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特開2023-55116二重管削孔装置、及び二重管削孔装置による削孔方法
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  • 特開-二重管削孔装置、及び二重管削孔装置による削孔方法 図1
  • 特開-二重管削孔装置、及び二重管削孔装置による削孔方法 図2
  • 特開-二重管削孔装置、及び二重管削孔装置による削孔方法 図3
  • 特開-二重管削孔装置、及び二重管削孔装置による削孔方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055116
(43)【公開日】2023-04-17
(54)【発明の名称】二重管削孔装置、及び二重管削孔装置による削孔方法
(51)【国際特許分類】
   E21B 19/16 20060101AFI20230410BHJP
   E21B 4/06 20060101ALI20230410BHJP
   E21B 17/04 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
E21B19/16
E21B4/06
E21B17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164261
(22)【出願日】2021-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】390036504
【氏名又は名称】日特建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591002234
【氏名又は名称】株式会社樋口技工
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】三上 登
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 博昭
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129BA05
2D129BA10
2D129DA24
2D129EC06
2D129EC21
(57)【要約】
【課題】インナーロッドとアウターケーシングの継ぎ足し作業に要する手間と時間を抑制することができる二重管削孔装置と、この装置による削孔方法を提案する。
【解決手段】二重管削孔装置1において、ダウンザホールハンマー3は、アウターケーシング4の径方向内側に位置するハンマー本体部3aと、アウターケーシング4の前方においてハンマー本体部3aから径方向外側に突出する拡径部3cとを有し、駆動機構5に連結した状態においてインナーロッド2の後端連結部2aはアウターケーシング4の後端連結部4aよりも前方に位置していて、アウターケーシング4から拡径部3cまでの軸線方向距離L1は、駆動機構5に連結した状態でのアウターケーシング4の後端連結部4aからインナーロッド2の後端連結部2aまでの軸線方向距離L2よりも長く設定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端にダウンザホールハンマーを備えるインナーロッドと、当該インナーロッドが挿入されるアウターケーシングとを備え、当該インナーロッドの後端連結部と当該アウターケーシングの後端連結部が駆動機構に連結して削孔が行われ、当該駆動機構から分離した状態において当該インナーロッドの後端連結部と当該アウターケーシングの後端連結部に新たなインナーロッドと新たなアウターケーシングの継ぎ足しが可能な二重管削孔装置であって、
前記ダウンザホールハンマーは、前記アウターケーシングの径方向内側に位置するハンマー本体部と、当該アウターケーシングの前方において当該ハンマー本体部から径方向外側に突出する拡径部とを有し、
前記駆動機構に連結した状態において前記インナーロッドの後端連結部は前記アウターケーシングの後端連結部よりも前方に位置していて、前記アウターケーシングから前記拡径部までの軸線方向距離は、当該駆動機構に連結した状態での当該アウターケーシングの後端連結部から当該インナーロッドの後端連結部までの軸線方向距離よりも長く設定される二重管削孔装置。
【請求項2】
前記アウターケーシングは、当該アウターケーシングの内周面よりも径方向内側に突出して前記ハンマー本体部の外周面に近接するリングビットを有する請求項1に記載の二重管削孔装置。
【請求項3】
