(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054941
(43)【公開日】2023-04-17
(54)【発明の名称】撹拌子取付構造
(51)【国際特許分類】
B01F 35/00 20220101AFI20230410BHJP
B01F 33/25 20220101ALI20230410BHJP
A47J 27/14 20060101ALN20230410BHJP
【FI】
B01F15/00 B
B01F11/00 A
A47J27/14 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163973
(22)【出願日】2021-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】500148592
【氏名又は名称】株式会社カジワラ
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】梶原 秀浩
(72)【発明者】
【氏名】笠原 徹
【テーマコード(参考)】
4B054
4G036
4G037
【Fターム(参考)】
4B054AA02
4B054CA15
4B054CD07
4G036AB05
4G037DA21
4G037EA10
(57)【要約】
【課題】ベース部及びキャップ部間の合体の結合維持管理を容易にすることを可能にする撹拌子取付構造を提供する。
【解決装置】撹拌容器内の被攪拌物を撹拌する攪拌子を回転軸7に支持するボス部1を備えた撹拌子取付構造であって、回転軸7とボス部1との間に、回転方向に係合して回転軸7とボス部1との間の回り止めを行う回転係合部15を備え、ボス部1は、離脱可能な結合部25により回転軸7の径方向で合体させ回転係合部15を含めて回転軸7に対する分解可能な嵌合構造とするベース部21及びキャップ部23を備え、ベース部21は、撹拌子5側に備え、ベース部21及びキャプ部23間に、ベース部21に働く回転トルクに応じて当接力を高めベース部21及びキャップ部23間の開きを規制する当たり面33、37を備えたことを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌容器内の被攪拌物を撹拌する攪拌子を回転軸に支持するボス部を備えた撹拌子取付構造であって、
前記回転軸と前記ボス部との間に、回転方向に係合して前記回転軸と前記ボス部との間の回り止めを行う回転係合部を備え、
前記ボス部は、離脱可能な結合部により前記回転軸の径方向で合体させ前記回転係合部を含めて前記回転軸に対する分解可能な嵌合構造とするベース部及びキャップ部を備え、
前記ベース部は、前記撹拌子側に備え、
前記ベース部及びキャプ部間に、前記ベース部に働く回転トルクを受けて前記ベース部及びキャップ部間の開きを規制する当たり部を備えた、
撹拌子取付構造。
【請求項2】
請求項1記載の撹拌子取付構造であって、
前記当たり部は、前記ベース部に働く回転トルクに応じて当接力を高める当たり面である、
撹拌子取付構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の撹拌子取付構造であって、
前記結合部は、前記ベース部及びキャプ部の一方に固定した固定ピンと他方に形成され前記固定ピンを離脱可能に嵌合させて回動支点とする第1の結合孔とを備え、
前記結合部は、前記ベース部及びキャプ部の双方の第2の結合孔に対して挿入離脱可能な結合ピンを備え、
前記回動支点により前記ベース部及びキャプ部を前記回転軸に対して閉じた嵌合構造としたとき前記第2の結合孔に前記結合ピンを挿入して前記嵌合構造を維持させる、
撹拌子取付構造。
【請求項4】
請求項3記載の撹拌子取付構造であって、
前記結合ピンは、前記回転軸と同方向に軸心を配置した、
撹拌子取付構造。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項記載の撹拌子取付構造であって、
前記回転係合部は、前記回転軸の外面の回転係合面と前記ボス部の内面の回転被係合面である、
撹拌子取付構造。
【請求項6】
請求項5記載の撹拌子取付構造であって、
前記回転係合面は、前記回転軸の径方向断面を楔状とする両側外面の相対的に勾配を有した平面であり、又は前記回転軸の径方向断面両側の平行面であり、若しくは前記回転軸の径方向断面を多角形とする複数の平面であり、
