(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054988
(43)【公開日】2023-04-17
(54)【発明の名称】光造形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/321 20170101AFI20230410BHJP
B29C 64/129 20170101ALI20230410BHJP
B29C 64/205 20170101ALI20230410BHJP
B29C 64/188 20170101ALI20230410BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20230410BHJP
B29C 64/255 20170101ALI20230410BHJP
B29C 64/241 20170101ALI20230410BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230410BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20230410BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20230410BHJP
B29C 64/277 20170101ALI20230410BHJP
【FI】
B29C64/321
B29C64/129
B29C64/205
B29C64/188
B29C64/393
B29C64/255
B29C64/241
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
B29C64/277
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164061
(22)【出願日】2021-10-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000145286
【氏名又は名称】株式会社写真化学
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】楠田 達文
(72)【発明者】
【氏名】福島 卓也
(72)【発明者】
【氏名】法貴 哲夫
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA44
4F213AB16
4F213AM12
4F213AP06
4F213AQ01
4F213AQ02
4F213AR07
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL12
4F213WL27
4F213WL32
4F213WL67
4F213WL73
4F213WL74
4F213WL85
4F213WL87
4F213WL96
(57)【要約】
【課題】造形物が大型化、大面積化した場合であっても造形材料の供給が好適に確保される光造形装置を提供する。
【解決手段】3次元造形物を得るための光造形装置が、造形テーブルの上にスラリーを吐出可能な吐出手段と、造形テーブルの上に吐出されたスラリーを掃引し、所定の厚みのスラリー膜を形成する掃引手段と、3次元形状データに基づいてあらかじめ作成された露光パターンに従ってスラリー膜を露光する露光手段と、3次元造形物の作製途中において吐出手段におけるスラリーの残量を監視する監視手段と、吐出手段に追加のスラリーを補給する補給手段と、当該残量が規定値より少なくなった状態における所定のタイミングで補給手段に吐出手段への追加のスラリーの補給を実行させる制御手段と、を備えるようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元造形物を得るための光造形装置であって、
造形テーブルと、
前記造形テーブルの上にスラリーを吐出可能な吐出手段と、
前記造形テーブルの上に吐出された前記スラリーを掃引し、所定の厚みのスラリー膜を形成する掃引手段と、
3次元形状データに基づいてあらかじめ作成された露光パターンに従って前記スラリー膜を露光する露光手段と、
前記3次元造形物の作製途中において前記吐出手段における前記スラリーの残量を監視する監視手段と、
前記吐出手段に追加のスラリーを補給する補給手段と、
前記監視手段の監視結果に基づいて、前記残量が規定値より少なくなった状態における所定のタイミングで前記補給手段に前記吐出手段への前記追加のスラリーの補給を実行させる制御手段と、
を備えることを特徴とする、光造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光造形装置であって、
前記補給手段が、
水平面から傾斜させて設けられたパイプと、
前記パイプ内に前記パイプと非接触に収容されてなるスクリューと、
前記パイプ内で前記スクリューを回転させる回転手段と、
前記パイプの途中位置に接続されてなり、前記追加のスラリーを貯留するスラリー容器と、
前記パイプの上端に接続されてなる、前記追加のスラリーの供給口である供給部と、
を備え、
前記回転手段にて前記スクリューが回転させられることにより、前記スクリューが前記パイプ内で前記スラリー容器に貯留されてなる前記追加のスラリーを搬送し、前記供給部を通じて前記吐出手段に供給する、
ことを特徴とする、光造形装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光造形装置であって、
前記スラリー容器の貯留部が水平面から30度以上70度以下の角度の傾斜面を含む、
ことを特徴とする、光造形装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の光造形装置であって、
前記スラリー容器内で前記スラリー容器の内面に沿って移動することにより、前記スラリー容器の前記内面に付着してなる前記追加のスラリーを掻き取るスラリー容器スクレイパ、
をさらに備えることを特徴とする、光造形装置。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の光造形装置であって、
前記スラリー容器の上端の所定位置に開口部を下方または斜め下方に向けた姿勢にて載置可能とされてなる補充容器、
をさらに備え、
前記補充容器は、新たなスラリーを保持し、前記開口部を下方または斜め下方に向けた姿勢にて前記所定位置に載置されることにより、前記新たなスラリーを前記追加のスラリーとして前記スラリー容器に供給する、
ことを特徴とする、光造形装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光造形装置であって、
前記補充容器が前記所定位置に載置された状態において前記補充容器内で前記補充容器の内面に沿って移動することにより、前記補充容器の前記内面に付着してなる前記追加のスラリーを掻き取る補充容器スクレイパ、
をさらに備えることを特徴とする、光造形装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の光造形装置であって、
前記スラリー容器に対して前記補充容器を回転可能に固定し、前記開口部を上方または斜め上方に向けた姿勢から前記開口部を下方または斜め下方に向けた姿勢に前記補充容器を回転させる蝶番、
をさらに備えることを特徴とする、光造形装置。
【請求項8】
請求項2ないし請求項7のいずれかに記載の光造形装置であって、
前記パイプに設けられたドレイン、
をさらに備え、
前記スラリー容器から前記パイプに至る供給路に蓋をした状態で前記ドレインを解放し、前記スクリューを前記スラリーの供給時とは逆回転させることで、前記パイプ内に残存する前記スラリーを排出可能である、
ことを特徴とする、光造形装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の光造形装置であって、
前記吐出手段が、
下端先細の漏斗状となった吐出部と、
前記吐出部の上部に連続し、前記スラリーが貯留される円筒状の貯留部と、
前記貯留部から前記吐出部にかけて挿嵌されてなる吐出用スクリューと、
前記吐出用スクリューを回転させる駆動モータと、
を備え、
前記吐出用スクリューが前記駆動モータにて回転させられることにより、前記吐出部から前記スラリーが吐出される、
ことを特徴とする、光造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光造形装置に関し、特に、その材料供給に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元造形法は、複雑な3次元形状を直接造形加工できる点に大きな優位性を有する加工方法であり、従来の切削加工法による3次元立体加工物を得る方法に比べて自由度が非常に高く、その優位性は近年大きな注目を浴びている。
【0003】
3次元造形法の一つである3次元光造形法の先行事例としては、自由液面法と呼ばれる方法が広く知られており、レーザビームとガルバノミラーの走査露光系で実現されている。また、光硬化性材料の入った容器の底面側からガラス越しに、DMDによる一括露光により1層分造形し、次に必要厚み分、造形物を吊り上げて造形物の下に材料を充填する、という態様にて露光と吊り上げとを繰り返すことにより造形を行う、規制液面法と呼ばれる裏面露光方式なども公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、近時、3次元光造形法としては、光硬化性樹脂を平面に塗布し、その上からレーザ走査により露光する方法が主流となっている。例えば、光硬化性モノマー樹脂(液体)にセラミックス粉体などを混錬したスラリーと呼ばれるペースト状の材料を造形テーブル上に薄く塗布し、その上からレーザ走査により必要な領域を露光して樹脂を硬化させることを繰り返して、3次元造形物を得る方法が、すでに公知である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-124631号公報
【特許文献2】特許第6438919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
3次元光造形法の優位性が広く認識されるにつれて、造形物の大型化、大面積化のニーズが高まっている。あるいは小さい造形物でも多量化する傾向にある。造形物のサイズが大きくなるほど、あるいは、一度に造形する造形物の個数が多くなるほど、造形処理に要する時間が増大することになるため、生産性向上の観点からは当然に、造形処理の効率化のための方策が求められる。
【0007】
もう一つ、係る大型化、大面積化、あるいは多量化により顕在化する事項として、造形材料(スラリー)の供給の問題がある。つまり、造形に際し高価なスラリーを一度に大量に消費する傾向が顕著となる。スラリーを効率的に使用し装置のスループットを向上させるという観点からは、スラリーを速く正確に吐出することや、スラリーを吐出する部位(吐出ポンプ、吐出機構)に素速く追加供給することが、求められる。
【0008】
また、スループット向上の観点からは、単位時間あたり一定量のスラリー吐出を確実に実現できる仕組みも必要である。すなわち、3次元光造形法を行う光造形装置においては通常、スラリー吐出ポンプが移動しつつスラリーをライン状に吐出するが、造形物の大型化や大面積化に伴い使用するスラリーの量も増大する一方で、スラリー吐出ポンプの大型化には耐荷重や移動精度の問題などから限界がある。例えば、アルミナを使ったスラリーの重量は1ccあたり3g程度であるため、スラリー吐出ポンプにおけるスラリー容器の容量が2リットルあったとすればその容器内のスラリー重量は最大で6kgにもなる。吐出機構やスラリー吐出ポンプ全体を支える構造体などを含めれば、スラリー吐出ポンプは全体として優に10kgを超える重量の移動体となる。
