(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055178
(43)【公開日】2023-04-17
(54)【発明の名称】単相電磁力発生方法および発生装置
(51)【国際特許分類】
H02K 17/04 20060101AFI20230410BHJP
H02K 41/02 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
H02K17/04
H02K41/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021176946
(22)【出願日】2021-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】592040815
【氏名又は名称】木内 学
(72)【発明者】
【氏名】木内 学
【テーマコード(参考)】
5H641
【Fターム(参考)】
5H641BB07
5H641GG02
5H641HH03
5H641JA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】自動車のEV化推進をはじめ、あらゆる産業施設・機械・設備の駆動源としての電磁力駆動の活用と、その省エネルギー化・高効率化が求められている。新機能を具備した単相電磁力駆動システムを提供する。
【解決手段】現行一般の電動機の構造・機能に代えて、電磁力を受ける動体内蔵の導電体の一部を磁力線から遮蔽する方法により、所望の電磁駆動力を獲得できる機能性の高い単相電磁力発生方法および装置を考案した。これにより、高トルク多様な駆動形態を発現し得る新しい形態機能を有する単相電磁力駆動システムを実現した。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元物理空間の所要の位置に、3次元直交座標系の原点および座標軸を想定し、該座標系の直交する3方向の該座標軸をx軸、y軸、z軸と表記することとし、該3次元物理空間において、所要の電磁機能を持つU字形単体の電磁石を、該電磁石のN極とS極が所要の間隔をあけて該z軸上においてz軸座標値=0の位置、すなわち該座標系の原点、を挟んで相対向して存在し、該N極と該S極に挟まれている空間が、該z軸座標正領域にある該N極から該z軸座標負領域にある該S極へ至る磁力線、すなわち該z軸に平行な磁力線、によって満たされた磁場空間を構成するように配設し、加えて、該磁場空間の一部であり該座標系の原点を中央に内包する空間部位において、該x軸方向と平行に、該x軸座標正領域側から同座標負領域側に向かって、該磁場空間を貫通する単相電磁力受動体と名付ける電磁機能構造体を配設するのであるが、該単相電磁力受動体の先頭部位は該磁場空間を通過してその出口側隣接空間すなわち該x軸座標負領域へ至っており、該単相電磁力受動体の後尾部位は該磁場空間に入るに至らず入口側隣接空間すなわち該x軸座標正領域に留まっている状態にあり、更に、該単相電磁力受動体は、該x軸、該y軸、該z軸方向に、長さ、幅、厚さを持つ概ね直方体又は直方体から派生する扇形体等の立体外形状を有し、その内部に、所要の構造および形状・寸法を有し且つ所要の材質から作られた1体以上複数体の導電体が配設されており、該導電体は所要の断面形状と寸法および長さを持つ複数の平行直線部位とそれらの先端部位を連結する結合部位とからなり、併せて、該単相電磁力受動体内部において、該導電体の該直線部位が該x軸方向に平行に配設されており、と同時に、全ての該直線部位が所要の相対位置関係を維持するように配設されており、且つ、該直線部位先端の該結合部位は、該単相電磁力受動体が該磁場空間を該x軸負方向に貫通し終わって該磁場空間の外へ出ている部位に内蔵されており、該磁場空間に存在する該単相電磁力受動体の部位には、該導電体の該直線部位のみが内蔵されており、更に、該単相電磁力受動体の後尾部位は、該磁場空間に入らずその入側空間に留まっている状態にあるが、その内部には該磁場空間から続く該導電体直線部位が内蔵されており、それら内蔵されている該導電体直線部位の最後尾部が該単相電磁力受動体から後ろ側すなわち該