(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055142
(43)【公開日】2023-04-17
(54)【発明の名称】電動ポンプ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/38 20060101AFI20230410BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20230410BHJP
F04B 53/00 20060101ALI20230410BHJP
F04C 15/00 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
H02K3/38 A
H02K7/14 B
F04B53/00 J
F04C15/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164300
(22)【出願日】2021-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】日本電産トーソク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】金物 弘貴
(72)【発明者】
【氏名】呉 楠
(72)【発明者】
【氏名】村田 大輔
【テーマコード(参考)】
3H044
3H071
5H604
5H607
【Fターム(参考)】
3H044AA02
3H044BB03
3H044CC12
3H044CC18
3H044DD18
3H044DD24
3H071AA03
3H071BB02
3H071CC26
3H071CC44
3H071DD84
3H071DD86
5H604AA05
5H604BB01
5H604CC01
5H604DB01
5H604QB11
5H604QB17
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB14
5H607DD02
5H607FF06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コイル線の断線を抑えることができる電動ポンプを提供する。
【解決手段】電動ポンプは、ロータ部とステータ部とを有するモータと、ロータ部に連結されたポンプ機構と、モータの軸方向一方側に設けられる回路基板と、モータと回路基板との間に配置され、ステータ部のコイルから軸方向一方側に導出されたコイル線が挿通される挿通孔、及び軸方向一方側に突出する突出壁を備えたカバー部材90と、カバー部材90の軸方向一方側に配置され、カバー部材90との間にコイル線を挟み込むことでコイル線を保持するワイヤガイド部材100と、を備え、突出壁97は、軸方向に沿って軸方向に交差する方向に傾斜する第一傾斜面97sを備え、ワイヤガイド部材100は、第一傾斜面97sに対向する第二傾斜面107を備え、コイル線が、第一傾斜面97sと第二傾斜面107との間に挟み込まれる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる中心軸を中心として回転可能なロータ部とコイル線が巻かれたステータ部とを有するモータと、
前記ロータ部に連結されたポンプ機構と、
前記モータの軸方向一方側に設けられる回路基板と、
前記モータと前記回路基板との間に配置され、前記ステータ部のコイルから前記軸方向一方側に導出されたコイル線が挿通される挿通孔、及び前記軸方向一方側に突出する突出壁を備えたカバー部材と、
前記カバー部材の前記軸方向一方側に配置され、前記カバー部材との間に前記コイル線を挟み込むことで前記コイル線を保持するワイヤガイド部材と、を備え、
前記突出壁は、前記軸方向に沿って前記軸方向に交差する方向に傾斜する第一傾斜面を備え、
前記ワイヤガイド部材は、前記第一傾斜面に対向する第二傾斜面を備え、
前記コイル線が、前記第一傾斜面と前記第二傾斜面との間に挟み込まれる、
電動ポンプ。
【請求項2】
前記第一傾斜面、及び前記第二傾斜面の少なくとも一方に、前記コイル線を収容する収容溝が形成されている、
請求項1に記載の電動ポンプ。
【請求項3】
前記挿通孔は、前記コイルから前記軸方向一方側に導出されたコイル線が挿入されるスリットを有し、
前記スリットは、前記軸方向で前記収容溝と連なる位置に設けられている、
