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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055154
(43)【公開日】2023-04-17
(54)【発明の名称】字消し
(51)【国際特許分類】
   B43L 19/00 20060101AFI20230410BHJP
【FI】
B43L19/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164317
(22)【出願日】2021-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000106782
【氏名又は名称】株式会社シード
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【弁理士】
【氏名又は名称】中道 佳博
(72)【発明者】
【氏名】水口 裕太
(72)【発明者】
【氏名】亀山 詩織
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悠介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 理子
(72)【発明者】
【氏名】別所 直哉
(57)【要約】
【課題】 情報機器端末のディスプレイに直接情報入力することのできるタッチペンまたはスタイラスペンとして代用可能であり、かつ優れた消字性を保持し得る字消しを提供すること。
【解決手段】 本発明の字消しは、連続的に延びる導電性消字部分と、該導電性消字部分に並んで配置されている非導電性消字部分とを備え、同一面において、該導電性消字部分の一部と該非導電性消字部分の一部との両方が露出している。本発明によれば、従来のような字消しとスタイラスペンまたはタッチペンとの間の持ち替えを行うことなく、紙面上の消字と情報機器端末への情報入力との両方を行うことができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に延びる導電性消字部分と、該導電性消字部分に並んで配置されている非導電性消字部分とを備え、
同一面において、該導電性消字部分の一部と該非導電性消字部分の一部との両方が露出している、字消し。
【請求項2】
2つの底面と、該2つの底面の間に配置された側面とから構成されており、
該底面に、前記導電性消字部分の一部と前記非導電性消字部分の一部との両方が露出しており、かつ該側面に該導電性消字部分の一部が露出している、請求項1に記載の字消し。
【請求項3】
前記底面の中央に前記導電性消字部分の一部が露出している、請求項2に記載の字消し。
【請求項4】
前記底面と前記側面との交差部分が、前記非導電性消字部分の一部で構成されている、請求項2または3に記載の字消し。
【請求項5】
最も外周に導電性スリーブが配置されている、請求項1から4のいずれかに記載の字消し。
【請求項6】
前記導電性消字部分が炭素源を含有する、請求項1から5のいずれかに記載の字消し。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は字消しに関し、より詳細にはスタイラス機能と消字性との両方に優れる字消しに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータ、タブレット、スマートフォンなどの情報機器端末には、ディスプレイに直接手書きして文字入力を可能にする技術が多く採用されている。一方、2019年より発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、小学校、中学校、高等学校等の現場では、タブレット端末が児童または生徒に配布され、遠隔授業を通じて教育の機会を確保しようとする動きが高まっている。また、遠隔授業による教育の機会の確保は、これらに留まらず、大学、専門学校、学習塾、受験予備校等でも多く採用されている。
【0003】
こうした教育現場において、児童、生徒、学生等の就学生は、多くの場合、各自の情報機器端末を机上に配置して授業を受ける。これにより、机上には、教科書、ノート、鉛筆またはシャープペンシル、サインペン、定規、字消し(消しゴム)に加え、当該情報機器端末ならびに上記ディスプレイへの文字入力に使用するタッチペンやスタイラスペンが置かれることになり、就学生は明らかに雑然とした環境下での授業を強いられることになる。こうした雑然とした環境は、オンラインミーティングを行う場合も同様である。
【0004】
ここで、こうした雑然とした環境下での授業から解放するための工夫が提案されている。例えば、特許文献1は、字消しに導電性機能を付与することにより、タッチペンやスタイラスペンに代えて当該情報機器端末への文字入力の支援を行うことを提案している。導電性機能を備えた字消しは、タッチペンやスタイラスペンを紛失した際の代用品としても有用である。
【0005】
しかし、こうした字消しは、当該導電性機能を得るために含有されている黒鉛等の導電性微粒子によって消字性自体を低下させることが知られている。このため、ディスプレイへの文字入力が可能になるが、一方でノート等に記載された鉛筆の文字は余りきれいに消えるとは言い難いものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017―074713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、情報機器端末のディスプレイに直接情報入力することのできるタッチペンまたはスタイラスペンとして代用可能であり、かつ優れた消字性を保持し得る字消しを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、連続的に延びる導電性消字部分と、該導電性消字部分に並んで配置されている非導電性消字部分とを備え、
同一面において、該導電性消字部分の一部と該非導電性消字部分の一部との両方が露出している、字消しである。
【0009】
1つの実施形態では、上記字消しは、2つの底面と、該2つの底面の間に配置された側面とから構成されており、
該底面に、上記導電性消字部分の一部と上記非導電性消字部分の一部との両方が露出しており、かつ該側面に該導電性消字部分の一部が露出している。
