(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055213
(43)【公開日】2023-04-17
(54)【発明の名称】送信時刻整合に基づくスナップショット受信機での2次コード決定
(51)【国際特許分類】
G01S 19/43 20100101AFI20230410BHJP
【FI】
G01S19/43
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022159529
(22)【出願日】2022-10-03
(31)【優先権主張番号】17/494,249
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521549349
【氏名又は名称】アルボラ テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】アドリア グシ
(72)【発明者】
【氏名】ミケル リボ
(72)【発明者】
【氏名】パウ クロサス
(72)【発明者】
【氏名】シャオ リュー
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062CC07
5J062CC13
5J062DD23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】センチメートルレベルのGNSS測位精度を実現する。
【解決手段】GNSSスナップショット信号の搬送波位相レディ・コヒーレント取得は、スナップショット受信機で、異なるGNSSスナップショット信号を対応する異なるGNSS衛星から受信するステップと、前記異なるGNSS信号の各々に対して2次コードインデックス仮定値の完全なセットを生成するMH(マルチ仮定値)取得を実行するステップとを含む。前記2次コードインデックス仮定値はGNSS衛星毎に決定された飛行時間差に基づいて異なるGNSS信号毎に調整され、2次コードインデックス仮定値の新しいセットが生成される。最後に、前記新しいセットの仮定値の中の一つが、優勢な共通インデックスに基づいて正しい仮定値として選択され、前記GNSS信号の取得結果が前記正しい仮定値を利用してフィルタリングされる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GNSS(Global Navigation Satellite System、グローバルナビゲーション衛星システム)スナップショット信号の搬送波位相レディ・コヒーレント取得方法であって、
スナップショット受信機で、異なるGNSS衛星それぞれから対応する異なるGNSSスナップショット信号を受信するステップと、
2次コードインデックス仮定値の完全なセットと、正確なコード位相とドップラー周波数とで識別されたピーク値に基づく対応する取得結果と、を生成するために、前記異なるGNSS信号のそれぞれに対してMH取得(MH: Multi-Hypothesis、マルチ仮定値)を実行するステップと、
前記異なるGNSS衛星のそれぞれについて決定された飛行時間差に基づいて、前記異なるGNSS衛星のそれぞれに対応する前記2次コードインデックス仮定値を調整するステップであって、2次コードインデックス仮定値の新しいセットを生成するステップと、
前記新しいセット内の前記2次コードインデックス仮定値のうちの、共通の一時点において優勢な共通インデックスを有するもののみを含むように前記新しいセットをフィルタリングするステップと、
GNSS信号を取得するために前記新しいセット内に残っている前記2次コードインデックス仮定値を前記GNSS信号のそれぞれへ適用するステップと、を含むこと
を特徴とする方法。
【請求項2】
CTF(Coarse Time Filter、粗い時間フィルタ)を用いて、補助データに基づいて、1ミリ秒(1ms)の不確かさの信号飛行時間を求め、前記GNSS衛星のそれぞれについて飛行時間差を計算すること
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記調整するステップは、前記CFTによって計算された前記飛行時間差に対応する量だけ、前記完全なセット内の前記2次コードインデックス仮定値の各々をシフトするステップを含むこと
を特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記調整するステップは、さらに、前記GNSS信号の一つに対応する前記新しいセット内の前記2次コードインデックス仮定値の各々について、前記GNSS信号の中の対応する一つに対する前記CFTによって計算された前記飛行時間差だけ、前記2次コードインデックス仮定値の各々をシフトバックするステップを含むこと
を特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
