(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055002
(43)【公開日】2023-04-17
(54)【発明の名称】プランジャポンプ、プランジャポンプ用異常検出装置、及びプランジャシステム
(51)【国際特許分類】
F04B 49/10 20060101AFI20230410BHJP
F04B 23/00 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
F04B49/10 311
F04B23/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164080
(22)【出願日】2021-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】洞戸 翔太
(72)【発明者】
【氏名】大野 将宏
【テーマコード(参考)】
3H071
3H145
【Fターム(参考)】
3H071AA11
3H071BB01
3H071BB04
3H071CC44
3H071DD84
3H145AA03
3H145AA22
3H145BA41
3H145CA21
3H145CA25
3H145CA26
3H145EA20
3H145EA26
(57)【要約】
【課題】プランジャポンプの故障予知を実現する。
【解決手段】プランジャポンプは、駆動部と、駆動部からの駆動力を受けて直線方向へ往復移動可能な軸部材と、軸部材の往復移動と一体的に移動可能な磁石と、軸部材の移動に応じて磁石との相対的な位置が変化することによって誘導電流が発生するコイルと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部と、
前記駆動部からの駆動力を受けて直線方向へ往復移動可能な軸部材と、
前記軸部材の往復移動と一体的に移動可能な磁石と、
前記軸部材の移動に応じて前記磁石との相対的な位置が変化することによって誘導電流が発生するコイルと、
を備えるプランジャポンプ。
【請求項2】
前記コイルは、前記軸部材の外方を囲む筒状に形成されており、
前記磁石は、前記軸部材の移動方向に沿って配置されており、前記軸部材が往復移動した際に前記コイルの一方の端面のみを通過する、
請求項1に記載のプランジャポンプ。
【請求項3】
駆動部と、前記駆動部からの駆動力を受けて直線方向へ往復移動可能な軸部材と、前記軸部材の往復移動と一体的に移動可能な磁石と、前記軸部材の移動に応じて前記磁石との相対的な位置が変化することによって誘導電流が発生するコイルと、を備えるプランジャポンプに接続されて、前記プランジャポンプの異常状態を検出するためのプランジャポンプ用異常検出装置であって、
前記コイルに発生する誘導電流を検出する検出部と、
正常な状態で前記軸部材を往復移動させた場合において前記コイルに発生した誘導電流の波形に基づく情報を基準値として設定する設定処理を実行可能な設定処理部と、
前記検出部が検出した前記コイルに発生した実際の誘導電流の波形に基づく情報による検出値と前記基準値とを比較して前記プランジャポンプの異常を検出する判断処理を実行可能な判断処理部と、
を備えるプランジャポンプ用異常検出装置。
【請求項4】
前記基準値は、前記コイルに発生した誘導電流の波形の最大値及び最小値によって設定され、
前記判断処理は、前記検出部が検出した前記コイルに発生した実際の誘導電流の波形の最大値及び最小値が前記基準値から外れた場合に前記プランジャポンプに異常が発生したと判断する処理を含む、
請求項3に記載のプランジャポンプ用異常検出装置。
【請求項5】
前記基準値は、前記コイルに発生した誘導電流の波形の周期によって設定され、
前記判断処理は、前記検出部が検出した前記コイルに発生した実際の誘導電流の波形の周期が前記基準値から外れた場合に前記プランジャポンプに異常が発生したと判断する処理を含む、
請求項3に記載のプランジャポンプ用異常検出装置。
【請求項6】
前記設定処理は、前記プランジャポンプの通常運転の最中に実行される、
請求項3から5のいずれか一項に記載のプランジャポンプ用異常検出装置。
【請求項7】
駆動部と、前記駆動部からの駆動力を受けて直線方向へ往復移動可能な軸部材と、前記軸部材の往復移動と一体的に移動可能な磁石と、前記軸部材の移動に応じて前記磁石との相対的な位置が変化することによって誘導電流が発生するコイルと、を備えるプランジャポンプと、
前記プランジャポンプに接続されて前記コイルに発生する誘導電流を検出する検出部と、
前記プランジャポンプから取得した情報をユーザに対して出力する出力部と、
正常な状態で前記軸部材を往復移動させた場合において前記コイルに発生した誘導電流の波形に基づく情報を基準値として設定する設定処理を実行可能な設定処理部と、
前記検出部が検出した前記コイルに発生した実際の誘導電流の波形に基づく情報による検出値と前記基準値とを比較して前記プランジャポンプの異常を検出する判断処理を実行可能な判断処理部と、
前記判断処理によって前記プランジャポンプの異常が検出された場合に、異常が発生したことを前記出力部に出力する出力処理を実行可能な出力処理部と、
を備えるプランジャポンプシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プランジャポンプ、プランジャポンプ用異常検出装置、及びプランジャポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば塗装装置等に用いられるプランジャポンプは、駆動力を発生させるモータ部と、モータ部によって駆動されるポンプ部と、を備えている。ポンプ部は、筒状に形成されたポンプケースと、モータ部が有する軸部材と接続されてポンプケース内を直線往復移動するプランジャと、を有しており、プランジャの往復移動に伴って塗料等の塗布液を吸引及び吐出する。
【0003】
ところで、このようなプランジャポンプにおいて、プランジャポンプを正常に作動させるためには、プランジャポンプに異常があるか否かを判断することが望ましい。プランジャポンプの異常の検知方式については、例えば、モータ部に設けられた空電変換器等が検出した結果に基づいて軸部材及びプランジャの往復移動のサイクル数をカウントし、所定期間におけるカウントのタイミングが一定でない場合にプランジャポンプに異常があると判断する方式が知られている。
【0004】
