(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055120
(43)【公開日】2023-04-17
(54)【発明の名称】貨幣処理装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/26 20190101AFI20230410BHJP
G07D 11/10 20190101ALI20230410BHJP
G07D 1/00 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
G07D11/26
G07D11/10
G07D1/00 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164265
(22)【出願日】2021-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000116079
【氏名又は名称】ローレルバンクマシン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500267170
【氏名又は名称】ローレル機械株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500265501
【氏名又は名称】ローレル精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】福本 浩平
【テーマコード(参考)】
3E141
【Fターム(参考)】
3E141AA01
3E141AA08
3E141BA01
3E141CA07
3E141DA08
3E141FG03
3E141FG13
3E141FK01
3E141JA14
3E141LA23
(57)【要約】
【課題】機内の死角領域に存在する貨幣の見落としを抑制可能な貨幣処理装置を提供する。
【解決手段】硬貨処理機10は、下流側搬送ベルト22が第3の直線部18cに対して開く開度を検出可能な検出部47と、第3の直線部18cの死角領域BSに光を照射する照明部48と、下流側搬送ベルト22の開度に応じて光を照射するか否かを判定し、少なくとも下流側搬送ベルト29の開度が全開状態である場合には光を照射する制御部46と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部と、前記固定部に対して開閉可能に設けられ、開放されることにより操作者が前記固定部にアクセス可能となる開閉部と、を備えている貨幣処理装置であって、
前記開閉部が前記固定部に対して開く開度を検出可能な検出部と、
前記固定部の死角領域に光を照射する照明部と、
前記開閉部の開度に応じて前記光を照射するか否かを判定し、少なくとも前記開閉部の開度が前記開閉部が固定部から開放された全開状態である場合には前記光を照射する制御部と、
を備えていることを特徴とする貨幣処理装置。
【請求項2】
前記開度は、前記全開状態、前記開閉部が固定部に対して閉じた閉状態、又は前記閉状態から全開状態に至る開状態に区分され、
前記制御部は、前記閉状態、開状態又は全開状態の各開度において、それぞれ異なる態様の光を照射する又は前記光を照射しないことを判定することを特徴とする請求項1に記載の貨幣処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記全開状態の開度において、最も視認性が高い態様の光を照射させることを特徴とする請求項2に記載の貨幣処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨幣処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、貨幣処理装置として、搬送ベルトによって搬送される硬貨を識別し、単一金種の硬貨のみを予め指定された所定の指定枚数だけ払い出す硬貨処理機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、他の貨幣処理装置として、搬送部によって搬送される紙幣を識別し、識別された紙幣を紙幣収納カセットに繰り出し可能に収納する紙幣処理装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-87296号公報
【特許文献2】特開2021-51643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した硬貨処理機や紙幣処理装置では、ジャム等のエラーからの復旧作業時において、搬送ベルトや搬送部を開放し、目視により搬送経路を確認するところ、機内の死角領域に残留する貨幣を見落とし、違算が生じる虞があった。
【0006】
そこで、機内の死角領域に存在する貨幣の見落としを抑制するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る貨幣処理装置は、固定部と、前記固定部に対して開閉可能に設けられ、開放されることにより操作者が前記固定部にアクセス可能となる開閉部と、を備えている貨幣処理装置であって、前記開閉部が前記固定部に対して開く開度を検出可能な検出部と、前記固定部の死角領域に光を照射する照明部と、前記開閉部の開度に応じて前記光を照射するか否かを判定し、少なくとも前記開閉部の開度が前記開閉部が固定部から開放された全開状態である場合には前記光を照射する制御部と、を備えている。
【0008】
この構成によれば、照明部が、開閉部が固定部に対して開く開度に応じて死角領域に向けて光を照射することにより、ジャム等のエラーの復旧作業時に死角領域の視認性が向上し、貨幣の見落としを抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ジャム等のエラーの復旧作業時に死角領域の視認性が向上し、貨幣の見落としを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る第1の実施形態に係る硬貨処理機の構成を模式的に示す平面図。
【
図2】硬貨処理機の第3直線部を開放した際に、死角領域に対して光を照射する様子を示す状態を示す斜視図。
【
図3】本発明に係る第2の実施形態に係る紙幣処理装置の構成を模式的に示す断面図。
【
図4】紙幣処理装置の一部を引き出した際に、死角領域に対して光を照射する様子を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態に係る硬貨処理機10を図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0012】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0013】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0014】