【0009】
それゆえ、大型あるいは大面積の造形物を造形するに際しては、移動するスラリー吐出ポンプのスラリー容器が造形途中で空にならぬよう、スラリーを適宜に追加供給することが、必須となる。特許文献1および特許文献2のいずれにも、大型あるいは大面積の造形物を造形する際の造形材料の供給に関する特段の開示はみられない。
【0010】
例えば、造形物の床面積が30cm×30cmである場合、2.2cmの高さ分の造形で前記した2リットルのスラリーを使い果たすことになる。60cm×60cmの床面積ならば、僅か5.5mmの高さの造形物しかできないことになる。
【0011】
なお、スループットを上げようとすれば、単位時間あたりのスラリー吐出量はなるべく大きい方が好ましい。特に、吐出量が少なくていいラインほど、移動速度を少しでも大きくすることが望まれる。係る点からも、スラリー吐出ポンプの重量には限界がある。
【0012】
また、一般に造形用のスラリーは高粘度であるため、スラリー容器の内壁の素材が金属であるか樹脂であるかを問わず、当該内壁にいったん付着したスラリーはほとんど流れ落ちることはなく、そのまま滞留・堆積する。その厚みは通常数ミリメートル、条件によっては10mm近くにまで達する。しかも、通常は、数週間経過しても重力で落ちることはない。従って、容器サイズにも依存するが、場合によっては、きわめて大量のスラリーが使えない(使われない)状況となってしまう。例えば、前記した2リットルの容器では、供給後1週間経過した時点で、30%ものスラリーが重力に反して残存していたという例がある。
【0013】
従って、生産性向上の観点からは、このようにスラリー容器の内壁面に残存するスラリーを有効に使用できるようにすることも求められる。
【0014】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、造形物が大型化、大面積化した場合であっても造形材料の供給が好適に確保される光造形装置を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、3次元造形物を得るための光造形装置であって、造形テーブルと、前記造形テーブルの上にスラリーを吐出可能な吐出手段と、前記造形テーブルの上に吐出された前記スラリーを掃引し、所定の厚みのスラリー膜を形成する掃引手段と、3次元形状データに基づいてあらかじめ作成された露光パターンに従って前記スラリー膜を露光する露光手段と、前記3次元造形物の作製途中において前記吐出手段における前記スラリーの残量を監視する監視手段と、前記吐出手段に追加のスラリーを補給する補給手段と、前記監視手段の監視結果に基づいて、前記残量が規定値より少なくなった状態における所定のタイミングで前記補給手段に前記吐出手段への前記追加のスラリーの補給を実行させる制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1に記載の光造形装置であって、前記補給手段が、水平面から傾斜させて設けられたパイプと、前記パイプ内に前記パイプと非接触に収容されてなるスクリューと、前記パイプ内で前記スクリューを回転させる回転手段と、前記パイプの途中位置に接続されてなり、前記追加のスラリーを貯留するスラリー容器と、前記パイプの上端に接続されてなる、前記追加のスラリーの供給口である供給部と、を備え、前記回転手段にて前記スクリューが回転させられることにより、前記スクリューが前記パイプ内で前記スラリー容器に貯留されてなる前記追加のスラリーを搬送し、前記供給部を通じて前記吐出手段に供給する、ことを特徴とする。
【0017】
請求項3の発明は、請求項2に記載の光造形装置であって、前記スラリー容器の貯留部が水平面から30度以上70度以下の角度の傾斜面を含む、ことを特徴とする。
【0018】
請求項4の発明は、請求項2または請求項3に記載の光造形装置であって、前記スラリー容器内で前記スラリー容器の内面に沿って移動することにより、前記スラリー容器の前記内面に付着してなる前記追加のスラリーを掻き取るスラリー容器スクレイパ、をさらに備えることを特徴とする。
【0019】
請求項5の発明は、請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の光造形装置であって、前記スラリー容器の上端の所定位置に開口部を下方または斜め下方に向けた姿勢にて載置可能とされてなる補充容器、をさらに備え、前記補充容器は、新たなスラリーを保持し、前記開口部を下方または斜め下方に向けた姿勢にて前記所定位置に載置されることにより、前記新たなスラリーを前記追加のスラリーとして前記スラリー容器に供給する、ことを特徴とする。
【0020】
請求項6の発明は、請求項5に記載の光造形装置であって、前記補充容器が前記所定位置に載置された状態において前記補充容器内で前記補充容器の内面に沿って移動することにより、前記補充容器の前記内面に付着してなる前記追加のスラリーを掻き取る補充容器スクレイパ、をさらに備えることを特徴とする。
【0021】
請求項7の発明は、請求項5または請求項6に記載の光造形装置であって、前記スラリー容器に対して前記補充容器を回転可能に固定し、前記開口部を上方または斜め上方に向けた姿勢から前記開口部を下方または斜め下方に向けた姿勢に前記補充容器を回転させる蝶番、をさらに備えることを特徴とする。
【0022】
請求項8の発明は、請求項2ないし請求項7のいずれかに記載の光造形装置であって、前記パイプに設けられたドレイン、をさらに備え、前記スラリー容器から前記パイプに至る供給路に蓋をした状態で前記ドレインを解放し、前記スクリューを前記スラリーの供給時とは逆回転させることで、前記パイプ内に残存する前記スラリーを排出可能である、ことを特徴とする。
【0023】
請求項9の発明は、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の光造形装置であって、前記吐出手段が、下端先細の漏斗状となった吐出部と、前記吐出部の上部に連続し、前記スラリーが貯留される円筒状の貯留部と、前記貯留部から前記吐出部にかけて挿嵌されてなる吐出用スクリューと、前記吐出用スクリューを回転させる駆動モータと、を備え、前記吐出用スクリューが前記駆動モータにて回転させられることにより、前記吐出部から前記スラリーが吐出される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
請求項1ないし請求項9の発明によれば、大型のあるいは大面積の造形物を造形する場合であっても、造形材料の供給が好適に確保される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】光造形装置1の概略的な構成を示す斜視図である。
【
図2】光造形装置1の要部についての機能ブロック図である。
【
図3】光造形装置1における主たる構成要素の配置関係を示す側面図である。
【
図4】光造形装置1の一連の動作を示すフローチャートである。
【
図5】光造形装置1の一連の動作を示すフローチャートである。
【
図6】光造形装置1の一連の動作を示すフローチャートである。
【
図7】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
【
図8】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
【
図9】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
【
図10】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
【
図11】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
【
図12】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
【
図13】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
【
図14】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
【
図15】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
【
図16】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
【
図17】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
【
図18】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
【
図19】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
【
図20】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
【
図21】光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
【
図22】スラリー吐出ポンプ40の詳細構成を示す断面図である。
【
図23】スラリー吐出ポンプ40とスクリュー42との配置関係について説明するための図である。
【
図24】ポンプスクレイパ43の詳細構成を例示する図である。
【
図25】2次供給部45(スラリー供給装置100)の詳細構成を示す断面図である。
【
図26】光造形装置1においてマルチライン吐出が行われる場合の、吐出態様を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<装置の概要>
図1は、本実施の形態に係る光造形装置1の概略的な構成を示す斜視図である。
図2は、光造形装置1の要部についての機能ブロック図である。
図3は、光造形装置1における主たる構成要素の配置関係を示す側面図である。
【0027】
本実施の形態に係る光造形装置1は、概略、光硬化性モノマー樹脂(液体)にセラミックス粉体(例えばアルミナ)などを混錬したスラリーと呼ばれるペースト状の材料を造形テーブル上に薄く塗布し、得られたスラリー膜(層)に対しその上からレーザ、LED等の光を照射して必要な領域を露光して樹脂を硬化させることを、順次に積層されるスラリー膜に対し繰り返して、3次元造形物(積層体)を得る装置である。なお、以降においては、光造形装置1において行われる、露光用のパターンデータに基づく露光のことを、描画とも称する。
【0028】
光造形装置1は、造形テーブル11と、補助テーブル12と、露光ユニット20と、リコートユニット30と、スラリー吐出ポンプ40と、コントローラC(
図2)とを、主として備える。なお、
図1においては、補助テーブル12から造形テーブル11へと向かう向きをy軸正方向とし、鉛直方向上向きをz軸正方向とする右手系のxyz座標を付している(以降においても同様の座標系を用いる)。
【0029】
造形テーブル11は、その上面において造形が行われる平面視矩形状のテーブルである。造形テーブル11は、矢印AR1にて示すようにz軸方向に昇降自在とされてなる。係る昇降動作は、z軸昇降機構11M(
