特開 2023-55149 屋根構造

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2023055149

(43)【公開日】2023-04-17

(54)【発明の名称】屋根構造

(51)【国際特許分類】

   E04D 1/28 20060101AFI20230410BHJP

   E04D 1/12 20060101ALI20230410BHJP

【ＦＩ】

E04D1/28 J

E04D1/28 C

E04D1/12 E

【審査請求】未請求

【請求項の数】5

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2021164311

(22)【出願日】2021-10-05

(71)【出願人】

【識別番号】000207436

【氏名又は名称】日鉄鋼板株式会社

(71)【出願人】

【識別番号】503234997

【氏名又は名称】株式会社ダイムワカイ

(74)【代理人】

【識別番号】110002527

【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】大園 道昭

(72)【発明者】

【氏名】石川 孝一

(72)【発明者】

【氏名】畑 功男

(57)【要約】

【課題】屋根材の取付強度が低下しにくい屋根構造を提供する。
【解決手段】屋根下地板２と、屋根材３と、粘着部４とを備える屋根構造１である。屋根下地板２は、二枚の金属外皮２１の間に芯材２２を配置したサンドイッチパネルを含む。屋根材３は、金属製の屋根材本体３１と、屋根材本体３１の下面に設けられた接着層３２とを有する。屋根材３は、屋根下地板２の上方に配置されている。接着層３２は、ゴム又は樹脂を含む塗膜である。粘着部４は、屋根下地板２と屋根材３との間に配置されている。接着層３２が粘着部４に接着され、粘着部４が屋根下地板２に接着されることにより、屋根材３は屋根下地板２に固定されている。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

屋根下地板と、屋根材と、粘着部とを備え、
前記屋根下地板は、二枚の金属外皮の間に芯材を配置したサンドイッチパネルを含み、
前記屋根材は、金属製の屋根材本体と、前記屋根材本体の下面に設けられた接着層とを有し、前記屋根下地板の上方に配置されており、
前記接着層は、ゴム又は樹脂を含む塗膜であり、
前記粘着部は、前記屋根下地板と前記屋根材との間に配置されており、
前記接着層が前記粘着部に接着され、前記粘着部が前記屋根下地板に接着されることにより、前記屋根材は前記屋根下地板に固定されている、
屋根構造。

【請求項2】

前記接着層は、前記屋根材本体の前記下面の一部に設けられている、
請求項１に記載の屋根構造。

【請求項3】

前記接着層の厚みは、０．０２～５ｍｍである、
請求項１又は２に記載の屋根構造。

【請求項4】

前記接着層に含まれるゴム又は樹脂は、非加硫ゴム、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、スチレン・ブタジエン樹脂の群から選ばれる少なくとも１つである、
請求項１～３のいずれか１項に記載の屋根構造。

【請求項5】

前記屋根材を前記屋根下地板に固定するための釘、ビス及び吊子を使用していない、
請求項１～４のいずれか１項に記載の屋根構造。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本開示は、一般に屋根構造に関し、より詳細には、屋根下地板と屋根材とを備える屋根構造に関する。

【背景技術】

【0002】

特許文献１には、平板屋根材が記載されている。この平板屋根材は、野地板の上面に複数並べて配置されている、また平板屋根材は、金属製の固定用の釘により野地板に固定されている。この場合、固定用の釘は、平板屋根材の上面から野地板にまで打ち込むようにしている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開平１０－２３１５８６号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

しかし、特許文献１に記載された構造では、固定用の釘が風雨にさらされて腐食により劣化しやすく、固定用の釘自体の強度低下や平板屋根材の釘孔周辺の劣化が生じて、平板屋根材の固定強度が低下しやすい、という問題があった。

【0005】

本開示は、屋根材の固定強度が低下しにくい屋根構造を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本開示の一態様に係る屋根構造は、屋根下地板と、屋根材と、粘着部とを備え、前記屋根下地板は、二枚の金属外皮の間に芯材を配置したサンドイッチパネルを含み、前記屋根材は、金属製の屋根材本体と、前記屋根材本体の下面に設けられた接着層とを有し、前記屋根下地板の上方に配置されており、前記接着層は、ゴム又は樹脂を含む塗膜であり、前記粘着部は、前記屋根下地板と前記屋根材との間に配置されており、前記接着層が前記基材に接着され、前記粘着層が前記屋根下地板に接着されることにより、前記屋根材は前記屋根下地板に固定されている。