前記回転被係合面は、前記相対的に勾配を有した平面に対向する相対的に勾配を有した平面であり、又は前記平行面に対向する平行面であり、若しくは前記多角形とする複数の平面に対向する複数の平面である、
撹拌子取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、攪拌装置の回転軸に攪拌羽根等を着脱するための攪拌子取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の攪拌子取付構造としては、例えば特許文献1に記載の攪拌羽根取付構造がある。
【0003】
この攪拌子取付構造により取り付けられる攪拌羽根(掻取羽根とも言う。)は、例えば複数が回転軸に沿って取付られている。回転軸は、攪拌装置の攪拌容器内に横軸として配置されている。攪拌容器は、例えば底部が円筒の一部を構成する横置きの攪拌釜である。
【0004】
前記攪拌羽根は、攪拌アームの先端に備えられている。攪拌アームの基部には、ボス部が備えられ、ボス部が、回転軸に嵌合固定されている。
【0005】
前記ボス部は、攪拌羽根側の攪拌アームに固着されたベース部と、ベース部に組み合わせるキャップ部とからなっている。ベース部は、前記回転軸の外面に合わせる半割孔を備えている。
【0006】
前記キャップ部には、前記回転軸の外面に嵌合する半割孔が備えられている。この半割孔の内面には、断面円形の係合凸部が回転軸の外面に向けて径方向に突設されている。この係合凸部に対応して、前記回転軸の外面には、係合凹部が備えられている。係合凹部が係合凸部を嵌合係止させる。
【0007】
前記攪拌アームを回転軸に取り付けるには、まずキャップ部をベース部に結合ピンによって結合する。この結合に際しては、キャップ部のキャップ側連結部をベース部のベース側連結部の両側に嵌合させる。次いで、キャップ側連結部の一方から結合ピンを挿入し、ベース側連結部を貫通させ、反対側のキャップ側連結部から結合ピンの先端を臨ませる。結合ピン先端の止め穴に割ピンを嵌入させ、結合ピンの脱落を防止する。これによってキャップ部がベース部に対し結合ピンによって回転自在に結合される。
【0008】
前記ベース部の挿通孔に締結ピンを挿通し、この締結ピンにナットを締結し、ベース部に締結ピンを予め支持させる。
【0009】
次いで、ベース部の半割孔及びキャップ部の半割孔を回転軸の外面に嵌合させる。このときキャップ部の係合凸部が回転軸の係合凹部に嵌合して位置決められる。
【0010】
次に、治具を締結ピンの頭部に係合させ、締結ピンを軸周りに回転させ、締結舌部を係合舌部に締結係合させる。これによって、ボス部が回転軸に対し嵌合固定される。このような取付けを回転軸に対し複数の攪拌羽根でそれぞれ行う。
【0011】
そして、回転軸が回転駆動されると、攪拌羽根が攪拌容器の内面を掻取り摺動し、攪拌容器内に収容された食材等を攪拌処理することができる。
【0012】
攪拌終了後は、治具を用いて締結ピンを回転させ、締結舌部を係合舌部から離脱させる。これによって、キャップ部が結合ピンを中心に、ベース部に対し回転可能となる。
【0013】
前記キャップ部をベース部に対し結合ピンを中心に回転させて開くことにより、ボス部の回転軸に対する嵌合を離脱させることができる。この離脱によって、回転軸の周囲は勿論のこと、攪拌羽根及び攪拌アームにおいても十分な洗浄を行うことができる。
【0014】
しかし、かかる簡単な洗浄が可能な攪拌羽根取付構造を採用した場合には、ベース部及びキャップ部間を開く方向の力が締結舌部及び係合舌部間に作用し易く、締結ピンの締結管理、つまりベース部及びキャップ部間の合体の結合維持管理が煩雑であるという問題があった。
【0015】
また、特許文献2には、掻取羽根を正転、反転させて掻取り攪拌を行わせる掻取り押し付け式加熱撹拌釜が提案されている。この釜では、掻取羽根が、回転方向前後へ一定範囲で揺動可能に支持され、正転により受ける被撹拌物の抵抗によって掻取羽根の先端が加熱容器の内周面に押し付けられる。反転により掻取羽根裏面に付着した被撹拌物の抵抗によって掻取羽根の先端が一定範囲の揺動で加熱容器の内周面に対して浮き、掻取羽根裏面に付着した被撹拌物を加熱容器の内周面に膜状に残留した被撹拌物上に膜状又は層状に塗り付ける。反転後の正転により掻取羽根の先端が加熱容器の内周面に押し付けられて膜状に残留した被撹拌物を膜状又は層状に塗り付けた被撹拌物と共に掻き取るようにした。
【0016】