しかしながら、この方式では、軸部材及びプランジャの往復移動のサイクルに応じて断続的に与えられる情報に基づいて異常を判断するため、異常と判断された場合にはプランジャポンプが既に故障している場合があり突発的なメンテナンスが必要となる。このようなメンテナンスは、作業計画の変更等を招くため好ましくない。一方、プランジャポンプの予防保全を実施することにより、故障を未然に防ぐことが考えられるが、部材の交換等を決められた周期で行う必要があるためメンテナンス性において課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、故障予知を実現することができるプランジャポンプ、プランジャポンプ用異常検出装置、及びプランジャポンプシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のプランジャポンプは、駆動部と、前記駆動部からの駆動力を受けて直線方向へ往復移動可能な軸部材と、前記軸部材の往復移動と一体的に移動可能な磁石と、前記軸部材の移動に応じて前記磁石との相対的な位置が変化することによって誘導電流が発生するコイルと、を備える。
【0008】
実施形態のプランジャポンプ用異常検出装置は、プランジャポンプに接続されて、前記プランジャポンプの異常状態を検出するためのプランジャポンプ用異常検出装置であって、前記コイルに発生する誘導電流を検出する検出部と、正常な状態で前記軸部材を往復移動させた場合において前記コイルに発生した誘導電流の波形に基づく情報を基準値として設定する設定処理を実行可能な設定処理部と、前記検出部が検出した前記コイルに発生した実際の誘導電流の波形に基づく情報による検出値と前記基準値とを比較して前記プランジャポンプの異常を検出する判断処理を実行可能な判断処理部と、を備える。
【0009】
実施形態のプランジャポンプシステムは、プランジャポンプと、前記プランジャポンプに接続されて前記コイルに発生する誘導電流を検出する検出部と、前記プランジャポンプから取得した情報をユーザに対して出力する出力部と、正常な状態で前記軸部材を往復移動させた場合において前記コイルに発生した誘導電流の波形に基づく情報を基準値として設定する設定処理を実行可能な設定処理部と、前記検出部が検出した前記コイルに発生した実際の誘導電流の波形に基づく情報による検出値と前記基準値とを比較して前記プランジャポンプの異常を検出する判断処理を実行可能な判断処理部と、前記判断処理によって前記プランジャポンプの異常が検出された場合に、異常が発生したことを前記出力部に出力する出力処理を実行可能な出力処理部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態によるプランジャポンプシステムの一例を示す斜視図
【
図2】第1実施形態によるプランジャポンプの構成の一例を示す正面図
【
図3】第1実施形態によるプランジャポンプについて、
図2のX3-X3線に沿って示すもので、コイル周辺の構成の一例を示す図
【
図4】第1実施形態によるプランジャポンプについて、プランジャを上方向に移動させた状態の一例を示す断面図
【
図5】第1実施形態によるプランジャポンプの一例について、プランジャを下方向に移動させた状態の一例を示す断面図
【
図6】第1実施形態によるプランジャポンプシステムについて、異常検出装置の電気的構成の一例を示すブロック図
【
図7】第1実施形態によるプランジャポンプシステムについて、コイルに発生した誘導電流の波形の最大値が基準値より大きい場合の一例を示す図
【
図8】第1実施形態によるプランジャポンプシステムについて、コイルに発生した誘導電流の波形の最小値が基準値より大きい場合の一例を示す図
【
図9】第1実施形態によるプランジャポンプシステムについて、コイルに発生した誘導電流の波形の最大値及び最小値がそれぞれ基準値より大きい場合の一例を示す図
【
図10】第1実施形態によるプランジャポンプシステムについて、出力処理によって出力部に表示される情報の一例を示す図
【
図11】第1実施形態によるプランジャポンプシステムについて、プランジャポンプの異常検出の一例を示すフローチャート
【
図12】第1実施形態によるプランジャポンプシステムについて、コイルに発生した誘導電流の波形の周期が基準値を外れた場合の一例を示す図
【
図13】第2実施形態によるプランジャポンプシステムの一例を概略的に示す図
【
図14】第2実施形態によるプランジャポンプシステムについて、異常検出装置の電気的構成の一例を示すブロック図
【
図15】第2実施形態によるプランジャポンプシステムについて、情報通信端末の電気的構成の一例を示すブロック図
【
図16】第2実施形態によるプランジャポンプシステムについて、出力処理によって情報通信端末の出力部に表示される情報の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態について、
図1から
図11を参照して説明する。
図1に示すプランジャポンプシステム1は、プランジャポンプ10及びプランジャポンプ用異常検出装置20を備えている。以下の説明では、プランジャポンプ用異常検出装置20を単に異常検出装置20と称する。
【0012】
プランジャポンプ10は、
図1に示すように、例えば塗装装置2に適用することができる。すなわち、本実施形態のプランジャポンプ10は、塗装装置用のプランジャポンプである。塗装装置2は、台車3を備えている。台車3は、例えば鋼製パイプ等でフレーム状に形成されており、プランジャポンプ10を固定することができる。台車3は、下端部に所定の間隔で離して設けられた複数の車輪3aを有しており、ユーザは台車3を操作することによって工場等の作業現場内において塗装装置2を移動させることができる。
【0013】
また、台車3はストッパ3bを有している。塗装装置2は、ストッパ3bと床面との接触面に働く摩擦力によって移動が規制され自立可能となる。なお、本実施形態では、プランジャポンプ10の重力方向を、プランジャポンプ10の上下方向とする。また、プランジャポンプ10に対して台車3側をプランジャポンプ10の後側とし、後側とは反対側すなわちプランジャポンプ10に対して台車3とは反対側をプランジャポンプ10の前側とする。そして、プランジャポンプ10を前側から見た場合における左右方向を、プランジャポンプ10の左右方向とする。また、塗装装置2は、台車3を備えず、鋼製のフレームや壁等にプランジャポンプ10を取付ける構成であっても良い。
【0014】
プランジャポンプ10は、例えば塗料や洗浄液等の比較的高粘度の塗布液を加圧して霧化させるエアレス塗装等に用いることができる。プランジャポンプ10は、
