(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055143
(43)【公開日】2023-04-17
(54)【発明の名称】セルバランス装置及びセルバランス方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20230410BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230410BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20230410BHJP
G01R 19/00 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
H02J7/02 H
H01M10/48 P
H01M10/44 P
G01R19/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164302
(22)【出願日】2021-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】591055975
【氏名又は名称】水戸工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高崎 剛
(72)【発明者】
【氏名】中井 正一郎
【テーマコード(参考)】
2G035
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G035AB03
2G035AC01
2G035AC02
2G035AD10
2G035AD20
2G035AD28
2G035AD47
2G035AD65
2G035AD66
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA11
5G503HA01
5H030AA09
5H030AS06
5H030AS08
5H030BB21
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】 (修正有)
【課題】装置内の配線量を低減することができ、かつ、メンテナンスが容易なセルバランス装置及びセルバランス方法を提供する。
【解決手段】セルバランス装置11は、複数の二次電池を接続してなる組電池を含む電池モジュール12と、複数の二次電池の各セルC
1~C
nの電圧を計測するセル電圧計測部13と、セル電圧計測部において計測された各セルの電圧値に基づいて、各セルの電圧を調整するための指令信号を出力する制御部14と、を含む。電圧計測部は、各セルを流れる電流によって発生する磁界を検出する1つ以上の電流センサ201を含む。電池モジュールと、セル電圧計測部の電流センサは、非接触である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の二次電池を接続してなる組電池を含む電池モジュールと、
前記複数の二次電池の各セルの電圧を計測するセル電圧計測部と、
前記セル電圧計測部において計測された前記各セルの電圧値に基づいて、前記各セルの電圧を調整するための指令信号を出力する制御部とを含み、
前記電圧計測部は、前記各セルを流れる電流によって発生する磁界を検出するように構成された1つ以上の電流センサを含み、
前記電池モジュールと前記セル電圧計測部の前記電流センサは非接触である、セルバランス装置。
【請求項2】
前記電池モジュールが、複数の二次電池を直列に接続してなる組電池を含む、請求項1に記載のセルバランス装置。
【請求項3】
前記電池モジュールが、前記複数の二次電池の各セルに並列して配置されたセル電圧計測回路及びセルバランス放電回路をさらに含む、請求項1又は2に記載のセルバランス装置。
【請求項4】
前記電池モジュールが回路切替スイッチを含み、前記電池モジュールの前記各セルが、前記回路切替スイッチにより、前記セル電圧計測回路と接続、前記セルバランス放電回路と接続、又は前記セル電圧計測回路及び前記セルバランス放電回路の両方と非接続のいずれかに切替えられる、請求項3に記載のセルバランス装置。
【請求項5】
前記各セルを流れる電流によって発生する磁界が、前記セル電圧計測回路を流れるセル電圧計測電流、又は前記セルバランス放電回路を流れるセルバランス放電電流によって発生する磁界である、請求項3又は4に記載のセルバランス装置。