前記インナーロッドは、径方向外側に向けて突出して前記アウターケーシングの内周面に近接する突起部を有する請求項1又は2に記載の二重管削孔装置。
【請求項4】
前記ハンマー本体部は、前記インナーロッドと前記アウターケーシングとの隙間に通じるとともに当該アウターケーシングの前方において開口する排泥通路を有する請求項1~3の何れか一項に記載の二重管削孔装置。
【請求項5】
二重管削孔装置による削孔方法であって、
前記二重管削孔装置は、
前端にダウンザホールハンマーを備えるインナーロッドと、当該インナーロッドが挿入されるアウターケーシングとを備え、当該インナーロッドの後端連結部と当該アウターケーシングの後端連結部が駆動機構に連結して削孔が行われ、当該駆動機構から分離した状態において当該インナーロッドの後端連結部と当該アウターケーシングの後端連結部に新たなインナーロッドと新たなアウターケーシングの継ぎ足しが可能であって、
前記ダウンザホールハンマーは、前記アウターケーシングの径方向内側に位置するハンマー本体部と、当該アウターケーシングの前方において当該ハンマー本体部から径方向外側に突出する拡径部とを有し、
前記駆動機構に連結した状態において前記インナーロッドの後端連結部は前記アウターケーシングの後端連結部よりも前方に位置していて、前記アウターケーシングから前記拡径部までの軸線方向距離は、当該駆動機構に連結した状態での当該アウターケーシングの後端連結部から当該インナーロッドの後端連結部までの軸線方向距離よりも長く設定されるものであり、
前記駆動機構を動作させて、前記ダウンザホールハンマーで地盤を掘削するとともに前記インナーロッドと前記アウターケーシングを斜め方向又は水平方向に前進させて削孔を行った後、前記新たなインナーロッドと前記新たなアウターケーシングを継ぎ足すにあたり、
前記駆動機構と前記アウターケーシングの後端連結部とを分離させる工程と、
前記拡径部が拡径した状態のままで前記インナーロッドを後退させて、前記アウターケーシングの後端連結部から前記インナーロッドの後端連結部を露出させる工程と、
前記インナーロッドの後端連結部に新たなインナーロッドを継ぎ足すとともに前記アウターケーシングの後端連結部に新たなアウターケーシングを継ぎ足す工程と、
前記新たなインナーロッドと前記駆動機構とを連結させるとともに当該新たなインナーロッドを前進させた後、前記新たなアウターケーシングと当該駆動機構とを連結させる工程と、を含む削孔方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前端にダウンザホールハンマーを備えるインナーロッドとインナーロッドが挿入されるアウターケーシングとを備える二重管削孔装置、及びこの二重管削孔装置による削孔方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基礎抗工事やさく井工事等の土木工事を行うにあたり、崩壊しやすい地盤を掘削するには、前端にダウンザホールハンマーを備えるインナーロッドとインナーロッドが挿入されるアウターケーシングとを備える二重管削孔装置が用いられる(例えば特許文献1参照)。この種の二重管削孔装置は、装置に設けた駆動機構を動作させるとインナーロッドに取り付けたダウンザホールハンマーから打撃力が生じるため、ダウンザホールハンマーに設けたビットにより地盤を掘削することができる。また、ダウンザホールハンマーによる掘削の進行に応じてアウターケーシングを前進させることにより、削孔の崩落を防ぐことができる。
【0003】
またこのような二重管削孔装置においては、アウターケーシングと同等又はそれ以上に大口径になる拡径部をダウンザホールハンマーに設けたものも知られている。このような拡径部を備えるダウンザホールハンマーを使用する場合は、アウターケーシングの外径と同等又はそれ以上の孔径で地盤が掘削されるため、アウターケーシングへの負荷を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-122335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、削孔する深さがインナーロッドやアウターケーシングの長さ以上になる場合は、所定の深さまで削孔を行った後、インナーロッドとアウターケーシングの後端部に取り付けられている駆動機構を一旦分離させ、新たなインナーロッドとアウターケーシングを元のインナーロッドとアウターケーシングに継ぎ足し、駆動機構を新たなインナーロッドとアウターケーシングに取り付ける作業が行われる。ここで、元のインナーロッドに新たなインナーロッドを継ぎ足すにあたって新たなインナーロッドの前端部を元のインナーロッドの後端部に取り付けるには、元のインナーロッドを拘束しなければならないため、元のインナーロッドを一旦後退させてその後端部をアウターケーシングから露出させる必要がある。すなわち、拡径部を備えるダウンザホールハンマーを使用する場合は、拡径部を一旦縮径させてから元のインナーロッドを後退させなければならず、拡径部を縮径させる手間と時間を要するために作業性の低下を招いていた。
