(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055022
(43)【公開日】2023-04-17
(54)【発明の名称】電動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F16H 37/04 20060101AFI20230410BHJP
H02K 7/06 20060101ALI20230410BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20230410BHJP
F16H 35/00 20060101ALI20230410BHJP
F16H 35/10 20060101ALI20230410BHJP
B64C 13/00 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
F16H37/04
H02K7/06 A
H02K7/116
F16H35/00 C
F16H35/10 H
B64C13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164107
(22)【出願日】2021-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【弁理士】
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】音在 啓太郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 健夫
(72)【発明者】
【氏名】宮地 駿
【テーマコード(参考)】
3J062
5H607
【Fターム(参考)】
3J062AA41
3J062AB01
3J062AB06
3J062AC04
3J062CF03
3J062CF34
3J062CG02
3J062CG14
3J062CG17
3J062CG68
3J062CG83
3J062CG84
5H607BB01
5H607BB14
5H607CC03
5H607DD03
5H607EE05
5H607EE31
5H607EE33
5H607EE36
5H607EE52
5H607HH01
(57)【要約】
【課題】回転力の出力対象とは独立して電動アクチュエータを交換したい場合にも、容易に交換することが可能な電動アクチュエータを提供する。
【解決手段】この電動アクチュエータ100は、出力対象に回転力を出力する出力軸1と、出力軸1を回転駆動させる電動モータ2と、電動モータ2を制御するコントローラ3と、出力軸1と電動モータ2との間に配置された減速機構4と、出力軸1と電動モータ2との間に配置され、出力側からのバックドライブトルクを入力側に伝達することを阻む非可逆機構5と、出力軸1の回転位置を検知する位置センサ6と、出力軸1、電動モータ2、コントローラ3、減速機構4、非可逆機構5、および、位置センサ6が配置され、出力対象とは独立して取付対象に着脱可能な筐体7と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力対象に回転力を出力する出力軸と、
前記出力軸を回転駆動させる電動モータと、
前記電動モータを制御するコントローラと、
前記出力軸と前記電動モータとの間に配置された減速機構と、
前記出力軸と前記電動モータとの間に配置され、出力側からのバックドライブトルクを入力側に伝達することを阻む非可逆機構と、
前記出力軸の回転位置を検知する位置センサと、
前記出力軸、前記電動モータ、前記コントローラ、前記減速機構、前記非可逆機構、および、前記位置センサが配置され、前記出力対象とは独立して取付対象に着脱可能な筐体と、を備える、電動アクチュエータ。
【請求項2】
前記減速機構は、複数の減速機構を含む、請求項1に記載の電動アクチュエータ。
【請求項3】
前記減速機構は、トロコイドギヤ減速機構、遊星ギヤ減速機構およびスパーギヤ減速機構のうちの少なくとも2つを含む、請求項2に記載の電動アクチュエータ。
【請求項4】
前記出力軸および前記電動モータは、互いの回転軸線がずれるように配置されており、
前記位置センサは、前記出力軸の回転軸線に対して前記電動モータとは反対側に配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の電動アクチュエータ。
【請求項5】
前記出力軸に接続されたスルーシャフトをさらに備え、
前記位置センサは、アンチバックラッシュギヤ部を介して前記スルーシャフトに接続されている、請求項4に記載の電動アクチュエータ。
【請求項6】
前記減速機構に接続され、前記出力軸を手動で回転させるための手動駆動機構をさらに備え、
前記手動駆動機構は、前記減速機構に接続された接続状態と、前記減速機構に接続されていない接続解除状態とを、切り替え可能に構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の電動アクチュエータ。
【請求項7】
前記手動駆動機構は、
一端に前記減速機構に係合する減速機構用係合部を有するとともに、他端に手動操作用工具が係合する工具用係合部を有する移動部と、
前記接続状態と前記接続解除状態とを切り替えるように前記移動部を移動可能に付勢する付勢部と、を含む、請求項6に記載の電動アクチュエータ。
【請求項8】
前記電動モータは、モータコアを含み、前記モータコアがモータ専用ハウジングを有することなく前記筐体内に配置されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の電動アクチュエータ。
【請求項9】
前記筐体において前記出力軸と前記電動モータとの間に配置され、トルク過負荷を回避するための過負荷制限機構をさらに備える、請求項1~8のいずれか1項に記載の電動アクチュエータ。
【請求項10】
前記過負荷制限機構は、規定トルクに達した場合に滑りを発生させることにより、前記トルク過負荷を回避するスリップクラッチである、請求項9に記載の電動アクチュエータ。
【請求項11】
