(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055102
(43)【公開日】2023-04-17
(54)【発明の名称】長尺部材の保持具
(51)【国際特許分類】
F16B 2/10 20060101AFI20230410BHJP
H02G 3/22 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
F16B2/10 C
H02G3/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164229
(22)【出願日】2021-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 知之
【テーマコード(参考)】
3J022
5G363
【Fターム(参考)】
3J022EA42
3J022EC12
3J022EC13
3J022EC14
3J022EC17
3J022EC22
3J022ED22
3J022ED23
3J022ED24
3J022ED25
3J022ED26
3J022ED27
3J022ED28
3J022ED29
3J022FA05
3J022GA16
3J022GB43
3J022GB56
3J022HA03
3J022HA05
5G363BA02
5G363BA07
5G363CA17
5G363CB08
(57)【要約】
【課題】長尺部材を取付孔に挿通して保持しつつ長尺部材の適用外径を広げることができる長尺部材の保持具を提供する。
【解決手段】この長尺部材の保持具10は、長尺部材5を抱え込む一対の分割体30,50を設けた枠体20を有しており、枠体20は、取付孔3に挿入保持される挿入部31。51と、フランジ部32,52と、分割体30,50どうしを組付ける係合部33,53と、取付孔3の周縁に係合する係合爪37,57とを有し、挿入部31,51の内周からは、長尺部材に当接して保持する複数の弾性押え片70,71,72が撓み変形可能に形成されており、弾性押え片70は、長尺部材を保持して撓み変形したときに、係合爪37,57と干渉しない位置に設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の部材に形成された取付孔に挿入されて取付けられ、前記取付孔に長尺部材を挿通して保持するための、長尺部材の保持具であって、
前記長尺部材を抱え込む一対の分割体を設けた枠体を有しており、
該枠体は、
前記取付孔に挿入されて保持される挿入部と、
前記取付孔の周縁に当接するフランジ部と、
前記一対の分割体どうしを組付ける係合部と、
前記挿入部に形成され、前記取付孔の、前記フランジ部が当接する部分とは反対側の周縁に係合する係合爪とを有しており、
前記挿入部の内周からは、前記長尺部材に当接して保持する、複数の弾性押え片が撓み変形可能に形成されており、
該弾性押え片は、前記長尺部材を保持して撓み変形したときに、前記係合爪と干渉しない位置に設けられていることを特徴とする長尺部材の保持具。
【請求項2】
各弾性押え片は、その基部が、前記挿入部の内周に連結されており、同基部から前記挿入部の内方に突出しつつ軸方向に向けて延びており、
前記挿入部の内周には、スリット又は凹部が設けられており、
各弾性押え片は撓み変形したときに、前記スリット又は前記凹部に入り込み可能とされている請求項1記載の長尺部材の保持具。
【請求項3】
各弾性押え片は、撓み変形して前記スリット又は前記凹部に入り込んだ状態で、前記挿入部の外周から突出しないように構成されている請求項2記載の長尺部材の保持具。
【請求項4】
前記スリット又は前記凹部は、前記挿入部の軸方向の一端から他端側に向けて、軸方向に延びて形成されており、
各弾性押え片は、
前記スリット又は前記凹部の軸方向の他端から、前記挿入部の軸方向の一端側に向けて延びる基部と、
該基部の延出方向の先端から、前記挿入部の軸方向の一端側に向けて、斜め内方に延びる中間部と、
該中間部の延出方向の先端から、前記挿入部の内方に屈曲して延びる先端部とを有している請求項2又は3記載の長尺部材の保持具。
【請求項5】
前記枠体は、前記長尺部材を複数保持するものであって、
前記挿入部には、複数の前記長尺部材のそれぞれを保持する、複数の前記弾性押え片が、複数組設けられており、
前記一対の分割体の内側であって、前記挿入部に設けられた各組の前記弾性押え片の間には、前記長尺部材どうしの間に入り込む膨出部が設けられており、
前記膨出部は、その内部に中空部を有しており、前記挿入部の、前記膨出部に整合する部分に、前記係合爪が、前記中空部内へ撓み変形可能に形成されており、
前記一対の分割体どうしを前記係合部で組付けたときに、前記膨出部どうしが互いに当接するように構成されている請求項1~4のいずれか1つに記載の長尺部材の保持具。
【請求項6】
前記挿入部を軸方向から見たときに、
各弾性押え片は、
前記挿入部の内周から、前記挿入部の内方へ突出する基部と、
該基部の先端から、前記挿入部の周方向に向けて延びる中間部と、
該中間部の先端から、前記挿入部の内方へ向けて斜めに延びる先端部とを有しており、
各弾性押え片の、前記中間部は、全て同じ方向に向けて延びている請求項1記載の長尺部材の保持具。
【請求項7】
前記一対の分割体は、ヒンジを介して開閉可能に連結されており、
前記一対の分割体のうち、一方の分割体に、2個の前記弾性押え片が設けられており、他方の分割体に、1個の前記弾性押え片が設けられている請求項6記載の長尺部材の保持具。
【請求項8】
前記長尺部材を保持する前の状態で、所定の前記弾性押え片の先端部は、隣接する前記弾性押え片の、前記中間部と前記先端部との間に位置するように配置されている請求項6又は7記載の長尺部材の保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線状、管状又は棒状の長尺部材を保持するための、長尺部材の保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車には、パイプや、チューブ、ワイヤ、ケーブル、ハーネス等が用いられているが、これらは絡まったり、他部材と干渉したり、破損したり等の不都合が生じることがあるため、通常は何らかの保持具に収容保持されて、該保持具を介して車内の所定位置に配設されることが多い。
【0003】
従来のこの種のものとして、例えば、下記特許文献1には、被着物に係止される弾性係止脚を外面に突設した受け部と、該受け部とヒンジを介して一体に連結した蓋部とで、リング状クランプ部を形成した、ワイヤハーネス用クランプが記載されている。前記受け部の内周からは、複数の戻り防止爪が延設されており、これらの戻り防止爪で、ワイヤハーネスが挟持されて保持される。
【0004】
