(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055210
(43)【公開日】2023-04-17
(54)【発明の名称】輸血前の血液製剤の体積低減のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/02 20060101AFI20230410BHJP
【FI】
A61M1/02 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022159198
(22)【出願日】2022-10-03
(31)【優先権主張番号】63/252,417
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】308020283
【氏名又は名称】フェンウォール、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100060368
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 迪夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】ミン,キュンヨーン
(72)【発明者】
【氏名】マドセン,ジェイムス
(72)【発明者】
【氏名】グニアデク,トマス
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA12
4C077BB04
4C077CC03
4C077DD05
4C077EE01
4C077GG02
4C077KK11
4C077KK23
4C077LL02
4C077LL12
4C077NN02
4C077NN03
4C077NN20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】体積を低減された血液成分を輸血するための方法およびシステムを提供する。
【解決手段】予め収集された血液成分は、体積を低減された血液成分と上澄み液に分離する装置12に関連付けられた流体回路60に導入される。体積低減された血液成分48は、循環過負荷の危険なく、その成分を必要とする患者11に輸血される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液成分を患者に輸血する方法であって、
(a)第1のポンプと第2のポンプと分離駆動部とを含む装置に取り付けられる使い捨て流体回路と流体連通している針を用いて患者の血管系にアクセスし、前記流体回路は、プライミング溶液を収容する容器と、廃棄物を収容する廃棄物容器と、体積低減された最終の血液成分を収容する最終減容血液成分容器と、分離室とを備え、
(b)収集された血液成分を収容する容器を前記使い捨て流体回路に取り付け、
(c)前記流体回路の前記分離室を含む少なくとも一部に、前記プライミング溶液を収容する容器からのプライミング溶液を導入し、
(d)前記収集された血液成分を収容する容器から前記収集された血液成分を前記流体回路の前記分離室を含む少なくとも一部にポンプで送り、
(e)前記分離室において、前記収集された血液成分を体積が低減された血液成分と上澄み成分とに分離し、
(f)前記上澄みを前記廃棄物容器内に収集し、体積低減された収集された血液成分を前記最終減容血液成分容器内に収集し、
(g)前記最終減容血液成分容器と前記患者の前記血管系との間の流路を開き、
(h)前記体積低減された収集された血液成分を前記患者に送達することを含む、血液成分を患者に輸血する方法。
【請求項2】
前記第1のポンプを作動させることによって前記プライミング溶液を導入することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分離器の出口ポートを通して前記上澄み液を除去するために、前記第2のポンプを作動させることによって前記廃棄物容器に前記上澄み液を収集することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記分離室は回転膜を備える、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記収集された血液成分は赤血球を含む、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記収集された血液成分は血小板を含む、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