航空機のフラップを駆動するように構成されている、請求項1~10のいずれか1項に記載の電動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動モータを備える電動アクチュエータが開示されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1では、ロッドと、ロッドを伸縮させるための電動モータと、電動モータを制御するためのコントローラとを備える航空機用電動アクチュエータが開示されている。この航空機用電動アクチュエータは、電動モータにより、減速機構としての遊星歯車機構などを介して取り付けられたネジ軸を回転させることにより、ネジ軸に螺合されたナットを前進方向に移動させ、ナットに係合されたロッドが伸びるように構成されている。また、この航空機用電動アクチュエータには、機体への取付部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1には明記されていないが、上記特許文献1では、取付部を介して、ネジ軸、ナット、ロッド、電動モータおよびコントローラを含む航空機用電動アクチュエータが機体から取り外されると考えられる。しかしながら、この場合、電動アクチュエータを、ロッド(回転力の出力対象)と共に機体(取付対象)から取り外す必要があるため、回転力の出力対象であるロッドとは独立して電動アクチュエータを交換したい場合に、電動アクチュエータを容易に交換することができないという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、回転力の出力対象とは独立して電動アクチュエータを交換したい場合にも、容易に交換することが可能な電動アクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における電動アクチュエータは、出力対象に回転力を出力する出力軸と、出力軸を回転駆動させる電動モータと、電動モータを制御するコントローラと、出力軸と電動モータとの間に配置された減速機構と、出力軸と電動モータとの間に配置され、出力側からのバックドライブトルクを入力側に伝達することを阻む非可逆機構と、出力軸の回転位置を検知する位置センサと、出力軸、電動モータ、コントローラ、減速機構、非可逆機構、および、位置センサが配置され、出力対象とは独立して取付対象に着脱可能な筐体と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
上記一の局面における電動アクチュエータでは、出力軸、電動モータ、コントローラ、減速機構、非可逆機構、および、位置センサが配置され、出力対象とは独立して取付対象に着脱可能な筐体を設ける。これにより、回転力の出力対象とは独立して、出力軸、電動モータ、コントローラ、減速機構、非可逆機構、および、位置センサを一体的に含む筐体を、1つの交換単位として、電動アクチュエータを交換することができる。その結果、回転力の出力対象とは独立して電動アクチュエータを交換したい場合にも、電動アクチュエータを容易に交換することができる。
【0009】
なお、電動モータ、コントローラ、減速機構、および、位置センサなどが分散して配置されている場合があるが、この場合、部品点数が増加するとともに、組立工数が増加する。また、組付け精度への要求が比較的厳しい場合には、さらに組立工数が増加する。また、組立工数の増加は、突発的な整備(メンテナンス)が発生した場合の整備工数の増加も意味している。これに対して、上記のように、出力軸、電動モータ、コントローラ、減速機構、非可逆機構、および、位置センサが配置され、出力対象とは独立して取付対象に着脱可能な筐体を設ける。これにより、電動モータ、コントローラ、減速機構、および、位置センサなどが分散して配置されている場合に比べて、電動アクチュエータが適用される駆動系全体での部品点数を削減することができるとともに、組立工数および整備工数を削減することができる。また、電動アクチュエータが適用される駆動系全体での部品点数を削減することができるので、電動アクチュエータが適用される駆動系全体での重量を低減することができる。その結果、電動アクチュエータが航空機などに適用される場合、航空機などの燃費を向上させることができる。
【0010】
また、上記のように、電動アクチュエータが非可逆機構を含むので、航空機のフラップの駆動系などのバックドライブトルクが発生しやすい駆動系に電動アクチュエータが適用される場合に、本構成は、特に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態による電動アクチュエータを示した断面図である。
【
図2】第1実施形態による電動アクチュエータの手動駆動機構の接続解除状態を示した断面図である。
【
図3】第1実施形態による電動アクチュエータの手動駆動機構の接続状態を示した断面図である。
【
図4】第2実施形態による電動アクチュエータを示した断面図である。
【
図5】変形例による電動アクチュエータを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
[第1実施形態]
図1~
図3を参照して、第1実施形態による電動アクチュエータ100の構成について説明する。
【0014】
(電動アクチュエータの構成)
図1に示すように、電動アクチュエータ100は、出力対象に回転力を出力する出力軸1と、出力軸1を回転駆動させる電動モータ2と、電動モータ2を制御するコントローラ3とを備えている。電動アクチュエータ100は、コントローラ3の制御の下、電動モータ2により出力軸1を回転させることにより、出力軸1から回転力を出力対象に出力するように構成されている。電動アクチュエータ100は、たとえば、航空機のフラップの駆動系に適用することができる。この場合、電動アクチュエータ100は、航空機のフラップを駆動するように構成されている。
【0015】
また、電動アクチュエータ100は、減速機構4と、非可逆機構5と、位置センサ6とをさらに備えている。ここで、本実施形態では、電動アクチュエータ100は、出力軸1、電動モータ2、コントローラ3、減速機構4、非可逆機構5、および、位置センサ6が配置され、出力対象とは独立して取付対象に着脱可能な金属製の筐体7をさらに備えている。筐体7には、航空機の主翼などの取付対象に取り外し可能に筐体7を取り付けるための取付部7aが設けられている。
【0016】
また、電動アクチュエータ100は、過負荷制限機構8と、手動駆動機構9と、スルーシャフト10とをさらに備えている。過負荷制限機構8、手動駆動機構9およびスルーシャフト10は、筐体7に配置されている。筐体7は、出力軸1、電動モータ2、コントローラ3、減速機構4、非可逆機構5、位置センサ6、過負荷制限機構8、手動駆動機構9、および、スルーシャフト10を一体的に含んだ状態で、出力対象とは独立して取付対象に着脱可能に構成されている。具体的には、筐体7は、
図1に示す構成を含んだ状態で、取付対象に着脱可能に構成されている。換言すれば、電動アクチュエータ100は、
図1に示す構成の全体が一体的な状態で、交換可能に構成されている。
【0017】
