(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055088
(43)【公開日】2023-04-17
(54)【発明の名称】MEMS型接触燃焼式ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/16 20060101AFI20230410BHJP
G01N 25/22 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
G01N27/16 B
G01N25/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164205
(22)【出願日】2021-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 洋
(72)【発明者】
【氏名】奥田 和冶
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼島 裕正
【テーマコード(参考)】
2G040
2G060
【Fターム(参考)】
2G040AB09
2G040AB16
2G040BA04
2G040BA23
2G040CA02
2G040DA02
2G040DA12
2G040DA22
2G040EA02
2G040EB02
2G040FA10
2G040GA05
2G060AA02
2G060AB03
2G060AB17
2G060AB18
2G060AE19
2G060AF09
2G060BA03
2G060BB03
2G060BB04
2G060HB06
2G060JA01
2G060KA01
(57)【要約】
【課題】検知対象ガスの反応によって水が生じた場合でも、当該検知対象ガスの検知精度の低下を抑制することができるMEMS型接触燃焼式ガスセンサを提供する。
【解決手段】MEMS型接触燃焼式ガスセンサ(1)は、ガス反応部(13)と、ガス反応部(13)上に設けられる水飛散抑制層(14)と、を備える。水飛散抑制層(14)は、検知対象ガスを透過させ、かつ、検知対象ガスに対してガス反応部(13)よりも活性が低い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に設けられる検出電極と、前記検出電極に接触するように前記基板上に設けられるガス反応部と、前記ガス反応部上に設けられる水飛散抑制層と、を備える、MEMS型接触燃焼式ガスセンサであって、
検知対象ガスは、反応により水を発生させるガスを少なくとも1つ含み、
前記水飛散抑制層は、前記検知対象ガスを透過させ、かつ、前記検知対象ガスに対して前記ガス反応部よりも活性が低いことを特徴とする、MEMS型接触燃焼式ガスセンサ。
【請求項2】
前記検知対象ガスは、水素であることを特徴とする、請求項1に記載のMEMS型接触燃焼式ガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、MEMS型接触燃焼式ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
接触燃焼式ガスセンサは、水素などの検知対象ガスと接触するガス反応部を備え、当該検知対象ガスが燃焼した燃焼熱による、ガス反応部の抵抗値の変化を測定することにより、検知対象ガスを検知する(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような接触燃焼式ガスセンサでは、小型化及び省電力化が要望されている。このような要望を満足すべく、微細加工が可能なMEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を利用したMEMS型接触燃焼式ガスセンサの開発・実用化が行われている。
【0005】
ところが、上記のようなMEMS型接触燃焼式ガスセンサでは、検知対象ガスの燃焼(反応)によって生じる水に起因して当該検知対象ガスの検知精度が低下するという問題点を生じることがあった。
【0006】
具体的にいえば、MEMS型接触燃焼式ガスセンサを構成した場合、その小型化に伴って在来の接触燃焼式ガスセンサに比べて発熱部が微小となり、微小な発熱部の近くに存在する常温に近い部分では、水素の燃焼により生成した水蒸気が結露しやすくなることがあった。このため、従来のMEMS型接触燃焼式ガスセンサでは、水が付着することにより、ガス反応部の温度が低下して当該ガス反応部の抵抗値が変動することがあった。この結果、従来のMEMS型接触燃焼式ガスセンサでは、センサ出力が安定せずに、検知対象ガスの検知精度の低下を招くことがあった。
