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特開2023-55172予備洗浄システム、予備洗浄方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055172
(43)【公開日】2023-04-17
(54)【発明の名称】予備洗浄システム、予備洗浄方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A47L 15/46 20060101AFI20230410BHJP
【FI】
A47L15/46 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164361
(22)【出願日】2021-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】518106124
【氏名又は名称】コネクテッドロボティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127384
【弁理士】
【氏名又は名称】坊野 康博
(74)【代理人】
【識別番号】100152054
【弁理士】
【氏名又は名称】仲野 孝雅
(72)【発明者】
【氏名】沢登 哲也
(72)【発明者】
【氏名】塚本 光一
【テーマコード(参考)】
3B082
【Fターム(参考)】
3B082DA00
3B082DB00
3B082DC00
(57)【要約】
【課題】食器の自動洗浄を行う上で、充分な洗浄効果をより確実に達成する。
【解決手段】予備洗浄システム1において、制御装置60は、食器認識部151と、予備洗浄方法決定部153と、予備洗浄実行部154と、を備える。食器認識部151は、本洗浄に先行して実行される予備洗浄の対象となる食器を認識する。シャワー40aは、予備洗浄の対象となる食器を水流によって予備洗浄する。ブラシ40bは、予備洗浄の対象となる食器を洗浄用具によって予備洗浄する。予備洗浄方法決定部153は、食器認識部151によって認識された予備洗浄の対象となる食器の形状に基づいて、シャワー40a及びブラシ40bの少なくともいずれかを用いた予備洗浄方法を決定する。予備洗浄実行部154は、予備洗浄方法決定部153によって決定された予備洗浄方法で、予備洗浄の対象となる食器の予備洗浄を実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本洗浄に先行して実行される予備洗浄の対象となる食器を認識する食器認識手段と、
前記予備洗浄の対象となる食器を水流によって予備洗浄するための第1予備洗浄手段と、
前記予備洗浄の対象となる食器を洗浄用具によって予備洗浄するための第2予備洗浄手段と、
前記食器認識手段によって認識された前記予備洗浄の対象となる食器の形状に基づいて、前記第1予備洗浄手段及び前記第2予備洗浄手段の少なくともいずれかを用いた予備洗浄方法を決定する予備洗浄方法決定手段と、
前記予備洗浄方法決定手段によって決定された予備洗浄方法で、前記予備洗浄の対象となる食器の予備洗浄を実行する予備洗浄実行手段と、
を備えることを特徴とする予備洗浄システム。
【請求項2】
前記予備洗浄方法決定手段は、前記予備洗浄の対象となる食器の色及びテクスチャの少なくともいずれかに基づいて、前記第1予備洗浄手段または前記第2予備洗浄手段のいずれを用いた予備洗浄方法とするかを決定することを特徴とする請求項1に記載の予備洗浄システム。
【請求項3】
前記食器の汚れの状態を認識する汚れ認識手段をさらに備え、
前記予備洗浄方法決定手段は、前記予備洗浄の対象となる食器の形状及び汚れの状態に基づいて、前記第1予備洗浄手段または前記第2予備洗浄手段のいずれを用いた予備洗浄方法とするかを決定することを特徴とする請求項1または2に記載の予備洗浄システム。
【請求項4】
前記汚れ認識手段は、予備洗浄の後に実行された本洗浄後、洗浄された前記食器の汚れの状態を認識し、
前記予備洗浄実行手段は、前記汚れ認識手段によって、洗浄された前記食器に残存している汚れが認識された場合、当該食器の予備洗浄を再度実行することを特徴とする請求項3に記載の予備洗浄システム。
【請求項5】
前記予備洗浄実行手段は、前記食器の予備洗浄を再度実行する場合、前回の予備洗浄よりも長い洗浄時間で予備洗浄を実行することを特徴とする請求項3に記載の予備洗浄システム。
【請求項6】
前記汚れ認識手段は、汚れが付着した食器の画像を機械学習した機械学習モデルに基づいて、前記食器の汚れの状態を認識することを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の予備洗浄システム。
【請求項7】
前記汚れ認識手段は、前記予備洗浄の対象となる食器の画像を異常検知アルゴリズムによって分析することにより、前記食器の汚れの状態を認識することを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の予備洗浄システム。
【請求項8】
前記予備洗浄実行手段は、前記予備洗浄の対象となる食器を保持し、前記洗浄用具が内部の面全体に接触するように、前記予備洗浄の対象となる食器を移動させることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の予備洗浄システム。
【請求項9】
前記予備洗浄実行手段は、前記予備洗浄の対象となる食器を保持するロボットアームを備え、前記ロボットアームで前記予備洗浄の対象となる食器を移動させることにより、前記予備洗浄を実行することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の予備洗浄システム。
【請求項10】
前記第2予備洗浄手段は、回転させた前記洗浄用具によって前記食器を予備洗浄することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の予備洗浄システム。
【請求項11】
前記予備洗浄の対象となる食器の清浄な状態における形状を含むデータが格納された食器データベースをさらに備え、