出力軸1は、回転対象に接続されるとともに、回転軸線C1周りに回転することにより、回転対象を回転軸線C1周りに回転させるように構成されている。
【0018】
電動モータ2は、モータコア21と、出力軸部22とを含んでいる。モータコア21は、ステータ21aと、ステータ21aの内側に配置されたロータ21bとを有している。出力軸部22は、ロータ21bと一体的に回転するようにロータ21bに接続されている。また、出力軸部22は、回転軸線C1と平行な回転軸線C2周りに回転するように構成されている。回転軸線C2は、回転軸線C1と、回転軸線C1およびC2に平行なX方向と直交するY方向に、ずれるように配置されている。すなわち、出力軸1および電動モータ2は、互いの回転軸線C1、C2がY方向にずれるように配置されている。
【0019】
また、本実施形態では、電動モータ2は、モータコア21がモータ専用ハウジングを有することなく筐体7内に配置されている。具体的には、モータコア21は、筐体7内に設けられたモータ保持部7bに保持されている。モータ保持部7bは、モータコア21のロータ21bが回転可能なようにモータコア21を保持している。
【0020】
コントローラ3は、機体の上位コントローラからの指令信号が入力されるとともに、入力された指令信号に基づいて、電動モータ2の回転速度を制御するように構成されている。たとえば、コントローラ3は、上位のコントローラからの停止位置情報と、位置センサ6からの位置情報が一致した場合、電動モータ2の回転を停止させるように、電動モータ2を制御する。この際、位置センサ6からの位置情報は順次取得可能であるので、停止位置の数回転手前で電動モータ2の減速を開始するように、電動モータ2が制御されてもよい。この場合、停止位置を超えるオーバーシュートを抑制して、停止位置精度を向上可能である。
【0021】
また、本実施形態では、減速機構4は、複数(4つ)の減速機構(41~44)を含んでいる。複数の減速機構(41~44)は、第1スパーギヤ減速機構41、第2スパーギヤ減速機構42、遊星ギヤ減速機構43、および、トロコイドギヤ減速機構44である。ここで、出力軸1と電動モータ2との間の動力伝達系について説明する。出力軸1と電動モータ2との間には、動力伝達系として、第1スパーギヤ減速機構41、過負荷制限機構8、第2スパーギヤ減速機構42、非可逆機構5、遊星ギヤ減速機構43、および、トロコイドギヤ減速機構44が、電動モータ2側から出力軸1側に向かって、この順に配置されている。すなわち、電動モータ2は、第1スパーギヤ減速機構41、過負荷制限機構8、第2スパーギヤ減速機構42、非可逆機構5、遊星ギヤ減速機構43、および、トロコイドギヤ減速機構44を介して、動力を伝達可能に出力軸1に接続されている。
【0022】
第1スパーギヤ減速機構41は、第1スパーギヤ部41aと、第2スパーギヤ部41bとを含んでいる。第1スパーギヤ部41aは、電動モータ2と同軸に配置されており、電動モータ2の出力軸部22と一体的に回転するように出力軸部22に接続されている。第2スパーギヤ部41bは、第1スパーギヤ部41aと歯同士が噛み合っている。また、第2スパーギヤ部41bは、過負荷制限機構8に接続されている。
【0023】
過負荷制限機構8は、トルク過負荷を回避するために設けられている。たとえば、フラップ側の駆動要素が固着した場合、コントローラ3により電動モータ2が急停止される。この場合、電動モータ2が停止された際に電動モータ2に発生するストールトルクと、慣性モーメントにより出力軸1と電動モータ2との間の動力伝達系に発生するスパイクトルクとに起因してトルク過負荷が発生する。過負荷制限機構8は、このようなトルク過負荷を回避するために設けられている。また、本実施形態では、過負荷制限機構8は、規定トルクに達した場合に滑りを発生させることにより、トルク過負荷を回避するスリップクラッチである。
【0024】
過負荷制限機構8は、摩擦部81と、プリロードスプリング82と、軸部83とを含んでいる。摩擦部81は、第2スパーギヤ部41bの回転を伝達可能に第2スパーギヤ部41bと軸部83とを接続するように摩擦力を発生する摩擦面を有している。プリロードスプリング82は、摩擦部81の摩擦面に発生する摩擦力を強めるように摩擦部81をX方向に付勢する圧縮コイルばねである。プリロードスプリング82は、摩擦部81に与える荷重を調整可能に構成されている。プリロードスプリング82により付勢された状態で摩擦部81の摩擦面に、摩擦力以上の力(すなわち、規定トルク以上の力)が作用すると、摩擦部81の摩擦面において滑りが発生する。これにより、第2スパーギヤ部41bと軸部83との間で回転が伝達されなくなるので、トルク過負荷が回避される。
【0025】
軸部83には、第2スパーギヤ部41b、摩擦部81およびプリロードスプリング82が取り付けられている。また、軸部83は、摩擦部81を介して第2スパーギヤ部41bの回転が伝達されることにより、回転するように構成されている。また、軸部83の出力側の部分には、第2スパーギヤ減速機構42に接続されるギヤ部83aが設けられている。
【0026】
第2スパーギヤ減速機構42は、スパーギヤ部42aと、出力部42bとを含んでいる。スパーギヤ部42aは、過負荷制限機構8のギヤ部83aと歯同士が噛み合っている。出力部42bは、スパーギヤ部42aと一体的に回転するとともに、非可逆機構5に接続されている。
【0027】
非可逆機構5は、出力側(出力軸1側)からのバックドライブトルクを入力側(電動モータ2側)に伝達することを阻むように構成されている。非可逆機構5は、入力側(電動モータ2側)からの駆動トルクを出力側(出力軸1側)に伝達する一方、出力側(出力軸1側)にバックドライブトルクが作用した場合に、入力側(電動モータ2側)に伝達されることを阻むように構成されている。ここで、航空機の飛行中にフラップには空気力が作用するため、空気力によってフラップ側から出力軸1にバックドライブトルクが作用する。この場合、非可逆機構5は、バックドライブトルクによる出力軸1の回転を阻止してフラップの角度を保持するとともに、電動モータ2側へのバックドライブトルクの伝達を阻むように機能する。
【0028】
非可逆機構5は、軸部51と、ボールランプ部52と、ブレーキ部53とを含んでいる。軸部51の入力側の部分には、第2スパーギヤ減速機構42の出力部42bが一体的に回転するように接続されている。また、軸部51の出力側の部分には、遊星ギヤ減速機構43が接続されている。また、軸部51入力側と出力側との間の部分には、ボールランプ部52が接続されている。ボールランプ部52は、ボールと、ボールを収容する溝状のボールランプを有し、バックドライブトルクを軸方向力に変換する変換機構として機能する。ブレーキ部53は、ボールランプ部52による軸方向力の作用方向に向かって先細るテーパ面からなり、互いに対向するブレーキ面を有している。ブレーキ部53は、ボールランプ部52による軸方向力が作用した場合、一方のブレーキ面が他方のブレーキ面に押し付けられることによって、ブレーキトルクを発生するように構成されている。このブレーキトルクにより、バックドライブトルクの伝達が阻まれる。