【0010】
さらなる実施形態では、上記底面の中央に上記導電性消字部分の一部が露出している。
【0011】
さらなる実施形態では、上記底面と上記側面との交差部分は、上記非導電性消字部分の一部で構成されている。
【0012】
1つの実施形態では、上記字消しは、最も外周に導電性スリーブが配置されている。
【0013】
1つの実施形態では、上記導電性消字部分は炭素源を含有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、消字性を保持したまま、優れたスタイラス機能により情報機器端末のディスプレイからの情報入力が可能となる。これにより、従来のような字消しとスタイラスペンまたはタッチペンとの間の持ち替えを行うことなく、紙面上の消字と情報機器端末への情報入力との両方を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の字消しの一例を示す斜視図である。
図2図1に示す字消しを右手で持った際の字消しと指の位置関係の例を説明するための模式図である。
図3】(a)は図1に示す字消しを本体として導電性スリーブに収容する様子を説明するための模式図であり、(b)は(a)に示す導電性スリーブを備える字消しを手で把持する様子を説明するための模式図である。
図4】(a)~(l)は、本発明の字消しの他の例を説明するための各字消しを底面方向から見た図である。
図5】実施例2~4および比較例3~4で作製した字消しサンプルの底面の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳述する。
【0017】
図1は、本発明の字消しの一例を示す斜視図である。
【0018】
図1に示す字消し100は、2つの底面102a,102bと、当該底面102a,102bの間に設けられた側面104で構成されている。図1において、側面104は4つの矩形面104a,104b,104c,104dで構成されており、字消し100は直方体の形状を有するように記載されているが、本発明は必ずしもこれに限定されない。例えば、2つの円形の底面の間に、湾曲した表面で構成される側面が配置された円柱の形態を有していてもよく、2つの三角形の底面の間に、3つの矩形面から構成される側面が配置された三角柱の形態を有していてもよく、あるいは2つの多角形(例えば三角形、四角形を除く)の底面の間に、対応する複数の矩形面から構成される側面が配置された多角柱の形態を有していてもよい。
【0019】
本発明の字消し100は、導電性消字部分110および非導電性消字部分120を備える。
【0020】
導電性消字部分110は、字消し100内で連続的に延びるように(すなわち、断続的ではなく、一体的に)成形されている。導電性消字部分110は、それ自体が導電性であり、それに触れた人体の静電気に反応して静電容量の変化を起こすことができる。さらに、導電性消字部分110はそれ自体でも適度な消字性を有している。
【0021】
導電性消字部分110は、基材成分および炭素源を含有する。
【0022】
基材成分としては、例えば、熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系樹脂、およびゴム、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0023】
熱可塑性エラストマーの例としては、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ナイロン系熱可塑性エラストマー、および塩素化ポリエチレンコポリマー架橋体アロイ、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。消字性に優れているとの理由から、スチレン系熱可塑性エラストマーが好ましい。スチレン系熱可塑性エラストマーのより具体的な例としては、SBS(スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体)系熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0024】
塩化ビニル系樹脂の例としては、塩化ビニル樹脂(PVC)が挙げられる。導電性消字部分110を構成し得る塩化ビニル樹脂は、好ましくは650~5000、より好ましくは700~3700、さらにより好ましくは1100~1500の平均重合度を有するペースト塩化ビニル樹脂である。本発明において、塩化ビニル樹脂の平均重合度が650を下回ると、得られる字消しの硬さが低下するとともに、導電性消字部分自体の消字性が低下して、字消し全体に十分な消字性が得られないことがある。塩化ビニル樹脂の平均重合度が5000を上回ると、可塑剤との間のマッチングが比較的困難となり、得られる字消しが折れ易くなることがある。塩化ビニル樹脂は、塩化ビニルのホモポリマーであるか、または構成単位として塩化ビニルを主として含みかつ酢酸ビニル、エチレン、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等のコモノマーとして含むコポリマーであってもよい。本発明では、適度な柔軟性が得られる点から、塩化ビニル樹脂は塩化ビニルのホモポリマーで構成されていることが好ましい。
【0025】
ゴムの例としては、天然ゴムおよび合成ゴム、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。合成ゴムの具体的な例としては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、およびアクリロニトリルブタジエンゴム、ならびにそれらの組み合わせなどのジエン系ゴム;やブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロヒドリンゴム、およびフッ素ゴム、ならびにそれらの組み合わせなどの非ジエン系ゴム;が挙げられる。
【0026】