かかる装置に特許文献1に記載の簡単な洗浄が可能な攪拌羽根取付構造を採用して攪拌羽根の取付を行い、正転及び反転の攪拌動作を行わせると、正転時のみならず反転時にもベース部及びキャップ部間を開く方向の力が締結舌部及び係合舌部間に作用し易く、締結ピンの締結管理、つまりベース部及びキャップ部間の合体の結合維持管理が煩雑であるという問題があった。
【0017】
さらに、この問題は、攪拌羽根に限らず、回転軸に取り付ける棒状撹拌子等でも同様に起こり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特許第4152616号公報
【特許文献2】特許第4226630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
解決しようとする問題点は、簡単な洗浄が可能な取付構造を採用して攪拌回転を行わせると、ベース部及びキャップ部間の合体の結合維持管理が煩雑であった点である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本願発明は、ベース部及びキャップ部間の合体の結合維持管理を容易にすることを可能にするため、撹拌容器内の被攪拌物を撹拌する攪拌子を回転軸に支持するボス部を備えた撹拌子取付構造であって、前記回転軸と前記ボス部との間に、回転方向に係合して前記回転軸と前記ボス部との間の回り止めを行う回転係合部を備え、前記ボス部は、離脱可能な結合部により前記回転軸の径方向で合体させ前記回転軸に対する分解可能な嵌合構造とするベース部及びキャップ部を備え、前記ベース部は、前記撹拌子側に備え、前記ベース部及びキャプ部間に、前記ベース部に働く回転トルクを受けて前記ベース部及びキャップ部間の開きを規制する当たり部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本願発明は、上記構成であるから、回転軸を回転駆動すると回転係合部による回転軸とボス部間の回り止めにより攪拌子が回転軸の周りに旋回し、攪拌容器内の被攪拌物を攪拌処理することができる。前記ベース部及びキャップ部を、結合部により回転軸の径方向で合体させ回転軸に対する分解可能な嵌合構造とすることで回転軸への攪拌子の取り付けを行わせることができる。前記結合部を離脱させることでボス部のベース部及びキャップ部相互の合体を分解し、簡易に洗浄を行なわせることができる。前記攪拌子の旋回に際してベース部に働く回転トルクを受けて当たり部が前記ベース部及びキャップ部間の開きを規制することができる。この開きの規制によりベース部及びキャップ部間の合体の結合維持管理を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例1に係り、撹拌子取付構造を回転軸及び撹拌容器との関係で示す一部を断面にした概略側面図である。
【
図2】実施例1に係り、撹拌子取付構造を撹拌子との関係で示す概略斜視図である。
【
図3】実施例1に係り、撹拌子取付構造を回転軸の断面との関係で示す概略側面図である。
【
図4】実施例1に係り、撹拌子取付構造を回転軸との関係で示す概略分解斜視図である。
【
図5】実施例1に係り、撹拌子取付構造を回転軸の断面との関係で示す概略分解側面図である。
【
図6】実施例1に係り、回転軸の要部平面図である。
【
図7】実施例1に係り、回転軸の要部断面図である。
【
図8】実施例1に係り、(A)は、ベース部の斜視図、(B)は、キャップ部の斜視図である。
【
図9】(A)は、比較例に係り、回転軸と結合ピンとの組み付け関係を示す側面図であり、(B)は、実施例1に係り、回転軸と結合ピンとの組み付け関係を示す側面図である。
【
図10】実施例2に係り、撹拌子取付構造を回転軸の断面との関係で示す概略側面図である。
【
図11】実施例3に係り、撹拌子取付構造を回転軸の断面との関係で示す概略側面図である。
【
図12】実施例4に係り、撹拌子取付構造を回転軸の断面との関係で示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本願発明は、ベース部及びキャップ部間の合体の結合維持管理を容易にすることを可能にするという目的を以下のように実現した。
【0024】
撹拌容器内の被攪拌物を撹拌する攪拌子を回転軸に支持するボス部を備えた撹拌子取付構造であって、前記回転軸と前記ボス部との間に、回転方向に係合して前記回転軸と前記ボス部との間の回り止めを行う回転係合部を備え、前記ボス部は、離脱可能な結合部により前記回転軸の径方向で合体させ前記回転軸に対する分解可能な嵌合構造とするベース部及びキャップ部を備え、前記ベース部は、前記撹拌子側に備え、前記ベース部及びキャプ部間に、前記ベース部に働く回転トルクを受けて前記ベース部及びキャップ部間の開きを規制する当たり部を備えて実現した。