そして、弾性係止脚を、被着物であるパネルに形成された取付孔に、パネルの表面側から挿入して、同取付孔の裏側周縁に係止させることで、弾性係止脚を介してパネルにクランプが取付けられるようになっている。この際、ワイヤハーネスは、パネルの面方向に沿って保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、パネルに形成された取付孔に、パイプやチューブ等の長尺部材を挿通して保持したい場合がある。
【0007】
この場合、上記特許文献1のクランプでは、パネルの表面側に、受け部や蓋部が配置されるので、これらの形状を変更する余地があり、保持すべきワイヤハーネスの適用外径を広げやすい。しかし、ワイヤハーネスをパネルに形成された取付孔に挿通して保持しようとすると、受け部や蓋部の外径を、取付孔の内径よりも小さくしなくてはならない。そのため、ワイヤハーネスをパネルの取付孔に挿通して保持する場合は、保持すべきワイヤハーネスの適用外径を広げることが困難である。
【0008】
したがって、本発明の目的は、長尺部材を取付孔に挿通して保持しつつ、保持される長尺部材の適用外径を広げることができる、長尺部材の保持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、所定の部材に形成された取付孔に挿入されて取付けられ、前記取付孔に長尺部材を挿通して保持するための、長尺部材の保持具であって、前記長尺部材を抱え込む一対の分割体を設けた枠体を有しており、該枠体は、前記取付孔に挿入されて保持される挿入部と、前記取付孔の周縁に当接するフランジ部と、前記一対の分割体どうしを組付ける係合部と、前記挿入部に形成され、前記取付孔の、前記フランジ部が当接する部分とは反対側の周縁に係合する係合爪とを有しており、前記挿入部の内周からは、前記長尺部材に当接して保持する、複数の弾性押え片が撓み変形可能に形成されており、該弾性押え片は、前記長尺部材を保持して撓み変形したときに、前記係合爪と干渉しない位置に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長尺部材を取付孔に挿通して保持することができる。そして、枠体の挿入部の内周から、長尺部材に当接して保持する、複数の弾性押え片が撓み変形可能に形成されているので、長尺部材の外径に応じて、複数の弾性押え片が、適宜撓み変形して長尺部材を押圧状態で保持することができると共に、撓み変形しない状態でも長尺部材を保持することができ、長尺部材の適用外径を広げることができる。更に、弾性押え片は、長尺部材を保持して撓み変形したときに、係合爪と干渉しない位置に設けられているので、挿入部を取付孔に挿入する際に、係合爪の撓み変形が十分に許容され、安定した挿入作業性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る長尺部材の保持具の、一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】同保持具の、
図1とは異なる方向から見た場合の斜視図である。
【
図4】同保持具で、小径の長尺部材を保持する際の工程を示しており、(а)は第1工程の斜視図、(b)は第2工程の斜視図である。
【
図5】同保持具で、小径の長尺部材を保持した状態の斜視図である。
【
図6】同保持具で、小径の長尺部材を保持した状態の背面図である。
【
図7】同保持具を取付孔に挿入して取付けて、取付孔に小径の長尺部材を挿通保持する際の、断面説明図である。
【
図8】同保持具が取付孔に取付けられて、取付孔に小径の長尺部材が挿通保持された状態の、断面説明図である。
【
図9】同保持具で、大径の長尺部材を保持する際の工程を示しており、(а)は第1工程の斜視図、(b)は第2工程の斜視図である。
【
図10】同保持具が取付孔に取付けられて、取付孔に大径の長尺部材が挿通保持された状態を示す、断面説明図である。
【
図11】本発明に係る長尺部材の保持具の、他の実施形態を示す斜視図である。
【
図13】同保持具で、小径の長尺部材を保持する際の工程を示しており、(а)は第1工程の斜視図、(b)は第2工程の斜視図である。
【
図14】同保持具で、小径の長尺部材を保持した状態の斜視図である。
【
図15】同保持具で、小径の長尺部材を保持した状態の断面図である。
【
図16】同保持具が取付孔に取付けられて、取付孔に小径の長尺部材が挿通保持された状態の、断面説明図である。
【
図17】同保持具で、大径の長尺部材を保持する際の工程を示しており、(а)は第1工程の斜視図、(b)は第2工程の斜視図である。
【
図18】同保持具で、大径の長尺部材を保持した状態の断面図である。
【
図19】同保持具が取付孔に取付けられて、取付孔に大径の長尺部材が挿通保持された状態の、断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(長尺部材の保持具の一実施形態)
以下、
図1~10を参照して、本発明に係る長尺部材の保持具の、一実施形態について説明する。
【0013】
図8や
図10に示すように、この実施形態の長尺部材の保持具10(以下、単に「保持具10」ともいう)は、所定の部材1に形成された取付孔3に挿入されて取付けられ、取付孔3に長尺部材5を挿通して保持するためのものであって、
図1~4に示すように、長尺部材5を抱え込む一対の分割体30,50を設けた枠体20を有している。
【0014】
上記部材1は、例えば、車体パネルや車体フレーム等である。また、取付孔3は、保持具10の挿入部31,51(
図1参照)の形状に対応して、両端が円弧状をなした長孔状をなしている。更に長尺部材5は、例えば、パイプや、チューブ、ホース、ロッド、ワイヤ、ケーブル、ハーネス、コード等の、線状、管状、筒状、又は棒状の部材である。なお、この実施形態における長尺部材5は、外周が円形状をなした円筒状をなしている。また、
図9及び
図10に示す長尺部材5の外径は、
図4~8に示す長尺部材5の外径よりも大きく形成されている。
【0015】
図1及び
図2に示すように、枠体20は、取付孔3に挿入されて保持される挿入部31,51と、取付孔3の周縁に当接するフランジ部32,52と、一対の分割体30,50どうしを組付ける係合部33,53と、挿入部31,51に形成され、取付孔3の、フランジ部32,52が当接する部分とは反対側の周縁に係合する係合爪37,57とを有している。
【0016】
また、
図1~3及び
図6に示すように、挿入部31,51の内周からは、長尺部材5に当接して保持する、複数の弾性押え片70,71,72が撓み変形可能に形成されており、これらの弾性押え片70,71,72は、長尺部材5を保持して撓み変形したときに、係合爪38,58と干渉しない位置に設けられている。
【0017】
更に、この実施形態における枠体20は、長尺部材5を複数保持するものであって、挿入部31,51には、複数の長尺部材5をそれぞれ保持する、複数の弾性押え片70,71,72が、複数組(ここでは2組)設けられている。
【0018】