図1に示すように、硬貨処理機10には、操作者によりバラの入金硬貨が投入される硬貨投入部11が設けられており、硬貨投入部11の下側には、硬貨投入部11に投入されたバラ硬貨を一枚ずつ繰り出す繰出機構12が設けられている。
【0015】
繰出機構12は、硬貨投入部11に投入されたバラ硬貨を受け入れるとともに鉛直軸回りに回転可能に設けられた回転円盤13と、この回転円盤13の側方にあって回転円盤13の回転により生じる遠心力によって外側に移動する硬貨を通過させることにより一枚ずつ分離して繰り出す分離部14と、回転円盤13を駆動する図示略の繰出モータとを備えている。
【0016】
分離部14の側方には、分離部14から繰り出される硬貨を両側の一段高いガイド壁15、16の間の通路面17で案内する硬貨通路18が水平に配置されている。ガイド壁15、16の間隔、即ち通路面17の幅は、繰出機構12から繰り出された硬貨を繰り出された順番に並べて移送可能な幅となっている。
【0017】
硬貨通路18は、分離部14に接続されて回転円盤13の略接線方向に延出する第1の直線部18aと、第1の直線部18aの分離部14とは反対側から第1の直線部18aに対して略直交方向に延出する第2の直線部18bと、第2の直線部18bの第1の直線部18aとは反対側から第2の直線部18bに対し略直交方向に延出する第3の直線部18cと、を備えている。
【0018】
硬貨通路18の上方には、繰出機構12から硬貨通路18内へ繰り出された硬貨を上方より押圧しながら硬貨通路18に沿って搬送する搬送機構19が設けられている。搬送機構19は、回転円盤13から繰り出された硬貨を第1の直線部18aの上流側で搬送する平面視直線状の導入側ベルト20と、導入側ベルト20から送出された硬貨を、第1の直線部18a、第2の直線部18b及び第3の直線部18cの第2の直線部18b側の一部の順に搬送する平面視コ字状の上流側搬送ベルト21と、上流側搬送ベルト21から硬貨を受け取って第3の直線部18cの第2の直線部18bとは反対側の残りの一部で搬送する平面視直線状の下流側搬送ベルト22と、を備えている。
【0019】
導入側ベルト20は、ゴム等の弾性を有する高摩擦部材からなる無端状のもので、一対のプーリ23、24で両端部が保持されている。下流側のプーリ24は、導入側駆動モータ25の駆動軸26に固定されており、導入側ベルト20は、導入側駆動モータ25で駆動されて回転する。なお、上流側のプーリ23が導入側駆動モータ25の駆動軸26に固定されていても構わない。
【0020】
上流側搬送ベルト21は、ゴム等の弾性を有する高摩擦部材からなる無端状のもので、一対のプーリ27、28で両端部が保持されるとともに二カ所の屈曲部がそれぞれ上下のプーリ29、30で保持されている。
【0021】
下流側搬送ベルト22も、上流側搬送ベルト21と同様に高摩擦部材からなる無端状のもので、一対のプーリ31、32で両端部が保持されている。なお、上流側搬送ベルト21の下流側のプーリ28と下流側搬送ベルト22の上流側のプーリ31とは、同軸に固定されている。そして、下流側のプーリ32が、搬送駆動モータ33の駆動軸34に固定されており、上流側搬送ベルト21及び下流側搬送ベルト22は、搬送駆動モータ33で駆動されて同期回転する。なお、他のプーリ27、28、31の何れかが搬送駆動モータ33の駆動軸34に固定されても構わない。
【0022】
このようにして、導入側ベルト20、上流側搬送ベルト21及び下流側搬送ベルト22に加えて、プーリ23、24、導入側駆動モータ25、プーリ27~32及び搬送駆動モータ33によって搬送機構19が構成されている。
【0023】
繰出機構12、硬貨通路18及び搬送機構19は、硬貨投入部11に投入された硬貨を一枚ずつ分離して繰り出し搬送する繰出搬送部35を構成している。
【0024】
第1の直線部18aの通路面17には、硬貨検知センサ36と、硬貨識別部37とが設けられている。硬貨検知センサ36は、繰出機構12の近傍であって搬送方向における導入側ベルト20の位置に設けられ、通路面17上を移動する硬貨の通過を検出する。硬貨検知センサ36は、例えば光学式のセンサであり、通路面17上を移動する硬貨の通過を検出することによって、通過する硬貨の数を計数可能なカウントセンサとなっている。
【0025】
硬貨識別部37は、第1の直線部18aの搬送方向における上流側搬送ベルト21の位置に設けられ、上流側搬送ベルト21によって硬貨通路18内を搬送される硬貨の画像(あるいは材質)を検出することによって、硬貨の真偽及び金種を識別するとともに計数するCCDカメラ等を含む。
【0026】
第2の直線部18bには、搬送方向における上流側搬送ベルト21の位置に、上流側搬送ベルト21によって硬貨通路18内を搬送される硬貨を、硬貨識別部37の識別結果等に基づいて選別する上流側硬貨選別部38が設けられている。上流側硬貨選別部38は、取出選別部39と、取出選別部39よりも下流側にあるリジェクト選別部40と、を備えている。
【0027】
取出選別部39は、指定された単一金種の硬貨を計数して指定枚数取り出す計数モードの実行時に、この計数対象の単一金種の硬貨を指定枚数まで硬貨通路18から排除し、また、金種混合の硬貨を金種別に計数し分類して収納する収納モードの実行時には硬貨を硬貨通路18から排除しない。
【0028】
取出選別部39は、通路面17を貫通するように形成された選別孔39aと、選別孔39aを開閉するシャッタ39bと、シャッタ39bを開閉駆動するソレノイド39cと、を備えている。シャッタ39bが開作動されることにより、硬貨を選別孔39aから落下させる。選別孔39aは、図示略のシュートを介して、機外に臨む位置に設けられた図示略の取出口に連通しており、落下した硬貨を機外に取出可能となるように取出口に案内する。
【0029】
リジェクト選別部40は、計数モードの実行時に、識別不能硬貨を含む計数対象以外の硬貨及び指定枚数を超える計数対象の金種の硬貨を硬貨通路18から排除し、また収納モードの実行時に識別不能硬貨を硬貨通路18から排除する。
【0030】
リジェクト選別部40は、硬貨通路18の通路面17を貫通するように形成された選別孔40aと、選別孔40aを開閉するシャッタ40bと、シャッタ40bを開閉駆動するソレノイド40cと、を備えている。シャッタ40bが開作動されることにより、硬貨を選別孔40aから落下させる。選別孔40aは、図示略のシュートを介して、機外に臨む位置に設けられたリジェクト口に連通しており、落下した硬貨を機外に取出可能となるようにリジェクト口に案内する。
【0031】
第2の直線部18bの通路面17において取出選別部39の上流側位置には、硬貨を検知する硬貨検知センサ41が設けられている。硬貨検知センサ41は、例えば光学式のセンサであって、検出した硬貨を落下させる際にソレノイド39cの駆動タイミングを計る。さらに、硬貨検知センサ41は、上流側搬送ベルト21の駆動によって通路面17上を移動する硬貨の通過を検出することにより、通過する硬貨の数を計数可能である。
【0032】