のポンプを作動させることによって前記収集された血液成分をポンプで送ることを含む、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記収集された血液成分を収容する容器を前記流体回路に取りつけることを含む、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記プライミング溶液と前記収集された血液成分の流れを選択的に制御することを含む、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記体積低減された成分を前記(g)と前記(h)の間でろ過することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
体積低減された血液成分を患者に輸血するためのシステムであって、
a.第1のポンプと第2のポンプと分離器駆動ユニットを含む、再使用可能な分離および輸血装置と、
b.前記再使用可能な分離および輸血装置に関連付けられた使い捨て流体回路であって、前記流体回路は、血管アクセス装置と、分離室と、最終生成物を収容する容器と、廃棄物を収容する容器と、前記容器とプライミング溶液を収容する容器と収集された血液成分を収容する容器との間の流路を画定する管とを備える、システム。
【請求項12】
前記第1のポンプは、プライミング溶液を収容する容器への流路を画定する管と、事前に収集された血液成分を収容する容器への流路を画定する流路とに関連付けられている、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1のポンプは、分離室と連通する流路を画定する管に関連付けられている、請求項11または請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記プライミング溶液を収容する容器への流路を画定する管と、前記事前に収集された血液成分を収容する容器への流路を画定する管は、分岐部材で結合されている、請求項12または請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記プライミング溶液を収容する容器への流路を画定する管に関連付けられている第1の流れ制御部と、前記事前に収集された血液成分を収容する容器への流路を画定する管に関連付けられている第2の流れ制御部とをさらに備え、前記第1の流れ制御部と前記第2の流れ制御部は前記分岐部材の上流に位置する、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記使い捨て流体回路は前記最終生成物を収容する容器と前記血管アクセス装置との間に位置するフィルタをさらに備える、請求項11から請求項15までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
前記使い捨て流体回路は、前記フィルタと前記血管アクセス装置との間に位置する流れ制御部をさらに備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記流れ制御部は手動で操作されるクランプである、請求項17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、血液成分の処理、収集、および輸血に関する。より具体的には、本開示は、血液成分の輸血を受ける患者における循環過負荷を回避するための、体積を減らした血液成分の注入/輸血に関する。
【背景技術】
【0002】
血液および/または血液成分の投与/輸血は、疾患または失血に苦しむ患者の治療において一般的である。しかしながら、全血を注入するよりも、個々の成分を必要としている患者に投与する方がより典型的で経済的である。
【0003】
全血は、その液体成分である血漿中に懸濁された赤血球、白血球および血小板などの様々な細胞成分で構成されている。全血をその構成成分(細胞または液体)に分離することができ、所望の分離された成分をその特定の成分を必要とする患者に投与することができる。
【0004】
例えば、血小板の投与(輸血)は、化学療法によって血小板を作る能力が低下した癌患者に処方されることが多い。赤血球は、通常、失血、貧血、またはその他の障害を患っている患者に投与される。血漿の注入も治療上の理由で処方される場合があり、最近では、幹細胞の採取と投与が医学界で広く関心を集めている。
【0005】