GNSS(Global Navigation Satellite System、グローバルナビゲーション衛星システム)スナップショット信号の搬送波位相レディ・コヒーレント取得用に構成されたデータ処理システムであって、該システムは、
メモリと一つまたは複数の処理コアを含む一つまたは複数の処理ユニットとを、各々が具備する一つまたは複数のコンピュータを有するホスト・コンピューティング・プラットフォームと、
前記ホスト・コンピューティング・プラットフォームの少なくとも一つの前記処理ユニットの前記メモリ内で実行中に、実行可能にされるコンピュータプログラム命令を含む取得モジュールと、を含み、
該コンピュータプログラム命令は実行可能にされるとき、
異なるGNSS信号を、対応する異なるGNSS衛星からスナップショット受信機で受信しするステップと、
正確なコード位相及びドップラー周波数において識別されたピーク値に基づいて、2次コードインデックス仮定値の完全なセット及び対応する取得結果を生成するために、前記異なるGNSS信号の各々についてMH取得(MH: Multi-Hypothesis、マルチ仮定値)を実行するステップと、
前記異なるGNSS衛星のそれぞれについて決定された飛行時間差に基づいて、該異なるGNSS衛星の対応する前記異なるGNSS信号の各々について前記2次コードインデックス仮定値を調整するステップであって、2次コードインデックス仮定値の新しいセットを生成するステップと、
前記新しいセット内の前記2次コードインデックス仮定値のうち、共通の一時点において優勢な共通インデックスを有するものだけを含むように前記新しいセットをフィルタリングするステップと、
GNSS信号を取得するために、該新しいセット内に残っている前記2次コードインデックス仮定値のそれぞれをGNSS信号のそれぞれへ適用するステップと、を実行すること
を特徴とするシステム。
【請求項6】
CTF(Coarse Time Filter、粗い時間フィルタ)が、補助データに基づいて、1ミリ秒(1ms)の不確かさの信号飛行時間を求め、GNSS衛星のそれぞれについて飛行時間差を計算すること
を特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記調整するステップは、前記CFTによって計算された飛行時間差に対応する量だけ、前記完全なセット内の前記2次コードインデックス仮定値の各々をシフトするステップを含むこと
を特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記調整するステップは、さらに、前記GNSS信号の一つに対応する前記新しいセット内の前記2次コードインデックス仮定値の各々について、前記GNSS信号の中の対応する一つに対する前記CFTによって計算された前記飛行時間差だけ、前記2次コードインデックス仮定値の各々をシフトバックするステップを含むこと
を特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含む計算装置であって、該非一時的コンピュータ可読記憶媒体はその中に記憶したプログラム命令を含み、該プログラム命令は、処理ユニットの少なくとも一つの処理コアによって実行することができ、実行されるとき、GNSS(Global Navigation Satellite System、グローバルナビゲーション衛星システム)スナップショット信号の搬送波位相レディ・コヒーレント取得のための方法を前記処理ユニットに実行させ、該方法は、
スナップショット受信機で、異なるGNSS衛星それぞれから対応する異なるGNSSスナップショット信号を受信するステップと、
2次コードインデックス仮定値の完全なセットと、正確なコード位相とドップラー周波数とで識別されたピーク値に基づく対応する取得結果と、を生成するために、前記異なるGNSS信号のそれぞれに対してMH取得(MH: Multi-Hypothesis、マルチ仮定値)を実行するステップと、
前記異なるGNSS衛星のそれぞれについて決定された飛行時間差に基づいて、前記異なるGNSS衛星のそれぞれに対応する前記2次コードインデックス仮定値を調整するステップであって、2次コードインデックス仮定値の新しいセットを生成するステップと、
前記新しいセット内の前記2次コードインデックス仮定値のうちの、共通の一時点において優勢な共通インデックスを有するもののみを含むように前記新しいセットをフィルタリングするステップと、
GNSS信号を取得するために前記新しいセット内に残っている前記2次コードインデックス仮定値を前記GNSS信号のそれぞれへ適用するステップと、を含むこと
を特徴とする装置。
【請求項10】
CTF(Coarse Time Filter、粗い時間フィルタ)が、補助データに基づいて、1ミリ秒(1ms)の不確かさの信号飛行時間を求め、GNSS衛星のそれぞれについて飛行時間差を計算すること
を特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記調整するステップは、前記CFTによって計算された飛行時間差に対応する量だけ、前記完全なセット内の前記2次コードインデックス仮定値の各々をシフトするステップを含むこと
