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  • 特開-ポリウレタンフォームの積層体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055073
(43)【公開日】2023-04-17
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォームの積層体
(51)【国際特許分類】
   A47G 9/10 20060101AFI20230410BHJP
   A47C 27/14 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
A47G9/10 G
A47C27/14 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164183
(22)【出願日】2021-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003425
【氏名又は名称】株式会社東洋クオリティワン
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】林 帆奈美
【テーマコード(参考)】
3B096
3B102
【Fターム(参考)】
3B096AC11
3B102AB07
(57)【要約】
【課題】香りに優れたポリウレタンフォーム積層体を提供すること。
【解決手段】実施形態によると、ポリウレタンフォームの積層体が提供される。該積層体は、第1ウレタンフォーム層と、第2ウレタンフォーム層と、接着層とを具備する。接着層は、第1ウレタンフォーム層と第2ウレタンフォーム層との間に位置する。接着層は、香りを発する粉体と液状接着剤とを含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ウレタンフォーム層と、
第2ウレタンフォーム層と、
前記第1ウレタンフォーム層と前記第2ウレタンフォーム層との間に位置し、香りを発する粉体と液状接着剤とから形成される接着層とを具備するポリウレタンフォームの積層体。
【請求項2】
前記接着層の目付が120g/m以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記第1ウレタンフォーム層の通気性は50cm/cm/sec以上である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記液状接着剤は水系の酢酸ビニル系の接着剤を含み、前記接着層における接着剤に対する前記粉体の含有割合は、前記接着剤の含有割合を100として4/100以上14/100以下である、請求項1から3の何れか1項に記載の積層体。
【請求項5】
前記粉体は、針葉樹、ハーブ、麝香、及び柑橘系植物から成る群より選択される粉体であって、その1以上を含む、請求項1から4の何れか1項に記載の積層体。
【請求項6】
前記粉体の粒度は1000μm以下である、請求項1から5の何れか1項に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンフォームの積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ストレスを緩和する手段として、アロマテラピーが知られている。例えば、針葉樹より採取される香料成分には、幸せ成分であるオキシトシンを含むものが確認されており、リラックス効果が期待される。アロマテラピーによるリラックス効果や癒し効果に着目して、枕やマットレス等の寝具、並びにクッション等といった生活用品に香料を含ませる試みがされている。
【0003】
特許文献1(特開平10-309225号公報)には、アロマテラピーを利用したものではないが、リラクゼーション効果や健康に対し良い効果があるとされるマイナスイオンを発生するトルマリンと共に、消臭作用をもたらす木炭を含んだ混合層を備えた敷具が記載されている。トルマリンと木炭との混合層は和紙または布等からなる内袋に収容され、この内袋を中心に綿等のクッション材がその表裏に配置されて敷具が構成される。しかし、この構造では内袋の使用が必要になるが、トルマリンの粉体が硬質であることに起因して、使用している間に内袋が破損して収容していたトルマリン及び木炭が外部に漏れ出るおそれがある。また、内袋が在る中心部分とその周囲の外周部分との間で敷具の感触に差があり、使用者にとって違和感を生じさせる。