【発明の効果】

【0007】

本開示によれば、屋根下地板と屋根材との間に配置される粘着部により屋根材が屋根下地板に固定されているため、粘着部が風雨にさらされにくくなって、粘着部が劣化しにくくなる。このため、粘着部による屋根材の固定強度が低下しにくい、という利点がある。

【図面の簡単な説明】

【0008】

【図1】図１Ａは、本開示に係る屋根構造の実施形態１を示す斜視図である。図１Ｂは、同上の断面図である。

【図2】図２Ａは、本開示に係る屋根構造の屋根下地板を示す斜視図である。図２Ｂ及び図２Ｃは、同上の施工状態を示す断面図である。

【図3】図３Ａは、本開示に係る屋根構造の実施形態１の屋根材を示す斜視図である。図３Ｂ～図３Ｄは、各々、同上の屋根材の他例を示す斜視図である。

【図4】図４Ａは、本開示に係る屋根構造の実施形態１の粘着部を示す断面図である。図４Ｂは、本開示に係る屋根構造の変形例の粘着部を示す断面図である。

【図5】図５Ａは、本開示に係る屋根構造の実施形態１の屋根材を示す平面図である。図５Ｂ及び図５Ｃは、同上の屋根材を示す断面図である。

【図6】図６Ａは、図５Ａ～Ｃの屋根材を使用した屋根構造を示す斜視図である。図６Ｂは、屋根材の引っ掛け部と引っ掛け受け部との引っ掛かり状態を示す断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0009】

（実施形態１）
本実施形態に係る屋根構造１は、屋根下地板２と、屋根材３と、粘着部４とを備えている（図１Ａ参照）。本実施形態に係る屋根構造１は、住宅、工場、店舗、体育館及び会館などの建物に適用可能であり、特に、中規模の建物に好適に使用することができる。

【0010】

屋根構造１は、複数の屋根下地板２を有している。複数の屋根下地板２は軒棟方向及び軒棟方向と直交する方向に並べられている。屋根下地板２は縦張り又は横張りで施工される。ここで、軒棟方向とは屋根の傾斜方向と同等であり、図１Ａに矢印Ｘ１で示す方向が棟方向であり、矢印Ｘ１と反対方向が軒方向である。軒棟方向と直交する方向は、屋根面上において、軒棟方向と直交する方向（例えば、ケラバ方向）であって、図１Ａに矢印Ｙ１で示す方向が右方向であり、矢印Ｙ１と反対方向が左方向である。図１Ａに矢印Ｚ１で示す方向は上方向であって、屋根面に対して垂直な方向である。矢印Ｚ１と反対方向が下方向である。

【0011】

屋根下地板２は、図２Ａに示すように、二枚の金属外皮２１の間に芯材２２を配置したサンドイッチパネルである。金属外皮２１は、金属板をロール加工やプレス加工するなどして所望の形状に成形したものである。金属板は、厚みが、例えば０．２５～１．６ｍｍ程度である。金属板は、塗装鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム－亜鉛合金めっき鋼板、ガルバリウム鋼板（登録商標）、エスジーエル（登録商標）鋼板、ステンレス鋼板、銅板、アルミニウム板、チタン板、亜鉛合金板等であるが、これに限定されない。

【0012】

芯材２２は、樹脂発泡体または繊維状無機材またはその組み合わせであり、断熱性や耐火性を有する。樹脂発泡体は、例えば、密度４０～６０ｋｇ／ｍ^３のポリイソシアヌレートフォームやウレタンフォームやフェノールフォームなどである。繊維状無機材は、例えば、ロックウールやグラスウールなどをバインダー等で固めたブロック体を複数並べて１枚の板状に配置したものである。芯材２２は、例えば、接着により金属外皮２１に取り付けられる。芯材２２は、繊維状無機材からなる層と樹脂発泡体からなる層とを、サンドイッチパネルの厚み方向（二枚の金属外皮２１が対向する方向）に積層して組み合わせたものであってもよい。また、芯材２２のうち、サンドイッチパネルの周端部に位置する芯材としては、繊維状無機材や樹脂発泡体よりも耐火性の高い耐火芯材を用いてもよい。この場合、耐火芯材は、例えば、石膏ボードや珪酸カルシウム板などの無機材である。芯材２２は、断熱性に優れるロックウールを使用するのが好ましく、この場合、厚みは３５～５０ｍｍにするのが好ましい。