図1に示すように、モータ部11、磁石12、コイル13、ポンプ部14、及び連結部15を有している。モータ部11は、プランジャポンプ10の駆動源としての機能つまり駆動力を発生する機能を有する。モータ部11は、例えばエアモータで構成されている。この場合、モータ部11は、外部の駆動源としての図示しないコンプレッサと接続されており、コンプレッサによって圧縮された空気によって駆動力を発生させる。なお、モータ部11は、エアモータに限らず、電動モータや油圧モータ等によって構成されても良い。
【0015】
モータ部11は、
図3に示すように、モータケース111、駆動部としてのピストン112、及び軸部材113を有している。モータケース111は、例えば鋼製で円筒形状に形成されている。モータケース111は、内部にピストン112及び軸部材113の一部を収容している。ピストン112は、例えば円盤状で構成されており、ピストン112の上下の空間に対して圧縮空気の供給及び排気が交互に行われることによってモータケース111内を上下方向に往復移動する。
【0016】
軸部材113は、ピストン112の下方に設けられ、ピストン112と一体的に直線方向つまり上下方向に往復移動可能に構成されている。軸部材113の上端部は例えばモータケース111内においてピストン112に固定され、軸部材113の下端部はモータケース111から下方へ突出している。なお、モータケース111は、図示しない消音体を有しており、ピストン112等が駆動する際に発生する音を消音する機能を有していても良い。また、モータケース111は、2つ以上に分割したものを組み合わせた構成でも良い。
【0017】
磁石12は、
図2及び
図3等に示すように、例えば永久磁石で略矩形状に形成されている。磁石12は、N極とS極とが軸部材113の移動方向に沿って配置されている。本実施形態では、磁石12の上側がN極、磁石12の下側がS極となるように構成されている。磁石12は、例えば軸部材113の下端部付近の外周面に配置されている。
【0018】
この場合、軸部材113の前側の外周面には、
図3に示すように、凹部113aが形成されている。凹部113aは、磁石12の少なくとも一部が収容可能に構成されている。磁石12は、凹部113aに収容された状態で、例えば接着剤や圧入等によって軸部材113に固定されている。つまり、磁石12は、軸部材113の前側の外周面に設けられている。そして、磁石12は、軸部材113の往復移動と一体的に移動可能である。なお、磁石12における磁極は、磁石12の上側がN極の構成に限らず、磁石12の上側をS極とし、磁石12の下側をN極としても良い。また、磁石12は、軸部材113の外周面に1つ設けられているが、これに限らず、磁石12は複数設けられる構成であっても良い。磁石12を複数設ける場合、磁石12の磁極の向きは全て同じとなるように配置される。
【0019】
コイル13は、モータケース111の下部に設けられ、軸部材113の外方を囲む筒状に形成されている。コイル13は、
図2及び
図3に示すように、台座部131及び胴部132を有している。台座部131は、例えば円環状に形成されている。台座部131は、
図3に示すように、例えばボルト等で構成された複数の取付部材133を介してモータケース111に着脱可能に取付けられている。このようにして、コイル13は、モータケース111に着脱可能に配置される。この場合、モータケース111の底面と台座部131とには、取付部材133が取付けられる部分に対応した位置に共通の形状で構成された図示しない例えば雌ねじ加工が施された被取付部が設けられている。
【0020】
胴部132は、例えば円筒状に形成されており、一方の端部が台座部131に接続されている。台座部131と胴部132とは、同一部材によって一体的に形成される構成とすることができる。また、胴部132は、巻線134を有している。巻線134は、例えばエナメル線で形成され、
図3に示すように、胴部132の内周部と外周部との間に設けられ、胴部132の軸方向に沿って螺旋状に延びて形成されている。台座部131と胴部132との内径は、同一の寸法で構成することができる。
【0021】
胴部132は、軸部材113がピストン112からの駆動力を受けて往復移動するのに伴い、磁石12が通過可能に構成されている。この場合、軸部材113が最も上方に移動した場合は、
図4に示すように、磁石12が胴部132の先端側の端面132aを通過して胴部132の内部に位置する。一方、軸部材113が最も下方に移動した場合は、
図5に示すように、磁石12は胴部132の外部に位置する。すなわち、軸部材113が最も下方に移動した場合、磁石12は、コイル13内には位置しないように構成されている。
【0022】
そして、軸部材113の移動に応じて磁石12とコイル13との相対的な位置が変化することによってコイル13に発生する磁界が変化し、電磁誘導によってコイル13には誘導電流が流れる。誘導電流の大きさは、磁束鎖交数の時間的変化、すなわち磁石12の移動速度に比例する。このため、例えばコイル13に流れる誘導電流の大きさを観察することによって、磁石12が取付けられている軸部材113の移動速度を推定することができる。すなわち、コイル13に流れる誘導電流の値が大きくなると軸部材113の移動速度が速くなっていることが推定され、一方、コイル13に流れる誘導電流の値が小さくなると軸部材113の移動速度が遅くなっていることが推定される。
【0023】
ポンプ部14は、モータ部11の下方に設けられている。ポンプ部14は、連結部15を介してモータ部11と相互に一体的に支持されている。連結部15は、
図2に示すように、支持用部材151及び支柱部152を有している。支持用部材151は、モータ部11の下方に離れて設けられている。支柱部152は、例えば鋼製で棒状に構成され、モータ部11と支持用部材151との間に鉛直方向に伸びてモータ部11と支持用部材151とを一体的に固定する機能を有する。この場合、支柱部152の一方の端部はモータ部11の底面に固定され、他方の端部は支持用部材151に固定されている。この場合、モータ部11とポンプ部14とが接続した状態においてポンプ部14の左右方向における中心軸に対して左右対称となるように1本ずつ設けられている。支柱部152の本数は、これに限らず、ポンプ部14の重量等に応じて任意に設定されれば良い。
【0024】
ポンプ部14は、図示しないタンクに貯留された塗布液を吸引し、その吸引した塗布液を所定の吐出圧で吐出する機能を有する。ここで、所定の吐出圧とは、例えば5~15МPa程度の高圧を意味する。ポンプ部14は、
図4及び
図5に示すように、ポンプケース141、プランジャ142、及びシール部材143を有している。ポンプケース141は、例えば鋼製で円筒形状に形成されている。ポンプケース141は、ポンプ部14の外殻を構成している。なお、ポンプケース141は、1つの部材で構成されても良いし、2つ以上に分割した部材を組み合わせた構成であっても良い。