請求項2に記載の電動ポンプ。
【請求項4】
前記ワイヤガイド部材は、前記第二傾斜面よりも前記軸方向一方側に設けられ、前記コイル線を前記軸方向一方側に案内するコイル線案内部をさらに備える、
請求項1乃至3のうちのいずれか一項に記載の電動ポンプ。
【請求項5】
前記コイル線案内部は、前記ワイヤガイド部材の一部を前記軸方向に貫通する貫通孔である、
請求項4に記載の電動ポンプ。
【請求項6】
前記突出壁は、前記第一傾斜面の前記軸方向他方側の端部から前記軸方向に沿って延びる延出面を有し、
前記カバー部材において前記軸方向一方側を向く第一面、および前記延出面と、前記第二傾斜面との間に、隙間が設けられる、
請求項1乃至5のうちのいずれか一項に電動ポンプ。
【請求項7】
前記ワイヤガイド部材は、前記カバー部材の前記軸方向周りの周方向に間隔をあけて複数設けられる、
請求項1乃至6のうちのいずれか一項に電動ポンプ。
【請求項8】
前記カバー部材は、前記軸方向に交差する方向で前記ワイヤガイド部材を跨いで前記突出壁と対向し、前記軸方向一方側に突出する対向壁を有している、
請求項1乃至7のうちのいずれか一項に電動ポンプ。
【請求項9】
前記ワイヤガイド部材は、前記軸方向に交差する方向で前記対向壁側に突出する、前記軸方向から見て円弧状の円弧状凸部を有し、
前記対向壁は、前記円弧状凸部が嵌め込まれる円弧状凹部を有する、
請求項8に記載の電動ポンプ。
【請求項10】
前記ワイヤガイド部材は、前記軸方向他方側に延び、弾性変形可能な複数の爪を有し、
前記カバー部材は、複数の前記爪を引っ掛ける複数の引っ掛け孔を有する、
請求項1乃至9に記載の電動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動ポンプのハウジング内に、ロータ部およびステータ部を備えたモータと、モータに供給する電力を制御してモータの動作を制御する制御部と、を備える構成が記載される。この構成において、制御部に設けられたスイッチング素子からステータ部のコイルにバスバーを介して三相交流電流が出力されることで、ロータ部が回転駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電動ポンプにおいては、ステータ部のコイルから導出されるコイル線をハウジング内の限られたスペースで取り回すため、コイル線が屈曲されることがある。コイル線に屈曲した部位があると、振動や衝撃による応力がコイル線の屈曲部位に集中し、コイル線が断線する可能性が生じる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、振動や衝撃によるコイル線の断線を抑えることができる電動ポンプを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動ポンプの一つの態様は、軸方向に延びる中心軸を中心として回転可能なロータ部とコイル線が巻かれたステータ部とを有するモータと、前記ロータ部に連結されたポンプ機構と、前記モータの軸方向一方側に設けられる回路基板と、前記モータと前記回路基板との間に配置され、前記ステータ部のコイルから前記軸方向一方側に導出されたコイル線が挿通される挿通孔、及び前記軸方向一方側に突出する突出壁を備えたカバー部材と、前記カバー部材の前記軸方向一方側に配置され、前記カバー部材との間に前記コイル線を挟み込むことで前記コイル線を保持するワイヤガイド部材と、を備え、前記突出壁は、前記軸方向に沿って前記軸方向に交差する方向に傾斜する第一傾斜面を備え、前記ワイヤガイド部材は、前記第一傾斜面に対向する第二傾斜面を備え、前記コイル線が、前記第一傾斜面と前記第二傾斜面との間に挟み込まれる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、振動や衝撃によるコイル線の断線を抑えることができる電動ポンプが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態の電動ポンプを示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態の電動ポンプのカバーを取り外した状態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、一実施形態の電動ポンプの回路基板を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、一実施形態の電動ポンプのカバー部材の構成を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、一実施形態の電動ポンプのカバー部材とワイヤガイド部材との間にコイル線を挟み込んだ部分の構成を示す断面図である。