前記予備洗浄方法決定手段は、前記食器認識手段によって認識された前記予備洗浄の対象となる食器のデータを前記食器データベースから取得し、取得した前記予備洗浄の対象となる食器のデータに基づいて、前記第1予備洗浄手段または前記第2予備洗浄手段のいずれを用いた予備洗浄方法とするかを決定することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の予備洗浄システム。
【請求項12】
本洗浄に先行して実行される予備洗浄の対象となる食器を認識する食器認識ステップと、
前記予備洗浄の対象となる食器を水流によって予備洗浄するための第1予備洗浄ステップと、
前記予備洗浄の対象となる食器を洗浄用具によって予備洗浄するための第2予備洗浄ステップと、
前記食器認識ステップにおいて認識された前記予備洗浄の対象となる食器の形状に基づいて、前記第1予備洗浄ステップ及び前記第2予備洗浄ステップの少なくともいずれかを含む予備洗浄方法を決定する予備洗浄方法決定ステップと、
前記予備洗浄方法決定ステップにおいて決定された予備洗浄方法で、前記予備洗浄の対象となる食器の予備洗浄を実行する予備洗浄実行ステップと、
を含むことを特徴とする予備洗浄方法。
【請求項13】
本洗浄に先行して実行される予備洗浄の対象となる食器を水流によって予備洗浄するための第1予備洗浄手段と、
前記予備洗浄の対象となる食器を洗浄用具によって予備洗浄するための第2予備洗浄手段と、を備える予備洗浄システムを制御するコンピュータに、
前記予備洗浄の対象となる食器を認識する食器認識機能と、
前記食器認識機能によって認識された前記予備洗浄の対象となる食器の形状に基づいて、前記第1予備洗浄手段及び前記第2予備洗浄手段の少なくともいずれかを用いた予備洗浄方法を決定する予備洗浄方法決定機能と、
前記予備洗浄方法決定機能によって決定された予備洗浄方法で、前記予備洗浄の対象となる食器の予備洗浄を実行する予備洗浄実行機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予備洗浄システム、予備洗浄方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、調理を行う店舗等において、食器を自動的に洗浄する食器洗浄機が広く用いられるようになっている。
食器洗浄機を用いることで、食器を洗浄するための人手を削減したり、時間帯を問わずに稼動させたりすることができるため、店舗等にとって利用価値の高い技術となっている。
なお、食器の自動洗浄に関連する技術は、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-231568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、食器の自動洗浄を行う従来の技術においては、食器洗浄機による洗浄のみでは、食器の汚れが残存することがあった。そのため、汚れが落ち難いと考えられる食器については、作業者が事前に手作業で予備洗浄を行う等の対応が取られている。
また、引用文献1に記載の技術のように、食器洗浄機による本洗浄に先立ち、洗浄される食器に水を噴射する等の処置を行う技術も存在するが、本洗浄において確実に汚れが落ちる状態になっているとは限らず、予備洗浄の効果が充分なものではない。
このように、従来の技術においては、食器の自動洗浄を行う上で、充分な洗浄効果を確実に達成できるものではなかった。
【0005】
本発明の課題は、食器の自動洗浄を行う上で、充分な洗浄効果をより確実に達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態に係る予備洗浄システムは、
本洗浄に先行して実行される予備洗浄の対象となる食器を認識する食器認識手段と、
前記予備洗浄の対象となる食器を水流によって予備洗浄するための第1予備洗浄手段と、
前記予備洗浄の対象となる食器を洗浄用具によって予備洗浄するための第2予備洗浄手段と、
前記食器認識手段によって認識された前記予備洗浄の対象となる食器の形状に基づいて、前記第1予備洗浄手段及び前記第2予備洗浄手段の少なくともいずれかを用いた予備洗浄方法を決定する予備洗浄方法決定手段と、
前記予備洗浄方法決定手段によって決定された予備洗浄方法で、前記予備洗浄の対象となる食器の予備洗浄を実行する予備洗浄実行手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、食器の自動洗浄を行う上で、充分な洗浄効果をより確実に達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る予備洗浄システム1全体の構成を示す模式図である。
図2】本発明に係る予備洗浄システム1の設置形態例を示す模式図である。
図3】制御装置60のハードウェア構成を示す模式図である。
図4】制御装置60の機能的構成を示すブロック図である。
図5】予備洗浄システム1が実行する食器データ登録処理の流れを示すフローチャートである。
図6】予備洗浄システム1が実行する予備洗浄処理の流れを示すフローチャートである。
図7】2本のフィンガーによって食器を把持する形態のハンドの構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
[構成]
図1は、本発明に係る予備洗浄システム1全体の構成を示す模式図である。
また、図2は、本発明に係る予備洗浄システム1の設置形態例を示す模式図である。
図1及び図2に示すように、予備洗浄システム1は、多関節ロボット10と、撮像装置20と、洗浄対象食器載置部30と、シンク40と、食器洗浄機50と、制御装置60と、を備えている。また、予備洗浄システム1において電気的な制御が行われる各部は、制御装置60と有線通信または無線通信可能に構成され、制御装置60の制御に従って動作する。
【0010】