【0029】
なお、非可逆機構5が、バックドライブトルクを軸方向力に変換して、ブレーキトルクを発生する例を示したが、非可逆機構5は、この例には限られない。たとえば、非可逆機構5は、バックドライブトルクを径方向力に変換して、ブレーキトルクを発生するように構成されていてもよい。すなわち、非可逆機構5は、バックドライブトルクを径方向力に変換するボールランプ部と、ボールランプ部による径方向力が作用した場合にブレーキトルクを発生するブレーキ部とを含むように構成されていてもよい。
【0030】
遊星ギヤ減速機構43は、太陽ギヤ部43aと、複数の遊星ギヤ部43bと、リングギヤ部43cと、遊星キャリヤ部43dとを含んでいる。太陽ギヤ部43aは、非可逆機構5の軸部51の出力側の端部に軸部51の一部として設けられており、複数の遊星ギヤ部43bと歯同士が噛み合っている。複数の遊星ギヤ部43bは、太陽ギヤ部43aの周りを公転しつつ、自転するように構成されている。また、複数の遊星ギヤ部43bは、太陽ギヤ部43aとリングギヤ部43cとの間に配置されており、太陽ギヤ部43aとリングギヤ部43cと両方と歯同士が噛み合っている。リングギヤ部43cは、複数の遊星ギヤ部43bの外側に配置されており、回転しないように固定されている。遊星キャリヤ部43dは、複数の遊星ギヤ部43bに接続されており、複数の遊星ギヤ部43bによる回転を取り出して出力するように構成されている。また、遊星キャリヤ部43dは、トロコイドギヤ減速機構44に接続されている。
【0031】
トロコイドギヤ減速機構44は、入力軸部44aと、複数のクランク軸部44bと、トロコイドギヤ部44cと、複数の外ピン部44dと、複数の出力軸部44eとを含んでいる。入力軸部44aの入力側の部分には、遊星キャリヤ部43dの出力軸部が接続されている。また、入力軸部44aの出力側の部分には、複数のクランク軸部44bのスパーギヤ部と歯同士が噛み合うスパーギヤ部が設けられている。複数のクランク軸部44bには、偏心運動を行うための偏心部が設けられている。また、クランク軸部44bの偏心部には、トロコイドギヤ部44cが接続されている。トロコイドギヤ部44cは、複数の外ピン部44dに噛み合いながら、クランク軸部44bによる偏心運動を行うように構成されている。複数の外ピン部44dは、トロコイドギヤ部44cの外側において、溝状のピン配置部に回転可能に配置されている。出力軸部44eは、クランク軸部44bを介してトロコイドギヤ部44cの回転を取り出して、出力軸1を回転軸線C1周りに回転させるように構成されている。
【0032】
位置センサ6は、出力軸1の回転位置を検知するエンコーダである。また、本実施形態では、位置センサ6は、アンチバックラッシュギヤ部61aを介して、出力軸1に接続されたスルーシャフト10と接続されている。スルーシャフト10の一端は、ナットにより出力軸1に接続されており、出力軸1と一体的に回転軸線C1周りに回転するように構成されている。また、スルーシャフト10の他端には、アンチバックラッシュギヤ部61aと歯同士が噛み合うスパーギヤ部11が設けられている。位置センサ6は、アンチバックラッシュギヤ部61aおよびスパーギヤ部11を介して、スルーシャフト10に接続されている。アンチバックラッシュギヤ部61aの構造としては、特に限られないが、たとえば、軸方向に重ねた2枚のスパーギヤ部をばねにより付勢することにより、相手側スパーギヤ部(スパーギヤ部11)の歯を2枚のスパーギヤ部の歯で挟み込んでバックラッシュを取り除く構造を採用することができる。また、アンチバックラッシュギヤ部61aは、位置センサ6の軸部61に設けられている。位置センサ6は、スルーシャフト10、スパーギヤ部11、および、アンチバックラッシュギヤ部61aを介して伝達された出力軸1の回転により、出力軸1の回転位置を検知するように構成されている。
【0033】
また、位置センサ6は、回転軸線C1周りの周方向に並ぶように複数(2つ)設けられている。これにより、複数(2つ)の位置センサ6により出力軸1の回転位置を検知することができるので、一方の位置センサ6が故障しても、他方の位置センサ6により位置検知を継続でき、位置検知の冗長性を確保可能である。複数の位置センサ6は共に、スパーギヤ部11を介してスルーシャフト10に接続されている。
【0034】
また、本実施形態では、複数の位置センサ6は、出力軸1の回転軸線C1に対して電動モータ2とは反対側に配置されている。また、複数の位置センサ6は、出力軸1と電動モータ2とが第1スパーギヤ減速機構41および第2スパーギヤ減速機構42を介してY方向に離間するように接続されていることにより、電動モータ2とはY方向に離間して配置されている。
【0035】
また、筐体7は、コントローラ側筐体部71と、駆動部側筐体部72とを含んでいる。コントローラ側筐体部71には、コントローラ3が収容されて配置されている。また、コントローラ側筐体部71は、駆動部側筐体部72に着脱可能に構成されている。駆動部側筐体部72には、出力軸1、電動モータ2、減速機構4(第1スパーギヤ減速機構41、第2スパーギヤ減速機構42、遊星ギヤ減速機構43およびトロコイドギヤ減速機構44)、非可逆機構5、位置センサ6、過負荷制限機構8、手動駆動機構9、および、スルーシャフト10が収容されて配置されている。なお、出力軸1の回転対象との接続部分および手動駆動機構9の手動操作部分は、駆動部側筐体部72外に配置されている。
【0036】
また、駆動部側筐体部72には、出力軸1と電動モータ2とを同軸に配置せずにY方向に離間して配置したことにより、空間72aが形成されている。空間72aは、概ね、出力軸1とX方向にオーバーラップし、かつ、電動モータ2のモータコア21とY方向にオーバーラップする位置に、形成されている。また、空間72aには、コントローラ3が電動モータ2を制御する信号を伝送するための制御用ケーブル12が配置されている。これにより、空間72aを有効に利用して、制御用ケーブル12を容易に電動モータ2に接続可能である。また、制御用ケーブル12を筐体7内に配置することができるので、制御用ケーブル12への外部からの電磁干渉を極力低減し、電動モータ2の制御精度を高めることが可能である。また、空間72aには、制御用ケーブル12などのケーブルを通すためのケーブル通し部13が配置されている。ケーブル通し部13は、コントローラ側筐体部71内と駆動部側筐体部72内とを連通するように設けられている。制御用ケーブル12は、ケーブル通し部13を介してコントローラ側筐体部71内から駆動部側筐体部72内にわたって配置され、コントローラ3と電動モータ2とを接続している。
