IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士機械工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-乾燥装置 図1
  • 特開-乾燥装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055095
(43)【公開日】2023-04-17
(54)【発明の名称】乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   B41F 23/04 20060101AFI20230410BHJP
   F26B 13/12 20060101ALI20230410BHJP
   F26B 21/02 20060101ALI20230410BHJP
   F26B 25/00 20060101ALI20230410BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
B41F23/04 A
F26B13/12
F26B21/02
F26B25/00 A
B41J2/01 125
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164218
(22)【出願日】2021-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000237260
【氏名又は名称】富士機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】森川 亮
(72)【発明者】
【氏名】岩藤 浩充
(72)【発明者】
【氏名】岩本 好司
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 徹
(72)【発明者】
【氏名】片岡 啓治
(72)【発明者】
【氏名】丹生谷 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 怜志
(72)【発明者】
【氏名】松永 真一
(72)【発明者】
【氏名】村上 徹
(72)【発明者】
【氏名】久保 寛次
【テーマコード(参考)】
2C020
2C056
3L113
【Fターム(参考)】
2C020CA03
2C020CA05
2C056EA04
2C056EB12
2C056EB14
2C056EB29
2C056EB31
2C056EB35
2C056EB58
2C056EB59
2C056EC12
2C056EC14
2C056EC26
2C056EC31
2C056EC40
2C056HA46
3L113AA02
3L113AA08
3L113AB03
3L113AC10
3L113AC31
3L113AC45
3L113AC46
3L113AC50
3L113AC67
3L113BA30
3L113BA31
3L113BA32
3L113CA02
3L113DA02
(57)【要約】
【課題】乾燥室を通過するウェブに付着するインクを効率よく乾燥させることができる省エネルギーな乾燥装置を提供する。
【解決手段】乾燥室7から排出する排気を乾燥室7に還流する第1排気還流ダクト73及び第2排気還流ダクト74を備える。制御手段12は、湿度毎に設定したウェブ搬送限界速度V1を予め記憶しており、第1湿度センサ71cにより検出した検出湿度に対応するウェブ搬送限界速度V1がウェブW1の実速度V2より低い場合、第1還流量調整ダンパー73b及び第2還流量調整ダンパー74bによる還流排気量を予め決められた設定値より少なくする制御を実施し、第1湿度センサ71cにより検出した検出湿度に対応するウェブ搬送限界速度V1がウェブW1の実速度V2より高い場合、第1還流量調整ダンパー73b及び第2還流量調整ダンパー74bによる還流排気量を予め決められた設定値より多くする制御を実施する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブ搬送ユニットにより連続搬送されるウェブを通過させながら当該ウェブに付着するインクを乾燥させる乾燥室を備えた乾燥装置であって、
前記乾燥室から排出する排気を当該乾燥室に還流する排気還流ダクトと、
該排気還流ダクトに配設され、前記乾燥室に還流させる還流排気量を調整する還流量調整手段と、
湿度を検出可能な湿度検出手段と、
異常状態であることを外部に知らせる警報手段と、
前記ウェブ搬送ユニット、前記還流量調整手段、前記湿度検出手段及び前記警報手段に接続された制御手段と、を備え、
