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▶ ナノブリッジ・セミコンダクター株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055147
(43)【公開日】2023-04-17
(54)【発明の名称】記憶回路
(51)【国際特許分類】
   G11C 13/00 20060101AFI20230410BHJP
【FI】
G11C13/00 270D
G11C13/00 230
G11C13/00 270J
G11C13/00 480Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164308
(22)【出願日】2021-10-05
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人新エネルギー産業技術総合開発機構「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発/革新的AIエッジコンピューティング技術の開発/不揮発省電力FPGAコアを用いた低遅延AI処理コンピューティング技術の研究開発」の委託研究、産業技術力強化法17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】520041932
【氏名又は名称】ナノブリッジ・セミコンダクター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白 旭
(72)【発明者】
【氏名】阪本 利司
(72)【発明者】
【氏名】宮村 信
(72)【発明者】
【氏名】根橋 竜介
(72)【発明者】
【氏名】船橋 一訓
(72)【発明者】
【氏名】杉林 直彦
(57)【要約】
【課題】セット動作及びリセット動作において、記憶素子に流れる電流を制御できるようにする。
【解決手段】記憶セルCは、二つの端子を持つ記憶素子20と、第一のトランジスタM0と、第二のトランジスタM1と、を備える。第一のトランジスタM0のゲート端子に電源電圧VDDが印加され、ドレーン端子が第二のトランジスタM1のゲート端子に接続され、第二のトランジスタM1のドレーン端子が記憶素子20の第一端子に接続される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの端子を持つ記憶素子と、
第一のトランジスタと、
第二のトランジスタと、
を備える記憶セルを有し、
前記第一のトランジスタのゲート端子に電源電圧が印加され、ドレーン端子が前記第二のトランジスタのゲート端子に接続され、
前記第二のトランジスタのドレーン端子が前記記憶素子の第一端子に接続される
記憶回路。
【請求項2】
請求項1に記載の記憶回路であって、
前記記憶素子は、固体電解質を活性電極と非活性電極で挟む構造を有し、
前記活性電極が前記記憶素子の第一端子となり、
前記非活性電極が前記記憶素子の第二端子となる
記憶回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の記憶回路であって、
前記記憶セルを複数有し、
前記第一のトランジスタのソース端子が、前記記憶セルの第一端子となり、
前記第二のトランジスタのソース端子が、前記記憶セルの第二端子となり、
前記記憶素子の第二端子が、前記記憶セルの第三端子となり、
前記複数の記憶セルが2次元状に配列され、
同じ行に配列された複数の前記記憶セルの第一端子が同じワード線と接続され、
同じ列に配列された複数の前記記憶セルの第二端子が同じビット線と接続され、
同じ列に配列された複数の前記記憶セルの第三端子が同じソース線と接続される
記憶回路。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の記憶回路であって、
前記記憶セルは、第三のトランジスタを更に備え、
前記第三のトランジスタのゲート端子が前記第一のトランジスタのドレーン端子に接続され、ドレーン端子が前記第二のトランジスタのソース端子に接続される
記憶回路。
【請求項5】
請求項4に記載の記憶回路であって、
前記記憶セルを複数有し、
前記第一のトランジスタのソース端子が、前記記憶セルの第一端子となり、
前記第三のトランジスタのソース端子が、前記記憶セルの第二端子となり、
前記記憶素子の第二端子が、前記記憶セルの第三端子となり、