【0025】
前記当たり部は、前記ベース部に働く回転トルクに応じて当接力を高める当たり面で実現できる。
【0026】
前記当たり面は、ベース部及びキャップ部の双方に形成するが、ベース部に働く回転トルクに応じて当接力を高めベース部及びキャップ部間の開きを規制することができればよく、ベース部及びキャップ部の一方に当たり面を形成し、他方を面ではない凸部等として実現することもできる。
【0027】
つまり、当たり部は、ベース部に働く回転トルクを受けてベース部及びキャップ部間の開きを規制することができればよく、面相互、面と凸部、凸部相互、凸部の噛合わせ等種々の構成で実現できる。
【0028】
前記攪拌容器は、例えば底部が径方向の断面でほぼ半円を形成する横置きの撹拌釜である。但し、底部は、攪拌子の旋回ができればよく、底部が径方向の断面で半円を下回り、或は半円を上回る範囲で実現することもできる。また、底部が球面の一部を形成する縦型の攪拌釜で実現することもできる。
【0029】
前記攪拌子は、前記攪拌容器の底部を掻取りながら被攪拌物を攪拌処理する掻取羽根、被攪拌物を攪拌処理或いはほぐし処理する棒状撹拌子などで実現できる。
【0030】
前記被攪拌物は、食品であるが、食品に限らず、医薬、医薬部外品、漢方薬、各種材料においても実現できる。
【0031】
前記結合部は、前記ベース部及びキャプ部の一方に固定した固定ピンと他方に形成され前記固定ピンを離脱可能に嵌合させて回動支点とする第1の結合孔とを備え、 前記結合部は、前記ベース部及びキャプ部の双方の第2の結合孔に対して挿入離脱可能な結合ピンを備え、前記回動支点により前記ベース部及びキャプ部を前記回転軸に対して閉じた嵌合構造としたとき前記第2の結合孔に前記結合ピンを挿入して前記嵌合構造を維持させる構成で実現できる。
【0032】
前記結合ピンは、前記回転軸と同方向に軸心を配置して実現できる。
【0033】
前記回転係合部は、前記回転軸の外面の回転係合面と前記ボス部の内面の回転被係合面で実現できる。
【0034】
前記回転係合面は、前記回転軸の径方向断面を楔状とする両側外面の相対的に勾配を有した平面であり、又は前記回転軸の径方向断面両側の平行面であり、若しくは前記回転軸の径方向断面を多角形とする複数の平面であり、前記回転被係合面は、前記相対的に勾配を有した平面に対向する相対的に勾配を有した平面であり、又は前記平行面に対向する平行面であり、若しくは前記多角形とする複数の平面に対向する複数の平面であることで実現できる。
【0035】
但し、回転係合部は、回転軸とボス部との間の回り止めを行うことができればよく、特許文献1と同様にベース部又はキャップ部の一方に設けた係合凸部と他方に設けた係合凹部とで実現することもできる。
【実施例0036】
図1は、撹拌子取付構造を回転軸及び撹拌容器との関係で示す一部を断面にした概略側面図である。
図2は、撹拌子取付構造を撹拌子との関係で示す概略斜視図である。
【0037】
本実施例1の撹拌子取付構造は、ボス部1を備えている。ボス部1は、撹拌容器3内の被攪拌物を撹拌する攪拌子5を回転軸7に支持するものである。攪拌容器3は、例えば底部3aが径方向の断面でほぼ半円を形成する横置きの撹拌釜である。攪拌子5は、フッ素樹脂等で形成された板状の掻取羽根5aを主体とし、羽取付板5bが攪拌アーム9先端のナックル部9aにナックルピン9bにより回転可能に支持されている。攪拌アーム9の基部に前記ボス部1を備え、ボス部1が回転軸7に嵌合するようにして固定されている。ナックル部9aと羽根取付板5bとの間には、バネを備えて掻取羽根5aを底部3aに押し付けるように付勢してもよい。
【0038】
したがって、回転軸7の正転方向の回転、或いは正転方向及び反転方向の回転に伴って先端の攪拌子5が、回転軸7周りに旋回し、各種練り餡、つぶ餡、羊羹、ジャム、マーマレード、カスタードクリーム等を加熱攪拌調理等することができる。
ここで、前記ボス部1の構造を
図3~
図9を用いて更に説明する。
図3は、撹拌子取付構造を回転軸の断面との関係で示す概略側面図である。
図4は、撹拌子取付構造を回転軸との関係で示す概略分解斜視図である。
図5は、撹拌子取付構造を回転軸の断面との関係で示す概略分解側面図である。
図6は、回転軸の要部平面図である。
図7は、回転軸の要部断面図である。