【
図6】
図6は、一実施形態のワイヤガイド部材のカバー部材への取付構造を示す断面である。
【
図7】
図7は、一実施形態のワイヤガイド部材の構成を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、一実施形態のワイヤガイド部材の構成を
図7とは異なる方向から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明においては、各図に示すZ軸が延びる方向を上下方向とし、Z軸の矢印が向く側(+Z側)を「上側」と呼び、Z軸の矢印が向く側と逆側(-Z側)を「下側」と呼ぶ。以下の図に示す中心軸J1は、Z軸と平行に延びる仮想軸である。特に断りのない限り、中心軸J1の軸方向と平行な方向、すなわちZ軸方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸J1を中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。径方向のうち、中心軸J1に近づく方向を径方向内側と呼び、中心軸J1から離れる方向を径方向外側と呼ぶ。なお、本実施形態において、「平行な方向」は略平行な方向を含み、「直交する方向」は略直交する方向を含む。本実施形態において、上側は「軸方向一方側」に相当し、下側は「軸方向他方側」に相当する。
【0010】
なお、上下方向、上側および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0011】
図1、
図2に示す本実施形態の電動ポンプ10は、例えば、車両に搭載される電動ポンプである。電動ポンプ10は、車両の内部において流体を送る。電動ポンプ10によって送られる流体は、例えば、オイルである。オイルは、例えば、ATF(Automatic Transmission Fluid)である。
図1に示すように、本実施形態の電動ポンプ10は、モータ20と、ポンプ機構30と、ハウジング40と、回路基板50と、カバー60と、カバー部材90と、ワイヤガイド部材100と、を備える。
【0012】
本実施形態において、モータ20、およびポンプ機構30は、ハウジング40内に収容される。ハウジング40は、ハウジング本体部41を含む。ハウジング本体部41は、モータハウジング15と、ポンプハウジング16と、ポンプカバー13と、を有する。本実施形態において、モータハウジング15とポンプハウジング16とは、互いに同一の単一部材の一部である。
【0013】
本実施形態において、モータハウジング15は、軸方向に延びる円筒状である。モータハウジング15は、軸方向において、ポンプハウジング16の上側に配置されている。モータハウジング15は、上下に開口するモータ収容凹部41aを有する。モータ20は、モータ収容凹部41aの径方向内側に収容される。
【0014】
ポンプハウジング16は、モータハウジング15の下側に繋がっている。ポンプハウジング16は、下側に開口する凹部からなるポンプ収容凹部41eを有する。ポンプ収容凹部41eの下側の開口は、ポンプカバー13によって塞がれている。ポンプ機構30は、ポンプ収容凹部41eの径方向内側に収容される。
【0015】
ポンプカバー13は、軸方向に延びる筒状の突出部44を有する。突出部44は、ポンプカバー13の底部から下側に延びる。突出部44は、第2の中心軸J2を中心として、軸方向に延びる。突出部44の第2の中心軸J2は、中心軸J1から径方向にずれた位置に配置される。第2の中心軸J2と中心軸J1とは、互いに平行に延びる。
【0016】
突出部44は流入口44aを有する。流入口44aはポンプ収容凹部41eの内部空間と繋がる。流入口44aは、ポンプカバー13を軸方向に貫通する貫通孔により構成される。流入口44aは、ポンプ機構30にオイルを流入させる。すなわち、ポンプ機構30は、流入口44aを通して装置外部からオイルを吸入する。ポンプカバー13は、不図示の流出口を含む。ポンプ機構30は、流出口からオイルを流出させる。