【0013】

屋根下地板２は、平面視で（上方から見て）、略長方形板状である。本実施形態では、軒棟方向が屋根下地板２の長手方向（長さ方向）となり、桁行方向が短手方向（幅方向）となるように、いわゆる縦張りで配置されている。屋根下地板２は横張りであってもよい。屋根下地板２は、右端部に嵌合凸部２３を有し、左端部に嵌合凹部２４を有している。嵌合凸部２３と嵌合凹部２４は、屋根下地板２の桁行方向の端部に、長手方向に亘って設けられている。嵌合凹部２４の底部には、ロックウールフェルト等のパッキンが配されている。屋根下地板２は、軒棟方向の長さが、例えば、３６３５ｍｍであり、桁行方向の幅が、例えば、９１０ｍｍであるが、他のサイズであってもよい。

【0014】

屋根下地板２は、複数の支持部材５に架け渡して配置されている。支持部材５には、例えば、木造建築における母屋、垂木及び梁が含まれる。複数の支持部材５は軒棟方向に沿って所定の間隔を介して並べて配置されている。各支持部材５は桁行方向に沿って延びるように配置されている。１枚の屋根下地板２は、少なくとも、隣り合う二本の支持部材５上に架け渡されて配置されている。支持部材５は、例えば、Ｃ型鋼、Ｈ型鋼、Ｉ形鋼などが使用される。

【0015】

桁行方向に隣接する２枚の屋根下地板２は、図２Ｂに示すように、嵌合凸部２３と嵌合凹部２４を嵌め合せることによって接続される。軒棟方向に隣接する２枚の屋根下地板２は、図２Ｃに示すように、端部同士をロックウールフェルト等のパッキン材を介して突き合せることによって設置される。なお、軒棟方向に隣接する２枚の屋根下地板２は、シーリング材を介さずに直接突き合せてもよい。各屋根下地板２はその複数箇所がドリルねじ等の固定具６を用いて複数の支持部材５に固定されることによって、軒棟方向に隣接する複数の支持部材５上に架け渡した状態で施工される。

【0016】

屋根下地板２の上面には下地処理材７が設けられている。下地処理材７は、例えば、屋根下地板２の上面を構成する金属外皮２１の上面（芯材２２と対向しない面）に０．５～２ｍｍの塗膜で形成することができる。下地処理材７は、屋根下地板２の上面を全面にわたって被覆するように形成されるのが好ましい。下地処理材７は、屋根下地板２の上面の不陸調整、屋根下地板２の上面と粘着層４２との密着性の向上及び屋根の防水性の向上などの目的で設けられる。下地処理材７は、例えば、ブチルゴム系下地処理材（または処理層）、アクリル樹脂系下地処理材（または処理層）、ウレタン樹脂系下地処理材（または処理層）、シリコーン樹脂系下地処理材（または処理層）、スチレン・ブタジエン樹脂系下地処理材（または処理層）などを含むプライマー材料で形成することができる。プライマー材料は一種または複数種使用することができる。

【0017】

粘着部４は屋根下地板２の上方に配置される。屋根下地板２の上面には下地処理材７が形成されているので、粘着部４は下地処理材７の上面に接して設けられる。粘着部４は、図４Ａに示すように、基材４１の上面と下面の両方に粘着層４２を設けた粘着材を使用することができる。粘着部４は、厚み０．５～２．０ｍｍ、好ましくは、厚み０．８～１．５ｍｍにすることができる。

【0018】

基材４１は可撓性を有することが好ましく、例えば、ゴムシートや塩化ビニルシートを使用することができる。ゴムシートの中でも、耐候性や粘着性に優れるブチルゴムシートを使用するのが好ましい。また基材４１としては、例えば、ポリオレフィン補強層入り非加硫ブチルゴムシートを使用することができる。