を特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記調整するステップは、さらに、前記GNSS信号の一つに対応する、前記新しいセット内の前記2次コードインデックス仮定値の各々について、前記GNSS信号の中の一つに対応する前記CFTによって計算された前記飛行時間差だけ、前記2次コードインデックス仮定値の各々をシフトバックするステップを含むこと
を特徴とする請求項11に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星を利用した全地球測位システム(GNSS: Global Navigation Satellite System)における位置決定の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
衛星を利用した測位とは、GPS (Global Positioning System)、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、Galileo、NavIC、BeiDou等が生成した信号に含まれるGNSS測位データに基づいてGNSS受信機の位置、速度、時刻(PVT: Position, Velocity, and Time)を決定することに関する。GNSSの核となる信号は、GNSS衛星群の各衛星によって同期して送信される直接拡散スペクトル信号である。この直接拡散スペクトル信号には、擬似ランダムノイズ(PRN: Pseudorandom Noise)拡散シーケンスと呼ばれる測距コードと、対応する衛星のエフェメリス情報をブロードキャストする低速データリンクの両方が含まれる。
【0003】
各GNSS受信機がGNSS信号を受信し、該GNSS受信機はこのGNSS信号からPVTを推定する。このために、GNSS受信機と協調して動作するプログラムロジックが、受信したGNSS信号の送り元の衛星毎に観測値のセットを作成するために、前記信号モデル内に含まれる測距コードを推定する。一つのセット内の観測値には、対応するGNSS信号受信の時間遅延から計算された一組の距離情報(疑似距離と呼ばれる)と、異なるGNSS信号間の位相差推定値(搬送波位相測定値と呼ばれる)が含まれる。前記観測値について、PVTを計算することは、最小二乗アルゴリズム内で観測値のマルチラテレーションを解く問題になる。
【0004】
従来からPVTの計算は2段階のプロセスで行われている。該プロセスの第1のステップでは、未選別の受信信号データに基づいて同期パラメータの粗い推定値が生成される。また、この第1のステップは、より精細な取得ループまたはトラッキングループを使用して粗い推定値を精細化することを含むことがある。より正確には、この第1のステップでは、選択した衛星から受信したスペクトラム拡散信号から、時間遅延とドップラーシフトの推定値が決定される。第2ステップは、「ナビゲーションソリューション」と呼ばれ、GNSS受信機のPVTを推定するためにGNSS観測値が処理される。
【0005】
センチメートルレベルのGNSS測位精度を実現するためには、受信信号の搬送波位相計測値を利用する必要がある。しかし、受信信号が極端に短い場合(例えば、スナップショット信号)、GNSS信号の符号化データビットが不確実なため、従来の方法では位相測定値を適正に決定することができない。そこで、複素相関器の出力の角度、すなわち受信信号とローカル・レプリカの間の相関を利用して搬送波位相測定値を生成する。そのため、ローカル・レプリカ信号で反対の符号を持つビットを考慮する場合、結果として得られるエネルギーの大きさは変わらず、したがって依然として前記取得モジュールによって検出される。しかし、前記角度が実際の角度に対して180度ずれている場合は、半周期の位相誤差が生じる。いずれの場合でも、前記位相測定値が公知の2次コード仮定値の不確かさによって受ける影響を避けることが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、GNSSスナップショット信号のコヒーレント取得に関して、当技術分野の技術的欠陥を解決する。そのために、本発明の実施形態は、GNSSスナップショット信号の搬送波位相レディ・コヒーレント取得のための新規かつ非自明な方法を提供する。本発明の実施形態はまた、前述の方法を実行するように構成された新規かつ非自明な計算装置を提供する。最後に、本発明の実施形態は、前述の方法を実行するために前述のデバイスを組み込んだ新規かつ非自明なデータ処理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態において、GNSSスナップショット信号の搬送波位相レディ・コヒーレント取得のための方法は、スナップショット受信機において、異なるGNSS衛星それぞれから対応する異なるGNSS信号を受信することを含む。