【0006】
このような従来の問題点に鑑み、本発明では、インナーロッドとアウターケーシングの継ぎ足し作業に要する手間と時間を抑制することができる二重管削孔装置を提案することを目的とする。併せて、この二重管削孔装置による削孔方法も提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前端にダウンザホールハンマーを備えるインナーロッドと、当該インナーロッドが挿入されるアウターケーシングとを備え、当該インナーロッドの後端連結部と当該アウターケーシングの後端連結部が駆動機構に連結して削孔が行われ、当該駆動機構から分離した状態において当該インナーロッドの後端連結部と当該アウターケーシングの後端連結部に新たなインナーロッドと新たなアウターケーシングの継ぎ足しが可能な二重管削孔装置であって、前記ダウンザホールハンマーは、前記アウターケーシングの径方向内側に位置するハンマー本体部と、当該アウターケーシングの前方において当該ハンマー本体部から径方向外側に突出する拡径部とを有し、前記駆動機構に連結した状態において前記インナーロッドの後端連結部は前記アウターケーシングの後端連結部よりも前方に位置していて、前記アウターケーシングから前記拡径部までの軸線方向距離は、当該駆動機構に連結した状態での当該アウターケーシングの後端連結部から当該インナーロッドの後端連結部までの軸線方向距離よりも長く設定される二重管削孔装置である。
【0008】
このような二重管削孔装置において、前記アウターケーシングは、当該アウターケーシングの内周面よりも径方向内側に突出して前記ハンマー本体部の外周面に近接するリングビットを有することが好ましい。
【0009】
またこの二重管削孔装置において、前記インナーロッドは、径方向外側に向けて突出して前記アウターケーシングの内周面に近接する突起部を有することが好ましい。
【0010】
またこの二重管削孔装置において、前記ハンマー本体部は、前記インナーロッドと前記アウターケーシングとの隙間に通じるとともに当該アウターケーシングの前方において開口する排泥通路を有することが好ましい。
【0011】
また本発明は、二重管削孔装置による削孔方法であって、前記二重管削孔装置は、前端にダウンザホールハンマーを備えるインナーロッドと、当該インナーロッドが挿入されるアウターケーシングとを備え、当該インナーロッドの後端連結部と当該アウターケーシングの後端連結部が駆動機構に連結して削孔が行われ、当該駆動機構から分離した状態において当該インナーロッドの後端連結部と当該アウターケーシングの後端連結部に新たなインナーロッドと新たなアウターケーシングの継ぎ足しが可能であって、前記ダウンザホールハンマーは、前記アウターケーシングの径方向内側に位置するハンマー本体部と、当該アウターケーシングの前方において当該ハンマー本体部から径方向外側に突出する拡径部とを有し、前記駆動機構に連結した状態において前記インナーロッドの後端連結部は前記アウターケーシングの後端連結部よりも前方に位置していて、前記アウターケーシングから前記拡径部までの軸線方向距離は、当該駆動機構に連結した状態での当該アウターケーシングの後端連結部から当該インナーロッドの後端連結部までの軸線方向距離よりも長く設定されるものであり、前記駆動機構を動作させて、前記ダウンザホールハンマーで地盤を掘削するとともに前記インナーロッドと前記アウターケーシングを斜め方向又は水平方向に前進させて削孔を行った後、前記新たなインナーロッドと前記新たなアウターケーシングを継ぎ足すにあたり、前記駆動機構と前記アウターケーシングの後端連結部とを分離させる工程と、前記拡径部が拡径した状態のままで前記インナーロッドを後退させて、前記アウターケーシングの後端連結部から前記インナーロッドの後端連結部を露出させる工程と、前記インナーロッドの後端連結部に新たなインナーロッドを継ぎ足すとともに前記アウターケーシングの後端連結部に新たなアウターケーシングを継ぎ足す工程と、前記新たなインナーロッドと前記駆動機構とを連結させるとともに当該新たなインナーロッドを前進させた後、前記新たなアウターケーシングと当該駆動機構とを連結させる工程と、を含む削孔方法でもある。
【発明の効果】
【0012】