図8(A)は、ベース部の斜視図、(B)は、キャップ部の斜視図である。
図9(A)は、比較例に係り、回転軸と結合ピンとの組み付け関係を示す側面図であり、(B)は、実施例1に係り、回転軸と結合ピンとの組み付け関係を示す側面図である。
【0039】
図3~
図7のように、前記回転軸7と前記ボス部1との間に、回転係合部15を備えている。回転係合部15は、回転方向に係合して前記回転軸7と前記ボス部1との間の回り止めを行うものである。
【0040】
前記回転係合部15は、前記回転軸7の外面の回転係合面17と前記ボス部1の内面の回転被係合面19である。前記回転係合面17は、前記回転軸7の径方向断面を楔状とする両側外面の相対的に勾配を有した平面である。前記回転係合面17相互がなす角度はθである。この角度θは、適宜設定することができる。回転係合面17は、回転軸7のボス部1を結合する部分に所定間隔で形成されている。回転係合面17の軸方向での長さは、ボス部1の軸方向の幅と同等に形成されている。
【0041】
前記回転被係合面19は、前記相対的に勾配を有した平面の回転係合面17に対向する相対的に勾配を有した平面である。回転被係合面19相互がなす角は、回転係合面17相互の角度θとほぼ同一である。回転被係合面19が回転係合面17に当接するように回転軸7にボス部1が取り付けられるとボス部1が回転軸7の軸方向で回転係合面17両側の段差により軸方向に位置決められる。
【0042】
図3~
図5、
図8のように、前記ボス部1は、ベース部21及びキャップ部23を備え、離脱可能な結合部25により前記回転軸7の径方向で合体させ前記回転軸7に対する分解可能な嵌合構造としている。前記ベース部21及びキャップ部23は、分割孔27、29を備えている。分割孔27、29は、回転軸7の軸方向となるベース部21及びキャップ部23の幅方向に渡って形成されている。分割孔27、29が協働して回転軸7への嵌合構造を形成する。
【0043】
前記ベース部21は、結合用の突部30を備えている。ベース部21は、突部30が攪拌アーム9の基部に固定され、撹拌子5側に備えられている。ベース部21の分割孔27は、回転軸7の外周円とほぼ同一の曲率を有する円弧を有している。回転軸7の径方向においてベース部21の分割孔27の両側には逃げ面31がそれぞれ形成されている。逃げ面31は、ベース部21の幅方向に渡って形成され、ベース部21に対するキャップ部23の当たりを逃げるものである。両逃げ面31に続いてベース部21の幅方向に渡って当たり面33が逃げ面31に沿ってそれぞれ形成されている。
【0044】
前記当たり面33は、ベース部21及びキャプ部23間に備えられ、前記ベース部21に働く回転トルクを受けて前記ベース部21及びキャップ部23間の開きを規制する当たり部の一方を構成する。実施例において当たり面33は、前記ベース部21に働く回転トルクに応じてキャップ部23の後述する当たり部に対する当接力を高めベース部21及びキャップ部23間の開きを規制する機能を備えている。このため、当たり面33は、回転軸7の径方向内側へ面が指向し、キャップ部23側へ向かう斜面となっている。
【0045】
前記当たり面33に隣接して外側の逃げ面34が当たり面33に沿ってさらに備えられている。逃げ面34は、前記逃げ面31同様にベース部21に対するキャップ部23の当たりを逃げるものである。
【0046】
前記逃げ面31、34により当たり面33の後述するキャップ部23側の当たり部への当たりを確実とする。但し、これら逃げ面31、34は、省略することもできる。
【0047】
前記キャップ部23は、ベース部21と同一の幅に形成されている。このキャップ部23の分割孔29は、回転軸7の外周円とほぼ同一の曲率を有する円弧部35及び円弧部35の両側に前記回転被係合面19を有している。キャップ部23の円弧部35は、ベース部21の分割孔27の円弧に対して回転軸7を挟んで対向している。回転軸7の径方向においてキャップ部23の分割孔29の両側には当たり面37が形成されている。このキャップ部23の当たり面37は。キャップ部23の幅方向に渡って形成され、ベース部21の当たり面33に対向している。
【0048】
前記キャップ部23の当たり面37は、ベース部21及びキャプ部23間に備えられ、前記ベース部21に働く回転トルクを受けて前記ベース部21及びキャップ部23間の開きを規制する当たり部の他方を構成する。実施例において当たり面37は、前記ベース部21に働く回転トルクに応じてベース部21の当たり面33を受けて当接力を高めベース部21及びキャップ部23間の開きを規制する機能を備えている。このため、当たり面37は、回転軸7の径方向の外側へ向かって面が指向し、ベース部21側の当たり面33に対向する斜面となっている。