【0019】

基材４１の上面に設けた粘着層４２は、屋根材３の接着層３２の下面に粘着する層である。基材４１の下面に設けた粘着層４２は、下地処理材７の上面に粘着する層である。ここで、粘着は、接着の一種であり、水、溶剤、熱などを使用せずに、常温で短時間、僅かな圧力を加えるだけで接着することをいう。本実施形態では、主に、屋根材３の自重により粘着層４２が接着層３２の下面及び下地処理材７の上面に粘着する。また屋根材３を圧着することにより粘着層４２が接着層３２の下面及び下地処理材７の上面に粘着する。粘着層は、ブチルゴム系粘着材、アクリル樹脂系粘着材、シリコーン樹脂系粘着材、ゴム系粘着材、ウレタン系粘着材、スチレン・ブタジエン粘着材などを一種または複数種使用して形成することができる。粘着層４２は、基材４１の上面及び下面に粘着材を接着、自己密着、貼り付け及び塗布等の方法により一体化し、形成することができる。なお、粘着層４２は、両面粘着材を使用して形成してもよい。粘着層４２は、シート材やテープを使用することができる。

【0020】

粘着部４は、屋根材３を屋根下地板２に粘着して固定するために使用される。このため、本実施形態に係る屋根構造１では、屋根材３を固定するための釘、ビス及び吊子などを使用しないか、ほとんど使用しないようにすることができる。したがって、屋根材３及び粘着部４に孔が形成されず、屋根の防水性が向上する。また粘着部４は屋根の防水性の向上のために使用される。このため、アスファルトルーフィングなどのルーフィング材を使用しなくてもよく、部材点数の減少により、低コスト化を図ることができる。

【0021】

屋根材３は、屋根材本体３１と、接着層３２とを備えている。屋根材本体３１は、屋根材３の上面を構成する部材であり、金属製である。屋根材本体３１は、金属板をロール加工やプレス加工するなどして所望の形状に成形される。金属板は、厚みが、例えば０．２５～１．６ｍｍ程度である。金属板は、塗装鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム－亜鉛合金めっき鋼板、ガルバリウム鋼板（登録商標）、エスジーエル（登録商標）鋼板、ステンレス鋼板、銅板、アルミニウム板、チタン板、亜鉛合金板等であるが、これに限定されない。本実施形態では、屋根材本体３１は軒側端部に引っ掛け部３４を有している。また屋根材本体３１は棟側端部に引っ掛け受け部３３が形成されている。引っ掛け部３４と引っ掛け受け部３３とは屋根材本体３１の桁行方向のほぼ全長にわたって形成されている。なお、屋根材本体３１の軒側端部とは、屋根材３を屋根下地板２の上方に配置した際に、軒側を向く端部である。屋根材本体３１の棟側端部とは、屋根材３を屋根下地板２の上方に配置した際に、棟側を向く端部である。屋根材本体３１の桁行方向とは、屋根材３を屋根下地板２の上方に配置した際に、桁行方向とほぼ平行になる方向である。

【0022】

屋根材本体３１は各種の形状の形成することができる。屋根材本体３１は、図３Ｂ及び図３Ｃに示すように、桁行方向とほぼ平行な両側端部に、引っ掛け部３５と、引っ掛け受け部３６とを、更に、有していてもよい。この場合、軒と平行な方向に隣接する屋根材３は、引っ掛け部３５と引っ掛け受け部３６とを引っ掛けて接続される。また屋根材３は、図３Ｄに示すように、ライン葺用の屋根材を使用することができる。ライン葺用の屋根材３は、上記と同様に、引っ掛け受け部３３と引っ掛け部３４とを有し、さらに屋根材本体３１の桁行方向の一方の端部から外側に接着層３２の一端が突出している。接着層３２の突出部分には、止水ゴム３７が設けられている。