【請求項6】
複数の二次電池を接続してなる組電池を含む電池モジュールと、
前記複数の二次電池の各セルを流れる電流によって発生する磁界を検出するように構成された1つ以上の電流センサを含むセル電圧計測部と、
制御部とを含み、
前記電池モジュールと前記セル電圧計測部の前記電流センサは非接触であり、
前記セル電圧計測部は、前記電流センサによって前記各セルを流れる電流を計測し、それにより前記各セルの電圧を計測し、
前記制御部は、前記セル電圧計測部において計測された前記各セルの電圧値に基づいて前記各セルの充電状態を判定し、判定に基づいて前記各セルの電圧を調整するための指令信号を出力する、セルバランス方法。
【請求項7】
前記電池モジュールが、前記複数の二次電池の各セルに並列して配置されたセル電圧計測回路及びセルバランス放電回路を含み、
前記電流センサが、前記セル電圧計測回路を流れるセル電圧計測電流によって発生する磁界から、前記セル電圧計測電流を計測し、それにより前記各セルの電圧を計測し、
計測された前記各セルの電圧値に基づいて前記各セルの充電状態を判定し、
セルの電圧が予め設定した上限電圧を超える場合に、前記制御部からの指令信号に基づき、前記セルバランス放電回路によって前記上限電圧を超えたセルを放電し、
前記セルの放電とともに、前記電流センサによって、前記セルバランス放電回路を流れる前記セルバランス放電電流を計測し、それにより前記セルの電圧を計測することにより、前記上限電圧を超えたセルの電圧を予め設定した電圧範囲内になるように調整する、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置内の配線量を低減することができ、かつメンテナンスが容易なセルバランス装置及びセルバランス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)等では、リチウムイオン電池等の二次電池を複数接続した組電池が用いられており、また、太陽電池システムにおいても夜間電力活用のための複数の二次電池を接続した組電池が用いられている。組電池を構成する複数のセル(単電池)は、製造上のばらつき等のために、一般に充電状態(SOC:State of charge)にばらつきを生じる。一方、各セルは、過充電や過放電による熱暴走を防ぐため、セル電圧(セルの両端電圧)が予め設定した下限電圧から上限電圧の範囲に収まるように使用する必要がある。各セルをそのように使用するためには、各セルの充電状態のばらつきを一定の範囲に抑える必要があり、各セルの端子電圧、電流等を測定することにより各セルの充電状態を推定し、セルバランスを実行することが必要となる。
【0003】
図6に従来のセルバランス装置の例を示す。この装置では、各セルの両端子を配線により電圧の計測モジュール31に接続すると共に、セルバランスを実施するために、各セルに別経路の配線を設けて放電スイッチSWに接続している。しかし、このような従来の装置では、特に多数のセルを接続した組電池(車載用バッテリセルでは96セル程度の構成になっている)の場合には、各セルと電圧計測モジュール等を繋ぐ配線によりセルバランス装置の重量が増加する、メンテナンスにおけるセル交換が煩雑になる、断線により配線の交換が必要になるなどの問題が生じていた。
【0004】
国際公開第2014/103008号には、電池コントローラと蓄電池モジュールとを有線で接続する方式では配線多数で絶縁やメンテナンスにコストがかかることから、電池情報を無線により伝送する通信部を有する蓄電池モジュール側管理装置と、蓄電池モジュール側管理装置と相互に無線通信して、それぞれの蓄電池モジュールを管理する管理装置とを有する組電池システムが開示されている。また、特開平07-110343号には、検出導線に流れる直流電流の変化に基づくコア内の磁束変化を直接ホール素子によって検知する、直流の漏電ブレーカー等に使用する直流電流センサが開示され、特開2002-189039号には、磁気回路を形成するU字状の鉄心と、磁気回路の磁束量を検出する磁気検出素子と、センサ筐体とを有する、小型のインバータ装置に装着可能な電流センサが開示されている。特開2020-193876号には、導体(バスバー)内を流れる被測定電流の周りに発生する磁界を、磁界の検出感度が最大となる感度軸方向を有する磁力センサで検出し、それにより被測定電流の電流値を算出する電流センサが開示されている。しかし、組電池の各セルの電流、電圧等の電池情報を磁力センサで測定することにより、組電池の配線の問題を解決するセルバランス装置はこれまで報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2014/103008号