図2)により実現される。具体的には、
図3に示すように、初期位置11a(高さh1)と、吐出・露光位置11b(高さh2)と、リコート位置11c(高さh3)との間で主に移動させられる。
【0030】
概略的にいえば、造形テーブル11は、スラリーの塗布とこれに続く露光の際には初期位置11aから上昇させられ、造形物の形成が進行する都度(各層の形成が完了する都度)、必要量下降させられる。
【0031】
造形テーブル11は、大型の造形物を造形可能とするべく、少なくとも600mm×600mm以上の造形エリアを有するのが好ましく、650mm×650mm以上の造形エリアを有するのがより好ましい。
【0032】
また、造形テーブル11は、その上面に複数の吸着溝(溝部)11gを備える。複数の吸着溝11gは、造形に際して造形テーブル11の上面に敷設されるフィルム(例えば保護フィルム)を固定する際に使用される。複数の吸着溝11gは、造形エリア全般に渡って設けられる。より具体的には、複数の吸着溝11gはエア吸着吹出機構11AR(
図2)と連通しており、コントローラC(本開示の制御手段の一例)の制御により、フィルムが敷設された状態でエア吸着吹出機構11ARが複数の吸着溝11gに対し負圧を与えることで、フィルムが真空吸着される。
【0033】
なお、造形物が完成した後の搬送時には、コントローラCの制御により、係る真空吸着は解除され、代わって、エア吸着吹出機構11ARから吸着溝11gへとエアが供給される。これにより、造形物はフィルムともども造形テーブル11からわずかに浮き上がるので、後述するフィルムグリッパ52によりフィルムを把持してその上の造形物ごと搬送することが、容易となる。
【0034】
補助テーブル12は、フィルムの準備や完成した造形物の搬送に用いられる平面視矩形状のテーブルである。補助テーブル12は、造形テーブル11と略同一の平面サイズを有する。補助テーブル12は、固定部(サポート)12Fに載置支持され、かつ、
図3に示すように、造形テーブル11の初期位置11aと同じ高さh1に備わっている。補助テーブル12は、固定部12Fともども、矢印AR2にて示すようにy軸方向に進退自在とされてなる。具体的には、通常位置12aと、初期位置11aにある造形テーブル11とy軸方向正側において面一に隣接する隣接位置12bとの間で進退移動するようになっている。係る進退動作は、固定部12Fに備わるy軸移動機構12M(
図2)により実現される。y軸移動機構12Mは、アクチュエータを備えている。
【0035】
また、補助テーブル12も、その上面に複数の吸着溝(溝部)12gを備える。複数の吸着溝12gは、造形に際して造形テーブル11の上面に敷設されるフィルムを、係る敷設に先立っていったん固定する際に使用される。より具体的には、複数の吸着溝12gは固定部12Fを通じてエア吸着吹出機構11AR(
図2)と連通しており、フィルムが敷設された状態でエア吸着吹出機構11ARが複数の吸着溝12gに対し負圧を与えることで、フィルムが真空吸着される。補助テーブル12にいったん敷設されたフィルムは、後述する吸着パッドユニット51によって造形テーブル11へと搬送される。
【0036】
さらに、補助テーブル12は、通常位置12aにおいて固定部12Fから着脱自在とされてなる。すなわち、y軸移動機構12Mやエア吸着吹出機構11ARから分離して運搬することが可能な可搬性を有してなる。本実施の形態に係る光造形装置1においては、係る補助テーブル12の可搬性を利用して、完成後、補助テーブル12に移載された造形物を、補助テーブル12ごと搬送できるようになっている。
【0037】
エア吸着吹出機構11ARは、例えば、
図3に示すように、真空ポンプ(本開示の吸着手段の一例)PP1と圧縮空気ポンプ(本開示のエア供給手段の一例)PP2と切替弁VLV1およびVLV2とを備える。切替弁VLV1およびVLV2はそれぞれ、造形テーブル11および補助テーブル12において真空ポンプPP1による吸着と圧縮空気ポンプPP2によるエアの吹出しとを切り替える切替装置として動作する。コントローラCは、真空ポンプPP1、圧縮空気ポンプPP2、および切替弁VLV1、VLV2を制御し、フィルムの真空吸着/エア浮上を切り替える。
【0038】
複数の吸着溝11gは互いに独立な複数のゾーンznに分散して設けられ、切替弁VLV1およびVLV2も、それぞれのゾーンznごとに真空ポンプPP1による吸着と圧縮空気ポンプPP2によるエアの吹出しとを切り替えるようになっている。搬送時には造形物のサイズおよび位置に応じて適宜のゾーンznの吸着溝11gが選択的に使用される。なお、
図1においては、矩形状の吸着溝11gおよび12gが2次元的に配置されているが、これはあくまで例示であって、ストライプ状など他の配置態様にて複数の吸着溝11gおよび12gが備わる態様であってもよい。
【0039】
露光ユニット(露光手段の一例)20は、光を照射する一つないし複数のプロジェクタ21を備えた光源である。プロジェクタ21は、レーザ、LEDなどの発光素子を備える。露光ユニット20は、矢印AR3にて示すようにy軸方向に進退自在とされてなる。係る進退動作は、
図1においては図示を省略する、左右1対に設けられたリニアモータ20M(
図2)により、実現される。
【0040】
プロジェクタ21は、造形テーブル11上に形成されたスラリー塗布膜に対しパターン露光(投影)を行う要素である。プロジェクタ21による露光は、例えばDMD投影方式にて行われる。すなわち、プロジェクタ21をステップ状にあるいは連続的にy軸方向に移動させつつ投影(露光)パターン(データ)を流し込み、パターンの投影を行うようにする。そして一の方向への移動が完了したプロジェクタ21は、x軸方向に所定距離だけ移動させられ、再びy軸方向を反対向きへと移動しつつ露光を行う。すなわち、本実施の形態においては、所定幅の領域毎に、ストリップ状に露光が実行される。各層において、全ての造形対象エリアについて露光が完了するまで、これらの動作が繰り返される。
【0041】
より詳細には、プロジェクタ21はy軸方向に対しわずかに傾斜させて配置されており、係る傾斜姿勢のまま移動させられる。それゆえ、本実施の形態に係る光造形装置1において行う方式を特に、傾斜露光方式とも称する。
【0042】
プロジェクタ21は、造形テーブル11の吐出・露光位置11bから所定のプロジェクタ作動距離(Proj_WD)だけz軸上方に離隔した高さに下端が位置するように、配置されてなる。
【0043】
なお、
図1に示す光造形装置1には、4つのプロジェクタ21(21a~21d)がx軸方向に等間隔に備わっており、これらが同期して露光を行うようになっている。
【0044】
プロジェクタ21のy軸方向の移動は、露光ユニット20全体が移動することによって実現される。一方、矢印AR4にて示すx軸方向の移動は、x軸移動機構21M(
図2)により実現される。x軸移動機構21Mはアクチュエータを備えている。
【0045】
リコートユニット30は、リコータ(本開示の掃引手段の一例)31と、スラリー吐出ポンプ(本開示の吐出手段の一例)40と、スクリュー42とが一体となったユニットである。リコートユニット30は、矢印AR6にて示すようにy軸方向に進退自在とされてなる。係る進退動作は、
図1においては図示を省略する、左右1対に設けられたリニアモータ30M(
図2)により、実現される。好ましくは、リニアモータ30Mのガイドレールは、露光ユニット20を移動させるためのリニアモータ20Mと共用される。
【0046】
リコータ31は、造形テーブル11上に吐出されたスラリーを掃引塗布するブレード状の部材である。リコータ31は、その長手方向をx軸方向に延在させる態様にてリコートユニット30に付設されており、x軸方向のサイズは、造形テーブル11のx軸方向のサイズと略同一となっている。リコータ31は、造形テーブル11と所定の距離を保ちつつリコートユニット30の移動によりy軸方向に移動し、造形テーブル11上に吐出されたスラリーをy軸方向に拡げてスラリー膜を形成する。
【0047】
使用後のリコータ31は、清掃ユニット(クリーナー)32により清掃される。清掃ユニット32は、リコータ31の一方端側の下方位置に、矢印AR7にて示すように、使用高さ32a、造形時待機高さ32b、待機高さ32cの間を昇降するように配置されている。加えて、清掃ユニット32は、使用高さ32aにおいて、矢印AR8にて示すようにx軸方向に移動自在とされてなる。清掃ユニット32は、ヘラ、ブラシ等を備えたものであってもよいし、他の構成を有するものであってもよい。
【0048】
リコータ31の使用後、使用高さ32aに配置された清掃ユニット32がリコータ31と接触しつつx軸方向に移動することで、リコータ31に付着(残存)しているスラリーが除去される。これにより、リコータ31は清掃される。
【0049】
その後、スラリーの塗布が繰り返される場合、清掃ユニット32は造形時待機高さ32bにて待機する。塗布が全て終了した後は、次回の使用時まで、待機高さ32cにて待機する。
【0050】
矢印AR7にて示す清掃ユニット32のz軸方向の移動は、z軸昇降機構31M1(
図2)により実現される。矢印AR8にて示す清掃ユニット32のx軸方向の移動は、x軸移動機構31M2(
図2)により実現される。x軸移動機構31M2はアクチュエータを備えている。
【0051】
スラリー吐出ポンプ40は、内部に造形用のスラリーを貯留し、造形に際して該スラリーを造形テーブル11上に吐出する機能を有するポンプである。スラリー吐出ポンプ40はリコートユニット30の移動によりy軸方句を移動するほか、x軸移動機構40M(
図2)により矢印AR9にて示すようにx軸方向に移動可能とされてなる。x軸移動機構40Mはアクチュエータを備えている。
【0052】
スラリー吐出ポンプ40には、内部に貯留されたスラリーの液面を検出するスラリーレベルセンサ(本開示の監視手段の一例)41と、スラリーの吐出動作を担うスクリュー42とが付設されてなる。スラリーレベルセンサ41は、例えば、スラリー液面に向けてレーザ光を照射して反射光を受光する、レーザ式、超音波式などの非接触式のセンサである。
【0053】
スクリュー42は、スクリュー駆動モータ42Mにて回転させられる。スラリー吐出ポンプ40の内部でスクリュー42が回転することにより、スラリー吐出ポンプ40の下端部からスラリーが吐出される。スクリュー42の回転数に応じてスラリー吐出ポンプ40からのスラリーの吐出量が変化する。なお、スラリー吐出ポンプ40の下端と、造形テーブル11の吐出・露光位置11bとの距離である吐出高さh4は、スラリーの材質等を勘案して適宜に設定される。
【0054】
また、スラリー吐出ポンプ40にはさらに、ポンプスクレイパ43が備わっている。
【0055】
ポンプスクレイパ43は、スラリー吐出ポンプ40内で矢印AR10にて示すように上下動し、スラリー吐出ポンプ40の内壁面に付着しているスラリー材料を掻き落とすことにより、スラリーの液面を均す機能を有する。
【0056】
光造形装置1は、さらに、スラリー吐出ポンプ40に対するスラリーの補給源としての2次供給部(本開示の補給手段の一例)45を備える。造形物の大型化、大面積化に伴い、使用するスラリーの量は増大するが、必要な量のスラリーをあらかじめ全てスラリー吐出ポンプ40に貯留しようとすると、スラリー吐出ポンプ40を大型化・大容量化する必要が生じるが、過度に重量化したスラリー吐出ポンプ40を移動させて吐出動作を行うことは、動作の安定性や吐出精度、生産性などの点から望ましくない。
【0057】