【0017】
ハウジング本体部41は、モータ収容凹部41aの内部とポンプ収容凹部41eの内部とを軸方向に繋ぐ軸挿通孔41cを有する。軸挿通孔41c内には、軸挿通孔41cの内周面と後述するシャフト22の外周面との間をシールするオイルシール43が保持される。
【0018】
モータ20は、モータ収容凹部41a内に収容される。モータ20は、中心軸J1に沿って延びるシャフト22を有するロータ部21と、ステータ部26と、を有する。
【0019】
ロータ部21は、中心軸J1を中心として回転する。ロータ部21は、シャフト22と、ロータコア23と、を備える。シャフト22は、中心軸J1回りに回転可能である。シャフト22の下側の端部は、軸挿通孔41cを介してポンプ収容凹部41e内に突出し、ポンプ機構30に連結されている。シャフト22は、軸挿通孔41cとポンプ収容凹部41eとの間に設けられた滑り軸受などの軸受(不図示)によって、回転可能に支持されている。なお、シャフト22を支持するベアリングをポンプハウジング16に設けてもよい。また、シャフト22の上端部は、不図示のベアリングによって保持されてもよい。
【0020】
ロータコア23は、シャフト22の外周面に固定される。ロータコア23は、中心軸J1を中心とする環状である。ロータコア23は、軸方向に延びる筒状である。ロータコア23は、例えば、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されることにより構成される。
【0021】
ステータ部26は、ロータ部21の径方向外側に配置され、ロータ部21と径方向に隙間をあけて対向する。つまりステータ部26は、ロータ部21と径方向に対向する。ステータ部26は、周方向の全周にわたって、ロータ部21を径方向外側から囲う。ステータ部26は、ステータコア27と、複数のコイル29と、を有する。
【0022】
ステータコア27は、中心軸J1を中心とする環状である。ステータコア27は、ロータ部21を径方向外側から囲う。ステータコア27は、ロータ部21の径方向外側に配置されて、ロータ部21と径方向に隙間をあけて対向する。ステータコア27は、例えば、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されることにより構成される。ステータコア27は、ハウジング40の内周面に固定される。ステータコア27は、複数のティース(図示無し)を有する。複数のティース(図示無し)は、周方向に互いに間隔をあけて配置される。
【0023】
複数のコイル29は、インシュレータ(図示無し)を介してステータコア27に取り付けられる。インシュレータ(図示無し)の材料は、例えば樹脂などの絶縁材料である。複数のコイル29は、各ティース(図示無し)に、インシュレータ(図示無し)を介してコイル線29cが巻き回されることによりそれぞれ構成される。
【0024】
本実施形態のモータ20は3相モータである。そのため、複数のコイル29は、U相、V相、W相のコイルを含む。各コイル29は、回路基板50のU相、V相およびW相のいずれかに対応する部位に接続される。
図1、
図2、
図3に示すように、コイル線29cは、コイル29から上側へ引き出され、後述のカバー部材90を介して回路基板50と接続される。
【0025】
図1に示すように、ポンプ機構30は、モータ20によって駆動される。ポンプ機構30は、ステータ部26よりも下側に配置される。ポンプ機構30は、ロータ部21に接続される。本実施形態ではポンプ機構30が、トロコイドポンプ構造を有する。ポンプ機構30は、インナーロータ30aと、インナーロータ30aの径方向外側に位置するアウターロータ30bと、を有する。インナーロータ30aおよびアウターロータ30bは、ポンプギアであり、互いに噛み合う。インナーロータ30aおよびアウターロータ30bは、それぞれトロコイド歯形を有する。インナーロータ30aは、シャフト22の軸方向他方側の端部に固定される。このようにして、ポンプ機構30は、シャフト22とともにインナーロータ30aが回転されることで駆動する。
【0026】
図2に示すように、回路基板50は、基材55と、不図示のインバータ部、プロセッサと、コンデンサー57と、インダクタ58と、を有する。