炭素源は、字消しにおける充填材の1種として、かつ導電性消字部分110に導電性を付与するために添加されている。導電性消字部分110を構成し得る炭素源としては、例えば黒鉛、炭素繊維、カーボンナノファイバーおよびカーボンブラック、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。汎用性に富みかつ入手が容易であるという理由から、炭素源は好ましくカーボンブラックである。導電性消字部分110における炭素源の含有量は、本発明の字消しの全体質量に対して、好ましくは4質量%~30質量%、より好ましくは5質量%~15質量%である。導電性消字部分110における炭素源の含有量が4質量%を下回ると、導電性消字部分が十分な導電性を有さず、結果として得られる字消しが満足すべきスタイラス機能を有さないことがある。導電性消字部分110における炭素源の含有量が30質量%を上回ると、導電性消字部分自体の消字性が損なわれ、結果として得られる字消しが満足すべき消字性を有さないことがある。
【0027】
導電性消字部分110はまた、充填材を含有していることが好ましい。
【0028】
充填材は、字消しを使用した際に消しくずとなって当該字消し自体を適度に崩壊させる役割を果たす。こうした適度な崩壊を通じて字消しの消字性を高めることができる。一方、本発明の字消し100を構成する導電性消字部分110には、上記通り炭素源が含まれている。当該炭素源もまた広義には充填材と同様の役割を果たすため、本発明の字消し100に含まれる充填材は、上記炭素源以外の他の充填材成分で構成されていることが好ましい。
【0029】
導電性消字部分110に含有され得る充填材の例としては、炭酸カルシウムおよびタルク、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。汎用性に富みかつ入手が容易であるとの理由から、導電性消字部分110は、充填材として炭酸カルシウムを含有することが好ましい。導電性消字部分110に含まれる充填材の含有量は、当該導電性消字部分110に含まれる基材成分100質量部に対して、好ましくは30質量部~330質量部、より好ましくは60質量部~280質量部である。導電性消字部分110に含まれ得る充填材の含有量が30質量部を下回ると、得られる字消しは全体的な消字率が低下することがある。導電性消字部分110に含まれ得る充填材の含有量が330質量部を上回ると、使用時に導電性消字部分110での筆記線を除去する力が低下し、消字性能が低下することがある。
【0030】
導電性消字部分110はまた、適切な柔軟性と摩擦抵抗を付与するために軟化剤(可塑剤)が含有されていてもよい。
【0031】
軟化剤の例としては、プロセスオイル、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、およびポリエステル、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。本発明においては、例えば、基材成分との相溶性が良好であるとの理由から、導電性消字部分110を構成する基材成分が熱可塑性エラストマーである場合は、軟化剤はプロセスオイルであることが好ましく、導電性消字部分110を構成する基材成分が塩化ビニル系樹脂である場合は、軟化剤はフタル酸エステル、アジピン酸エステル、およびポリエステル、ならびにそれらの組み合わせであることが好ましい。
【0032】
本発明において軟化剤の含有量は必ずしも限定されないが、上記基材成分100質量部に対して、好ましくは30質量部~200質量部、より好ましくは40質量部~150質量部である。軟化剤の含有量が30質量部を下回ると、得られる字消しは硬くなり、粘着性が低下することで消字性が低下することがある。軟化剤の含有量が200質量部を上回ると、字消しの硬さが低下し、使いづらくなることがある。
【0033】
本発明において、導電性消字部分110はまた、上記導電性や消字性等を著しく阻害しない範囲において他の成分を含有していてもよい。このような他の成分としては、例えば安定剤および着色剤ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0034】
安定剤は、樹脂成形分野において一般的に使用されるものであり、基材成分(例えば塩化ビニル樹脂)の熱安定剤であることが好ましい。塩化ビニル樹脂の熱安定剤の例としては、バリウム、亜鉛、カルシウムなどの金属とステアリン酸、ラウリン酸、リシノール酸、ナフテン酸、2-エチルヘキソイン酸などの有機酸との金属石鹸が挙げられる。安定剤の他の例としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、および光安定剤が挙げられる。酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、および硫黄系酸化防止剤が挙げられる。紫外線吸収剤の例としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、およびオキザニリド系紫外線吸収剤が挙げられる。光安定剤の例としては、種々のヒンダードアミン系光安定剤、シュウ酸誘導体、サリチル酸誘導体、およびヒドラジン誘導体が挙げられる。
【0035】
着色剤は、基材成分に対して汎用されるものであることが好ましい。着色剤の例としては、無機系顔料、有機系顔料、分散染料、および反応染料が挙げられる。
【0036】
非導電性消字部分120は、字消し100内で上記導電性消字部分110に並んで配置されている。字消し100において、このような配置は、例えば、導電性消字部分110の構成材料と非導電性消字部分120の構成材料との共押出により行われてもよく、あるいは導電性消字部分110と非導電性消字部分120とを一旦別々に作製した後、これらを互いに熱溶着させるかまたは所定の接着剤により貼り合わせて一体化させることにより行われてもよい。
【0037】
非導電性消字部分120は、それ自体は導電性を有していない(すなわち、非導電性である)、あるいは上記導電性消字部分110よりも導電性が低い点で、上記導電性消字部分110とは異なる性質を有する。さらに、非導電性消字部分120はそれ自体でも十分な消字性を有している。
【0038】
非導電性消字部分120は、上記導電性消字部分110と同様の基材成分(例えば、熱可塑性エラストマー、塩化ビニル樹脂(PVC)等の塩化ビニル系樹脂、および/またはゴム)を含有する。
【0039】