【0004】
特許文献2(特開2003-48937号公報)には、反発弾性が0.1~30%である低反発フォームに、粉状トルマリンを0.1~40重量%含ませたクッション構造体が記載されている。しかし、この構造ではトルマリンがウレタンに内包されているため、仮にトルマリンを香料で置換えたとしても、構造体の表面から香りを発しにくい。
【0005】
特許文献3(特開平9-267425号公報)には、天然ハーブの細片を2枚のシート状物に分散して挟み込んだ積層アロマシートが記載されている。2枚のシート状物は、天然香料を含有した接着剤によって接着される。この積層アロマシートは、1枚のシート状物に接着剤を塗布した後、その上に天然ハーブを拡散し、もう1枚のシート状物をその上面に加温圧着しながら重ね合わせ被覆して製造される。接着剤の塗布面の全体に亘って天然ハーブを拡散させるためには、塗布面よりも広い範囲にハーブを撒くことになる。それにより、ハーブのロスが発生したり、或いは、ロスを避けるために余剰に撒いたハーブの回収やゴミとの分別などの工程が加わり、製造に無駄が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-309225号公報
【特許文献2】特開2003-48937号公報
【特許文献3】特開平9-267425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、香りに優れたポリウレタンフォーム積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によると、ポリウレタンフォームの積層体が提供される。該積層体は、第1ウレタンフォーム層と、第2ウレタンフォーム層と、接着層とを具備する。接着層は、第1ウレタンフォーム層と第2ウレタンフォーム層との間に位置する。接着層は、香りを発する粉体と液状接着剤とを含むものから形成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、香りに優れたポリウレタンフォーム積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】積層体の一例を概略的に表す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について適宜図面を参照して説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
【0012】
実施形態によれば、香り付の粉体を含有した接着剤を用いて、通気性が高いウレタンフォームに塗布して貼り合わせることで得られるポリウレタンフォーム積層体が提供される。当該ポリウレタンフォームの積層体は、香りに優れ、リラックス効果をもたらすことができる。
【0013】
詳細には、上記ポリウレタンフォーム積層体は、第1ウレタンフォーム層と、第2ウレタンフォーム層と、それらの間に位置する接着層とを具備する。接着層は、香りを発する粉体と、液状接着剤とを含むものから形成される。
【0014】
上記積層体は、粉体を添加した接着剤でウレタンを貼り合わせることで製造することができる。具体的には、接着剤に粉体を混合して粉体入り接着剤を調製し、この粉体入り接着剤を一方のウレタンフォーム層(第1ウレタンフォーム層または第2ウレタンフォーム層)の表面に塗布した後、その上から他方のウレタンフォーム層を重ねて貼り合わせる。粉体入り接着剤を、例えば、ロールコーターを使用して均一に塗布することができる。粉体入り接着剤を乾燥させることで、接着層を介して二つのウレタンフォーム層が積層した積層体が得られる。粉体を混ぜ込んだ粉体入り接着剤から接着層が形成されるため、粉末の分布が均一な接着層を得ることができる。
【0015】
このような簡便な方法で製造でき、且つ、粉体を無駄なく使用できるため、積層体を低コストで製造することができる。そのうえで、積層体は香りを発する能力に長けている。
【0016】