回路基板50は、板面が軸方向を向く板状である。回路基板50は、モータ20の軸方向一方側(上側)に位置する。回路基板50は、カバー部材90によって軸方向他方側から支持されている。
【0027】
回路基板50には、ステータ部26を構成するコイル29から引き出されたコイル線29cの先端が電気的に接続される。本実施形態において、回路基板50には、コイル線29cが、回路基板50の外周部において、周方向に間隔をあけた3箇所に接続される。回路基板50の各箇所において、2本のコイル線29cが配置されている。なお、各コイル線29cはU相、V相、W相のいずれかのコイル29の一部である。
【0028】
カバー部材90は、軸方向においてモータ20と回路基板50との間に配置される。
図3、
図4に示すように、カバー部材90は、板状部91と、挿通孔92(
図4参照)と、周壁部93と、外周フランジ94と、周方向リブ95と、径方向リブ96と、突出壁97と、を一体に備える。カバー部材90は、絶縁性を有した樹脂材料からなる。
【0029】
板状部91は、軸方向から見て、中心軸J1を中心とする円板状である。板状部91は、モータハウジング15の上部開口を、上側から塞ぐように配置される。板状部91の中央部には、開口91hが設けられる。開口91hは、板状部91を軸方向に貫通する。開口91hの径方向内側には、シャフト22の一方の端部が挿入される。
【0030】
周壁部93は、板状部91の外周部に設けられる。周壁部93は、板状部91の外周部から上側に立ち上がる。周壁部93は、周方向に連続して設けられる。
図5に示すように、カバー部材90は、モータハウジング15の上部開口の径方向内側に周壁部93を挿入することで、モータハウジング15に取り付けられる。周壁部93の外周面には、複数の位置決めリブ93sが設けられる。複数の位置決めリブ93sは、周方向に間隔をあけて設けられる。各位置決めリブ93sは、周壁部93の外周面から径方向外側に突出する。各位置決めリブ93sは、上下方向に連続して延びる。複数の位置決めリブ93sがモータハウジング15の内周面に径方向内側から突き当たることで、カバー部材90がモータハウジング15に対して同心状に位置決めされる。
【0031】
外周フランジ94は、周壁部93の上端から径方向外側に拡がる。外周フランジ94は、周方向に連続して延びる。外周フランジ94は、モータハウジング15の上端に上側から突き当たる。
【0032】
図3、
図4に示すように、外周フランジ94には、複数の外周突起98が設けられる。複数の外周突起98は、周方向に間隔をあけて設けられる。各外周突起98は、外周フランジ94の上面から上側に突出する。各外周突起98は、平面視で円弧状に設けられる。複数の外周突起98のうち、例えば2つの外周突起98には、立ち上がり部98sが設けられる。立ち上がり部98sは、外周突起98の外周部から上側に立ち上がる。立ち上がり部98sは、上側からみて周方向に延びる。
図2に示すように、回路基板50は、複数の外周突起98上に載置される。組立時には、2つの外周突起98の立ち上がり部98sに回路基板50の外周縁を突き当てることで、回路基板50が容易に位置決めされる。
【0033】
図3、
図4に示すように、外周フランジ94の内周縁部には、複数の位置決めピン99が設けられる。複数の位置決めピン99は、周方向に間隔をあけて設けられる。各位置決めピン99は、台部99aとピン本体99bと、を一体に備える。台部99aは、ピン本体99bよりも外径が大きく、その上面が上側を向く。台部99aの上面の軸方向における位置(上下方向の高さ)は、外周突起98の上面と同等あるいは僅かに高く(例えば、0.4mm)設定される。ピン本体99bは、台部99aから上側に突出する。
図2に示すように、複数の位置決めピン99のピン本体99bは、回路基板50の外周部に設けられる位置決め孔50hに挿入される。これにより、回路基板50の位置決めがなされる。
【0034】
周方向リブ95、及び径方向リブ96は、板状部91の上側を向く面に設けられる。周方向リブ95は、例えば、内周リブ95pと、外周リブ95qと、を備える。は、板状部91の開口91hの外周縁部から上側に立ち上がる。内周リブ95pは、周方向に連続して設けられる。外周リブ95qは、内周リブ95pに対して径方向外側に間隔をあけて設けられる。外周リブ95qは、板状部91から上側に立ち上がる。外周リブ95qは、周方向に連続して設けられる。外周リブ95qの周方向の一部には、対向壁95wが設けられる。対向壁95wは、後述する突出壁97に対して径方向に間隔をあけて対向する。対向壁95wは、カバー部材90の径方向内側に向かって円弧状に窪む円弧状凹部95dを有する。対向壁95wは、ワイヤガイド部材100を跨いで突出壁97と径方向で対向する。