【0023】

菱葺き用の屋根材３は、図５Ａに示すように、屋根材本体３１が平面視で菱形に形成されている。図５Ｂに示すように、屋根材本体３１の二つの軒側端部のうちの一方には、引っ掛け部３４が全長にわたって設けられている。また屋根材本体３１の二つの棟側端部のうちの一方には、引っ掛け受け部３３が全長にわたって設けられている。図５Ｃに示すように、屋根材本体３１の二つの軒側端部のうちの他方には、引っ掛け部３４が全長にわたって設けられている。また屋根材本体３１の二つの棟側端部のうちの他方には、引っ掛け受け部３３が全長にわたって設けられている。このように引っ掛け受け部３３と引っ掛け部３４は、屋根材３の左右どちらにも配置されている。また屋根材本体３１の下面及び引っ掛け受け部３３の上面には、接着層３２が設けられている。

【0024】

接着層３２は、屋根材本体３１の下面に設けられている。接着層３２は、屋根材本体３１を粘着部４の基材４１に接着するために屋根材３に設けられている。接着層３２は基材４１と接着性を有するものであり、例えば、ゴム又は樹脂を含有する塗膜で形成することができる。この場合、ゴムとしては非加硫ゴムを使用することができる。非加硫ゴムは加硫ゴムに比べて、柔軟性や粘着性が高いため、好ましい。非加硫ゴムとしては、耐久性の面から非加硫ブチルゴムを使用することが好ましい。樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、スチレン・ブタジエン樹脂などが例示される。接着層３２は、非加硫ゴム、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂の群から選ばれる少なくとも１つを含有していることが好ましい。これらの中でも、接着層３２は、非加硫ゴムを含有することが好ましく、この場合、柔軟性や粘着性に優れる接着層３２が得やすい。

【0025】

接着層３２は、上記のゴム又は樹脂を含有する塗膜である。すなわち、接着層３２は、上記のゴム又は樹脂を溶剤に溶解又は分散させた塗料を屋根材本体３１の下面に塗布し、この後、乾燥させることにより形成することができる。接着層３２が塗膜であると、一定の厚みに形成しやすく、屋根材本体３２の下面が凹凸面であっても、その凹凸面に追随して接着層３２が形成しやすい。接着層３２を形成するための塗料は、ゴム又は樹脂２０～５０質量部に対して、溶剤が５０～８０質量部の割合で含まれていることが好ましい。これにより、一定の厚みの塗膜が形成しやすい。なお、溶剤としては、水、トルエン、ｎ－ヘキサン、ガソリン、シンナーの群から選ばれる１つ又は複数を使用することができる。

【0026】

また、接着層３２を形成するための塗料は、アスファルトとウレタンポリマーと塩化カルシウムとを含有していることが好ましい。この場合、柔軟性及び粘着性に優れる接着層３２が得やすい。このような３成分を含む塗料は、例えば、アスファルト４０～６０質量部、ウレタンポリマー２５～４５質量部、塩化カルシウム５～２５質量部の割合で含有しているものが好ましい。このような接着層３２であれば、接着力が高いため、粘着層４はあってもなくてもよい。粘着層４がない場合は、接着層３２は粘着層４と兼用することができる。なお、上記のアスファルト及びウレタンポリマーは液状、塩化カルシウムは粉状である。

【0027】

接着層３２を形成するための塗料は、粘度が５～３０Ｐａ・ｓ（２５℃）の範囲であることが好ましい。これにより、塗料が塗布しやすく、一定の厚みの塗膜が形成しやすい。接着層３２を形成するための塗料は、例えば、スプレー塗装、ロールコーター、刷毛塗りなどの方法で屋根材本体３１の下面に塗布することができる。

【0028】

接着層３２の厚みは、０．０２～５ｍｍであることが好ましく、より好ましくは０．０４～３ｍｍである。接着層３２の厚みが上記所定の範囲未満であると、屋根材本体３１を基材４１に十分に接着しにくくなり、接着層３２の厚みが上記所定の範囲超過であると、屋根材３を重くなりすぎて施工しにくくなる。