多関節ロボット10は、例えば、6軸の垂直多関節ロボット等によって構成され、ロボットアームの先端には、食器Dを真空吸着可能なハンドを備えている。また、多関節ロボット10は、予備洗浄の対象となる食器Dを洗浄対象食器載置部30からピックアップし、制御装置60の指示に従って、水流による予備洗浄またはブラッシングによる予備洗浄のいずれかを実行する。そして、多関節ロボット10は、予備洗浄後の食器Dを食器洗浄機50のトレーに移動してリリースする。なお、多関節ロボット10のハンド付近は、天井等に固定して設置された撮像装置20または多関節ロボット10の先端に設置された撮像装置20によって撮影されており、食器Dのピックアップからリリースまでの工程において、食器Dの位置及び周辺物体の位置等が常時認識されている。
【0011】
撮像装置20は、予備洗浄システム1の稼動範囲を所定時間間隔(例えば、1秒毎)で撮影する撮像装置であり、食器D等の可視光画像及び立体形状を取得する機能を備えている。例えば、撮像装置20は、デジタルカメラ及び3次元スキャナを備える撮像システムによって構成することができる。ただし、デジタルカメラを並列に設置したステレオカメラシステムによって撮像装置20を構成することとしてもよい。本実施形態において、撮像装置20は複数設置されており、撮像装置20の1つは、洗浄対象食器載置部30の上方(天井あるいは洗浄対象食器載置部30を覆う部材の天面等)に設置され、洗浄対象食器載置部30全体を撮影している。また、他の撮像装置20の1つは、食器洗浄機50の食器が載置されるラックあるいは食器洗浄機50に移送される食器収容のためのトレーが一時的に載置される位置の上方(天井あるいは周辺の部材等)に設置され、ラックあるいはトレー全体を撮影している。なお、上述したように、多関節ロボット10に撮像装置20を設置し、多関節ロボット10のハンド付近を撮影することとしてもよい。
【0012】
洗浄対象食器載置部30は、洗浄対象となる使用後の食器Dが載置される領域であり、シンク40に隣接する位置に設置されている。本実施形態においては、食器Dを伏せた状態(即ち、上面視において食器Dの外側が視認できる状態)として、洗浄対象食器載置部30に食器Dが配列される。食器Dの外側には、模様や絵柄が付されていることが多いため、食器Dを伏せた状態で配列することで、後述する食器Dの認識を容易に行うことが可能となる。ただし、食器Dを上向きの状態(即ち、上面視において食器Dの内側が視認できる状態)としても食器Dを認識できれば、食器Dを上向きの状態として、あるいは、食器Dの向きを問わずに、洗浄対象食器載置部30に配列してもよい。
【0013】
シンク40は、店舗の厨房等に設置され、水を貯留する水槽を備えると共に、水を排出する排出口を備えている。本実施形態において、シンク40には、食器Dを予備洗浄するためのシャワー40aと、食器Dをブラッシングするためのブラシ40bと、が設置されている。
シャワー40aは、シンク40における水槽部分の底部側から上方に向かって水流を放出するシャワーヘッドを備え、後述するように、制御装置60の指示に従って、水流の放出及び停止を切り替える。以下、シャワー40aの水流による予備洗浄を適宜「第1の予備洗浄」と称する。
ブラシ40bは、ナイロン等の素材で構成された食器洗浄用具であり、食器Dに押し当てられることにより、食器Dの形状に応じて変形し、食器D表面をブラッシングする。なお、ブラシ40bには内部から水分が供給されており、食器Dに押し当てられることにより、食器D表面に水分を与えることが可能となっている。本実施形態において、ブラシ40bは、モータによって回転することが可能となっており、後述するように、制御装置60の指示に従って、回転及び停止を切り替える。以下、ブラシ40bのブラッシングによる予備洗浄を適宜「第2の予備洗浄」と称する。
【0014】
食器洗浄機50は、洗浄庫内に配置された食器Dに洗剤及び水流を噴射する等の動作により、食器Dに付着した汚れを自動的に洗浄する装置である。本実施形態において、食器洗浄機50は、シンク40と一体に組み込まれたビルトイン型のものを用いることの他、外付け可能な据え置き型のものを用いることも可能である。なお、食器洗浄機50は、制御装置60の制御に従って動作させたり、作業者が食器洗浄機50を操作して動作させたりすることができる。
【0015】
制御装置60は、PC(Personal Computer)またはプログラマブルコントローラ等の情報処理装置によって構成され、各種プログラムを実行することにより、予備洗浄システム1全体を制御する。例えば、制御装置60は、食器Dのデータをデータベースに登録するための食器データ登録処理及び食器Dを予備洗浄するための予備洗浄処理を実行する。各種プログラムを実行することにより、制御装置60は、多関節ロボット10による食器Dの保持動作及び搬送動作を制御したり、撮像装置20による画像の撮像を制御したりする。また、制御装置60は、シンク40におけるシャワー40aの水流の放出及び停止を制御したり、ブラシ40bの回転及び停止を制御したりする。
【0016】
[制御装置60のハードウェア構成]
図3は、制御装置60のハードウェア構成を示す模式図である。
図3に示すように、制御装置60は、CPU(Central Processing Unit)611と、ROM(Read Only Memory)612と、RAM(Random Access Memory)613と、バス614と、入力部615と、出力部616と、記憶部617と、通信部618と、ドライブ619と、を備えている。
【0017】
CPU611は、ROM612に記録されているプログラム、または、記憶部617からRAM613にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM613には、CPU611が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0018】
CPU611、ROM612及びRAM613は、バス614を介して相互に接続されている。バス614には、入力部615、出力部616、記憶部617、通信部618及びドライブ619が接続されている。
【0019】
入力部615は、マウスやキーボード等の入力装置を備え、制御装置60に対する各種情報の入力を受け付ける。なお、入力部615としてマイクを備え、作業者の音声入力によって各種情報の入力を受け付けることとしてもよい。
出力部616は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、画像や音声を出力する。