該制御手段は、所定位置又は所定区間における湿度基準値と所定位置の湿度又は所定区間の湿度変化量毎に設定したウェブ搬送限界速度とを予め記憶しており、前記湿度検出手段により検出した湿度又は湿度変化量が前記湿度基準値より高いか、或いは、検出した湿度又は湿度変化量に対応するウェブ搬送限界速度が前記ウェブの実速度より低い場合、前記還流量調整手段による前記還流排気量を初期設定値より少なくする制御、前記警報手段を作動させる制御及び前記ウェブ搬送ユニットによる前記ウェブの搬送速度を遅くする制御の少なくとも1つを実施し、前記湿度検出手段により検出した湿度又は湿度変化量が前記湿度基準値より低いか、或いは、検出した湿度又は湿度変化量に対応するウェブ搬送限界速度が前記ウェブの実速度より高い場合、前記還流量調整手段による前記還流排気量を初期設定値で維持するか、或いは、当該初期設定値より多くする制御及び前記ウェブ搬送ユニットによる前記ウェブの搬送速度を速くする制御の少なくとも一方を実施することを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
請求項1に記載の乾燥装置において、
前記制御手段は、前記ウェブに形成される印刷絵柄の面積率に応じた前記還流排気量の前記初期設定値を予め記憶しており、作業者の入力により、或いは、検出手段の検出によって前記面積率が得られると、前記初期設定値となるよう前記還流量調整手段を制御することを特徴とする乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続搬送されるウェブに付着させたインクを乾燥させる乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、グラビア印刷等を行う印刷装置において、連続搬送されるウェブに付着させたインクを乾燥させる乾燥装置が知られている。例えば、特許文献1に開示されている乾燥装置は、連続搬送させるウェブを通過させるボックス形状の乾燥室と、該乾燥室内に乾燥用空気を供給する空気供給ダクトと、乾燥室から排出される排気を乾燥室内に還流する排気還流ダクトと、該排気還流ダクトの開度を可変させるダンパーとを備えている。該ダンパーには、当該ダンパーを制御して排気還流ダクトの開度を可変させることにより排気還流量を調整する制御手段が接続され、該制御手段には、印刷絵柄の面積率を入力可能な面積率入力手段が接続されている。そして、制御手段は、面積率入力手段において入力された印刷絵柄の面積率が大きい場合、排気中の溶剤濃度が高くなるので、ダンパーの開度を減少させて還流排気量を減らすことにより、乾燥室内の溶剤濃度が過度に高くならないようにしている。一方、制御手段は、面積率入力手段において入力された印刷絵柄の面積率が小さい場合、排気中の溶剤濃度が低くなるので、ダンパーの開度を増加させて還流排気量を多くすることにより、再利用する排気でウェブに付着するインクを乾燥させてコストを抑えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-237548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の乾燥装置は、例えば、湿気が高い日において稼働させると、ウェブに付着するインクの溶剤が乾燥室内において気化し難くなってしまい、溶剤の全てが気化する前にウェブが乾燥室を通過してしまうおそれがある。一方、湿気が低い日において乾燥装置を稼働させると、乾燥室の乾燥能力が当該乾燥室を通過する際のウェブに付着するインクの全溶剤を気化させるのに必要以上なものになってしまい、無駄が多くて効率が悪くなってしまう。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、乾燥室を通過するウェブに付着するインクを効率よく乾燥させることができる省エネルギーな乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、検出する湿度又は湿度変化量に基づいて乾燥室に還流させる排気還流量を調整するか、或いは、乾燥室を通過させるウェブの搬送速度を調整するようにしたことを特徴とする。
【0007】