より具体的に説明すると、この実施形態の枠体20は、2本の長尺部材5,5を並列した状態で抱え込むことが可能なように、長尺部材5の並列方向に長く延びる幅広の半割筒状をなした一対の分割体30,50を有している。なお、以下の説明においては、長尺部材5の軸方向に沿った方向を単に「軸方向X」とし、長尺部材5の軸方向Xに直交し且つ長尺部材5,5が並んで配置された方向(長尺部材の並列方向)を単に「幅方向Y」とする。
【0019】
分割体30,50の挿入部31,51は、軸方向Xに所定長さで延び、且つ、幅方向Yに所定幅で広がる幅広の長尺枠状をなしている。また、各挿入部31,51は、
図6に示すように、分割体30,50の組付け時に互いに平行となるように延びる平坦部31a,51aを有している。なお、挿入部31の、幅方向Yの両端部31b,31c、及び、挿入部51の、幅方向Yの両端部51b,51cは、それぞれ曲面状をなしており、分割体30,50が組付けられたときに円弧状となる(
図6参照)。更に
図7に示すように、これらの挿入部31,51は、軸方向Xの一端部側から、取付孔3に挿入されるようになっている。なお、挿入部31,51は、取付孔3に挿入されると共に、取付孔3の内周に当接して、長尺部材5の荷重を受け止める役割をなす。
【0020】
また、挿入部31,51の、軸方向Xの他端部の外周縁から、フランジ部32,52が外方に広がるように設けられている。このフランジ部32,52が、取付孔3の表側周縁に当接するようになっている。なお、取付孔3の表側とは、取付孔3が形成された部材1の厚さ方向の一側であって、取付孔3に挿入部31,51が挿入される際の、挿入方向F(
図7参照)とは反対側を意味する。また、取付孔3の裏側とは、取付孔3の表側とは反対側(取付孔3への挿入部31,51の挿入方向F側)を意味する。
【0021】
また、
図3に示すように、挿入部31,51の幅方向Yの一端部31b,51bどうしは、薄肉板状をなしたヒンジ34によって連結されており、一対の分割体30,50どうしが一体化されている。そして、一対の分割体30,50は、ヒンジ34を介して、挿入部31,51の幅方向Yの他端部31c,51cどうしが互いに近接又は離反するように開閉可能となっている。
【0022】
更に、
図1や
図2に示すように、挿入部31の、幅方向Yの他端部であって、分割体50に対向する端面からは、爪状をなした係合部33が突設されている。一方、挿入部51の幅方向他端部には、長孔状をなした係合部53が形成されている。そして、一対の分割体30,50がヒンジ34を介して閉じられると、爪状の係合部33が、長孔状の係合部53に対して、挿入部51の内周側から挿入されて、両係合部33,53が互いに係合して、一対の分割体30,50が閉じた状態で組付けられるようになっている。
【0023】
また、一対の分割体30,50の内側であって、挿入部31,51に設けられた各組の弾性押え片70,71,72の間には、長尺部材5,5どうしの間に入り込む膨出部35,55が設けられている。
【0024】
より具体的には、挿入部31,51の、幅方向Yの中央部であって、その内面側(相手側の挿入部との対向面側)から、膨出部35,55がそれぞれ突設されている。
図3に示すように、各膨出部35,55は、突出方向の先端部35a,55aが平坦面状をなすと共に、同先端部35a,55aから基端部側に向けて、凹曲面状をなしつつ次第に広がる側壁35b,55bを有しており、全体として略山形状となっている。
【0025】
そして、
図6に示すように、一対の分割体30,50を閉じて係合部33,53で組付けたときに、膨出部35,55の先端部35a,55aどうしが互いに当接するように構成されている。また、この状態では、一対の分割体30,50の内側に、2本の長尺部材5,5を保持する保持空間A,Bが画成されるようになっている。ここでは、挿入部31,51の幅方向Yの一端部側に保持空間Aが設けられ、挿入部31,51の幅方向Yの他端部側に保持空間Bが設けられている。なお、各保持空間A,Bの内周は、挿入部31,51の内周や膨出部35,55の側壁35b,55bから形成されるが、その形状は略円形状をなしている(
図6参照)。また、各膨出部35,55の内部には、中空部36,56がそれぞれ形成されている。
【0026】
更に
図1~3に示すように、挿入部31,51の、幅方向Yの中央部であって、前記膨出部35,55に整合する位置には、中空部36,56に連通する、略コ字状をなしたスリット37a,57aがそれぞれ形成されている。そして、このスリット37a,57aを介して、中空部36,56内に入り込むように撓み変形可能に、係合爪37,57がそれぞれ形成されている。各係合爪37,57は、その固定端部(基端部)が、挿入部31,51の軸方向Xの一端部側に連結され、自由端部(先端部)側に向けて次第に突出するテーパ面を有しており、更に自由端部の外周に、段状をなした係合段部37b,57bが形成されている。そして、
図8,10に示すように、これらの係合爪37,57の係合段部37b,57bが、取付孔3の裏側周縁(取付孔3の、フランジ部32,52が当接する部分とは反対側の周縁)にそれぞれ係合するようになっている。
【0027】
次に、弾性押え片70,71,72、及び、これに関連する構造について、具体的に説明する。
【0028】
各弾性押え片70,71,72は、その基部74が、挿入部31の内周に連結されており、同基部74から挿入部31,51の内方に突出しつつ軸方向Xに向けて延びている。この実施形態における、各基部74は、挿入部31の軸方向Xの所定位置の内周に連結されており、同基部74から挿入部31,51の内方に突出しつつ軸方向Xの一端側に向けて延びている。
【0029】
上記の弾性押え片70,71,72は、以下の位置に形成されている。すなわち、
図6に示すように、保持空間Aの内周をなす、挿入部31の幅方向Yの他端部31c側の内周、及び、保持空間Bの内周をなす、挿入部31の幅方向Yの一端部31b側の内周から、弾性押え片70がそれぞれ延設されている。また、保持空間Aの内周をなす、膨出部35の一方の側壁35bの外周、及び、保持空間Bの内周をなす、膨出部35の他方の側壁35bの外周から、弾性押え片71がそれぞれ延設されている。更に、保持空間Aの内周をなす、挿入部51の平坦部51aの、幅方向Yの他端部の内周、及び、保持空間Bの内周をなす、挿入部51の平坦部51аの、幅方向Yの一端部の内周から、弾性押え片72がそれぞれ延設されている。
【0030】
以上のように、各保持空間A,Bのそれぞれに、3個で一組の弾性押え片70,71,72が、2組設けられている。更に
図6に示すように、各保持空間A,Bに設けられた弾性押え片70,71,72は、保持空間A,Bの周方向に対して均等な間隔を空けて配置されている。
【0031】
また、挿入部31,51の内周には、スリット38,58又は凹部39が設けられている。この実施形態では、スリット38,58又は凹部39は、各弾性押え片70,71,72の外側に位置する部分に設けられている。更に