第2の直線部18bの通路面17において取出選別部39とリジェクト選別部40との間位置には、硬貨を検知する硬貨検知センサ42が設けられている。硬貨検知センサ42は、例えば光学式のセンサであって、検出した硬貨を落下させる際にソレノイド40cの駆動タイミングを計る。さらに、硬貨検知センサ42は、上流側搬送ベルト21の駆動によって通路面17上を移動する硬貨の通過を検出することによって、通過する硬貨の数を計数可能である。すなわち、硬貨検知センサ42は、取出選別部39とリジェクト選別部40との間で硬貨を計数可能となっている。
【0033】
第3の直線部18cには、収納モードにおいて、硬貨識別部37において識別された硬貨を金種毎に選別する金種選別部43が設けられている。金種選別部43は、上流側搬送ベルト21及び下流側搬送ベルト22によって搬送される硬貨を金種別に選別して落下させる、金種数と同数の選別孔44a~44fを有している。
【0034】
選別孔44a~44fは、硬貨径の小さいものから順に硬貨を落下させるように配置されている。即ち、最小幅の選別孔44aが1円硬貨を、これよりも幅の広い選別孔44bが50円硬貨を、これよりも幅の広い選別孔44cが5円硬貨を、これよりも幅の広い選別孔44dが100円硬貨を、これよりも幅の広い選別孔44eが10円硬貨を、これよりも幅の広い選別孔44fが500円硬貨をそれぞれ落下させる。選別孔44a~44fで選別された硬貨は、図示略の収納部に金種毎に収納される。なお、選別孔44a~44fの各直前位置には硬貨検知センサ45a~45fがそれぞれ対応して配置され、硬貨検知センサのうち隣り合う前後のものをそれぞれ通過した硬貨数の差が、選別孔44a~44fのうち、その間に位置するものに選別された枚数として計数されるように構成されている。
【0035】
硬貨処理機10の動作は、制御部46を介して制御される。制御部46は、硬貨処理機10を構成する構成要素をそれぞれ制御するものである。
【0036】
ところで、ジャム等のエラーが発生した場合には、操作者が、開閉部としての搬送機構19を開放して固定部としての硬貨通路18に残留する硬貨の有無を目視で確認するが、硬貨処理機10の機内では死角領域BSに残留する硬貨を見落とす虞がある。ここで、「固定部」とは、開閉部が開閉する際の基準となる構成要素であり、その位置が絶対的に固定されたものを意味するものではない。また、「死角領域BS」とは、開閉部の陰に隠れる等により操作者が目視で確認し難い領域を意味する。
【0037】
図2には、下流側搬送ベルト22が搬送駆動モータ33の駆動軸34回りに持ち上げられるように開放されることにより、操作者が第3の直線部18cにアクセス可能な状態が図示されている。
図2においては、第3の直線部18cと全開状態の下流側搬送ベルト22との間で十分なスペースが確保できずに陰となる選別孔44fの周辺が「死角領域BS」に相当する。
【0038】
上述した死角領域BSでの硬貨の見落としを防止するために、
図1に示すように、硬貨処理機10は、第3の直線部18cに対する下流側搬送ベルト22の開度を検出可能な検出部47と、死角領域BSに向けて光を照射する照明部48と、を備えている。
【0039】
検出部47は、第3の直線部18cに対して下流側搬送ベルト22が開く開度を検出する。検出部47には、例えば、下流側搬送ベルト22に取り付けられて開角度を測定するフォトインタラプタ、又は、硬貨処理機10のカバー等に取り付けられて、下流側搬送ベルト22が開いたことを検出する近接センサ等が考えられる。
【0040】
検出部47が検出する開度は、開閉の2段階に限らず。例えば3段階に設定されるのが好ましい。3段階の開度とは、
図2に示すように、下流側搬送ベルト22が第3の直線部18cに重なって閉じた状態である閉状態、下流側搬送ベルト22が第3の直線部18cから開放された状態である全開状態、又は閉状態から全開状態に至る開状態の3段階に区分される。なお、「全開状態」とは、死角領域BSの視認性を確保可能な程度に下流側搬送ベルト22が第3の直線部18cから開放されている状態を意味し、例えば、側方から視て、第3の直線部18cと下流側搬送ベルト22とが成す開角度が約70度より大きいとき等、又は、所定の開角度まで開放された下流側搬送ベルト22が自重で閉じないようにロックする機構が存在する場合に、そのロック機構が作動したときを意味する。
【0041】
照明部48は、例えば、LEDチップやCOB(Chip On Board)LED等の面状に発光する照明が好ましいが、これらに限定されるものではない。照明部48は、例えば回転円盤13の下部に配置されているが、死角領域BSに光を照射可能な位置であれば如何なる場所に設けられても構わない。また、照明部48は、光の照射範囲を調整するために向きを調整可能な回転機構や揺動機構を備えているのが好ましい。
【0042】
また、照明部48は、例えば、磁石や面ファスナー等により、硬貨処理機10に着脱自在に取り付けられるのが好ましい。これにより、硬貨処理機10内の全ての死角領域BSの近傍に固定式の照明部48を設ける代わりに、着脱式の照明部48を任意の死角領域BSの近傍に設けることにより、照明部48の設置個数を減らすことができる。また、着脱式の照明部48は、取り外した状態で常時点灯させることにより、死角領域BSを照らすハンディライトとしても使用可能である。
【0043】
制御部46は、検出部47が検出した閉状態、開状態又は全開状態の各開度において、それぞれ異なる態様の光を照射する又は光を照射しないことを判定する。ここで、「光の態様」とは、照明部48が照射する光の色又は照明部48が光を点灯又は点滅させる場合の発光時間等である。
【0044】
制御部46は、全開状態の開度において、最も視認性が高い態様の光を照射させるのが好ましい。例えば、制御部46は、照明部48の光を、全開状態で点灯、開状態で点滅又は消灯、閉状態で消灯するように制御する。または、制御部46は、照明部48の光色を、全開状態で白等の明度の高い視認性の高い色、開状態で赤色や橙色等の明度の低い警告色、閉状態で消灯するように制御しても構わない。このようにして、閉状態、開状態及び全開状態において異なる態様の光を照射する又は消灯を切り換えることにより、操作者が下流側搬送ベルト22の開度を把握することができる。
【0045】
このようにして、本実施形態に係る硬貨処理機10は、第3の直線部18cと、第3の直線部18cに対して開閉可能に設けられ、開放されることにより操作者が第3の直線部18cにアクセス可能となる下流側搬送ベルト22と、を備えている硬貨処理機10であって、下流側搬送ベルト22が第3の直線部18cに対して開く開度を検出可能な検出部47と、第3の直線部18cの死角領域BSに光を照射する照明部48と、下流側搬送ベルト22の開度に応じて光を照射するか否かを判定し、少なくとも下流側搬送ベルト22の開度が全開状態である場合には光を照射する制御部46と、を備えている構成とした。
【0046】
このような構成により、照明部48が、下流側搬送ベルト22が第3の直線部18cに対して開く開度に応じて、死角領域BSに向けて光を照射することにより、ジャム等のエラーの復旧作業時に死角領域BSの視認性が向上し、硬貨の見落としを抑制することができる。