【0035】
径方向リブ96は、周方向に間隔をあけて複数設けられる。径方向リブ96は板状部91から上側に立ち上がる。径方向リブ96は、内周リブ95pから径方向外側に延び、内周リブ95pおよび外周リブ95q間を接続する。これら内周リブ95p、外周リブ95qおよび径方向リブ96により板状部91が補強され、カバー部材90の強度が高められる。
【0036】
図3~
図5に示すように、突出壁97は、板状部91に設けられる。突出壁97は、例えば、周方向に間隔をあけて複数設けられる。本実施形態において、突出壁97は、U相、V相、W相に対応して、例えば3組設けられる。各突出壁97は、板状部91から上側(軸方向一方側)に突出する。本実施形態において、突出壁97は、周壁部93の径方向内側に一体に設けられる。突出壁97は、第一傾斜面97sと、延出面97bと、を備える。
【0037】
第一傾斜面97sは、軸方向に沿って、軸方向に交差する径方向に傾斜する。本実施形態において、第一傾斜面97sは、突出壁97において径方向内側を向いて設けられる。第一傾斜面97sは、軸方向に沿って上側に向かって径方向外側に傾斜する。
図4、
図5に示すように、延出面97bは、第一傾斜面97sの軸方向他方側の端部(下端部)から軸方向他方側(下側)に沿って延びる。
【0038】
図4に示すように、挿通孔92は、突出壁97の近傍に設けられる。本実施形態において、挿通孔92は、突出壁97に対して径方向内側に設けられる。挿通孔92は、U相、V相、W相に対応して、例えば3個設けられる。挿通孔92は、板状部91を軸方向に貫通する。挿通孔92は、コイル29から軸方向一方側に導出されたコイル線29cが挿通される。
【0039】
挿通孔92には、スリット92sが設けられる。スリット92sは、挿通孔92の内周縁から挿通孔92の外周側に延びる。本実施形態において、スリット92sは、二つ設けられる。スリット92sの幅寸法は、挿通孔92の開口径よりも十分に小さい。スリット92sの先端部の幅寸法は、コイル線29cの線径よりも僅かに小さい。スリット92sは、コイル29から軸方向一方側(上側)に導出されたコイル線29cが挿入される。スリット92sは、挿通孔92内に挿通されたコイル線29cを挿入することで、コイル線29cの位置ずれを抑える。
【0040】
図4、
図6に示すように、板状部91には、一対の引っ掛け孔92tが設けられる。一対の引っ掛け孔92tは、挿通孔92を跨いで径方向の両側に設けられる。各引っ掛け孔92tは、板状部91を軸方向に貫通する。
【0041】
図3、
図5に示すように、ワイヤガイド部材100は、カバー部材90の上側に配置される。ワイヤガイド部材100は、カバー部材90との間にコイル線29cを挟み込むことでコイル線29cを保持する。ワイヤガイド部材100は、U相、V相、W相に対応して、例えば3個設けられる。ワイヤガイド部材100は、U相、V相、W相に対応して、周方向に間隔をあけて配置される。各ワイヤガイド部材100は、各挿通孔92を上側から覆うように設けられる。
【0042】
図7、
図8に示すように、各ワイヤガイド部材100は、プレート部101と、外周リブ102と、中央リブ103と、一対の爪104と、コイル線案内部105と、第二傾斜面107と、収容溝108と、を一体に備える。
【0043】
プレート部101は、軸方向から見て略円形である。
図8に示すように、プレート部101において、ワイヤガイド部材100をカバー部材90に装着した状態で、下側を向く面には、補強リブ101rが一体に設けられる。外周リブ102は、プレート部101の外周部から上側に延びる。外周リブ102は、プレート部101の外周部の周方向の一部に、上側から見て円弧状に設けられる。
図7に示すように、中央リブ103は、外周リブ102の内側に設けられる。中央リブ103は、プレート部101から上側に突出する。中央リブ103は、外周リブ102の周方向中央部から、プレート部101の径方向反対側に延びる。この中央リブ103は、ワイヤガイド部材100を把持する際のツマミとして機能する。
【0044】
図6~