【0025】
ポンプケース141は、吸引口16、吸引弁17、吐出口18を有している。吸引口16は、図示しないタンクに貯留された塗布液をポンプケース141内に吸引するつまり外部から塗布液を吸引する機能を有する。吸引口16は、
図1に示すように、ポンプケース141の下端部に設けられており、例えば可撓性を有するサクションホース91を介してタンクに接続されている。吸引弁17は、
図4及び
図5に示すように、ポンプケース141の内部で吸引口16の上部に設けられている。吸引弁17は、ポンプケース141の外部つまり吸引口16からポンプケース141の内部へ向かう塗布液は通すが、ポンプケース141の内部からポンプケース141の外部へ向かう塗布液は遮断する逆止機能を有している。
【0026】
吸引弁17は、弁体171、弁座172、及び規制部173を有している。弁体171は、例えば球状に構成されている。弁座172は、例えば環状に形成され、弁体171を載置可能に構成されている。また、弁座172は、穴174を有している。穴174は、ポンプケース141の内部と外部とを連通しており、弁体171が弁座172に着座した場合に閉塞され、弁体171が弁座172から離れた場合に開放される。
【0027】
規制部173は、塗布液が通過可能に構成され、弁体171が弁座172から離れる方向つまり上方への所定以上の移動を規制するためのものである。この場合、規制部173は、図示しない通し穴を有している。通し穴は、弁体171が規制部173に接触した場合でも閉塞されないように構成されており、吸引口16からポンプケース141内に流入した塗布液が通過可能に構成されている。
【0028】
この構成において、弁体171が弁座172に着座すると、弁体171によって穴174が閉塞されるため、吸引弁17が閉じた状態つまり吸引口16からポンプケース141内に塗布液を吸引されない状態となる。一方、弁体171が弁座172から離れる方向へ移動すると、弁体171によって閉塞されていた穴174が開放されるため、吸引弁17が開いた状態つまり吸引口16からポンプケース141内に塗布液を吸引可能な状態となる。
【0029】
吐出口18は、ポンプケース141内に供給された塗布液をポンプケース141外へ吐出する機能を有する。つまり、吐出口18は、吸引口16からポンプケース141内に吸引した塗布液を外部へ吐出するためのものである。吐出口18は、
図1に示すように、ポンプケース141の側面に設けられており、例えば耐圧性を有する塗料ホース92を介してスプレーガン93に接続されている。ユーザは、スプレーガン93を操作してポンプケース141内に供給された塗布液を被塗物に対して塗布する。また、吐出口18と塗料ホース92との間には、フィルタ部94が設置されている。フィルタ部94は、フィルタ部94を通過する塗布液に含まれる不純物を捕集する。
【0030】
プランジャ142は、
図4及び
図5に示すように、下側部分がポンプケース141内に収容され、上側部分がポンプケース141内から突出しており、直線方向つまり上下方向に往復移動可能に構成されている。つまり、プランジャ142は、ポンプ部14に移動可能に収容されている。プランジャ142の上端部分は、接合部材19を介して軸部材113の下端部に着脱可能に接続されている。接合部材19は、例えば長ナット等で構成される。この場合、プランジャ142の上端部分及び軸部材113の下端部には、例えば雄ねじ加工が施されている。
【0031】
このようにして、プランジャ142は、モータ部11によって駆動つまり軸部材113の往復移動に連動して上下方向に往復移動する。そして、プランジャポンプ10のメンテナンス時には、接合部材19の接続を解除することによって、軸部材113とプランジャ142との固定を解除して、例えばプランジャ142の交換作業等が行われる。
【0032】
また、プランジャ142は、連通口31、連通弁32、及びシール部材33を有している。連通口31は、プランジャ142の下端部に設けられている。連通口31は、ポンプケース141内に供給された塗布液をプランジャ142内に移動させるためのものである。すなわち、吸引口16からポンプケース141内に供給された塗布液の一部は、ポンプケース141内の空間において連通口31を介してプランジャ142内に導入される。
【0033】
連通弁32は、
図4及び
図5に示すように、プランジャ142の内部で連通口31の上部つまり下流側に設けられている。連通弁32は、ポンプケース141内において、上流側空間S1から下流側空間S2へ向かう塗布液は通すが、下流側空間S2から上流側空間S1へ向かう塗布液は遮断する逆止機能を有している。この場合、連通弁32は、プランジャ142が下降すると開放されて、一方プランジャ142が上昇すると閉鎖される。
【0034】
連通弁32は、弁体321、弁座322、及び規制部323を有している。弁体321は、例えば球状に構成されている。弁座322は、例えば環状に形成され、弁体321を載置可能に構成されている。また、弁座322は、穴324を有している。穴324は、弁体321が弁座322に着座した場合に閉塞され、弁体321が弁座322から離れた場合に開放される。
【0035】
規制部323は、塗布液が通過可能に構成され、弁体321が弁座322から離れる方向つまり上方への移動を規制するためのものである。また、規制部323は、図示しない通し穴を有している。通し穴は、弁体321が規制部323に接触した場合でも閉塞されないように構成されており、連通口31からプランジャ142内に流入した塗布液が移動可能に構成されている。
【0036】
この構成において、弁体321が弁座322に着座すると、弁体321によって穴324が閉塞されるため、連通弁32が閉じた状態つまりプランジャ142内の連通弁32の上部空間へ塗布液が供給されない状態となる。一方、弁体321が弁座322から離れる方向へ移動すると、弁体321によって閉塞されていた穴624が開放されるため、連通弁32が開いた状態つまりプランジャ142内の連通弁32の上部空間へ塗布液が供給可能な状態となる。
【0037】
シール部材33は、
図4等に示すように、プランジャ142の外周面に設けられている。シール部材33は、例えばVパッキンやUパッキン等のいわゆるリップパッキンによって構成され、プランジャ142の周囲に環状に設けられている。シール部材33は、ポンプケース141の内周面とプランジャ142の外周面との間の隙間を埋めるためのものである。つまり、シール部材33は、ポンプケース141内において、連通口31からポンプケース141内の下流側空間S2に供給された塗布液が上流側空間S1側に移動するのを防止している。