【0037】
手動駆動機構9は、手動操作用工具により出力軸1を手動で回転させるために設けられている。具体的には、手動駆動機構9は、第1スパーギヤ減速機構41に接続されている。手動駆動機構9は、手動操作用工具により回転されることによって、第1スパーギヤ減速機構41を回転させるように構成されている。これにより、手動駆動機構9は、第1スパーギヤ減速機構41以外の動力伝達系(過負荷制限機構8、第2スパーギヤ減速機構42、非可逆機構5、遊星ギヤ減速機構43、および、トロコイドギヤ減速機構44)を介して、出力軸1を回転させるように構成されている。なお、手動駆動機構9は、第1スパーギヤ減速機構41の第1スパーギヤ部41aと共に、電動モータ2と同軸に配置されている。
【0038】
また、本実施形態では、
図2および
図3に示すように、手動駆動機構9は、第1スパーギヤ減速機構41に接続された接続状態(
図3参照)と、第1スパーギヤ減速機構41に接続されていない接続解除状態(
図2参照)とを、切り替え可能に構成されている。具体的には、手動駆動機構9は、一端に第1スパーギヤ減速機構41に係合する減速機構用係合部91aを有するとともに、他端に手動操作用工具が係合する工具用係合部91bを有する移動部91と、接続状態と接続解除状態とを切り替えるように移動部91をX方向に移動可能に付勢する付勢部92と、を含んでいる。電動モータ2の駆動時には、手動駆動機構9は、第1スパーギヤ減速機構41とは切り離されている。
【0039】
減速機構用係合部91aは、キーからなり、第1スパーギヤ減速機構41の第1スパーギヤ部41の軸部に設けられたキー溝からなる係合部41aaに係合するように構成されている。工具用係合部91bは、第1スパーギヤ部41a側に向かって窪む凹部からなり、手動操作用工具の凸部が係合するように構成されている。
【0040】
また、移動部91は、筐体7に固定された保持部93に、X方向に移動可能でかつX方向周りに回転可能に保持されている。また、移動部91には、移動部91のX方向の移動を接続解除状態の位置で規制するための規制部91cが設けられている。規制部91cは、移動部91の本体からY方向に突出し、保持部93の規制面93aにX方向に対向している。規制部91cは、保持部93の規制面93aにX方向に当接することにより、移動部91のX方向の移動を接続解除状態の位置で規制するように構成されている。
【0041】
付勢部92は、たとえば圧縮コイルばねなどのばねからなり、移動部91が接続解除状態になるように移動部91に付勢力を与えている。手動操作用工具により付勢部92の付勢力に抗して移動部91が押し込まれた場合、移動部91が接続状態の位置まで移動して、減速機構用係合部91aと第1スパーギヤ部41aの係合部41aaとが係合される。これにより、手動駆動機構9から第1スパーギヤ減速機構41へのトルク伝達が可能になる。また、手動操作用工具が取り除かれて付勢部92により移動部91が付勢された場合、移動部91が接続解除状態の位置まで移動して、減速機構用係合部91aと第1スパーギヤ部41aの係合部41aaとの係合が解除される。これにより、手動駆動機構9から第1スパーギヤ減速機構41へのトルク伝達ができなくなる。
【0042】
(電動モータによる出力軸の駆動動作)
コントローラ3からの指令により電動モータ2が駆動されると、第1スパーギヤ減速機構41、過負荷制限機構8、第2スパーギヤ減速機構42、非可逆機構5、遊星ギヤ減速機構43、および、トロコイドギヤ減速機構44を介して、電動モータ2の回転力が減速されながら出力軸1に伝達される。これにより、出力軸1が回転されるとともに、出力軸1から出力軸1に接続された出力対象に回転力が出力される。また、出力軸1に接続されたスルーシャフト10が回転されるとともに、スパーギヤ部11およびアンチバックラッシュギヤ部61aを介してスルーシャフト10に接続された位置センサ6により出力軸1の回転位置が検出される。また、電動モータ2の駆動時には、接続解除状態であるので、手動駆動機構9は、電動モータ2による出力軸1の回転には影響を与えない。
【0043】
(手動駆動機構による出力軸の駆動動作)
手動操作用工具により手動駆動機構9の移動部91が押し込まれると、移動部91の減速機構用係合部91aと第1スパーギヤ部41aの係合部41aaとが係合される。そして、手動操作用工具を回転させると、移動部91が回転されるとともに、移動部91に係合した第1スパーギヤ部41aが回転される。これにより、過負荷制限機構8、第2スパーギヤ減速機構42、非可逆機構5、遊星ギヤ減速機構43、および、トロコイドギヤ減速機構44を介して、手動操作用工具による回転力が出力軸1に伝達されて、出力軸1が回転される。
【0044】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0045】
第1実施形態では、上記のように、電動アクチュエータ100は、出力対象に回転力を出力する出力軸1と、出力軸1を回転駆動させる電動モータ2と、電動モータ2を制御するコントローラ3と、出力軸1と電動モータ2との間に配置された減速機構4と、出力軸1と電動モータ2との間に配置され、出力側からのバックドライブトルクを入力側に伝達することを阻む非可逆機構5と、出力軸1の回転位置を検知する位置センサ6と、出力軸1、電動モータ2、コントローラ3、減速機構4、非可逆機構5、および、位置センサ6が配置され、出力対象とは独立して取付対象に着脱可能な筐体7と、を備える。
【0046】
これにより、回転力の出力対象とは独立して、出力軸1、電動モータ2、コントローラ3、減速機構4、非可逆機構5、および、位置センサ6を一体的に含む筐体7を、1つの交換単位として、電動アクチュエータ100を交換することができる。その結果、回転力の出力対象とは独立して電動アクチュエータ100を交換したい場合にも、電動アクチュエータ100を容易に交換することができる。
【0047】