それゆえ、本実施の形態に係る光造形装置1において、コントローラCは、スラリーレベルセンサ41を用いてスラリー吐出ポンプ40内のスラリーの残量を監視し、係る残量が規定値より少なくなったタイミングで、スラリー吐出ポンプ40を所定の補充位置40bに移動させ、2次供給部45からスラリー吐出ポンプ40に対しスラリーを補充する。好ましくは、2次供給部45は、材料交換や洗浄が必要な時のために取り外せる機構とされる。
【0058】
スラリー吐出ポンプ40および2次供給部45の詳細については後述する。
【0059】
さらに、光造形装置1は、フィルムの移動を担う構成要素として、本開示の吸着搬送手段の一例である吸着パッドユニット(吸着キャリア)51と、本開示の把持搬送手段の一例であるフィルムグリッパ52とを備える。
【0060】
吸着パッドユニット51は、補助テーブル12上にセットされたフィルムを吸着し、造形テーブル11上へ移設するためのフィルム吸着機構である。吸着パッドユニット51は、コントローラCの制御により、常時は露光ユニット20の待機位置の下方に設定された待機位置51a(
図3)にて待機し、使用時には、図示しないピン嵌合にて露光ユニット20の下部に合体させられる。そして、露光ユニット20の移動に伴いy軸負方向に移動し、隣接位置12bに移動してきた補助テーブル12のy軸正方向端部の上方位置である吸着位置51bにて、補助テーブル12上のフィルムのy軸正方向端部を吸着させる。係る吸着状態を保ちつつ、露光ユニット20がy軸正方向に移動することにより、吸着パッドユニット51は終端位置51cまで移動し、これによりフィルムは造形テーブル11へと搬送される。
【0061】
フィルムの吸着および解除は、矢印AR5にて示すように吸着パッドユニット51が上下動することにより行われる。係る上下動は、エアシリンダ51ASにより実現される。なお、駆動のエアは、露光ユニット20に儲けられた図示しないジョイント口から供給される。
【0062】
フィルムグリッパ52は、完成した造形物を造形テーブル11から補助テーブル12へと搬送する際に使用される、一対のフィルム把持機構である。フィルムグリッパ52は、コントローラCの制御により、常時は、補助テーブル12のx軸方向両側端部であってリコートユニット30の待機位置の下方に設定された待機位置52a(
図3)にて待機し、使用時には、図示しないピン嵌合にてリコートユニット30の下部に合体させられる。そして、リコートユニット30の移動に伴いy軸正方向に移動し、造形テーブル11のy軸方向負側の両側端部に設定された把持位置52bにおいて、造形物ともどもエア浮上された状態のフィルムの両端を把持する。係る把持状態を保ちつつ、リコートユニット30がy軸負方向に移動することにより、フィルムおよびその上面に載置されてなる造形物が、補助テーブル12へと搬送される。その際には、圧縮空気ポンプPP2からのエアの供給を受ける吸着溝11gおよび12gが属するゾーンznが、造形物の移動に応じて順次に切り替えられる。すなわち、移動する造形物をエア浮上させるのに必要な吸着溝11gおよび12gのみが、順次にかつ選択的に使用される。
【0063】
造形物の搬送の際、フィルムの直下に位置しない吸着溝11gおよび12gまたは造形物の直下に位置しない吸着溝11gおよび12gからのエア供給は停止してもよい。これにより、上方にフィルムまたは造形物が存在しない負荷の少ない吸着溝11gおよび12gから多量のエアが吹き出されることを防ぎ、造形物を浮上させるために必要な造形物の直下に位置する吸着溝11gおよび12gから十分なエアの吹き出しを行うことができる。コントローラCは、フィルムの搬送距離に応じてエアを供給するゾーンを決定してもよいし、センサによりフィルムおよび/または造形物の位置を検出し、検出結果に応じてエアを供給するゾーンを決定してもよい。
【0064】
その他、光造形装置1は、ファンフィルタユニット(FFU)15などをさらに備える。FFU15は、光造形装置1内の清浄度を維持ための機構である。
【0065】
以上のような構成を有する光造形装置1の各部の動作は全て、コントローラC(
図2)により制御される。コントローラCは、汎用のもしくは専用のコンピュータによって実現可能である。
【0066】
好ましくは、コントローラCは、造形対象の3次元形状データ(CADデータ)をプロジェクタ21による1層ごとのストリップ状の露光に使用可能な投影(露光)パターンデータに変換する造形データ処理部C1を備える。係る造形データ処理部C1にて生成されるスライスデータが順次に、プロジェクタ21によるパターン露光に使用される。
【0067】
なお、造形データ処理部C1がコントローラCとは別体のコンピュータとして備わる態様であってもよい。
【0068】
<光造形装置の動作>
図4ないし
図6は、光造形装置1において造形物が造形される際の、光造形装置1の一連の動作を示すフローチャートである。
図7ないし
図21は、光造形装置1における造形途中の様子を模式的に示す側面図である。
【0069】
まず、各部・ユニットが初期位置(待機位置)へと移動させられる(ステップS1)。具体的には、造形テーブル11、補助テーブル12、露光ユニット20、リコートユニット30が初期位置に配置される。
【0070】
続いて、
図7に示すように、補助テーブル12の上に、作業者がフィルムF(保護シート、あるいは単にシートとも称する)を手作業で載置(積載)する(ステップS2)。フィルムFは、補助テーブル12の全面を覆うように載置される。載置されたフィルムFは、エア吸着吹出機構11ARが複数の吸着溝12gに対し負圧を与えることで、フィルムFは補助テーブル12に真空吸着される。また、フィルムFが載置された補助テーブル12は、
図8に示すように、通常位置12aから隣接位置12bへと移動させられる。
【0071】
フィルムFがセットされると、吸着パッドユニット51がピン嵌合にて露光ユニット20に合体される(ステップS3)。その際、ジョイント接続により露光ユニット20側からエアシリンダ51ASに対しエアが供給される。
【0072】
続いて、露光ユニット20がy軸負方向へと移動することにより吸着パッドユニット51が吸着位置51bへと移動する(ステップS4)。吸着パッドユニット51はエアシリンダASにて駆動されて下降し、
図9に示すように、フィルムFを吸着する(ステップS5)。係る吸着に伴い、補助テーブル12に対するフィルムFの真空吸着は解除される。
【0073】
吸着パッドユニット51がフィルムFを吸着した状態のまま、露光ユニット20がy軸正方向へと移動する(ステップS6)。これにより、
図10に示すように、フィルムFが造形テーブル11上に搬送される。吸着パッドユニット51が終端位置51cまで移動し、フィルムFが造形テーブル11の全体を覆った時点で露光ユニット20は停止する。
【0074】
係る停止と同時に、エア吸着吹出機構11ARが複数の吸着溝11gに対し負圧を与えることで、フィルムFは造形テーブル11に真空吸着される(ステップS7)。一方、吸着パッドユニット51による吸着は解除される(ステップS8)。
【0075】
続いて、露光ユニット20は待機位置へと移動させられ、ピン嵌合が解除されることにより吸着パッドユニット51が露光ユニット20から分離される(ステップS9)。併せて、
図11に示すように、隣接位置12bにあった補助テーブル12は通常位置12aへと移動させられる(ステップS10)。なお、作業者がフィルムFを直接に造形テーブル11上に載置してもよい。
【0076】
次に、造形データ処理部C1において造形対象の3次元形状データ(CADデータ)からストリップデータが生成され(ステップS11)、さらには該ストリップデータに基づいて投影(露光)パターンデータが生成される(ステップS12)。ここで、ストリップデータとは、プロジェクタ21がy軸方向への一度の移動で露光を行う領域に対応した、3次元形状データの部分データである。
【0077】
生成された投影(露光)パターンデータはプロジェクタ21へと転送される(ステップS13)。転送が行われている間(ステップS14でNO)に、スラリーの塗布処理が平行して行われる。
【0078】
具体的には、補助テーブル12の通常位置12aへの移動(ステップS10)に続いて、フィルムFが吸着固定された造形テーブル11が高さh2の吐出・露光位置11bへと上昇させられる(ステップS15)。
【0079】
続いて、リコートユニット30がy軸正方向へと移動することで、スラリー吐出ポンプ40が所定のスラリー吐出位置へと移動させられる。スラリー吐出位置は、造形対象物のサイズや面積などに応じて適宜に設定されてよいが、通常は、
図12に示すように、造形テーブル11のy軸方向奥側に設定される。係るスラリー吐出位置にて、下端の吐出口44が開状態とされたスラリー吐出ポンプ40がx軸方向に移動しつつ、スクリュー42を必要な回転数にて回転させられることで、所定量のスラリーが造形テーブル11上にライン状に吐出される(ステップS16)。
【0080】
なお、吐出開始点と吐出終了点の組は一組だけではなく、y軸方向に適宜の間隔Δpを開けて複数組設定されてもよい。そのようなスラリーの吐出態様を、マルチライン吐出と称する。必要な量のスラリーが全て吐出されるまで、吐出動作は行われる(ステップS17)。なお、マルチライン吐出が行われる場合、リコータ31の先端が吐出されたスラリーに触れないように、スラリー吐出ポンプ40の下端とリコータ31の下端との距離が好適に設定されている必要がある。
【0081】
吐出時のスラリー吐出ポンプ40内のスラリーの残量はスラリーレベルセンサ41にて常時監視され、規定量を下回った場合、吐出と吐出の間などの適宜のタイミングで2次供給部45からスラリーが補給される。
【0082】
スラリーの吐出が完了すると(ステップS17でYES)、吐出口44はシャッター等により閉状態とされ、次いで、リコートユニット30はリコート開始位置へと移動する(ステップS18)。リコートユニット30の移動に続き、造形テーブル11が、吐出・露光位置11bからリコート位置11cへと上昇させられる(ステップS19)。その際、リコート位置11cとリコータ31の下端との距離は、形成しようとするスラリー膜SLFの厚みに応じた塗布高さh5とされる。なお、リコート開始位置は、通常、リコータ31がスラリーの吐出範囲よりもさらにy軸方向正側に位置するように設定される。
【0083】
造形テーブル11がリコート位置11cに到達すると、リコートユニット30はy軸負方向へと移動する。これにより、
図13に示すように、造形テーブル11上に吐出されていたスラリーがリコータ31にて掃引されて、所定厚みのスラリー膜SLFが形成される(ステップS20)。
【0084】
リコータ31がy軸方向において所定距離移動することにより、造形テーブル11の所定範囲にスラリー膜SLFが形成されると、リコートユニット30はy軸負方向にさらに移動して、待機位置(リコータ清掃位置)に戻る(ステップS21、ステップS22でNO)。
【0085】
リコートユニット30が待機位置(リコータ清掃位置)に到達すると(ステップS22でYES)、それまで待機高さ32cにて待機していた清掃ユニット32が、
図14に示すように清掃位置(使用高さ32a)まで上昇する(ステップS23)。清掃ユニット32はx軸方向を往復移動し、これによってリコータ31に付着(残存)しているスラリーは掻き落とされる(ステップS24)。すなわち、リコータ31が清掃される。
【0086】
清掃完了後、清掃ユニット32はx軸方向初期位置へと待避し(ステップS25)、さらには造形時待機高さ32bに待避する(ステップS26)。
【0087】