上述した構成になる本発明の二重管削孔装置によれば、アウターケーシングから拡径部までの軸線方向距離が、駆動機構に連結した状態でのアウターケーシングの後端連結部からインナーロッドの後端連結部までの軸線方向距離よりも長く設定されているため、拡径部を縮径させずとも、元のインナーロッドを後退させてその後端連結部をアウターケーシングの後端連結部から露出させ、新たなインナーロッドを継ぎ足すことができる。すなわち、インナーロッドとアウターケーシングの継ぎ足しを行う際、拡径部を縮径させる必要がないため、作業に要する手間と時間を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る二重管削孔装置の一実施形態を模式的に示した図である。
図2図1に示した二重管削孔装置の部分拡大図である。
図3図1に示した二重管削孔装置による削孔方法に関する説明図である。
図4図3に引き続いて行われる削孔方法に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明に係る二重管削孔装置と、この二重管削孔装置による削孔方法の一実施形態について説明する。なお、図示した二重管削孔装置による掘削は、地盤に対して水平方向の削孔を設ける場合について示している。また以下の説明における前後方向とは、図示した軸線Cに沿う方向であって、「前」は削孔した際の奥側であり、「後」は削孔した際の入口側である。
【0015】
図1は、本発明に係る二重管削孔装置の一実施形態を模式的に示した図であり、図2図1に示した二重管削孔装置の部分拡大図である。本実施形態の二重管削孔装置1は、インナーロッド2と、ダウンザホールハンマー3と、アウターケーシング4と、駆動機構5を備えている。
【0016】
インナーロッド2は、図示したように長尺になる部材であって、本実施形態では中空状である。インナーロッド2の前端には、ダウンザホールハンマー3が取り付けられる。またインナーロッド2の後端には、本実施形態では雄ねじ状に形成されたインナーロッド後端連結部2aが設けられている。
【0017】
また図2に示すようにインナーロッド2の外周面には、径方向外側に向けて突出する突起部2bが設けられている。本実施形態の突起部2bは板状であって、インナーロッド2の外周面に対して周方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0018】
ダウンザホールハンマー3は、インナーロッド2の前端に連結するハンマー本体部3aと、ハンマー本体部3aの前端に設けられ、前側部分に複数のチップを有するパイロットビット3bを備えている。またハンマー本体部3aにおける前方外周面には、ハンマー本体部3aから径方向外側に突出し、前側部分に複数のチップを有する拡径ビット3cが設けられている。なお拡径ビット3cは、本明細書等の「拡径部」に相当する。拡径ビット3cは、図示したハンマー本体部3aの外周面から径方向外側に突出する拡径状態と、ハンマー本体部3aの外周面に揃う(又はハンマー本体部3aの外周面よりも内側に入り込む)縮径状態とに切り替え可能である。なお、拡径ビット3cを拡径状態又は縮径状態に切り替える手段に制限はなく、例えば油圧を用いた機構を採用してもよいし、ダウンザホールハンマー3の回転方向に応じて切り替わる機構を採用してもよい。
【0019】
ハンマー本体部3aは、その内部に不図示のピストンを備えていて、このピストンは、中空状になるインナーロッド2の内部空間に駆動機構5から送給される作動流体(例えば空気、水)によって前後動し、その際に打撃力を生じさせる。ピストンにより生じた打撃力は、パイロットビット3bと拡径ビット3cに伝達される。
【0020】
またハンマー本体部3aは、その外周面を凹ませて前後方向に延在する溝部3dを備えている。
【0021】
アウターケーシング4は、中空状であって、その内側にはインナーロッド2が挿入される。図示したようにアウターケーシング4とインナーロッド2との間には隙間Sが設けられている。なお、上述した突起部2bの径方向外側縁部は、図2に示すようにアウターケーシング4の内周面に近接する。また図1に示すようにアウターケーシング4の後端には、本実施形態では雌ねじ状に形成されたアウターケーシング後端連結部4aが設けられている。
【0022】
またアウターケーシング4は、その前端において、前方部分に複数のチップを有するリングビット4bを備えている。本実施形態のリングビット4bの内周面は、アウターケーシング4の内周面よりも径方向内側に突出している。
【0023】