【0038】
シール部材143は、
図4等に示すように、ポンプケース141の内周面とプランジャ142の外周面との間に設けられている。シール部材143は、例えばVパッキンやUパッキン等のいわゆるリップパッキンによって構成され、プランジャ142の周囲に環状に設けられている。シール部材143は、吐出口18の下流側この場合吐出口18の上方に設けられている。シール部材143は、ポンプケース141の内周面とプランジャ142の外周面との間の隙間を埋めるためのものである。つまり、シール部材143は、ポンプケース141内において、吸引口16からポンプケース141内に供給された塗布液がシール部材143より外部空間側に移動するのを防止している。
【0039】
このような構成において、プランジャ142が上昇すると、
図4に示すように、吸引口16及び吸引弁17を介して外部の塗布液が上流側空間S1に吸い込まれるとともに、下流側空間S2に充填されている塗布液が吐出口18から吐出される。一方、プランジャ142が下降すると、
図5に示すように、上流側空間S1内の塗布液が連通弁32を介して下流側空間S2に移動するとともに、下流側空間S2に移動した塗布液の一部が吐出口18から吐出される。このように、プランジャポンプ10は、プランジャ142の上下方向の往復移動を行うことで、塗布液の吸引と吐出とを繰り返し連続して行うことができる。
【0040】
異常検出装置20は、
図1に示すように、プランジャポンプ10に接続されて、プランジャポンプ10の異常状態を検出する機能を有する。また、異常検出装置20は、プランジャポンプ10から取得した情報をユーザに提示する機能を有する。したがって、ユーザは、異常検出装置20を用いてプランジャポンプ10の状態を可視化して監視することができる。異常検出装置20は、プランジャポンプシステム1専用のものであっても良いし、他の機器と共有して用いられるものであっても良い。また、異常検出装置20は、プランジャポンプ10の異常検知専用であっても良いし、プランジャポンプ10の動作、例えば塗布液の吐出量を制御する制御装置と兼用しても良い。
【0041】
異常検出装置20は、
図6に示すように、検出部21、入力部22、出力部23、記憶部24、及び制御部25を有している。検出部21は、例えば集積回路で構成され、ケーブル211を介してコイル13と接続されており、コイル13に発生する誘導電流を検出する。入力部22は、例えばタッチセンサや押しボタン等で構成されており、ユーザの操作を受け付ける。入力部22には、提示された情報を初期化するためのリセットボタン221等がある。
【0042】
出力部23は、例えば液晶ディスプレイで構成することができる。出力部23は、ユーザの入力部22に対する操作により入力される情報やプランジャポンプ10から取得した情報等を提示する機能を有する。この場合、入力部22と出力部23とは、タッチパネルディスプレイで構成することができる。また、出力部23は、図示しないスピーカを有して構成することができる。スピーカは、異常検出装置20の周囲に対して音声を発する機能を有する。この場合、出力部23は、ユーザに対して表示又は音声等で各種の情報を提示する機能を有する。
【0043】
記憶部24は、例えば書き換え可能なハードディスクドライブやフラッシュメモリ等で構成することができる。記憶部24は、制御部25が取得したプランジャポンプ10に発生した異常に関するデータ例えば異常発生箇所及び異常発生日時等の情報を保存することができる。
【0044】
制御部25は、
図6に示すように、例えばCPU251や、ROM、RAM、及び書き換え可能なフラッシュメモリ等の記憶領域252を有するマイクロコンピュータを主体に構成されている。また、プランジャポンプ10は、流量計26を有して構成することができる。流量計26は、例えば吸引口16に設けられ、ポンプケース141内に流れる塗布液の流量を計測する。
図6に示すように、検出部21、入力部22、出力部23、記憶部24、及び流量計26は、それぞれ制御部25に電気的に接続されている。
【0045】
記憶領域252は、異常検出装置20をプランジャポンプシステム1に適用させるためのプログラムを記憶している。そして、制御部25は、CPU251において上記プログラムを実行することにより、取得処理部41、設定処理部42、判断処理部43、出力処理部44、及び記憶処理部45をソフトウェアにより仮想的に実現する。すなわち、異常検出装置20が有する取得処理部41、設定処理部42、判断処理部43、出力処理部44、及び記憶処理部45は、CPU251が上述した記憶領域252に格納されているコンピュータプログラムを実行してコンピュータプログラムに対応する処理を実行することにより実現されている、つまりソフトウェアにより実現されている。なお、取得処理部41、設定処理部42、判断処理部43、出力処理部44、及び記憶処理部45は、例えば制御部25と一体の集積回路としてハードウェアにより実現されても良いし、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせにより実現しても良い。
【0046】
取得処理部41は、取得処理を実行することができる。取得処理は、検出部21が検出したコイル13に発生する誘導電流及び流量計26が検知した情報を取得する処理を含む。
【0047】
設定処理部42は、設定処理を実行することができる。設定処理は、正常な状態で軸部材113を往復移動させた場合において、コイル13に発生した誘導電流の波形に基づく情報を基準値として設定する処理を含む。正常な状態とは、例えばプランジャポンプ10が正常に作動して所定量の塗布液を吐出可能な状態を意味する。正常な状態の一例としては、例えばプランジャポンプ10が新品の状態やメンテナンスを行った直後の状態が挙げられる。
【0048】
本実施形態では、
図7等に示す誘導電流の波形の1サイクルのうち、例えばプランジャポンプ10が作動していないときの出力値つまりゼロの値よりも上側の波形はプランジャ142の上昇時、下側の波形はプランジャ142の下降時に対応している。ただし、プランジャ142の移動方向と波形との対応関係は、磁石12の磁極の向きやコイル13に対する移動方向によって反転することもある。
【0049】
そして、本実施形態では、
図7から