本方法はさらに、2次コードインデックス仮定値の完全なセットを生成するために、前記異なるGNSS信号のそれぞれに対してMH取得(MH: Multi-Hypothesis、マルチ仮定値)を実行することを含む。前記2次コードインデックス仮定値から、正確なコード位相かつドップラー周波数において識別されたピーク値に基づいて対応する取得結果が生成される。本方法は、さらに、異なるGNSS衛星のそれぞれについて決定された飛行時間差に基づいて、異なるGNSS衛星のそれぞれに対応する2次コードインデックス仮定値を調整して、前記2次コードインデックス仮定値の新しいセットを生成することを含む。最後に、本方法は、前記新しいセット内の2次コードインデックス仮定値のうち、共通の一時点において優勢な共通インデックスを有するものだけを含むように前記新しいセットをフィルタリングすること、そして、GNSS信号を取得するために前記新しいセット内に残っている前記2次コードインデックス仮定値を前記GNSS信号のそれぞれへ適用することと、を含む。
【0008】
実施形態の一態様では、粗い時間フィルタ(CTF: Coarse Time Filter)が、補助データに基づいて、1ミリ秒(1ms)の不確かさの信号飛行時間を求め、GNSS衛星のそれぞれについて飛行時間差を計算する。このように、前記2次コードインデックス仮定値の調整は、前記CFTによって計算された飛行時間差に対応する量だけ、前記完全なセット内の前記2次コードインデックス仮定値のそれぞれをシフトすることを含むことができる。また、前記調整は、さらに、前記GNSS信号の一つに対応する前記新しいセット内の前記2次コードインデックス仮定値の各々に対して、前記GNSS信号の対応する一つに対する前記CFTによって計算された前記飛行時間差だけ前記新しいセット内の前記2次コードインデックス仮定値の各々をシフトバックすることを含むことができる。
【0009】
本発明の別の実施形態では、データ処理システムは、GNSSスナップショット信号の搬送波位相レディ・コヒーレント取得用に構成される。本システムは、それぞれがメモリと一つまたは複数の処理コアを含む一つまたは複数の処理ユニットとを具備する一つまたは複数のコンピュータを有するホスト・コンピューティング・プラットフォームを含む。本システムはまた、取得モジュールを含み、該取得モジュールは、前記ホスト・コンピューティング・プラットフォームの一つまたは複数の前記処理ユニットの前記メモリ内で実行中に実行可能にされるコンピュータプログラム命令を含む。該コンピュータプログラム命令が実行されるとき、異なるGNSS信号を、対応する異なるGNSS衛星からスナップショット受信機によって受信し、正確なコード位相及びドップラー周波数における識別されたピーク値に基づいて2次コードインデックス仮定値の完全なセット及び対応する取得結果を生成するために、前記異なるGNSS信号の各々についてMH取得を実行する。該プログラム命令は、次に、前記異なるGNSS衛星のそれぞれについて決定された飛行時間差に基づいて、該異なるGNSS衛星の対応する異なるGNSS信号の各々について前記2次コードインデックス仮定値を調整する。該調整によって、2次コードインデックス仮定値の新しいセットが生成される。最後に、前記プログラム命令は、前記新しいセット内の前記2次コードインデックス仮定値のうち、共通の一時点において優勢な共通インデックスを有するものだけを含むように該新しいセットをフィルタリングし、そして、該新しいセット内に残った前記2次コードインデックス仮定値をそれぞれのGNSS信号へ適用して、GNSS信号を取得する。
【0010】
このようにして、スナップショット信号のような極めて短い信号を受信したにもかかわらず、搬送波位相測定値を決定し、GNSS信号の符号化データビットの不確実性を生み出す従来技術の技術的欠陥を克服することができる。具体的には、前述の欠陥は、異なるシフトされたインデックスの2次コードインデックス仮定値の新しいセットの生成の結果として解消することができる。前記新しいセットから、GNSS衛星間の識別された共通の飛行時間差に基づいて、正しい仮定値を選択することができる。そして、選択された正しい仮定値は、取得結果をフィルタリングするために使用される。さらに、前記正しい仮定値は、スナップショット信号の長さが短いという性質にもかかわらず、また、移動式GNSS信号受信機の電力リソースを所望値以上に消費する可能性のある過度に複雑な処理をすることなく選択することができる。
【0011】
本発明の別の態様は、一部は以下の記載で説明され、一部はその記載から自明になり、または本発明の実施により知ることができる。本発明の態様は、添付の特許請求の範囲で特に明示される構成要素およびその組み合わせによって実現され達成される。前述の概略的な説明および以下の詳細な説明の両方とも単なる代表例および説明例であり、特許請求範囲に記載された本発明を限定するものではないことを理解されたい。