図10に示すように、各弾性押え片70,71,72は撓み変形したときに、スリット38,58又は凹部39に入り込み可能とされている。
【0032】
この実施形態では、挿入部31の、幅方向Yの両端部31b,31cであって、弾性押え片70,70に整合する位置に、挿入部31を厚さ方向に切欠いてなるスリット38が、挿入部31の軸方向Xの一端から他端側に向けて、所定長さで延びて形成されている(
図1参照)。また、挿入部51の平坦部51aの幅方向Yの両端部であって、弾性押え片70,70に整合する位置に、挿入部51を厚さ方向に切欠いてなるスリット58が、挿入部51の軸方向Xの一端から他端側に向けて、所定長さで延びて形成されている。なお、これらのスリット38,58が本発明における「スリット」をなしている。
【0033】
更に
図1に示すように、挿入部31に設けた膨出部35の両側壁35b,35bの外周であって、弾性押え片71,71に整合する位置に、所定深さの凹状をなした凹部39が、挿入部31の軸方向Xの一端から他端側に向けて、所定長さで延びて形成されている。
【0034】
弾性押え片70,71,72の説明に戻ると、その形状は、以下のように形成されている。すなわち、
図1、
図2、及び
図7に示すように、挿入部31,51の軸方向Xの一端部であって、スリット38,58及び弾性押え片70,72に整合する周方向位置からは、挿入部31,51の内周よりも突出した突出部73が設けられている。また、挿入部31に設けた膨出部35の軸方向Xの一端部であって、凹部39及び弾性押え片71に整合する周方向位置からは、膨出部35の両側壁35b,35bの外周よりも突出した突出部73が設けられている。各突出部73は、挿入部31や膨出部35の軸方向Xの他端から一端側に向けて一定幅で延びており、その延出方向の先端は、スリット38や凹部39の軸方向の他端に至る位置まで延びている。
【0035】
なお、各突出部73の基端73aは、挿入部31,51の軸方向Xの他端に向けて次第に肉薄となる形状をなしている。その結果、突出部73の薄肉化がなされて、弾性押え片70,71,72の撓み変形能の向上が図られている。
【0036】
そして、各弾性押え片70,71,72は、スリット38又は凹部39の軸方向Xの他端から、挿入部31,51の軸方向Xの一端側に向けて延びる基部74と、該基部74の延出方向の先端から、挿入部31,51の軸方向Xの一端側に向けて、斜め内方に延びる中間部75と、該中間部75の延出方向の先端から、挿入部31,51の内方に屈曲して延びる先端部76とを有している。
【0037】
この実施形態の場合、上記突出部73の延出方向の先端であって、スリット38又は凹部39の軸方向Xの他端から、突出部73と同一幅でもって、基部74が挿入部31,51の軸方向Xの一端側に向けて、軸方向Xに沿って真っ直ぐに延びている。
図7や
図8に示すように、この基部74は、挿入部31,51の軸方向Xの中間部に配置されている。また、この基部74の延出方向の先端からは、同基部74と同一幅でもって、挿入部31,51の軸方向Xの一端側に向けて斜めに且つ挿入部31,51の径方向内方に向けて、中間部75が延びている。
【0038】
上記中間部75の延出方向の先端から、中間部75と同一幅でもって、挿入部31,51の径方向内方に向けて、ここでは挿入部31,51の軸方向Xに直交するように屈曲して、先端部76が延びている。
図7に示すように、この先端部76は、挿入部31,51の軸方向Xの一端部側に配置されている。更に、先端部76の最先端は、先端部76の、最先端以外の部分よりも幅広の幅広部76aをなしており、この幅広部76aが長尺部材5の外周に当接するようになっている(
図6参照)。また、
図3に示すように、先端部76の幅広部76aの先端面76bは、内方に凹んだ円弧状曲面をなしており、外周が円形状をなした長尺部材5の外周に密接しやすくなっている。
【0039】
なお、この実施形態の場合、
図6に示すように、挿入部31,51を軸方向Xから見たときに、挿入部31,51の軸心Cから、弾性押え片70,71,72の、各先端部76の先端面76bまでの距離は、
図4~8に示す小径の長尺部材5の半径に適合する寸法となっている。そのため、弾性押え片70,71,72の先端部76で、長尺部材5を保持した状態では、弾性押え片70,71,72は撓み変形しないように構成されている。
【0040】
また、各弾性押え片70,71,72の、基部74、中間部75、幅広部76аを含む先端部76は、スリット38又は凹部39よりも、挿入部31,51の径方向内方に位置している(
図1及び
図6参照)。
【0041】
上記のような形状をなした弾性押え片70,71,72は、一対の分割体30,50を閉じて係合部33,53で組付けたときに、その先端部76が長尺部材5の外周に当接して、同長尺部材5を保持するようになっている。この際、長尺部材5の外径に応じて、弾性押え片70,71,72が撓み変形する。すなわち、
図4~8に示すように長尺部材5の外径が小さい場合、同長尺部材5が複数の弾性押え片70,71,72によって保持する際には、弾性押え片70,71,72は撓み変形しないで、長尺部材5を保持するようになっている。
【0042】
一方、
図9及び
図10に示すように、長尺部材5の外径が、
図4~8の長尺部材5の外径よりも大きい場合、複数の弾性押え片70,71,72によって、大径の長尺部材5が保持されると、その先端部76が長尺部材5によって押圧されて撓み変形する(
図10参照)。すなわち、複数の弾性押え片70,71,72は、長尺部材5に弾性的に当接して、長尺部材5を押圧した状態で保持するようになっている。この実施形態における弾性押え片70,71,72は、その先端部76が大径の長尺部材5に当接して、長尺部材5によって押圧されると、
図10に示すように、基部74を介して挿入部31,51の外方に向けて押圧され、長尺部材5を保持する前の状態(長尺部材5を保持しない自由状態)では斜め内方に延びる中間部75が、スリット38,58や凹部39内に入り込んで、挿入部31,51の軸方向Xに沿って配置されるように撓み変形する。
【0043】
このように、複数の弾性押え片70,71,72は、長尺部材5の外径に応じて、撓み変形せずに長尺部材5を当接保持するか、或いは、撓み変形して長尺部材5を押圧保持するようになっている。
【0044】
なお、弾性押え片70,71,72は、基部74(固定端部とも言える)が挿入部31,51の軸方向Xの中間部に配置され、軸方向Xの一端部側に向けて延びていて、長尺部材5を保持する先端部76(自由端部とも言える)が、挿入部31,51の軸方向Xの一端部側に配置されているが、これは係合爪37,57の固定端部及び自由端部の配置と、挿入部31,51の軸方向Xにおいて逆向きの関係となっている(係合爪37,57は、固定端部から挿入部31,51の軸方向Xの他端部側に向けて延びて、自由端部が挿入部31,51の軸方向Xの他端部側に配置される)。