【0047】
また、硬貨処理機10は、開度が、全開状態、下流側搬送ベルト22が第3の直線部18cに対して閉じた閉状態、又は閉状態から全開状態に至る開状態に区分され、制御部46は、閉状態、開状態又は全開状態の各開度において、それぞれ異なる態様の光を照射する又は光を照射しないことを判定する構成とした。
【0048】
このような構成により、照明部48が、3段階の開度に応じて異なる態様の光を照射する又は光を照射しないことにより、操作者が下流側搬送ベルト22の開度を把握することができるとともに下流側搬送ベルト22を全開状態まで開放するように促されるため、死角領域BSの視認性が高い状態で復旧作業を行い、硬貨の見落としをさらに抑制することができる。
【0049】
また、硬貨処理機10は、制御部46が、全開状態の開度において、最も視認性が高い態様の光を照射させる構成とした。
【0050】
このような構成により、復旧作業時に第3の直線部18cの死角領域BSの視認性が向上するため、硬貨の見落としをさらに抑制することができる。
【0051】
<第2の実施形態>
【0052】
次に、本発明に係る第2の実施形態である紙幣処理機50を図面に基づいて説明する。本実施形態の紙幣処理機50は、紙幣についての入出金処理等を行うものである。以下では、バラ紙幣を単に紙幣と称し、紙幣を所定の結束単位枚数(100枚)で結束した紙幣を束紙幣と称す。
【0053】
図3に示すように、本実施形態の紙幣処理機50は、その機体51の前面側の上部に入金口52及び出金口53が設けられている。出金口53は、入金口52の上側に設けられている。
【0054】
入金口52は、開閉可能な図示略のシャッタを有しており、シャッタが開状態とされて機外から紙幣が投入され、その後、シャッタが閉じられて紙幣を機内に繰り出す。入金口52には、機体前面側から見て紙幣が左右方向に長手方向を沿わせた姿勢で下から上に集積されて載置されることになり、下部に、入金口52上に集積された紙幣を下端のものから一枚ずつ分離し所定の間隔をあけて機内へ繰り出す入金繰出部54が設けられている。紙幣は、紙幣処理機50内で、基本的にその短手方向を搬送方向に沿わせた姿勢で搬送される。
【0055】
入金口52から紙幣を繰り出す入金繰出部54は、入金口52に集積された紙幣のうちの最も下側の紙幣の短手方向の中間部に当接して、これを機内側に蹴り出す蹴出ローラ54aと、蹴出ローラ54aで蹴り出された紙幣を機内に繰り出す繰出ローラ54bと、繰出ローラ54bに対し停止することで、繰出ローラ54bが機内に繰り出す紙幣を一枚ずつに分離する分離ローラ54cと、を備えている。入金繰出部54の直後位置には、入金繰出部54から繰り出された紙幣に、複数枚重なった状態の重送、搬送方向に対し斜めの姿勢となる斜行、あるいは隣り合う紙幣同士の搬送間隔が狭いニアフィード等の搬送異常があるか否かと、半券等の形状異常があるか否かを光学的に検出する入口センサ55が設けられている。
【0056】
出金口53は、開閉可能な図示略のシャッタを有しており、シャッタが閉状態とされて機内から出金用の紙幣が繰り出され、その後、シャッタが開かれることで紙幣が機外に取り出される。換言すれば、出金口53は、紙幣を機外に取り出し可能とする。出金口53は、機内から繰り出された紙幣が、機体前面側から見て左右方向に長手方向を沿わせた姿勢で下から上に集積されて載置されることになる。出金口53は、シャッタが閉じられた状態で、紙幣を貯留可能であり、貯留している紙幣を機内に繰り出し可能となっている。
【0057】
紙幣処理機50の後部には、入金口52から繰り出された紙幣の真偽と、真紙幣の金種と、重送、斜行あるいはニアフィード等の搬送異常の有無等を識別する識別部56が設けられている。識別部56は、紙幣の表裏、上下(天地)及び左右等も識別する。
【0058】
入金口52及び出金口53の後方には、紙幣を整列させて所定の結束単位枚数ずつ集積させる複数、具体的には2カ所の整列部57、58が設けられている。また、これらの整列部57、58の後方には、整列部57、58で集積された結束単位枚数の紙幣を上方に搬送する昇降搬送部59が設けられている。整列部57、58の上方には、整列部57、58で集積され昇降搬送部59で搬送されてきた結束単位枚数の紙幣に結束テープを巻き回して束紙幣とする結束部60が設けられている。
【0059】
結束部60の前側には、結束部60で作成された束紙幣を機外に取り出し可能に繰り出す束出金部61が設けられている。束出金部61も開閉可能な図示略のシャッタを有しており、シャッタが閉状態とされて機内から束紙幣が繰り出され、その後、シャッタが開かれることで束紙幣が機外に取り出される。結束部60の側方には、結束部60で結束された束紙幣を収納する図示略の束収納部が設けられている。
【0060】
紙幣処理機50の下部には、複数、具体的には4個の同様の構造の収納庫62が、上下左右の位置を合わせて前後に並べられている。これら収納庫62は、紙幣を一時貯留可能であって一時貯留している紙幣を繰り出し可能であり、紙幣を収納可能であって収納している紙幣を繰り出し可能である。これら収納庫62は、機体51から取り外し不可であり、機体51から一体に引き出し可能となっている。
【0061】
紙幣処理機50において、最も奥側に配置された収納庫62A、奥から2番目に配置された収納庫62B及び奥から3番目に配置された収納庫62Cは、何れも所定の単一金種の汚損のない紙幣を下から上に集積させた状態で繰り出し可能となるように収納するものである。奥から4番目に配置された収納庫62Dは、所定のその他の紙幣を下から上に集積させた状態で繰り出し可能となるように収納するものである。
【0062】
収納庫62Aは、紙幣処理機50に受け入れ可能な受入可能紙幣のうち、所定の第1種の紙幣(例えば現行万円券の汚損のない正常紙幣)を、収納庫62Bは、所定の第2種の紙幣(例えば現行五千円券の汚損のない正常紙幣)を、収納庫62Cは、所定の第3種の紙幣(例えば現行千円券の汚損のない正常紙幣)を、収納庫62Dは、第1~第3種以外の第4種の紙幣(例えば、すべての二千円券、現行万円券の汚損のある汚損紙幣、すべての旧万円券、現行五千円券の汚損のある汚損紙幣、すべての旧五千円券、現行千円券の汚損のある汚損紙幣、及びすべての旧千円券)を、それぞれ繰り出し可能に収納する。すなわち、紙幣処理機50は、単一金種の現行の汚損のない正常紙幣用の収納庫62A~62Cを複数個、金種別に備えている。なお、収納庫62は、紙幣を分類して収納できるように複数個設けられていれば良く、収納パターンは、上記に限らない。
【0063】
収納庫62A~62Dのそれぞれの上部には、それぞれの内部に紙幣を取り込んで下から上に集積させるとともに内部の紙幣を最上のものから一枚ずつ分離して所定の間隔をあけて繰り出す取込繰出部63が設けられている。収納庫62A~62Dのそれぞれには、紙幣を収容する内部空間を上下に仕切る昇降可能かつ開閉可能なセパレータ64(底部)と、内部空間内を昇降するエレベータ65と、が設けられている。