さらに、非導電性消字部分120は、導電性消字部分110と同様に、上記炭素源以外の他の充填材成分を含有する。汎用性に富みかつ入手が容易であるとの理由から、非導電性消字部分120は、充填材として炭酸カルシウムを含有することが好ましい。非導電性消字部分120に含有され得る他の充填材の含有量は、当該非導電性消字部分に含まれる基材成分100質量部に対して、好ましくは50質量部~350質量部、より好ましくは80質量部~300質量部である。非導電性消字部分に含まれ得る他の充填材の含有量が50質量部を下回ると、得られる字消しは全体的な消字率が低下することがある。非導電性消字部分に含まれ得る他の充填材の含有量が350質量部を上回ると、使用時に非導電性消字部分120での筆記線を除去する力が低下し、消字性能が低下することがある。
【0040】
非導電性消字部分120はまた、上記導電性消字部分110と同様の軟化剤(可塑剤)および/または他の成分(例えば、安定剤および着色剤ならびにそれらの組み合わせ)を含有していてもよい。非導電性消字部分120に含有され得る軟化剤および/または他の成分の含有量は、例えば導電性消字部分110に含有され得る場合と同様であり、適切な含有量が当業者により選択され得る。
【0041】
再び図1を参照すると、本発明の字消し100では、同一面において導電性消字部分110の一部と、非導電性消字部分120の一部との両方が露出されている。
【0042】
例えば、図1では底面102aにおいて導電性消字部分110が十字状に配置されており、非導電性消字部分120はこの十字状の導電性消字部分110の四隅に並んで配置されている。これにより、底面102aでは、導電性消字部分110の一部と非導電性消字部分120の一部との両方が露出した状態に保たれている。
【0043】
一方、図1では側面104の矩形面104b,104c等において、導電性消字部分110の一部が露出した状態に保たれている。より詳細には、図1に示す実施形態では、側面104の矩形面104b,104c等において、導電性消字部分110の一部と非導電性消字部分120の一部との両方が露出した状態に保たれている。
【0044】
本発明の字消し100では、導電性消字部分110および非導電性消字部分120をこのような状態で配置していることにより、使用時に人が字消し100を把持すると、例えば、図2に示すように、親指212、人差し指214、中指216の1つまたはそれ以上が字消し100の側面104に現れた導電性消字部分110に触れることができる。また、側面104に現れている導電性消字部分110が連続して底面102aにも現れていることから、底面102aの導電性消字部分110に情報機器端末のディスプレイが接すると、当該ディスプレイを通じた文字入力等の操作が可能となる。
【0045】
一方、本発明の字消し100を用いて、紙面上に記載された鉛筆やシャープペンシルによる筆記線を消去(消字)する場合は、四隅に配置された非導電性消字部分120が紙面とより多く接することになり、従来の字消しと同様の消字が可能となる。特に図1に示すように、底面102a,102bと側面104との交差部分(交差する辺)が非導電性消字部分120の一部で構成されていることにより、消字の際は、紙面上の筆記線に、この交差部分に配置された非導電性消字部分120がより多く接することができる。
【0046】
また、導電性消字部分110自体も適切な消字性を有しているので、使用により四隅および/または上記交差部分の非導電性消字部分120が削れた後でも、残存する非導電性消字部分120と導電性消字部分110との両方によってその消字性を高く保つことができる。
【0047】
なお、こうした紙面上の筆記線の消字によって、字消し100は、底面102aまたは102bの中央よりも四隅が優先的に削れ、当該中央が四隅と比較して突出することが考えられる。このような場合、図1に示す実施形態では、その中央に導電性消字部分110が露出しているので、情報機器端末のディスプレイに一層接し易くなり、文字入力等の操作性が向上し得る。
【0048】
図3の(a)は図1に示す字消しを本体として導電性スリーブに収容する様子を説明するための模式図である。
【0049】
本発明の別の実施形態では、字消し300は、図1に示す字消しに相当する字消し本体100の最も外周に導電性スリーブ340が配置されていてもよい。
【0050】
導電性スリーブ340は、字消し本体100を収容するケースであり、内表面および外表面が導電性を有する材料で構成されている。導電性スリープ340を構成する材料としては、アルミニウム、鉄、銅などの導電性金属;導電性フィルムや導電性コーティングが付与された紙または樹脂;などが挙げられる。導電性スリーブ340の内表面は、字消し本体100の外表面(特に側面104)の少なくとも一部と接するサイズに設計されている。
【0051】
字消し本体100が導電性スリーブ340に収容された状態で、人の手が字消し300を把持すると、図3の(b)に示すように、親指312、人差し指314、中指316の1つまたはそれ以上が字消し300の導電性スリーブ340を通じて側面104に現れた導電性消字部分110に触れることができる。また、側面104に現れている導電性消字部分110が連続して底面102aにも現れていることから、底面102aの導電性消字部分110に情報機器端末のディスプレイが接すると、当該ディスプレイを通じた文字入力等の操作が可能となる。
【0052】
一方、本発明の字消し300を用いて、紙面上に記載された鉛筆やシャープペンシルによる筆記線を消去(消字)する場合は、四隅に配置された非導電性消字部分120が紙面とより多く接することになり、従来の字消しと同様の消字が可能となる。
【0053】
図1~3では、底面102a方向において、十字状の導電性消字部分110の四隅に非導電性消字部分120が配置された字消し100,300について説明したが、本発明はこのような構成に限定されない。
【0054】
本発明の字消しは、底面方向において、例えば図4の(a)~(l)に示すような形態で導電性消字部分と非導電性消字部分とが配置されていてもよい。なお、以下図4において図面の上方の面を上面402と称し、図面の下方の面を下面404と称し、図面の左側の面を左側面406と称し、図面の右側の面を右側面408と称して説明する。
【0055】