【0045】
また、上述したように、各弾性押え片70,71,72は撓み変形したときに、スリット38,58又は凹部39に入り込み可能とされている(
図10参照)。更に、各弾性押え片70,71,72は、撓み変形してスリット38,58又は凹部39に入り込んだ状態で、挿入部31,51の外周から突出しないように構成されている。
【0046】
(変形例)
以上説明した実施形態における長尺部材の保持具を構成する、枠体や、分割体、挿入部、フランジ部、係合部、係合爪、弾性押え片、膨出部、スリット、凹部等の、形状や構造は、上記態様に限定されるものではない。
【0047】
この実施形態における一対の分割体30,50は、幅広の半割筒状(半分割された筒状)をなしているが、一対の分割体としては、例えば、半割円筒状をなしていたり(これについては他の実施形態で説明する)、一方の分割体を略コ字枠状とし、他方の分割体を略コ字枠状の開口を開閉する蓋状としたりしてもよい。
【0048】
また、この実施形態の一対の分割体30,50は、2本の長尺部材5を並列して保持可能となっているが、一対の分割体としては、例えば、1本の長尺部材5を保持したり(これについては他の実施形態で説明する)、3本以上の長尺部材5を保持可能としたりしてもよい。更に、この実施形態では、小径の2本の長尺部材5を保持したり(
図4(b)参照)、大径の2本の長尺部材5を保持したり(
図9(b)参照)、外径の異なる長尺部材5を同時に保持してもよい。
【0049】
また、この実施形態の挿入部31,51は、幅広の長尺枠状でその両端部が曲面状をなしているが、挿入部としては、例えば、半円枠状をなしていたり(これについては他の実施形態で説明する)、角形枠状をなしていたりしてもよい。
【0050】
更に、この実施形態では、分割体30,50は、その幅方向一端部がヒンジ34で連結されて一体化しているが、一対の分割体を別体としてもよい。
【0051】
また、分割体どうしを組付ける係合部は、この実施形態では、爪状の係合部33と孔状の係合部53とからなるが、係合部としては、例えば、互いに係合する爪状等としてもよい。
【0052】
更に、この実施形態では、挿入部31,51にそれぞれ係合爪37,57が1個ずつ設けられているが、2個以上設けてもよい。ただし、弾性押え片の撓み変形に干渉しないように設ける必要がある。
【0053】
また、この実施形態では、1本の長尺部材5を保持するために、3個の弾性押え片70,71,72が設けられているが、1本の長尺部材を保持する弾性押え片としては、2個や4個以上であってもよい。
【0054】
また、弾性押え片としては、例えば、挿入部31,51の内周の軸方向所定位置から、軸方向Xの一端部又は他端部に向けて、斜め内方に真っ直ぐに延びる帯状としたり、曲面状をなすように湾曲しつつ延びる形状としたりしてもよく、撓み変形可能で且つ長尺部材に当接して保持可能な形状であればよい。更に、弾性押え片としては、基端部から先端部に至るまで一定幅で形成したり、基部側が幅広で先端部側に向けて幅狭としたり、基部側が幅狭で先端部側に向けて幅広としたりしてもよい。
【0055】
また、この実施形態の弾性押え片70,71,72は、その先端部76で、
図4~8に示す小径の長尺部材5を保持した場合、撓み変形しないようになっているが、挿入部31,51の軸心Cから、弾性押え片70,71,72の、各先端部76の先端面76bまでの距離を、
図4~8に示す小径の長尺部材5の半径よりも小さく設定して、小径の長尺部材5を保持した場合も、撓み変形するように構成してもよい。
【0056】
更に、この実施形態の膨出部35,55は、中空部36,56を有する略山形状をなししているが、膨出部としては、例えば、半円突部状をなしていたり、角形突部状をなしていたりしてもよい。
【0057】
また、この実施形態のスリット38,58や凹部39は、挿入部31,51の軸方向Xの一端から他端に向けて一定幅で且つ所定長さで形成されているが、スリットや凹部としては、例えば、挿入部31,51の軸方向Xの一端から他端に亘る長さで形成されていたり(軸方向一端から他端の、全長に亘って形成)、軸方向Xの他端から一端に向けて形成されていたり、幅を適宜変更したりしてもよい。
【0058】
(作用効果)
次に、上記構成からなる保持具10の作用効果について説明する。
【0059】
図4(а)に示すように、一対の分割体30,50を開いた状態で、挿入部31の内側に、2本の長尺部材5を並列状態で配置し、各長尺部材5を、挿入部31側の弾性押え片70,71の先端部76,76に当接させて保持する。この場合、長尺部材5の外周の、周方向2箇所が、弾性押え片70,71の先端部76,76により保持される。その後、一対の分割体30,50を、ヒンジ34を介して閉じて、係合部33,53を互いに係合させると、
図4(b)、
図5、及び
図6に示すように、各長尺部材5の外周の、弾性押え片70,71で保持されていない箇所が、挿入部51側の弾性押え片72の先端部76により保持されて、一対の分割体30,50が閉じた状態で組付けられる。この際、挿入部51側の弾性押え片72の先端部76が、長尺部材5に当接するので、保持空間A,Bに配置された各長尺部材5が、3個の弾性押え片70,71,72によって、それぞれ保持される(
図6参照)。また、各長尺部材5は、弾性押え片70,71,72により、保持空間A,Bから、挿入部31,51の径方向外方に抜け出ないように、抜け止め保持される。
【0060】
その後、
図7の矢印Fに示すように、取付孔3の表側開口から、保持具10の挿入部31,51を、その軸方向Xの一端側より挿入する。すると、取付孔3の内周によって係合爪37,57の外周のテーパ面が押圧されて、係合爪37,57が、膨出部35,55の中空部36,56内に入り込むように撓み変形されつつ押し込まれていく。その後、取付孔3の表側周縁にフランジ部32,52が当接するまで、取付孔3に対して保持具10を押し込む。そして、取付孔3の裏側から係合爪37,57の係合段部37b,57bが抜け出ると、係合爪37,57が弾性復帰して、取付孔3の裏側周縁に係合段部37b,57bが係合すると共に、取付孔3の表側周縁にフランジ部32,52が当接するので、取付孔3に保持具10を取付けることができる(
図8参照)。その結果、保持具10を介して、長尺部材5を取付孔3に挿通させた状態で保持することができる。すなわち、
図8に示すように、長尺部材5を、車体パネル等の部材1の面方向に対して交差する方向(ここでは直交する方向)となるように、取付孔3に挿通して保持することができる。
【0061】
ところで、各弾性押え片70,71,72は、長尺部材5を保持して撓み変形したときに、係合爪38,58と干渉しない位置に設けられている。そのため、上記のように、保持具10の挿入部31を取付孔3に挿入する際に、係合爪38,58の撓み変形を十分に許容することができるので、取付孔3に対する挿入部31の挿入作業を安定して行うことができる(安定した挿入作業性を確保できる)。