【0064】
取込繰出部63は、セパレータ64上あるいはエレベータ65上に集積された紙幣のうちの最上位置の紙幣の短手方向の中間部に当接して、これを収納庫62外に向け蹴り出す蹴出ローラ63aと、蹴出ローラ63aで蹴り出された紙幣を収納庫62外に繰り出す繰出ローラ63bと、繰出ローラ63bに対し停止することで、繰出ローラ63bが収納庫62外に繰り出す紙幣を一枚ずつに分離する分離ローラ63cとを備えている。繰出ローラ63bは、この繰り出し時とは逆向きに回転することで、連れ回りする分離ローラ63cとで紙幣を挟持して収納庫62内に取り込む。
【0065】
セパレータ64は、同一高さで水平に配置された一対の昇降支軸64aと、一対の板状のセパレータ本体64bとを備えている。一方のセパレータ本体64bは、一方の昇降支軸64aに支持されており、この昇降支軸64aを中心に回転可能となっている。他方のセパレータ本体64bは、他方の昇降支軸64aに支持されており、この昇降支軸64aを中心に回転可能となっている。セパレータ64は、閉状態にあるとき、一方のセパレータ本体64bが、一方の昇降支軸64aから他方の昇降支軸64aに向けて水平に延出し、他方のセパレータ本体64bが、他方の昇降支軸64aから一方の昇降支軸64aに向けて水平に延出する。
【0066】
セパレータ64は、開状態にあるとき、一方のセパレータ本体64bが閉状態に対して90度回転して一方の昇降支軸64aから鉛直下方に延出することになり、他方のセパレータ本体64bが閉状態に対して90度回転して他方の昇降支軸64aから鉛直下方に延出することになる。セパレータ64は、一対の昇降支軸64aが常に高さを合わせて昇降することになり、一対のセパレータ本体64bは同期して開作動し、同期して閉作動する。収納庫62A~64Dの各セパレータ64は、個別の駆動機構で駆動されることになり、単独で昇降及び開閉が制御される。
【0067】
セパレータ64は、閉状態にあるとき、これが設けられた収納庫62を、セパレータ64を含むセパレータ64から上側の一時貯留部66と、セパレータ64よりも下側の収納部67とに区画する。換言すれば、収納庫62は、セパレータ64によって、一時貯留エリアである一時貯留部66と、その直下の収納エリアである収納部67とに区分されている。
【0068】
セパレータ64は、閉状態にあるとき、一時貯留部66の底部を構成することになり、取込繰出部63が取り込んだ紙幣を載置させ、下から上へと集積させる。その際に、セパレータ64は、取込繰出部63が取り込んだ紙幣の量に応じて下降する。また、セパレータ64は、載置させた紙幣の最上位置の紙幣を、上昇して取込繰出部63の蹴出ローラ63aに当接させる。この状態で、取込繰出部63が紙幣を一枚ずつ分離して一時貯留部66から繰り出す。その際に、セパレータ64は、取込繰出部63が繰り出した紙幣の量に応じて上昇する。
【0069】
セパレータ64が開状態にあるとき、このセパレータ64が設けられた収納庫62の一時貯留部66と収納部67とが連続する状態になる。この状態で、取込繰出部63が取り込んだ紙幣を、エレベータ65が載置させ、下から上へと集積させる。その際に、エレベータ65は、取込繰出部63が取り込んだ紙幣を、その上あるいはその上の紙幣上に受け入れる受入位置まで一旦上昇し、その後、取込繰出部63が取り込んだ紙幣の量に応じて下降する。
【0070】
よって、収納庫62Aは、セパレータ64が開状態にあるとき、取込繰出部63が取り込んだ紙幣を、連続する一時貯留部66と収納部67とに、一時貯留部66において受け入れてエレベータ65上に集積させる。その後、エレベータ65が下降してエレベータ65上の紙幣が収納部67に至ってからセパレータ64が閉じられると、収納庫62Aは、収納部67が紙幣を収納する状態になる。
【0071】
同様に、収納庫62Bは、セパレータ64が開状態にあるとき、取込繰出部63が取り込んだ紙幣を、連続する一時貯留部66と収納部67とに、一時貯留部66において受け入れてエレベータ65上に集積させる。その後、エレベータ65が下降してエレベータ65上の紙幣が収納部67に至ってからセパレータ64が閉じられると、収納庫62Bは、収納部67が紙幣を収納する状態になる。
【0072】
同様に、収納庫62Cは、セパレータ64が開状態にあるとき、取込繰出部63が取り込んだ紙幣を、連続する一時貯留部66と収納部67とに、一時貯留部66において受け入れてエレベータ65上に集積させる。その後、エレベータ65が下降してエレベータ65上の紙幣が収納部67に至ってからセパレータ64が閉じられると、収納庫62Cは、収納部67が紙幣を収納する状態になる。
【0073】
同様に、収納庫62Dは、セパレータ64が開状態にあるとき、取込繰出部63が取り込んだ紙幣を、連続する一時貯留部66と収納部67とに、一時貯留部66において受け入れてエレベータ65上に集積させる。その後、エレベータ65が下降してエレベータ65上の紙幣が収納部67に至ってからセパレータ64が閉じられると、収納庫62Dは、収納部67が紙幣を収納する状態になる。
【0074】
セパレータ64が開状態にあって、このセパレータ64が設けられた収納庫62の一時貯留部66と収納部67とが連続する状態で、この収納部67のエレベータ65が上昇すると、このエレベータ65は、載置させた紙幣のうちの最上位置の紙幣を取込繰出部63の蹴出ローラ14aに当接させる。この状態で、取込繰出部63が、紙幣を一枚ずつ分離して、連続する一時貯留部66及び収納部67から、一時貯留部66において繰り出す。その際に、エレベータ65は、取込繰出部63から繰り出された紙幣の量に応じて上昇する。収納庫62A~62Dのそれぞれのエレベータ65は、個別の駆動機構で駆動されることになり、単独で昇降が制御される。
【0075】
収納庫62A~62Dは、それぞれ、エレベータ65を最下の待機位置に位置させ、エレベータ65上の紙幣をセパレータ64よりも下側に位置させて、セパレータ64を閉じ、セパレータ64を上部の所定の待機位置に位置させて、取込繰出部63が取り込んだ紙幣をセパレータ64上に集積開始可能な状態が、待機状態となっている。よって、収納庫62A~62Dは、それぞれ、待機状態にあるとき、一時貯留部66が空となっている。収納庫62A~62Dの待機状態は、貯留紙幣を一時貯留部66に受け入れる貯留受入状態である。
【0076】
また、複数の収納庫62A~62Dは、それぞれ、エレベータ65を最下の待機位置に位置させ、セパレータ64を閉じ、セパレータ64上の最上位置の紙幣を取込繰出部63の蹴出ローラ63aに当接させる状態が、一時貯留部66のセパレータ64上に載置されている紙幣を繰り出す貯留紙幣繰出状態となっている。
【0077】