図9に示すように、基準値は、コイル13に発生した誘導電流の波形の最大値Vsh及び最小値Vslによって設定することができる。本実施形態の場合、設定処理部42は、プランジャポンプ10の通常運転の最中に設定処理を実行し、基準値の設定を行うことができる。通常運転とは、プランジャポンプ10を備える塗装装置2によって塗装作業が行われている場合の運転を意味する。
【0050】
判断処理部43は、判断処理を実行することができる。判断処理は、検出部21が検出したコイル13に発生した実際の誘導電流の波形に基づく情報による検出値と基準値とを比較して、プランジャポンプの異常を検出する処理を含む。この場合、判断処理部は、検出部21が検出したコイル13に発生した実際の誘導電流の波形の最大値Vh及び最小値Vlが基準値から外れた場合にプランジャポンプ10に異常が発生したと判断することができる。
【0051】
次に、判断処理部43が実行する判断処理の一例について、
図7から
図9を参照して説明する。
図7から
図9における破線で示した波形は、設定処理部42が実行した設定処理によって設定された基準値すなわちプランジャポンプ10の正常な状態におけるコイル13に発生した誘導電流の波形を示すものである。そして、
図7から
図9における実線で示した波形は、検出部21が検出したコイル13に発生した実際の誘導電流の波形の一例を示す。
【0052】
図7に示すように、例えば検出部21が検出したコイル13に発生した実際の誘導電流の波形の最大値Vhが基準値Vshより大きい場合は、軸部材113と一体的に接続されたプランジャ142の上昇速度が正常な状態よりも速くなっている状態である。この場合、プランジャ142の上昇速度が速くなる原因の一例として連通弁32の不具合例えば弁体321の摩耗等により生じた弁体321と弁座322との間の隙間を介して上流側空間S1から下流側空間S2への塗料の流出が発生していることが想定される。
【0053】
また、
図8に示すように、例えば検出部21が検出したコイル13に発生した実際の誘導電流の波形の最小値Vlが基準値Vslより大きい場合は、プランジャ142の下降速度が正常な状態よりも速くなっている状態である。この場合、プランジャ142の下降速度が速くなる原因の一例として吸引弁17の不具合例えば弁体171の摩耗等により生じた弁体171と弁座172との間の隙間を介してポンプケース141内の塗料の外部への流出が発生していることが想定される。
【0054】
更に、
図9に示すように、例えば検出部21が検出したコイル13に発生した実際の誘導電流の波形の最大値Vh及び最小値Vlがそれぞれ基準値Vsh、Vslより大きい場合は、例えばポンプケース141内に塗布液が供給されていない、いわゆる空打ち状態で見られる事象である。このとき、例えばプランジャ142の単位時間当たりのサイクル数が設定された基準値を超えていると、プランジャポンプ10の異常つまり空打ち状態が発生していると判断することができる。
【0055】
図7から
図9では、検出部21が検出したコイル13に発生した実際の誘導電流の波形の最大値及び最小値が基準値よりも大きい場合を示したが、基準値よりも小さい場合であっても判断処理部43によってプランジャポンプ10の異常を検知することができる。この場合、例えばシール部材33、143の摩耗等によって塗布液の適切な供給ができていないことが想定される。
【0056】
出力処理部44は、出力処理を実行することができる。出力処理は、
図10に示すように、取得処理部41が取得した検出部21及び流量計26が検知した情報に基づいてプランジャ142の往復移動のサイクル数や吐出口18からの塗布液の吐出量等を算出して、プランジャポンプ10の動作状況を示す情報81として出力部23に出力する処理を含む。この場合、出力処理部44は、例えば検出部21が検出したコイル13に発生した誘電電流の正の値及び負の値の両方がそれぞれ設定された閾値を超えたときを1サイクルとして、プランジャポンプ142のサイクル数を算出することができる。また、出力処理部44は、例えば流量計26の検知信号の積算によって、吐出口18から吐出した塗布液の吐出量を算出することができる。
【0057】
ユーザは、出力部23に表示された情報81を確認することで、プランジャポンプ10の動作状況を把握することができる。ユーザは、リセットボタン221に対して入力操作をすることで、出力部23に表示された情報81をリセットすることができる。また、出力処理は、判断処理によってプランジャポンプ10の異常が検出された場合に、異常が発生したことを出力部23に出力する処理を更に含む。この場合、出力処理部44は、プランジャポンプ10に異常が発生した場合、
図10に示すように、出力部23に異常が発生した旨を示す情報82を表示する。
【0058】
本実施形態では、上述したように、コイル13に発生する誘導電流の波形の情報に基づいて、プランジャ142の上昇及び下降のそれぞれの移動に対する異常の検知とその異常の原因を推定することが可能である。そのため、出力処理によって出力部23に表示される情報82には、推定される異常発生箇所に関する情報、具体的には、異常の発生箇所を推定する情報、異常の内容、及び異常の予防又は解消方法を含めることができる。例えばコイル13に発生した誘導電流の波形の最小値Vlが基準値Vslより大きい場合つまりプランジャ142の下降速度が正常な状態よりも速くなっている状態の場合、吸引弁17の消耗が想定されるため、情報82には、
図10に示すように、異常の発生箇所を推定する情報及び異常の内容を示す「吸引弁が消耗しています」との文字、及び異常の予防又は解消方法を示す「メンテナンスを行ってください」との文字を含めることができる。
【0059】
記憶処理部45は、記憶処理を実行することができる。記憶処理は、設定処理の実行により設定した基準値を記憶する処理を含む。記憶処理によって記憶される情報には、判断処理の実行により検出されたプランジャポンプ10の異常の発生時期や異常を検出した際のコイル13に発生した誘導電流の最大値及び最小値、更に異常を検出した際のコイル13に発生した誘導電流の最大値及び最小値から推定される異常発生箇所等を含めることができる。
【0060】
以下では、
図11を参照して、プランジャポンプ10の異常検出における制御内容の一例について説明する。なお、以下の説明において、各処理部41~45で行われる処理は全て制御部25が主体となって行うものとして説明する。
【0061】
まず、制御部25は、ユーザによってスプレーガン93が操作されて塗装作業が開始されると(スタート)、ステップS11において、設定処理の実行条件が成立しているか否かを判断する。設定処理の実行条件は、例えばプランジャポンプ10の初回の運転時又はメンテナンス後の最初の運転時であることによって定めることができる。そして、設定処理の実行条件が成立つまりプランジャポンプ10の初回の運転時又はメンテナンス後の最初の運転時であると判断した場合(ステップS11でYES)、制御部25はステップS12に処理を移行させる。