前記複数の記憶セルが2次元状に配列され、
同じ行に配列された複数の前記記憶セルの第一端子が同じワード線と接続され、
同じ列に配列された複数の前記記憶セルの第二端子が同じビット線と接続され、
同じ列に配列された複数の前記記憶セルの第三端子が同じソース線と接続される
記憶回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、記憶回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
典型的な不揮発性抵抗変化メモリでは、1個のセルトランジスタと1個の記憶素子とで1T1Rメモリセルを構成し、メモリセルを2次元状に配列したメモリアレイを備えている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、非特許文献1には記憶素子の一種として、固体電解質を活性電極と非活性電極で挟む構造を持つ記憶素子が開示されている(図9A図9B参照)。図9Aに示すように、セット電圧VSETとグランドGNDをそれぞれ活性電極と非活性電極に印加する時に、金属の架橋を形成し、記憶素子が低抵抗(ON)状態に遷移する。この動作をセット動作と呼ぶ。
【0004】
また、図9Bに示すように、リセット電圧VRSTとグランドGNDをそれぞれ非活性電極と活性電極に印加する時に、生成した架橋が消失し、記憶素子が高抵抗(OFF)状態に遷移する。この動作をリセット動作と呼ぶ。
【0005】
この1T1Rメモリセルはセルトランジスタと記憶素子の接続方式に基づいて二種類に分けられる(図10A図10B図11A図11B)。セルトランジスタはN型MOS(NMOS)トランジスタあるいはP型MOS(PMOS)トランジスタで構成できるが、以下では、NMOSトランジスタを用いた場合について説明する。図10Aに示すように、NMOSトランジスタが非活性電極と接続される接続方式では、セット時に、セット電圧VSETとグランドGNDをそれぞれ活性電極とNMOSトランジスタのドレーン端子に印加し、NMOSトランジスタのゲート端子に入力される選択信号VGの電圧調整によりセット電流の制御ができる。
【0006】
また、図11Bに示すように、NMOSトランジスタが活性電極と接続される接続方式では、リセット時に、リセット電圧VRSTとグランドGNDをそれぞれ非活性電極とNMOSセルトランジスタのドレーン端子に印加し、NMOSトランジスタのゲート端子に入力される選択信号VGの電圧調整によりリセット電流の制御ができる。
【0007】
このように、記憶セルのトランジスタを用いてセット電流あるいはリセット電流が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004-119958号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】M. Tada, K. Okamoto, T. Sakamoto, M. Miyamura, N. Banno, and H. Hada, "Polymer Solid-Electrolyte (PSE) Switch Embedded on CMOS for Nonvolatile Crossbar Switch", IEEE TRANSACTION ON ELECTRON DEVICES, Vol. 58, No. 12, pp.4398-4405, (2011).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記図10A図10B図11A図11Bの1T1Rメモリセルをそれぞれリセットする時及びセットする時に、リセット電圧VRSTとセット電圧VSETがNMOSトランジスタ経由で記憶素子に印加される。
【0011】
このとき、NMOS閾値電圧落ち問題を回避するため、NMOSトランジスタのゲート端子に入力される選択信号VGの電圧を標準の電圧より高い電圧(オーバードライブ電圧)に設定する。例えば、図10Bに示すように、NMOSトランジスタが非活性電極と接続される接続方式では、リセット時に、リセット電圧VRSTのNMOS閾値電圧落ち問題を回避するため、NMOSトランジスタのゲート端子に入力される選択信号VGの電圧をオーバードライブ電圧に設定する。これにより、選択信号VGの電圧の調整によるリセット電流を制御できない課題がある。
【0012】