本発明の字消しは、例えば図4の(a)に示すような構造を有していてもよい。図4の(a)において、導電性消字部分410aの一部は左側面406および右側面408に露出しており、上面402および下面404には露出していない。一方、非導電性消字部分420aの一部は上面402および下面404に露出するように配置されている。
【0056】
この場合、人の手が左側面406または右側面408のいずれかに露出する導電性消字部分410aと接触すると、字消し400aは、接触した導電性消字部分410aによりスタイラス機能を発揮する。また、字消し400aは非導電性消字部分420aを通じて優れた消字性を発揮することができる。
【0057】
あるいは、本発明の字消しは、例えば図4の(b)に示すような構造を有していてもよい。図4の(b)において、導電性消字部分410bの一部は上面402および下面404に露出しており、左側面406および右側面408には露出していない。一方、非導電性消字部分420bの一部は左側面406および右側面408に露出するように配置されている。
【0058】
この場合、人の手が上面402または下面404のいずれかに露出する導電性消字部分410bと接触すると、字消し400bは、接触した導電性消字部分410bによりスタイラス機能を発揮する。また、字消し400bは非導電性消字部分420bを通じて優れた消字性を発揮することができる。
【0059】
あるいは、本発明の字消しは、例えば図4の(c)に示すような構造を有していてもよい。図4の(c)において、導電性消字部分410cの一部は上面402、左側面406および右側面408に露出しており、下面404には露出していない。一方、非導電性消字部分420cの一部は下面404、左側面406および右側面408に露出するように配置されている。
【0060】
この場合、人の手が上面402、左側面406または右側面408のいずれかに露出する導電性消字部分410cと接触すると、字消し400cは、接触した導電性消字部分410cによりスタイラス機能を発揮する。また、字消し400cは非導電性消字部分420cを通じて優れた消字性を発揮することができる。
【0061】
あるいは、本発明の字消しは、例えば図4の(d)に示すような構造を有していてもよい。図4の(d)において、上下方向に延びる2本の導電性消字部分410dの各々の一部は上面402および下面404に露出しており、左側面406および右側面408には露出していない。一方、非導電性消字部分420dは当該2本の導電性消字部分410dの間および両側に上下方向に配置されており、それらの一部は上面402、下面404、左側面406および右側面408に露出するように配置されている。
【0062】
この場合、人の手が上面402または下面404のいずれかに露出する導電性消字部分410dと接触すると、字消し400dは、接触した導電性消字部分410dによりスタイラス機能を発揮する。また、字消し400dは非導電性消字部分420dを通じて優れた消字性を発揮することができる。
【0063】
あるいは、本発明の字消しは、例えば図4の(e)に示すような構造を有していてもよい。図4の(e)において、横方向に延びる2本の導電性消字部分410eの各々の一部は左側面406および右側面408に露出しており、上面402および下面404には露出していない。一方、非導電性消字部分420eは当該2本の導電性消字部分410eの間および両側に横方向に配置されており、それらの一部は上面402、下面404、左側面406および右側面408に露出するように配置されている。
【0064】
この場合、人の手が左側面406または右側面408のいずれかに露出する導電性消字部分410eと接触すると、字消し400eは、接触した導電性消字部分410eによりスタイラス機能を発揮する。また、字消し400eは非導電性消字部分420eを通じて優れた消字性を発揮することができる。
【0065】
あるいは、本発明の字消しは、例えば図4の(f)に示すような構造を有していてもよい。図4の(f)において、導電性消字部分410fの一部は上面402、下面404および左側面406に露出しており、右側面408には露出していない。一方、非導電性消字部分420fは当該導電性消字部分410fの右側に配置されており、その一部は上面402、下面404、および右側面408に露出するように配置されている。
【0066】
この場合、人の手が上面402、下面404または左側面406のいずれかに露出する導電性消字部分410fと接触すると、字消し400fは、接触した導電性消字部分410fによりスタイラス機能を発揮する。また、字消し400fは非導電性消字部分420fを通じて優れた消字性を発揮することができる。
【0067】
あるいは、本発明の字消しは、例えば図4の(g)に示すような構造を有していてもよい。図4の(g)において、上下方向に延びる2本の導電性消字部分410(1)g,410(2)gの各々の一部は上面402および下面404に露出しており、左側面406および右側面408には露出していない。また、横方向に延びる1本の導電性消字部分410(3)gの一部は左側面406および右側面408に露出しており、上面402および下面404には露出していない。さらに、上下方向に延びる導電性消字部分410(1)g、410(2)gと、横方向延びる導電性消字部分410(3)gとは、内部で互いに交差して一体となっている。一方、非導電性消字部分420gはこれら導電性消字部分410(1)g,410(2)g,410(3)gの間に配置されており、それらの一部は上面402、下面404、左側面406および右側面408に露出するように配置されている。
【0068】
この場合、人の手が上面402、下面404、左側面406または右側面408のいずれかに露出する導電性消字部分410(1)g,410(2)g,410(3)gと接触すると、字消し400gは、接触した導電性消字部分410(1)g,410(2)g,410(3)gによりスタイラス機能を発揮する。また、字消し400gは非導電性消字部分420gを通じて優れた消字性を発揮することができる。
【0069】