x軸正方向の外部へ露出して外部電源と電気回路を通して結合可能に配設されており、更に加えて、後尾が露出している複数の該導電体の該直線部位は、2組の群に分けられており、その一方の群は、該磁場空間にある該単相電磁力受動体に所要の電流を流入させるための導電体として使用され、他方の群は、該磁場空間にある該単相電磁力受動体へ流入した電流を、該導電体結合部位を経て反転させ、該導電体直線部位を経て該単相電磁力受動態の外へ、すなわち該磁場空間の外へ、流出させるための導電体として使われ、加えて、該磁場空間への入側で、該電流流入用導電体直線部位の後尾端は該外部電源の正電極に結合されており、他方の該電流流出用導電体の該直線部位の後尾端は、該外部電源の負電極に結合されており、該両導電体群は1単位の閉じた電流回路を構成しており、更に加えて、該電流回路において、該電流流入用導電体直線部位が、該磁場空間を貫通後の出側空間において、該電流流出用導電体直線部位と結合されている該結合部位の中間部位から、該磁場空間を貫通して該入側空間に至るまでの過程に配設されている全ての該電流流出用導電体、すなわち、該結合部位の中間部位から該磁場空間を通過して該外部電源負極に結合されるに至る全ての該電流流出用導電体の所要の部位が、所要の特性を持つ非磁性材料により完全被覆あるいは全体封入されており、該流出電流が該磁場空間において、存在する該磁力線の影響から隔絶されており、該磁場から何らの電磁作用力を受けること無く、該磁場空間を通過して外部へ出ることが可能であり、その結果、該単相電磁力受動体に内蔵されている該導電体としては、該非磁性材料に依る被覆や封入を受けずに、該磁場空間において該磁力線に暴露されている該電流流入用導電体を流れる該x軸負方向の電流のみが、該磁力線から該y軸負方向且つ一方向のみの電磁力を受ける電磁機能を有しており、すなわち、該単相電磁力受動体としては、該電流流入用導電体を通して該磁場空間へ向けて所要の電流を流し込むことにより、一方向単相の電磁力を受ける電磁機能を有しており、かかる電磁特性を有する該単相電磁力受動体を利用することにより、所望の一方向単相の電磁力、すなわち、一方向単相の電磁駆動力を取り出すことが出来ることを特徴とする該単相電磁力発生方法および発生装置。
【請求項2】
請求項1に述べた該単相電磁力発生方法および発生装置に使用される該単相電磁力受動体を構成するに際し、該単相電磁力受動体と内蔵する該導電体とを一体化する方式で製作された該単相電磁力受動体、すなわち、まず、所要の該導電体と同一材質の線材・棒材・条材・板材・管材等を用いて、所要の横断面形状と長さ・幅・厚さを有し、該x軸方向と平行であり、該磁場空間を貫通し、該磁場空間への進入前の空間から貫通後の空間に至るまでの所要の連続長さを有している複数の梁材を、該磁場空間の内部においては相互に連結することなく完全に独立している状態に配設し、該x軸負領域側へ貫通後出側空間において、該y軸方向の梁材および該z軸方向の柱材他の所要の部材を用いて、該x軸方向梁材の所要の先端部位を相互に結合して骨格構造体を構成し、更に、該x軸正領域の進入前入側空間において、該x軸と平行な全ての該x軸方向梁材を2群に分け、それぞれの群に属する該x軸方向梁材を必要に応じて群ごとに骨格構造状に結合し、該進入前入側空間においては、該x軸方向梁材の二つの群が相互に電気的絶縁状態を維持するように配設し、更に、その第1群に属する該x軸方向梁材を外部電源の正電極に結合して該流入電流用導電体として使うこととし、該磁場空間において該磁力線に暴露して電磁力を受ける状態を維持し、同時に、第2群に属する該x軸方向梁材を該外部電源負電極に結合して該流出電流用導電体として使い、同時に、第2群に属する全ての該x軸方向梁材の所要部位又は全部位を所要の非磁性材料で被覆又は封入して、該流出電流が該磁場空間を通過する際に該磁力線から受ける影響を遮断し、電磁力の発生を許容しない状態で使用することにより、該骨格構造体全体としては、該流入電流用の第1群の該導電体に作用する一方向の電磁力だけを受け取る該単相電磁力受動体を構成することになり、かかる一方向の電磁力すなわち該単相電磁力を取り出す機能を有する該骨格構造体から成る該単相電磁力受動体を使用することを特徴とする該単相電磁力発生方法および発生装置。