また、図11Aに示すように、NMOSトランジスタが活性電極と接続される接続方式では、セット時に、セット電圧VSETのNMOS閾値電圧落ち問題を回避するため、NMOSトランジスタのゲート端子に入力される選択信号VGの電圧をオーバードライブ電圧に設定する。これにより、選択信号VGの電圧の調整によるリセット電流を制御できない課題がある。
【0013】
また、図12は、NMOSトランジスタが非活性電極と接続される接続方式の1T1Rメモリセルのメモリアレイ構造を有する記憶回路300を示す。各ワード線WL0~WL2が同じ行の全てのトランジスタに接続され、選択セルである記憶セルC01をリセットする時に同じ行の非選択セルである記憶セルC11にもオーバードライブ電圧を印加する。リセット時間をT、同じ行のリセットするメモリセル数をNとするとき、同じ行の全てのトランジスタにT×Nの時間でオーバードライブ電圧を印加するため、トランジスタの信頼性低下の課題がある。
【0014】
また、図13は、NMOSトランジスタが活性電極と接続される接続方式の1T1Rメモリセルのメモリアレイ構造を有する記憶回路400を示す。
【0015】
各ワード線WL0~WL2が同じ行の全てのトランジスタに接続され、選択セルである記憶セルC01をセットする時に同じ行の非選択セルである記憶セルC11にもオーバードライブ電圧を印加する。セット時間をT、同じ行のセットするメモリセル数をNとするとき、同じ行の全てのトランジスタにT×Nの時間でオーバードライブ電圧を印加するため、トランジスタの信頼性低下の課題がある。
【0016】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、セット動作及びリセット動作において、記憶素子に流れる電流を制御できる記憶回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために本発明に係る記憶回路は、二つの端子を持つ記憶素子と、第一のトランジスタと、第二のトランジスタと、を備える記憶セルを有し、前記第一のトランジスタのゲート端子に電源電圧が印加され、ドレーン端子が前記第二のトランジスタのゲート端子に接続され、前記第二のトランジスタのドレーン端子が前記記憶素子の第一端子に接続される。
【0018】
本発明に係る記憶回路によれば、記憶セルのセット動作において、第二のトランジスタのソース端子に印加される電圧がセット電圧に立ち上がる際に、第二のトランジスタのソース及びゲート間の容量のカップリングによってゲート電圧がオーバードライブ電圧に引き上げられる。第二のトランジスタのゲート端子に印加されるオーバードライブ電圧が高いため、第二のトランジスタの抵抗が低くなり、セット電圧が記憶素子に印加される。記憶素子が高抵抗状態から低抵抗状態に変化した時に、オーバードライブ電圧が低くなり、記憶素子の二つの端子間の電位差である電圧が低くなり、記憶素子に流れる電流が制御される。
【0019】
また、記憶セルのリセット動作において、第二のトランジスタのソース端子に印加される電圧がハイインピーダンスになるため、記憶素子に印加される電圧がリセット電圧に立ち上がる際に、第二のトランジスタのドレーン端子もリセット電圧に立ち上がり、ソース及びゲート間の容量のカップリングによってゲート電圧がオーバードライブ電圧に引き上げられる。その後、第二のトランジスタのソース端子に印加される電圧がグランドになり、高いリセット電流が低抵抗状態の記憶素子に流れ、記憶素子が低抵抗状態から高抵抗状態に遷移する。このように、セット動作及びリセット動作において、記憶素子に流れる電流を制御できる。
【0020】
本発明の前記記憶回路であって、前記記憶素子は、固体電解質を活性電極と非活性電極で挟む構造を有し、前記活性電極が前記記憶素子の第一端子となり、前記非活性電極が前記記憶素子の第二端子となることができる。
【0021】
本発明の前記記憶回路であって、前記記憶セルを複数有し、前記第一のトランジスタのソース端子が、前記記憶セルの第一端子となり、前記第二のトランジスタのソース端子が、前記記憶セルの第二端子となり、前記記憶素子の第二端子が、前記記憶セルの第三端子となり、前記複数の記憶セルが2次元状に配列され、同じ行に配列された複数の前記記憶セルの第一端子が同じワード線と接続され、同じ列に配列された複数の前記記憶セルの第二端子が同じビット線と接続され、同じ列に配列された複数の前記記憶セルの第三端子が同じソース線と接続されるようにすることができる。
【0022】