あるいは、本発明の字消しは、例えば図4の(h)に示すような構造を有していてもよい。図4の(h)において、上下方向に延びる1本の導電性消字部分410(1)hの一部は上面402、下面404および左側面406に露出しており、右側面408には露出していない。また、横方向に延びる1本の導電性消字部分410(2)hの一部は下面404、左側面406および右側面408に露出しており、上面402には露出していない。さらに、上下方向に延びる導電性消字部分410(1)hと、横方向延びる導電性消字部分410(2)hとは、内部で互いに交差して一体となっている。一方、非導電性消字部分420hはこれら導電性消字部分410(1)h,410(2)h以外の部分を埋めるように配置されており、その一部は上面402および右側面408に露出するように配置されている。
【0070】
この場合、人の手が上面402、下面404または左側面406のいずれかに露出する導電性消字部分410(1)h,410(2)hと接触すると、字消し400hは、接触した導電性消字部分410(1)h,410(2)hによりスタイラス機能を発揮する。また、字消し400hは非導電性消字部分420hを通じて優れた消字性を発揮することができる。
【0071】
あるいは、本発明の字消しは、例えば図4の(i)に示すような構造を有していてもよい。図4の(i)において、上下方向に延びる1本の導電性消字部分410(1)iの一部は上面402、下面404および左側面406に露出しており、右側面408には露出していない。また、横方向に延びる1本の導電性消字部分410(2)iの一部は左側面406および右側面408に露出しており、上面402および下面404には露出していない。さらに、上下方向に延びる導電性消字部分410(1)iと、横方向延びる導電性消字部分410(2)iとは、内部で互いに交差して一体となっている。一方、非導電性消字部分420hはこれら導電性消字部分410(1)i,410(2)i以外の部分を埋めるように配置されており、その一部は上面402、下面404および右側面408に露出するように配置されている。
【0072】
この場合、人の手が上面402、下面404または左側面406のいずれかに露出する導電性消字部分410(1)i,410(2)iと接触すると、字消し400iは、接触した導電性消字部分410(1)i,410(2)iによりスタイラス機能を発揮する。また、字消し400iは非導電性消字部分420iを通じて優れた消字性を発揮することができる。
【0073】
あるいは、本発明の字消しは、例えば図4の(j)に示すような構造を有していてもよい。図4の(j)において、上下方向に延びる1本の導電性消字部分410(1)jの一部は上面402、下面404および左側面406に露出しており、右側面408には露出していない。また、上下方向に延びる他の1本の導電性消字部分410(2)jの一部は上面402、および下面404に露出しており、左側面406および右側面408には露出していない。さらに、横方向に延びる1本の導電性消字部分410(3)jの一部は左側面406に露出しており、上面402、下面404および右側面408には露出していない。またさらに、上下方向に延びる導電性消字部分410(1)j、410(2)jと、横方向延びる導電性消字部分410(3)jとは、内部で互いに交差して一体となっている。一方、非導電性消字部分420gはこれら導電性消字部分410(1)j,410(2)j,410(3)jの間に配置されており、それらの一部は上面402、下面404、および右側面408に露出するように配置されている。
【0074】
この場合、人の手が上面402、下面404または左側面406のいずれかに露出する導電性消字部分410(1)j,410(2)j,410(3)jと接触すると、字消し400jは、接触した導電性消字部分410(1)j,410(2)j,410(3)jによりスタイラス機能を発揮する。また、字消し400jは非導電性消字部分420jを通じて優れた消字性を発揮することができる。
【0075】
あるいは、本発明の字消しは、例えば図4の(k)に示すような構造を有していてもよい。図4の(k)において、上下方向に延びる1本の導電性消字部分410(1)kの一部は上面402および下面404に露出しており、左側面406および右側面408には露出していない。また、横方向に延びる1本の導電性消字部分410(2)kの一部は左側面406に露出しており、上面402、下面404および右側面408には露出していない。さらに、上下方向に延びる導電性消字部分410(1)kと、横方向延びる導電性消字部分410(2)kとは、内部で互いに交差して一体となっている。一方、非導電性消字部分420gはこれら導電性消字部分410(1)k,410(2)k以外の部分を埋めるように配置されており、それらの一部は上面402、下面404、右側面408および左側面408に露出するように配置されている。
【0076】
この場合、人の手が上面402、下面404または左側面406のいずれかに露出する導電性消字部分410(1)k,410(2)kと接触すると、字消し400kは、接触した導電性消字部分410(1)k,410(2)kによりスタイラス機能を発揮する。また、字消し400kは非導電性消字部分420kを通じて優れた消字性を発揮することができる。
【0077】
あるいは、本発明の字消しは、例えば図4の(k)に示すような構造を有していてもよい。図4の(k)において、上下方向に延びる1本の導電性消字部分410(1)kの一部は上面402および下面404に露出しており、左側面406および右側面408には露出していない。また、横方向に延びる1本の導電性消字部分410(2)kの一部は左側面406に露出しており、上面402、下面404および右側面408には露出していない。さらに、上下方向に延びる導電性消字部分410(1)kと、横方向延びる導電性消字部分410(2)kとは、内部で互いに交差して一体となっている。一方、非導電性消字部分420gはこれら導電性消字部分410(1)k,410(2)k以外の部分を埋めるように配置されており、それらの一部は上面402、下面404、右側面408および左側面408に露出するように配置されている。この場合、人の手が上面402、下面404または左側面406のいずれかに露出する導電性消字部分410(1)k,410(2)kと接触すると、字消し400kは、接触した導電性消字部分410(1)k,410(2)kによりスタイラス機能を発揮する。また、字消し400kは非導電性消字部分420kを通じて優れた消字性を発揮することができる。
【0078】