【0049】
但し、当たり面33、37の一方を面以外の当たり部で形成することもできる。
【0050】
前記ボス部1のベース部21及びキャップ部23は、離脱可能な結合部25により前記回転軸7の径方向で合体させ前記回転係合部15を含めて前記回転軸7に対する分解可能な嵌合構造とする。
【0051】
前記結合部25は、前記ベース部21及びキャプ部23の一方に固定した固定ピン39と他方に形成され前記固定ピン39を離脱可能に嵌合させて回動支点とする第1の結合孔41とを備えている。
【0052】
前記固定ピン39は、キャップ部23のピン支持部43から突設されている。固定ピン39は、キャップ部23のピン配置凹部45内を回転軸7の軸方向に延出している。回転軸7の軸方向でピン支持部43及び固定ピン39は、それぞれキャップ部23の幅のほぼ半分の寸法で形成されている。固定ピン39の先端は、キャップ部23の端面とほぼ面一となっている。
【0053】
前記ピン支持部43は、第1のキャップ側円弧凸面47を備えている。第1のキャプ側円弧凸面47は、固定ピン39と同心の円弧で形成され、回転軸7の径方向で当たり面37側からキャップ部23外周面に至っている。前記ピン配置凹部45は、第1のキャップ側円弧凹面49を備えている。第1のキャップ側円弧凹面49は、固定ピン39と同心の円弧で形成されている。
【0054】
前記第1の結合孔41は、ベース部21の第1のベース側連結部51に形成されている。第1のベース側連結部51は、第1のベース側円弧凸面53を備えている。第1のベース側円弧凸面53は、回転軸7の径方向で当たり面33側からベース部21外周面に至っている。第1のベース側円弧凸面53は、第1のキャップ側円弧凹面49とほぼ同一の大きさの円弧で形成されている。第1のベース側円弧凸面53は、第1の結合孔41と同心で第1のキャップ側円弧凹面49に嵌合可能となっている。
【0055】
前記第1のベース側連結部51に対し回転軸7の軸方向に隣接して第1のベース側円弧凹面55を備えている。第1のベース側円弧凹面55は、第1のキャップ側円弧凸面47とほぼ同一の大きさの円弧で形成されている。第1のベース側円弧凹面55は、第1の結合孔41と同心で第1のキャップ側円弧凸面47に嵌合可能となっている。
【0056】
したがって、前記ベース部21及びキャップ部23の分割孔27、29を合わせるようにして第1の結合孔41に固定ピン39を軸方向から挿入すると、第1の結合孔41及び固定ピン39は、ベース部21及びキャップ部23間の回動支点となる。第1の結合孔41及び固定ピン39を回動支点としてベース部21及びキャップ部23間が回動するときは、ピン支持部43の第1のキャップ側円弧凸面47とベース部21の第1のベース側円弧凹面55との間で相対回転が許容され、キャップ部23の第1のキャップ側円弧凹面49と第1のベース側連結部51の第1のベース側円弧凸面53との間で相対回転が許容される。
【0057】
前記結合部25は、前記ベース部21及びキャプ部23の双方の第2の結合孔57に対して挿入離脱可能な結合ピン59を備えている。
【0058】
前記ベース部21側の第2の結合孔57は、ベース部21の第2のベース側連結部61に形成されている。第2のベース側連結部61は、回転軸7の軸方向でベース部21の幅の1/3程度の大きさに形成されている。第2のベース側連結部61は、ベース部21の幅方向中央部に配置されている。第2のベース側連結部61は、第2のベース側円弧凸面63を備えている。第2のベース側円弧凸面63は、回転軸7の径方向で当たり面33側からベース部21外周面に至っている。第2のベース側円弧凸面63は、第2の結合孔57と同心に形成され、第1のベース側円弧凸面53の大きさと同等に設定されている。
【0059】
前記第2のベース側連結部61に対し回転軸7の軸方向に隣接して両側に第2のベース側円弧凹面65を備えている。第2のベース側円弧凹面65は、第2の結合孔57と同心に形成され、第1のベース側円弧凹面55と同等の大きさに設定されている。
【0060】