記憶部617は、ハードディスクあるいはDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各サーバで管理される各種データを記憶する。
通信部618は、ネットワークを介して他の装置との間で行う通信を制御する。
【0020】
ドライブ619には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、あるいは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア631が適宜装着される。ドライブ619によってリムーバブルメディア631から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部617にインストールされる。
なお、上記ハードウェア構成は、制御装置60の基本的構成であり、一部のハードウェアを備えない構成としたり、付加的なハードウェアを備えたり、ハードウェアの実装形態を変更したりすることができる。
【0021】
[機能的構成]
次に、制御装置60の機能的構成について説明する。
図4は、制御装置60の機能的構成を示すブロック図である。
図4に示すように、食器データ登録処理及び予備洗浄処理のためのプログラムを実行することにより、制御装置60のCPU611においては、食器認識部151と、汚れ認識部152と、予備洗浄方法決定部153と、予備洗浄実行部154と、再洗浄判定部155と、履歴データ取得部156と、機械学習モデル構築部157と、が機能する。また、記憶部617には、食器データベース(食器DB)171と、履歴データベース(履歴DB)172と、機械学習モデル記憶部173と、が形成される。
【0022】
食器DB171は、予備洗浄システム1において洗浄対象となる食器Dのデータが格納されたデータベースである。これら食器Dのデータは、その食器Dの使用が開始されるタイミング等で事前に取得され、食器Dの画像(RGB画像等)、立体形状、サイズ等のデータが食器Dを識別する情報(識別番号等)と対応付けて食器DB171に記憶される。なお、食器Dのデータを取得した際に、吸着対象位置として食器Dの重心を推定し、食器DB171に併せて記憶しておくこととしてもよい。
【0023】
履歴DB172は、予備洗浄の対象となる食器Dの予備洗浄前の状態、予備洗浄後及び本洗浄後の状態の履歴のデータが格納されたデータベースである。例えば、履歴DB172には、予備洗浄前、予備洗浄後、本洗浄後の食器Dの可視光画像及びテクスチャ(食器D表面の汚れの3次元形状及び食器Dの表面形状等)のデータと、本洗浄後に再洗浄が必要であったか否かの判定結果とを記憶することができる。これらのデータは、洗浄対象となる食器Dの汚れの状態を判定するための機械学習モデルの更新に用いることができる。
【0024】
機械学習モデル記憶部173は、予備洗浄システム1において洗浄対象となる食器Dの清浄な状態のデータ及び汚れた状態のデータを教師データとする機械学習により構築された機械学習モデルを記憶している。本実施形態において、機械学習モデル記憶部173に記憶された機械学習モデルは、洗浄対象となる食器Dについて、清浄な状態、汚れが軽度の状態及び汚れが重度の状態の少なくとも3段階の推論を行うことが可能となっている。ただし、汚れの度合いを推論する段階としては、2段階(例えば、汚れが軽度の状態及び汚れが重度の状態)とすることや、4段階以上(例えば、4以上の度合いに細分化された汚れの状態)とすることも可能である。なお、機械学習モデル記憶部173に記憶された機械学習モデルは、予備洗浄システム1の稼働によって取得された履歴のデータによって、逐次更新することができる。
【0025】
食器認識部151は、撮像装置20の撮影結果に基づいて、予備洗浄システム1において洗浄対象となる食器Dを認識する。具体的には、食器認識部151は、洗浄対象となる食器Dが清浄な状態(例えば、使用開始前の状態)において、食器Dの内面及び外面の可視光画像及び食器Dの立体形状のデータを撮像装置20によって取得する。このとき、食器Dの立体形状のデータから食器Dのサイズ(直径、高さ等)のデータを取得することができる。また、食器Dの可視光画像及び立体形状のデータから、食器Dを種類に応じたグループ(例えば、平皿、お椀、カップ等のグループ)に分類することができる。なお、食器Dの立体形状のデータから、多関節ロボット10が食器Dを保持する際の吸着対象位置として食器Dの重心を推定することとしてもよい。そして、食器認識部151は、食器Dの認識結果を食器DB171に記憶する。これにより、食器Dが食器DB171に登録される。なお、食器認識部151が食器Dを認識する際に、認識対象となる食器Dの各種画像(撮影方向や照明等の撮影条件を種々異ならせた画像)を教師データとして機械学習させた機械学習モデルを用いて、被写体となっている食器がいずれの食器であるかを推論し、推論された結果に基づいて、食器Dのデータを取得(カタログデータを読み込む等)することとしてもよい。
【0026】
また、食器認識部151は、使用後の食器Dを予備洗浄する際に、食器Dを撮像装置20によって撮影した結果(可視光画像及び立体形状のデータ)に基づいて、被写体となっている食器Dが食器DB171に記憶されているいずれの食器であるかを認識する。例えば、食器認識部151は、撮影された食器Dの可視光画像及び立体形状のデータを、食器DB171に記憶されている各種食器のデータと照合し、食器DB171に記憶されている食器のデータのうち、一致率が最も高い食器が被写体となっている食器Dであるものと判定する。この場合にも、認識対象となる食器Dの各種画像(撮影方向や照明等の撮影条件を種々異ならせた画像)を教師データとして機械学習させた機械学習モデルを用いて、被写体となっている食器がいずれの食器Dであるかを認識することとしてもよい。
【0027】
また、食器認識部151は、使用後の食器D(予備洗浄前の食器D)を撮像装置20によって撮影した結果(可視光画像及び立体形状のデータ)を、汚れた食器Dのサンプルを表すデータとして履歴DB172に記憶する。汚れた食器Dのサンプルを表すデータは、機械学習モデル記憶部173に記憶された機械学習モデルを更新するために用いることができる。