当該記憶回路では、選択セルである記憶セルをセットする時及びリセットする時に、選択セルの第二のトランジスタのゲート端子には、オーバードライブ電圧が印加されるが、同じ行の非選択セルである記憶セルの第二のトランジスタのゲート端子にはオーバードライブ電圧が印加されない。当該記憶回路によれば、記憶セルのトランジスタの信頼性を向上させることができる。
【0023】
本発明の前記記憶回路であって、前記記憶セルは、第三のトランジスタを更に備え、前記第三のトランジスタのゲート端子が前記第一のトランジスタのドレーン端子に接続され、ドレーン端子が前記第二のトランジスタのソース端子に接続されるようにすることができる。当該記憶回路では、第二のトランジスタと第三のトランジスタが直列接続構造のため、セット電圧あるいはリセット電圧を分圧することができる。これにより、記憶セルの面積を削減できる。
【0024】
本発明に係る前記記憶回路であって、前記記憶セルを複数有し、前記第一のトランジスタのソース端子が、前記記憶セルの第一端子となり、前記第三のトランジスタのソース端子が、前記記憶セルの第二端子となり、前記記憶素子の第二端子が、前記記憶セルの第三端子となり、前記複数の記憶セルが2次元状に配列され、同じ行に配列された複数の前記記憶セルの第一端子が同じワード線と接続され、同じ列に配列された複数の前記記憶セルの第二端子が同じビット線と接続され、同じ列に配列された複数の前記記憶セルの第三端子が同じソース線と接続されるようにすることができる。
【0025】
当該記憶回路では、選択セルである記憶セルをセットする時及びリセットする時に、選択セルの第二のトランジスタ及び第三のトランジスタのゲート端子には、オーバードライブ電圧が印加されるが、同じ行の非選択セルである記憶セルの第二のトランジスタ及び第三のトランジスタのゲート端子にはオーバードライブ電圧が印加されない。当該記憶回路によれば、記憶セルのトランジスタの信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明の記憶回路によれば、セット動作及びリセット動作において、記憶素子に流れる電流を制御できる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1の実施形態に係る記憶回路の記憶セル部分の回路を示す回路図である。
図2】第1の実施形態に係る記憶回路の記憶セルのセット動作を説明するための各信号の波形の模式図である。
図3A】記憶素子の抵抗とブートストラップ電圧との関係を示すグラフである。
図3B】記憶素子の抵抗と記憶素子の印加電圧との関係を示すグラフである。
図4】第1の実施形態に係る記憶回路の記憶セルのセット動作を説明するための回路図である。
図5】第1の実施形態に係る記憶回路の記憶セルのリセット動作を説明するための各信号の波形の模式図である。
図6】第1の実施形態に係る記憶回路を示す回路図である。
図7】第2の実施形態に係る記憶回路の記憶セル部分の回路を示す回路図である。
図8】第2の実施形態に係る記憶回路を示す回路図である。
図9A】記憶セルのセット動作を説明するための図である。
図9B】記憶セルのリセット動作を説明するための図である。
図10A】従来技術に係る記憶回路の記憶セルのセット動作を説明するための回路図である。
図10B】従来技術に係る記憶回路の記憶セルのリセット動作を説明するための回路図である。
図11A】従来技術に係る記憶回路の記憶セルのセット動作を説明するための回路図である。
図11B】従来技術に係る記憶回路の記憶セルのリセット動作を説明するための回路図である。
図12】従来技術に係る記憶回路を示す回路図である。
図13】従来技術に係る記憶回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0029】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態の記憶回路の記憶セルC部分の回路を示す回路図である。
【0030】
記憶セルCは、記憶素子20と、第一のトランジスタM0と、第二のトランジスタM1を備える。この記憶セルCは、2T1Rメモリセルと呼ばれる。記憶素子20は、固体電解質20Aを活性電極20Bと非活性電極20Cで挟む構造を持つ。トランジスタM0のゲート端子に電源電圧VDDが印加され、ドレーン端子がトランジスタM1のゲート端子に接続される。第二のトランジスタM1のドレーン端子が記憶素子20の活性電極20Bに接続される。なお、第一のトランジスタM0及び第二のトランジスタM1が、NMOSトランジスタである場合を例に説明する。