なお、電動モータ2、コントローラ3、減速機構4、および、位置センサ6などが分散して配置されている場合があるが、この場合、部品点数が増加するとともに、組立工数が増加する。また、組付け精度への要求が比較的厳しい場合には、さらに組立工数が増加する。また、組立工数の増加は、突発的な整備(メンテナンス)が発生した場合の整備工数の増加も意味している。これに対して、上記のように、出力軸1、電動モータ2、コントローラ3、減速機構4、非可逆機構5、および、位置センサ6が配置され、出力対象とは独立して取付対象に着脱可能な筐体7を設ける。これにより、電動モータ2、コントローラ3、減速機構4、および、位置センサ6などが分散して配置されている場合に比べて、電動アクチュエータ100が適用される駆動系全体での部品点数を削減することができるとともに、組立工数および整備工数を削減することができる。また、電動アクチュエータ100が適用される駆動系全体での部品点数を削減することができるので、電動アクチュエータ100が適用される駆動系全体での重量を低減することができる。その結果、電動アクチュエータ100が航空機に適用される本実施形態において、航空機の燃費を向上させることができる。
【0048】
また、上記のように、電動アクチュエータ100が非可逆機構5を含むので、本実施形態のように、航空機のフラップの駆動系などのバックドライブトルクが発生しやすい駆動系に電動アクチュエータ100が適用される場合に、本構成は、特に効果的である。
【0049】
また、上記第1実施形態では、以下のように構成したことによって、下記のような更なる効果が得られる。
【0050】
すなわち、第1実施形態では、上記のように、減速機構4は、複数の減速機構41~44を含む。これにより、電動アクチュエータ100における減速比の設計の自由度を向上させることができるので、回転力の出力対象とは独立して電動アクチュエータ100を容易に交換しながら、所望の減速比を容易に得ることができる。また、高減速比を必要とする場合にも、高減速比を容易に達成することができる。
【0051】
また、第1実施形態では、上記のように、減速機構4は、トロコイドギヤ減速機構44、遊星ギヤ減速機構43およびスパーギヤ減速機構41、42を含む。これにより、減速機構4がトロコイドギヤ減速機構44を含むことにより、高トルク伝達効率を達成することができるので、電動モータ2に必要とされる動力(トルク)を低減することができる。これにより、電動モータ2を小型・軽量化することができるので、電動アクチュエータ100を小型・軽量化することができる。また、減速機構4が遊星ギヤ減速機構43を含むことにより、高減速比を達成することができるので、回転数およびトルクに対する電動モータ2の選定または設計を容易化することができる。また、減速機構4がスパーギヤ減速機構41、42を含むことにより、減速機構4を簡素な構造で構成することができる。
【0052】
また、第1実施形態では、上記のように、出力軸1および電動モータ2は、互いの回転軸線C1、C2がずれるように配置されており、位置センサ6は、出力軸1の回転軸線C1に対して電動モータ2とは反対側に配置されている。これにより、位置センサ6と電動モータ2とを離間して配置することができるので、出力軸1および電動モータ2が同軸に配置されていることにより位置センサ6を配置することが困難な場合と異なり、位置センサ6を容易に配置することができる。
【0053】
また、第1実施形態では、上記のように、電動アクチュエータ100は、出力軸1に接続されたスルーシャフト10を備える。位置センサ6は、アンチバックラッシュギヤ部61aを介してスルーシャフト10に接続されている。これにより、バックラッシュが無いバックラッシュレスな状態で位置センサ6により出力軸1の回転位置を検知することができるので、バックラッシュによる検知位置のずれが発生することを回避することができる。その結果、位置センサ6による出力軸1の回転位置の検知精度を向上させることができる。
【0054】
また、第1実施形態では、上記のように、電動アクチュエータ100は、減速機構4に接続され、出力軸1を手動で回転させるための手動駆動機構9を備える。手動駆動機構9は、減速機構4に接続された接続状態と、減速機構4に接続されていない接続解除状態とを、切り替え可能に構成されている。これにより、手動駆動機構9を設けることにより、組立時および回転時などに電動アクチュエータ100の回転の微調整を手動で容易に行うことができる。また、手動駆動機構9が減速機構4に接続された接続状態と、減速機構4に接続されていない接続解除状態とを、切り替え可能に構成されていることにより、手動による駆動時には、接続状態に切り替えて減速機構4と手動駆動機構9とを接続することができるので、安定して手動により駆動することができる。また、電動モータ2による駆動時には、接続解除状態に切り替えて減速機構4と手動駆動機構9とを切り離すことができるので、手動駆動機構9の摩擦に起因する電動モータ2の動力の増加を防止することができる。
【0055】
また、第1実施形態では、上記のように、手動駆動機構9は、一端に減速機構4に係合する減速機構用係合部91aを有するとともに、他端に手動操作用工具が係合する工具用係合部91bを有する移動部91と、接続状態と接続解除状態とを切り替えるように移動部91を移動可能に付勢する付勢部92と、を含む。これにより、付勢部92により移動部91を移動させるだけで、手動駆動機構9の接続状態と接続解除状態とを切り替えることができるので、比較的簡素な構造で、手動駆動機構9の接続状態と接続解除状態とを切り替えることができる。
【0056】
また、第1実施形態では、上記のように、電動モータ2は、モータコア21を含み、モータコア21がモータ専用ハウジングを有することなく筐体7内に配置されている。これにより、電動モータ2がモータ専用ハウジングを有する場合と異なり、電動モータ2を容易に筐体7内に配置することができるので、筐体7を容易に小型化することができる。その結果、電動アクチュエータ100を容易に小型化することができる。
【0057】
また、第1実施形態では、上記のように、電動アクチュエータ100は、筐体7において出力軸1と電動モータ2との間に配置され、トルク過負荷を回避するための過負荷制限機構8を備える。これにより、たとえば電動モータ2を急停止させることに起因してトルク過負荷が発生した場合、過負荷制限機構8によりトルク過負荷を回避することができるので、減速機構4などの電動アクチュエータ100の駆動要素をトルク過負荷に耐える設計にする必要がない。その結果、電動アクチュエータ100の駆動要素をトルク過負荷に耐える設計にする場合に比べて、電動アクチュエータ100の駆動要素の重量を低減することができる。
【0058】
また、第1実施形態では、上記のように、過負荷制限機構8は、規定トルクに達した場合に滑りを発生させることにより、トルク過負荷を回避するスリップクラッチである。これにより、規定トルクに達した場合、過負荷制限機構8により滑りを発生させることにより、トルク過負荷を容易にかつ確実に回避することができる。