血液成分の過剰量の輸血は、輸血関連循環過負荷(TACO)につながる可能性がある。TACOは、血液製剤の急速な輸血によって引き起こされる深刻な輸血合併症である。TACOは、輸血後6~12時間以内の循環過負荷による急性肺水腫と定義されている。現在、不必要な輸血を避け、少量の血液をゆっくりとした速度で輸血することにより、TACOを予防している。TACOが疑われる場合、輸血は中止され、患者は酸素、利尿薬、その他の心不全治療を受ける。
【0006】
上記の修復処置を必要とせずに、TACOを完全に回避することが望ましい。また、上澄み液、すなわち、血漿、または収集した血液成分の保存に一般的に使用される血小板保存液(PAS)または赤血球添加剤溶液などの添加剤溶液を輸血前に除去することによって、輸血の総量を減らすことが望ましい。このようにして、患者は必要な血液成分(赤血球、血小板など)を余分な上澄み液量なしで受け取ることができる。
【発明の概要】
【0007】
以下に説明し特許請求する方法およびシステムにおいて、別々にまたは一緒に具現化することができる本主題のいくつかの態様が存在する。これらの態様は、単独で、または本明細書に記載された主題の他の態様と組み合わせて使用することができ、これらの態様を一緒に説明することは、これらの態様を別々に使用すること、またはそのような態様を別々にまたはセットとして異なる組み合わせで本明細書に添付された特許請求の範囲において請求することを排除することを意図するものではない。
【0008】
一態様では、本開示は、血液成分を患者に輸血する方法に関する。この方法は、使い捨て流体回路と流体連通する針で患者の血管系にアクセスすることを含む。この回路は、第1のポンプ、第2のポンプおよび分離駆動ユニットを含む装置に取り付けられる。流体回路は、プライミング溶液の容器、廃棄物容器、および最終減容血液成分容器、ならびに装置の分離駆動ユニットに取り付けるように構成された分離室を含む。この方法は、事前に収集された血液成分の容器を使い捨て流体回路に取り付けること、および最初にプライミング溶液の容器からプライミング溶液を分離室を含む前記流体回路の少なくとも一部に導入することをさらに含む。
【0009】
流体回路がプライミングされると、この方法は、事前に収集された血液成分を保持する容器から、収集された血液成分を、分離室を含む流体回路の少なくとも一部にポンピングするステップと、収集された血液成分を分離室内で体積が低減された血液成分と上澄み成分に分離するステップとを含む。
【0010】
この方法によれば、分離された上澄み液は廃棄物容器に集められ、減容された収集された血液成分は最終減容血液成分容器に収集される。この方法はさらに、最終血液成分容器と患者の血管系との間の流路を開き、体積が低減された収集された血液成分を患者に送達することを含む。
【0011】
本開示の別の態様では、患者に体積低減された血液成分を輸血するためのシステムは、第1のポンプ、第2のポンプ、および分離器駆動ユニットを含む再使用可能な分離および輸血装置を含む。使い捨て流体回路は、再利用可能な分離および輸血装置と関連付けられ、流体回路は、血管アクセス装置、分離室、最終生成物容器、上澄み容器、およびプライミング溶液および収集された血液成分の容器間の流路を画定する管を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】血小板の処理および注入に使用される、本明細書に記載のシステムの概略図である。
【0013】
【
図2】流体回路のプライミング中の
図1のシステムの概略図である。
【0014】
【
図3】予め収集された血小板の処理中の
図1のシステムの概略図である。
【0015】
【
図4】体積低減された血小板の患者への注入中の
図1のシステムの概略図である。
【0016】
【
図5】体積低減された血小板の注入が完了した後の
図1のシステムの概略図である。
【0017】
【
図6】赤血球の注入に使用される、本明細書に記載のシステムの概略図である。
【0018】
【
図7】流体回路のプライミング中の
図6のシステムの概略図である。
【0019】
【
図8】予め収集された赤血球の処理中の
図6のシステムの概略図である。
【0020】
【
図9】体積低減された赤血球の患者への注入中の
図6のシステムの概略図である。
【0021】
【
図10】体積低減された赤血球の患者への注入後のシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書に開示される実施形態は、本主題の説明を提供することを目的としており、主題は、詳細に示されていない様々な他の形態および組み合わせで具現化され得ることが理解される。したがって、本明細書に開示される特定の設計および特徴は、添付の特許請求の範囲で定義される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0023】