【請求項3】
請求項1、2に述べた該磁場空間において該単相電磁力を受け取る該導電体を内蔵する該単相電磁力受動体の単体の外形状としては、該x軸方向すなわち長手方向、該y軸方向すなわち幅方向、該z軸方向すなわち厚さ方向、に所要の長さ、幅、厚さ寸法を有する直方体、又は、該3次元座標系のx-y面への投影形状が、矩形、楕円形、扇形、又は、それらから派生する異形面形状を有し、更に、該x軸方向および該y軸方向へ向かって該z軸方向厚さが一様且つ平坦又は所要の曲面形状を有する立体であり、その内部に該導電体が、該x軸方向に向けて直線的且つ該x軸と平行に配設されているが、その際、該電流流入用導電体直線部位が、該単相電磁力受動体の該y軸方向すなわち該幅方向の中央部位に配設され、該電流流出用導電体直線部位が該単相電磁力受動体の該y軸方向即ち該幅方向の両縁部位に配設されている該単相電磁力受動体である、又は逆に、該電流流入用導電体直線部位が、該単相電磁力受動体の該y軸方向すなわち該幅方向の両縁部位に配設され、該電流流出用導電体直線部位が該単相電磁力受動体の該y軸方向即ち該幅方向の中央部位に配設されていることを特徴とする該単相電磁力受動体を用いて構成された該単相電磁力発生方法および発生装置。
【請求項4】
請求項1、2、3に説明した該単相電磁力発生方法および発生装置の一方の基本構成体である該電磁石単体と他方の基本構成体である該導電体内蔵単相電磁力受動体単体の組合せにより構成される単体の該単相電磁力発生装置を複数体用意し、3次元空間における所要の直線又は曲線に沿ってそれらを連結的に配設し、該単体の励起磁場が連結された所望の空間磁場経路を構成し、同時に配設された該単相電磁力受動体の単体又はそれらの連結体が、該単相電磁駆動力を受けつつ、該空間磁場経路に沿って配設された所要の軌道に支持されながら移動できる機能を具備していることを特徴とする該単相電磁力発生方法および発生装置。
【請求項5】
請求項1に説明した該単相電磁力発生方法および発生装置の基本構成要素体である該電磁石と該単相電磁力受動体を用いて、所要の回転軸体上に配設された所要回転半径と厚さを有する円盤状支持躯体を回転駆動するに際して、該円盤状支持躯体の周縁部位に、所要の電磁機能を有する該導電体を内蔵し所要の外形状と寸法を持つ該単相電磁力受動体を、必要な数だけ、該内蔵導電体の概直線部位が、該円盤状支持躯体の半径方向に概ね一致するように配設し、更に、必要に応じて、該単相電磁力受動態を該円盤状支持躯体の表裏両表面に同様に配設し、加えて、該円盤状支持躯体の外周縁部位に沿って、所要の電磁能力を持つ該U字形電磁石を、その磁心本体およびN極とS極が、該円盤状躯体の外周縁部位、および、そこに配設した該単相電磁力受動態とを合わせて、所要の隙間を以って、該円盤状支持躯体の半径方向外側から挟み込むように配設し、該電磁石により、相対向する該N極とS極との間に励起磁場を発現させ、更に、該単相電磁力受動体が内蔵する該導電体に外部電源から電流を流し込み、該内蔵導電体に単相電磁力を発生させ、結果、該配設単相電磁力受動体に該単相電磁駆動力を加え、該円盤状支持躯体を回転させることを特徴とする該単相電磁力発生方法および発発生装置。
【請求項6】
請求項1、2、3、4、5に述べた該単相電磁力発生方法および発生装置において、該単相電磁力受動体に電磁力を加える該磁場空間を構成するために用いるとした該電磁石の代わりに、所要の機能・能力を持つ永久磁石を用いることを特徴とする該単相電磁力発生方法および発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的に励起した磁場中に、該磁場から電磁力を受け取り駆動される電磁力受動体を設置し、該電磁力すなわち該電磁駆動力を獲得し利用するに際して、該電磁力受動体に配設される導電体の電流流路の形態、該導電体に流れる電流量、および、該磁場中の磁力線の発現形態を制御して、該導電体に作用する該電磁力の発生形態および発生動態を制御しつつ該発生電磁力を取り出し、所要の電動機他各種の機械装置を駆動するための回転駆動力あるいは直動駆動力等を獲得するための新たな考え方および方策・手段に関するものである。