【0029】

接着層３２は、屋根材本体３１の下面に全面にわたって設けることができる。この場合、屋根材本体３１の下面全面を接着層３２で基材４１に接着することができ、屋根材３の固定強度を向上させることができる。一方、接着層３２は、屋根材本体３１の下面の一部に設けることもできる。この場合、接着層３２は、屋根材本体（３１）の下面において、基材４１を接着する部分にのみ設けることができる。例えば、図１Ｂのように、屋根材本体３１の下面の棟側略半分に接着層３２を設けてもよい。この場合、屋根材本体３１の下面の棟側略半分と粘着部４の基材４１とが接着され、屋根材本体３１の下面の軒側略半分は、粘着部４の基材４１と離れて接着されていない。そして、接着層３２を屋根材本体３１の下面の一部に設ける場合では、接着層３２の使用量が減ってコスト削減になる。なお、接着層３２は、引っ掛け受け部３３では上面に設けられることが好ましく、これにより、引っ掛け部３４と引っ掛け受け部３３とを引っ掛けた際に、接着層３２で引っ掛け部３４と引っ掛け受け部３３とを接着することができる。

【0030】

本実施形態に係る屋根構造１を形成するにあたっては、次のようにして行なうことができる。まず、複数の屋根下地板２を支持部材５の上方に配置する。この場合、各屋根下地板２は複数の支持部材５に載置されて架け渡した状態になる。また各屋根下地板２は釘やビスなどの固定具６で支持部材５に固定される。桁行方向に隣接する屋根下地板２は嵌合凹部２４と嵌合凸部２３とを嵌め合わせて接続する（図２Ｂ参照）。また軒棟方向と隣接する屋根下地板２は端部同士が突き付け接続される。なお、各支持部材５には外面に耐火材５１を設けて耐火性を向上させることが必要である。建築基準法の耐火建築物には耐火材５１として耐火認定品（例えば、吹付けロックウール）を使用する。また隣接する屋根下地板２の接続部分には仮留め時の一時防水、及び耐火性能を確保する為、アルミニウムテープなどのテープ材２５で隙間を塞ぐことが好ましい。

【0031】

次に、図１Ａに示すように、屋根下地板２の上面に下地処理材７を形成する。下地処理材７は支持部材５に固定した全部の屋根下地板２の上面にわたって形成することができるが、これに限らず、屋根下地板２の一部に下地処理材７を形成してもよい。

【0032】

次に、屋根下地板２の上方に粘着部４を形成する。この場合、シート状の粘着材で粘着部４を形成する場合は、下地処理材７の上面にシート状の粘着材を敷いて粘着部４を形成する。粘着部４は、基材４１の下面に設けた粘着層４２が下地処理材７の上面に接するように形成される。したがって、粘着部４の基材４１が上方に向いた状態となる。また、基材４１の下面に設けた粘着層４２が下地処理材７に粘着（接着）される。ここで、粘着層４２と下地処理材７とがいずれも非加硫ブチルゴムを含む場合、粘着層４２と下地処理材７との接着強度が高まり、これにより、屋根材３の固定強度が向上して屋根材３の耐風圧性能が向上する。

【0033】

次に、図１Ａに示すように、粘着部４の上方に複数の屋根材３を配置する。複数の屋根材３は横葺きで配置される。したがって、軒棟方向で隣接する屋根材３は、図６Ｂに示すように、棟側の屋根材３の引っ掛け部３４が、軒側の屋根材３の引っ掛け受け部３３に上から引っ掛けられて接続される。また桁行方向で屋根材３が隣接する場合は、屋根材３の横端部同士が上下に重ねられて接続される。

【0034】

そして、図１Ａに示すように、屋根材３は粘着部４により屋根下地板２に固定される。すなわち、屋根材３は裏面の接着層３２が粘着部４の上面、すなわち、基材４１の上面に設けた粘着層４２に接着される。ここで、粘着層４２と接着層３２とがいずれも非加硫ブチルゴムを含む場合、粘着層４２と接着層３２との接着強度が高まり、これにより、屋根材３の固定強度が向上して屋根材３の耐風圧性能が向上する。そして、屋根材３は粘着部４及び下地処理材７を介して屋根下地板２に固定され、本実施形態に係る屋根構造１が形成される。