一方、リコータ31によるスラリー膜SLFの形成が完了し、リコートユニット30が清掃位置へと移動した後(ステップS22でYES)には、リコータ31の清掃と平行して、プロジェクタ21によるパターン露光が進行する。
【0088】
具体的にはまず、スラリー膜SLFが形成されてなる造形テーブル11がリコート位置11cから吐出・露光位置11bまで移動させられる(ステップS28)。続いて、露光ユニット20が露光開始位置に配置される(ステップS29)。より詳細には、露光ユニット20はy軸負方向を移動させられ、プロジェクタ21のx軸方向における位置が調整される。
【0089】
プロジェクタ21が所定の露光開始位置に配置されると、あらかじめ転送済みの露光パターンデータに基づき、露光ユニット20のy軸方向における連続往復移動と、プロジェクタ21のx軸方向におけるステップ移動との組み合わせによって、
図15に示すように、スラリー膜SLFが、プロジェクタ21から照射される露光用光ELにて、ストリップ単位に露光される(ステップS30)。
【0090】
より詳細には、露光ユニット20のy軸方向への一度の移動により1つのストリップについて露光が完了した地点で、露光(描画)対象たるストリップがまだ残っている場合(ステップS31でNO)、次のストリップを対象としたストリップデータの作成(ステップS11)、露光パターンデータの生成(ステップS12)、および露光パターンデータの転送(ステップS13、ステップS14)が行われる。その上で、プロジェクタ21がx軸方向にステップ移動し、露光ユニット20がy軸方向を直近の描画時とは反対向きに移動することによって、新たに生成された露光パターンデータに基づく露光が行われる。
【0091】
全ストリップについて描画が完了すると(ステップS31でYES)、露光ユニット20は待機位置へと待避する(ステップS32)。その際には、プロジェクタ21も初期位置に移動する。なお、通常は、全ストリップについて描画が完了するまでの時点で、リコータ31の清掃(ステップS24)は完了しており、清掃ユニット32は造形時待機高さ32bへと移動している(ステップS27でYES)。
【0092】
以降、さらに別の層(スラリー膜SLF)について描画の必要がある場合(ステップS33でNO)、ステップS11以降の処理が繰り返される。つまりは、スラリー膜SLFの形成とパターン露光とが繰り返される。なお、係る場合においてスラリー膜SLFが形成されるのは、直近に露光が行われたスラリー膜SLFである。
図16は、全ての層の露光が完了することで、未露光部分に埋もれた形で造形物(スラリー膜SLFの積層体LB)が完成した状態を示している。
【0093】
造形物が完成すると(ステップS33でYES)、未露光部分を除去して造形物を取り出すために、
図17に示すように、造形テーブル11が初期位置11aまで下降させられる(ステップS34)。また、併せて、それまで造形時待機高さ32bに位置していた清掃ユニット32が待機高さ32cまで下降する(ステップS35)。
【0094】
さらに、待機位置52aに位置しているフィルムグリッパ52がピン嵌合にてリコートユニット30に合体される(ステップS36)。続いて、リコートユニット30がy軸正方向へと移動し、フィルムグリッパ52を造形テーブル11のy軸方向負側の両側端部の把持位置52bに配置させる(ステップS37)。フィルムグリッパ52は、係る位置にて、造形テーブル11において造形物の下に敷かれているフィルムFの端部を把持する(ステップS38)。
【0095】
一方、係る把持と並行して、通常位置12aにて待機していた補助テーブル12が隣接位置12bにまで移動させられる(ステップS39)。これにより、造形物およびフィルムFが載置されてなる造形テーブル11と補助テーブル12とが面一となる。この状態で、エア吸着吹出機構11ARが負圧を与えることによるフィルムFの造形テーブル11に対する真空吸着は解除され、代わって、エア吸着吹出機構11ARは、造形物を浮上させるために必要なゾーンの吸着溝11gさらには吸着溝12gに対し順次にかつ選択的にエアを供給する(ステップS40)。
【0096】
図18は、係るエア供給が行われている様子を示している。エア吸着吹出機構11ARはまず、コントローラCの制御により、造形物の位置に対応するゾーンの吸着溝11gに対しエアを供給する。エア供給が開始されると、それまで造形テーブル11に接していたフィルムFの裏面がエアにより上向きの力を受け、フィルムFの全部または一部が造形物ともどもわずかに浮き上がる。これにより、フィルムFの全部または一部および造形物は、造形テーブル11と非接触の状態となるので、水平方向に力を加えての搬送が容易となる。なお、
図18の例では、まだ造形物が到達していない補助テーブル12の吸着溝12gからのエアの吹き出しは停止されている。
【0097】
係る非接触状態が実現されたタイミングで、リコートユニット30が移動することによってフィルムグリッパ52がy軸負方向を待機位置52aに向けて移動する。フィルムグリッパ52はエアによって浮き上がっているフィルムFを把持しているので、フィルムグリッパ52の移動に伴い、フィルムFおよびその上の造形物が、造形テーブル11の上から補助テーブル12の上へと移動する(ステップS41)。
【0098】
図19および
図20は、係る移動の様子を示している。
図19に示すように、フィルムF上に載置された造形物を搬送する際、コントローラCは、エア吸着吹出機構11ARに、造形物の位置に対応するゾーンの吸着溝11gおよび12gからエアを供給させ、当該ゾーンから外れた吸着溝11gおよび12gからのエアの供給を停止させる。これにより、
図20に示すように、造形物をフィルムFの一部または全部とともに造形テーブル11および補助テーブル12から浮上させた状態で搬送が行われる。
【0099】
フィルムFおよび造形物の補助テーブル12への移動が完了すると、フィルムグリッパ52によるフィルムFの把持が解除される(ステップS42)。続いて、フィルムグリッパ52が合体してなるリコートユニット30はy軸方向を移動させられて待機位置へと戻され(ステップS43)、フィルムグリッパ52のリコートユニット30に対する合体が解除される(ステップS44)。
【0100】
さらに、造形物がフィルムFともども載置された補助テーブル12は、隣接位置12bから通常位置12aへと戻される。補助テーブル12は、係る通常位置12aにおいて固定部12Fから着脱自在となっており、作業者は、
図21に示すように、補助テーブル12を固定部から取り外し、造形物を前記補助テーブル12ごとあらかじめ用意した搬送台CVに移載し、光造形装置1の外部へと搬送する(ステップS45)。これにより、造形物に直接に触れることなく搬送が行えるので、破損等のおそれが低減され、安定的な搬送が可能となる。
【0101】
以上が、本実施の形態に係る光造形装置1において実現される、造形物の作成とその後の取り出しとの手順である。本実施の形態に係る光造形装置1は特に、大型の造形物を作成する場合であっても、その取り出しが容易かつ確実に行えるようになっている点で特徴的である。
【0102】
具体的には、造形を行うための造形テーブル11の表面に設けた、真空吸着用の複数の吸着溝に対し、エアを供給可能としてなる。また、造形テーブル11とは別に、造形物の取り出し口として補助テーブル12を設け、係る補助テーブル12においても、造形テーブル11と同様にエアを供給可能としてなる。これにより、大型化、大面積化した造形物であっても、エアにて浮上させ、造形テーブル11および補助テーブル12と非接触とすることができるので、その下に敷いたフィルムを把持しての造形物の水平搬送(移載)が容易となる。
【0103】
加えて、補助テーブル12は、固定部12Fから着脱自在に設けられてなる。換言すれば、補助テーブル12は、それ自体に可搬性を有する。それゆえ、造形テーブル11から移載された造形物を、補助テーブル12ごと外部へと搬送することができる。これにより、造形物に接触することなく搬送が行えるので、破損等のおそれが低減された安定的な搬送が可能となる。
【0104】
<スラリー吐出ポンプの詳細構成>
図22は、スラリー吐出ポンプ40の詳細構成を示す断面図である。
図23は、スラリー吐出ポンプ40とスクリュー42との配置関係について説明するための図である。
【0105】
スラリー吐出ポンプ40は、上述したように、その内部に造形用のスラリーSLを貯留し、造形に際して該スラリーSLを造形テーブル11またはフィルムの上に吐出する機能を有するポンプである。
【0106】
図22に示すように、スラリー吐出ポンプ40は、下端先細の漏斗状となった吐出部40Aと、該吐出部40Aの上部に連続する円筒状の貯留部40Bとを備える。また、吐出部40Aの先端には、キャップ40Cが付設されてなる。キャップ40Cは、その内部に、回転式のスラリーストッパー40Dを備えている。スラリーSLの粘度は温度によっても変化するため、装置周辺の温度上昇によりスラリーSLの粘度が低下し、液だれを起こす可能性がある。スラリーストッパー40Dは、このようなスラリーSLの液だれを防止するために設けられてなる。
【0107】
また、キャップ40Cの下端は、吐出口44となっている。吐出口44は、シャッター等により、開状態と閉状態が切り替えられるようになっている。キャップ40CにおけるスラリーSLの通過部分の穴径は3mm~5mmが好ましい。
【0108】
さらに、スラリー吐出ポンプ40の内部には貯留部40Bから吐出部40Aにかけてスクリュー42が挿嵌されてなる。吐出口44が開状態にあるときに、スクリュー駆動モータ42Mにてスクリュー42が回転駆動されることで、スラリー吐出ポンプ40の内部のスラリーSLがキャップ40Cを通じて吐出されるようになっている。
【0109】
より詳細には、スクリュー42の回転速度を変えることによって吐出量が変わるが、これに加えて、スクリュー42とスラリー吐出ポンプ40とスクリュー42との距離、特に、吐出部40Aおよびキャップ40Cとスクリュー42との距離を調整することによって、その回転数による吐出特性全体を変化させることができる。
【0110】
なお、スラリーSLは高粘度で液だれしにくいことから、スラリー吐出ポンプ40の内壁面とスクリュー42の外形との最小距離は、1mm~2mmとされる。
図23(a)のようにスクリュー42がキャップ40Cから離隔している場合においては吐出部40Aの内壁面とスクリュー42の外形との距離g1が当該最小距離に該当し、
図23(b)のようにスクリュー42がキャップ40Cに近接している場合においてはキャップ40Cとスクリュー42の外形との距離g2が当該最小距離に該当する。
【0111】
なお、
図23(a)に示すように、スクリュー42をキャップ40Cから離隔させると、回転数に対する吐出量の変化は小さくなり、吐出量は一定となる(飽和する)。
【0112】
スクリュー42は、一方向の螺旋を有するものであってもよいし、その長手方向の中央付近から下部の螺旋の向きと上部の螺旋の向きが逆方向となるものであってもよい。後者の場合、下部におけるスクリュー42の回転の向きがキャップ40CからスラリーSLを吐出させる向きであるとすると、上部におけるスクリュー42の回転の向きは、スラリーSLを上方に送ってこれを攪拌する向きとなる。係る攪拌がなされると、貯留部40Bに貯留されているスラリーSLの上面が凹状になることが抑制されるので、より適切にスラリーレベルセンサ41によるスラリーの残量検出を行うことができる。さらに、係る攪拌がなされると、スラリーSLの粘度も均一化される。
【0113】
また、上述のように、スラリー吐出ポンプ40にはポンプスクレイパ43が備わっている。