【0028】
汚れ認識部152は、撮像装置20の撮影結果に基づいて、予備洗浄システム1において洗浄対象となる食器Dの汚れを認識する。本実施形態において、汚れ認識部152は、機械学習モデル記憶部173に記憶された機械学習モデルによって、洗浄対象となる食器Dの汚れの度合いを認識する。即ち、汚れ認識部152は、食器Dを撮像装置20によって撮影した結果(可視光画像及び立体形状のデータ)を入力として、機械学習モデルによる推論を行い、撮影された食器Dが、清浄な状態、汚れが軽度の状態及び汚れが重度の状態のいずれであるかを判定する。このとき、1つの食器D全体の中で、汚れが重度の状態である部分を特定することとしてもよい。また、このとき用いられる機械学習モデルは、食器Dの画像の色(汚れの色等)あるいは立体形状(食器D表面に付着した残渣の3次元形状等)の1つの要素またはその組み合わせを特徴量として学習したモデルとすることができる。なお、上述したように、汚れの度合いを2段階または4段階以上で推論することも可能であり、この場合、推論された汚れの度合いに応じた予備洗浄方法及び予備洗浄時間等を設定することができる。
【0029】
予備洗浄方法決定部153は、洗浄対象となる食器Dの種類及び汚れ認識部152の認識結果に基づいて、予備洗浄方法を決定する。
予備洗浄方法を決定するための基準は、予備洗浄システム1が適用される対象及び状況等に応じて、種々の態様を取ることができる。一例として、予備洗浄の対象となる食器Dの色及びテクスチャに関する基準に基づいて、予備洗浄方法を決定することができる。テクスチャとは、例えば、予備洗浄の対象となる食器D表面の3次元形状として定義することができ、ここでは、食器D表面の汚れの3次元形状及び食器Dの表面形状を含むものとする。本実施形態においては、洗浄対象となる食器Dの形状によって、第1の予備洗浄(水流による予備洗浄)または第2の予備洗浄(ブラッシングによる予備洗浄)を選択すると共に、汚れの度合いが大きい場合には、第2の予備洗浄が選択される。即ち、洗浄対象となる食器Dの形状によって、第1の予備洗浄が選択された食器Dのうち、汚れ認識部152によって食器Dの汚れが重度の状態であると認識されたものについては、第2の予備洗浄(ブラッシングによる予備洗浄)が選択される。
即ち、本実施形態においては、洗浄対象となる食器Dの形状が第2の予備洗浄を行うものに分類されているもの、または、汚れ認識部152によって食器Dの汚れが重度の状態であると認識されたものについては、第2の予備洗浄が選択され、それ以外のものについては、第1の予備洗浄が選択される。
【0030】
ただし、第1の予備洗浄(水流による予備洗浄)または第2の予備洗浄(ブラッシングによる予備洗浄)を選択する基準としては、洗浄対象となる食器Dの汚れの付着し易さを考慮することも可能であり、食器Dの素材、食器Dが使用される用途、形状の複雑さ等を基準として、第1の予備洗浄または第2の予備洗浄を選択することが可能である。例えば、茶碗であればお米などの汚れが付きやすいため第2の予備洗浄を選択することとし、コップであれば通常は水などの飲料のみしか付着しないので第1の予備洗浄を選択することとしてもよい。すなわち、第1の予備洗浄(水流による予備洗浄)または第2の予備洗浄(ブラッシングによる予備洗浄)を選択する基準として汚れの認識結果だけでなく、食器の認識結果に基づいて選択することとしてもよい。
【0031】
予備洗浄実行部154は、予備洗浄方法決定部153によって決定された予備洗浄の方法によって、洗浄対象となる食器Dの予備洗浄を実行する。具体的には、予備洗浄実行部154は、予備洗浄方法決定部153によって第1の予備洗浄を実行すると決定された場合、シャワー40aから水流を放出させると共に、洗浄対象となる食器Dを保持した多関節ロボット10に対し、保持している食器D(食器Dの内側)を水流に当てるよう動作させる。また、予備洗浄実行部154は、予備洗浄方法決定部153によって第2の予備洗浄を実行すると決定された場合、ブラシ40bを回転させると共に、洗浄対象となる食器Dを保持した多関節ロボット10に対し、保持している食器D(食器Dの内側)をブラシ40bに当てるよう動作させる。このとき、予備洗浄実行部154は、食器Dの内側全体を満遍なくブラシ40bに当てるよう食器Dを移動させる。また、予備洗浄実行部154は、ブラシ40bと食器D表面との摩擦を高めるため、多関節ロボット10によって、ブラシ40bの回転とは逆方向に食器Dを移動させる。このとき、多関節ロボット10が食器Dを移動させる移動量は、食器DB171に登録されている食器Dの形状またはリアルタイムで認識した食器Dの形状に基づいて決定することができる。
【0032】
ここで、予備洗浄実行部154が予備洗浄を実行する際の時間及び洗浄の強さは、予備洗浄の効果を得られる範囲で予め設定されている。ただし、再洗浄判定部155によって再洗浄が必要であると判定され、2回目以降の予備洗浄が行われる食器Dについては、前回の予備洗浄よりも洗浄効果を高めるように、時間を長くする、水流を強くする、あるいは、ブラッシングを強くする等、予備洗浄の設定が変更される。
【0033】
再洗浄判定部155は、本洗浄が完了した後の食器Dを撮像装置20が撮影した結果に基づいて、食器Dの再洗浄が必要か否かを判定する。具体的には、再洗浄判定部155は、機械学習モデル記憶部173に記憶された機械学習モデルによって、本洗浄後の食器Dの汚れが存在するか否かを推論し、食器Dの汚れが存在すると推論された場合、食器Dの再洗浄が必要であると判定する。なお、機械学習モデルを用いて食器Dの汚れが存在するか否かを推論する処理は、汚れ認識部152と同様の手順によって実行することができる。
【0034】
履歴データ取得部156は、予備洗浄の対象となる食器Dの予備洗浄前の状態、予備洗浄後及び本洗浄後の状態の履歴のデータを取得する。例えば、履歴データ取得部156は、予備洗浄前、予備洗浄後、本洗浄後の食器Dの可視光画像及びテクスチャ(食器D表面の汚れの3次元形状及び食器Dの表面形状)のデータと、本洗浄後に再洗浄が必要であったか否かの判定結果を表すデータとを取得し、これらを対応付けて履歴DB172に記憶する。