【0002】
電磁力利用技術分野における代表的な製品事例および応用事例としては、一般に広く用いられているいわゆる電動機又は電動モーターがあり、電気的励起磁場内で被駆動導電体に作用する該電磁力の発生形態および該電磁力の取り出し方法・方式に関して、多くの機構・装置が提案され実用化されている。該電磁力利用技術の進歩・発展に関しては長い歴史があり、技術的にはすでに飽和しているとの見方もあるが、実際には新たな機構や方式の可能性が多く残されており、本発明は、それらを掘り起こし、電磁駆動力および電磁駆動システムとその応用技術を大きく拡張することを目指す。
【背景技術】
【0003】
電磁駆動システムによる駆動力の創出は、所謂「フレミングの左手の法則」に従って行われる。「フレミングの左手の法則」によれば、「物理空間に左手系直交(x,y,z)座標系を想定し、y軸正方向に磁力線が流れる磁場の中に、x軸正方向へ向かう導電体を置き同方向へ電流を流すと、当該電導体にはz軸正方向に力が加わる」という電磁物理現象が生起する。この物理現象および法則に基づき、電気的に励起した所要の磁場空間において、電磁力を受けて作動するローター等動体を設置し、該動体が内蔵する所定の導電体に電流を流し、発現する電磁力を利用して該動体、すなわち、該電磁力受動体の駆動が行われる。一般電動機の形態や構造および駆動力の獲得方式については、1)電源として、交流を用いるか、直流を用いるか、2)誘導電流を用いるか、直導電流を用いるか、3)該電動機の回転子すなわちローターが作動する空間、すなわちステーターが構成する磁場空間として、磁場の方向が周期的に変化する回転磁場を用いるか、磁場の方向が変化しない静止磁場を用いるか、4)該ステーターが励起する磁場の回転と該ローターの回転運動とを同期させるか、同期せずに辷りが発生することを許容するか、等の方式があり、それぞれ目的に応じて使い分けられ、相応の効果が得られている。
【0004】
最も標準的な電磁駆動機すなわち電磁力利用電動機である回転磁場誘導電流型電動機の作動原理は、以下の通りである。所要の円筒型ステーターの内表面に沿って所要能力を持つ電磁石を配設し、該電磁石に通電して該円筒形ステーターの内部に励起磁場を発生させ、該円筒形磁場の中心にローターを配設し、該ローターの表層に導電線又は導電体を巻き付け又は配設して閉じた導電回路を構成し、電気回路制御技術を用いて、該ステーター内部における該励起磁場を電気的に回転させることにより、該ローター上の該導電回路に誘導電流を発生させ、該円筒状励起回転磁場から該導電回路に作用する電磁力を回転力として用いて該ローターを回転せしめ、該回転力を外部の機械設備に伝達し、駆動トルクとして利用し、該機械設備を駆動する。
【0005】
現状の電磁力利用電動機の駆動方法については、各種の方式が考案され利用されており、駆動形態も、回転駆動ばかりでなく直動駆動なども行われている。他方、電磁力駆動機の利用は拡大の一途を辿っており、今後、駆動方式や駆動形態の多様化や高機能化への要求がますます高まり、駆動能力の高出力化や駆動形態の3次元化・複合化なども求められている。このような技術動向から、電磁力駆動あるいは電磁力駆動機に関する今後の技術課題として、以下の事項への対応が求められている。
【0006】
1)電磁力駆動の基盤となる電磁力の発生機構および発生形態の拡張、多様化、
2)電磁力発生機構、発生電磁力の取り出し・伝達機構、および、それらの構成部品、例えば、ステーター、ローター、ケーシング、減速装置、トルク伝達軸、トルク伝達ジョイント等、の構造特性や作動特性の改善・改革、
3)電磁力駆動システムの機構・構造の簡素化、小型化、軽量化、標準化、簡易化、設計・製造の容易化、低コスト化、
4)電磁力駆動機構の高出力化、発生トルク密度の高度化、すなわち、電磁力発生機構の単位体積・単位重量当たりの発生トルクの最大化、
5)電磁力駆動機構のエネルギー効率、投入電力に対する発生駆動馬力およびよび可能作動仕事量の最大化、
6)電磁駆動システムを構成する材料の一般材料化、稀少材料の削減化、