図1は、先に収集された血液成分を処理し、患者11に体積を低減させた量の血液成分を注入するためのシステム10を示す。
図1に示すように、システム10は、第1のポンプ14、第2のポンプ16、および後述する使い捨て流体回路の分離室を受け入れる分離器駆動ユニットを含む再使用可能な装置12を含む。装置12は、輸液を受ける患者11の椅子の側またはベッドの側の隣または近くに配置するのに適したコンパクトな設計であってもよい。ポンプ14および16は、流体回路の管セグメントを受け入れるように構成された蠕動ポンプであってもよいが、代わりに他のタイプのポンプが使用されてもよい。装置12はまた、管セグメントを受容するように同様に構成され、開閉することができ、それによって管セグメントを通る流体の流れを自動的に制御するクランプを含むことができる。あるいは、クランプは、使い捨て流体回路に関連付けられたローラークランプまたはロバーツ型クランプなどの手動操作クランプであってもよい。
【0024】
ポンプ14および16、分離駆動ユニット、ならびに自動操作(すなわち、非手動)クランプ(存在する場合)の動作は、制御ユニット(制御部)によって制御される。制御部は、実施形態によれば、プログラム可能なマイクロプロセッサを含むことができ、このマイクロプロセッサは、プロセスに従って血液処理装置を動作させるようにプログラムすることができる。制御部は、前述のポンプ、自動クランプ、および分離器駆動ユニットなどの血液処理装置の構造のうちの1つまたは複数に結合することができる。制御部は、これらの構造から情報を(例えば、信号の形で)受け取るか、これらの構造にコマンド(例えば、信号の形で)を提供して、構造の動作を制御することができる。制御部はまた、秤やセンサに結合して、これらの装置にコマンドを提供して、それらの動作を制御することもできる。制御部は、これらの構造物に直接電気的に接続されて結合されてもよいし、制御部は、これらの構造物に直接接続されてそれらに結合された他の中間機器に直接接続されてもよい。
【0025】
装置12はまた、操作者がポンプ回転の開始および終了、クランプの開閉、分離駆動ユニットの起動を含む操作装置12を選択的に制御することを可能にするタッチスクリーンまたはキーパッドなどのユーザインターフェース(図示せず)を含んでもよい。
【0026】
上述のように、システム10はまた、少なくとも部分的に装置12に取り付けられるか、さもなければそれと関連付けられ得る使い捨て流体回路20を含む。使い捨て流体回路20は、相互接続された管、事前に取り付けられた容器、および/または容器を取り付けるための取り付け部位、ならびに患者11の血管系にアクセスするための静脈穿刺針22などの患者アクセス装置を含む。針22は、患者11に注入される血液成分のための流路を画定する入口管24に接続され、流れ連通する。入口管24は、入口管24を通る患者11への流れを制御するために、針22の上流に(手動で操作される)クランプ25を含み得る。注入される血液成分から白血球または他の望ましくない細胞または粒子を濾過するために、フィルタ26を流体回路20に含めることもできる。
【0027】
図1に見られるように、使い捨て流体回路20は、装置12の分離駆動ユニットに取り付けるための分離器または分離室30を含む。一実施形態では、分離器または分離室は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,194,145号に記載されているタイプの回転膜分離器であってもよい。回転膜分離器30は、予め収集された血液成分が導入される入口32と、分離された上清および所望の体積が低減された血液成分がそれぞれ分離器30から出る2つの出口34および36とを含む。その点に関して、分離器30の膜は、所望の成分が膜を通過せず(ポート36から出る)、上澄み液が膜を自由に通過できる(ポート34から出る)ようなサイズの細孔を含む。
【0028】
装置12が自動操作可能なクランプを含まない場合、流体回路は、管セグメント上に配置され、管を圧迫して管内の流路を閉じる手動操作クランプ40および42を含み得る。
【0029】
