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  • 特開-香味組成物およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055017
(43)【公開日】2023-04-17
(54)【発明の名称】香味組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A24B 15/24 20060101AFI20230410BHJP
【FI】
A24B15/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164100
(22)【出願日】2021-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】新川 雄史
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 信哉
【テーマコード(参考)】
4B043
【Fターム(参考)】
4B043BB16
4B043BB25
4B043BC02
4B043BC15
4B043BC24
4B043BC26
4B043BC33
(57)【要約】
【課題】アルカロイド成分を十分に含有する香味組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】たばこ香味抽出物と;媒体と;脂肪族ヒドロキシ酸、芳香族カルボン酸、およびこれらの組合せからなる群から選択される酸と;を含む液を調製する工程1、ならびに
当該液を加熱して当該媒体の全部または一部を除去する工程2、
を備える、香味組成物の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
たばこ香味抽出物と;媒体と;脂肪族ヒドロキシ酸、芳香族カルボン酸、およびこれらの組合せからなる群から選択される酸と;を含む液を調製する工程1、ならびに
当該液を加熱して当該媒体の全部または一部を除去する工程2、
を備える、香味組成物の製造方法。
【請求項2】
前記工程1が、たばこ原料をアルカリ処理し、当該処理によって得た香味成分を捕集する工程、を備える、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
工程2の前または後に、前記液から焦げ成分を除去する工程をさらに備える、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記脂肪族ヒドロキシ酸が以下の式を満たす、
炭素数/水酸基数≦2
請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記酸が、乳酸、酒石酸、安息香酸、およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項6】
工程1で調製された前記液のpHが8未満である、請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
工程1で調製された前記液が、たばこ香味抽出物中のニコチン1モルに対し、0.5~3モルの前記酸を含む、請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記媒体が水を含む、請求項1~7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記工程2において、前記液を30~100℃に加熱する、請求項1~8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
工程1で調製された前記液が下記1)または2)、あるいは1)および2)の条件を満たす:
1)たばこ香味抽出物中のニコチン1モルに対し0.5~1.5モルの前記芳香族カルボン酸を含む、
2)たばこ香味抽出物中のニコチン1モルに対し0.5~2.5モルの前記脂肪族ヒドロキシ酸を含む、
請求項1~9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1~10の方法で得られた、香味組成物。
【請求項12】
前記組成物中、30重量%以下の前記媒体を含む、請求項11に記載の香味組成物。
【請求項13】
前記組成物中、1重量%以下の前記媒体を含む、請求項12に記載の香味組成物。
【請求項14】
粘稠液体またはワックス状である、請求項11~13のいずれかに記載の香味組成物。
【請求項15】
請求項11~14のいずれかに記載の香味組成物を含む、たばこ材料。
【請求項16】