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付図面は、本明細書に組み込まれ、かつ、その一部を構成し、本発明の実施形態を図解し、本明細書の記載と合わせて本発明の原理を説明する役割を持つ。本明細書で説明された実施形態は現在においては好ましい形態であるが、本発明は下記図面に示された精細な配置および手段に限定されないことを理解されたい。
【0013】
【
図1】GNSSスナップショット信号の搬送波位相レディ・コヒーレント取得のプロセスの多様な態様を反映した絵図による説明図である。
【
図2】
図1の搬送波位相レディ・コヒーレント取得のプロセスの態様の一つを実行するように構成されたデータ処理システムを示すブロック図である。
【
図3】
図1の搬送波位相レディ・コヒーレント取得の処理の一態様を示すフローチャートである。
【発明の詳細な説明】
【0014】
本発明の実施形態は、GNSSスナップショット信号の搬送波位相レディ・コヒーレント取得を開示する。本発明の実施形態によれば、スナップショット受信機は、GNSS衛星コンステレーション内の異なるGNSS衛星から異なるGNSS信号を受信する。次に、各受信GNSS信号に対してMH取得が実行され、該MH取得は、2次コードインデックス仮定値の完全なセットと、正しいコード位相及びドップラー周波数において識別されたピーク値に基づいて対応する取得結果と、の両方を生成する。重要なことは、次に、前記2次コードインデックス仮定値の完全なセット内の仮定値のそれぞれを、GNSS信号の対応するGNSS衛星に対して決定された飛行時間差との関係で調整することを通じて、2次コードインデックス仮定値の新しいセットが計算されることである。最後に、前記新しいセットは、該新しいセット内の共通の一時点において優勢な共通インデックスを有する2次コードインデックス仮定値のみを含むようにフィルタリングされ、そして次に、前記新しいセット内の残りの2次コードインデックス仮定値は、それぞれのGNSS信号に適用され、GNSS信号を取得することができる。
【0015】
実施形態の一態様の説明において、
図1は、GNSSスナップショット信号の搬送波位相レディ・コヒーレント取得のプロセスを絵図で説明している。
図1に示すように、異なる複数のGNSS信号130が、GNSS衛星コンステレーション内の異なる複数の衛星110から一台のスナップショット受信機120で受信される。次に、MH取得プロセス140が、複数のGNSS信号130のそれぞれに対応して適用される。その目的は、複数のGNSS信号130について、2次コードインデックス仮定値の完全なセット150Aと、該2次コードインデックス仮定値150Aと関係づけられた取得結果150Bとを生成するためである。前記取得結果150Bは、前記複数の仮定値150Aのそれぞれと、正しいコード位相およびドップラー周波数で識別されたピーク値を有する結果信号を持つ前記GNSS信号130の各々とを比較することによって生成される。明らかに、複数の2次コードインデックス仮定値の前記完全なセットは、複数のGNSS信号130のうちの対応する一つを取得する可能性のあるすべての可能な2次コードインデックス仮定値を示している。
【0016】
次に、粗い時間フィルタ170が、複数の衛星110それぞれの各GNSS信号130の間の飛行時間差190Aを計算する。複数の衛星110それぞれに対応する複数のGNSS信号130のそれぞれに対する仮定値の完全なセットの中の複数の2次仮定値150Aのそれぞれに関して、該複数の2次仮定値150Aは、飛行時間差190Aのうちの、複数の衛星110それぞれに対応する一つの整数値分だけシフトされる。その結果、複数のGNSS信号130のそれぞれについてシフトされた複数のインデックス180の一つのセットが生成される。その結果、前記シフトされたインデックス180の優勢な部分によって選ばれた共通のインデックス190Bと結合された、シフトされたインデックス180の2次仮定値だけに対応して、2次仮定値160Aの新しいセットおよびそれに紐づけられた取得結果160Bが生成される。前記シフトされたインデックス180のうち、前記共通インデックスを持たないものは前記新しいセットの2次仮定値160Aには含まれない。
【0017】
次に、前記新しい仮定値のセットの2次仮定値160Aは、それぞれ、対応する飛行時間差190Aに基づいてシフトバックされ、次に、それぞれの2次仮定値160Aは、一つの正しい2次コードインデックス仮定値160Cを選択するために、GNSS信号130のうちの対応する一つと比較される。次に、紐づけられた取得結果160は前記仮定値の新しいセットからフィルタリングされ、前記仮定値の完全なセットの複数の2次コードインデックス仮定値150AがGNSS信号130の取得において単独で使用されて半周期誤差を呈するような結果となることなく、複数の衛星110のそれぞれに対して対応する信号の取得が実現される。
【0018】
図1に関連して説明したプロセスの態様は、データ処理システムに実装することができる。次の説明において、