【0031】
次に、図1図2を用いて記憶セルCのセット動作を説明する。第一のトランジスタM0のソース端子に入力される選択信号VGがグランドGNDから電源電圧VDDに立ち上がる時に、セット動作を開始する。NMOSトランジスタの閾値電圧をVTHとするとき、第二のトランジスタM1のゲート電圧VBSTはVDD-VTHとなる。この後、第二のトランジスタM1のソース端子に印加される電圧BLが、グランドGNDから、電源電圧VDDより高く、かつNMOSトランジスタのドレーン-ソース(DS)間耐圧より低いセット電圧VSETに立ち上がる際に、第二のトランジスタM1のソース-ゲート間の容量のカップリングによってゲート電圧VBSTが、セット電圧VSETより高いオーバードライブ電圧VBOOTに引き上げられる。なお、オーバードライブ電圧VBOOTの電圧レベルは、電源電圧VDDの調整により制御可能である。
【0032】
その後、記憶素子20の非活性電極20Cに印加される電圧SLがハイ・インピーダンス(Hi-Z)からグランドGNDになり、セット電圧VSETとグランドGNDとが記憶素子20の両端に印加され、記憶素子20が高抵抗(OFF)状態から低抵抗(ON)状態に遷移する。その後、非活性電極20Cに印加される電圧SLがハイ・インピーダンス(Hi-Z)に戻り、第二のトランジスタM1のソース端子に印加される電圧BLと選択信号VGが順次グランドGNDに立下り、セット動作が終了する。
【0033】
次に、図3A図3Bを用いて、記憶セルCのセット電流の制御について説明する。図3Aに示したように、引き上げたオーバードライブ電圧VBOOTは記憶素子20の抵抗RNBの減少に応じて下がる。図3Bに示したように、記憶素子20が高抵抗状態(>100KΩ)の時に、オーバードライブ電圧VBOOTが十分高いため、第二のトランジスタM1の抵抗が低くなり、セット電圧VSETがほぼ記憶素子20に印加される。そして、記憶素子20が高抵抗状態から低抵抗状態に変化した時に、オーバードライブ電圧VBOOTが低くなり、記憶素子20の活性電極20Bと非活性電極20Cの電位差である電圧VNBが低くなり、記憶素子20に流れる電流を制御できる。
【0034】
このように、ブートストラップで持ち上がったオーバードライブ電圧VBOOTは記憶素子20の抵抗減少に応じて下がるため、セット動作時、自動的に記憶素子20の印加電圧と流れる電流とを制御できる。
【0035】
次に、図4を用いて、記憶セルCのリセット電流の制御について説明する。リセット動作時に、図11Bに示した従来のリセット動作と同じように、選択信号VGの電圧調整によるリセット電流の制御ができる。すわなち、選択信号VGとして印加するVDDの電圧レベルを調整して、リセット電流を制御することができる。
【0036】
さらに、高いリセット電流を得るため、図5の信号シーケンスを投入する。選択信号VGがグランドGNDから電源電圧VDDに立ち上がる時に、リセット動作を開始する。NMOSトランジスタの閾値電圧をVTHとするとき、第二のトランジスタM1のゲート電圧VBSTはVDD-VTHとなる。第二のトランジスタM1のソース端子に印加される電圧BLがHi-Zになるため、記憶素子20の非活性電極20Cに印加される電圧SLが、グランドGNDから、電源電圧VDDより高く、かつNMOSトランジスタのDS間耐圧より低いリセット電圧VRSTに立ち上がる際に、第二のトランジスタM1のドレーン端子もグランドGNDからリセット電圧VRSTに立ち上がり、ソース-ゲート間の容量のカップリングによってゲート電圧VBSTが、リセット電圧VRSTより高いオーバードライブ電圧VBOOTに引き上げられる。なお、オーバードライブ電圧VBOOTの電圧レベルは、電源電圧VDDの調整により制御可能である。
【0037】
その後、第二のトランジスタM1のソース端子に印加される電圧BLがHi-ZからグランドGNDになり、高いリセット電流が低抵抗状態の記憶素子20に流れ、低抵抗状態から高抵抗状態に遷移する。その後、非活性電極20Cに印加される電圧SLと選択信号VGが順次グランドGNDに立下り、リセット動作が終了する。
【0038】