あるいは、本発明の字消しは、例えば図4の(l)に示すような構造を有していてもよい。図4の(l)において、1本の導電性消字部分410lは底面方向の一隅に配置され、その一部は上面402および右側面408に露出しており、下面404および左側面406には露出していない。一方、非導電性消字部分420kはこれら導電性消字部分410l以外の部分を埋めるように配置されており、それらの一部は上面402、下面404、右側面408および左側面408に露出するように配置されている。
【0079】
この場合、人の手が上面402または右側面408のいずれかに露出する導電性消字部分410lと接触すると、字消し400lは、接触した導電性消字部分410lによりスタイラス機能を発揮する。また、字消し400lは非導電性消字部分420lを通じて優れた消字性を発揮することができる。
【0080】
本発明の字消しは、例えば、上記導電性消字部分を構成する成分と、上記非導電性消字部分を構成する成分とを別々に溶融混練した後、例えば両者を共押出することにより製造することができる。あるいは、上記導電性消字部分および非導電性消字部分をそれぞれ押出成形等によって成形した後、当該分野において周知の接着剤等を用いて貼り合わせてもよい。
【0081】
成形温度は必ずしも限定されないが、例えば100℃~130℃、好ましくは110℃~120℃であり、加熱時間は例えば20分間~40分間である。例えば、共押出された後は所定の温度まで冷却され、所定の大きさに切断することにより、本発明の字消しを得ることができる。
【0082】
本発明の字消しは、上記の通り導電性消字部分と非導電性消字部分とを備えているため、情報機器端末のディスプレイを通じて文字入力等の操作を行う場合には、表面に現れる導電性消字部分または導電性スリーブを手で把持することにより、字消し内の導電性消字部分が存在する任意の部分からスタイラス機能を発揮することができる。また、その表面には非導電性消字部分も現れているため、紙面上の鉛筆やシャープペンシルで記載された筆記線に対して優れた消字性を発揮することもできる。さらに、この導電性消字部分は字消し内で連続的に延びて配置されているため、仮に字消し自体が使用を通じて削れたものとなった場合でも新品と同様に、スタイラス機能と消字性との両方を発揮し得る。
【0083】
これにより、遠隔授業やオンラインミーティングなどを行う際、出席者の机上に、本発明の字消し以外にスタイラスペンやタッチペンを別途準備することから解放される。あるいは、スタイラスペンやタッチペンを紛失したような場合でもその代用として本発明の字消しを使用することが可能である。
【実施例0084】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0085】
(実施例1:字消しサンプル(E1)の作製)
スチレン系熱可塑性エラストマー(SBS)100質量部と、重質炭酸カルシウム250質量部と、プロセスオイル45質量部をニーダー内で加熱混練して生地(1)を作製した。他方、スチレン系熱可塑性エラストマー(SBS)100質量部と、重質炭酸カルシウム220質量部と、カーボンブラック40質量部と、プロセスオイル45質量部をニーダー内で加熱混練して生地(2)を作製した。これらの生地(1)および生地(2)をそれぞれの所定の厚みに押出成形した後、両生地を重ね合わせ、熱圧着、切断することにより、底面方向において厚み4.5mmの非導電性消字部分、厚み1.0mmの導電性消字部分、および厚み4.0mmの非導電性消字部分をこの順に積層してなる(底面が図4の(a)に示すような構造を有する)、3層構造かつ直方体状の字消しサンプル(E1)(厚み:9.5mm、幅:15.5mm、長さ:50.0mm)を得た。なお、この字消しサンプル(E1)では、短側面および底面の両方において導電性消字部分の一部と非導電性消字部の一部との両方が露出するものであった。
【0086】
(比較例1:字消しサンプル(C1)の作製)
実施例1で作製した生地(1)単独を用いて、シリンダー温度100℃およびスクリュー回転数25rpmで押出し、切断することにより、非導電性消字部分のみで構成される直方体状の字消しサンプル(C1)(厚み:9.5mm、幅:15.5mm、長さ:50.0mm)を得た。なお、この字消しサンプル(C1)では、短側面および底面の両方において非導電性消字部のみが露出するものであった。
【0087】
(比較例2:字消しサンプル(C2)の作製)
実施例1で作製した生地(2)単独を用いて、シリンダー温度100℃およびスクリュー回転数25rpmで押出し、切断することにより、導電性消字部分のみで構成される直方体状の字消しサンプル(C2)(厚み:9.5mm、幅:15.5mm、長さ:50.0mm)を得た。なお、この字消しサンプル(C2)では、短側面および底面の両方において導電性消字部のみが露出するものであった。
【0088】
(スマートフォンの操作性)
実施例1で得られた字消しサンプル(E1)の2つの短側面を親指と人差し指とで把持し、当該サンプル(E1)の底面をスマートフォンのディスプレイに押し当てた。この状態で、字消しサンプル(E1)をディスプレイ上で平行にスライドさせ、当該サンプル(E1)の動きに伴う、ディスプレイ上のスマートフォンの操作性を確認した。結果を表1に示す。
【0089】
比較例1および2で得られた字消しサンプル(C1)および(C2)について、上記と同様にして2つの短側面を親指および人差し指で挟持し、スマートフォンのディスプレイに押し当て、当該サンプル(C1)および(C2)の動きに伴う、ディスプレイ上のスマートフォンの操作性を確認した。結果を表1に示す。
【0090】
(HB鉛筆消字率の測定)
実施例1ならびに比較例1および2で得られた字消しサンプル(E1)、(C1)および(C2)の各底面(試験紙の接触部分)を半径6±1mmの円弧状に削り、試験片を得た。これらの試験片を用いてJIS S 6050(2002)に準拠して、得られたサンプルのHB鉛筆消字率を測定した。結果を表2に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
表1に示すように、実施例1で得られた字消しサンプル(E1)は、スマートフォンの操作性が良好であるとともに高い消字率を有しており、スタイラス機能の発揮と優れた消字性との両立が可能であることがわかる。これに対し、比較例1の字消しサンプル(C1)は優れた消字性を有するもののスタイラス機能に欠けており、比較例2の字消しサンプル(C2)はスタイラス機能を発揮できるものの、消字性が幾分劣っており、いずれの字消しサンプルも上記両立が困難なものであった。