図2は、GNSSスナップショット信号の搬送波位相レディ・コヒーレント取得を実行するように構成されたデータ処理システムを概略的に示す。
図1に示したデータ処理システムにはホスト・コンピューティング・プラットフォーム200が設けられている。ホスト・コンピューティング・プラットフォーム200は、メモリ220と一つまたは複数の処理ユニット230とをそれぞれが有する一つまたは複数のコンピュータ210を含む。前記ホスト・コンピューティング・プラットフォームのコンピュータ210(説明の単純化のために単一のコンピュータのみが示されている)は、ローカルエリアネットワーク内に併置され、かつ、ローカルエリアネットワークまたはデータ通信バスを介して相互に通信することができ、または複数の前記コンピュータは、互いに遠隔地に配置され、ネットワークインターフェース260からデータ通信ネットワーク240を介して相互に通信することができる。
【0019】
ホスト・コンピューティング・プラットフォーム200は、コンピュータ通信ネットワーク240を介して、固定基地局280および移動式スナップショット受信機270の両方に通信可能に結合されている。基地局280と移動式スナップショット受信機270の両方とも、GNSSコンステレーション内の複数の異なる送信衛星から複数の異なるGNSS信号を受信するように動作することができる。注目すべきは、非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含む計算装置250がホスト・コンピューティング・プラットフォーム200に含まれ、コンピュータ210の一つまたは複数の処理ユニット230によってアクセスすることができることである。計算装置250は、その上に又はその中にプログラムモジュール300を格納しており、該プログラムモジュール300は、一つまたは複数の処理ユニット230によって実行されると、GNSSスナップショット信号の搬送波位相レディ・コヒーレント取得のためのプログラムとして実行可能な処理を行うコンピュータプログラム命令を含んでいる。
【0020】
具体的には、実行中のプログラム命令は、スナップショット受信機270から、コンピュータ通信ネットワーク240を介して、スナップショット受信機270内で復調および粗処理されたデジタル形式の異なるGNSS信号を受信する。前記異なるGNSS信号と、該GNSS信号に対応する衛星のそれぞれと、について、前記プログラム命令は、該プログラム命令がMH取得プロセスを適用して得られる2次コードインデクス仮定値の完全なセットを生成する。理解されると思われるが、前記2次コードインデックス仮定値の各々について、対応するGNSS信号の一つと比較した取得結果が相互に紐づけられ、その結果、前記取得結果は正しいコード位相及びドップラー周波数において識別されたピーク値を有する。
【0021】
次に、プログラム命令は、補助データソース290Bを利用して1ミリ秒の曖昧さを解決する粗い時間フィルタ290Aから、GNSS信号の各々と対応する衛星それぞれの飛行時間差の決定値を受信する。その結果、前記プログラム命令は、前記GNSS信号の各々について、前記複数のGNSS信号の対応する一つに関して粗い時間フィルタ290Bから受信した飛行時間差の整数値分だけ、2次コードインデックス仮定値の各々をシフトさせる。次に、前記プログラム命令は、前記シフトされたインデックスの中から、例えば多数決アルゴリズム、又は最高確率アルゴリズム等に基づいて、異なるシフトされたインデックスの中で支配的であると判断される共通の整数値を特定する。
【0022】
前記共通の整数値が選択されると、前記プログラム命令は、異なるインデックスのうち、前記共通の整数値がないものをフィルタで除去し、そして、前記プログラム命令は、残っている前記シフトされたインデックスをシフトバックさせ、2次コードインデックス仮定値の新しいセットを生成する。次に、前記プログラム命令は、前記新しいセット内の2次コードインデックス仮定値の一つを選択して、複数のGNSS信号の対応する一つに対する正しい仮定値として適用する。前記モジュールの典型的な動作のさらに別の説明において、
図3は、
図1のプロセスの態様の一つを示すフローチャートである。ブロック310から始まり、複数の異なるGNSS信号が、コンピュータ通信ネットワークを介してスナップショット受信機から受信される。ブロック320では各GNSS信号がMH取得処理に通される。その目的は、ブロック330で2次コードインデックス仮定値の完全なセットとそれに紐づけられた結果を生成するためである。
【0023】
ブロック340では、粗い時間フィルタによって各GNSS信号について飛行時間差が出力され、ブロック350で前記完全なセット内の前記仮定値の各々が、前記飛行時間差の対応する一つの分だけシフトされ、シフトされたインデックスのセットが生成される。次に、ブロック360において、前記シフトされたインデックスの各々において共通の時間位置における前記シフトされたインデックスの中から優勢な整数値が、多数決手法または最高確率手法等を適用することにより、特定される。次に、ブロック370で、前記優勢な整数値に基づいて、前記新しいセット内の正しい仮定値が選択される。