【0007】
本開示は、検知対象ガスの反応によって水が生じた場合でも、当該検知対象ガスの検知精度の低下を抑制することができるMEMS型接触燃焼式ガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本開示の一側面に係るMEMS型接触燃焼式ガスセンサは、基板と、前記基板上に設けられる検出電極と、前記検出電極に接触するように前記基板上に設けられるガス反応部と、前記ガス反応部上に設けられる水飛散抑制層と、を備える、MEMS型接触燃焼式ガスセンサであって、検知対象ガスは、反応により水を発生させるガスを少なくとも1つ含み、前記水飛散抑制層は、前記検知対象ガスを透過させ、かつ、前記検知対象ガスに対して前記ガス反応部よりも活性が低い。
【0009】
上記構成によれば、水飛散抑制層は検知対象ガスに対してガス反応部よりも活性が低いので、水飛散抑制層はガス反応部よりも検知対象ガスの反応によって水が生じ難く、水の飛散を抑制することができる。これにより、検知対象ガスの反応によって水が生じた場合でも、生成された水を一度に蒸発させず、ガス反応部付近での結露量を抑えることができるため、当該検知対象ガスの検知精度の低下を抑制することができるMEMS型接触燃焼式ガスセンサを構成することができる。
【0010】
前記検知対象ガスは、水素であってもよい。この場合、水素をより高濃度まで検知することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一態様によれば、検知対象ガスの反応によって水が生じた場合でも、当該検知対象ガスの検知精度の低下を抑制することができるMEMS型接触燃焼式ガスセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の実施形態1に係るMEMS型接触燃焼式ガスセンサを示す平面図である。
【
図3】上記MEMS型接触燃焼式ガスセンサに含まれた検出回路の構成例を示す回路図である。
【
図5】本実施形態1の検知結果例を示すグラフである。
【
図6】本開示の実施形態2に係るMEMS型接触燃焼式ガスセンサの要部構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態1〕
<MEMS型接触燃焼式ガスセンサ1の概略構成>
以下、本開示の実施形態1のMEMS型接触燃焼式ガスセンサ1について、
図1から
図3を用いて詳細に説明する。
図1は、本開示の実施形態1に係るMEMS型接触燃焼式ガスセンサ1を示す平面図である。
図2は、
図1のII-II線断面図である。
図3は、上記MEMS型接触燃焼式ガスセンサ1に含まれた検出回路の構成例を示す回路図である。
【0014】
図1及び
図2において、本実施形態のMEMS型接触燃焼式ガスセンサ1は、検知対象ガスを検知する検知素子10と、検知素子10の検出結果を補償する補償素子20とを備える。検知対象ガスは、検知素子10に含まれたガス反応部13での反応(燃焼)によって水を発生し得る、ガスを少なくとも1つ含んでいる。具体的にいえば、検知対象ガスは、水素、メタン、イソブタン、エタン、プロパンなどの水素原子を含んだ可燃性ガスである。
【0015】
<検出回路の構成>
また、本実施形態のMEMS型接触燃焼式ガスセンサ1は、例えば、ブリッジ回路を含んだ検出回路を備える。すなわち、本実施形態の検出回路は、
図3に示すように、検知素子10、補償素子20、抵抗71、及び抵抗72を有するブリッジ回路と、当該ブリッジ回路に電力供給を行う電源73と、当該ブリッジ回路の電圧を検知してMEMS型接触燃焼式ガスセンサ1のセンシング結果として出力するための電圧計74とを備える。
【0016】
また、本実施形態では、検知素子10に対して電源73から間欠的に電力供給が行われ、電力供給を受けた検知素子10は、検知対象ガスが燃焼し易い所定の燃焼温度(例えば、300℃~700℃)で維持されるようになっている。また、補償素子20は、検知対象ガスの燃焼以外の温度変化(例えば、周囲温度の変化)を基に、検知素子10の抵抗値の変化を補償する。
【0017】
また、本実施形態では、検知素子10と補償素子20とは同じ抵抗値に設定されている。それゆえ、検知対象ガスがMEMS型接触燃焼式ガスセンサ1の周囲に存在しない場合には、上記ブリッジ回路は平衡状態となり、電圧計74の出力(つまり、センシング結果)は検知対象ガスが存在しないことを示す0の値となる。