駆動機構5は、本実施形態ではスイベルジョイント6を含んで構成されている。スイベルジョイント6は、前端に雄ねじ部が設けられたマスターカップリング6aと、マスターカップリング6aよりも前方に設けられ、前端に雌ねじ部が設けられたエクステンションロッド6bを備えている。エクステンションロッド6bの雌ねじ部は、雄ねじ状になるインナーロッド後端連結部2aに螺合可能である。またマスターカップリング6aの雄ねじ部は、雌ねじ状になるアウターケーシング後端連結部4aに螺合可能である。
【0024】
また駆動機構5は、上述した作動流体をスイベルジョイント6に供給する機能を有している。ここでスイベルジョイント6は、インナーロッド後端連結部2aとエクステンションロッド6bを連結させた状態で、中空状になるインナーロッド2に連通している。そして駆動機構5から作動流体を送給することにより、スイベルジョイント6とインナーロッド2を介してハンマー本体部3aに設けられたピストンを作動させ、パイロットビット3bと拡径ビット3cに打撃力が付与される。
【0025】
またスイベルジョイント6は、アウターケーシング後端連結部4aとマスターカップリング6aを連結させた状態で、アウターケーシング4とインナーロッド2との間の隙間Sに連通する不図示の排出口を備えている。後述するように隙間Sは、二重管削孔装置1で削孔を行った際のスライム(掘削した土砂や礫と掘削時に使用した水等の混合物)が流動する空間であって、隙間Sを流動したスライムは、排出口から二重管削孔装置1の外部に排出される。
【0026】
なお、図示したようにインナーロッド後端連結部2aとエクステンションロッド6bを連結させ、アウターケーシング後端連結部4aとマスターカップリング6aを連結させた状態において、ハンマー本体部3aは、前後方向においてリングビット4bと重なる位置にある。またこの状態において、ハンマー本体部3aの外周面は、リングビット4bの内周面に近接する。そしてこの状態において、溝部3dの後側部分は隙間Sに通じていて、溝部3dの前側部分は、リングビット4bよりも前方に位置する。なお、溝部3dの内側に形成される空間は、本明細書等の「排泥通路」に相当する。
【0027】
また、インナーロッド後端連結部2aとエクステンションロッド6bを連結させ、アウターケーシング後端連結部4aとマスターカップリング6aを連結させた状態において、リングビット4bから拡径ビット3cまでの軸線Cに沿う方向での距離L1は、アウターケーシング後端連結部4aからインナーロッド後端連結部2aまでの軸線Cに沿う方向での距離L2よりも長くなるように設定されている。
【0028】
そして駆動機構5は、図示は省略するが、スイベルジョイント6に対してシャンクロッドを介して連結するボーリングマシンを備えている。ボーリングマシンを駆動させると、スイベルジョイント6に連結するインナーロッド2とアウターケーシング4は、ともに軸線Cに沿う向きに振動し、またともに軸線Cを中心として回転する。またボーリングマシンによって、インナーロッド2とアウターケーシング4を前進又は後退させることができる。
【0029】
次に、このような構成になる二重管削孔装置1によって地盤を削孔する方法について、図3図4を参照しながら説明する。なお本実施形態の二重管削孔装置1は、地盤に対して垂直方向に削孔する場合にも使用可能であるが、特に斜め方向への削孔や以下で説明する水平方向への削孔に使用して好適である。
【0030】
図3(a)は、地盤Gに対する掘削を開始し、水平方向への削孔を行っている状態を示している。水平方向への削孔を行うにあたっては、図1に示すようにインナーロッド2の前端にダウンザホールハンマー3を取り付け、インナーロッド後端連結部2aとエクステンションロッド6bとを連結し、またアウターケーシング後端連結部4aとマスターカップリング6aを連結する。そして駆動機構5を動作させると、駆動機構5から供給される作動流体によってハンマー本体部3aに設けたピストンから打撃力が生じ、これによりパイロットビット3bと拡径ビット3cに打撃力が付与される。またスイベルジョイント6に連結するインナーロッド2とアウターケーシング4は、ともに軸線Cに沿う向きに振動するとともに軸線Cを中心として回転する。そしてこの状態でインナーロッド2とアウターケーシング4を水平方向に前進させることにより、図3(a)に示すように水平方向への削孔を行うことができる。
【0031】