前記キャップ部23側の第2の結合孔57は、キャップ部23の第2のキャップ側連結部67に形成されている。第2のキャップ側連結部67は、回転軸7の軸方向でキャップ部23の幅の1/3程度の大きさに形成されている。第2のキャップ側連結部67は、キャップ部23の幅方向両側に配置されている。第2のキャップ側連結部67は、第2のキャップ側円弧凸面69を備えている。第2のキャップ側円弧凸面69は、回転軸7の径方向でキャップ部23の当たり面37側からキャップ部23外周面に至っている。第2のキャップ側円弧凸面69は、第2のベース側円弧凹面65とほぼ同一の大きさの円弧で形成されている。第2のキャップ側円弧凸面69は、キャップ部23の第2の結合孔57と同心に形成されている。
【0061】
前記第2のキャップ側連結部67に対し回転軸7の軸方向で両者間に第2のキャップ側円弧凹面71を備えている。第2のキャップ側円弧凹面71は、第2のベース側円弧凸面63とほぼ同一の大きさの円弧で形成されている。第2のキャップ側円弧凹面71は、キャップ部23の第2の結合孔57と同心に形成されている。
【0062】
したがって、前記回動支点により前記ベース部21及びキャプ部23を前記回転軸7に対して閉じた嵌合構造としたときは、第2のベース側連結部61が第2のキャップ側連結部67間に位置して双方の第2の結合孔57が連通するから、一方の第2のキャップ側連結部67側から第2の結合孔57に結合ピン59を挿入して前記嵌合構造を維持させることができる。
【0063】
前記結合ピン59は、一端に頭部73を備え、他端の二股部に回転タブ75を備えている。回転タブ75は、摩擦力で回転しないように支持され、例えば作業者の手回しで回転させるようになっている。
【0064】
したがって、一方の第2のキャップ側連結部67側から第2の結合孔57に挿入した結合ピン59の先端を他方の第2のキャップ側連結部67側外へ臨ませ、回転タブ75を回転操作することで結合ピン59の抜け止めを簡単に行わせることができる。
【0065】
この場合、回転軸7の回転駆動時にも結合ピン59の抜け止めを維持させることができる。
【0066】
前記回転タブ75により結合ピン59の抜け止めを行う場合、
図9(A)のように、結合ピン59の軸が回転軸7に直交する方向に組み付ける比較例の構造では、回転軸7の回転駆動時に回転タブ75に遠心力が働き、回転タブ75が結合ピン59に対して回転し易く、結合ピン59の脱落防止のために容易には回転しないように締まり状態で堅く支持させる必要がある。
【0067】
これに対して
図9(B)の実施例1の組み付けは、結合ピン59の軸が回転軸7に沿った方向であり、回転タブ75に遠心力が働いても回転タブ75が結合ピン59に対して回転し難く、結合ピン59の脱落防止を確実に行わせることができる。
【0068】
但し、回転タブ75を、容易には回転しないように締まり状態で堅く支持させ、治具を用いて回転させる構成にすることもできる。回転タブ75に代え、結合ピンの先端に形成した孔に割ピンを装着する構成で抜け止めを行わせることもできる。
【0069】
[取り付け、取り外し]
このような構造を用いて攪拌子5及び攪拌アーム9を回転軸7に取り付けるには、まずキャップ部23をベース部21に予め回転支持させて結合するか(前者)、キャップ部23を先に単独で回転軸7に取り付ける(後者)。
【0070】
(前者の場合)
前者の結合は、前記のようにベース部21及びキャップ部23の分割孔27、29を合わせるようにしてベース部21の第1の結合孔41にキャップ部23の固定ピン39を軸方向から挿入して行わせる。
【0071】
この結合状態で第1の結合孔41及び固定ピン39を回動支点としてキャップ部23をベース部21から開き、キャップ部23の分割孔29を回転軸7の回転係合面17において対向させる。この位置からキャップ部23を回転軸7の径方向へ移動させてキャップ部23の分割孔29を回転軸7に嵌合させる。この嵌合により、キャップ部23の回転被係合面19が回転軸7の回転係合面17に当接する。このとき、回転被係合面19及び回転係合面17間の楔作用を働かせることでキャップ部23を回転軸7にガタツキ無く取り付けることが可能となる。
【0072】
(後者の場合)
後者の場合は、キャップ部23を分割孔29において回転軸7の回転係合面17に合わせ、前記同様にキャップ部23の分割孔29を回転軸7に嵌合させる。この嵌合によりキャップ部23の回転被係合面19が回転係合面17に当接する。
【0073】
次いでキャップ部23の固定ピン39にベース部21の第1の結合孔41を軸方向から挿入させるようにしてキャップ部23にベース部21を回転支持させる。
【0074】
(前者及び後者に共通)