ここで、リセット電流を制御する理由について説明する。リセット動作の時に、記憶素子20が、低抵抗(ON)状態から高抵抗(OFF)状態に遷移し、高抵抗(OFF)状態の抵抗値はリセット動作時に流れる電流(リセット電流)で決まる。すなわち、リセット電流が大きいほど、高抵抗(OFF)状態の抵抗値が大きくなる。また、応用によって、必要なOFF抵抗値が変わる。例えば、メモリとして使用する時に、OFF抵抗値が10KΩ以下であるが、FPGAのルーティングスイッチとして使用する時に、OFF抵抗値が1MΩ以上必要となる。
【0039】
図6は、本実施形態の記憶回路100の回路図である。記憶回路100は、2次元状に配列された複数の記憶セルC00~C12を有し、複数の記憶セルC00~C12は、ワード線WL0~WL2、ビット線BL0、BL1、ソース線SL0、SL1と接続されている。なお、図6では、記憶回路100が、6つの記憶セルを有する場合を例に説明するが、これに限定されるものではなく、5つ以下でもよいし、7つ以上であってもよい。なお、特定の記憶セルを指すのではなく、記憶セルC00~C12を総称する場合には、記憶セルCとも称する。また、特定のワード線、ビット線、ソース線を指すのではなく、ワード線WL0~WL2、ビット線BL0、BL1、ソース線SL0、SL1を各々総称する場合には、ワード線WL、ビット線BL、ソース線SLとも称する。
【0040】
各記憶セルCは、第一のトランジスタM0のソース端子が、記憶セルCの第一端子となり、第二のトランジスタM1のソース端子が、記憶セルCの第二端子となり、記憶素子20の第二端子が、記憶セルCの第三端子となる。
【0041】
また、同じ行に配列された複数の記憶セルCの第一端子が同じワード線WLと接続され、同じ列に配列された複数の記憶セルCの第二端子が同じビット線BLと接続され、同じ列に配列された複数の記憶セルCの第三端子が同じソース線SLと接続される。
【0042】
次に、第二のトランジスタM1の信頼性を向上させる原理について説明する。
【0043】
記憶セルC01を選択セルとしてセットする時に、ワード線WL1、ビット線BL0、ソース線SL0に、上記図2に示したシーケンスで信号を投入する。
【0044】
すなわち、ワード線WL1により、第一のトランジスタM0のソース端子に入力される選択信号VGがグランドGNDから電源電圧VDDに立ち上がる。また、ビット線BL0により、第二のトランジスタM1のソース端子に印加される電圧BLが、グランドGNDからセット電圧VSETに立ち上がる。また、ソース線SL0により、記憶素子20の非活性電極20Cに印加される電圧SLがハイ・インピーダンス(Hi-Z)からグランドGNDになる。
【0045】
また、記憶セルC01を選択セルとしてリセットする時に、ワード線WL1、ビット線BL0、ソース線SL0に、上記図5に示したシーケンスで信号を投入する。
【0046】
すなわち、ワード線WL1により、第一のトランジスタM0のソース端子に入力される選択信号VGがグランドGNDから電源電圧VDDに立ち上がる。また、ビット線BL0により、第二のトランジスタM1のソース端子に印加される電圧BLがHi-Zになる。また、ソース線SL0により、記憶素子20の非活性電極20Cに印加される電圧SLが、グランドGNDからリセット電圧VRSTに立ち上がる。
【0047】
上記のセット動作及びリセット動作において、他のワード線WL0、WL2、ビット線BL1、ソース線SL1によりグランドGNDが印加される。
【0048】
上記のように、選択セルである記憶セルC01の第二のトランジスタM1にオーバードライブ電圧VBOOTが印加される。一方、同じ行の非選択セルである記憶セルC11にはカップリングが発生しないため、記憶セルC11の第二のトランジスタM1のゲート電圧はVDD-VTHとなる。
【0049】
このように、記憶セルCに第一のトランジスタM0、第二のトランジスタM1を設けて、上記図2あるいは図5に示したシーケンスで信号を投入すると、選択セルの第二のトランジスタM1のカップリングが発生し、セット動作あるいはリセット動作を行う。同じ行の非選択セルに対応するビット線BL1とソース線SL1によりグランドGNDが印加されるため、第一のトランジスタM0のゲート端子とソース端子に電源電圧VDDを印加しても、第二のトランジスタM1のカップリングが発生せず、第二のトランジスタM1のゲート電圧がVDD-VTHとなる。
【0050】