ところで地盤Gに対して水平方向や斜め方向の削孔を行う場合は、重力の関係によって、垂直方向への削孔と比較して孔壁が崩壊しやすい状態にある。図1に示すように本実施形態の拡径ビット3cは、削孔を行う際、後述する理由により、アウターケーシング4の前端に設けたリングビット4bに対して軸線Cに沿う方向で距離L1の長さで離隔している。このため、削孔を行う地盤Gが崩壊性地山である場合、拡径ビット3cによって先行して削孔した孔壁がアウターケーシング4が到達する前に崩壊し、拡径ビット3cとアウターケーシング4の間に砂礫等が溜まることがある。すなわち溜まった砂礫等は、アウターケーシング4の前進を妨げるため、掘進能率の低下につながる。一方、本実施形態の二重管削孔装置1は、アウターケーシング4の前端にリングビット4bを備えていて、アウターケーシング4とともにリングビット4bも軸線Cに沿う向きに振動し、また軸線Cを中心として回転するため、アウターケーシング4の前方に砂礫等が溜まることがあっても、掘進能率を維持することができる。
【0032】
またダウンザホールハンマー3は、垂直方向への削孔を主とする従来のダウンザホールハンマーと比較して、比較的小口径であって軽量化されているものの、図示したようにアウターケーシング4から前方に向けて比較的長く突出しているため、水平方向や斜め方向の削孔を行う場合、重力によって下側に傾きやすい状態にある。そして仮にダウンザホールハンマー3が下側に傾いた状態で掘削を行うと、意図した方向よりも削孔する向きが傾いてしまうことになる。このため本実施形態では、図2に示すように、リングビット4bの内周面をアウターケーシング4の内周面よりも径方向内側に突出させるようにし、これによりリングビット4bの内周面をハンマー本体部3aの外周面に近接させるようにしている。すなわち、水平方向や斜め方向の削孔を行う際に重力によって下側に傾こうとするダウンザホールハンマー3を、リングビット4bで支持して傾きを抑えることができるため、意図した方向に削孔を行うことができる。
【0033】
更に本実施形態のインナーロッド2は、図2に示すように突起部2bを備えていて、突起部2bの径方向外側縁部は、アウターケーシング4の内周面に近接している。すなわち、水平方向や斜め方向の削孔を行う際のダウンザホールハンマー3の傾きを、突起部2bがアウターケーシング4に支持されることによって抑制することができる。従って、上記のリングビット4bによるハンマー本体部3aの支持と、アウターケーシング4による突起部2bの支持により、意図した方向への削孔をより確実に行うことができる。
【0034】
上述したように本実施形態のリングビット4bは、ハンマー本体部3aに近接しているため、削孔を行った際のスライムを排出させる際、ハンマー本体部3aとリングビット4bの間を通過させることは難しい。しかし、溝部3dの前側部分はリングビット4bよりも前方に位置していて、また、溝部3dの後側部分は、アウターケーシング4とインナーロッド2の間の隙間Sに通じている。従ってスライムは、溝部3dの前側部分からこの溝部3dの内側(排泥通路)を通って隙間Sに至り、更に隙間Sを流動して、スイベルジョイント6に設けた不図示の排出口から二重管削孔装置1の外部に排出される。なお、インナーロッド2の外周面には、上述した突起部2b(図2参照)が設けられているが、この突起部2bはインナーロッド2の外周面に対して周方向に間隔をあけて設けられているため、隙間Sは塞がれていない。従って、突起部2bによってスライムの流動が損なわれることはない。
【0035】
そして、所定の深さまで削孔を行ってインナーロッド2やアウターケーシング4の継ぎ足しが必要になった場合は、駆動機構5の動作を一旦停止する。なお、拡径ビット3cは拡径状態のままでよい。そして、アウターケーシング4を固定した状態でスイベルジョイント6を回転し、アウターケーシング後端連結部4aとマスターカップリング6aとの螺合を解除する。これにより、図3(b)に示すように、アウターケーシング4とスイベルジョイント6とを分離させることができる。
【0036】
次いで、図3(c)に示すように、拡径状態の拡径ビット3cがリングビット4bに引っ掛かる程度までスイベルジョイント6を後退させる。上述したように、図1の状態でのリングビット4bから拡径ビット3cまでの軸線Cに沿う方向での距離L1は、アウターケーシング後端連結部4aからインナーロッド後端連結部2aまでの軸線Cに沿う方向での距離L2よりも長くなるように設定されている。従って、図3(c)の状態までスイベルジョイント6を後退させると、インナーロッド後端連結部2aがアウターケーシング4から露出する。従って、インナーロッド2を固定した状態でスイベルジョイント6を回転し、インナーロッド後端連結部2aとエクステンションロッド6bとの螺合を解除して、インナーロッド2とスイベルジョイント6を分離することができる。
【0037】