ベース材と当該ベース材に添加された前記香味組成物を含む、請求項15に記載のたばこ材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香味組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たばこ香喫味に寄与する香喫味成分(例えば、ニコチン成分を含むアルカロイド)をたばこ原料から抽出して、抽出された香喫味成分を香味源基材に担持させる技術が提案されている。特許文献1には、簡易な装置によって香喫味成分を効率よく抽出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6101860号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記香喫味成分中の一部のアルカロイドは揮発しやすいので、組成物を調製する際に当該成分の量が減少するという問題があった。かかる事情に鑑み、本発明は、アルカロイド成分を十分に含有する香味組成物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは、前記アルカロイドをプロトン化した状態とすれば蒸気圧を低下させることができ、これによって当該アルカロイドの揮発による減少を低減できることを見出した。すなわち、前記課題は以下の本発明によって解決される。
態様1
たばこ香味抽出物と;媒体と;脂肪族ヒドロキシ酸、芳香族カルボン酸、およびこれらの組合せからなる群から選択される酸と;を含む液を調製する工程1、ならびに
当該液を加熱して当該媒体の全部または一部を除去する工程2、
を備える、香味組成物の製造方法。
態様2
前記工程1が、たばこ原料をアルカリ処理し、当該処理によって得た香味成分を捕集して前記液を製造する工程、を備える、態様1に記載の製造方法。
態様3
工程2の前または後に、前記液から焦げ成分を除去する工程をさらに備える、態様1または2に記載の製造方法。
態様4
前記脂肪族ヒドロキシ酸が以下の式を満たす、
炭素数/水酸基数≦2
態様1~3のいずれかに記載の製造方法。
態様5
前記酸が、乳酸、酒石酸、安息香酸、およびこれらの組合せからなる群より選択される、態様1または2に記載の製造方法。
態様6
工程1で調製された前記液のpHが8未満である、態様1~5のいずれかに記載の製造方法。
態様7
工程1で調製された前記液が、たばこ香味抽出物中のニコチン1モルに対し、0.5~3モルの前記酸を含む、態様1~6のいずれかに記載の製造方法。
態様8
前記媒体が水を含む、態様1~7のいずれかに記載の製造方法。
態様9
前記工程2において、前記液を30~100℃に加熱する、態様1~8のいずれかに記載の製造方法。
態様10
工程1で調製された前記液が下記1)または2)、あるいは1)および2)の条件を満たす:
1)たばこ香味抽出物中のニコチン1モルに対し0.5~1.5モルの前記芳香族カルボン酸を含む、
2)たばこ香味抽出物中のニコチン1モルに対し0.5~2.5モルの前記脂肪族ヒドロキシ酸を含む、
態様1~9のいずれかに記載の製造方法。
態様11
態様1~10の方法で得られた、香味組成物。
態様12
前記組成物中、30重量%以下の前記媒体を含む、態様11に記載の香味組成物。
態様13
前記組成物中、1重量%以下の前記媒体を含む、態様12に記載の香味組成物。
態様14
粘稠液体またはワックス状である、態様11~13のいずれかに記載の香味組成物。
態様15
態様11~14のいずれかに記載の香味組成物を含む、たばこ材料。
態様16
ベース材と当該ベース材に添加された前記香味組成物を含む、態様15に記載のたばこ材料。
【発明の効果】
【0006】
本発明によって、アルカロイド成分を十分に含有する香味組成物の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の概要を示す図
図2】抽出装置の一態様を示す図
図3】捕集装置の一態様を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「X~Y」はその端値であるXおよびYを含む。
【0009】
1.香味組成物の製造方法
香味組成物の製造方法は、以下の工程を備える。
工程1:たばこ香味抽出物と;媒体と;脂肪族ヒドロキシ酸、芳香族カルボン酸、およびこれらの組合せからなる群から選択される酸と;を含む液を調製する工程、ならびに
工程2:当該液を加熱して当該媒体の全部または一部を除去する工程。
【0010】
(1)工程1
本工程では、たばこ香味抽出物と、媒体と、特定の酸と、を含む液を調製する。たばこ香味抽出物とは、たばこ原料から抽出された香味を呈する物質または組成物である。抽出は公知の方法で実施でき、抽出には水、あるいはグリセリンまたはエタノールなどの有機溶媒を用いることができるが、作業性等を考慮すると水が好ましい。また、抽出には必要に応じて酸またはアルカリを用いることもできる。
【0011】