図24は、ポンプスクレイパ43の詳細構成を例示する図である。
【0114】
図24に示すように、ポンプスクレイパ43は、棒状の支持部43aと、該支持部43aの下端部に設けられた二重円環状の本体部43bとを備える。また、ポンプスクレイパ43は、支持部43aに連結された昇降機構(アクチュエータ)43d(
図22)にて昇降自在とされてなる。
【0115】
ポンプスクレイパ43は、スラリー吐出ポンプ40の貯留部40Bに挿入され、かつ、中央部分にスクリュー42が挿嵌された状態で、使用される。具体的には、スクリュー42を動作させてスラリーSLを吐出させている間の、あるいは、スラリーSLが吐出されない間の、適宜のタイミングで、昇降機構43dにて支持部43aが上下動させられる。係る上下動に伴い、本体部43bがスラリー吐出ポンプ40の内壁面に付着しているスラリーSLを掻き落し、貯留部40BにおいてスラリーSLの液面を均一化させる。これにより、スラリーレベルセンサ41は適切にスラリーの残量を監視することができる。
【0116】
ポンプスクレイパ43は、例えば、金属および/または硬度の高い樹脂にて形成されてなる。その理由は、動作の際に高粘度のスラリーSLから受ける抵抗力によってポンプスクレイパ43自身が曲げられることがあるからである。
【0117】
ポンプスクレイパ43は、貯留部40Bの内壁面から1mm~3mm離隔させて設けられる。係る場合、高粘度のスラリーSLが潤滑剤のように働くため、両者の直接の摩擦が生じることは通常はない。
【0118】
なお、ポンプスクレイパ43の面積が大きいとスラリーSLによる抵抗は増大する。一方で、吐出速度を高度に一定に保つ必要からは、スラリー吐出ポンプ40内のスラリーSLはできるだけ一様の粘度であることが望ましいが、スラリーSLからの抵抗を抑制するべくポンプスクレイパ43の外径を貯留部40Bの内径と大きく異ならせた場合、スラリーSLの粘度の一様性が失われることがある。ポンプスクレイパ43のせん断応力によるスラリーSLの軟化はポンプスクレイパ43から数cmの距離にしか及ばないからである。
【0119】
本実施の形態においては、この点を鑑み、ポンプスクレイパ43の本体部43bを二重円環状とし、スラリーSLを掻き落す機能を好適に確保しつつ、スラリーSLの粘度の一様性も好適に確保されるようにしている。
【0120】
好ましくは、ポンプスクレイパ43の本体部43bの外縁には、薄い樹脂膜43cが設けられる。係る場合、スラリーSLの掻き取り性能が高められる。また、仮に樹脂膜43cが貯留部40Bの内壁と接触したとしても、摩耗するのは樹脂膜43cであり、係る樹脂膜43cの成分がスラリーSL内に混入し、さらには造形物にまで混入したとしても、当該樹脂成分は後工程として行われるセラミックス成分の焼結工程にて揮発するので、最終製品にて係る混入が問題になることはない。
【0121】
<2次供給部の詳細構成>
図25は、2次供給部45の詳細構成を示す断面図である。なお、
図25に基づく以降の説明においては、2次供給部45を、スラリー供給装置100と称する。
【0122】
スラリー供給装置100は、樹脂製のスクリュー101と、該スクリュー101が収容されるパイプ102と、スクリュー101の一方端部側に設けられてなり、スクリュー101をパイプ102内で軸周りに回転させる軸受部103と、スラリー供給装置100を支持する基台104と、前記パイプ102の先端(上端)に接続されてなる、外部に対するスラリーSLの供給口である供給部105と、スラリーSLが貯留される貯留部106aの下端部に供給路106bが接続されたスラリー容器106とを、主として備える。
【0123】
スラリー供給装置100においては、概略、スクリュー101の回転動作により、スラリー容器106に貯留されているスラリーSLがスクリュー101によってパイプ102内を搬送され、供給部105を通じて外部へと供給される。これにより、該供給部105の先端105aからスラリー吐出ポンプ40に対しスラリーSLを補充することが、可能となっている。
【0124】
より詳細には、パイプ102は水平面から30度以上60度以下の角度にて傾斜させる態様にて、基台104に対し取り付けられてなり、パイプ102の内部には棒状のスクリュー101が挿入されてなる。なお、パイプ102の傾斜角度を60°よりも大きくしたとしても、スラリーSLの搬送は不可能ではなく、垂直に押し上げ搬送することも可能ではあるが、パイプ102の角度が大きいほど、また、パイプ102および供給部105における搬送長が大きいほど、単位時間あたりの搬送量は小さくなる。
【0125】
スクリュー101の外径とパイプ102の内径との差は1mm~2mmとなっている。これは、スラリーSLはチキソ性を有しているため、スクリュー101が回転する場合、付着面から遠いところでは粘度が低くなるものの、付着面まで剪断応力は及びにくい、という点を考慮している。スクリュー101の外径とパイプ102の内径との差を2mm以下とすることにより、付着面まで剪断応力を及ぼすことができる。一方、係る差を1mm以上とすることにより、スクリュー101とパイプ102とが接触する可能性を低減することができる。
【0126】
また、スクリュー101のピッチpsは20mm~40mmとなっている。ピッチpsを増加させていくと、20mmあたりから、スクリュー101に付着する高粘度のスラリーSLが減少し、単位ピッチあたりのスラリー搬送量が顕著に増加する。一方、ピッチpsが40mmよりも大きい場合、回転数が同じであるならば、ピッチpsの値によらずスラリー搬送量は飽和する。それゆえ、スラリー搬送の効率という点からは、スクリュー101のピッチpsは20mm~40mmとするのが好ましい。
【0127】
パイプ102には金属製のものを使用可能である。これは、スラリー供給装置100の使用時にはスラリーSLが膜としてパイプ102の内面に付着するため、スラリーSLに含まれるセラミックス成分がパイプ102の内壁にこすりつけられることに起因してパイプ102が摩耗する可能性が低いからである。
【0128】
スクリュー101の下端部には軸受部103が設けられてなる。軸受部103は、軸受(ベアリング)を所定距離離隔させて2段に備えており、それら軸受が図示しない駆動手段にて同期的に駆動されることにより、スクリュー101がパイプ102内で軸周りに安定的に回転するようになっている。
【0129】
供給部105は、任意の形状に折曲自在な管状の部材にて構成されてなる。好ましくは、供給部105の内径は、12mm~18mmであってかつパイプ102の内径よりも小さな値とされる。なお、供給部105の内径をパイプ102の内径よりも小さくすることは、スラリーSLに抵抗を与えることになり、単位時間あたりの搬送量を低減させる要素となるが、一方で、スラリーSLの切れが良くなり、スラリーSLのぼた落ちを防ぐという効果を奏する。
【0130】
また、傾斜配置されてなるパイプ102の途中位置であって、該パイプ102が基台104にて下方支持されてなる箇所の上方には、スラリーSLが貯留されるスラリー容器106が備わっている。スラリー容器106は、円錐形の貯留部106aの下端から供給路106bが延在する垂直姿勢にて備わっており、供給路106bの先端がパイプ102に接続されてなる。供給路106bの内径は、パイプ102の内径と略同一となっている。これにより、空気の混入が最小化され、スラリー容器106からパイプ102へのスラリーSLの搬送が効率化されてなる。
【0131】
また、パイプ102の基台104の近傍には、ドレイン111が設けられてなる。ドレイン111は、パイプ102内に残ったスラリーSLを回収する際に使用される。概略的にいえば、供給部105を通じてスラリーSLを排出させた後、スラリー容器106の供給路106bに中栓112を嵌め込んだうえでドレイン111を開放し、係る状態でスクリュー101を供給時とは逆回転させることにより、パイプ102内に残存するスラリーSLを回収することが出来る。ドレイン111は例えば、使用するスラリーSLの種類を変更したい場合などに、使用される。
【0132】
また、貯留部106aの上端107は、外部からのスラリーSLの充填が可能に構成されている。具体的には、外部から搬送されてきた、スラリーSLが充填されたスラリーケース(スラリー補充容器)108が、その開口部109を下方に向けた姿勢にて、貯留部106aの上端107の所定位置に設定された充填部107aに載置され、かつ、開口部109が充填部107aに設けられた開口と連続するようになっている。これにより、スラリーケース108が載置された状態においては、該スラリーケース108は充填部107aの蓋としての役割も、果たすようになっている。スラリーケース108は、開口部109が斜め下方(例えば、開口面から外部に向かう法線方向と鉛直下方とのなす角度が0度を超え90度未満となる角度)に向いた姿勢にて、充填部107aに載置されてもよい。この場合、スラリー供給装置100は、スラリーケース108を所定角度で保持するストッパを備えてもよい。
【0133】
貯留部106aの上端には、載置されたスラリーケース108の内壁面に付着したスラリーSLを掻き落として貯留部106aに落下させる回転スクレイパ110が設けられてなる。回転スクレイパ110は、スラリーケース108が充填部107aに載置されたときに開口部109からスラリーケース108の内部に入り込むように、設けられてなる。回転スクレイパ110は、ポンプスクレイパ43と同様の理由から、スラリーケース108の内面から1mm~3mm離隔させて設けられ、図示しない駆動手段(アクチュエータ)にて駆動されることにより、スラリーケース108内にてその内壁面に沿って周回移動する。これにより、スラリーケース108に充填されてなるスラリーSLは全て、スラリー容器106に移し替えられるようになっている。係る回転スクレイパ110は、ポンプスクレイパ43と同様の理由から、金属または硬度の高い樹脂にて形成されてなる。
【0134】
好ましくは、回転スクレイパ110の少なくともスラリーケース108に近い側の側部には薄い樹脂膜110aが設けられる。係る樹脂膜110aは、スラリー吐出ポンプ40内に備わるポンプスクレイパ43に設けられる樹脂膜43cと同様、スラリーSLの掻き取り性能を高める目的で設けられる。また、樹脂膜110aは、造形物に混入しても問題がない点についても、樹脂膜43cと同様である。
【0135】
より詳細には、スラリーケース108は、調製・脱泡された新たなスラリーSLをスラリー供給装置100に対し供給するために使用されるものである。それら調製・脱泡に使用されたスラリーケース108がそのまま、スラリー供給装置100へのスラリーSLの供給に使用されてもよい。この場合、作業者は、スラリーケース108を、充填部107aへの載置に先立ち該充填部107aの近傍に備わる蝶番114に回転可能に固定する。蝶番114は、スラリーケース108を、開口部109が上方または斜め上方(例えば、開口面から外部に向かう法線方向と鉛直上方とのなす角度が0度以上45度以下となる角度)に向いた姿勢から開口部109が下方または斜め下方に向けた姿勢に回転させる。
【0136】
スラリーケース108を調製・脱泡に使用することに代えて、調製・脱泡された新たなスラリーSLが入った別の容器をスラリーケース108にセットしてもよい。この場合、作業者は、スラリーケース108の開口部109が上方または斜め上方に向けられた状態で、当該別の容器の開口の方向とスラリーケース108の開口部109の方向とが同一になるように、当該別の容器をセットする。スラリーケース108は、別の容器のセット前に、予め、蝶番114にて、充填部107aに対して回転可能に固定されていてもよい。