使い捨て流体回路20には、分離器30から分離された血液成分を受け取るための事前に取り付けられた空のプラスチック容器が備えられ得る。一実施形態では、容器46は、流体回路20に事前に取り付けることができる。容器46は、分離器30の出口34と流れ連通しており、蠕動ポンプ16と関連付けられていてもよい。空の容器48は、事前に取り付けられ、分離器30の出口36と流れ連通していてもよい。
【0030】
使用時に他の容器を流体回路20に取り付けることができる。一実施形態では、流体回路20をプライミングするのに有用な溶液を含む容器50は、無菌的に流体回路20に取り付けることができる。別の実施形態では、流体回路20は、充填済み容器50が予め取り付けられたキットとして提供されてもよい。先に収集された血液成分を含む容器52は、同様に、注入時に流体回路20に取り付けられ得る。プライミング溶液の容器50と同様に、当業者に知られているように、無菌的に取り付けを行うことができる。
【0031】
図1に見られるように、容器50および52は、管セグメント60が引き込みポンプ14に装填される場所の上流に位置する分岐部分(部材)58で結合する管セグメント54および56に取り付けることができる。したがって、ポンプ14は、プライミング溶液および先に収集された血液成分を、以下に詳細に説明するように順番にではあるが、流体回路20および分離器30に引き込む。
【0032】
図1に示されるシステムは、先に収集された血小板の処理および患者への体積低減された血小板生成物の注入に特によく適している。同様に構成されたシステムを使用して、
図6~10に関連して説明される赤血球などの異なる血液成分を処理および注入することができる。本明細書に記載のシステムおよび方法を使用して、さらに他のタイプの血液成分を処理および注入することができる。限定ではなく例示の目的で、先に収集された血小板および赤血球の処理および注入がここで説明される。
【0033】
図2は、先に収集された血小板の処理および注入におけるプライミングシーケンス中の
図1のシステムを示す。
図2に示されるように、プライミング溶液を含む容器50が流体回路20に取り付けられる。プライミング溶液は、生理食塩水(0.9% NaCl)またはその内容が参照として本明細書に組み込まれる米国特許第9,402,866号に記載されている溶液などの血小板保存液(PAS)などの血液成分の処理に一般的に使用される任意の溶液であってもよい。上述のように、容器50は無菌的に流体回路20に取り付けられる。
【0034】
また、流体回路20には、先に収集された血小板の容器52が取り付けられている。血小板は、ドイツ、バート・ホンブルクのフレセニウス カビ アーゲーの関連会社である、イリノイ州レイクチューリッヒのフェンウォール、インコーポレイテッドから入手可能なAMICUS分離器などのアフェレーシス装置を使用してドナーから一般的に収集される。血小板容器52は、1回または複数用量の血小板を収容することができる。回路20の管がポンプ14および16に装填され、分離器30が分離器駆動ユニットに取り付けられ、針22が患者11の静脈に挿入されると、回路20はプライミングされる準備が整う。クランプ25およびクランプ42が閉位置にあり、クランプ40が開位置にある状態で、ポンプ14を作動(回転)させて、プライミング溶液を容器50から流体回路に、および入口32を介して分離器30に引き込む。分離器30は、プライミングシーケンス中に回転膜がゆっくりと回転するように作動させることができる。同様に、ポンプ16を作動させて、分離器30からプライミング溶液を取り出し、それを廃棄物容器46に向けることができる。プライミング溶液の大部分は容器46に集められるが、少量のプライミング溶液は、出口ポート36を通って分離器30を出て、容器48に流れ込む可能性がある。プライミングシーケンスが完了すると、先に収集された血小板の処理が開始される。
【0035】
図3に示すように、血小板処理シーケンスでは、クランプ40は閉鎖位置にあり、クランプ42および25は開放位置にある。ここで、ポンプ14を再び作動させて、先に収集された血小板を容器50から、今プライミングされた流体回路20に引き込む。血小板は、入口32を通って分離器30に導入され、血小板と、血漿および(貯蔵のために)予め添加されたPASを含み得る上澄みとに分離される。膜の細孔は、分離された血小板が膜を通過できないようなサイズになっている。代わりに、血小板は、膜の外面と分離器ハウジングの内面との間の隙間に蓄積し、最終的に出口36を通って分離器を出て、「最終」生成物容器48に流れ込む。上清は膜を通過し、ポンプ16によって出口34を通って廃棄物容器46に送り出される。処理中、クランプ25は開いており、容器48に集められた体積が低減された血小板は、容器48から排出され始め、フィルター26を通過して患者11に送達される。