また、複数の収納庫62A~62Dは、それぞれ、セパレータ64を開き、エレベータ65上、あるいはエレベータ65上の最上位置の紙幣の上に、取込繰出部63が取り込んだ紙幣を集積させる状態が、連続する一時貯留部66及び収納部67に紙幣を受け入れる直収納受入状態となっている。複数の収納庫62A~62Dは、それぞれ、セパレータ64を開状態としてエレベータ65上に紙幣を受け入れた後、エレベータ65を下降させて、エレベータ65上の紙幣がすべて、開状態のセパレータ64よりも下側に位置すると、セパレータ64を閉じる。この状態で、紙幣が収納部67に収納される。複数の収納庫62A~62Dのそれぞれの収納部67は、上方の、セパレータ64が開かれた状態の一時貯留部66を介して紙幣を受け入れて収納する。
【0078】
また、複数の収納庫62A~62Dは、それぞれ、それまで一時貯留部66のセパレータ64上に貯留されていてセパレータ64の開作動で落下させられる紙幣を、エレベータ65上、あるいはエレベータ65上の最上位置の紙幣の上に集積可能な状態が、一時貯留部66のセパレータ64上に載置されている紙幣を収納部67のエレベータ65上に受け入れる貯留収納受入状態となっている。
【0079】
また、複数の収納庫62A~62Dは、それぞれ、セパレータ64を開き、エレベータ65上の最上位置の紙幣を取込繰出部63の蹴出ローラ63aに当接させる状態が、収納部67に収納していた紙幣を一時貯留部66を介して繰り出す収納紙幣繰出状態となっている。
【0080】
以上により、複数の収納庫62A~62Dの各収納部67の上方には、底部であるセパレータ64が開閉可能であって紙幣を繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部66が設けられている。また、複数の収納庫62A~62Dのそれぞれの収納部67は、それぞれ、セパレータ64が開状態の上方の一時貯留部66を介して紙幣を受け入れて収納することになる。換言すれば、複数の収納庫62A~62Dのそれぞれの収納部67は、上方の、底部であるセパレータ64が開かれた状態の一時貯留部66を介して紙幣を受け入れて収納することになる。
【0081】
収納庫62A~62Dは、一体で機体51から側方に引き出し可能であり、機体51から一体に引き出された状態で、一時貯留部66が開閉可能となっている。収納庫62A~62Dは、それぞれ、一時貯留部66が開かれることで、一時貯留部66に一時貯留している紙幣が外部に取り出し可能となる。なお、収納庫62A~62Dは、一時貯留部66が開かれても、そのセパレータ64が閉じられた状態にあれば、このセパレータ64よりも下方の収納部67に収納されている紙幣は、一時貯留部66側からは、取り出し不可となっている。
【0082】
紙幣処理機50の下部には、収納庫62Dの前側に、入金処理時に紙幣処理機50に受け入れ可能な受入可能紙幣を金種混合で一時貯留する一括一時貯留部としてのカセット68が設けられている。カセット68は、機体51から取り外し可能であって回収処理時に金種別の収納部67から繰り出された紙幣を取り込んで収納するとともに、補充処理時に補充用の紙幣が機外で装填され、装填された紙幣を繰り出す。カセット68は、金種別の収納庫62A~62Dと上下左右の位置を合わせて前後に並んでいる。カセット68は、紙幣の収納容量が、収納庫62A~62Dのそれぞれの収納容量よりも大きくなっている。
【0083】
カセット68は、紙幣を金種混合で下から上に集積させた状態で一時貯留するとともに、一時貯留している紙幣を後に繰り出し可能となるように収納するものであり、その上部には、内部に紙幣を取り込むとともに内部の紙幣を最上位置のものから一枚ずつ分離して所定の間隔をあけて繰り出す取込繰出部69が設けられている。カセット68には、紙幣を収容する内部空間を上下に仕切る昇降可能かつ開閉可能なセパレータ70(底部)と、内部空間内を昇降するエレベータ71とが設けられている。
【0084】
取込繰出部69は、セパレータ70上あるいはエレベータ71上に集積された紙幣のうちの最上位置の紙幣の短手方向の中間部に当接して、これをカセット68外に向けて蹴り出す蹴出ローラ69aと、蹴出ローラ69aで蹴り出された紙幣をカセット68外に繰り出す繰出ローラ69bと、繰出ローラ69bに対し停止することで、繰出ローラ69bがカセット68外に繰り出す紙幣を一枚ずつに分離する分離ローラ69cとを備えている。繰出ローラ69bは、この繰り出し時とは逆向きに回転することで、連れ回りする分離ローラ69cとで紙幣を挟持してカセット68内に取り込む。
【0085】
セパレータ70は、同一高さで水平に配置された一対の昇降支軸70aと、一対の板状のセパレータ本体70bとを備えている。一方のセパレータ本体70bは、一方の昇降支軸70aに支持されており、この昇降支軸70aを中心に回転可能となっている。他方のセパレータ本体70bは、他方の昇降支軸70aに支持されており、この昇降支軸70aを中心に回転可能となっている。セパレータ70は、閉状態にあるとき、一方のセパレータ本体70bが一方の昇降支軸70aから他方の昇降支軸70aに向けて水平に延出し、他方のセパレータ本体70bが他方の昇降支軸70aから一方の昇降支軸70aに向けて水平に延出する。
【0086】
セパレータ70は、開状態にあるとき、一方のセパレータ本体70bが閉状態に対して90度回転して一方の昇降支軸70aから鉛直下方に延出することになり、他方のセパレータ本体70bが閉状態に対して90度回転して他方の昇降支軸70aから鉛直下方に延出することになる。セパレータ70は、一対の昇降支軸70aが常に高さを合わせて昇降することになり、一対のセパレータ本体70bは同期して開作動し、同期して閉作動する。カセット68のセパレータ70は、収納庫62A~62Dのそれぞれのセパレータ64とは別の駆動機構で駆動されることになり、単独で昇降及び開閉が制御される。
【0087】
セパレータ70は、閉状態にあるとき、カセット68を、セパレータ70を含むセパレータ70から上側の一時貯留部72と、セパレータ70よりも下側の収納部73とに区画する。換言すれば、カセット68は、セパレータ70によって、一時貯留エリアである一時貯留部72と、その直下の収納エリアである収納部73とに区分されている。
【0088】
セパレータ70は、閉状態にあるとき、一時貯留部72の底部を構成することになり、取込繰出部69が取り込んだ紙幣を載置させ、下から上へと集積させる。その際に、セパレータ70は、取込繰出部69が取り込んだ紙幣の量に応じて下降する。また、セパレータ70は、載置させた紙幣の最上位置の紙幣を、上昇して取込繰出部69の蹴出ローラ69aに当接させる。この状態で、取込繰出部69が紙幣を一枚ずつ分離して一時貯留部72から繰り出す。その際に、セパレータ70は、取込繰出部69が繰り出した紙幣の量に応じて上昇する。
【0089】
セパレータ70が開状態にあるとき、カセット68の一時貯留部72と収納部73とが連続する状態になる。この状態で、エレベータ71が、取込繰出部69が取り込んだ紙幣を載置させ、下から上へと集積させる。その際に、エレベータ71は、取込繰出部69が取り込んだ紙幣を、その上あるいはその上の紙幣上に受け入れる受入位置まで一旦上昇し、取込繰出部69が取り込んだ紙幣の量に応じて下降する。