粉体由来の香りによるアロマテラピー等の効果が期待されることから、積層体の用途としては、例えば、枕やマットレス等といった寝具を挙げることができる。積層体の用途はこれらの例に限られず、香りやリラックス効果が求められる現場に使用される様々な物品に適用できる。
【0017】
ポリウレタンフォームの積層体の各部材について、以下に説明する。
【0018】
[第1ウレタンフォーム層および第2ウレタンフォーム層]
第1ウレタンフォーム層および第2ウレタンフォーム層は、それぞれ、例えば、平板形状またはシート形状を有するウレタンフォームであり得る。第1及び第2ウレタンフォーム層の形状は上記のものに限られず、積層体の用途に応じて変更できる。
【0019】
第1ウレタンフォーム層は、基材層としての第2ウレタンフォーム層の少なくとも1つの主面上に接着層を介して設けられた被覆層であり得る。第2ウレタンフォーム層(基材層)の表裏両方の主面に接着層を設け、そのさらに外側に第1ウレタンフォーム層(被覆層)を両側の表層として設けてもよい。
【0020】
被覆層たる第1ウレタンフォーム層は、例えば、第2ウレタンフォーム層より薄い厚みを有し得る。それにより、例えば、1つの第1ウレタンフォーム層が第2ウレタンフォーム層の片面に接着されている積層体では、第1ウレタンフォーム層(被覆層)側の表面から接着層までの距離の方が、裏側の第2ウレタンフォーム層(基材層)の表面から接着層までの距離よりも短くなり、粉体からの香りが第1ウレタンフォーム層側からより多く発せられやすい。2つの第1ウレタンフォーム層に第2ウレタンフォーム層が挟まれている場合も、両側にて表層たる第1ウレタンフォーム層の表面から接着層までの距離が短いので、積層体表面から粉体の香りを多く発することができる。或いは、第1ウレタンフォーム層と第2ウレタンフォーム層は、同じ厚みを有していてもよい。
【0021】
第1ウレタンフォーム層は、単一の層でなくてもよく、例えば、第2ウレタンフォーム層(基材層)の面方向に複数に分割されていてもよい。また、第1ウレタンフォーム層には、例えば、貫通孔が設けられていてもよく、面一のシートでなくともよい。特に、第1ウレタンフォーム層に、表面側が狭く第2ウレタンフォーム層側へ向かうにつれて径が広がる円錐形状のスリットを設けることで、粉体がこぼれ出ず、第1ウレタンフォーム層にある程度の厚みがあっても積層体表面から粉体の香りを発することができる。
【0022】
第1ウレタンフォーム層に円錐形状のスリットを設ける場合、円錐形状の大きさとしては、表面に露出する最小径の部分で直径4mm~8mmが好ましい。厚みが厚い場合は、7mm~8mmと、径を大きくすると、粉体の香りを発することができる。8mmを超える径にしてもよいが、径が大きすぎると粉体がこぼれ出る可能性がある。
【0023】
第2ウレタンフォーム層(基材層)は、積層体が形状を保つための強度を得られるよう、一定以上の厚みを有することが望ましい。
【0024】
第1ウレタンフォーム層は、例えば、2mm以上30mm以下の厚みを有し得る。第2ウレタンフォーム層は、例えば、20mm以上200mm以下の厚みを有し得る。第1ウレタンフォーム層の厚みが20mm以上となる場合には、円錐形状のスリットを設けることで、粉体の香りを発することができる。
【0025】
被覆層たる第1ウレタンフォーム層の通気性が50cm/cm/sec以上であることが望ましい。ここでいう通気性は、日本工業規格 JIS L 1096:2010における通気性評価のA法(フラジール形成法)に基づくものを指す。被覆層の通気性が50cm/cm/sec以上であれば、接着層が含む粉体からの香りが被覆層側からよく発せられる。通気性が50cm/cm/sec未満でも香りがするものの、あまり強くない。第1ウレタンフォーム層の通気性が80cm/cm/sec以上であることがより好ましく、350cm/cm/sec以上であることが更に好ましい。
【0026】
基材層たる第2ウレタンフォーム層の通気性は、特に限定されない。第2ウレタンフォーム層の通気性は、80cm/cm/sec未満であってもよい。例えば、積層体の用途に応じて求められる硬さや柔らかさを鑑みて、第2ウレタンフォーム層の通気性を適宜選択できる。
【0027】
