコンパクトな構成にできる。
【0099】
また、ケーブル22は、スプール23から固定装置30まで、整線ユニット61Dを介して延びる。整線ユニット61Dが固定装置30から離れる方向に変位すると、ケーブル22が遠回りしてスプール23から固定装置30まで延びることになる。そのため、ケーブルピット24に配置されるケーブル22は、上方の位置に移動されるようになり、言い換えれば、持ち上げられるようになり、その結果、ケーブルピット24の深さ寸法を浅く設定することができる。
【0100】
なお、整線ユニット61Dが特定範囲Rから水平方向に変位する場合の変位量(距離)は、ケーブル22の態様に合わせて適宜設定する。ケーブル22の種類、太さ、硬さ(剛性)に応じて適宜設定される。例えば、整線ユニット61Dに対して、ケーブル22が座屈状に乗り上げないように、ケーブル22がスプール23から垂れ下がりつつ、曲がるときの曲率に基づいて設定される。また、ケーブル22の種類に応じて異なる複数の整線ユニット61Dで整線を行うようにしても良い。その場合に、それぞれの整線ユニット61Dの変位量(距離)をケーブル22の種類に応じて異なる値に設定しても良い。
【0101】
回転ガントリーの整線装置を第1実施形態から第5実施形態に基づいて説明したが、いずれか1の実施形態において適用された構成を他の実施形態に適用しても良いし、各実施形態において適用された構成を組み合わせても良い。
【0102】
なお、前述の実施形態では、重粒子線がん治療を行う施設を例示しているが、その他の施設にも前述の実施形態を適用できる。例えば、陽子線がん治療を行う施設に前述の実施形態を適用しても良い。
【0103】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、複数のケーブルを仕切り、外周面にケーブルが接触する円筒形状を成す回転可能な複数の回転体を有する整線ユニットを備えることにより、ケーブルの乱巻き状態を抑制しつつ、ケーブルの摩耗を抑制することができる。
【0104】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態またはその変形は、発明の範囲と要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0105】
1…粒子線治療システム、2…ビーム発生器、3…円形加速器、4…ビーム輸送ライン、5…回転ガントリー、6…真空ダクト、7…粒子線ビーム、8…患者、9…水平軸、10…躯体、11…エンドリング、12…回転駆動部、13…照射ノズル、14…輸送部、15…超電導電磁石、16…治療空間、17…治療台、18…治療室、19…床、20…カウンターウエイト、21…ウエイトピット、22…ケーブル、23…スプール、24…ケーブルピット、25…フランジ、26…ツバリング、27…レーン、28…周面、29…面取部、30…固定装置、31…貫通部、60(60A,60B,60C,60D)…整線装置、61(61A,61B,61C,61D)…整線ユニット、62…ユニット用架台、63…連結部、64(64A,64B,64C)…回転体、65(65A,65B,65C,65D)…フレーム、66,67…軸部、68…マス目、69…スリット孔、70…凹部、G1…第1群、G2…第2群、R…特定範囲。