具体的には、ウェブ搬送ユニットにより連続搬送されるウェブを通過させながら当該ウェブに転写されたインクを乾燥させる乾燥室を備えた乾燥装置を対象とし、次のような対策を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明では、前記乾燥室から排出する排気を当該乾燥室に還流する排気還流ダクトと、該排気還流ダクトに配設され、前記乾燥室に還流させる還流排気量を調整する還流量調整手段と、湿度を検出可能な湿度検出手段と、異常状態であることを外部に知らせる警報手段と、前記ウェブ搬送ユニット、前記還流量調整手段、前記湿度検出手段及び前記警報手段に接続された制御手段と、を備え、該制御手段は、所定位置又は所定区間における湿度基準値と所定位置の湿度又は所定区間の湿度変化量毎に設定したウェブ搬送限界速度とを予め記憶しており、前記湿度検出手段により検出した湿度又は湿度変化量が前記湿度基準値より高いか、或いは、検出した湿度又は湿度変化量に対応するウェブ搬送限界速度が前記ウェブの実速度より低い場合、前記還流量調整手段による前記還流排気量を初期設定値より少なくする制御、前記警報手段を作動させる制御及び前記ウェブ搬送ユニットによる前記ウェブの搬送速度を遅くする制御の少なくとも1つを実施し、前記湿度検出手段により検出した湿度又は湿度変化量が前記湿度基準値より低いか、或いは、検出した湿度又は湿度変化量に対応するウェブ搬送限界速度が前記ウェブの実速度より高い場合、前記還流量調整手段による前記還流排気量を初期設定値で維持するか、或いは、当該初期設定値より多くする制御及び前記ウェブ搬送ユニットによる前記ウェブの搬送速度を速くする制御の少なくとも一方を実施することを特徴とする。
【0009】
第2の発明では、第1の発明において、前記制御手段は、前記ウェブに形成される印刷絵柄の面積率に応じた前記還流排気量の前記初期設定値を予め記憶しており、作業者の入力により、或いは、検出手段の検出によって前記面積率が得られると、前記初期設定値となるよう前記還流量調整手段を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明では、乾燥装置を稼働させる際、その稼働時の湿気の状態から乾燥室においてインクの全溶剤を気化させるのに必要十分なウェブの搬送速度で稼働しているのか否かが分かるようになる。例えば、湿度検出手段により検出した湿度に対応するウェブ搬送限界速度がウェブの実速度より低い場合、そのままの速度でウェブを搬送し続けると、乾燥室においてウェブに付着するインクが乾かないので、還流排気量を減らすか、或いは、ウェブ搬送速度を下げるようになる。また、例えば、湿度検出手段により検出した湿度変化量が湿度基準値より高い場合、警報手段により作業者は乾燥し難い状態になっていることを知ることができ、装置の稼働状態を調整可能になる。そうすることで、乾燥室内がインクの溶剤を気化させ易い状態に変えることができ、インクの全溶剤が気化せずに乾燥室を通過してしまうのを防ぐことができる。また、例えば、湿度検出手段により検出した湿度に対応するウェブ搬送限界速度がウェブの実速度より高い場合や、或いは、湿度検出手段により検出した湿度又は湿度変化量が前記湿度基準値より低い場合、そのままの速度でウェブを搬送し続けると、乾燥室を通過するウェブに付着するインクの全溶剤を気化させるのに必要以上の乾燥能力を有する状態になり、無駄が多くて効率が悪くなるので、還流排気量を増やすか、或いは、ウェブ搬送速度を速くさせるようになる。そうすることで、排気を再利用する量が増えるか、或いは、装置の稼働率が高まるので、省エネルギーな効率の良い乾燥装置にすることができる。
【0011】
第2の発明では、乾燥室内の湿度に大きく影響を及ぼす印刷絵柄の面積率に応じて還流排気量の初期設定値が予め設定されるようになるので、最適な還流排気量にする調整を短い時間で効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る乾燥装置が組み込まれた印刷装置の概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る乾燥装置における乾燥室に対して空気の給排を行う給排システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る乾燥装置1が組み込まれた印刷装置10を示す。該印刷装置10は、長尺状をなすプラスチック材からなるウェブW1に印刷を施すものであり、該ウェブW1を連続搬送させるウェブ搬送ユニット20を備えている。
【0015】
該ウェブ搬送ユニット20は、印刷装置10の上流端に位置する繰出ロール2と、印刷装置10の下流端に位置する巻取ロール3と、繰出ロール2の下流側に配置されたインフィード部4と、巻取ロール3の上流側に配置されたアウトフィード部5とを備え、繰出ロール2から繰り出されて複数のガイドロールG1により案内されながら連続搬送されるウェブW1を巻取ロール3が巻き取るようになっている。
【0016】
インフィード部4は、ウェブW1を挟み込みながら回転動作により下流側へと送り出す一対の第1フィードロール4aを備える一方、アウトフィード部5は、ウェブW1を挟み込みながら回転動作により下流側へと送り出す一対の第2フィードロール5aを備え、両第1フィードロール4aと両第2フィードロール5aとが連動しながら回転することにより、連続搬送されるウェブW1に加わる張力をインフィード部4及びアウトフィード部5をそれぞれ通過する前後において変えることが可能になっている。