【0059】
また、第1実施形態では、上記のように、航空機のフラップを駆動するように構成されている。これにより、航空機のフラップを駆動するための電動アクチュエータ100を容易に交換することができる。
【0060】
[第2実施形態]
次に、
図4を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、ボールねじを出力対象とする例について説明する。なお、上記第1実施形態と同一の構成については、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0061】
(電動アクチュエータの構成)
図4に示すように、電動アクチュエータ200は、出力軸1と、電動モータ2と、コントローラ3と、減速機構4(第1スパーギヤ減速機構41、第2スパーギヤ減速機構42、および、遊星ギヤ減速機構43)と、位置センサ6と、筐体7と、過負荷制限機構8と、手動駆動機構9と、スルーシャフト10とを備えている。また、電動アクチュエータ200は、非可逆機構5に代えて、非可逆機構205を備えているとともに、トロコイドギヤ減速機構44を備えていない。
【0062】
電動アクチュエータ200の出力軸1には、出力対象としてのボールねじ301がボルトなどの締結部材302により取り付けられている。出力軸1は、回転軸線C1周りに回転することによって、ボールねじ301を回転軸線C1周りに回転させるように構成されている。これにより、電動アクチュエータ200は、ボールねじ301およびボールねじ301に接続されたボールナット303を用いた直動機構として機能する。なお、ボールねじ301は、締結部材302を取り外すことによって、出力軸1から切り離すことが可能である。
【0063】
第2実施形態では、筐体7は、出力軸1、電動モータ2、コントローラ3、減速機構4(第1スパーギヤ減速機構41、第2スパーギヤ減速機構42、および、遊星ギヤ減速機構43)、非可逆機構205、位置センサ6、過負荷制限機構8、手動駆動機構9、および、スルーシャフト10を一体的に含んだ状態で、出力対象としてのボールねじ300とは独立して取付対象に着脱可能に構成されている。
【0064】
また、第2実施形態では、非可逆機構205は、摩擦板式の非可逆機構である。摩擦板式の非可逆機構205では、バックドライブトルクがボールナット303からの軸方向力として作用すると、軸方向力により摩擦板(205a)が押し付けられてブレーキトルクが発生する。具体的には、非可逆機構205は、複数の摩擦板205aを含んでいる。複数の摩擦板205aは、ボールナット303からの軸方向力が作用した場合、摩擦面同士がX方向に密着するように押し付けられることによって、ブレーキトルクを発生するように構成されている。また、非可逆機構205は、入力側において遊星ギヤ減速機構43に接続されるとともに、出力側において出力軸1に接続されている。なお、電動アクチュエータ200には、非可逆機構205ではなく、非可逆機構5が設けられていてもよい。
【0065】
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0066】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0067】
第2実施形態では、上記のように、電動アクチュエータ100は、出力対象に回転力を出力する出力軸1と、出力軸1を回転駆動させる電動モータ2と、電動モータ2を制御するコントローラ3と、出力軸1と電動モータ2との間に配置された減速機構4と、出力軸1と電動モータ2との間に配置され、出力側からのバックドライブトルクを入力側に伝達することを阻む非可逆機構205と、出力軸1の回転位置を検知する位置センサ6と、出力軸1、電動モータ2、コントローラ3、減速機構4、非可逆機構205、および、位置センサ6が配置され、出力対象とは独立して取付対象に着脱可能な筐体7と、を備える。
【0068】
これにより、上記第1実施形態と同様に、回転力の出力対象とは独立して電動アクチュエータ200を交換したい場合にも、電動アクチュエータ200を容易に交換することができる。
【0069】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0070】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0071】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、電動アクチュエータが、航空機のフラップの駆動系に適用される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、電動アクチュエータは、航空機のフラップ以外の航空機用装備品(飛行制御装置、降着装置および貨物ドア開閉装置など)の駆動系に適用されてもよい。また、本発明の電動アクチュエータは、航空機分野以外の分野に適用されてもよい。たとえば、各種精密ロボットの関節の駆動系、土木・建設用の建機アームの駆動系、精密農業用の装置の車輪および艤装品の駆動系、建具用の自動ドア開閉装置の駆動系、一般産業用機器の工作機器、電動ウィンチ、ホイストおよびエレベータの駆動系、並びに、娯楽施設の体感型ゲームのアクチュエーション装置の駆動系などに、本発明の電動アクチュエータを適用することができる。
【0072】
また、上記第1実施形態では、減速機構が、4つ設けられている例を示し、上記第2実施形態では、減速機構が、3つ設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、減速機構は、1、2または5つ以上設けられていてもよい。
【0073】
また、上記第1実施形態では、減速機構が、スパーギヤ減速機構、遊星ギヤ減速機構およびトロコイドギヤ減速機構を含む例を示し、上記第2実施形態では、減速機構が、スパーギヤ減速機構および遊星ギヤ減速機構を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、減速機構が、スパーギヤ減速機構、遊星ギヤ減速機構およびトロコイドギヤ減速機構のうちのいずれか1つまたは2つのみを含んでいてもよい。また、減速機構が、スパーギヤ減速機構、遊星ギヤ減速機構およびトロコイドギヤ減速機構以外の減速機構を含んでいてもよい。
【0074】