たばこ原料としては、例えば、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana.tabacum)やニコチアナ・ルスチカ(Nicotiana.rustica)等のタバコ属の原料を用いることができる。ニコチアナ・タバカムとしては、例えば、バーレー種または黄色種等の品種を用いることができる。また、バーレー種または黄色種以外の種類のたばこ原料を用いてもよい。
【0012】
たばこ原料は、刻みまたは粉粒体のたばこ原料(以下、「原料片」ともいう)であってもよい。このような場合において、原料片の粒径は、0.5~1.18mmであることが好ましい。このような原料片は、例えば、JIS Z 8801に準拠したステンレス篩を用いて、JIS Z 8815に準拠する篩分けによって得られる。例えば、1)1.18mmの目開きを有するステンレス篩を用いて、乾燥式かつ機械式振とう法によって20分間に亘って原料片を篩分けによって、1.18mmの目開きを有するステンレス篩を通過する原料片を得る。2)続いて、0.50mmの目開きを有するステンレス篩を用いて、乾燥式かつ機械式振とう法によって20分間に亘って原料片を篩分けによって、0.50mmの目開きを有するステンレス篩を通過する原料片を取り除く。このようにすることで、上限を規定するステンレス篩(目開き=1.18mm)を通過し、下限を規定するステンレス篩(目開き=0.50mm)を通過しない原料片を調製できる。
【0013】
本工程においては、たばこ香味抽出物と媒体と前記酸を含む液を一度に調製してもよいし(第1の態様、図1(1))、たばこ香味抽出物と媒体とを含む液を準備し、次いで当該液に前記酸を添加してもよい(第2の態様、図1(2))。以下、各態様について説明する。
【0014】
[第1の態様]
第1の態様では、たばこ原料をアルカリ処理する。当該処理を経て香味成分を発生させ、これを捕集してたばこ香味抽出物と媒体と特定の酸を含む液を調製する。この際、アルカリ処理したたばこ原料から香味成分を気体として取出し、当該気体を、酸を添加した液体に導入して香味成分を液体に移行させることが好ましい。すなわち、本態様においてたばこ香味抽出物と媒体と前記酸を含む液は、一度に調製される。図1(1)に当該態様を示す。図2、3は当該態様において用いられる装置の一例を示す。抽出装置10は、容器11、噴霧手段12、および加熱手段(図示せず)を備える。たばこ原料50は容器11内に装入される。容器11は、例えば、耐熱性および耐圧性を有する部材(例えばSUS)によって構成される。容器11は、密閉空間を構成することが好ましい。たばこ原料50に含まれる香味成分の容器11の外側への揮散を抑制できるからである。
【0015】
本態様では、たばこ原料50を容器11に装入し、噴霧器12からアルカリ物質を供給する。アルカリ物質としては、例えば、炭酸カリウム水溶液等のアルカリ性液体が好ましい。この際、アルカリ物質は、たばこ原料50のpHが特定の範囲となるまで供給される。この際、アルカリ物質は一度に加えられても、複数回に分けて加えられてもよい。特に、アルカリ物質を複数回に分けて加えた場合、原料の品温の低下を防ぐことができ、加熱時間を短縮することが可能になる。また、処理時間が短縮されることによりTSNA量が低減される。当該pHは好ましくは8.0以上、より好ましくは8.9~9.7である。たばこ原料のpHは、たばこ原料を10倍量の水と混合した際の水のpHである。また、たばこ原料50から効率的に香味成分を気体中に放出させるため、アルカリ物質噴霧後のたばこ原料50の水分量は、10重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがさらに好ましい。たばこ原料50の水分量の上限は、限定されないが、例えばたばこ原料50を効率的に加熱するために、50重量%以下とすることが好ましい。
【0016】
アルカリ処理前におけるたばこ原料50に含まれる香味成分(ニコチン等のアルカロイド)の含有量は、乾燥状態において、たばこ原料50の総重量に対し、好ましくは2.0重量%以上であり、より好ましくは4.0重量%以上である。
【0017】
このようにして、たばこ原料50にアルカリ処理が施される。当該処理は室温(10~40℃)程度で実施される。処理後、容器11からアルカリ液体が排出される。次いで、抽出装置10と後述する捕集装置20が接続され、たばこ原料50は抽出装置10の加熱手段を用いて加熱される。この際の温度は限定されないが、好ましくは80~200℃であり、より好ましくは100~150℃である。加熱によって、たばこ原料50の香味成分を気体として取り出すことができる。そして当該気体は捕集装置20へ送られる。
【0018】
図3は、捕集装置20の一態様を示す。捕集装置20は、容器21と、パイプ22と、放出部分23と、パイプ24とを備える。パイプ22は、抽出装置10と接続される。容器21は、捕集溶媒70を収容する。容器21は、例えば、ガラスによって構成される。容器21は、密閉空間を構成することが好ましい。