【0018】
一方、検知対象ガスが存在する場合には、検知素子10の温度が上記燃焼に伴い上昇し、当該検知素子10の抵抗値もまた大きい値となる。このため、上記検出回路では、そのブリッジ回路の平衡がくずれて、電圧計74の出力は、検知対象ガスの濃度に比例して、0の値よりも大きくなる。これにより、本実施形態のMEMS型接触燃焼式ガスセンサ1では、検知対象ガスの濃度を検知することができる。
【0019】
<MEMS型接触燃焼式ガスセンサ1の要部構成>
図1及び
図2に示すように、本実施形態のMEMS型接触燃焼式ガスセンサ1は、例えば、シリコンで構成された基板30と、基板30上に形成された絶縁膜40と、基板30に形成された凹部31上で支持される検知素子10と、基板30に形成された凹部32上で支持される補償素子20とを備える。
【0020】
絶縁膜40は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化タンタル、またはこれらの積層膜を用いて構成されており、凹部31及び凹部32の各表面を除いた、基板30での検知対象ガスの曝露面(
図2の上面)側に形成されている。
【0021】
<検知素子10の構成>
検知素子10は、検知素子10を支持する第1支持部11と、第1支持部11に設けられるヒーター配線12と、ヒーター配線12の上方で当該ヒーター配線12に接触するように設けられる上記ガス反応部13と、ガス反応部13上に設けられる水飛散抑制層14と、を備える。
【0022】
第1支持部11は、
図1及び
図2に示すように、複数、例えば、4つの架橋部15を介して、凹部31の上方で中空に浮かんだ状態で基板30に取り付けられている。すなわち、4つの架橋部15の各一端部は第1支持部11に連結され、4つの架橋部15の各他端部は基板30に連結されている。このように第1支持部11が、基板30に対して離間されることにより、ヒーター配線12で生じた熱が基板30に放熱されることを抑制することができ、ガス反応部13での温度低下を抑えて、MEMS型接触燃焼式ガスセンサ1の省電力化を図ることができる。
【0023】
第1支持部11及び架橋部15は、例えば、絶縁膜40と同様に、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化タンタル、またはこれらの積層膜を用いて構成されている。
【0024】
ヒーター配線12は、例えば、プラチナ等の貴金属線材を用いて構成されており、上記ブリッジ回路(
図3)での検出電極を兼用している。つまり、ヒーター配線12は、上記電源73からの電力に応じてガス反応部13を加熱するとともに、ガス反応部13でのヒーター配線12による加熱及び検知対象ガスとの燃焼による、温度上昇に応じて抵抗値が変化する。そして、ヒーター配線12の抵抗値の変化が、検知対象ガスの濃度の検知の検知データとして用いられる。
【0025】
具体的にいえば、ヒーター配線12では、その一端部及び他端部が架橋部15上に設けられた薄膜配線51及び52にそれぞれ接続されている。また、薄膜配線51は、ブリッジ回路(
図3)での検知素子10と抵抗72との接続点に繋がれる電極パッド61に接続されている。また、薄膜配線52は、上記ブリッジ回路での検知素子10と補償素子20との接続点に繋がれる電極パッド62に接続されている。
【0026】
電極パッド61及び62は、図示しないリード線を介してそれぞれ電源73の一端及び電圧計74の一端に接続されている。これにより、検知素子10では、電源73からの電力供給が行われるとともに、被検知対象ガスの濃度検知が可能となる。
【0027】
ガス反応部13は、例えば、アルミナまたはシリカアルミナ等を用いる担体に、例えば、パラジウムまたはプラチナ等の水素などの検知対象ガスに対して活性を有する貴金属触媒を担持して構成される。このようにガス反応部13は、検知対象ガスと反応して燃焼する貴金属触媒を含んでいる。また、ガス反応部13は、例えば、塗布法により、上記貴金属触媒が担持された担体を第1支持部11上に設けた後、例えば、電気炉にて焼成することにより、当該第1支持部11上に形成される。
【0028】
水飛散抑制層14は、例えば、アルミナ、酸化スズ、またはシリカアルミナ等の検知対象ガスに対して不活性な不活性材料を用いて構成されている。つまり、水飛散抑制層14は、ガス反応部13と異なり、検知対象ガスに対して活性を有する貴金属触媒を含んでおらず、検知対象ガスに対してガス反応部13よりも活性が低い。また、水飛散抑制層14は、例えば、塗布法により、上記不活性材料をガス反応部13上に設けた後、例えば、電気炉にて焼成することにより、当該ガス反応部13上に形成される。