【特許文献2】特開平07-110343号公報
【特許文献3】特開2002-189039号公報
【特許文献4】特開2020-193876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、装置内の配線量を低減することができ、かつメンテナンスが容易なセルバランス装置及びセルバランス方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討の結果、電池モジュールの各セル(単電池)を流れる電流によって発生する磁界を電流センサを用いて検出することにより、各セルを配線によって電流センサに接続することなく、電流センサと非接触で各セルの電圧を測定できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明のセルバランス装置は、複数の二次電池を接続してなる組電池を含む電池モジュールと、前記複数の二次電池の各セルの電圧を計測するセル電圧計測部と、前記セル電圧計測部において計測された前記各セルの電圧値に基づいて、前記各セルの電圧を調整するための指令信号を出力する制御部とを含み、前記電圧計測部は、前記各セルを流れる電流によって発生する磁界を検出するように構成された1つ以上の電流センサを含み、前記電池モジュールと前記セル電圧計測部の前記電流センサは非接触である。
【0008】
電池モジュールの組電池は、複数の二次電池が直列、並列、又はこれらの組み合わせにより接続されていてもよい。一形態において、本発明に用いる電池モジュールは、複数の二次電池が直列に接続されている。
【0009】
一形態において、本発明に用いる電池モジュールは、複数の二次電池の各セルに並列して配置されたセル電圧計測回路及びセルバランス放電回路をさらに含む。一形態において、本発明に用いる電池モジュールは回路切替スイッチを含み、電池モジュールの各セルは、回路切替スイッチにより、セル電圧計測回路と接続、セルバランス放電回路と接続、又はセル電圧計測回路及びセルバランス放電回路の両方と非接続のいずれかに切替えられる。
【0010】
電池モジュールが、セル電圧計測回路及びセルバランス放電回路を含む場合、前記各セルを流れる電流によって発生する磁界は、セル電圧計測回路を流れるセル電圧計測電流、又はセルバランス放電回路を流れるセルバランス放電電流によって発生する磁界である。
【0011】
一形態において、本発明のセルバランス装置は、電池モジュールの複数の二次電池のそれぞれのセルに対し、電流センサが非接触で配置されている。一形態において、本発明のセルバランス装置は、電池モジュールが複数のブロックにより構成され、各ブロックに含まれる複数のセルに対し、1つの電流センサが非接触で配置されている。
【0012】
本発明のセルバランス方法は、複数の二次電池を接続してなる組電池を含む電池モジュールと、前記複数の二次電池の各セルを流れる電流によって発生する磁界を検出するように構成された1つ以上の電流センサを含むセル電圧計測部と、制御部とを含み、前記電池モジュールと前記セル電圧計測部の前記電流センサは非接触であり、前記セル電圧計測部は、前記電流センサによって前記各セルを流れる電流を計測し、それにより前記各セルの電圧を計測し、前記制御部は、前記セル電圧計測部において計測された前記各セルの電圧値に基づいて前記各セルの充電状態を判定し、判定に基づいて前記各セルの電圧を調整するための指令信号を出力する。
【0013】
一態様において、本発明のセルバランス方法は、電池モジュールが、複数の二次電池の各セルに並列して配置されたセル電圧計測回路及びセルバランス放電回路を含み、電流センサが、セル電圧計測回路を流れるセル電圧計測電流によって発生する磁界からセル電圧計測電流を計測し、それにより各セルの電圧を計測し、計測された各セルの電圧値に基づいて各セルの充電状態を判定し、セルの電圧が予め設定した上限電圧を超える場合に、制御部からの指令信号に基づき、セルバランス放電回路によって上限電圧を超えたセルを放電し、セルの放電とともに、電流センサによって、セルバランス放電回路を流れるセルバランス放電電流を計測し、それによりセルの電圧を計測することにより、上限電圧を超えたセルの電圧を予め設定した電圧範囲内になるように調整する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(1)は本発明の1つの実施形態によるセルバランス装置を示す概略説明図であり、(2)はセルバランス装置(1)のA部分を示す部分拡大説明図である。