【0137】
スラリーケース108は、矢印AR21にて示す該蝶番114周りの回転動作によって、開口部109を下方または斜め下方に向けた状態で充填部107aへと載置するようになっている。これにより、脱泡からスラリー容器106への充填までのスラリーSLの取り扱いが効率化されてなる。なお、係る回転動作の際、回転スクレイパ110は、スラリーケース108と干渉しない位置に配置される。蝶番114がアクチュエータを備え、当該アクチュエータがコントローラCの制御により上記回転動作を行ってもよい。
【0138】
また、水平面に対する貯留部106aの内壁面の傾斜は45度以上70度以下とされてなる。そして、貯留部106aにも、回転スクレイパ115が付設されてなる。これらは、貯留部106aに対するスラリーの付着・滞留をなるべく防ぐための構成である。
【0139】
貯留部106aの傾斜が大きいほど、スラリーSLは付着しにくい。貯留部106aの内壁面の傾斜を45度以上とすることにより、スラリーSLが内壁に付着しにくくすることができる。また、貯留部106aの内壁面の傾斜を45度以上とすることにより、スラリー容器106を短くし、スラリーSLの収容効率を向上させることができる。また、貯留部106aの内壁面の傾斜を70度以下とすることにより、スラリーケース108からのスラリーSLの充填位置を低くして作業性を向上させることができる。
【0140】
回転スクレイパ115は、貯留部106aの内壁面に付着したスラリーSLを掻き落として落下させるためのものである。回転スクレイパ115も、ポンプスクレイパ43と同様の理由から、貯留部106aの内面から1mm~3mm離隔させて設けられ、図示しない駆動手段にて駆動されることにより、スラリーケース108内にてその内壁面に沿って周回移動する。これにより、スラリーケース108に充填されてなるスラリーSLは全て、スラリー容器106に移し替えられるようになっている。係る回転スクレイパ115も、ポンプスクレイパ43と同様の理由から、金属または硬度の高い樹脂にて形成されてなる。
【0141】
好ましくは、回転スクレイパ115の少なくとも貯留部106aに近い側の側部には薄い樹脂膜115aが設けられる。係る樹脂膜115aは、ポンプスクレイパ43や回転スクレイパ110に設けられる樹脂膜43cおよび樹脂膜110aと同様、スラリーSLの掻き取り性能を高める目的で設けられる。また、樹脂膜115aは、造形物に混入しても問題がない点についても、樹脂膜43cおよび樹脂膜110aと同様である。
【0142】
本実施の形態に係る光造形装置1においては、以上のような構成を有するスラリー供給装置100を、スラリー吐出ポンプ40にスラリーを補充するための2次供給部45として使用する。具体的には、造形処理の実行中、スラリーレベルセンサ41にてスラリー吐出ポンプ40内のスラリーの残量を監視し、係る残量が規定値より少なくなったタイミングで、スラリー吐出ポンプ40を所定の補充位置40bに移動させ、スラリー供給装置100のスクリュー101を動作させて、スラリー吐出ポンプ40に対しスラリーを補充する。なお、スラリー供給装置100に対するスラリーの補充は、スラリーケース108の容量等を鑑みた適宜のタイミングで行われてよい。例えば、スラリー吐出ポンプ40に対するスラリーの補充量と、スラリーケース108の容量とが同程度であるならば、スラリー吐出ポンプ40に対するスラリーの補充に続いて、スラリーケース108からスラリー供給装置100へとスラリーを補充するようにしてもよい。
【0143】
係るスラリー供給装置100を2次供給部45として有することで、本実施の形態に係る光造形装置1においては、大型のあるいは大面積の造形物を造形する場合であっても、造形材料の供給が好適に確保されるようになっている。
【0144】
<マルチライン吐出の詳細>
図26は、本実施の形態に係る光造形装置1においてマルチライン吐出が行われる場合の、吐出態様を説明するための図である。
【0145】
図26においては、あらかじめ設定されたスラリーの塗布領域REに対し、スラリーのマルチライン吐出により、4つのラインL1~L4を形成する場合が想定されている。より具体的には、リコータ31の掃引方向は矢印AR22にて示すy軸負方向となっており、4つのラインL1~L4は、リコータ31の初期位置から遠い側から順に、所定の距離Dだけ離隔させて形成されており、かつ、ラインL1と塗布領域REの端部との距離dは、距離Dよりも小さくなっている。そして、リコータ31は、その初期位置から最も近いラインL4の位置から塗布領域REの端部までの距離DAを移動することによって、塗布領域REにスラリーSLを塗布するようになっている。
【0146】
マルチライン吐出では、各ラインともにスラリーの吐出量は同じとすると、ラインL4に必要以上のスラリーを使用することになる場合がある。必要に応じてライン毎の吐出量を変えることにより、高価なスラリーを適切に使用することができる。
【0147】
例えば、
図26の場合であれば、ある層のスラリーを塗布する場合に、リコータ31にあらかじめスラリーが付着しているかどうかで、それぞれのラインL1~L4における吐出量を違えるのが好ましい。いったん掃引を行ったリコータ31の表面にはスラリーが厚く堆積するため、スラリーの付着の有無によって、掃引に際し必要なスラリーの量が変わってくるからである。新たに行うスラリー塗布が最初のスラリー塗布である場合、または前回のスラリー塗布後にリコータ31を洗浄しなかった場合は、新たなスラリー塗布を開始する前にリコータ31にスラリーの堆積が無い又は少ない状態となる。よって、最初のラインL4から次のラインL3にリコータ31が到達した時点でラインL4のスラリーの全てがスラリー膜SLFに使用されるわけでなく、一部がリコータ31に堆積する。よって、ラインL4におけるスラリー吐出量は、この堆積分を含む。これ以降のラインL2、L1、及び塗布領域REの端部にリコータ31が到達した時点でリコータ31に堆積されるスラリー量は、リコータ31がラインL3に到達した時点でリコータ31に堆積されるスラリー量とほぼ同じものとなる。係る観点からは、ラインL4におけるスラリーの吐出量よりも、ラインL1~L3におけるスラリーの吐出量は小さくてよいことになる。
【0148】
さらには、掃引の際のリコータ31の移動距離によっても、スラリーの吐出量は違えることができる。例えば、
図26の場合であれば、ラインL1~L4間の距離Dに比して、最後に掃引されるラインL1と塗布領域REの端部までの距離dは小さい。このことは、ラインL1における吐出量はラインL2、L3における吐出量よりもさらに小さくてよいことを意味する。これは、リコータ31の移動距離DAが、ライン間の間隔Dの整数倍ではない場合、最後に掃引されるラインにおける吐出量を、ライン間の間隔Dに対する間隔dの比率に応じて低減することにより、対応可能である。
【0149】
各ラインにおいてスラリーの吐出量を違える具体的な方法としては、スラリー吐出ポンプ40の速度を違えることや、スラリー吐出ポンプ40におけるスクリュー42の回転速度を違えることなどが例示される。前者の場合、スラリー吐出ポンプ40の移動速度が大きいほど、吐出量は小さくなる。後者の場合、スクリュー42の回転速度が大きいほど、吐出量は大きくなる。
【0150】
<他の実施の形態>
上述した実施の形態では、光硬化性樹脂にセラミック粉体を混錬したスラリーを用いた。これに代えて、セラミック粉体を含まない光硬化性樹脂のみのスラリーを用いてもよいし、セラミック粉体に代えて金属粉体などの他の材料を含むスラリーを用いてもよい。
【0151】
上述した実施の形態では、造形テーブル11および補助テーブル12の複数のエア供給口として複数の吸着溝11g、12gを用いた。これに代えて、複数の吸着溝11g、12gとは別に造形テーブル11および/または補助テーブル12に設けられた溝部または複数の孔を複数のエア供給口として用いてもよい。この場合、複数のエア供給口にエア吸着吹出機構11ARの圧縮空気ポンプが接続される。また、造形テーブル11および/または補助テーブル12において、真空吸着(およびエア供給)のための複数の吸着溝11g、12gに代えて複数の吸着孔を用いてもよい。また、補助テーブル12に別途複数のエア供給口があれば、複数の吸着溝11gは無くてもよい。
【0152】
上述した実施の形態では、フィルムを造形テーブル11に吸着固定した。これに代えて、フィルムの両端をグリッパで把持して下方に引っ張ることにより造形テーブル11に固定してもよい。
【0153】
上述した実施の形態では、搬送手段として、吸着パッドユニット51およびフィルムグリッパ52を含む搬送装置(キャリア)を用いた。これに代えて、他の構成の保持装置(ホルダー)を備えた搬送装置を用いてもよい。また、搬送装置がフィルム搬送用のアクチュエータを備えていてもよい。また、上述した実施の形態において、補助テーブル12に載置されたフィルムをグリッパで把持した状態で造形テーブル11に搬送してもよい。また、造形テーブル11に載置されたフィルムを吸着パッドで吸着した状態で補助テーブル12に搬送してもよい。
【0154】
上述した実施の形態では、露光手段として、プロジェクタ21を備えた光源である露光ユニット20を用いた。これに代えて、ガルバノミラーを用いたレーザスキャニング、液晶シャッター等の他の光源を用いてもよい。
【0155】
上述した実施の形態では、監視手段として、スラリーレベル41センサを用いた。これに代えて、監視手段として、スラリーの供給開始からの時間を計測するタイマーを用い、コントローラCが、タイマーが計測した時間に基づいて、スラリーの残量が規定値よりも少なくなったタイミングでスラリー吐出ポンプ40にスラリーを補充してもよい。さらに、他の構成の監視手段を用いてもよい。
【0156】
上述した実施の形態では、一つの支持部43aおよび二重円環状の本体部43bを有するポンプスクレイパ43を用いた。これに代えて、他の形状を有するポンプスクレイパを用いてもよい。例えば、ポンプスクレイパは、2本またはそれ以上の支持棒を有してもよし、他の形状の本体部を有してもよい。また、ポンプスクレイパは、上下運動に代えて、回転運動など、他の動作をするものであってもよい。
【0157】
上述した実施の形態では、回転スクレイパ110、115を用いた、これに代えて、他の構成のスクレイパを用いてもよい。
【符号の説明】
【0158】
1 光造形装置
11 造形テーブル
11g、12g 吸着溝
12 補助テーブル
12F (補助テーブルの)固定部
20 露光ユニット
21 プロジェクタ
30 リコートユニット
31 リコータ
32 清掃ユニット
40 スラリー吐出ポンプ
41 スラリーレベルセンサ
42 スクリュー
42M スクリュー駆動モータ
43 ポンプスクレイパ
44 吐出口
45 2次供給部
51 吸着パッドユニット
52 フィルムグリッパ
100 スラリー供給装置
101 スクリュー
102 パイプ
103 軸受部
104 基台
105 供給部
106 スラリー容器
108 スラリーケース
109 開口部
110 回転スクレイパ
114 蝶番
115 回転スクレイパ
F フィルム
LB 積層体
SLF スラリー膜
【手続補正書】
【提出日】2022-02-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元造形物を得るための光造形装置であって、
造形テーブルと、
前記造形テーブルの上に、内部に貯留したチキソ性を有するスラリーを吐出可能な吐出手段と、
前記造形テーブルの上に吐出された前記スラリーを掃引し、所定の厚みのスラリー膜を形成する掃引手段と、