また、リセット時間あるいはセット時間をT、同じ行のリセットあるいはセットする記憶セル数をNとするとき、選択セルの第二のトランジスタM1だけにTの時間でオーバードライブ電圧VBOOTを印加するため、第二のトランジスタM1の信頼性を向上できる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係る記憶回路100によれば、二つの端子を持つ記憶素子と、第一のトランジスタと、第二のトランジスタと、を備える記憶セルを有し、第一のトランジスタのゲート端子に電源電圧が印加され、ドレーン端子が第二のトランジスタのゲート端子に接続され、第二のトランジスタのドレーン端子が記憶素子の第一端子に接続される。これにより、セット動作及びリセット動作において、記憶素子に流れる電流を制御できる。
【0052】
また、記憶回路100では、選択セルである記憶セルをセットする時及びリセットする時に、選択セルの第二のトランジスタのゲート端子には、オーバードライブ電圧が印加されるが、同じ行の非選択セルである記憶セルの第二のトランジスタのゲート端子にはオーバードライブ電圧が印加されない。これにより、記憶セルのトランジスタの信頼性を向上させることができる。
【0053】
[第2の実施形態]
第2の実施形態の記憶回路について説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0054】
記憶素子のセット電圧とリセット電圧がトランジスタのドレーン-ソース間耐圧より高い時に、上記の1T1Rメモリセルと2T1Rメモリセルのトランジスタを高電圧トランジスタで構成する必要がある。そこで、第2の実施形態では、高電圧トランジスタの面積を低減するため、第二のトランジスタの代わりに、第二のトランジスタと第三のトランジスタとの直列回路を用いる。
【0055】
図7は、本発明の第2の実施形態の記憶回路の記憶セルC部分の回路を示す回路図である。
【0056】
記憶セルCは、記憶素子20と、第一のトランジスタM0と、第二のトランジスタM1と、第三のトランジスタM2とを備える。この記憶セルCは3T1Rメモリセルと呼ばれる。記憶素子20は固体電解質20Aを活性電極20Bと非活性電極20Cで挟む構造を持つ。第一のトランジスタM0のゲート端子に電源電圧VDDが印加され、ドレーン端子が第二のトランジスタM1と第三のトランジスタM2のゲート端子に接続される。第三のトランジスタM2のソース端子が第二のトランジスタM1のドレーン端子に接続され、ドレーン端子が記憶素子20の活性電極20Bに接続される。
【0057】
図8は、本実施形態の記憶回路200の回路図である。記憶回路200は、2次元状に配列された複数の記憶セルC00~C12を有し、ワード線WL0~WL2、ビット線BL0、BL1、ソース線SL0、SL1と接続されている。なお、図8では、記憶回路100が、6つの記憶セルを有する場合を例に説明するが、これに限定されるものではなく、5つ以下でもよいし、7つ以上であってもよい。なお、特定の記憶セルを指すのではなく、記憶セルC00~C12を総称する場合には、記憶セルCとも称する。また、特定のワード線、ビット線、ソース線を指すのではなく、ワード線WL0~WL2、ビット線BL0、BL1、ソース線SL0、SL1を各々総称する場合には、ワード線WL、ビット線BL、ソース線SLとも称する。
【0058】
各記憶セルCは、第一のトランジスタM0のソース端子が、記憶セルCの第一端子となり、第二のトランジスタM1のソース端子が、記憶セルCの第二端子となり、記憶素子20の第二端子が、記憶セルCの第三端子となる。
【0059】
また、同じ行に配列された複数の記憶セルCの第一端子が同じワード線WLと接続され、同じ列に配列された複数の記憶セルCの第二端子が同じビット線BLと接続され、同じ列に配列された複数の記憶セルCの第三端子が同じソース線SLと接続される。
【0060】
上記第1の実施形態と同様に、セットする時に、ワード線WL1、ビット線BL0、ソース線SL0に上記図2に示したシーケンスで信号を投入する。
【0061】
すなわち、ワード線WL1により、第一のトランジスタM0のソース端子に入力される選択信号VGがグランドGNDから電源電圧VDDに立ち上がる。また、ビット線BL0により、第二のトランジスタM1のソース端子に印加される電圧BLが、グランドGNDからセット電圧VSETに立ち上がる。また、ソース線SL0により、記憶素子20の非活性電極20Cに印加される電圧SLがハイ・インピーダンス(Hi-Z)からグランドGNDになる。
【0062】
また、上記第1の実施形態と同様に、リセットする時に、ワード線WL1、ビット線BL0、ソース線SL0に上記図5に示したシーケンスで信号を投入する。
【0063】