【
図2】本発明の1つの実施形態によるセルバランス装置のシステムブロック図である。
【
図3】電流センサによりセル電圧計測電流又はセルバランス放電電流を計測するスキームを示す模式図である。
【
図4】本発明の1つの実施形態によるセル電圧計測部の構成を示す概略説明図である。
【
図5】本発明の1つの実施形態によるセルバランス装置の電流計測方式を示す概略説明図であり、(a)は電池パックの概略斜視図であり、(b)は電池モジュールの測定絶縁導体と、電流センサの配置を示す概略説明図である。
【
図6】従来のセルバランス装置の一例を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のセルバランス装置は、複数の二次電池を接続してなる組電池を含む電池モジュールと、該複数の二次電池の各セルの電圧を計測するセル電圧計測部と、該セル電圧計測部において計測された各セルの電圧値に基づいて、各セルの電圧を調整するための指令信号を出力する制御部とを含む。
【0016】
電池モジュールの組電池は、複数の二次電池が直列、並列、又はこれらの組み合わせにより接続されていてよい。例えば、実用的な電圧を確保するために複数の二次電池が直列に接続されてもよいし、蓄電装置容量を確保するために複数の二次電池が並列に接続されてもよい。車載用の電池モジュールとするためには、複数の二次電池が直列に接続された組電池が好ましい。
【0017】
一形態において、電池モジュールは、各セルの電圧を計測するためのセル電圧計測回路、及びセル電圧が許容範囲の上限を超えたセルを放電するためのセルバランス放電回路を含み、セル電圧計測回路及びセルバランス放電回路は、好ましくは二次電池の各セルに並列して配置される。各セルに対応するセル電圧計測回路及びセルバランス放電回路は、それぞれの回路内に対応するセルを含む。セル電圧計測回路にはセル電圧計測電流が流れ、セルバランス放電回路にはセルバランス放電電流が流れる。
【0018】
本発明のセルバランス装置は、電池モジュールの各セルを流れる電流を電流センサによって計測する。電流センサは、各セルを流れる電流によって発生する磁界を検出するように構成されており、検出された磁界から各セルを流れる電流値を計測する。電池モジュールが、セル電圧計測回路及びセルバランス放電回路を含む場合、上記各セルを流れる電流は、セル電圧計測回路を流れるセル電圧計測電流、又はセルバランス放電回路を流れるセルバランス放電電流である。
【0019】
本発明に用いる電流センサは、導線を流れる電流によって発生する磁界(磁束)から当該導線を流れる電流を検出するセンサであれば特に限定されず、公知の電流センサを用いることができる。例えば、導線を流れる磁束を検出し、磁束密度もしくは磁束変化に応じて信号を出力し、それにより導線を流れる電流を検出するセンサであってよい。電流センサの構成も特に限定されない。例えば、特開平07-110343号、特開2002-189039号等に開示されているセンサの構成、又は公知のセンサを組み合わせた構成であってよい。
【0020】
本発明に用いる電流センサは、例えば、セルバランス装置のセル電圧計測回路又はセルバランス放電回路を流れる電流によって発生する磁界を検出するように構成されたセンサである。電流センサは、セル電圧計測回路を流れる電流(セル電圧計測電流)により発生した磁界からセル電圧計測電流値I1を計測することができる。このときのセルの電圧値(V0)は、V0=I1×R1(R1はセル電圧計測回路に含まれる抵抗値を表す)から求めることができる。また、電流センサは、セルバランス放電回路を流れる電流(セルバランス放電電流)により発生した磁界からセルバランス放電電流値I1’を計測することもできる。このときのセルの電圧値(V0)は、V0=I1’×R2(R2はセルバランス放電回路に含まれる抵抗値を表す)から求めることができる。
【0021】
本発明のセルバランス装置は、セル電圧計測部で計測された各セルの電圧値(V0)に基づいて各セルの充電状態を推定する。充電状態を推定する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、電池等価回路を用いる方法、非線形カルマンフィルタを用いる方法等が挙げられる。制御部には、許容される充電状態の範囲が予め設定されており、各セルの電圧値(V0)の許容される上限値(上限電圧)及び下限値(下限電圧)が設定されている。