【0019】
捕集溶媒70としては、香味成分を溶解させることができれば限定されないが、水、またはグリセリン、エタノール等の水性有機溶媒を用いることができる。捕集溶媒70の温度は、例えば、室温である。室温の下限は、例えば、捕集溶媒70が凝固しない温度、好ましくは10℃以上である。常温の上限は、例えば40℃以下である。捕集溶媒70の温度をこの範囲とすることで、捕集溶液からの香味成分の揮散を抑制しつつ、アンモニウムイオンやピリジン等の揮発性夾雑成分を捕集溶液から効率的に除去することができる。このようにして得た捕集溶液を「VB捕集液」ともいう。
【0020】
放出成分61は、少なくとも、香味成分の指標であるニコチン成分を含む。放出部分23は、パイプ22の先端に設けられており、捕集溶媒70に浸漬される。放出部分23は、複数の開口23Aを有している。パイプ22によって導かれた放出成分61は、複数の開口23Aから泡状の放出成分62として捕集溶媒70中に放出される。パイプ24は、捕集溶媒70によって捕捉されなかった残存成分63を容器21の外側に導く。
【0021】
放出成分62は、たばこ原料50の加熱によって気相中に放出される成分であるため、放出成分62によって捕集溶媒70の温度が上昇する可能性がある。従って、捕集装置20は、捕集溶媒70の温度を常温に維持するために、捕集溶媒70を冷却する機能を有していてもよい。
【0022】
捕集溶媒70には、脂肪族ヒドロキシ酸、芳香族カルボン酸、およびこれらの組合せからなる群から選択される酸が予め添加されていることが好ましい。酸によって、気体から移行したニコチン等のアルカロイドを速やかにプロトン化することができ、当該アルカロイドの揮発性を低減することができる。
【0023】
脂肪族ヒドロキシ酸とは、水酸基を有する脂肪酸である。脂肪族ヒドロキシ酸としては、炭素数と水酸基数の比(炭素数/水酸基数)が2以下であるものが好ましい。このような酸としては、乳酸または酒石酸等が挙げられる。また、芳香族カルボン酸としては限定されないが、安息香酸等が好ましい。
【0024】
酸の添加量はアルカロイドがプロトン化する量であればよい。例えば、酸の量は、たばこ香味抽出物を含む前記液のpHを8未満とする量であることが好ましい。当該液のpHが8未満であると、代表的なアルカロイドであるニコチンはプロトン化し、対イオンが共存する場合、塩を生成しうる。
【0025】
しかしながら、酸の量が過剰であると、得られる香味組成物に雑味が生じるおそれがある。よって、一態様において、酸の量(複数種を用いる場合はその総量。以下同様。)は、たばこ香味抽出物中のニコチン1モルに対し、0.5~3モル程度である。また別態様において、芳香族カルボン酸の量は、たばこ香味抽出物中のニコチン1モルに対し0.5~1.5モル程度であり、脂肪族ヒドロキシ酸の量は、たばこ香味抽出物中のニコチン1モルに対し0.5~2.5モル程度である。芳香族カルボン酸と脂肪族ヒドロキシ酸は併用されてもよい。
【0026】
[第2の態様]
第2の態様においては、たばこ香味抽出物と媒体とを含む液を準備する。具体的にはたばこ原料を液体を用いた抽出に供して抽出液を調製する。抽出は前述のとおり公知の方法(例えば第1の態様に準じる方法)に従って実施できる。次いで、当該液に前記酸を添加する。この場合の酸の添加量等は第1の態様で説明したとおりである。
【0027】
(3)工程2
本工程では、工程1で得た、たばこ香味抽出物と媒体と酸を含む液を加熱して当該媒体の全部または一部を除去する。この工程を、以下「濃縮工程」ともいう。濃縮は、公知の方法で実施できるが、例えばエバポレーター等を用いた減圧濃縮が挙げられる。濃縮時の温度は限定されないが、前記液の温度を30~100℃とすることが好ましい。本製造方法においては、アルカロイドが酸によってプロトン化されているので、濃縮時にアルカロイドが揮発することを抑制できる。その結果、アルカロイドの含有量を高めた香味組成物を得ることができる。
【0028】
(4)他の工程
本製造方法は、工程2の前または後に、焦げ成分を除去する工程をさらに備えることができる。焦げ成分は主としてたばこ原料に含まれる糖分が加熱されることで生成される。焦げ成分の除去は、例えば限外濾過膜、逆浸透膜、カラムクロマトグラフィー等によって実施できる。焦げ成分を除去することで、香味組成物の香喫味が向上し、さらには保存安定性も向上する。
【0029】
2.香味組成物
香味組成物は、たばこ原料由来のアルカロイドを含む香味成分を含有する。香味組成物中の媒体の量は、用途に応じて適宜調製されるが、当該組成物中、好ましくは30重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下である。このようにして得た香味組成物は、粘稠液体またはワックス状であってよい。