【0035】
機械学習モデル構築部157は、予備洗浄システム1において洗浄対象となる食器Dの清浄な状態のデータ及び汚れた状態のデータを教師データとして、入力データ(食器Dの撮影結果)が清浄な状態を表すものであるか、汚れた状態を表すものであるかを推論するための機械学習モデルを構築する。本実施形態において、機械学習モデル構築部157は、入力データが清浄な状態、汚れが軽度の状態及び汚れが重度の状態の少なくとも3段階のいずれであるかを推論する機械学習モデルを構築する。なお、機械学習モデル構築部157は、履歴DB172に記憶される履歴のデータを用いて、逐次、機械学習モデルを更新することができる。
【0036】
一例として、機械学習モデル構築部157は、食器Dの画像における色を特徴量として教師データを機械学習することで、機械学種モデルを構築することができる。食器Dの画像における色を特徴量とした場合、例えば、食器D自体の色及び汚れの色に着目して汚れを検出することができる。また、機械学習モデル構築部157は、食器D表面の3次元形状を特徴量として教師データを機械学習することで、機械学習モデルを構築することができる。食器D表面の3次元形状を特徴量とした場合、例えば、滑らかな食器表面に付着したご飯粒等の残渣の表面形状に着目して汚れを検出することができる。なお、食器Dの画像における色及び食器D表面の3次元形状を共に特徴量としたり、その他の変数を特徴量に含めたりすることにより、予備洗浄システム1が適用される対象及び状況等に応じて、適切な機械学習モデルを構築することができる。
【0037】
[動作]
次に、予備洗浄システム1の動作を説明する。
[食器データ登録処理]
図5は、予備洗浄システム1が実行する食器データ登録処理の流れを示すフローチャートである。
食器データ登録処理は、制御装置60において、食器データ登録処理の実行を指示する操作が行われることに対応して開始される。
【0038】
食器データ登録処理が開始されると、ステップS1において、食器認識部151は、撮像装置20によって登録対象となる食器Dを撮影し、撮影結果のデータ(可視光画像及び立体形状のデータ)を取得する。
ステップS2において、食器認識部151は、撮影結果のデータ(可視光画像及び立体形状のデータ)から食器Dのサイズ、食器Dの種類等の各種データを含む食器Dのデータを取得する。
【0039】
ステップS3において、食器認識部151は、取得した食器Dのデータを食器Dの識別情報と対応付けて、食器DB171に記憶する。
ステップS4において、食器認識部151は、登録対象となる食器Dの処理が全て終了したか否かの判定を行う。
登録対象となる食器Dの処理が全ては終了していない場合、ステップS4においてNOと判定されて、処理はステップS1に移行する。
一方、登録対象となる食器Dの処理が全て終了した場合、ステップS4においてYESと判定されて、食器データ登録処理は終了する。
【0040】
[予備洗浄処理]
次に、予備洗浄処理について説明する。
図6は、予備洗浄システム1が実行する予備洗浄処理の流れを示すフローチャートである。
予備洗浄処理は、制御装置60において、予備洗浄処理の実行を指示する操作が行われることに対応して開始される。
【0041】
予備洗浄処理が開始されると、ステップS11において、食器認識部151は、撮像装置20によって洗浄対象となる食器Dを撮影し、撮影結果のデータ(可視光画像及び立体形状のデータ)に基づいて、洗浄対象となる食器Dが食器DB171に記憶されているいずれの食器であるかを認識する。
ステップS12において、汚れ認識部152は、撮像装置20の撮影結果に基づいて、予備洗浄システム1において洗浄対象となる食器Dの汚れを認識する。このとき、汚れ認識部152は、機械学習モデル記憶部173に記憶された機械学習モデルによって、洗浄対象となる食器Dの汚れの度合い(清浄な状態、汚れが軽度の状態または汚れが重度の状態)を認識する。
【0042】
ステップS13において、予備洗浄方法決定部153は、洗浄対象となる食器Dの種類及び汚れ認識部152の認識結果に基づいて、予備洗浄方法を決定する。このとき、予備洗浄方法決定部153は、洗浄対象となる食器Dの形状が第2の予備洗浄を行うものに分類されているもの、または、汚れ認識部152によって食器Dの汚れが重度の状態であると認識されたものについては、第2の予備洗浄を選択し、それ以外のものについては、第1の予備洗浄を選択する。
【0043】
ステップS14において、予備洗浄実行部154は、予備洗浄方法決定部153によって決定された予備洗浄の方法によって、洗浄対象となる食器Dの予備洗浄を実行する。即ち、予備洗浄実行部154は、予備洗浄方法決定部153によって第1の予備洗浄を実行すると決定された場合、シャワー40aから水流を放出させると共に、洗浄対象となる食器Dを保持した多関節ロボット10に対し、保持している食器D(食器Dの内側)を水流に当てるよう動作させる。また、予備洗浄実行部154は、予備洗浄方法決定部153によって第2の予備洗浄を実行すると決定された場合、ブラシ40bを回転させると共に、洗浄対象となる食器Dを保持した多関節ロボット10に対し、保持している食器D(食器Dの内側)をブラシ40bに当てるよう動作させる。
【0044】
ステップS14の後、洗浄対象となる食器Dは多関節ロボット10によって食器洗浄機50に移送され、本洗浄が行われる。
ステップS15において、予備洗浄システム1は、食器洗浄機50による本洗浄の終了を待機する。
ステップS16において、再洗浄判定部155は、本洗浄が完了した後の各食器Dを撮像装置20が撮影した結果に基づいて、食器Dの再洗浄が必要か否か(いずれかの食器Dに汚れが残存しているか否か)の判定を行う。
食器Dの再洗浄が必要である場合、ステップS16においてYESと判定されて、処理はステップS11に移行する。これにより、汚れが残存している食器Dが再洗浄される。
一方、食器Dの再洗浄が必要でない場合、ステップS16においてNOと判定されて、処理はステップS17に移行する。
【0045】
ステップS17において、履歴データ取得部156は、予備洗浄の対象となる食器Dについて取得された予備洗浄前の状態、予備洗浄後及び本洗浄後の状態の履歴のデータを履歴DB172に記憶する。