【0022】
制御部は、予め設定された許容範囲に基づいて、測定された各セルの電圧値が許容されるか否かを判定し、電圧値が許容範囲を超えていると判定した場合には、各セルの電圧を調整するための指令信号を出力する。制御部から指令信号に基づいて、必要と判定されたセルについてセルバランスを実施する。セルバランスを実施する方法は公知の方法であってよい。例えば、パッシブ方式(充電状態が過剰なセルから放電する方式)又はアクティブ方式(充電状態が過剰なセルから充電状態が不足しているセルへ電荷を分配する方式)のいずれの方式であってもよい。
【0023】
制御部から指令信号を出力する方法は、有線による方法であっても無線通信による方法であってもよい。本発明のセルバランス装置は、装置内の配線量を低減する観点から、無線通信による方法がより好ましい。無線通信により指令信号を出力する場合、装置内の通信の干渉を防止する観点から電池モジュール、セル電圧計測部等を金属筐体等に収容するのが好ましい。
【0024】
本発明のセルバランス装置は、上記構成以外にも一般にセルバランス装置に含まれる構成を含むことができる。例えば、セルの過充電、過放電を保護する回路、セルの温度を計測するセンサ、計測されたセルの温度及び電圧に基づいて電池の劣化を評価するシステム等を備えていてもよい。
【0025】
本発明のセルバランス装置を
図1を参照しながらさらに詳細に説明する。
図1は本発明の1つの実施形態による車載用のセルバランス装置を示し、セルバランス装置1は、電池モジュール(電池パック)2と、セル電圧計測部3と、制御部(図示せず)とを含む。電池パック2は、直列に接続された二次電池のセル(C
1~C
n)、各セルに並列して配置されたセル電圧計測回路及びセルバランス放電回路を含む。二次電池のセル(C
1~C
n)にはモータ駆動電流I
0が流れる。
図1の部分Aは回路切替装置(SW
1~SW
n)を示し、各回路切替装置はセルに並列に配置された抵抗R1(セル電圧計測用)と抵抗R2(セルバランス放電用)、及び回路切替スイッチ103を含む。抵抗R1を含む回路はセル電圧計測回路を構成し、抵抗R2を含む回路はセルバランス放電回路を構成する。セル電圧計測回路とセルバランス放電回路は回路切替スイッチ103によって切替えることができる。また、切替スイッチ103は、セル電圧計測回路及びセルバランス放電回路のいずれにも接続しない状態(ニュートラル)にあることもできる。したがって、電池モジュールの各セルは、セル電圧計測回路と接続、セルバランス放電回路と接続、又はセル電圧計測回路及びセルバランス放電回路の両方と非接続のいずれかの状態にある。
【0026】
セル電圧計測部3は計測モジュール21を含み、計測モジュール21は電流センサ101を含む。
図1に示す例では、制御部は指令信号を無線により通信する。無線通信による干渉を防止するために、電池パック2は電池パック筐体25に収容されており、セル電圧計測部3は測定モジュール筐体26に収容されている。セル電圧計測回路は測定絶縁導体104を含み、測定絶縁導体104は電流計測ポイントとなる。電池パック筐体25は、測定絶縁導体104が配置された部分が開口しており、測定絶縁導体104は電池パック2の外部に対し露出している。計測モジュール21の電流センサ101は、測定絶縁導体104に対向するように配置されており、測定モジュール筐体26は、電流センサ101が配置された部分が開口している。
【0027】
本発明のセルバランス装置は、無線通信をする場合に通信の干渉を防ぐことができる構造であるのが好ましい。筐体25の測定絶縁導体104が配置された部分、及び筐体26の電流センサ101が配置された部分の構造は、
図1に示す構造に限定されず、例えば、磁界を疎外しない材料(例えば、プラスチック材料)を用いた構造であってもよい。測定絶縁導体104は、筐体25に開口を設けずに電池パック2の外へ露出する構造であってもよく、電池パック2の外へ露出しない構造であってもよい。電流センサ101は筐体26の外へ露出する構造であってもよい。
【0028】
電流センサ101及び測定絶縁導体104の配置は、測定絶縁導体104を流れる電流を適切に計測できる配置であればよく、