【0017】
インフィード部4の下流側には、所謂インクジェット型の印刷ユニット6が配設され、該印刷ユニット6は、水平方向に連続搬送されるウェブW1に水性のインクを滴下して当該ウェブW1の片面にインクを付着させるようになっている。
【0018】
印刷ユニット6の下流側には、当該印刷ユニット6にてウェブW1に付着したインクを乾燥させる乾燥装置1が配設されている。
【0019】
該乾燥装置1は、略直方体形状をなす乾燥室7を備え、該乾燥室7は、装置下流側に向けて斜め下方に傾斜して延びる姿勢になっている。
【0020】
乾燥室7の側壁下部における長手方向中途部には、第1給気口7aが形成される一方、乾燥室7の側壁上部における長手方向中途部には、第2給気口7bが形成され、第1給気口7aと第2給気口7bとは、加温された空気を乾燥室7内に供給する開口部分になっている。
【0021】
また、乾燥室7の側壁下部における装置上流側には、第1排気口7cが形成される一方、乾燥室7の側壁下部における装置下流側には、第2排気口7dが形成され、第1排気口7cと第2排気口7dとは、乾燥室7内の空気を排出する開口部分になっている。
【0022】
さらに、乾燥室7の側壁上部における装置上流側には、第3排気口7eが形成される一方、乾燥室7の側壁上部における装置下流側には、第4排気口7fが形成され、第3排気口7eと第4排気口7fとは、乾燥室7内の空気を排出する開口部分になっている。
【0023】
乾燥室7の内部には、当該乾燥室7の長手方向と直交する水平方向に回転軸心が延びる複数の駆動ローラ8が乾燥室7の長手方向に直線状に並設され、該各駆動ローラ8は、図示しない駆動源により同方向に同期して回転駆動するようになっている。
【0024】
印刷ユニット6を通過して乾燥室7の上流端から当該乾燥室7内に入り込むウェブW1は、回転駆動する各駆動ローラ8の上部に案内されながら乾燥室7の下流側に連続搬送されるとともに下流端に位置する駆動ローラ8に巻き掛けられて折り返された後、回転駆動する各駆動ローラ8の下部に案内されながら乾燥室7の上流側に連続搬送されて乾燥室7の上流端から当該乾燥室7の外側に飛び出し、その後、複数のガイドロールG1に案内されてアウトフィード部5に向かうようになっている。
【0025】
乾燥室7の内側上部には、当該乾燥室7の長手方向と直交する水平方向に延びる略ボックス形状をなす複数の上側ノズル9aが各駆動ローラ8に対応する位置にそれぞれ配設されている。
【0026】
各上側ノズル9aは、第2給気口7bに接続されていて、当該第2給気口7bを介して乾燥室7内に供給される加温された空気を乾燥室7の下流端に向かって連続搬送されるウェブW1に向かって吹き出して当該ウェブW1に付着するインクを乾燥させるようになっている。
【0027】
また、乾燥室7の内側上部には、複数の中赤外線ヒーター11が各上側ノズル9aの間に1つずつ位置するように配設され、各中赤外線ヒーター11は、中赤外線を照射して連続搬送されるウェブW1に付着するインクを乾燥させるようになっている。
【0028】
乾燥室7の内側下部には、当該乾燥室7の長手方向と直交する水平方向に延びる略ボックス形状をなす複数の下側ノズル9bが配設され、各下側ノズル9bは、各駆動ローラ8の間の位置に対応した配置になっている。
【0029】
各下側ノズル9bは、第1給気口7aに接続されていて、当該第1給気口7aを介して乾燥室7内に供給される加温された空気を乾燥室7の上流端に向かって連続搬送されるウェブW1に向かって吹き出して当該ウェブW1に付着するインクを乾燥させるようになっている。
【0030】
また、乾燥装置1は、図2に示すように、乾燥室7内に乾燥用空気を供給する空気供給ユニット7Aと、乾燥室7から排出する排気を当該乾燥室7に還流する排気還流ユニット7Bと、乾燥室7から排気を排出する排気排出ユニット7Cと、異常状態であることを外部に知らせる警報機13(警報手段)と、ウェブ搬送ユニット20、空気供給ユニット7A、排気還流ユニット7B、排気排出ユニット7C及び警報機13に接続された制御手段12とを備えている。
【0031】
空気供給ユニット7Aは、一端が第1給気口7aに接続された第1空気供給ダクト71と、一端が第2給気口7bに接続された第2空気供給ダクト72とを備えている。
【0032】
第1空気供給ダクト71の他端側には、当該第1空気供給ダクト71内の湿度を検出可能な第1湿度センサ71c(湿度検出手段)が配設され、第2空気供給ダクト72の他端は、第1空気供給ダクト71の第1湿度センサ71cの下流側の位置に接続されている。
【0033】