などである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特記事項なし。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在、自動車技術、ロボット技術、無人化機械技術などが急速に進化している。それに伴って、それら機械装置の駆動源となる電磁力駆動システムへの要求が多様化し且つ高度化しているが、現行の電磁力発生機構に基く電磁力駆動システム、すなわち、従前の電動機および電動駆動システムの機能・特性は、上記各技術動向の要求に必ずしも応えきれていない。特に、次の2点すなわち、(1)電磁力駆動システムの単位体積・単位重量当りの出力可能回転トルクの上限が、実際の被駆動機械設備が求める水準に達していない場合が多々あり、このため、電磁力駆動を必要とする機械設備の小型化・軽量化が達成できない、(2)電磁力駆動システムが提供し得る駆動形態の範囲が限られており、被駆動機械設備が求める多様な駆動形態を提供できない場合が多い。実際には、通常、一般電動機から直接取り出し得る駆動力は、ローターの回転駆動力であり、併設する機構・機械装置により、該回転駆動力を直動駆動力、往復動駆動力、周回動駆動力、等の所要動作駆動力に変換しての利用が行われている。
【0009】
本発明は、従来に無い新たな単相電磁力という概念を創出し、該単相電磁力の発生方法および発生装置を考案し、該単相電磁力を利用する新たな単相電磁力駆動システムを提案する。すなわち、1)発明した該単相電磁力発生方法・装置により、回転駆動、周回駆動、直動駆動、往復駆動、更に、曲線駆動、などを直接的に行う電磁力を取り出すこと、あるいは、当該する電磁力駆動システムを構成することが可能となり、加えて、2)該単相電磁力発生方法・装置により単位体積・単位重量当たりの電磁的な駆動出力を高め、小型高出力電磁力駆動システムを実現し、併せて、3)該単相電磁力発生方法・装置を構成する電磁石と関連部品、および、ローター相当品としての導電体内蔵単相電磁力受動体を、簡素なユニット構造品として製作・利用する方式を考案し、個々に独立して簡易に製作することを可能にし、4)両者を組み合わせて簡素な構造から成る単相電磁力発生モジュール単位体を構成し、該単相電磁力発生モジュール体を必要な数だけ連結あるいは積層することによって、所望の大きさの駆動能力を持つ単相電磁力発生システムを柔軟に構成する方式を可能とし、5)所要の該単相電磁力駆動システムを構成する該電磁石ユニット、発生した電磁力を受け取る該単相電磁力受動体ユニット、該電磁石ユニットおよび該単相電磁力受動体ユニットを支持するフレーム部材又はケーシング部材および関連必要部品、更に、所要の集電・配電用配線機器、その他構成部品類を、いずれも単純な形状・構造を有するものとして、容易に設計・製作・組立ができるように考案し、6)以上を以って、発明した該単相電磁力駆動システムを広く容易に使用できる基盤を提案し、新たな電磁力駆動技術の枠組みを構築し、広範な電磁力駆動システム技術への発展の道筋を示した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明が目指す目標は、1)提案した該単相電磁力駆動システムの寸法・重量を極力抑制し、小型化・軽量化を実現する、同時に、2)該単相電磁力駆動システムの駆動力発生効率を最大限に高める、3)該単相電磁力駆動システムの構造・形態を簡素化し、製造および操作・調整を容易化する、4)該単相電磁力駆動システムによる駆動形態の柔軟化・多様化を実現し、多様な用途に供する、5)該単相電磁力駆動システムの活用技術を組織化する、すなわち、先ず、所要の電磁駆動力を出力できる該単相電磁力駆動モジュールの単位体に関わる技術を整備し、次に、該単相電磁力駆動モジュール単位体を必要な数だけ連結して、所要形態・所要容量の駆動力を出力できる該単相電磁力駆動システムを構成する技術を整備する、6)更に、この該単相電磁力駆動モジュール単位体を種々連結することにより、回転駆動のみならず、直動駆動、往復動駆動、あるいは、曲線軌道駆動等の多様な駆動形態を実現する、などである。
上記目的を達成するために、以下の方法および装置を考案した。
【0011】