第1ウレタンフォーム層には、例えば、軟質ウレタンフォーム又は除膜ウレタンフォームや高触感ウレタンフォームを用いることができる。第2ウレタンフォーム層には、例えば、軟質ウレタンフォーム又はラバーライクウレタンフォームを用いることができる。第1及び第2ウレタンフォーム層の材質はこれらの例に限られず、積層体の用途に応じて適宜選択される。
【0028】
[接着層]
ポリウレタンフォームの積層体における接着層の目付が120g/m以上であることが好ましい。接着層の目付が120g/m以上であれば粉体の量も多くなり、香りも強くなる。加えて、接着層による第1ウレタンフォーム層と第2ウレタンフォーム層との接着強度も十分になり、剥離を抑えることができる。
【0029】
ウレタンフォーム層へ、例えば、210g/mの塗布量で粉体入り接着剤を塗布し、他方のウレタンフォーム層を重ねた後に、接着剤を乾燥させることで、上記目付の接着層が形成され得る。
【0030】
(液状接着剤)
液状接着剤の種類としては、溶剤系接着剤、水系接着剤が挙げられる。安全性の観点から、溶剤系ではなく水系(水溶媒系)の接着剤が望ましい。水系接着剤として、クロロプレン系の接着剤が汎用されている。しかし、クロロプレン系の接着剤に極性が異なるものを混ぜると、分散性が悪くなり、凝集してしまう。そのため、ロールコーターでの量産時に接着剤が固まってしまう可能性がある。そこで実施形態では、クロロプレン系ではなく、酢酸ビニル系の接着剤の使用に着目した。酢酸ビニル系の接着剤を使用することで、接着層の形成に用いられる粉体入り接着剤にだまが生じることがなく、ロールコーターでの使用にも適用できる。
【0031】
液状接着剤は、例えば、52.0質量%以上57.0%質量以下の不揮発成分を含み得る。不揮発成分が57.0%を超えると、接着剤の粘度が高くなり、量産性には向かなくなる。
【0032】
(粉体)
香りを発する粉体としては、例えば、針葉樹、ハーブ、麝香、及び柑橘系植物から成る群より選択される粉体であって、これら1以上の粒または粉が集まって成る粉体を含み得る。針葉樹粉体では、オキシトシンによるリラックス効果が得られるとされるが、粉体はアロマテラピーの機能を示すものに限られない。また、粉体は上記例のような天然素材であってもよく、或いは、香り成分を含有する人工の粉体であってもよい。
【0033】
粉体としては、粒度が1000μm以下のものを用いることが望ましい。粉体の粒子径が小さいと、隣接する粒子数が増加する。そのため、微粒子間の合力が増大し凝集しやすくなり、香りは強い。粒子径が大きいと粉体が凝集しないため、香りが弱い。なお、粉体入り接着剤において、粉体の凝集体がまんべんなく分散された状態になり得る。
【0034】
また、量産性の観点からも、粉体粒度が小さい方が好ましい。粒度が大きいと、製造装置において目詰まりを起こす可能性があるためである。
【0035】
具体例として、粉体粒度は、例えば、3μm以上500μm以下であり得る。粉体粒度は、例えば、8μm以上300μm以下であり得る。
【0036】
接着層における(乾燥後の)接着剤に対する粉体の含有割合([粉体の割合]/[接着剤の割合])は、4/100以上14/100以下であることが好ましく、4/100以上10/100以下であることがより好ましい。ここでは、接着剤の含有割合を100としている。粉体の含有割合が多い方が、香りの性能は良くなる。一方で、量産性の観点からは、粉体の量が多すぎない方が好ましい。過剰添加によるコスト増加を避けるためだけではなく、粉体入り接着剤の塗布のしやすさにも影響がある。粉体の量が多い方が粉体入り接着剤の粘度が高くなる傾向がある。ロールコーターの使用を鑑みて、粘度が100,000 mPa・s以下であることが好ましい。粉体入り接着剤における、(乾燥前の)液状接着剤に対する粉体の含有割合([粉体の割合]/[液状接着剤の割合])は、2.5/100以上7.5/100以下であることが好ましく、2.5/100以上5/100以下であることがより好ましい。
【0037】