【0062】
図9及び
図10には、
図4~8に示す長尺部材5よりも外径の大きな長尺部材5を、保持具10で保持する場合が示されている。この場合も、上記と同様に、
図9(а)に示すように、一対の分割体30,50を開いて、2本の長尺部材5を並列状態で配置した後、一対の分割体30,50を閉じて、係合部33,53を互いに係合させると、
図9(b)に示すように、一対の分割体30,50が閉じた状態で組付けられる。
【0063】
すると、複数の弾性押え片70,71,72の先端部76が、長尺部材5の外周の所定箇所に当接して、同長尺部材5を保持するが、このとき、長尺部材5の外径が、
図4~8に示す長尺部材5の外径よりも大きいので、その先端部76が長尺部材5によって押圧されて撓み変形する(
図10参照)。すなわち、複数の弾性押え片70,71,72は、その先端部76が長尺部材5に弾性的に当接して、長尺部材5を押圧した状態で保持するようになっている。この際、
図10に示すように、弾性押え片70,71,72は、基部74を介して挿入部31,51の外方(ここでは径方向外方)に向けて押圧されて、その中間部75が、スリット38,58や凹部39内に入り込んで、挿入部31,51の軸方向Xに沿って配置されるように撓み変形する。
【0064】
以上説明したように、この保持具10においては、一対の分割体30,50の内側に長尺部材5を配置し、係合部33,53によって一対の分割体30,50どうしを互いに組付けることで、複数の弾性押え片70,71,72により長尺部材5が保持され、この状態で枠体20の挿入部31,51を取付孔3に挿入して、フランジ部32,52を取付孔3の表側周縁に当接させ、係合爪37,57を、取付孔3の裏側周縁に係合させることで、保持具10が取付孔3に取付けられるので、保持具10を介して、長尺部材5を取付孔3に挿通して保持することができる。
【0065】
そして、枠体20の挿入部31,51の内周から、長尺部材5に当接して保持する、複数の弾性押え片70,71,72が撓み変形可能に形成されているので、長尺部材5の外径に応じて、複数の弾性押え片70,71,72が、撓み変形しない状態で長尺部材を保持するか(
図8参照)、或いは、適宜撓み変形して長尺部材5を保持するため(
図10参照)、長尺部材5の適用外径を広げることができる。すなわち、小径の長尺部材5や大径の長尺部材5であっても、その寸法変化を吸収して適切に保持することができる(
図8及び
図10参照)。なお、複数の弾性押え片70,71,72が撓み変形して、長尺部材5を押圧保持した場合には、その弾性力によって、長尺部材5のガタツキを少なくしつつ保持することができる。
【0066】
このようにして、長尺部材5を取付孔3に挿通して保持することできると共に、長尺部材5の外径変化に柔軟に対応できる、保持具10を提供することができる。
【0067】
また、この実施形態においては、各弾性押え片70,71,72は、その基部74が、挿入部31,51の内周に連結されており、同基部74から挿入部31,51の内方に突出しつつ軸方向Xに向けて延びているので、弾性押え片70,71,72の長さを確保しやすくして、撓み変形しやすくすることができ、長尺部材5の外径変化により柔軟に対応することができる。
【0068】
更に、挿入部31,51の、各弾性押え片70,71,72の外側に位置する部分には、スリット38,58又は凹部39が設けられているので、長尺部材5の外径によって、弾性押え片70,71,72が大きく撓み片変形しても、スリット38,58又は凹部39に入り込むため、
図9や
図10に示すような大径の長尺部材5であっても、確実に保持することができ、長尺部材5の適用外径を更に広げることができる。また、弾性押え片70,71,72がスリット38,58又は凹部39に入り込んだ場合には、スリット38,58又は凹部39の内面によって、弾性押え片70,71,72の幅方向Yの動きを規制することができ、長尺部材5をしっかりと保持することができる。
【0069】
更に、この実施形態においては、各弾性押え片70,71,72は、撓み変形してスリット38,58又は凹部39に入り込んだ状態で、挿入部31,51の外周から突出しないように構成されている(
図10参照)。
【0070】
上記態様によれば、挿入部31,51の外周から、弾性押え片70,71,72が突出することを、確実に防止することができるので、枠体20の挿入部31,51を、取付孔3に対して、より挿入しやすくすることができる。
【0071】
また、この実施形態においては、各弾性押え片70,71,72は、スリット38,58又は凹部39の軸方向Xの他端から、挿入部31,51の軸方向Xの一端側に向けて延びる基部74と、該基部74の延出方向の先端から、挿入部31の軸方向Xの一端側に向けて、斜め内方に延びる中間部75と、該中間部75の延出方向の先端から、挿入部31,51の内方に屈曲して延びる先端部76とを有している。
【0072】
上記態様によれば、弾性押え片70,71,72の長さをより確保しやすくなり、より撓み変形しやすくすることができる。また、長尺部材5を保持したことで、
図10に示すように、弾性押え片70,71,72が大きく撓み変形しても、主として、弾性押え片70,71,72の中間部75が、スリット38,58や凹部39内に入り込んで、挿入部31,51の外周から、弾性押え片70,71,72が突出することを抑えられるので、枠体20の挿入部31,51を、取付孔3に挿入しやすくなる。
【0073】
更に、この実施形態においては、
図4~6に示すように、枠体20は、長尺部材5を複数保持するものであって、挿入部31,51には、複数の長尺部材5のそれぞれを保持する、複数の弾性押え片70,71,72が、複数組設けられており、一対の分割体30,50の内側であって、挿入部31,51に設けられた各組の弾性押え片70,71,72の間には、長尺部材5,5どうしの間に入り込む膨出部35,55が設けられており、膨出部35,55は、その内部に中空部36,56を有しており、挿入部31,51の、膨出部35,55に整合する部分に、係合爪37,57が、中空部36,56内へ撓み変形可能に形成されており、一対の分割体30,50どうしを係合部33,53で組付けたときに、膨出部35,55どうしが互いに当接するように構成されている。
【0074】
上記態様によれば、膨出部35,55は、その内部に中空部36,56を有しており、挿入部31,51の、膨出部35,55に整合する位置に、係合爪37,57が、中空部36,56内へ撓み変形可能に形成されているので、係合爪37,57の、撓み空間を確保することができ、取付孔3の一方の開口(表側開口)から挿入部31,51を挿入して、他方の開口(裏側開口)から挿出させる際に、係合爪37,57を取付孔3の他方の開口から、抜き出しやすくすることができる。
【0075】
また、