3次元形状データに基づいてあらかじめ作成された露光パターンに従って前記スラリー膜を露光する露光手段と、
前記3次元造形物の作製途中において前記吐出手段における前記スラリーの残量を監視する監視手段と、
前記吐出手段の内部に対し昇降させられることにより、前記吐出手段の内面まで前記スラリーに剪断応力を及ぼして前記スラリーを掻き落とし、前記スラリーの液面を均一化させるスクレイパと、
前記スクレイパを昇降させる昇降機構と、
前記吐出手段に追加のスラリーを補給する補給手段と、
前記監視手段の監視結果に基づいて、前記残量が規定値より少なくなった状態における所定のタイミングで前記補給手段に前記吐出手段への前記追加のスラリーの補給を実行させる制御手段と、
を備えることを特徴とする、光造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光造形装置であって、
前記補給手段が、
水平面から30度以上60度以下傾斜させて設けられたパイプと、
前記パイプ内に前記パイプと非接触に収容されてなり、ピッチが20mm~40mmであるスクリューと、
前記パイプ内で前記スクリューを回転させる回転手段と、
前記パイプの途中位置に接続されてなり、前記追加のスラリーを貯留するスラリー容器と、
前記パイプの上端に接続されてなる、前記追加のスラリーの供給口である供給部と、
を備え、
前記回転手段にて前記スクリューが回転させられることにより、前記スクリューが前記パイプ内で前記スラリー容器に貯留されてなる前記追加のスラリーを搬送し、前記供給部を通じて前記吐出手段に供給する、
ことを特徴とする、光造形装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光造形装置であって、
前記スクリューと前記パイプの内面との距離は2mm以下であり、
前記回転手段にて回転させられた前記スクリューが前記パイプの内面まで前記追加のスラリーに剪断応力を及ぼすことにより、前記スラリー容器に貯留されてなる前記追加のスラリーを前記パイプ内において粘度を下げつつ搬送し、前記供給部を通じて前記吐出手段に供給する、
ことを特徴とする、光造形装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の光造形装置であって、
前記スラリー容器の貯留部が水平面から30度以上70度以下の角度の傾斜面を含む、
ことを特徴とする、光造形装置。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の光造形装置であって、
前記スラリー容器内で前記スラリー容器の内面に沿って移動することにより、前記スラリー容器の前記内面に付着してなる前記追加のスラリーを掻き取るスラリー容器スクレイパ、
をさらに備えることを特徴とする、光造形装置。
【請求項6】
請求項2ないし請求項5のいずれかに記載の光造形装置であって、
前記スラリー容器の上端の所定位置に開口部を下方または斜め下方に向けた姿勢にて載置可能とされてなる補充容器、
をさらに備え、
前記補充容器は、新たなスラリーを保持し、前記開口部を下方または斜め下方に向けた姿勢にて前記所定位置に載置されることにより、前記新たなスラリーを前記追加のスラリーとして前記スラリー容器に供給する、
ことを特徴とする、光造形装置。
【請求項7】
請求項6に記載の光造形装置であって、
前記補充容器が前記所定位置に載置された状態において前記補充容器内で前記補充容器の内面に沿って移動することにより、前記補充容器の前記内面に付着してなる前記追加のスラリーを掻き取る補充容器スクレイパ、
をさらに備えることを特徴とする、光造形装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の光造形装置であって、
前記スラリー容器に対して前記補充容器を回転可能に固定し、前記開口部を上方または斜め上方に向けた姿勢から前記開口部を下方または斜め下方に向けた姿勢に前記補充容器を回転させる蝶番、
をさらに備えることを特徴とする、光造形装置。
【請求項9】
請求項2ないし請求項8のいずれかに記載の光造形装置であって、
前記パイプに設けられたドレイン、
をさらに備え、
前記スラリー容器から前記パイプに至る供給路に蓋をした状態で前記ドレインを解放し、前記スクリューを前記スラリーの供給時とは逆回転させることで、前記パイプ内に残存する前記スラリーを排出可能である、
ことを特徴とする、光造形装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の光造形装置であって、
前記スクレイパは二重円環状の本体部を有し、前記吐出手段の内部において前記スラリーの粘度を一様化することを特徴とする、光造形装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、3次元造形物を得るための光造形装置であって、造形テーブルと、前記造形テーブルの上に、内部に貯留したチキソ性を有するスラリーを吐出可能な吐出手段と、前記造形テーブルの上に吐出された前記スラリーを掃引し、所定の厚みのスラリー膜を形成する掃引手段と、3次元形状データに基づいてあらかじめ作成された露光パターンに従って前記スラリー膜を露光する露光手段と、前記3次元造形物の作製途中において前記吐出手段における前記スラリーの残量を監視する監視手段と、前記吐出手段の内部に対し昇降させられることにより、前記吐出手段の内面まで前記スラリーに剪断応力を及ぼして前記スラリーを掻き落とし、前記スラリーの液面を均一化させるスクレイパと、前記スクレイパを昇降させる昇降機構と、前記吐出手段に追加のスラリーを補給する補給手段と、前記監視手段の監視結果に基づいて、前記残量が規定値より少なくなった状態における所定のタイミングで前記補給手段に前記吐出手段への前記追加のスラリーの補給を実行させる制御手段と、を備えることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
請求項2の発明は、請求項1に記載の光造形装置であって、前記補給手段が、水平面から30度以上60度以下傾斜させて設けられたパイプと、前記パイプ内に前記パイプと非接触に収容されてなり、ピッチが20mm~40mmであるスクリューと、前記パイプ内で前記スクリューを回転させる回転手段と、前記パイプの途中位置に接続されてなり、前記追加のスラリーを貯留するスラリー容器と、前記パイプの上端に接続されてなる、前記追加のスラリーの供給口である供給部と、を備え、前記回転手段にて前記スクリューが回転させられることにより、前記スクリューが前記パイプ内で前記スラリー容器に貯留されてなる前記追加のスラリーを搬送し、前記供給部を通じて前記吐出手段に供給する、ことを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2に記載の光造形装置であって、前記スクリューと前記パイプの内面との距離は2mm以下であり、 前記回転手段にて回転させられた前記スクリューが前記パイプの内面まで前記追加のスラリーに剪断応力を及ぼすことにより、前記スラリー容器に貯留されてなる前記追加のスラリーを前記パイプ内において粘度を下げつつ搬送し、前記供給部を通じて前記吐出手段に供給する、ことを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
請求項4の発明は、請求項2または請求項3に記載の光造形装置であって、前記スラリー容器の貯留部が水平面から30度以上70度以下の角度の傾斜面を含む、ことを特徴とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
請求項5の発明は、請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の光造形装置であって、前記スラリー容器内で前記スラリー容器の内面に沿って移動することにより、前記スラリー容器の前記内面に付着してなる前記追加のスラリーを掻き取るスラリー容器スクレイパ、をさらに備えることを特徴とする。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
請求項6の発明は、請求項2ないし請求項5のいずれかに記載の光造形装置であって、前記スラリー容器の上端の所定位置に開口部を下方または斜め下方に向けた姿勢にて載置可能とされてなる補充容器、をさらに備え、前記補充容器は、新たなスラリーを保持し、前記開口部を下方または斜め下方に向けた姿勢にて前記所定位置に載置されることにより、前記新たなスラリーを前記追加のスラリーとして前記スラリー容器に供給する、ことを特徴とする。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
請求項7の発明は、請求項6に記載の光造形装置であって、前記補充容器が前記所定位置に載置された状態において前記補充容器内で前記補充容器の内面に沿って移動することにより、前記補充容器の前記内面に付着してなる前記追加のスラリーを掻き取る補充容器スクレイパ、をさらに備えることを特徴とする。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
請求項8の発明は、請求項6または請求項7に記載の光造形装置であって、前記スラリー容器に対して前記補充容器を回転可能に固定し、前記開口部を上方または斜め上方に向けた姿勢から前記開口部を下方または斜め下方に向けた姿勢に前記補充容器を回転させる蝶番、をさらに備えることを特徴とする。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
請求項9の発明は、請求項2ないし請求項8のいずれかに記載の光造形装置であって、前記パイプに設けられたドレイン、をさらに備え、前記スラリー容器から前記パイプに至る供給路に蓋をした状態で前記ドレインを解放し、前記スクリューを前記スラリーの供給時とは逆回転させることで、前記パイプ内に残存する前記スラリーを排出可能である、ことを特徴とする。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
請求項10の発明は、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の光造形装置であって、前記スクレイパは二重円環状の本体部を有し、前記吐出手段の内部において前記スラリーの粘度を一様化する、ことを特徴とする。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
請求項1ないし請求項10の発明によれば、大型のあるいは大面積の造形物を造形する場合であっても、造形材料の供給が好適に確保される。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0118
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0118】
なお、ポンプスクレイパ43の面積が大きいとスラリーSLによる抵抗は増大する。一方で、吐出速度を高度に一定に保つ必要からは、スラリー吐出ポンプ40内のスラリーSLはできるだけ一様の粘度であることが望ましいが、スラリーSLからの抵抗を抑制するべくポンプスクレイパ43の外径を貯留部40Bの内径と大きく異ならせた場合、スラリーSLの粘度の一様性が失われることがある。ポンプスクレイパ43の剪断応力によるスラリーSLの軟化はポンプスクレイパ43から数cmの距離にしか及ばないからである。