【0062】
制御部25は、ステップS12において取得処理部41の処理によって、検出部21が検出したコイル13に発生する誘導電流を取得する。次に、制御部25は、ステップS13において、設定処理部42の処理により、軸部材113を往復移動させた場合においてコイル13に発生する誘導電流の波形の最大値Vsh及び最小値Vslに基づいて基準値を設定する。その後、制御部25は、ステップS14において、記憶処理部45の処理により設定された基準値を記憶部24に記憶させて、ステップS15に処理を移行させる。
【0063】
一方、ステップS11において設定処理の実行条件が不成立である場合(ステップS11でNO)、制御装置25は、ステップS15に処理を移行させる。制御部25は、ステップS15において取得処理部41の処理により検出部21が検出したコイル13に発生する誘導電流を取得する。次に、制御部25は、ステップS16において判断処理部43の処理により検出部21が検出したコイル13に発生した実際の誘導電流の波形の最大値Vh及び最小値Vlがそれぞれ基準値Vsh、Vslから外れているか否かを判断する。
【0064】
そして、コイル13に発生した誘導電流の波形の最大値Vh及び最小値Vlが各基準値Vsh、Vslから外れた場合(ステップS16でYES)、制御部25はステップS17に処理を移行させる。その後、制御部25は、ステップS17において、出力処理部44の処理により出力部23に異常が発生した旨を示す情報82を出力して、異常検出を終了する(エンド)。
【0065】
以上説明した実施形態によれば、プランジャポンプ10は、駆動部112と、軸部材113と、磁石12と、コイル13と、を備える。軸部材113は、駆動部112からの駆動力を受けて、直線方向へ往復移動可能である。磁石12は、軸部材113の往復移動と一体的に移動可能である。そして、コイル13は、軸部材113の移動に応じて、磁石12との相対的な位置が変化することによって誘導電流が発生する。
【0066】
これによれば、軸部材113の移動に伴って磁石12とコイル13との相対的な位置の変化によってコイル13に発生する誘導電流を、軸部材113の往復移動によるストロークスピードの状態を把握することに利用することができる。これにより、軸部材113のストロークスピードの状態を連続的に知ることが可能となり、プランジャポンプ10が故障に至る前の不具合を早期に知ることが可能となる。これにより、プランジャポンプ10の故障予知を実現することができる。
【0067】
また、コイル13は、軸部材113の外方を囲む筒状に形成されている。磁石12は、
軸部材113の移動方向に沿って配置されており、軸部材113が往復移動した際に、コイル13の一方の端面132aのみを通過する。
【0068】
ここで、軸部材113の往復移動の1ストロークにおいて、磁石12がコイル13の両側の端面を通過可能とした場合、コイル13の両端部付近でそれぞれ1周期分の誘導電流の波形が生じる。この場合、コイル13の全長によって各周期間の誘導電流が0になる期間が変動してしまうため、軸部材113のストロークスピードの把握が煩雑になるおそれがある。そこで、軸部材113が往復移動した際に、コイル13の一方の端面132aのみを通過可能にすることで、軸部材113の往復移動の1ストロークに対して1周期分の誘導電流の波形で示すことができる。これにより、軸部材113のストロークスピードの状態を効率的に把握することができる。
【0069】
また、本実施形態の異常検出装置20は、プランジャポンプ10に接続されて、プランジャポンプ10の異常状態を検出するためのものである。異常検出装置20は、検出部21と、設定処理部42と、判断処理部43と、を備える。検出部21は、コイル13に発生する誘導電流を検出する。設定処理部42は、正常な状態で軸部材113を往復移動させた場合において、コイル13に発生した誘導電流の波形に基づく情報を基準値として設定する設定処理を実行可能である。判断処理部43は、検出部21が検出したコイル13に発生した実際の誘導電流の波形に基づく情報による検出値と基準値とを比較して、プランジャポンプ10の異常を検出する判断処理を実行可能である。
【0070】
これによれば、検出部21が検出したコイル13に発生する誘導電流の検出値と正常な状態におけるコイル13に発生する誘導電流の波形に基づく情報による基準値とを比較するといった簡易な構成でプランジャポンプ10の故障予知を行うことができる。また、誘導電流を用いることで、例えば塗装作業が行われる爆発性環境であるいわゆる防爆エリアであっても当該誘導電流が着火源になるおそれがないため、安全上の特段の措置を講じることなく防爆仕様に対応することができる。
【0071】
また、基準値は、コイル13に発生した誘導電流の波形の最大値Vsh及び最小値Vslによって設定される。そして、判断処理は、検出部21が検出したコイル13に発生した実際の誘導電流の波形の最大値Vh及び最小値Vlが基準値Vsh、Vslから外れた場合に、プランジャポンプ10に異常が発生したと判断する処理を含む。
【0072】
ここで、例えば軸部材113のサイクル数のカウントのタイミングが所定期間一定でない場合に異常を検出する場合、軸部材113のサイクル結果に応じた断続的な情報に基づいて異常を検出することになるため、故障の予知を行うことが困難である。そこで、本実施形態では、コイル13に発生した誘導電流の波形の最大値Vh及び最小値Vlに基づいて異常を検出する構成としている。これによれば、軸部材113のストロークスピードの状態を連続的に把握することができるため、プランジャポンプ10の異常を迅速に判断することができる。これにより、プランジャポンプ10の故障の予知を実現することができる。
【0073】
更に、設定処理は、プランジャポンプ10の通常運転の最中に実行される。これによれば、設定処理による基準値の設定を、プランジャポンプ10の通常運転の最中に行うことで、運転開始前に予め基準値を設定しておく必要がない。そのため、効率的にプランジャポンプ10の異常検出を行うことができる。また、現在のプランジャポンプ10の運転状況を反映して異常検出を行うことができるため、より正確にプランジャポンプ10に生じる不具合を検知することができる。
【0074】
なお、設定処理において、基準値は、コイル13に発生した誘導電流の波形の周期によって設定することができる。この場合、