図6に示すように、一対の分割体30,50どうしを係合部33,53で組付けたときに、膨出部35,55どうしが互いに当接するので、膨出部35,55どうしの剛性を高めることができ、ひいては、挿入部31,51の、係合爪37,57が形成された部分の剛性を高めることができる。その結果、係合爪37,57の、取付孔3の裏側周縁に対する係合力を高めることができるので、取付孔3に保持具10を安定して取付けることができる。
【0076】
更に
図6に示すように、この実施形態においては、弾性押え片70,71,72の先端部76の最先端に、最先端以外の部分よりも幅広の幅広部76aが設けられている。
【0077】
上記態様によれば、挿入部31,51の周方向に隣接する、他の弾性押え片70,71,72の先端部76との隙間を狭くすることができるので、複数の弾性押え片70,71,72によって、外径が小さい長尺部材5を保持したときに、長尺部材5が隣接する弾性押え片の間に落ち込んでしまうことを防止することができる。
【0078】
(長方部材の保持具の他の実施形態)
図11~19には、本発明に係る長尺部材の保持具の、他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0079】
この実施形態の長尺部材の保持具10A(以下、単に「保持具10A」ともいう)は、主として、1本の長尺部材5を保持するものであること、及び、複数の弾性押え片90,91,92の形状や構造が、前記実施形態と異なっている。
【0080】
図11~13及び
図15に示すように、この実施形態の枠体20Aは、1本の長尺部材5を保持可能な、半割円筒状をなした分割体30A,50Aを有している。また、分割体30A,50Aの挿入部31,51は、半円枠状をなしている。更に、挿入部31,51の周方向一端部どうしが、ヒンジ34を介して連結されており、一対の分割体30A,50Aが開閉可能となっている。また、挿入部31,51の周方向他端部に係合部33,53が設けられており、両係合部33,53が互いに係合することで、一対の分割体30A,50Aが閉じた状態に組付けられるようになっている。
【0081】
そして、一方の分割体30Aに、2個の弾性押え片90,91が設けられており、他方の分割体50Aに、1個の弾性押え片92が設けられている。具体的には、分割体30Aの挿入部31の内周であって、周方向一端部寄りの位置から、弾性押え片90が延設されており、挿入部31の内周であって、周方向他端部寄りの位置から、弾性押え片91が延設されており、分割体50Aの挿入部51の内周であって、周方向中間部から、弾性押え片92が延設されており、挿入部31,51を軸方向Xから見たときに、挿入部31,51の周方向に均等な間隔を空けて配置されている。
【0082】
また、
図11、
図13、及び
図14に示すように、各弾性押え片90,91,92は、その幅方向が、挿入部31,51の軸方向Xに沿って所定幅で設けられ、挿入部31,51の周方向や内方に向けて延びる帯状片をなしており、
図15の矢印Tに示すように、挿入部31,51の径方向に撓み変形可能となるように形成されている。
【0083】
更に、挿入部31,51を軸方向Xから見たときに、各弾性押え片90,91,92は、挿入部31,51の内周から、挿入部31,51の内方へ突出する基部94と、該基部94の先端から、挿入部31,51の周方向R(
図15参照)に向けて延びる中間部95と、該中間部95の先端から、挿入部31,51の内方へ向けて斜めに延びる先端部76とを有しており、各弾性押え片90,91,92の、中間部95は、全て同じ方向に向けて延びている。
【0084】
また、長尺部材5を保持する前の状態(長尺部材5を保持しない自由状態)で、所定の弾性押え片90,91,92の先端部96は、隣接する弾性押え片90,91,92の、中間部95と先端部96との間に位置するように配置されている。
【0085】
より具体的に説明すると、
図15に示すように、この実施形態における各弾性押え片90,91,92は、その基部94が、挿入部31,51の内周から、挿入部31,51の軸心Cに向けて、挿入部31,51の内方へと突出している。この基部94の突出方向先端から、円弧状屈曲部94аを介して、挿入部31,51の内周に対して所定間隙を空けて、且つ、挿入部31,51の周方向Rに向けて、中間部95が延びている。すなわち、各弾性押え片90,91,92の中間部95は、全て同じ方向である、挿入部31,51の周方向Rに向けて延びている。
【0086】
更に、中間部95の延出方向先端から、円弧状屈曲部95аを介して、先端部96が僅かに弓なりに湾曲しつつ、挿入部31,51の軸心Cに対して周方向R方向にやや位置ずれするように延びている。より具体的には
図15に示すように、一対の分割体30A,50Aが閉じられると共に長尺部材5を保持する前の状態で、(1)弾性押え片90の先端部96は、挿入部31,51の周方向R方向に隣接する、他の弾性押え片92の中間部95及び先端部96の間に位置するように延びており、(2)弾性押え片91の先端部96は、挿入部31,51の周方向R方向に隣接する、他の弾性押え片90の中間部95及び先端部96の間に位置するように延びており、(3)弾性押え片92の先端部96は、挿入部31,51の周方向R方向に隣接する、他の弾性押え片91の中間部95及び先端部96の間に位置するように延びている。
【0087】
また、
図11及び
図12に示すように、挿入部31の、弾性押え片90と弾性押え片91との間であって、弾性押え片90の基部94寄りの位置に、コ字状のスリット37аが形成されており、このスリット37аを介して、係合爪37が撓み変形可能に形成されている。これに関連して、
図12に示すように、挿入部31,51を軸方向Xから見たときに、弾性押え片91は、その先端部96が、係合爪37に対向して配置されるようになっている。
【0088】
更に
図11及び
図12に示すように、挿入部51の、弾性押え片92の、中間部95と先端部96との間の境界部分である円弧状屈曲部95аにほぼ整合する位置に、コ字状のスリット57аが形成されており、このスリット57аを介して、係合爪57が撓み変形可能に形成されている。
【0089】
なお、この実施形態の場合、
図13~16に示す小径の長尺部材5を保持した状態では、弾性押え片90,91,92は撓み変形しないように構成されている。
【0090】
また、この実施形態における各弾性押え片90,91,92は、全て同一の形状をなしているが、所定の弾性押え片を、他の弾性押え片と異なる形状としてもよい。更に
図11、
図13、及び
図14に示すように、各弾性押え片90,91,92は、基部94、中間部95、先端部96を含めて、全て一定幅で形成されているが、所定の部分を、他の部分に対して幅広又は幅狭に形成してもよい。また、各弾性押え片90,91,92は、挿入部31,51の軸方向Xの、同一位置に設けられているが、所定の弾性押え片を、他の弾性押え片に対して、挿入部の軸方向に位置ずれして設けてもよい。