図面を参照しながら、ポリウレタンフォームの積層体の一例を説明する。図1は、積層体の一例を概略的に表す斜視図である。図1に示す積層体10は、第1ウレタンフォーム層1と、第2ウレタンフォーム層2と、それらの間に位置する接着層3とを含む。図1では、各部材を明示するために、積層体10を部分的に分解した状態を示している。積層体10では、下側からそれぞれが矩形形状を有する第2ウレタンフォーム層2、接着層3、及び第1ウレタンフォーム層1がこの順で積層されている。第1ウレタンフォーム層1は、第2ウレタンフォーム層2より薄い。接着層3は、図示しない水系接着剤と粉体4とを含んでいる。図1では、接着層3を概略的に表しており、粉体4は接着層3内で均一に分散された状態にあり得る。
【0038】
図示した例では、第2ウレタンフォーム層2の片側にのみ接着層3により第1ウレタンフォーム層1が貼り付けられていたが、実施形態は図示する例に限られない。例えば、第2ウレタンフォーム層2の両側に、接着層3により第1ウレタンフォーム層1をそれぞれ貼り付けて、第1ウレタンフォーム層1/接着層3/第2ウレタンフォーム層2/接着層3/第1ウレタンフォーム層1という構造を有する積層体10を構築してもよい。
【0039】
[実施例]
以下に実施例を説明するが、発明を実施する形態は、以下に記載される実施例に限定されるものではない。
【0040】
(例1)
被覆層(第1ウレタンフォーム層)として、株式会社東洋クオリティワン製除膜タイプポリウレタンフォームグリーンライト30HS-BKからなる縦100 mm×横100 mm×厚さ10 mmの寸法のウレタンフォームシートを準備した。当該ウレタンフォームシートの通気性は、363 cm3/cm2/secであった。基材層(第2ウレタンフォーム層)として、株式会社東洋クオリティワン製ラバーライクポリウレタンフォームグリーンライト26Rからなる縦100 mm×横100 mm×厚さ30 mm寸法のウレタンフォームシートを準備した。当該ウレタンフォームシートの通気性は、87 cm3/cm2/secであった。
【0041】
30 μmの粒度を有する針葉樹粉体をコニシ株式会社製の酢酸ビニル系の水系接着剤CVC700(不揮発成分が55質量%)に粉体/接着剤= 5/100の割合で加え、混合することで粉体入り接着剤を調製した。
【0042】
粉体入り接着剤の粘度を測定したところ、その値は39910 mPa・sだった。FUNGILAB S.A社製のラボ用デジタル式回転粘度計マルチビスコ R型を用いて、日本工業規格JIS Z 8803:2011及びJIS Z 8809:2011に従って粘度測定を行った。温度条件は、トーマス科学器械株式会社製の卓上型精密低温恒温水槽T-23Z型を用いて、20℃に設定した。粘度計に付属するコントロールユニット上のコントロールパネルより読み取った数値を、粘度として記録した。
【0043】
ロールコーターを用いて、基材層の一方の主面(100 mm角)に粉体入り接着剤を3 g塗工した(塗布量:3×102 g/m2)。塗布した粉体入り接着剤の上から、一方の主面(100 mm角)が塗布面に接するように被覆層を重ねた。接着剤を乾燥させて、ウレタンフォーム積層体を得た。
【0044】
(例2~10及び例14)
下記表1及び2に示すとおり設計を変更したことを除き、例1と同様の手順でウレタンフォーム積層体を製造した。具体的には、被覆層を異なる通気性を有するウレタンフォームシート製品に変更、針葉樹粉体を異なる粒度を有するものに変更、粉体入り接着剤における針葉樹粉体と水系接着剤との割合の変更、被覆層(第1ウレタンフォーム層)の厚みの変更、又は基材層への粉体入り接着剤の塗布量の変更の何れかを行った。被覆層に用いたウレタンフォームシートについては、株式会社東洋クオリティワンの品名(除膜タイプポリウレタンフォームグリーンライト30HS-BK、ラバーライクポリウレタンフォームグリーンライト26R、高触感ポリウレタンフォームGTF48、高通気ポリウレタンフォームグリーンライト22HP、及び一般ポリウレタンフォームグリーンライト24M)を表記する。
【0045】
(例11および例12)
下記表2に示すとおり粉体入り接着剤に使用した接着剤を酢酸ビニル系接着剤からコニシ株式会社製木工用ボンド(不揮発成分が60%)及びクロロプレン系接着剤コニシ株式会社製WG320R(不揮発成分が50%)にそれぞれ変更したことを除き、例1と同様の手順でウレタンフォーム積層体を製造した。
【0046】
(例13)