【0035】

図５Ａ～Ｃに示す屋根材３を使用した場合は、図６Ａに示すように、複数の屋根材３は軒棟方向及び桁行方向に並べて葺かれる。このとき、図６Ｂに示すように、隣接する屋根材３は引っ掛け部３４と引っ掛け受け部３３とを引っ掛けて接続される。また各屋根材３は、図１Ａ、図１Ｂの場合と同様に、粘着部４を介して下地処理材７に接着される。

【0036】

本実施形態に係る屋根構造１では、屋根下地板２と屋根材３との間に配置される粘着部４により屋根材３が屋根下地板２に固定されている。このため、粘着部４が風雨にさらされにくくなって、粘着部４が劣化しにくくなり、粘着部４による屋根材３の固定強度が低下しにくい。

【0037】

本実施形態に係る屋根構造１では、屋根材３を固定するための釘、ビス及び吊子などを使用しないか、ほとんど使用しないようにすることができる。したがって、従来のような屋根材の釘打ち固定部分の腐食・強度低下が生じないようにすることができ、昨今の設計強度を上回るほどの台風（強風）に対しても、屋根材３が飛散する可能性が極めて低くなる。

【0038】

本実施形態に係る屋根構造１では、屋根下地板２と、粘着部４と、屋根材３と、を一体構造にすることで強度アップが可能となり、在来工法（例えば、木毛セメント板等、母屋間隔６０６ｍｍ）より２倍以上の母屋間隔が可能となり、例えば、１３００ｍｍを標準としている。

【0039】

本実施形態に係る屋根構造１では、図１Ａに示すように、屋根下地板２と、粘着部４と、屋根材３と、を備えているので、建築基準法における耐火性能についても、優れた耐火性能（非損傷性、遮炎性）を有している。例えば、本実施形態に係る屋根構造１では、屋根３０分耐火構造認定取得をすることができる。一方、在来工法である木毛セメント板、樹脂発泡系断熱材、屋根材の耐火仕様では母屋間隔６０６ｍｍ以下であるが、本実施形態に係る屋根構造１では、母屋間隔仕様は６０６ｍｍよりも大きく１３００ｍｍ以下と２倍程度まで可能となり、材料コストの低減、施工性が向上する。

【0040】

また図２Ａに示すように、二枚の金属外皮２１の間に芯材２２を配置したサンドイッチパネルを屋根下地板２として使用するため、従来の野地板を使用した屋根構造に比べて、軒棟方向で隣り合う支持部材５の間隔（ピッチ）を広くしても、屋根の強度を低下しないようにすることができる。例えば、厚み２０～２５ｍｍの木毛セメント板と、２０～３０ｍｍの硬質ウレタンフォーム板とを備えた従来の屋根構造では、支持部材５の間隔が６０６ｍｍとすることができるが、本実施形態に係る屋根構造１では、支持部材５の間隔が９００～１３００ｍｍとすることができ、従来に比べて、１．４倍～２倍以上に支持部材５の間隔を設定することができる。このため、本実施形態に係る屋根構造１では、従来に比べて、支持部材５の使用本数を少なくすることができ、低コスト化を図ることができる。また本実施形態に係る屋根構造１は、強度と断熱性能に優れるサンドイッチパネルを使用するため、従来のように木毛セメント板と硬質ウレタンフォーム板とを別々に施工する必要がなく、施工性が向上する。

【0041】

本実施形態に係る屋根構造１において、屋根材３の剥離強度を１８０°ピール粘着力試験（ＪＩＳ Ｚ ０２３７の「１８０°剥離法」と同等の試験）で測定した結果、４０℃の雰囲気下で２２～２４Ｎ／２５ｍｍの粘着力が得られた。同様の試験を従来の屋根構造でも行った結果、屋根材と硬質ウレタンフォームとの剥離強度が１２．７Ｎ／２５ｍｍの粘着力となった。したがって、本実施形態に係る屋根構造１は、屋根材３が屋根下地板２から剥がれにくく、耐風圧性能に優れる。

【0042】

（変形例）
実施形態１は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態１は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。

【0043】

実施形態１では、屋根材３が横葺きの場合について説明したが、これに限らず、本開示は、屋根材３が縦葺き、斜め葺き、菱葺き等の場合についても、適用可能である。

【0044】

実施形態１では、基材４１の上面と下面の両方に粘着層４２を設けたが、これに限らず、図４Ｂに示すように、基材４１の下面のみに粘着層４２を設けても良い。この場合、基材４１の下面に設けた粘着層４２が、下地処理材７に接着される。接着層３２の接着力が強い場合は、基材４１の上面の粘着層４２が不要であり、基材４１の上面に接着層３２を直接接着することができる。