図1に示すような電流センサ101が測定絶縁導体104に対向する配置に限定されない。例えば、電流センサ101が測定絶縁導体104を非接触で囲むような配置であってもよい。
【0029】
電流センサ101は、セル電圧計測回路(抵抗R1を含む)を流れるセル電圧計測電流I1によって発生する磁界H、又はセルバランス放電回路(抵抗R2を含む)を流れるセルバランス放電電流I1’によって発生する磁界Hを検出できるように構成されている。電池モジュール2とセル電圧計測部3の電流センサ101は配線等により接続されておらず、非接触である。各セルの電圧値V0は、電流センサ101によって測定された電流I1又は電流I1’の値からセル電圧計測部3の例えばCPUにより算出することができる。
【0030】
図1に示すセルバランス装置を用いてモータ駆動電流を放電する場合、回路切替スイッチ103はニュートラル(セル電圧計測回路及びセルバランス放電回路のいずれにも接続していない)にあり、電池モジュールを外部のモータと接続することにより、組電池にはモータ駆動電流I
0が流れる。各セルの電圧を計測してセルの充電状態を調べる場合、制御部から各セルの回路切替装置(SW
1~SW
n)へ指令信号を送り、回路切替スイッチ103によって各セルをセル電圧計測回路と接続し、セル電圧計測回路にセル電圧計測電流I
1を流す。セル電圧計測回路の測定絶縁導体104には電流I
1による磁界Hが発生し、計測モジュール21の電流センサ101はこの磁界Hを検出し、磁界Hからセル電圧計測電流値I
1を計測する。セル電圧計測部3は、計測された電流値からCPUによってセルの電圧値V
0をV
0=I
1×R1により算出する。
【0031】
セル電圧計測回路を流れる電流及び計測モジュールは、時間分割で切り替えて制御することもできる。セル電圧計測回路及び計測モジュールに対し計測時のみ通電することにより消費電力を抑えることができる。例えば、300セルの電池モジュールの場合、1セルあたりの計測時間を2~6ミリ秒、例えば4ミリ秒とすると、300セルの1回のスキャン時間は1.2秒(4ミリ秒×300)となる。また、1回のスキャンから次のスキャンまでの間隔を10秒とすると、1時間あたりの計測回数は約321回(3600/11.2)であり、1セルに対する通電時間は約1.3秒/時間(4ミリ秒×321)となる。このように、セル電圧計測電流及び計測モジュールを時間分割で切り替えて制御することにより、セルバランス装置の消費電力を抑えることができる。
【0032】
電流センサ101によって計測されたセル電圧値V0は制御部へ送られ、制御部において各セルの電圧値V0が設定した許容範囲にあるか否かを判定する。計測したセルの電圧V0が予め設定したセル電圧の上限電圧を超えた場合、制御部は当該セルについて指令信号を出力し、上限電圧を超えたセルは回路切替スイッチ103によってセルバランス放電回路と接続する。セルバランス放電回路によってセルの電圧が上限電圧以下(予め設定した電圧範囲内)になるように放電する。このとき、電流センサ101は、セルバランス放電回路を流れるセルバランス放電電流によって発生する磁界を検出することができ、磁界Hからセルバランス放電電流I1’を計測し、セルの電圧値(V0)をV0=I1’×R2により算出することができる。したがって、セルバランス放電回路を用いてセルを放電している間、電流センサ101によって当該セルの電圧をモニタリングすることができ、これによりセル電圧値(V0)が予め設定した上限電圧以下となるように調整することができる。
【0033】
本発明のセルバランス装置は、例えば、電池モジュールの直列に接続された全セルを通すモータ駆動電流と、各セルごとに独立して制御する計測用電流を別回路とすることにより、走行中モータ駆動電流が流れている状態でも各セルの計測電流によりセル電圧を計測することが可能である。電池モジュールの各セルは、直列接続されたモータ駆動電流と並行して各セルごとに計測電流(セル電圧計測電流とセルバランス放電電流)を適宜選択して流し、それにより走行中に各せルのセル電圧を計測し、各セルの充電状態を把握することが可能である。
【0034】
図2に本発明の1つの実施形態によるセルバランス装置のシステムブロック図を示す。セルバランス装置11は、電池モジュール12、セル電圧計測部13、及び制御部(電池管理ユニットBMU)14を含む。電池モジュール12は、直列に接続された二次電池のセル(C
1~C