【0024】
重要なことは、本明細書で参照している前述のフローチャートおよびブロック図は、本発明の様々な実施形態によるシステム、方法、および計算装置の実装可能なアーキテクチャ、機能、および動作を示すことである。この点に関して、前記フローチャートまたはブロック図の各ブロックは命令モジュール、命令セグメント、または命令群の一部を表現しており、前記各ブロックは、指定されたひとつ又は複数の論理機能を実現するための一つまたは複数の実行可能な命令を含む。いくつかの代替的な実装では、ブロックに記載された機能は、図内の記載順序とは異なる順序で発生してもよい。例えば、連続して示された2つのブロックは、実際には同時に実行される場合があり、前記2つのブロックは、対応する機能に応じて逆の順序で実行される場合もある。また、ブロック図および/またはフローチャートの各ブロック、および複数のブロックの組み合わせは、特定の機能または動作を実行する、またはハードウェアとコンピュータの特定目的の命令の組み合わせを実行する特定目的のハードウェアベースのシステムによって実行できる。
【0025】
より具体的には、本発明は、プログラムで実行可能なプロセスとして実施することができる。同様に、本発明は、プログラム命令が計算装置内に格納され、該計算装置内から該プログラム命令がデータ処理システムのメモリにロードされ実行可能にされることにより、前記プログラムで実行可能なプロセスを実行することができる前記計算装置内で実施することもできる。さらに、本発明は、計算装置からプログラム命令をロードし、前述のプログラムで実行可能なプロセスを実行するために前記プログラム命令を実行するように構成されたデータ処理システム内で実施することもできる。
【0026】
このために、計算装置は、コンピュータ可読プログラム命令をその中に保持または格納する非一時的コンピュータ可読な単一または複数の記憶媒体にすることができる。これらの命令は、データ処理システムの一つまたは複数の処理ユニットによってメモリから読み出して実行されると、前記処理ユニットに、前記プログラムで実行可能なプロセスの異なる態様の中の典型的な異なるプログラムのプロセスを実行させる。この点に関して、前記処理ユニットは、それぞれ、コンピュータの中央処理装置すなわち「CPU」等の命令実行デバイスを含む。一つまたは複数のコンピュータが前記データ処理システム内に含まれることがある。注意すべきは、前記CPUはシングルコアCPUの場合もあるが、理解すべきことは、前記CPU内では複数のCPUコアが動作することができ、いずれのコア内でも、前記命令をメモリから一つまたは複数のCPUの一つまたは複数のコアに直接ロードして実行することができる。
【0027】
一つまたは複数のCPUの一つまたは複数のコアによる実行のためにメモリから読み出される命令を直接ロードする方法とは異なり、代替的に、本明細書に記載の前記コンピュータ可読プログラム命令は、コンピュータ通信ネットワーク上からデータ処理システムのコンピュータのメモリ内に読み出され、該メモリ内で実行されることができる。同様に、前記プログラム命令の一部のみが前記コンピュータ通信ネットワーク上から前記メモリ内に取り込まれ、他の部分は前記コンピュータの永続的記憶装置からロードすることもできる。さらに、前記プログラム命令の一部のみが前記データ処理システムの前記コンピュータの中の一つのコンピュータの一つまたは複数のCPUの一つまたは複数の処理コアによって実行され、他の部分は、前記コンピュータと併存するか、前記コンピュータ通信ネットワークを介して前記コンピュータから遠隔配置されている前記データ処理システムの別のコンピュータ内で協調的に実行され、計算結果が両方のコンピュータ間で共有されるようにすることができる。
【0028】
以下の特許請求の範囲に記載された任意の手段もしくは任意のステップを含む機能を行なう要素と同一の構造、材料および動作またはこれらと同等なものは、特許請求の範囲で具体的に記載された特許請求の範囲の他の要素と組み合わせてその機能を実行するための構造、材料もしくは動作を含むことを意図するものである。本願発明の詳細な説明は、図や叙述による説明を目的として開示されているものであり、開示した形の本願発明のすべてであると主張したり、それに限定したりすることを意図するものではない。本願発明の技術的範囲および主旨から逸脱しない変形例や変更例が多数存在することは当業者には明らかである。本願発明の原理を最もよく説明するために、さらに考えられ得る特定の使用に適する様々な変形例を有する様々な実施形態に対応する本願発明を当業者が理解することができるように、本明細書の実施形態は選択され、記載されたものである。
【0029】
以上のべたように、本明細書の発明を詳細に、かつその実施形態に言及しながら記載したので、以下の特許請求範囲に定義された本願発明の技術的範囲から逸脱することなく変形や変更が可能であることは明らかであろう。
【外国語明細書】