ステップS18において、食器認識部151は、洗浄対象となる食器Dの処理が全て終了したか否かの判定を行う。
洗浄対象となる食器Dの処理が全ては終了していない場合、ステップS18においてNOと判定されて、処理はステップS11に移行する。
一方、洗浄対象となる食器Dの処理が全て終了した場合、ステップS18においてYESと判定されて、予備洗浄処理は終了する。
【0046】
以上のように、本実施形態に係る予備洗浄システム1は、予備洗浄の対象となる食器Dを認識し、食器の種類(形状等)及び汚れの状態(汚れの度合い等)に基づいて、水流による第1の予備洗浄またはブラッシングによる第2の予備洗浄のいずれを実行するかを決定する。
そのため、洗浄対象となる食器Dの形態及び洗浄時の汚れの状態に応じて、適切な予備洗浄を行った後に、本洗浄を実行することができる。
したがって、食器の自動洗浄を行う上で、充分な洗浄効果をより確実に達成することができる。
【0047】
また、本実施形態に係る予備洗浄システム1は、上述の予備洗浄方法で食器Dを予備洗浄した後、食器洗浄機50による本洗浄を待って、食器Dの再洗浄が必要であるか否かを判定し、再洗浄が必要であると判定した場合、食器Dの洗浄を予備洗浄から再度実行する。
そのため、本洗浄の洗浄方法では落とし難いと考えられる汚れ等に対し、本洗浄とは異なる洗浄方法を実行可能な予備洗浄で再度洗浄した後、改めて本洗浄を実行することができる。
したがって、本洗浄で落とし切れなかった汚れに対し、単純に本洗浄を繰り返す場合に比べて、より高い洗浄効果を得ることが可能となる。
【0048】
また、本実施形態に係る予備洗浄システム1は、洗浄対象となる食器Dの清浄な状態のデータ及び汚れた状態のデータを教師データとする機械学習により構築された機械学習モデルを用いて、洗浄対象となる食器Dの汚れを認識する。
そのため、複雑な模様を有する食器や、形状が複雑な食器等であっても、その食器における汚れを適確に推論することができる。
したがって、それぞれの食器の汚れに応じて、適切な洗浄方法を選択することができる。
【0049】
[変形例1]
上述の実施形態において、予備洗浄システム1は、機械学習モデルを構築し、機械学習モデルを用いた推論により、汚れた食器であることを認識するものとしたが、これに限られない。
例えば、撮像装置20によって撮影された食器Dの画像から異常を判定するための特徴量を算出し、この特徴量において、汚れていない食器Dを正常、汚れた食器Dを異常と判定する判定基準を設定した異常検知アルゴリズムを用いて食器Dの画像を分析することにより、汚れの付着(異常)を検知することとしてもよい。
この場合、事前に食器DB171に登録していない食器Dにおいても、汚れを容易に認識することができる。
【0050】
[変形例2]
上述の実施形態において、多関節ロボット10は、食器を真空吸着可能なハンドを備えるものとして説明したが、これに限られない。例えば、複数のフィンガーによって食器を把持する形態のハンドを多関節ロボット10に設置することとしてもよい。
図7は、2本のフィンガーによって食器を把持する形態のハンドの構成例を示す模式図である。なお、図7においては、2本のフィンガーの中間位置において、食器を内部から支持するグリッパを補助的に備えた構成例を示している。
図7に示すように、2本のフィンガーによって食器を把持する形態とした場合、表面の凹凸が大きい食器や、複雑な形状を有する食器、あるいは、サイズが大きい食器等、真空吸着では保持し難い食器であっても、容易に保持することが可能となる。また、図7に示す形態のハンドによって食器を把持した場合、多関節ロボット10がハンドを回転させることにより、食器の上下を反転させることができる。そのため、作業者は、洗浄対象食器載置部30に洗浄対象となる食器を載置する場合に、任意の向きで食器を載置することができる。
また、真空吸着可能なハンドと複数のフィンガーによって食器を把持する形態のハンド等、複数種類のハンドを多関節ロボット10が自動的に付け替えながら、保持対象の食器に適したハンドで食器を保持することとしてもよい。
【0051】
なお、本発明は、本発明の効果を奏する範囲で変形、改良等を適宜行うことができ、上述の実施形態に限定されない。
例えば、上述の実施形態においては、第1の予備洗浄または第2の予備洗浄のいずれかを実行することとしたが、これに限られない。即ち、洗浄対象となる1つの食器に対して、第1の予備洗浄及び第2の予備洗浄の両方を実行することとしてもよい。
【0052】
また、上述の実施形態において、洗浄対象となる食器の実物を汚れた食器のサンプルとして認識するものとしたが、これに限られない。即ち、一般的な汚れのサンプルを表すデータ(汚れの種類を表すサンプル画像のデータ等)を取得し、これを用いて食器の汚れを認識することとしてもよい。
【0053】
以上のように、本実施形態における予備洗浄システム1は、多関節ロボット10と、シャワー40aと、ブラシ40bと、制御装置60と、を備える。制御装置60は、食器認識部151と、予備洗浄方法決定部153と、予備洗浄実行部154と、を備える。
食器認識部151は、本洗浄に先行して実行される予備洗浄の対象となる食器を認識する。
シャワー40aは、予備洗浄の対象となる食器を水流によって予備洗浄する。
ブラシ40bは、予備洗浄の対象となる食器を洗浄用具によって予備洗浄する。
予備洗浄方法決定部153は、食器認識部151によって認識された予備洗浄の対象となる食器の形状に基づいて、シャワー40a及びブラシ40bの少なくともいずれかを用いた予備洗浄方法を決定する。
予備洗浄実行部154は、予備洗浄方法決定部153によって決定された予備洗浄方法で、予備洗浄の対象となる食器の予備洗浄を実行する。
これにより、洗浄対象となる食器の形態に応じて、適切な予備洗浄を行った後に、本洗浄を実行することができる。
したがって、食器の自動洗浄を行う上で、充分な洗浄効果をより確実に達成することができる。
【0054】
予備洗浄方法決定部153は、予備洗浄の対象となる食器の色及びテクスチャの少なくともいずれかに基づいて、シャワー40a及びブラシ40bのいずれを用いた予備洗浄方法とするかを決定する。