現行の最も一般的な誘導電動機の機構・構造は、以下の如く説明できる、すなわち、所要の円筒状ケーシングの内面側に電磁石を配設してステーターを構成し、円筒状ケーシングの内部空間に磁場を励起し、該円筒状磁場空間の中心軸上にローターを配置し、その表面又は表層に導電回路を配設し、電流回路制御技術に依り該ケーシング内部に励起した磁場を周回させ、該ローター上に配設した該導電回路に誘導電流を発生せしめ、該発生誘導電流に対して該周回磁場から電磁力を作用させ、該ローターを回転させる。この方式から様々な方式が派生的に生まれ、種々のステーター形式やローター形式が考案され、多様な電動機および電動機駆動システムが開発された。結果、それぞれ目的に応じて、広範な電動機の応用体系が出来上がっている。
但し、本発明は、現行一般の方式とは異なる単相電磁力発生形態を提案し、新しい電磁力発生形態に基づく単相電磁力駆動方法および駆動装置を提案する。
【0012】
本発明による該単相電磁力発生方法を構成する基本要素は、所要の形状・寸法と出力機能を有する電磁石、および、該電磁石が励起する磁場内で、内蔵する導電体に流れる電流に加わる電磁力を受け取る電磁力受動体である。
図1にそれらの基本形状を示す。該電磁石は通常みられる形状・機能を有するものであるが、該電磁力受動体は、特殊な内部構造を持ち、特殊な形状・寸法・配設条件を要する導電体を内蔵している。該導電体は、所要の形状・寸法を持ち、併せて、該磁場内で、励起された磁力線に暴露されて配設されている部位と、所要機能を持つ非磁性体によって被覆又は封入されることによって、該磁力線の影響から隔離され、電磁力が加わらないように配設されている部位とから構成されている(
図1、4参照)。
【0013】
該電磁石の対向するN極とS極との間に形成される該磁場空間に、該電磁力受動体を配置し、所要の電流を流し込むと、該導電体を内蔵する該電磁力受動体には、通常の電動機のローターに加わるいわゆる偶力ではなく、一方向の直動的な電磁力だけが作用する。それ故、本発明では、この場合の電磁力を単相電磁力と名付けてある。以下、所定の励磁能力を持つ該電磁石単体を電磁石ユニット、所定の電磁力を獲得できる該単相電磁力受動体を単相電磁力受動体ユニット、両者を組み合わせて所定の電磁力又は電磁的駆動力を発現できる装置を単相電磁力発生/駆動モジュール、と呼ぶ。
【0014】
本発明に依る該単相電磁力駆動システムの基本構成および構造を、一例として、所要の該単相電磁力発生モジュールにより円盤状躯体を回転駆動する場合について以下に説明する。先ず、所要の形状・寸法を有する静止支持盤の所要の位置に、該支持盤と垂直に交わる所要寸法の軸体を取り付ける。次に、該静止支持盤に相対向して該軸体の所要の位置に、円盤状回転支持盤を回転可能に取付ける。一方の該静止支持盤は該軸体に固定されており、他方の回転支持盤は該軸体上で回転可能である。一方の該静止支持盤は、該電磁石を支持する盤状躯体であり、他方の回転可能な該円盤状回転支持盤は、該単相電磁力受動体を支持する盤状躯体である(
図1、2参照)。
【0015】
次に、該静止支持盤躯体の該回転支持盤躯体と相対向する面上の所要の位置に、所要の形状・寸法と出力を有する該電磁石ユニットを所要の数だけ所要の姿勢を以って配設する。同じく、該回転支持盤躯体の該静止支持盤躯体と相対向する面側の表面の所要の位置に、所要の形状・寸法を有し、所要の該導電体回路を装備した該単相電磁力受動体ユニットを所要の数だけ所要の姿勢を以って配設する。
図2には、配設された該電磁石ユニットと該単相電磁力受動体ユニットの状況を示す(
図2参照)。
【0016】
更に、該電磁石支持盤と該単相電磁力受動体支持盤の相対向する面を近接させ、該電磁石支持盤上に配設された所要の数の電磁石のN極とS極との間隙空間、即ち、該電磁石が励起する該磁場空間に、該単相電磁力受動体支持盤上に配設された所要の数の該単相電磁力受動体を嵌め込み、所要の間隙を以って両者の位置関係を定め、該軸体上の所定の位置に両支持盤がそれぞれ固定および回転可能状態に取り付けられて、該電磁石の配設列と該単相電磁力受動体ユニットの配設列の組合せ,即ち、該電磁石支持盤と該単相電磁力受動体支持盤の組立てが完了し、所要の該単相電磁力駆動システムの基本構造が出来上がる(
図2、5,6参照)。
【0017】