【0036】
先に収集された血小板の全量が処理され、容器52が空になると(これは、装置12の重量計から吊り下げられた容器52の重量の変化によって視覚的に確認または決定することができる)、容器52内の元の体積から容器48内の低減された体積への血小板の処理が完了する。
図4に示すように、この仕上げ段階では、ポンプ14および16がオフにされる。クランプ25が開位置にある場合、前の処理段階中に開始された患者11への体積低減された血小板のゆっくりした重力注入/輸液が継続する。
図5に示すように容器48が空になると、輸液/輸液は完了する。一実施形態において、血小板の体積は、例えば、300mLの開始体積から100mLの輸血可能な低減された体積、またはより好ましくは50mL、または30mLまで低減させることができる。
【0037】
上述のタイプの再使用可能な装置および関連する流体回路は、先に収集された赤血球の処理および注入/輸血にも使用され得る。
図6に見られるように、流体回路20は、上述のように再使用可能な装置12と関連付けられている。予め収集された赤血球を保持する容器52は、無菌的に流体回路20に取り付けられる。
【0038】
回路20の管がポンプ14および16に装填され、分離器30が分離器駆動ユニットに取り付けられ、針22が患者11の静脈に挿入されると、回路20はプライミングされる準備が整う。
図7に示されるように、クランプ25およびクランプ42が閉位置にあり、クランプ40が開位置にある状態で、ポンプ14が作動(回転)して、プライミング溶液(例えば生理食塩水)を容器50から流体回路に、および入口32を通して分離器30に引き込む。分離器30は、プライミングシーケンス中に回転膜がゆっくりと回転するように作動させることができる。同様に、ポンプ16を作動させて、分離器30からプライミング溶液を取り出し、それを廃棄物容器46に向けることができる。プライミング溶液の大部分は容器46に集められるが、プライミング溶液の一部は、出口ポート36を通って分離器30を出て、容器に流れ込む可能性がある。プライミングシーケンスが完了すると、先に収集された赤血球の処理が開始される。
【0039】
図8に示すように、赤血球処理シーケンスでは、クランプ40は閉鎖位置にあり、クランプ42および25は開放位置にある。ここで、ポンプ14が再び作動され、先に収集された赤血球が、プライミングされた流体回路20に引き込まれる。赤血球は、入口32を通って分離器30に導入され、赤血球と、血漿および赤血球添加剤/保存溶液を含むことがある上澄みとに分離される。膜の細孔は、分離された赤血球が膜を通過できないようなサイズになっている。代わりに、赤血球は、膜の外面と分離器ハウジングの内面との間の隙間に蓄積し、最終的に出口36を通って分離器を出て、「最終」容器48に流れ込む。上清は膜を通過し、ポンプ16によって出口34を通って廃棄物容器46に送り出される。処理中、クランプ25は開いており、容器48に収集された体積が低減された赤血球は、容器48から排出され始め、フィルター26を通過し、患者11に送達される。
【0040】
先に収集された赤血球の全量が処理され、容器52が空になると(これは、装置12の重量計から吊り下げられた容器52の重量の変化によって視覚的に確認または決定することができる)、容器52内の元の体積から容器48内の低減された体積への赤血球の処理が完了する。
図9に示されるように、この仕上げ段階では、ポンプ14および16がオフにされる。クランプ25が開位置にある場合、前の処理段階中に開始された患者11への体積低減された赤血球のゆっくりとした重力注入/輸液が継続する。
図10に示すように容器48が空になると、赤血球の注入/輸血が完了する。一実施形態では、赤血球の体積は、例えば、開始体積の250mLから、輸血可能な低減された体積の200mLまで低減させることができる。赤血球とともに残っている上清の量を減らすと、赤血球が「洗浄」され、遊離ヘモグロビンなどの元の上清に存在する望ましくない要素が除去される。
【0041】
以上の通り、TACOの発生を低減または回避できるように、予め収集された血液成分を処理するための改良された方法およびシステムが開示された。上記の説明は、説明のみを目的としたものであり、本明細書に記載されている特定の方法、システム、装置、または装置に本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【0042】
態様
態様1.