【0030】
3.たばこ材料
香味組成物は、添加剤として有用である。例えば、当該香味組成物を、たばこ刻、たばこシート、チップペーパー等のベース材に添加することで香味組成物含有たばこ材料を調製できる。具体的には、前記香味組成物を前記ベース材に塗布または噴霧して当該たばこ材料を調製することができる。また、香味組成物そのものを、必要に応じて補強材等と組み合わせて粉体、顆粒に成形し、たばこ材料とすることもできる。
【0031】
香味組成物を溶媒に溶解または分散させて、非燃焼加熱型香味吸引物品用の香味液とすることもできる。溶媒としては、当該分野でエアロゾル生成基材として使用されているものが好ましい。エアロゾル生成基材としては、グリセリンまたはポリエチレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。
【実施例0032】
[VB捕集液の調製]
図2に示す抽出装置を準備した。当該装置は噴霧手段と加熱手段を備え、耐熱性および耐圧性を有する。当該装置の内部にたばこ原料としてたばこ葉500gを装入し、密閉した。次いで、噴霧装置から炭酸カリウム水溶液を噴霧して、アルカリ処理を施した。炭酸カリウム水溶液は、たばこ原料に10倍量の水を加えてなる水のpHが8.9~9.7の範囲となるまで加えた。アルカリ処理は室温(25℃)で実施した。続いて、抽出装置から液体を排出した。図3に示す捕集容器を準備し、捕集容器のパイプ22と抽出装置を接続した。抽出装置によって内部のたばこ原料を加熱し、発生する気体を捕集容器にて捕集し、VB捕集液を得た。
詳細な条件は以下のとおりであった。
アルカリ処理後のたばこ原料のpH:9.6
たばこ原料の加熱温度:120℃
捕集溶媒:水
捕集溶媒の温度:20℃
捕集溶媒の量:60g
バブリング処理(通気処理及び捕集処理)時の通気流量:15L/min
以下に示す方法で当該VB捕集液中のニコチン濃度をGC/MSによって測定したところ、3.5重量%であった。また、当該VB捕集液のpHは9.39であった。
【0033】
[ニコチンの抽出]
試料100mg±5mgをガラス瓶に測り取った。
当該瓶に水酸化ナトリウム水溶液(10w/w%)を3.75mL、ヘキサンを5mL加え振盪し(200rpm、1h)、抽出を行った。ヘキサンには、内部標準物質として0.05w/v%のn-ヘプタデカンを添加した。
振盪後、ヘキサン層をバイアルに分注し、GC-FIDにてニコチンを分析した。
【0034】
[GC条件]
下表のとおりとした。
【0035】
【表1】
【0036】
[比較例1]
前述のとおり調製したVB捕集液を、100mLナスフラスコに24.9g測り取った。ロータリエバポレーターを用いて、当該VB捕集液を濃縮した。条件は以下のとおりとした。
水浴温度:50℃
減圧度:約6mmHg
終了条件:重量変化がなくなるまで
このようにして得た濃縮物は、油分と白い固形物の混合物であった。濃縮物のニコチン濃度からニコチンの収率を求めた。
【0037】
[実施例1]
前述のとおり調製したVB捕集液を、300mLナスフラスコに83.9g測り取った。次いで、当該ナスフラスコ内にDL乳酸を3.29g(ニコチンの1倍モル量)加え、撹拌して溶解した。当該VB捕集液を、比較例1と同じ条件で濃縮した。このようにして得た濃縮物は、黄色い水あめ状であった。濃縮物のニコチン濃度からニコチンの収率を求めた。
【0038】
[実施例2]
前述のとおり調製したVB捕集液を、300mLナスフラスコに84.8g測り取った。次いで、当該ナスフラスコ内に安息香酸を2.25g(ニコチンの1倍モル量)加え、撹拌して溶解した。当該VB捕集液を、比較例1と同じ条件で濃縮した。このようにして得た濃縮物は、ワックスのような半固形状であった。濃縮物のニコチン濃度からニコチンの収率を求めた。これらの結果を表2に示す。表中、WBはウェットベース、DBはドライベースを意味する。
【0039】
【表2】
【0040】
実施例で得た濃縮液のpHは4.30、6.74であった。該当するpHではほとんどのニコチンは1価のイオン(または塩)として存在していることが示唆された。一方で、VB捕集液および比較例1で得た濃縮物はpHがそれぞれ9.39および9.66であり、ニコチンは遊離の状態で存在していると推察された。以上より、実施例では、ニコチンがプロトン化され(または対応する酸との塩の状態で存在し)、蒸気圧が低下したためにニコチンの収率が向上したと考えられる。
【符号の説明】
【0041】
10 抽出装置
11 容器
12 噴霧手段
50 たばこ原料
20 捕集装置
21 容器21
22 パイプ22
23 放出部分23
24 パイプ24
23A 開口
61 放出成分
62 泡状の放出成分
63 残存成分
70 捕集溶媒
図1
図2
図3