【0091】
(作用効果)
そして、この実施形態の保持具10Aは、以下のようにして、長尺部材5を保持可能となっている。
図13~16には、小径の1本の長尺部材5を保持した状態が示されており、
図17~19には、
図13~16よりも大径の1本の長尺部材5を保持した状態が示されている。
【0092】
小径の1本の長尺部材5を保持する場合には、まず、
図13(а)に示すように、一対の分割体30A,50Aを開いて、挿入部31側の弾性押え片91の先端部96と弾性押え片90の先端部96とで、長尺部材5を挟み込むようにして当接させて保持する(長尺部材5を仮保持する、とも言える)。この場合、長尺部材5の外周の、周方向2箇所が、弾性押え片90,91の先端部96,96により保持される。その後、一対の分割体30A,50Aを、ヒンジ34を介して閉じて、係合部33,53を互いに係合させると、
図13(b)、
図14、及び
図15に示すように、長尺部材5の外周の、弾性押え片90,91で保持されていない箇所が、挿入部51側の弾性押え片92の先端部96に当接して保持されて、一対の分割体30A,50Aが閉じた状態で組付けられて、長尺部材5が挿入部31,51の径方向外方に抜け出ないように抜け止め保持される。このとき、長尺部材5の軸心が、挿入部31,51の軸心Cに対し位置ずれしていても、弾性押え片90,91で仮保持された長尺部材5の外周に、弾性押え片92が当接する過程で、長尺部材5の軸心が、挿入部31,51の軸心Cに概ね合致するように位置修正されて(センタリング)、長尺部材5が保持されるようになっている。
【0093】
その後、取付孔3の表側開口から、保持具10の挿入部31,51を、その軸方向Xの一端側から挿入することで、取付孔3の裏側周縁に係合爪37,57が係合すると共に、取付孔3の表側周縁にフランジ部32,52が当接して、取付孔3に保持具10を取付けられて(
図16参照)、保持具10を介して、長尺部材5を取付孔3に挿通させた状態で保持することができる。
【0094】
一方、大径の1本の長尺部材5を保持する場合も、上記と同様に、
図17(а)に示すように、一対の分割体30A,50Aを開いて、挿入部31側の弾性押え片91の先端部96と弾性押え片90の先端部96とで、長尺部材5を挟み込むように仮保持する。その後、一対の分割体30A,50Aを閉じて、係合部33,53を互いに係合させることで、
図17(b)、
図18、及び
図19に示すように、一対の分割体30A,50Aが閉じた状態で組付けられる。
【0095】
この場合、複数の弾性押え片90,91,92の先端部96が、長尺部材5の外周の所定箇所に当接して、同長尺部材5を保持するが、このとき、長尺部材5の外径が、
図13~16に示す長尺部材5の外径よりも大きいので、その先端部96が長尺部材5によって押圧されて撓み変形する(
図18参照)。すなわち、複数の弾性押え片90,91,92は、その先端部96が長尺部材5に弾性的に当接して、長尺部材5を押圧した状態で保持するようになっている。この際、
図18に示すように、弾性押え片90,91,92は、主として基部94の先端側(円弧状屈曲部94а側)を支点として挿入部31,51の径方向外方に向けて押圧されて、その中間部95や先端部96が、挿入部31,51の内周に近接するように、挿入部31,51の径方向に撓み変形する。なお、この場合でも、中間部95や先端部96は、挿入部31,51の内周に当接せず、所定のクリアランスが維持されるようになっている。
【0096】
そして、この保持具10Aにおいては、挿入部31,51を軸方向Xから見たときに、各弾性押え片90,91,92は、挿入部31,51の内周から、挿入部31,51の内方へ突出する基部94と、該基部94の先端から、挿入部31,51の周方向Rに向けて延びる中間部95と、該中間部95の先端から、挿入部31,51の内方へ向けて斜めに延びる先端部96とを有しており、各弾性押え片90,91,92の、中間部95は、全て同じ方向に向けて延びている。
【0097】
上記態様によれば、挿入部31,51を軸方向Xから見たときに、各弾性押え片90,91,92は、上記形状をなしているので、弾性押え片90,91,92の長さを確保しやすくして、撓み変形しやすくすることができ、長尺部材5の外径変化に、より柔軟に対応することができる。
【0098】
また、この実施形態においては、一対の分割体30A,50Aは、ヒンジ34を介して開閉可能に連結されており、一対の分割体30A,50Aのうち、一方の分割体30Aに、2個の弾性押え片90,91が2個設けられており、他方の分割体50Aに、1個の弾性押え片92が設けられている。
【0099】
上記態様によれば、一方の分割体30Aに設けた2個の弾性押え片90,91でもって、長尺部材5を仮保持した状態で、一方の分割体30Aに対して他方の分割体50Aを、ヒンジ34を介して閉じることで、他方の分割体50Aに設けた1個の弾性押え片92が、長尺部材5に当接して、長尺部材5を保持(本保持)するので、長尺部材5を、挿入部31,51の軸心Cに概ね合致するようにセンタリングしつつ、スムーズに長尺部材5を保持することができる。
【0100】
更に、この実施形態においては、長尺部材5を保持する前の状態で、所定の弾性押え片の先端部96は、隣接する弾性押え片の、中間部95と先端部96との間に位置するように配置されている。すなわち、
図15に示すように、(1)弾性押え片90の先端部96は、隣接する弾性押え片92の中間部95及び先端部96の間に位置するように配置され、(2)弾性押え片91の先端部96は、隣接する弾性押え片90の中間部95及び先端部96の間に位置するように配置され、(3)弾性押え片92の先端部96は、隣接する弾性押え片91の中間部95及び先端部96の間に位置するよう配置されている。
【0101】
上記態様によれば、長尺部材5を保持する前の状態で、所定の弾性押え片の先端部96は、隣接する弾性押え片の、中間部95と先端部96との間に位置するように配置されているので、長尺部材5の外径が小さくても、弾性押え片どうしの隙間から、長尺部材5が脱落するのを防止することができ、複数の弾性押え片90,91,92によって、長尺部材5を保持しやすくすることができる。
【0102】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
1 部材
3 取付孔
5 長尺部材
10,10A 長尺部材の保持具(保持具)
20,20A 枠体
30,30A 分割体
31 挿入部
32 フランジ部
33 係合部
34 ヒンジ
35 膨出部
36 中空部
38 スリット
39 凹部
50,50A 分割体
51 挿入部
53 係合部
55 膨出部
57 係合爪
58 スリット
70,71,72 弾性押え片
74 基部
75 中間部
76 先端部
90,91,92 弾性押え片
94 基部
95 中間部
96 先端部