これにより、食器の形状に加え、食器の色あるいは表面形状に基づいて、適切な予備洗浄の方法を決定することができる。
【0055】
予備洗浄システム1は、汚れ認識部152を備える。
汚れ認識部152は、食器の汚れの状態を認識する。
予備洗浄実行部154は、予備洗浄の対象となる食器の形状及び汚れの状態に基づいて、シャワー40a及びブラシ40bのいずれを用いた予備洗浄方法とするかを決定する。
これにより、洗浄対象となる食器の形態及び洗浄時の汚れの状態に応じて、適切な予備洗浄を行った後に、本洗浄を実行することができる。
【0056】
汚れ認識部152は、予備洗浄の後に実行された本洗浄後、洗浄された食器の汚れの状態を認識する。
予備洗浄実行部154は、汚れ認識部152によって、洗浄された食器に残存している汚れが認識された場合、当該食器の予備洗浄を再度実行する。
これにより、本洗浄の洗浄方法では落とし難いと考えられる汚れ等に対し、本洗浄とは異なる洗浄方法を実行可能な予備洗浄で再度洗浄した後、改めて本洗浄を実行することができる。
【0057】
予備洗浄実行部154は、食器の予備洗浄を再度実行する場合、前回の予備洗浄よりも長い洗浄時間で予備洗浄を実行する。
これにより、前回の予備洗浄よりも洗浄効果を高めて、より確実に食器を洗浄することができる。
【0058】
汚れ認識部152は、汚れが付着した食器の画像を機械学習した機械学習モデルに基づいて、食器の汚れの状態を認識する。
これにより、複雑な模様を有する食器や、形状が複雑な食器等であっても、その食器における汚れを適確に推論することができる。
【0059】
汚れ認識部152は、予備洗浄の対象となる食器の画像を異常検知アルゴリズムによって分析することにより、食器の汚れの状態を認識する。
これにより、事前に食器DB171に登録していない食器においても、汚れを容易に認識することができる。
【0060】
予備洗浄実行部154は、予備洗浄の対象となる食器を保持し、洗浄用具が内部の面全体に接触するように、予備洗浄の対象となる食器を移動させる。
これにより、食器を形状に合わせて移動させる等して、食器と洗浄用具とを適切に接触させることができる。
【0061】
予備洗浄実行部154は、予備洗浄の対象となる食器を保持するロボットアームを備え、ロボットアームで予備洗浄の対象となる食器を移動させることにより、予備洗浄を実行する。
これにより、食器を柔軟な姿勢で保持することができ、食器と洗浄用具とを適切に接触させることができる。
【0062】
ブラシ40bは、回転させた洗浄用具によって食器を予備洗浄する。
これにより、効率的に予備洗浄を行うことができると共に、予備洗浄の洗浄効果を高めることができる。
【0063】
予備洗浄システム1は、食器DB171を備える。
食器DB171は、予備洗浄の対象となる食器の清浄な状態における形状を含むデータが格納されている。
予備洗浄実行部154は、食器認識部151によって認識された予備洗浄の対象となる食器のデータを食器DB171から取得し、取得した予備洗浄の対象となる食器のデータに基づいて、シャワー40a及びブラシ40bのいずれを用いた予備洗浄方法とするかを決定する。
これにより、洗浄対象となる食器を示す正確なデータに基づいて予備洗浄方法を決定することができるため、より適切に予備洗浄方法を選択することができる。
【0064】
上述の実施形態に記載された例を適宜組み合わせて、本発明を実施することが可能である。
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
換言すると、図4の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が予備洗浄システム1に備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に図4の例に限定されない。
また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0065】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0066】
プログラムを記憶する記憶媒体は、装置本体とは別に配布されるリムーバブルメディア、あるいは、装置本体に予め組み込まれた記憶媒体等で構成される。リムーバブルメディアは、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクあるいはフラッシュメモリ等により構成される。光ディスクは、例えば、CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk),Blu-ray Disc(登録商標)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini-Disk)等により構成される。フラッシュメモリは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリあるいはSDカードにより構成される。また、装置本体に予め組み込まれた記憶媒体は、例えば、プログラムが記憶されているROMやハードディスク等で構成される。
【0067】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【符号の説明】
【0068】
1 予備洗浄システム、10 多関節ロボット、20 撮像装置、30 洗浄対象食器載置部、40 シンク、40a シャワー、40b ブラシ、50 食器洗浄機、60 制御装置、151 食器認識部、152 汚れ認識部、153 予備洗浄方法決定部、154 予備洗浄実行部、155 再洗浄判定部、156 履歴データ取得部、157 機械学習モデル構築部、171 食器データベース(食器DB)、172 履歴データベース(履歴DB)、173 機械学習モデル記憶部、611 CPU、612 ROM、613 RAM、614 バス、615 入力部、616 出力部、617 記憶部、618 通信部、619 ドライブ、631 リムーバブルメディア、D 食器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7