n)と、各セルに並列して配置されたセル電圧計測回路及びセルバランス放電回路とを含み、電池モジュール12は外部ユニット17(モータ、インバータ等)と接続している。セル電圧計測/セルバランス放電回路には回路切替装置(SW
1~SW
n)が組み込まれており、各回路切替装置は回路切替スイッチ203を含み、回路切替スイッチ203によって各セルは、抵抗R1を含むセル電圧計測回路(M)との接続、抵抗R2を含むセルバランス放電回路(B)との接続、セル電圧計測回路及びセルバランス放電回路のいずれとも非接続(N)の3通りに切替えられる。
図2に示す例では、回路切替スイッチ203はFETスイッチであるが、本発明に用いる回路切替スイッチはこれに限定されず、LSIスイッチ等であってもよい。回路切替スイッチ203によってセルがセル電圧計測回路(M)と接続すると、セル電圧計測回路(M)にはセル電圧計測電流I
1(V
0=I
1×R1)が流れる。セル電圧計測/セルバランス放電回路には測定絶縁導体204が設けられており、測定絶縁導体204にはセル電圧計測電流I
1に基づく磁界が発生する。測定絶縁導体204は、セルを流れる電流値を計測可能なように電流センサ201に対して配置されている。
【0035】
電池モジュール12は、各セルの温度を計測する温度センサ205を含む。温度センサ205は二次電池のセル(C
1~C
n)の温度を計測する。温度センサ205はセル制御ユニット15に接続し、セル制御ユニット15は、温度センサ205から送られる各セルの温度データに基づき、高温時の警報発出やセルの遮断を行う。セル制御ユニット15は制御部(電池管理ユニットBMU)14等と信号を送受信するが、
図2に示す例では、直列接続されたセルの高電圧の電流から低電圧で作動する制御機器の保護や安全を考慮し、アイソレーション16を設けている。
【0036】
セル電圧計測部13は、各セルに対応する電流センサ201(株式会社SIRC製)、及び各電流センサ201に接続する電流管理モジュール(CM1~CMn)を含む。各電流センサ201は、各測定絶縁導体204に対向するように配置されており、測定絶縁導体204で発生する磁界Hを検出する。
【0037】
電流センサ201を用いてセル電圧計測電流I
1(又はセルバランス放電電流I
1’)を計測する方法を
図3に模式的に示す。Aは電池モジュール12のセル電圧計測回路(又はセルバランス放電回路)の電流線であり、Bはセル電圧計測部13の電流センサ201を通る電流線であり、電流線Bは計装アンプ211に接続している。電流線Aではセル電圧計測電流I
1(又はセルバランス放電電流I
1’)により磁界Hが発生する。磁界HはH=αI
1(又はH=αI
1’)により表される(αは係数を表す)。発生した磁界Hは電流センサ201の電気抵抗を変化させる(ΔRmr)磁気抵抗効果をもたらす。電気抵抗変化(ΔRmr)は、ΔRmr=βH(βは係数を表す)=αβI
1(又はαβI
1’)により表され、電流センサ201によって検出される電圧変化(ΔVmr)は、ΔVmr=ΔRmr×I
2(I
2は電流センサ201を流れる電流を表す)=αβI
1×I
2(又はαβI
1’×I
2)により表される。ここで、電流センサ201を流れる電流I
2を固定すると、電流センサ201によって検出される電圧変化(ΔVmr)はセル電圧計測電流I
1(又はセルバランス放電電流I
1’)に比例し、ΔVmrからセル電圧計測電流I
1(又はセルバランス放電電流I
1’)を計測することができる。したがって、各セルの充電状態を調べるときのセル電圧V
0は、電流センサ201により計測したセル電圧計測電流I
1からV
0=I
1×R1により求めることができ、セルバランス放電時のセル電圧V
0は、電流センサ201により計測したセルバランス放電電流I
1’からV
0=I
1’×R2により求めることができる。
【0038】
図2に示すセルバランス装置のセル電圧計測部13(電流センサ201及び電流管理モジュールCM
1~CM
n)の構成例を
図4に示す。セル電圧計測部13は、電流センサ201、計装アンプ211、A/Dコンバータ212、データ処理ユニット213、及び電源コントローラ214を有し、電流センサ201によって検出した信号は、計装アンプ211により増幅され、A/Dコンバータ212により電気信号に変換された後、データ処理ユニット213によりセル電圧V
0に変換される。計測された各セルのセル電圧のデータは制御部14(CPUを含む)に送信される。
【0039】