【0029】
また、水飛散抑制層14は、ガス反応部13での検知対象ガスとの反応を阻害しないように、当該検知対象ガスを透過させるように構成されている。具体的には、水飛散抑制層14では、その膜厚が例えば、10~40μm程度とされている。また、水飛散抑制層14では、その比表面積が小さくされており(例えば、5m2/g以下とされており)、検知対象ガスの透過を許容するとともに、ガス反応部13で生じた水(水滴)の飛散を抑制するようになっている。
【0030】
また、検知素子10では、ガス反応部13及び水飛散抑制層14以外の構成がMEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を用いて形成されている。
【0031】
<補償素子20の構成>
補償素子20は、補償素子20を支持する第2支持部21と、第2支持部21に設けられるヒーター配線22と、ヒーター配線22の上方で当該ヒーター配線22に接触するように設けられる補償部23と、を備える。
【0032】
第2支持部21は、
図1及び
図2に示すように、複数、例えば、4つの架橋部25を介して、凹部32の上方で中空に浮かんだ状態で基板30に取り付けられている。すなわち、4つの架橋部25の各一端部は第2支持部21に連結され、4つの架橋部25の各他端部は基板30に連結されている。このように第2支持部21が、基板30に対して離間されることにより、ヒーター配線22で生じた熱が基板30に放熱されることを抑制することができ、補償部23での温度低下を抑えて、MEMS型接触燃焼式ガスセンサ1の省電力化を図ることができる。
【0033】
第2支持部21及び架橋部25は、例えば、絶縁膜40と同様に、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化タンタル、またはこれらの積層膜を用いて構成されている。
【0034】
ヒーター配線22は、例えば、プラチナ等の貴金属線材を用いて構成されており、上記ブリッジ回路(
図3)での補償用検出電極を兼用している。つまり、ヒーター配線22は、上記電源73からの電力に応じて補償部23を加熱するとともに、補償部23でのヒーター配線22による加熱による、温度上昇に応じて抵抗値が変化する。そして、ヒーター配線22の抵抗値の変化が、検知対象ガスの濃度の検知の際に補償用のデータとして用いられる。
【0035】
具体的にいえば、ヒーター配線22では、その一端部及び他端部が架橋部25上に設けられた薄膜配線53及び54にそれぞれ接続されている。また、薄膜配線53は、ブリッジ回路(
図3)での検知素子10と補償素子20との接続点に繋がれる電極パッド62に接続されている。また、薄膜配線54は、上記ブリッジ回路での補償素子20と抵抗71との接続点に繋がれる電極パッド63に接続されている。
【0036】
電極パッド62及び63は、図示しないリード線を介してそれぞれ電圧計74の一端及び電源73の他端に接続されている。これにより、補償素子20では、電源73からの電力供給が行われるとともに、被検知対象ガスの濃度検知での補償が可能となる。
【0037】
補償部23は、例えば、アルミナまたはシリカアルミナ等の検知対象ガスに対して不活性な不活性材料を用いて構成されており、パラジウムまたはプラチナ等の水素などの検知対象ガスに対して活性を有する貴金属触媒は含まれない。また、補償部23は、例えば、塗布法により、上記不活性材料を第2支持部21上に設けた後、例えば、電気炉にて焼成することにより、当該第2支持部21上に形成される。
【0038】
また、補償素子20では、補償部23以外の構成がMEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を用いて形成されている。
【0039】
尚、上記の説明では、
図2に示すように、ヒーター配線12及び22を露出させてガス反応部13及び補償部23にそれぞれ直接的に接触するように第1支持部11及び第2支持部21に設けた場合を例示して説明した。しかしながら、本実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、ヒーター配線12及び22をそれぞれ第1支持部11及び第2支持部21の内部に埋設する構成でもよい。
【0040】