すなわち、ワード線WL1により、第一のトランジスタM0のソース端子に入力される選択信号VGがグランドGNDから電源電圧VDDに立ち上がる。また、ビット線BL0により、第二のトランジスタM1のソース端子に印加される電圧BLがHi-Zになる。また、ソース線SL0により、記憶素子20の非活性電極20Cに印加される電圧SLが、グランドGNDからリセット電圧VRSTに立ち上がる。
【0064】
上記のセット動作及びリセット動作において、他のワード線WL0、WL2、ビット線BL1、ソース線SL1によりグランドGNDが印加される。
【0065】
上記のように、セット動作及びリセット動作において、選択セルである記憶セルC01の第二のトランジスタM1と第三のトランジスタM2にオーバードライブ電圧VBOOTが印加される。仮に非選択セルである記憶セルC02の記憶素子20が低抵抗(ON)状態となると、トランジスタのドレーン-ソース間耐圧より高いセット電圧VSETあるいはリセット電圧VRSTが、第二のトランジスタM1と第三のトランジスタM2の直列回路の両端に印加される。第二のトランジスタM1と第三のトランジスタM2は直列接続構造のため、セット電圧VSETあるいはリセット電圧VRSTが分圧され、第二のトランジスタM1と第三のトランジスタM2それぞれのドレーン-ソース間の電圧が安全動作領域となる。
【0066】
表1を用いて、高電圧トランジスタの1T1Rメモリセルと、高電圧トランジスタの2T1Rメモリセルと、コア電圧トランジスタの3T1Rメモリセルの面積を比較した結果について説明する。
【0067】
【表1】
【0068】
高電圧トランジスタの1T1Rメモリセルの面積を1とした時に、高電圧トランジスタの2T1Rメモリセルとコア電圧トランジスタの3T1Rメモリセルの面積はそれぞれ1.24と0.76となる。このように、二つのトランジスタの直列回路を用いる構造で記憶セルの面積を削減できることが分かった。
【0069】
以上説明したように、第2の実施形態に係る記憶回路200によれば、二つの端子を持つ記憶素子と、第一のトランジスタと、第二のトランジスタと、第三のトランジスタと、を備える記憶セルを有し、第一のトランジスタのゲート端子に電源電圧が印加され、ドレーン端子が第二のトランジスタのゲート端子及び第三のトランジスタのゲート端子に接続され、第三のトランジスタのドレーン端子が第二のトランジスタのソース端子に接続され、第二のトランジスタのドレーン端子が記憶素子の第一端子に接続される。これにより、セット動作及びリセット動作において、記憶素子に流れる電流を制御できる。
【0070】
また、記憶回路200では、選択セルである記憶セルをセットする時及びリセットする時に、選択セルの第二のトランジスタ及び第三のトランジスタのゲート端子には、オーバードライブ電圧が印加されるが、同じ行の非選択セルである記憶セルの第二のトランジスタ及び第三のトランジスタのゲート端子にはオーバードライブ電圧が印加されない。これにより、記憶セルのトランジスタの信頼性を向上させることができる。
【0071】
また、記憶回路200では、第二のトランジスタと第三のトランジスタが直列接続構造のため、セット電圧あるいはリセット電圧を分圧することができる。これにより、記憶セルの面積を削減できる。
【0072】
なお、上記の第1の実施形態及び第2の実施形態では、NMOSトランジスタが活性電極と接続される接続方式を採用した場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。NMOSトランジスタが非活性電極と接続される接続方式を用いてもよい。
【0073】
また、上記の第1の実施形態及び第2の実施形態では、セルトランジスタを、NMOSトランジスタを用いて構成する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。セルトランジスタを、PMOSトランジスタを用いて構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0074】
20 記憶素子
20A 固体電解質
20B 活性電極
20C 非活性電極
100、200 記憶回路
200 記憶回路
BL ビット線
C 記憶セル
M0 第一のトランジスタ
M1 第二のトランジスタ
M2 第三のトランジスタ
SL ソース線
WL ワード線
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13