【0045】

実施形態１の下地処理材７は形成しなくても良い。下地処理材７が形成されない場合は、基材４１の下面に設けた粘着層４２が、屋根下地板２の上側の金属外皮２１の上面に直接粘着（接着）される。下地処理材７が形成されていない場合は、粘着部４が屋根下地板２の上面に接して防水層として形成される。

【0046】

実施形態１では、金属外皮２１の表面が平坦な場合について説明したが、これに限らず、金属外皮２１の表面が凹凸面であってもよい。この場合、金属外皮２１は、例えば、エンボス、波板、リブなどを有する金属板で形成することができる。屋根下地板２の上面を構成する金属外皮２１の上面が凹凸面であれば、粘着材４との接着面積が大きくなり、屋根材３の固定強度が向上しやすい。

【0047】

実施形態１において、複数の屋根下地板２は、縦張り又は横張りのいずれであっても良い。すなわち、複数の屋根下地板２は、支持部材５の長手方向と直交する方向又は平行な方向のいずれの方向に並べても良い。

【0048】

（まとめ）
以上説明したように、第１の態様は、屋根下地板（２）と、屋根材（３）と、粘着部（４）とを備える屋根構造（１）である。屋根下地板（２）は、二枚の金属外皮（２１）の間に芯材（２２）を配置したサンドイッチパネルを含む。屋根材（３）は、金属製の屋根材本体（３１）と、屋根材本体（３１）の下面に設けられた接着層（３２）とを有し、屋根下地板（２）の上方に配置されている。接着層（３２）は、ゴム又は樹脂を含む塗膜である。粘着部（４）は、屋根下地板（２）と屋根材（３）との間に配置されている。接着層（３２）が粘着部（４）に接着され、粘着部（４）が屋根下地板（２）に接着されることにより、屋根材（３）は屋根下地板（２）に固定されている。

【0049】

第１の態様によれば、屋根下地板（２）と屋根材（３）との間に配置される粘着部（４）により屋根材（３）が屋根下地板（２）に固定されているため、粘着部（４）が風雨にさらされにくくなって、粘着部（４）が劣化しにくくなる。このため、粘着部（４）による屋根材（３）の固定強度が低下しにくい、という利点がある。

【0050】

第２の態様は、第１の態様の屋根構造（１）である。接着層（３２）は、屋根材本体（３１）の下面の一部に設けられている。

【0051】

第２の態様によれば、接着層（３２）は、屋根材本体（３１）の粘着部（４）と接着する部分にのみ設けることができ、接着層（３２）を屋根材本体（３１）の全面に設ける必要がなく、接着層（３２）の無駄な使用を低減することができる、という利点がある。

【0052】

第３の態様は、第１又は２の態様の屋根構造（１）である。接着層（３２）の厚みは、０．０２～５ｍｍである。

【0053】

第３の態様によれば、屋根材（３）が粘着部（４）から剥がれにくく、耐風圧性能に優れる、という利点がある。

【0054】

第４の態様は、第１～３のいずれか１つの態様の屋根構造（１）である。接着層（３２）に含まれるゴム又は樹脂は、非加硫ゴム、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、スチレン・ブタジエン樹脂の群から選ばれる少なくとも１つである。

【0055】

第４の態様によれば、屋根材（３）が粘着部（４）から剥がれにくく、耐風圧性能に優れる、という利点がある。

【0056】

第５の態様は、第１～４のいずれか１つの態様の屋根構造（１）である。屋根材（３）を屋根下地材（２）に固定するための釘、ビス及び吊子を使用していない。

【0057】

第５の態様によれば、屋根材（３）に固定するための孔が形成されにくくなって、防水性が向上する、という利点がある。

【符号の説明】

【0058】

１ 屋根構造
２ 屋根下地板
３ 屋根材
３１ 屋根材本体
３２ 接着層
４ 粘着部

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】