【0093】
(実施例2:字消しサンプル(E2)の作製)
実施例1で作製した生地(1)および生地(2)をそれぞれの所定の厚みに押出成形した後、それぞれを所定の幅に切断し、所定の位置に固定した状態で熱圧着し、切断することにより、図5の(a)に示す、底面方向において十字状の導電性消字部分の四隅が非導電性消字部分で埋められた直方体状の字消しサンプル(E2)(厚み:11mm、幅:21mm、長さ:50.0mm)を得た。なお、この字消しサンプル(E2)について、底面方向における短側面側の非導電性消字部分(下面側)、導電性消字部分および非導電性消字部分(上面側)のそれぞれの厚みは、3mm、5mmおよび3mmであり、長側面側の非導電性消字部分(下面側)、導電性消字部分および非導電性消字部分(上面側)のそれぞれの厚みは、いずれも7mmであった。また、この字消しサンプル(E2)では、短側面および底面の両方において導電性消字部分の一部と非導電性消字部の一部との両方が露出するものであった。
【0094】
(実施例3:字消しサンプル(E3)の作製)
実施例1で作製した生地(1)および生地(2)をそれぞれの所定の厚みに押出成形した後、両生地を重ね合わせ熱圧着し、切断することにより、
図5の(b)に示す、底面方向において6層の導電性消字部分と5層の非導電性消字部分とが交互に積層された11段縞状の直方体状の字消しサンプル(E3)(厚み:11mm、幅:21mm、長さ:50.0mm)を得た。なお、この字消しサンプル(E3)について、底面方向における短側面側の導電性消字部分の層および非導電性消字部分の層の厚みはいずれも1mmであった。また、この字消しサンプル(E3)では、短側面および底面の両方において導電性消字部分の一部と非導電性消字部の一部との両方が露出するものであった。
【0095】
(実施例4:字消しサンプル(E4)の作製)
実施例1で作製した生地(1)および生地(2)をそれぞれの所定の厚みに押出成形した後、両生地を重ね合わせ熱圧着し、切断することにより、
図5の(c)に示す、底面方向において2層の非導電性消字部分と、その間に配置された1層の導電性消字部分とが積層された、3段縞状の直方体状の字消しサンプル(E4)(厚み:11mm、幅:21mm、長さ:50.0mm)を得た。なお、この字消しサンプル(E4)について、底面方向における短側面側の導電性消字部分の層の厚みは5mmであり、2つの非導電性消字部分の層の厚みはいずれも3mmであった。また、この字消しサンプル(E4)では、短側面および底面の両方において導電性消字部分の一部と非導電性消字部の一部との両方が露出するものであった。
【0096】
(比較例3:字消しサンプル(C3)の作製)
実施例1で作製した生地(2)単独を用いて、シリンダー温度100℃およびスクリュー回転数25rpmで押出し、切断することにより、図5の(d)に示す導電性消字部分のみで構成される直方体状の字消しサンプル(C3)(厚み:11mm、幅:21mm、長さ:50.0mm)を得た。なお、この字消しサンプル(C3)では、短側面および底面の両方において導電性消字部のみが露出するものであった。
【0097】
(比較例4:字消しサンプル(C4)の作製)
実施例1で作製した生地(1)単独を用いて、シリンダー温度100℃およびスクリュー回転数25rpmで押出し、切断することにより、図5の(e)に示す非導電性消字部分のみで構成される直方体状の字消しサンプル(C4)(厚み:11mm、幅:21mm、長さ:50.0mm)を得た。なお、この字消しサンプル(C4)では、短側面および底面の両方において非導電性消字部のみが露出するものであった。
【0098】
(各種スリーブを装着した字消しサンプルのスマートフォンの操作性)
実施例2~4で得られた字消しサンプル(E2)~(E4)のそれぞれを、市販の字消しに使用する紙製スリーブ(厚み:0.25mm)内に収容した。なお、各字消しサンプルとスリーブの内壁はいずれも密着するものであった。
【0099】
この状態で、各スリーブの2つの短側面を親指と人差し指とで把持し、当該サンプル(E2)~(E4)の底面をスマートフォンのディスプレイに押し当ててスライドさせ、当該サンプル(E2)~(E4)の動きに伴う、ディスプレイ上のスマートフォンの操作性を確認した。またスリーブを装着しなかった場合の操作性も同様に確認した。結果を表2に示す。
【0100】
次いで、紙製スリーブに代えて、3.0×10Ω・cmの体積抵抗率を有する紙(厚み:0.25mm)を用いて作製したスリーブ(導電性の紙製スリーブ)、およびアルミニウム(厚み:0.4mm)を用いて作製したスリーブ(アルミニウム製スリーブ)をそれぞれ用い、当該サンプル(E2)~(E4)の動きに伴う、ディスプレイ上のスマートフォンの操作性を確認した。またスリーブを装着しなかった場合の操作性も同様に確認した。結果を表2に示す。
【0101】
さらに比較例3および4で得られた字消しサンプル(C3)および(C4)について、上記と同様にして紙製スリーブ、導電性の紙製スリーブ、およびアルミニウム製スリーブのそれぞれに収容した。次いで、これらのスリーブの2つの短側面を親指および人差し指で挟持し、スマートフォンのディスプレイに押し当て、当該サンプル(C3)および(C4)の動きに伴う、ディスプレイ上のスマートフォンの操作性を確認した。またスリーブを装着しなかった場合の操作性も同様に確認した。結果を表2に示す。
【0102】
【表2】
【0103】
表2に示すように、実施例2~4で得られた字消しサンプル(E2)~(E4)はいずれも、導電性を有するスリーブ(導電性の紙製、アルミニウム製)内に収容すると、スリーブに収容しなかった場合と同様にスマートフォンの操作性が良好であった。また、本実施例で採用したような厚みであれば、紙製スリーブを用いてもスマートフォンを良好に操作することができた。
【符号の説明】
【0104】
100,300 字消し
102a,102b 底面
104 側面
104a,104b,104c,104d 矩形面
110 導電性消字部分
120 非導電性消字部分
212 親指
214 人差し指
216 中指
340 導電性スリーブ
図1
図2
図3
図4
図5