以上のように構成された本実施形態のMEMS型接触燃焼式ガスセンサ1では、検知素子10はガス反応部13とガス反応部13上に設けられる水飛散抑制層14とを備える。また、水飛散抑制層14は、検知対象ガスに対してガス反応部13よりも活性が低いので、水飛散抑制層14は、ガス反応部13よりも検知対象ガスの反応によって水が生じ難く、水の飛散を抑制することができる。これにより、本実施形態は、検知対象ガスの反応によって水が生じた場合でも、生成された水を一度に蒸発させず、ガス反応部13付近での結露量を抑えることができるため、当該検知対象ガスの検知精度の低下を抑制することができるMEMS型接触燃焼式ガスセンサ1を構成することができる。
【0041】
また、本実施形態では、水飛散抑制層14がガス反応部13で生じた水(水滴)の飛散を抑制するので、水滴が検知素子10の周辺領域に飛散するのを大幅に抑えることができる。この結果、本実施形態では、周辺領域に飛散した水滴に起因して、MEMS型接触燃焼式ガスセンサ1のセンシング結果(センサ出力)が変動するのを確実に抑えることが可能となる。
【0042】
また、本実施形態では、検知対象ガスとして水素を検知する。これにより、本実施形態では、水素をより高濃度まで検知することができる。
【0043】
ここで、
図4及び
図5も参照して、本実施形態のMEMS型接触燃焼式ガスセンサ1の効果について具体的に説明する。
図4は、比較例での検知結果例を示すグラフである。
図5は、本実施形態1の検知結果例を示すグラフである。
【0044】
まず、比較例では、本実施形態品と異なり、検知素子において、ガス反応部のみ形成され、水飛散抑制層が形成されていない。このため、比較例では、ガス反応部での水素(検知対象ガス)との反応(燃焼)によって生じた水が検知素子の周辺領域に飛散するのを抑えることができない。この結果、比較例では、
図4のグラフに示すように、そのセンサ出力が安定せずに大きく変動するものとなった。
【0045】
一方、本実施形態品では、水飛散抑制層14により、検知素子10の周辺領域への水の飛散が抑えられているので、
図5のグラフに示すように、そのセンサ出力は変動せずに、一定値で安定した値となった。すなわち、本実施形態品では、例えば、100%LELにて示すように、水素濃度が4%である場合に、センサ出力は約80の値で保持されていた。このように、本実施形態品では、水素を高精度に検知できることが実証された。
【0046】
〔実施形態2〕
本開示の実施形態2について、
図6を用いて具体的に説明する。
図6は、本開示の実施形態2に係るMEMS型接触燃焼式ガスセンサの要部構成を示す断面図である。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0047】
本実施形態2と上記実施形態1との主な相違点は、ガス反応部83の周囲に堤防窓85を設けた点である。
【0048】
本実施形態のMEMS型接触燃焼式ガスセンサ1では、
図6に示すように、検知素子80は、第1支持部81と、第1支持部81に設けられるヒーター配線82と、ヒーター配線82の上方で当該ヒーター配線82に接触するように設けられるガス反応部83と、ガス反応部83上に設けられる水飛散抑制層84と、を備える。
【0049】
また、本実施形態では、図示しない略円形の窓を有する、堤防窓85がガス反応部83外周部と当接して当該ガス反応部83を囲むように第1支持部81上に設けられている。この堤防窓85は、例えば、第1支持部81と同一材料でMEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を用いて構成されている。
【0050】
また、本実施形態では、堤防窓85を設けることにより、より均一な膜厚で水飛散抑制層84を形成することができる。すなわち、堤防窓85がガス反応部83の外周部を囲むことにより、水飛散抑制層84の端部の膜厚を当該水飛散抑制層84の中央部の膜厚と均一となるように堤防窓85上に当該端部を形成することが容易に可能となるからである。
【0051】
以上の構成により、本実施形態では、上記実施形態1と同様な効果を奏する。また、より均一な膜厚で水飛散抑制層84を形成することができるので、検知素子80の周辺領域への水の飛散をより確実に抑えることが可能となり、MEMS型接触燃焼式ガスセンサ1のセンサ出力が変動するのをより確実に抑えることができる。
【0052】
本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1 MEMS型接触燃焼式ガスセンサ
12、82 ヒーター配線(検出電極)
13、83 ガス反応部
14、84 水飛散抑制層
30 基板