該電磁石支持盤および支持躯体の形状・寸法・材質、および、配設する該電磁石の形状・寸法・材質、更に、コイルの巻き付け位置・巻き数・巻き姿勢・形状・寸法等に関しては、最適化設計を進め、発生する磁力線の無駄な発散を防ぎ、構成する磁場の磁力線密度を出来得るかぎり高め、該単相電磁力駆動システムの出力の最大化を図る。
【0018】
該単相電磁力受動体支持盤および支持躯体の形状・寸法・材質、および、該単相電磁力受動体に配設内蔵する該導電体の形状・寸法・材質・数量・配設位置、等を最適化し、該単相電磁力受動体が内蔵する該導電体が、作動する該磁場空間において存在する該磁力線を最も多く捉えて、発現電磁力の最大化を達成できるように、該単相電磁力受動体と内蔵する該導電体の最適設計を行う(
図2、4参照)。
【0019】
該電磁石支持盤および支持躯体および該単相電磁力受動体支持盤および支持躯体の内部および表層、両者の相対向する面の間隙、該単相電磁力受動体を取り巻く該磁場空間等の所要の位置へ、所要の形状・寸法を有する所要の特性を持つ非磁性材料からなる磁力線流路制御ブロックを配設し、該磁場空間を流れる磁力線の形態や密度分布を制御し、該単相電磁力受動態が内蔵する該導電体に流れ込む磁束密度を最大化し、磁気エネルギーの利用効率を最大化する(
図4、5、8参照)。
【0020】
本発明では、該電磁石支持盤に配設する該電磁石の1単位と該単相電磁力受動体支持盤に配設する該単相電磁力受動体の1単位をそれぞれ1ユニットと呼び、該2種類の所要ユニットの組合せを1単位の単相電磁力発生モジュール、又は、1単位の単相電磁力駆動モジュールと定義するが、各種の機械設備を駆動するに際して、該単位単相電磁力駆動モジュールの組合せや配置形態を抜本的に見直すことを目指し、最も効率的に最大の駆動力を生み出すための組合せと配置形態を探索することを通して、高出力且つ高エネルギー効率を実現する所望の該単相電磁力駆動システムを作り上げることが出来る。加えて、複数の該単位単相電磁力駆動モジュールを3次元的に連結配設することにより、該単相電磁力受動体全体が受け取る電磁力の作動形態と作動力の大きさを柔軟に変化させることが可能となり、今後予想される広範な被駆動機械設備が求める多様な動きや駆動力の効果的且つ効率的な付与が可能となる(
図6、9参照)。
【発明の効果】
【0021】
本発明が提案した該単相電磁力発生方法と発生装置、および、それらを基盤とする該単相電磁力駆動システムは、以下の利点を持つ。
1)該単相電磁力駆動システムにおいて該支持盤躯体に配設される該電磁石が励起する該磁場空間では、従来型の電動機ステーターにおけるN極およびS極の配置に比較して、N極とS極が必要最小限度まで近接して配置されており、励起される磁力線の漏れが起こりにくく、高い磁束密度を維持できる。故に、該N極と該S極の間隙を通過する該導電体内蔵単相電磁力受動体に作用する電磁力、すなわち該単相電磁力駆動システムが該電磁力受動体に加える力が高まり、従来型電動機に比して、同一水準の励起電流により得られる駆動力出力を大幅に増大させることが出来る。
【0022】
2)本発明事例として[0014],[0015]および[0016]に述べた該盤状躯体を有する該単相電磁力駆動システムでは、該電磁石支持盤の表面に複数の該電磁石を所要の円環状に配設し、該単相電磁力受動体支持盤と相対向する方向に開口し且つ所要の円環溝状に配列されているN極とS極を有しており、他方の該単相電磁力受動体支持盤の表面には、同じく円環状に複数の該導電体内蔵単相電磁力受動体を配設してある。両盤状支持体は、共通する軸体上に相対向して配設されており、該導電体内蔵単相電磁力受動体の円環状列が、該支持盤上の該電磁石の円環列のN極とS極が成す円環状の溝にはまり込む形で組み合わされて、該円環に沿って周回可能となる形に、該単相電磁力駆動システムが構成される。その結果、該N極と該S極が構成する該円環状の溝の全ての部位に置いて、周回する該導電体内蔵単相電磁力受動体の全ての電磁力受動部位に対して常時連続的に電磁力が作用するので、非常に効率的に大きな回転力、高回転トルク、を得ることが出来る(
図6参照)。
【0023】