血液成分を患者に輸血する方法であって、第1のポンプと第2のポンプと分離駆動部とを含む装置に取り付けられる使い捨て流体回路と流体連通している針を用いて患者の血管系にアクセスする。流体回路は、プライミング溶液を収容する容器と、廃棄物を収容する廃棄物容器と、体積低減された最終の血液成分を収容する最終減容血液成分容器と、分離室とを備える。方法は、収集された血液成分を収容する容器を使い捨て流体回路に取り付けることと、流体回路の分離室を含む少なくとも一部に、プライミング溶液を収容する容器からのプライミング溶液を導入することと、収集された血液成分を収容する容器から収集された血液成分を流体回路の分離室を含む少なくとも一部にポンプで送ることと、分離室において、収集された血液成分を体積が低減された血液成分と上澄み成分とに分離することと、上澄みを廃棄物容器内に収集し、体積低減された収集された血液成分を最終減容血液成分容器内に収集することと、最終減容血液成分容器と患者の血管系との間の流路を開くことと、体積低減された収集された血液成分を患者に送達することを含む。
【0043】
態様2.
第1のポンプを作動させることによってプライミング溶液を導入することを含む、態様1に記載の方法。
【0044】
態様3.
分離器の出口ポートを通して上澄み液を除去するために、第2のポンプを作動させることによって廃棄物容器に上澄み液を収集することを含む、態様2に記載の方法。
【0045】
態様4.
分離室は回転膜を備える、態様1から態様3までのいずれか1項に記載の方法。
【0046】
態様5.
収集された血液成分は赤血球を含む、態様1から態様4までのいずれか1項に記載の方法。
【0047】
態様6.
収集された血液成分は血小板を含む、態様1から態様4までのいずれか1項に記載の方法。
【0048】
態様7.
第1のポンプを作動させることによって収集された血液成分をポンプで送ることを含む、態様1から態様6までのいずれか1項に記載の方法。
【0049】
態様8.
収集された血液成分を収容する容器を流体回路に取りつけることを含む、態様1から態様7までのいずれか1項に記載の方法。
【0050】
態様9.
プライミング溶液と収集された血液成分の流れを選択的に制御することを含む、態様1から態様8までのいずれか1項に記載の方法。
【0051】
態様10.
体積低減された成分を、最終減容血液成分容器と患者の血管系との間の流路を開く工程と、体積低減された収集された血液成分を患者に送達する工程との間でろ過することを含む、態様1に記載の方法。
【0052】
態様11.
体積低減された血液成分を患者に輸血するためのシステムであって、第1のポンプと第2のポンプと分離器駆動ユニットを含む、再使用可能な分離および輸血装置と、再使用可能な分離および輸血装置に関連付けられた使い捨て流体回路であって、流体回路は、血管アクセス装置と、分離室と、最終生成物を収容する容器と、廃棄物を収容する容器と、容器とプライミング溶液を収容する容器と収集された血液成分を収容する容器との間の流路を画定する管とを備える、システム。
【0053】
態様12.
第1のポンプは、プライミング溶液を収容する容器への流路を画定する管と、事前に収集された血液成分を収容する容器への流路を画定する流路とに関連付けられている、態様11に記載のシステム。
【0054】
態様13.
第1のポンプは、分離室と連通する流路を画定する管に関連付けられている、態様11または態様12に記載のシステム。
【0055】
態様14.
プライミング溶液を収容する容器への流路を画定する管と、事前に収集された血液成分を収容する容器への流路を画定する管は、分岐部材で結合されている、態様12または態様13に記載のシステム。
【0056】
態様15.
プライミング溶液を収容する容器への流路を画定する管に関連付けられている第1の流れ制御部と、事前に収集された血液成分を収容する容器への流路を画定する管に関連付けられている第2の流れ制御部とをさらに備え、第1の流れ制御部と第2の流れ制御部は分岐部材の上流に位置する、態様14に記載のシステム。
【0057】
態様16.
使い捨て流体回路は最終生成物を収容する容器と血管アクセス装置との間に位置するフィルタをさらに備える、態様11から態様15までのいずれか1項に記載のシステム。
【0058】
態様17.
使い捨て流体回路は、フィルタと血管アクセス装置との間に位置する流れ制御部をさらに備える、態様16に記載のシステム。
【0059】
態様18.
流れ制御部は手動で操作されるクランプである、態様17に記載のシステム。
【外国語明細書】