しかる後は、図4(a)に示すように、新たなインナーロッド12を元のインナーロッド2に継ぎ足す作業を行う。本実施形態における新たなインナーロッド12は、雌ねじ状に形成されたインナーロッド前端連結部12aを備えていて、インナーロッド前端連結部12aは、雄ねじ状になるインナーロッド後端連結部2aに螺合可能である。従って、元のインナーロッド2を固定した状態で新たなインナーロッド12を回転させることにより、新たなインナーロッド12を元のインナーロッド2に継ぎ足すことができる。
【0038】
その後は、図4(a)に示すように、新たなアウターケーシング14を元のアウターケーシング4に継ぎ足す作業を行う。本実施形態における新たなアウターケーシング14は、雄ねじ状に形成されたアウターケーシング前端連結部14aを備えていて、雌ねじ状になるアウターケーシング後端連結部4aに螺合可能である。従って、元のアウターケーシング4を固定した状態で新たなアウターケーシング14を回転させることにより、新たなアウターケーシング14を元のアウターケーシング4に継ぎ足すことができる。
【0039】
上述した新たなインナーロッド12は、インナーロッド後端連結部2aと同形状になる雄ねじ状のインナーロッド後端連結部12bを備えていて、新たなアウターケーシング14は、アウターケーシング後端連結部4aと同形状になる雌ねじ状のアウターケーシング後端連結部14bを備えている。また、新たなインナーロッド12とアウターケーシング14は略同じ長さであって、元のインナーロッド2とアウターケーシング4に新たなインナーロッド12とアウターケーシング14を継ぎ足した際、インナーロッド後端連結部12bは、アウターケーシング後端連結部14bから露出する。
【0040】
次いで、図4(b)に示すように、新たなインナーロッド12を固定した状態でスイベルジョイント6を回転し、インナーロッド後端連結部12bとエクステンションロッド6bとを螺合させることにより両者を連結する。
【0041】
その後、スイベルジョイント6を前進させると、スイベルジョイント6に連結する新たなインナーロッド12とともに元のインナーロッド2も前進する。またスイベルジョイント6を前進させることにより、マスターカップリング6aがアウターケーシング後端連結部14bに近づくため、新たなアウターケーシング14を固定した状態でスイベルジョイント6を回転することにより、アウターケーシング後端連結部14bとマスターカップリング6aとを螺合させ両者を連結することができる。
【0042】
しかる後は、再び駆動機構5を動作させることにより、継ぎ足した新たなインナーロッド12とアウターケーシング14を使って更に深いところまで削孔を進めることができる。
【0043】
このように本実施形態の二重管削孔装置1によれば、新たなインナーロッド12とアウターケーシング14の継ぎ足し作業は、拡径ビット3cを拡径状態にしたまま行うことができるため、拡径ビット3cを縮径させる手間と時間を省くことができ、継ぎ足し作業を効率的に行うことができる。
【0044】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0045】
例えば上述した実施形態において、インナーロッド後端連結部2aは雄ねじ状であり、アウターケーシング後端連結部4aは雌ねじ状であったが、インナーロッド後端連結部2aは雌ねじ状でもよく、またアウターケーシング後端連結部4aは雄ねじ状でもよい。なお、雌ねじ状のインナーロッド後端連結部2aを用いる場合は、エクステンションロッド6bを雄ねじ状にすればよく、また雄ねじ状のアウターケーシング後端連結部4aを用いる場合は、マスターカップリング6aを雌ねじ状にすればよい。
【0046】
また、インナーロッド後端連結部2aとエクステンションロッド6bを連結する構造、及びアウターケーシング後端連結部4aとマスターカップリング6aを連結する構造は、上記のようなねじによるものに限られず、例えば一方に設けた穴に対して他方に設けた突起が挿入されることによって連結する構造でもよい。
【符号の説明】
【0047】
1:二重管削孔装置
2:インナーロッド
2a:インナーロッド後端連結部
2b:突起部
3:ダウンザホールハンマー
3a:ハンマー本体部
3b:パイロットビット
3c:拡径ビット(拡径部)
3d:溝部
4:アウターケーシング
4a:アウターケーシング後端連結部
4b:リングビット
5:駆動機構
6:スイベルジョイント
6a:マスターカップリング
6b:エクステンションロッド
12:新たなインナーロッド
12a:インナーロッド前端連結部
12b:インナーロッド後端連結部
14:新たなアウターケーシング
14a:アウターケーシング前端連結部
14b:アウターケーシング後端連結部
G:地盤
S:隙間
図1
図2
図3
図4