図8に示すように、一対の爪104は、プレート部101を跨いで径方向の両側に設けられる。各爪104は、外周リブ102の上端部から下側に延び、弾性変形可能に構成される。
図6に示すように、各爪104は、ワイヤガイド部材100をカバー部材90に装着し、プレート部101の補強リブ101rを板状部91に上側から突き当てた状態で、引っ掛け孔92tに挿入される。爪104の下端には、引っ掛け孔92tに引っ掛けられる突起104tが設けられる。一対の爪104の突起104tを引っ掛け孔92tに引っ掛けることで、ワイヤガイド部材100がカバー部材90に装着される。
【0045】
図8に示すように、第二傾斜面107は、外周リブ102の一部に設けられる。
図5に示すように、第二傾斜面107は、ワイヤガイド部材100をカバー部材90に装着した状態で、第一傾斜面97sに対向する。第二傾斜面107は、上側に向かって径方向外側に傾斜する。挿通孔92のスリット92sを通して板状部91の上側に導出されるコイル線29cは、第一傾斜面97sと第二傾斜面107との間に挟み込まれる。
また、ワイヤガイド部材100をカバー部材90に装着した状態で、カバー部材90において上側を向く第一面91f、および延出面97bと、第二傾斜面107との間に、隙間Kが設けられる。
【0046】
収容溝108は、第一傾斜面97s、及び第二傾斜面107の少なくとも一方に設けられる。
図8に示すように、本実施形態において、収容溝108は、例えば、第二傾斜面107に、二つ設けられる。各収容溝108は、第一傾斜面97sと第二傾斜面107との間に挟み込むコイル線29cの線径方向の少なくとも一部を収容する。スリット92sは、軸方向で各収容溝108と連なる位置に設けられている。
【0047】
コイル線案内部105は、外周リブ102の外周側に突出して設けられる。コイル線案内部105は、第一傾斜面97sと第二傾斜面107との間に挟み込まれるコイル線29cを、上側に案内する。本実施形態において、コイル線案内部105は、ワイヤガイド部材100の一部を軸方向に貫通する一対の貫通孔105hで構成され、一対のコイル線29cがそれぞれ挿通される。コイル線案内部105は、収容溝108の上端に連続するよう設けられる。
【0048】
図3、
図7に示すように、このようなワイヤガイド部材100において、プレート部101の一部は、カバー部材90の径方向(軸方向に交差する方向)内側に向かって突出する円弧状凸部101tを形成する。円弧状凸部101tは、上方から見て円弧状をなす。円弧状凸部101tは、外周リブ95qに設けられた円弧状凹部95dに嵌め込まれる。
【0049】
以上のように本実施形態の電動ポンプ10によれば、コイル線29cが、カバー部材90の第一傾斜面97sと、ワイヤガイド部材100の第二傾斜面107との間に挟み込まれる。これにより、突出壁97とワイヤガイド部材100との間にコイル線29cを保持することができる。コイル線29cは、第一傾斜面97sと第二傾斜面107との間に挟み込まれる。このため、ステータ部26のコイル29から導出されたコイル線29cが直角に曲がるのを抑えることができる。よって、振動や衝撃によるコイル線29cの屈曲部への応力集中が生じることが抑えられ、コイル線29cの断線を抑制することができる。
【0050】
本実施形態の電動ポンプ10によれば、第二傾斜面107に収容溝108が設けられる。これにより、コイル線29cを収容溝108に収容することによって、コイル線29cの位置ずれを抑え、組立性を向上できる。また、組立後においては、収容溝108によってコイル線29cを良好に保持することができる。
【0051】
本実施形態の電動ポンプ10によれば、カバー部材90の挿通孔92に形成されたスリット92sにコイル線29cを挿入することで、第一傾斜面97sと第二傾斜面107との間に、コイル線29cを容易かつ良好に案内できる。また、スリット92sが収容溝108と軸方向で連なることで、コイル線29cを、カバー部材90の挿通孔92から第一傾斜面97sと第二傾斜面107との間に挟み込まれる部分にわたって、良好に保持でき、コイル線29cに応力が掛かることを抑制できる。
【0052】
本実施形態の電動ポンプ10によれば、第二傾斜面107よりも上側にコイル線案内部105を備える。このコイル線案内部105により、コイル線29cをより良好に軸方向に案内できる。
【0053】