また、上記第1および第2実施形態では、出力軸および電動モータが、互いの回転軸線がずれるように配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、出力軸および電動モータは、同軸に配置されていてもよい。この場合、スパーギヤ減速機構に代えて、たとえば遊星ギヤ減速機構を採用しもよい。一方、位置センサの配置スペースを確保する観点から、出力軸および電動モータが、互いの回転軸線がずれるように配置されている方が好ましい。
【0075】
また、上記第1および第2実施形態では、手動駆動機構が設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、手動駆動機構が設けられていなくてもよい。
【0076】
また、上記第1および第2実施形態では、過負荷制限機構が設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、過負荷制限機構が設けられていなくてもよい。
【0077】
また、上記第1および第2実施形態では、モータは、モータコアがモータ専用ハウジングを有することなく筐体に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、モータコアがモータ専用ハウジングを有していてもよい。
【0078】
また、上記第1および第2実施形態では、コントローラが、上位コントローラからの指令信号に基づいて、電動モータを制御する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、上位コントローラが存在しない場合などには、コントローラが、独立して電動モータを制御してもよい。
【0079】
また、上記第1および第2実施形態では、出力軸の回転位置を検知する位置センサが、複数(2つ)設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、出力軸の回転位置を検知する位置センサは、1つまたは3つ以上設けられていてもよい。
【0080】
また、上記第1および第2実施形態では、出力軸の回転位置を検知する位置センサが、出力軸の回転軸線に対して電動モータとは反対側に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、出力軸の回転位置を検知する位置センサが、出力軸の回転軸線と同軸に配置されていてもよいし、出力軸の回転軸線に対して電動モータと同じ側に配置されていてもよい。
【0081】
また、上記第1実施形態では、トロコイドギヤ減速機構を設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図5に示す変形例のように、トロコイドギヤ減速機構44に代えて、3K型遊星ギヤ減速機構344が設けられていてもよい。3K型遊星ギヤ減速機構344は、入力側において遊星ギヤ減速機構43に接続されているとともに、出力側において出力軸1に接続されている。
【0082】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0083】
(項目1)
出力対象に回転力を出力する出力軸と、
前記出力軸を回転駆動させる電動モータと、
前記電動モータを制御するコントローラと、
前記出力軸と前記電動モータとの間に配置された減速機構と、
前記出力軸と前記電動モータとの間に配置され、出力側からのバックドライブトルクを入力側に伝達することを阻む非可逆機構と、
前記出力軸の回転位置を検知する位置センサと、
前記出力軸、前記電動モータ、前記コントローラ、前記減速機構、前記非可逆機構、および、前記位置センサが配置され、前記出力対象とは独立して取付対象に着脱可能な筐体7と、を備える、電動アクチュエータ。
【0084】
(項目2)
前記減速機構は、複数の減速機構を含む、項目1に記載の電動アクチュエータ。
【0085】
(項目3)
前記減速機構は、トロコイドギヤ減速機構、遊星ギヤ減速機構およびスパーギヤ減速機構のうちの少なくとも2つを含む、項目2に記載の電動アクチュエータ。
【0086】
(項目4)
前記出力軸および前記電動モータは、互いの回転軸線がずれるように配置されており、
前記位置センサは、前記出力軸の回転軸線に対して前記電動モータとは反対側に配置されている、項目1~3のいずれか1項に記載の電動アクチュエータ。
【0087】
(項目5)
前記出力軸に接続されたスルーシャフトをさらに備え、
前記位置センサは、アンチバックラッシュギヤ部を介して前記スルーシャフトに接続されている、項目4に記載の電動アクチュエータ。
【0088】
(項目6)
前記減速機構に接続され、前記出力軸を手動で回転させるための手動駆動機構をさらに備え、
前記手動駆動機構は、前記減速機構に接続された接続状態と、前記減速機構に接続されていない接続解除状態とを、切り替え可能に構成されている、項目1~5のいずれか1項に記載の電動アクチュエータ。
【0089】
(項目7)
前記手動駆動機構は、
一端に前記減速機構に係合する減速機構用係合部を有するとともに、他端に手動操作用工具が係合する工具用係合部を有する移動部と、
前記接続状態と前記接続解除状態とを切り替えるように前記移動部を移動可能に付勢する付勢部と、を含む、項目6に記載の電動アクチュエータ。
【0090】
(項目8)
前記電動モータは、モータコアを含み、前記モータコアがモータ専用ハウジングを有することなく前記筐体内に配置されている、項目1~7のいずれか1項に記載の電動アクチュエータ。
【0091】
(項目9)
前記筐体において前記出力軸と前記電動モータとの間に配置され、トルク過負荷を回避するための過負荷制限機構をさらに備える、項目1~8のいずれか1項に記載の電動アクチュエータ。
【0092】
(項目10)
前記過負荷制限機構は、規定トルクに達した場合に滑りを発生させることにより、前記トルク過負荷を回避するスリップクラッチである、項目9に記載の電動アクチュエータ。
【0093】
(項目11)
航空機のフラップを駆動するように構成されている、項目1~10のいずれか1項に記載の電動アクチュエータ。
【符号の説明】
【0094】
1 出力軸
2 電動モータ
3 コントローラ
4 減速機構
5、205 非可逆機構
6 位置センサ
7 筐体
8 過負荷制限機構
9 手動駆動機構
10 スルーシャフト
41 第1スパーギヤ減速機構(スパーギヤ減速機構)
42 第2スパーギヤ減速機構(スパーギヤ減速機構)
43 遊星ギヤ減速機構
44 トロコイドギヤ減速機構
61a アンチバックラッシュギヤ部
91 移動部
91a 減速機構用係合部
91b 工具用係合部
92 付勢部
100、200 電動アクチュエータ
344 3K型遊星ギヤ減速機構(遊星ギヤ減速機構)