制御部14において、セル電圧計測部13により計測された各セルのセル電圧V0、及びセル制御ユニット15から送られた各セルの温度情報に基づいて、各セルのセル電圧が予め設定したセル電圧の許容範囲に入るか否かを判定する。セル電圧V0が予め設定した上限電圧を超える場合、制御部14は電池モジュール12にセルの電圧を調整するための指令信号を出力し、回路切替スイッチ203によって当該セルとセルバランス放電回路を接続する。セルバランス放電回路により、セル電圧が設定した許容範囲に入るまで放電する。
【0040】
電池モジュール12からモータへ駆動電流を放電する場合、制御部14からの指令信号により回路切替スイッチ203を非接続(N)とし(セル電圧計測/セルバランス放電回路は無電流)、電池モジュール12の直列に接続されたセルに駆動電流I0が流れる。
【0041】
図5に本発明の別の1つの実施形態によるセルバランス装置を示す。
図5(a)に示す電池パック22は複数の二次電池を接続した組電池を含み、二次電池の各セルの両端子にはセル電圧計測/セルバランス放電回路が接続され、各セルのセル電圧計測/セルバランス放電回路の測定絶縁導体304が電池パック22の側面に、電流センサによって電流を計測可能な状態で配置されている。
図5(a)に示すように、測定絶縁導体304は、測定絶縁導体304-1、測定絶縁導体304-2、及び測定絶縁導体304-3の3列に分けて配置されている。また、測定絶縁導体304は複数のブロックから構成され、各ブロックは測定絶縁導体304-1、測定絶縁導体304-2、及び測定絶縁導体304-3の各列の測定絶縁導体を1つずつ含む。電流センサ301は、各ブロックに対し1つの電流センサ301が配置されている。
【0042】
図5(b)は、各ブロックにおける測定絶縁導体304と電流センサ301の配置を示す。
図5(b)に示すように、電流センサ301は、測定絶縁導体304-1、測定絶縁導体304-2、及び測定絶縁導体304-3に対向して配置されている。このとき、電流センサ301と測定絶縁導体304-1、及び電流センサ301と測定絶縁導体304-3の距離はL
1であり、電流センサ301と測定絶縁導体304-2の距離はL
2である。測定絶縁導体304を流れる電流値を計測する場合、電流センサ301によって測定絶縁導体304-1、測定絶縁導体304-2、及び測定絶縁導体304-3を順次計測すると共に、電流センサ301と各測定絶縁導体304との距離(L
1、L
2)と、それによる磁界減衰量を考慮し、距離を補正して各測定絶縁導体304を流れる電流の電流値を計測する。
【0043】
本発明のセルバランス装置は、複数の二次電池のセルと1つ以上の電流センサを含む。本発明のセルバランス装置は、
図1及び
図2に示すように各セルのそれぞれに対し電流センサを配置した構成に限られず、例えば、
図5に示すように複数の二次電池のセルに対し1つの電流センサを配置した構成であってもよい。
【0044】
本発明のセルバランス装置は、電池モジュールと電流センサとを非接触の状態でセル電圧を計測することができる。したがって、電池モジュールと電流センサを配線で繋ぐ必要がなく、装置内の配線量を大幅に低減することが可能である。また、セル電圧計測とセルバランス放電を切替スイッチによって切替える簡潔な回路構成とすることにより、装置内の配線量を一層低減することが可能である。さらに、セル電圧計測電流及び計測モジュールは時間分割で切り替えて制御することにより、消費電力を抑えることも可能である。本発明のセルバランス装置によれば、配線量を低減し、装置の重量を低減することができ、製造コストを低減することができる。また、配線量が少ないことからセル交換を効率的に行うことができ、配線量が少ないことから断線が少なく、絶縁不良、漏電等を防ぐこともできる。
【符号の説明】
【0045】
1、11・・・セルバランス装置
2、12、22、32・・・電池モジュール(電池パック)
3、13・・・セル電圧計測部
14・・・制御部
15・・・セル制御ユニット
17・・・外部ユニット
21、31・・・計測モジュール
25・・・電池パック筐体
26・・・測定モジュール筐体
101、201、301・・・電流センサ
103、203・・・回路切替スイッチ
104、204、304・・・測定絶縁導体
205・・・温度センサ
211・・・計装アンプ
212・・・A/Dコンバータ
213・・・データ処理ユニット
214・・・電源コントローラ
C1~Cn・・・二次電池のセル
SW1~SWn・・・回路切替装置
CM1~CMn・・・電流管理モジュール