次いで前者、後者共に第1の結合孔41及び固定ピン39を回動支点としてベース部21を回転させてキャップ部23に合わせる。
【0075】
この状態では、第2のキャップ側連結部67間に第2のベース側連結部61が嵌合するので上記のように第2の結合孔57に結合ピン59を挿入し、回転タブ75を回転させて抜け止めを行わせる。
【0076】
この組付け状態では、ベース部21及びキャップ部23双方の当たり面33、37が当接又は対向する。
【0077】
取り外しは、回転タブ75を手回し等により結合ピン59に沿った方向へ回転させる。この状態で結合ピン59を第2の結合孔57から容易に引き抜くことができる。
【0078】
次いで、第1の結合孔41及び固定ピン39を回動支点としてベース部21を回転させてキャップ部23に対して開く。
【0079】
ここで、キャップ部23を回転軸7の回転係合面17から引き抜くようにしてベース部21及びキャップ部23を回転軸7から取り外し、次いで、固定ピン39及び第1の結合孔41の嵌合を引き抜いてベース部21及びキャップ部23を離脱させる。
【0080】
又は、回転軸7に取り付いているキャップ部23に対し固定ピン39から第1の結合孔41を引き抜くようにしてベース部21を取り外し、その後回転軸7の回転係合面17からキャップ部23を引き抜くようにして取り外す。
【0081】
これらの状態では、ベース部21及びキャップ部23が
図4のように分解状態となる。
【0082】
このように、ボス部1と共に攪拌子5及び攪拌アーム9を回転軸7に対しワンタッチで極めて簡単に着脱することが可能となる。
【0083】
このため、ボス部1等を含めた洗浄作業を極めて容易に行うことができると共に、洗浄後の回転軸7への取付けも極めて容易に行うことができる。特に、攪拌子5及び攪拌アーム9が単体において両手でようやく抱えることができるような重量物の場合、前記着脱構造によって、かかる重量物を容易に着脱することができ、回転軸7に対し複数取り付ける場合でも洗浄作業、着脱作業を極めて容易に行うことができる。
【0084】
[回転駆動]
前記取り付け状態で回転軸7が回転駆動されると、攪拌アーム9先端の攪拌子5が、例えば
図1の矢印Aの正転方向に旋回して攪拌容器3の内面を掻取り摺動し、攪拌容器3内に収容された被攪拌物を掻取り攪拌することができる。
【0085】
図1の矢印B方向の反転では、攪拌子5である掻取羽根の裏面に付着した被撹拌物の抵抗によって掻取羽根の先端が一定範囲の揺動で底部3aの内周面から浮き上がる。この浮き上がりにより掻取羽根裏面に付着した被撹拌物が底部3aの内周面に膜状又は層状に塗り付けられる。この塗り付けは正転時に膜状に残留した被撹拌物上に対して行われることになる。そして、反転後の正転により掻取羽根の先端が底部3aの内周面に押し付けられて底部3aの膜状の被撹拌物を塗り付けた被撹拌物と共に掻き取り、攪拌調理することができる。
【0086】
かかる回転軸7の回転駆動時には、攪拌子5が回転抵抗を受けて攪拌アーム9を介してベース部21に回転トルクが働く。この回転トルクに応じて正転時又は反転時に結合ピン59又は固定ピン39を中心としてキャップ部23に対しベース部21が相対回転し、固定ピン39側又は結合ピン59側の当たり面33、37の当接力が増大する。
【0087】
したがって、回転軸7のトルクは、回転係合面17と回転被係合面19との係合を介してキャップ部23,固定ピン39及び結合ピン59、及び当たり面33、37を介してベース部21へ伝達され、攪拌アーム9を介して攪拌子5が掻き取り駆動される。このとき、回転係合面17及び回転被係合面19は、回転軸7及びボス部1間でくさび状に噛合うため、回転軸7から攪拌アーム9へのトルク伝達を確実に行わせることができる。
【0088】
この当たり面33、37の当接力は、キャップ部23の回転被係合面19を回転軸7の回転係合面17に押し付ける方向に働き、ベース部21に働く回転トルクに応じて高くなる。
【0089】
このため、トルクに応じた当接力によりキャップ部23の開きを抑制し、ベース部21及びキャップ部23間の開きを規制することができる。
【0090】
この開きの規制によりベース部21及びキャップ部23間の合体の結合維持管理を締結部等に対して行う必要がなくなり、管理を容易に行わせることができる。
【0091】
しかも、当たり面33、37は、前記のようにトルク伝達に寄与し、回転トルクに応じた当接力の増大と、回転係合面17及び回転被係合面19のくさび状の噛合いとが相俟ってトルク伝達をガタツキ無く、確実に行わせることができる。