3)本発明による該単相電磁力駆動システムでは、配設する該単相電磁力駆動モジュールの数を選ぶこと、該単相電磁力駆動モジュールの配設位置および姿勢を選ぶこと、該電磁石および該単相導電体内蔵電磁力受動体に投入する電流量を変更すること、等により獲得できる該単相電磁力駆動による駆動力および駆動形態を大幅に変更できる。すなわち、実使用時においては、配設されている複数の該単相電磁力駆動モジュールの中から、稼働させる単相電磁力駆動モジュールそのもの、および、その数や支持躯体に取り付ける位置や姿勢を選択することにより、同一の該単相電磁力駆動システムを用いて、大出力稼働から小出力稼働まで、あるいは、回転駆動や直動駆動など、使用環境に適応して、無駄の無い効率的な稼働を実現出来る(
図6,9参照)。
【0024】
4)本発明に依る該単相電磁力駆動システムでは、該電磁石と該単相電磁力受動体の支持構造や支持躯体構造が極めて単純簡素であるため、設計・製作、および、組立・調整が容易であり、低価格・大量に製作することができる、このため、広範な産業分野において、電動設備コストの低減に大きく貢献できる。
【0025】
5)本発明に依る該単相電磁力駆動システムでは、該電磁石と該導電体内蔵単相電磁力受動体、すなわち、該単相電磁力駆動モジュール、の取付け、取り外し、位置調整などが容易であり、回転駆動対応の配設、直動駆動対応の配設、に加えて、所要の曲線に沿う配設等を容易に実現出来る。すなわち、多様な配設が容易に実現出来るので、各種機械設備が求める様々な駆動形態に柔軟に対応できる(
図9参照)。
【0026】
6)本単相電磁力駆動システムでは、該磁力線励起部位、該単相電磁力発生部位および該単相電磁力受動部位が、密閉状態にはなく、外部へ向けて開かれている設定を選択できるので、回転力や直動力を外部へ導き、所望の駆動力として諸機械設備に結び付ける際の方式に関する自由度が大きく、適切な駆動力連結方式を見出し易い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に依る該単相電磁力発生装置の基本構成部品である該電磁石および該単相電磁力受動体のそれぞれ単体の外形状および内部構造の概要、
【
図2】該単相電磁力発生装置単体への該電磁石と該単相電磁力受動体の組付け形態、
【
図3】[請求項2]に説明した骨格構造を持つ該単相電磁力受動体の基本概念、
【
図4】該単相電磁力受動体の内部構造と該導電体の形態および配設の基本形、
【
図5】該単相電磁力発生機構に基づく標準的な回転駆動体の基本概念、
【
図6】複数の該単相電磁力駆動モジュール単位体を円環状に配設して高駆動力を得る場合の該電磁石と該単相電磁力受動体の配設の基本形、
【
図7】該単相電磁力駆動モジュールを回転円盤躯体の外縁に配設する応用例
【
図8】該励起磁場中に非磁性体を配設して磁力線の流れを制御する手法説明図
【
図9】該単相電磁力駆動モジュールの空間的配設の考え方説明図
【発明を実施するための形態】
【実施例0028】
:本発明による該単相電磁力発生方法および発生装置の実施例として、第1に考えられるのは、各種産業用機械設備の駆動用電動機としての導入である。本発明に依る該単相電磁力駆動システムは、現行の電動機および駆動システムに比較して、1)小型・軽量である、2)単位体積・重量当たりの発生駆動トルクが大きい、3)投入される電気エネルギーに対する出力仕事量の割合,すなわち、エネルギーの利用効率が高い、4)電動機としての機械構造や電気配線等が簡素であり、製作が容易であり、操作し易い、など産業用機械設備駆動システムとして優れた特性を発揮できる。
:現在、産業社会技術の大転換として、自動車のEV化、すなわち、自動車駆動の電動化が急激に進行している。本発明に依る該単相電磁力発生機構を基盤とする該単相電磁力駆動システムは、その構造・機能・特性から判断して、自動車に搭載して駆動力源として使用するに適切な駆動システムであり、利用の発展が期待できる。また、加速時には、大出力駆動を行い、等速走行時には低出力駆動を行い、減速時には、該単相電磁力駆動機能の駆動回路を機械慣性力を利用する被駆動発電機能回路へと転換してバッテリーの充電を行うなど、エネルギー高効率利用運転への展開が可能であり、社会的要請に合致するEV化自動車の利用を支援することができる。