【0090】
カセット68は、セパレータ70が開状態にあるとき、取込繰出部69が取り込んだ紙幣を、連続する一時貯留部72と収納部73とに、一時貯留部72において受け入れてエレベータ71上に集積させる。その後、エレベータ71が下降してエレベータ71上の紙幣が収納部73に至ってからセパレータ70が閉じられると、カセット68は収納部73が紙幣を収納する状態になる。
【0091】
セパレータ70が開状態にあって、カセット68の一時貯留部72と収納部73とが連続する状態で、収納部73のエレベータ71が上昇すると、このエレベータ71は、載置させた紙幣のうちの最上位置の紙幣を取込繰出部69の蹴出ローラ69aに当接させる。この状態で、取込繰出部69が紙幣を一枚ずつ分離して、連続する一時貯留部72及び収納部73から、一時貯留部72において繰り出す。その際に、エレベータ71は、取込繰出部69から繰り出された紙幣の量に応じて上昇する。カセット68のエレベータ71は、収納庫62A~62Dのそれぞれのエレベータ65とは別の駆動機構で駆動されることになり、単独で昇降が制御される。
【0092】
カセット68は、エレベータ71を最下の待機位置に位置させ、エレベータ71上の紙幣をセパレータ70よりも下側に位置させて、セパレータ70を閉じ、セパレータ70を上部の所定の待機位置に位置させて、取込繰出部69が取り込んだ紙幣を、セパレータ70上に集積開始可能な状態が、待機状態となっている。よって、カセット68は、待機状態にあるとき、一時貯留部72が空となっている。カセット68の待機状態は、貯留紙幣を一時貯留部72に受け入れる貯留受入状態である。
【0093】
また、カセット68は、エレベータ71を最下の待機位置に位置させ、セパレータ70を閉じ、セパレータ70上の最上位置の紙幣を取込繰出部69の蹴出ローラ69aに当接させる状態が、一時貯留部72のセパレータ70上に載置されている紙幣を繰り出す貯留紙幣繰出状態となっている。
【0094】
また、カセット68は、セパレータ70を開き、エレベータ71上、あるいはエレベータ71上の最上位置の紙幣の上に、取込繰出部69が取り込んだ紙幣を集積させる状態が、連続する一時貯留部72及び収納部73に、一時貯留部72において紙幣を受け入れる直収納受入状態となっている。カセット68は、セパレータ70を開状態としてエレベータ71上に紙幣を受け入れた後、エレベータ71を下降させて、エレベータ71上の紙幣がすべて、開状態のセパレータ70よりも下側に位置すると、セパレータ70を閉じる。この状態で、紙幣が収納部73に収納される。よって、収納部73は、上方の、底部であるセパレータ70が開かれた状態の一時貯留部72を介して紙幣を受け入れて収納することになる。
【0095】
また、カセット68は、セパレータ70を開き、エレベータ71上の最上位置の紙幣を取込繰出部69の蹴出ローラ69aに当接させる状態が、収納部73に収納していた紙幣を一時貯留部72を介して繰り出す収納紙幣繰出状態となっている。
【0096】
以上により、カセット68の収納部73の上方には、底部であるセパレータ70が開閉可能であって紙幣を繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部72が設けられている。また、カセット68は、セパレータ70を開状態として、取込繰出部69が取り込んだ紙幣を、一時貯留部72を介して、セパレータ70の下方の収納部73に収納する。換言すれば、一時貯留部72の底部であるセパレータ70の下方には、セパレータ70が開かれた状態の一時貯留部72を介して紙幣を受け入れて収納する収納部73が設けられている。
【0097】
紙幣処理機50の内部には、入金口52から入金繰出部54で繰り出された紙幣を含んで紙幣を搬送する搬送部74が各部を適宜繋ぐように設けられている。搬送部74は、紙幣を、基本的にその短手方向を搬送方向に沿わせた姿勢で移動させる。
【0098】
搬送部74は、機体51の前部に設けられた入金口52の紙幣を機体51の後部に設けられた識別部56に向けて搬送し、さらに、機体51の前部に設けられたカセット68に向けて搬送する搬送路74Aを備えている。搬送路74Aは、入金口52の入金繰出部54から後方に、後述する搬送路74Jと搬送路74Mとの間まで延出した後、下方に延出し、その後、後方に延出して識別部56を通り、下側にて前向きに折り返して前方に延出して紙幣処理機50の前端から下方に延出してカセット68の取込繰出部69に繋がっている。
【0099】
また、搬送部74は、搬送路74Aにおけるカセット68への接続位置と識別部56との間から下方に分岐して収納庫62Aの取込繰出部63に繋がる搬送路74Cと、搬送路74Aにおけるカセット68への接続位置と搬送路74Cの分岐位置との間から下方に分岐して収納庫62Bの取込繰出部63に繋がる搬送路74Dと、搬送路74Aにおけるカセット68への接続位置と搬送路74Dの分岐位置との間から下方に分岐して収納庫62Cの取込繰出部63に繋がる搬送路74Eと、搬送路74Aにおけるカセット68への接続位置と搬送路74Eの分岐位置との間から下方に分岐して収納庫62Dの取込繰出部63に繋がる搬送路74Fとを備えている。
【0100】
また、搬送部74は、搬送路74Aにおける最もカセット68側から上方に分岐した後に後方に延出して搬送路74Aの入金口52から識別部56に向かいつつ下方に延出する部分の下部に繋がる搬送路74Gと、搬送路74Aにおける搬送路74Fの分岐位置と搬送路74Gの分岐位置との間位置から上方に分岐して搬送路74Gの途中位置に繋がる搬送路74Hと、搬送路74Gにおける搬送路74Hの接続位置と後部の搬送路74Aへの接続位置との間位置から上方に分岐して搬送路74Aにおける搬送路74Gの後部の接続位置と入口センサ55との間に繋がる搬送路74Jとを備えている。
【0101】
また、搬送部74は、搬送路74Aにおける搬送路74Jの接続位置と搬送路74Gの後部の接続位置との間から後方に分岐した後、上方に延出し、その後、前方に延出して出金口53に繋がる搬送路74Lを備えている。
【0102】
また、搬送部74は、搬送路74Aにおける搬送路74Gの後部の接続位置と識別部56との間から上方に分岐して搬送路74Lの中間位置に接続される搬送路74Mと、搬送路74Aにおける搬送路74Mの分岐位置と識別部7との間から分岐して搬送路74Mの中間位置に繋がる搬送路74Nとを備えている。搬送路74Nには、紙幣の表裏を反転させる表裏反転部75が設けられている。
【0103】
また、搬送部74は、搬送路74Lにおける出金口4と搬送路74Mの合流位置との間から後方に分岐して整列部57に繋がる搬送路74Pと、搬送路74Lにおける搬送路74Pの分岐位置と搬送路74Mの合流位置との間から後方に分岐して整列部58に繋がる搬送路74Qとを備えている。
【0104】
識別部56は、搬送部74によって搬送される紙幣を識別することになり、収納庫62A~62D及びカセット68は、識別部56によって識別した紙幣を、識別部56の識別結果に基づいて、繰り出し可能に収納する。