また、第1空気供給ダクト71の中途部には、新鮮空気を加温する第1電熱ヒーター71aと、乾燥室7に向けて乾燥用空気を圧送する第1給気ファン71bとがダクト上流側から順に配設されている。
【0034】
第2空気供給ダクト72には、乾燥用空気を加温する第2電熱ヒーター72aと、乾燥室7に向けて乾燥用空気を圧送する第2給気ファン72bとがダクト上流側から順に配設されている。
【0035】
排気還流ユニット7Bは、一端が第1排気口7cに接続される一方、他端が第1空気供給ダクト71における第1電熱ヒーター71aの上流側に接続された第1排気還流ダクト73と、一端が第2排気口7dに接続される一方、他端が第2空気供給ダクト72における第2電熱ヒーター72aの上流側に接続された第2排気還流ダクト74とを備えている。
【0036】
第1排気還流ダクト73には、還流排気量を調整する第1還流量調整ダンパー73b(還流量調整手段)と、第1排気還流ダクト73内の湿度を検出可能な第2湿度センサ73a(湿度検出手段)とが第1排気口7c側から順に配設されている。
【0037】
第1還流量調整ダンパー73bは、図示しない開閉弁に駆動連係する第1駆動モータ73cを備え、該第1駆動モータ73cが駆動して開閉弁の開閉位置が変更されることにより、第1排気還流ダクト73と第1空気供給ダクト71とを介して乾燥室7に還流される還流排気量が調整されるようになっている。
【0038】
第2排気還流ダクト74には、還流排気量を調整する第2還流量調整ダンパー74b(還流量調整手段)と第2排気還流ダクト74内の湿度を検出可能な第3湿度センサ74a(湿度検出手段)とが第2排気口7d側から順に配設されている。
【0039】
第2還流量調整ダンパー74bは、図示しない開閉弁に駆動連係する第2駆動モータ74cを備え、該第2駆動モータ74cが駆動して開閉弁の開閉位置が変更されることにより、第2排気還流ダクト74と第2空気供給ダクト72とを介して乾燥室7に還流される還流排気量が調整されるようになっている。
【0040】
排気排出ユニット7Cは、一端に排気ファン75aが接続される一方、他端側が枝分かれして第3排気口7eと第4排気口7fとにそれぞれ接続された排気排出ダクト75を備え、排気ファン75aは、排気排出ダクト75内の排気を下流側に向けて圧送するようになっている。
【0041】
排気排出ダクト75の枝分かれ部分よりも排気ファン75a側には、排気の排出量を調整する排気量調整ダンパー75bが配設されている。
【0042】
該排気量調整ダンパー75bは、図示しない開閉弁に駆動連係する第3駆動モータ75cを備え、該第3駆動モータ75cが駆動して開閉弁の開閉位置が変更されることにより、排気排出ダクト75を介して排出される排気の排出量が調整されるようになっている。
【0043】
制御手段12は、湿度毎に設定したウェブ搬送限界速度V1を予め記憶している。該ウェブ搬送限界速度V1は、各湿度において印刷を実施する際においてインクが乾かずに乾燥室7を通過してしまうウェブW1の搬送速度の限界値である。
【0044】
制御手段12は、ウェブW1に形成される印刷絵柄の面積率に応じた還流排気量の初期設定値を予め記憶しており、作業者により面積率が入力されると、初期設定値となるよう第1還流量調整ダンパー73b及び第2還流量調整ダンパー74bを制御するようになっている。
【0045】
そして、制御手段12は、第1湿度センサ71cにより検出した検出湿度に対応するウェブ搬送限界速度V1がウェブW1の実速度V2より低い場合、第1還流量調整ダンパー73b及び第2還流量調整ダンパー74bによる還流排気量を初期設定値より少なくする制御を実施する一方、第1湿度センサ71cにより検出した検出湿度に対応するウェブ搬送限界速度V1がウェブW1の実速度V2より高い場合、第1還流量調整ダンパー73b及び第2還流量調整ダンパー74bによる還流排気量を初期設定値より多くする制御を実施するようになっている。
【0046】
以上より、本発明の実施形態によると、乾燥装置1を稼働させる際、その稼働時の湿気の状態から乾燥室7においてインクの全溶剤を気化させるのに必要十分なウェブW1の搬送速度で稼働しているのか否かが分かるようになる。例えば、第1湿度センサ71cにより検出した湿度に対応するウェブ搬送限界速度V1がウェブW1の実速度V2より低い場合、そのままの搬送速度V2でウェブW1を搬送し続けると、乾燥室7においてウェブW1に付着するインクが乾かないので、還流排気量を減らすようになる。そうすることで、乾燥室7内がインクの溶剤を気化させ易い状態になり、インクの全溶剤が気化せずに乾燥室7を通過してしまうのを防ぐことができる。また、例えば、第1湿度センサ71cにより検出した湿度に対応するウェブ搬送限界速度V1がウェブW1の実速度V2より高い場合、そのままの搬送速度V2でウェブW1を搬送し続けると、乾燥室7を通過するウェブW1に付着するインクの全溶剤を気化させるのに必要以上の乾燥能力を有する状態になり、無駄が多くて効率が悪くなるので、還流排気量を増やすようになる。そうすることで、排気を再利用する量が増えるので、省エネルギーな効率の良い乾燥装置1にすることができる。