図12の例では、設定処理部42の実行する設定処理は、正常な状態で軸部材113を往復移動させた場合において、コイル13に発生した誘導電流の波形に基づく情報を基準値Vstとして設定する処理を含む。そして、判断処理部43の実行する判断処理は、検出部21が検出したコイル13に発生した実際の誘導電流の波形の周期Vtが基準値Vstから外れた場合に、プランジャポンプ10に異常が発生したと判断することができる。
【0075】
これによれば、例えばプランジャ142のサイクル数のカウントのタイミングが所定期間一定でない場合に異常を判断する場合に比べて、プランジャポンプ10の異常を精度良くかつ迅速に判断することができる。これにより、プランジャポンプ10の故障の予知を実現することができる。
【0076】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について
図13から
図16を参照して説明する。本実施形態の構成は、プランジャポンプシステム1を構成する構成要素の内容が上記第1実施形態と異なる。具体的には、この第2実施形態では、プランジャポンプシステム1は、異常検出装置20と外部の装置60、70とが、例えばアクセスポイント50及びインターネット回線やLAN回線等の電気通信回線80を介して相互に通信可能に接続されて構成されている。
【0077】
本実施形態では、異常検出装置20は、
図14に示すように、通信部28を有している。通信部28は、例えばアクセスポイント50及び電気通信回線80を介して外部の装置60、70と通信する機能を有する。この場合、通信部28は、アクセスポイント50に対し、Wi-Fi規格に準拠した無線LAN又は有線LANを用いて接続することができる。
【0078】
外部の装置60、70は、例えばそれぞれスマートフォンやタブレット端末等の情報通信端末60及びサーバー70で構成することができる。この場合、情報通信端末60は、プランジャポンプ10のユーザが使用することが想定される。サーバー70は、企業が運営することが想定される。情報通信端末60は、
図15に示すように、通信部61、入力部62、出力部63、制御部64、及び出力処理部65を有している。
【0079】
通信部61は、例えば電気通信回線80等を介して異常検出装置20の通信部28と通信する機能を有する。入力部62及び出力部63は、例えばタッチパネルディスプレイで構成することができる。また、出力部63は、情報通信端末60に内蔵されている図示しないスピーカを含んで構成することができる。制御部64は、例えばCPU641や、ROM、RAM、及び書き換え可能なフラッシュメモリ等の記憶領域642を有するマイクロコンピュータを主体に構成されており、情報通信端末60の動作の制御や各種の処理を実行する。通信部61、入力部62、及び出力部63は、それぞれ制御部64に電気的に接続されている。
【0080】
記憶領域642は、情報通信端末60を異常検出装置20と通信可能に接続してプランジャポンプシステム1の構成要素として機能させるためのコンピュータプログラムを記憶している。このコンピュータプログラムは、例えば外部のサーバー70にいわゆるアプリケーションソフトウェアとして記憶されている。そして、制御部64は、外部のサーバー70からコンピュータプログラムをダウンロードしてインストールすることで、出力処理部65をソフトウェアとして仮想的に実現する。
【0081】
出力処理部65は、異常検出装置20からの指示を受けて出力部63の出力を制御する機能を有する。例えば異常検出装置20は、情報通信端末60を用いて出力処理を実行するための命令を、通信部28を介して情報通信端末60に直接的又はサーバー70を介して間接的に送信することができる。そして、出力処理部65は、異常検出装置20から出力処理を実行する旨の命令を受信すると、その命令に基づいて出力部63に所定の情報を出力させる。この場合、出力処理部65によって出力される所定の情報は、出力処理部44によって出力される情報と同様の構成にすることができる。
【0082】
サーバー70は、例えばインターネット上に設けられた外部サーバーで構成することができ、データベースサーバー、Webサーバー、クラウドサーバーなどと称される。プランジャポンプシステム1は、異常検出装置20と情報通信端末60との通信を、両者間で直接行う構成とすることもできるし、サーバー70を介して行う構成とすることもできる。
【0083】
異常検出装置20と情報通信端末60との通信を、サーバー70を介して行う場合、サーバー70は、プランジャポンプシステム1の構築に必要な異常検出装置20及び情報通信端末60に関する情報、例えば異常検出装置20のシリアルナンバーやMACアドレスと、ユーザが設定したID及びパスワードとを紐づけして記憶することができる。そして、サーバー70は、ID及びパスワードが入力された情報通信端末60と、そのIDに紐づけされた異常検出装置20との間での通信を仲介する。この場合、サーバー70は、いわゆる管理サーバーとして機能する。
【0084】
また、サーバー70は、上述したアプリケーションソフトウェアを保管することができる。この場合、サーバー70は、いわゆるアプリ保管サーバーとして機能する。なお、管理サーバーとアプリ保管サーバーとは、別の構成つまり別の場所に設置された異なる個体の装置であっても良い。
【0085】
例えば情報通信端末60を用いて出力処理を実行する場合、情報通信端末60は、
図16に示すように、出力処理に係る情報83を出力部63に出力させる。すなわち、情報通信端末60を用いて出力処理を実行すると、情報通信端末60は、出力部63にプランジャポンプ10に異常が発生した旨を示す情報83を表示させる。この場合、出力処理によって出力部63に表示される情報83には、
図16に示すように、「吸引弁が消耗しています」との文字、及び「メンテナンスを行ってください」との文字を含めることができる。
【0086】
以上説明した第2実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の作用効果が得られる。また、外部の装置60、70によってプランジャポンプ10の異常の発生の確認をすることができるため、利便性を向上することができる。
【0087】
以上説明した、本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0088】
1…プランジャポンプシステム、10…プランジャポンプ、112…駆動部、113…軸部材、12…磁石、13…コイル、132a…端面、20…プランジャポンプ用異常検出装置、21…検出部、23、63…出力部、42…設定処理部、43…判断処理部、44、65…出力処理部