【0105】
紙幣処理機50は、操作者によって操作入力がなされるとともに操作者に対して表示を行う操作表示部76と、紙幣処理機50を構成する構成要素をそれぞれ制御する制御部77とを備えている。
【0106】
ところで、ジャム等のエラーが発生した場合には、操作者が、
図3中の破線で囲った開閉部としての引き出しユニット78を固定部としての機体51に対して開放して機体51に残留する紙幣の有無を目視で確認するが、機体51内に生じる死角領域BSに残留する紙幣を見落とす虞がある。ここで、ここで、「固定部」とは、開閉部が開閉する際の基準となる構成要素であり、その位置が絶対的に固定されたものを意味するものではない。また、「死角領域BS」とは、機体51内において陰に隠れる等により操作者が目視で確認し難い領域を意味する。
【0107】
図4には、引き出しユニット78が機体51から開放されることにより、操作者が機体51内にアクセス可能な状態が図示されている。
図4においては、機体51内で引き出しユニット78を収容可能な収容スペースSの奥側が「死角領域BS」に相当する。
【0108】
上述した死角領域BSでの紙幣の見落としを防止するために、
図3に示すように、紙幣処理機50は、機体51に対する引き出しユニット78の開度を検出可能な検出部79と、死角領域に向けて光を照射する照明部80と、を備えている。
【0109】
検出部79は、機体51に対して引き出しユニット78が引き出された開度を検出する。検出部79には、例えば、引き出しユニット78に取り付けられて開度を測定するフォトインタラプタ、又は、機体51に取り付けられて、引き出しユニット78が離間したことを検出する近接センサ等が考えられる。
【0110】
検出部79が検出する開度は、開閉の2段階に限らず。例えば3段階に設定されるのが好ましい。3段階の開度とは、引き出しユニット78が機体51内に収容された状態である閉状態、引き出しユニット78が機体51から開放された状態である全開状態、又は閉状態から全開状態に至る開状態の3段階に区分される。なお、「全開状態」とは、死角領域BSの視認性を確保可能な程度に引き出しユニット78が機体51から開放されている状態を意味し、必ずしも引き出しユニット78全体が機体51から引き出された状態のみを意味するものではない。
【0111】
照明部80は、例えば、LEDチップやCOB(Chip On Board)LED等の面状に発光する照明が好ましいが、これらに限定されるものではない。照明部80は、
図4では収容スペースSの奥側天面に配置されているが、死角領域BSに光を照射可能な位置であれば如何なる場所に設けられても構わない。また、照明部80は、光の照射範囲を調整するために向きを調整可能な回転機構や揺動機構を備えているのが好ましい。
【0112】
また、照明部80は、例えば、磁石や面ファスナー等により、機体51に着脱自在に取り付けられるのが好ましい。これにより、紙幣処理機50内の全ての死角領域BSの近傍に固定式の照明部80を設ける代わりに、着脱式の照明部80を任意の死角領域BSの近傍に設けることにより、照明部80の設置個数を減らすことができる。また、着脱式の照明部80は、取り外した状態で常時点灯させることにより、死角領域BSを照らすハンディライトとしても使用可能である。
【0113】
制御部77は、検出部79が検出した閉状態、開状態又は全開状態の各開度において、それぞれ異なる態様の光を照射する又は光を照射しないことを判定する。ここで、「光の態様」とは、照明部80が照射する光の色又は照明部80が光を点灯又は点滅させる場合の発光時間等である。
【0114】
制御部77は、全開状態の開度において、最も視認性が高い態様の光を照射させるのが好ましい。例えば、制御部77は、照明部80の光を、全開状態で点灯、開状態で点滅又は消灯、閉状態で消灯するように制御する。または、制御部77は、照明部80の光色を、全開状態で白等の明度の高い視認性の高い色、開状態で赤色や橙色等の明度の低い警告色、閉状態で消灯するように制御しても構わない。このようにして、閉状態、開状態及び全開状態において異なる態様の光を照射する又は消灯を切り換えることにより、操作者が引き出しユニット78の開度を把握することができる。
【0115】
このようにして、本実施形態に係る紙幣処理機50は、機体51と、機体51に対して開閉可能に設けられ、開放されることにより操作者が機体51内の収容スペースSにアクセス可能となる引き出しユニット78と、を備えている紙幣処理機50であって、引き出しユニット78が機体51に対して引き出された開度を検出可能な検出部79と、収容スペースSの死角領域BSに光を照射する照明部80と、引き出しユニット78の開度に応じて光を照射するか否かを判定し、し、少なくとも引き出しユニット78の開度が全開状態である場合には光を照射する制御部77と、を備えている構成とした。
【0116】
このような構成により、照明部80が、引き出しユニット78が機体51に対して開く開度に応じて、死角領域BSに向けて光を照射することにより、ジャム等のエラーの復旧作業時に死角領域BSの視認性が向上し、紙幣の見落としを抑制することができる。
【0117】
また、紙幣処理機50は、開度が、全開状態、引き出しユニット78が機体51内に収容された閉状態、又は閉状態から全開状態に至る開状態に区分され、制御部77は、閉状態、開状態又は全開状態の各開度において、それぞれ異なる態様の光を照射する又は光を照射しないことを判定する構成とした。
【0118】
このような構成により、照明部80が、3段階の開度に応じて異なる態様の光を照射する又は消灯を切り換えることにより、操作者が引き出しユニット78の開度を把握することができるとともに引き出しユニット78を全開状態まで開放するように促されるため、死角領域BSの視認性が高い状態で復旧作業を行い、紙幣の見落としをさらに抑制することができる。
【0119】
また、紙幣処理機50は、制御部77が、全開状態の開度において、最も視認性が高い態様の光を照射させる構成とした。
【0120】
このような構成により、復旧作業時に収容スペースSの死角領域BSの視認性が向上するため、紙幣の見落としをさらに抑制することができる。
【0121】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、上記以外にも種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。また、上述した各実施形態を互いに組み合わせても構わない。
【符号の説明】
【0122】
10 :硬貨処理機
17 :通路面
18c:第3の直線部
22 :下流側搬送ベルト(開閉部)
31 :プーリ
32 :プーリ
33 :搬送駆動モータ
34 :駆動軸
46 :制御部
47 :検出部
48 :照明部
50 :紙幣処理機
51 :機体
77 :制御部
78 :引き出しユニット(開閉部)
79 :検出部
80 :照明部
BS :死角領域
S :収容スペース