【0047】
また、乾燥室7内の湿度に大きく影響を及ぼす印刷絵柄の面積率に応じて還流排気量の初期設定値が予め設定されるようになるので、最適な還流排気量にする調整を短い時間で効率良く行うことができる。
【0048】
尚、本発明の実施形態では、制御手段12は、第1湿度センサ71cにより検出した検出湿度に対応するウェブ搬送限界速度V1がウェブW1の実速度V2より低い場合、第1還流量調整ダンパー73b及び第2還流量調整ダンパー74bによる還流排気量を予め決められた設定値より少なくする制御を実施し、第1湿度センサ71cにより検出した検出湿度に対応するウェブ搬送限界速度V1がウェブW1の実速度V2より高い場合、第1還流量調整ダンパー73b及び第2還流量調整ダンパー74bによる還流排気量を予め決められた設定値より多くする制御を実施しているが、例えば、第1湿度センサ71cにより検出した検出湿度に対応するウェブ搬送限界速度V1がウェブW1の実速度V2より低い場合、ウェブ搬送ユニット20によるウェブW1の搬送速度を遅くする制御を実施し、第1湿度センサ71cにより検出した検出湿度に対応するウェブ搬送限界速度V1がウェブW1の実速度V2より高い場合、ウェブ搬送ユニット20によるウェブW1の搬送速度を速くする制御を実施してもよい。すなわち、ウェブ搬送限界速度V1とウェブW1の実速度V2との間に差がある場合には、第1還流量調整ダンパー73b及び第2還流量調整ダンパー74bによる還流排気量の調整及びウェブ搬送ユニット20によるウェブW1の速度調整の少なくとも一方を行うようにすればよい。
【0049】
また、制御手段12は、第1湿度センサ71cと第2湿度センサ73aとの間の区間において設定した湿度基準値、及び、第1湿度センサ71cと第3湿度センサ74aとの間の区間において設定した湿度基準値を予め記憶しており、湿度検出手段により検出した第1湿度センサ71cと第2湿度センサ73aとの間の湿度変化量が湿度基準値より高い場合、第1還流量調整ダンパー73b及び第2還流量調整ダンパー74bによる還流排気量を予め決められた設定値より少なくする制御を実施し、湿度検出手段により検出した第1湿度センサ71cと第2湿度センサ73aとの間の湿度変化量が湿度基準値より低い場合、第1還流量調整ダンパー73b及び第2還流量調整ダンパー74bによる還流排気量を予め決められた設定値より多くする制御を実施してもよい。さらに、湿度検出手段により検出した第1湿度センサ71cと第2湿度センサ73aとの間の湿度変化量が湿度基準値より高い場合、警報機13を作動させる制御を行ってもよい。
【0050】
制御手段12の判断時に用いる湿度基準値は、第1湿度センサ71c、第2湿度センサ73a及び第3湿度センサ73dのそれぞれの設置位置での湿度の基準値であってもよいし、例えば、第1湿度センサ71cと第2湿度センサ73aとの間の区間における湿度の変化量の基準値であってもよい。
【0051】
また、本発明の実施形態では、乾燥室7に複数の中赤外線ヒーター11を配設しているが、その他の種類のヒーターであってもよく、例えば、複数の近赤外線ヒーターであってもよい。
【0052】
また、本発明の実施形態では、還流排気量の調整が必要な状態を作業者に知らせる警報手段を警報機13で行っているが、警報ランプやモニタに警報画面を表示する方法で作業者に知らせてもよい。
【0053】
また、本発明の実施形態の乾燥装置1は、インクジェット型の印刷ユニット6によりウェブW1に付着させたインクの乾燥に適用しているが、その他の種類の印刷ユニットの印刷の乾燥にも適用可能であり、例えば、グラビア印刷ユニットによりウェブW1に付着させたインクの乾燥にも適用可能である。また、水性のインクの乾燥だけでなく、油性のインクの乾燥にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、連続搬送されるウェブに付着させたインクを乾燥させる乾燥装置に適している。
【符号の説明】
【0055】
1 乾燥装置
7 乾燥室
10 印刷装置
12 制御手段
20 ウェブ搬送ユニット
71c 第1湿度センサ(湿度検出手段)
73 第1排気還流ダクト
73a 第2湿度センサ(湿度検出手段)
73b 第1還流量調整ダンパー(還流量調整手段)
74 第2排気還流ダクト
74a 第3湿度センサ(湿度検出手段)
74b 第2還流量調整ダンパー(還流量調整手段)
W1 ウェブ
図1
図2