香りのする粉体として、針葉樹粉体の代わりに紅茶の茶葉を用いたことを除き、例1と同様の手順でウレタンフォーム積層体を製造した。茶葉には、グレードがオレンジペコーであるものを用いたが、これを表2にて7mmから11mmの粉体粒度として表記する。
【0047】
(例15)
ウレタンフォーム原料へ添加物として針葉樹粉体を添加し、モールド成型を行ってポリウレタンフォームを製造した。針葉樹粉体としては、例1で用いたものと同様に、粒度が30μmのものを用いた。針葉樹粉体は、質量比で針葉樹粉体/ウレタンフォーム骨格成分(ポリオール成分及びポリイソシアネート成分)=5/100となる添加量で添加した。
【0048】
<香りの評価>
上記の各例で製造したウレタンフォーム製品について、次のとおり香りを評価した。
【0049】
評価は、接着剤の完全乾燥を確実にするために、ウレタンフォーム積層体が製造されてから3日後に行った。パネラー5名に、針葉樹粉体の香りの強さ、香りの質を評価してもらった。
【0050】
単独の粉体(針葉樹粉体または茶葉)の香りをブランクとして、0~2の点数で次のとおり香り強度の評価を行ってもらった:「2:粉体の香りがする」、「1:粉体の香りが少しする」、「0:粉体の香りがしない」。また、ブランク無しで、各パネラーによる官能評価にて香りの質の評価を行ってもらった:「2:いい香り」、「1:ややいい香り」、「0:いい香りでも不快でもない」、「-1:やや不快」、「-2:不快」。結果を下記表1から表4に示す。
【0051】
表1及び表2には、各ウレタンフォーム製品の設計および評価結果を示す。具体的には、各例での設計として、被覆層および基材層としてのウレタンフォームシートの通気性、粉体入り接着剤に用いた水系接着剤、香り粉体の粒度、粉体入り接着剤の粘度(20℃)、及び基材層への粉体入り接着剤の塗布量をまとめる。また、粉体入り接着剤の乾燥後に得られた接着層について、目付、含有する粉体量、及び粉体と接着剤成分(不揮発成分)の含有割合を示す。評価結果としては、上記香りの強さ及び香りの質に加え、粉体入り接着剤の塗工しやすさに基づく量産性の評価を示す。ここでは、粘度の数値が10万以下であった場合は量産性〇と表記し、数値が10万を超える場合は量産性×と表記している。また、粘度の数値が10万以下であっても、粉体入り接着剤が凝集して塊状になったものについても×と標記した。
【0052】
表1及び表2には、香りの総合評価として各パネラーの評価点数の平均を示す。表3及び表4には、それぞれ香りの強さ及び香りの質についてより詳細な評価結果を示しており、平均点数に加え、各パネラーによるそれぞれの評価点数を示している。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
各表に示す結果のとおり、例1から例10で製造した、酢酸ビニル系の接着剤と1000μm以下の粉体粒度を有する香り粉体を用いたウレタンフォーム積層体は、強度および質の両方の観点で香りが優れていた。それらの中でも、粉体入り接着剤の塗布量が250 g/m2以上であったことで接着層の目付が150 g/m2以上になった例1から例10では、より優れた香り性能が発揮された。また、例1から例9では粉体と水系接着剤との割合が2.5/100から7.5/100であった粉体入り接着剤を用いたことで粉体と水系接着剤との割合が4/100以上14/100以下である接着層が形成されたが、粉体入り接着剤の粘度が適度に低く塗工性が良かった。そのため、これらの例のウレタンフォーム積層体は、量産性も優れているといえる。
【0058】
例11の積層体は、接着剤の不揮発成分が多いため粘度が高く、量産性がよくなかった。例12ではクロロプレン系の接着剤を使用したため、凝集し塊状物が発生してしまった。また、例11及び例12で得られた積層体は、香りの質に劣っていた。例13で得られた積層体は香りがしなかったが、これは粉体として用いた茶葉の大きすぎる粒度に起因する。例14では、粉体入り接着剤の塗布量が少なく、目付が小さかったため、香りの強度が低かった。例15で得られたポリウレタンフォームは、香りがほとんど発せられなかった。
【0059】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0060】
1…第1ウレタンフォーム層、2…第2ウレタンフォーム層、3…接着層、4…粉体、10…積層体。
図1