本実施形態の電動ポンプ10において、コイル線案内部105は貫通孔105hである。この構成によれば、貫通孔105hにコイル線29cを挿入することで、コイル線29cをコイル線案内部105によって所定の位置に容易に案内できる。
【0054】
本実施形態の電動ポンプ10によれば、カバー部材90の第一面91f、および延出面97bと、第二傾斜面107との間に、隙間Kが設けられる。これにより、カバー部材90にワイヤガイド部材100を装着した状態で、突出壁97の下端とワイヤガイド部材100の下端とが干渉することが抑制される。したがって、ワイヤガイド部材100およびカバー部材90における部品の製造公差のばらつきが許容可能となり、ワイヤガイド部材100をカバー部材90により安定して取り付けることができる。
【0055】
本実施形態の電動ポンプ10によれば、ワイヤガイド部材100が複数設けられるため、各相のコイル線29cを容易かつ良好に固定することができる。
【0056】
本実施形態の電動ポンプ10によれば、ワイヤガイド部材100を跨いで突出壁97と対向する対向壁95wを有する。これにより、ワイヤガイド部材100が、突出壁97と対向壁95wとの間に装着されることになり、カバー部材90でワイヤガイド部材100を良好に保持できる。
【0057】
本実施形態の電動ポンプ10によれば、ワイヤガイド部材100の円弧状凸部101tが対向壁95wの円弧状凹部95dに嵌め込まれるようになる。これにより、ワイヤガイド部材100、ワイヤガイド部材100の収容溝108に収容されたコイル線29cを、容易に位置決めすることができる。
【0058】
本実施形態の電動ポンプ10によれば、ワイヤガイド部材100が複数の爪104を有し、カバー部材90が複数の引っ掛け孔92tを有する。このような爪104を引っ掛け孔92tに係合させるスナップフィット構造を採用することで、ワイヤガイド部材100をカバー部材90に容易に装着することができ、コイル線29cの位置決め保持も容易に行うことができる。
【0059】
以上に、本発明の一実施形態を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0060】
例えば、上述した実施形態に示した電動ポンプ10の用途は、特に限定されない。
【0061】
また、上述の実施形態において、突出壁97に対し、ワイヤガイド部材100を径方向内側に配置するようにしたが、これに限られない。ワイヤガイド部材100は、突出壁97に対し、径方向外側に配置してもよい。また、ワイヤガイド部材100は、突出壁97に対し、周方向一方側に配置してもよい。これにともない、第一傾斜面97s、第二傾斜面107も、軸方向一方側(上側)に向かって径方向外側に傾斜する構成に限らず、軸方向一方側に向かって径方向内側に傾斜する構成、軸方向一方側に向かって周方向に傾斜する構成としてもよい。
【0062】
また、上述の実施形態において、ワイヤガイド部材100を、U相、V相、W相に対応して、例えば3個設けるようにしたが、これに限られない。ワイヤガイド部材100は、U相、V相、W相を一つにまとめる構成としてもよい。
【0063】
本発明が適用される電動ポンプの用途は、特に限定されない。電動ポンプによって送られる流体の種類は、特に限定されず、水などであってもよい。電動ポンプが取り付けられる所定対象は、どのような対象であってもよい。電動ポンプは、車両以外の機器に搭載されてもよい。電動ポンプは、鉛直方向に対して、どのように配置されていてもよい。電動ポンプのモータにおける中心軸は、鉛直方向と直交せずに鉛直方向に対して傾いた方向に延びてもよいし、鉛直方向と平行に延びてもよい。なお、本明細書において説明した各構成および各方法は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0064】
10…電動ポンプ、20…モータ、21…ロータ部、26…ステータ部、29…コイル、29c…コイル線、30…ポンプ機構、50…回路基板、60…カバー、90…カバー部材、91f…第一面、92…挿通孔、92s…スリット、92t…引っ掛け孔、95d…円弧状凹部、95w…対向壁、97…突出壁、97b…延出面、97s…第一傾斜面、100…ワイヤガイド部材、101t…円弧状凸部、104…爪、105…コイル線案内部、105h…貫通孔、107…第二傾斜面、108…収容溝、J1…中心軸、K…隙間。