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特開2023-55220S-アリルシステイン高含有ニンニク粉末の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055220
(43)【公開日】2023-04-17
(54)【発明の名称】S-アリルシステイン高含有ニンニク粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20230410BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230410BHJP
【FI】
A23L19/00 C
A23L33/105
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160837
(22)【出願日】2022-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2021164160
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (その1) 発行日 2021年10月6日、2022年2月16日、2022年3月2日、2022年4月6日 刊行物 健康産業新聞 (その2) 発行日 2022年3月1日 刊行物 食品と開発vol.57 No.3 (その3) 発行日 2022年3月15日 刊行物 ヘルスライフビジネス 2022年3月15日号 (その4) 発行日 2021年10月21日 刊行物 健康産業流通新聞 (その5) 発行日 2022年4月1日 刊行物 月刊FOOD Style21 4月号 Vol.26 No.4 (その6) (電子版) ウェブサイトの掲載日 2021年10月13日 ウェブサイトのアドレス https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC137UF0T11C21A0000000/ (紙面版) 発行日 2021年10月14日 刊行物 日本経済新聞(2021年10月14日版) (その7) (紙面版) 発行日 2022年3月10日 刊行物 山陽新聞(2022年3月10日版) (電子版) ウェブサイトの掲載日 2022年3月13日 ウェブサイトのアドレス https://www.sanyonews.jp/article/1237842 (その8) 開催日 2021年10月6日~2021年10月8日 集会名、開催場所 食品開発展2021 東京ビッグサイト(東京都江東区有明3-11-1) (その9) 開催日 2022年4月20日~2022年4月21日 集会名、開催場所 健食原料・OEM展2022 東京国際フォーラム(東京都千代田区丸の内3丁目5-1)
(71)【出願人】
【識別番号】391007356
【氏名又は名称】備前化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松永 尚之
(72)【発明者】
【氏名】西原 豊
(72)【発明者】
【氏名】若松 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】瓜生 圭介
(72)【発明者】
【氏名】丸 勇史
(72)【発明者】
【氏名】土田 志織
【テーマコード(参考)】
4B016
4B018
【Fターム(参考)】
4B016LC01
4B016LC02
4B016LC07
4B016LE02
4B016LG09
4B016LK18
4B016LP01
4B016LP02
4B016LP05
4B016LP08
4B016LP11
4B016LP13
4B018MD07
4B018MD55
4B018ME02
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF04
4B018MF05
4B018MF06
4B018MF07
4B018MF12
4B018MF13
(57)【要約】
【課題】SAC含有割合が高く、流動性の良いニンニク粉末とその製造方法の提供、高強度の脳疲労を予防又は軽減するための経口組成物の提供。
【解決手段】ニンニク抽出物からニンニク粉末を製造する方法であって、ニンニク抽出物をペプチド分解酵素処理、及び酵母発酵処理する工程(A)を有する、製造方法。S-アリルシステインを10mg/g以上の含有割合で含有するニンニク粉末。S-アリルシステインを有効成分として含有する、経口組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニンニク抽出物からニンニク粉末を製造する方法であって、ニンニク抽出物をペプチド分解酵素処理、及び酵母発酵処理する工程(A)を有する、製造方法。
【請求項2】
製造されるニンニク粉末におけるS-アリルシステイン含有割合が10mg/g以上である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
製造されるニンニク粉末が、45°以下の安息角を有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程(A)が、ニンニク抽出物にペプチド分解酵素及び酵母を添加して実施される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記工程(A)が、ニンニク抽出物をペプチド分解酵素処理する工程、及び(1)当該工程で得られた酵素処理物又は(2)前記酵素処理物にエタノールを添加して得られるエタノール処理液を酵母発酵処理する工程を有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記酵母がパン酵母である請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記酵母がサッカロマイセス属に属する酵母である請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ペプチド分解酵素が酸性カルボキシペプチダーゼである請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記酸性カルボキシペプチダーゼがアスペルギルス・オリゼ由来酸性カルボキシペプチダーゼである請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ニンニク抽出物が水抽出物である請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
前記工程(A)で得られた発酵処理物にエタノールを添加して沈殿物を除去する工程を有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項12】
S-アリルシステインを10mg/g以上の含有割合で含有するニンニク粉末。
【請求項13】
安息角を測定可能な粉体特性評価装置を用いた流動性評価試験における安息角が45°以下である、請求項12に記載のニンニク粉末。
【請求項14】
S-アリルシステインの含有割合が20mg/g以上である、請求項12に記載のニンニク粉末。
【請求項15】
ニンニク臭が低減された、請求項12に記載のニンニク粉末。
【請求項16】
戻り臭が低減された、請求項12に記載のニンニク粉末。
【請求項17】
S-アリルシステインを有効成分として含有する、高強度の脳疲労を予防又は軽減するための、頭の疲れを予防又は軽減するための、倦怠感を予防又は軽減するための、集中力の低下を改善するための、あるいは頭の冴えの低下を改善するための、経口組成物。
【請求項18】
請求項12~16のいずれかに記載のニンニク粉末を含有する請求項17に記載の経口組成物。
【請求項19】
請求項1~11のいずれかに記載の製造方法で製造されたニンニク粉末を含有する請求項17に記載の経口組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、S-アリルシステイン含有割合の高いニンニク粉末、その製造方法、S-アリルシステインを有効成分として含有する経口組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
ニンニクは、古くから滋養強壮、食欲増進、疾病予防又は改善用の薬品や食品の素材として使用されており、香辛料としても世界中で使用されている。その有効成分としてアリシン、アリイン、アホエン、γ-グルタミル-S-アリルシステイン等が知られている。特に、S-アリルシステイン(本明細書中、「SAC」と称することがある。)に多くの機能が報告されているが、生ニンニクには微量にしか含まれていない。このため、SAC含有割合を高める開発がおこなわれている。例えば、ニンニク粉砕物にシステインを入れてSAC含有割合を高める方法(特許文献1)、ニンニク抽出物にBacillus属細菌の酵素を反応させてSACを高めた後に、粉末化のための賦形剤を添加して粉末化する方法(特許文献2)、ニンニク抽出物を加熱熟成することによりSAC含有割合を高めた後に濃縮し、ペースト状物(液体)を得る製造方法(特許文献3)等が知られている。
【0003】
日常の疲労改善には、加熱熟成ニンニクエキスが効果的であることは報告されている(特許文献3)。しかし、社会生活において日常の疲労以外に特別な強度の負荷がかかり、日常以上の一時的な高強度の脳疲労を惹起する場面がある。例えば、極度の緊張を強いられる受験、就職活動時の面接、大勢の前での発表会や演説、スポーツの重要な局面、重要な会議等、社会生活上避けては通れない局面では脳へ高強度の負担が一時的にかかり、高強度の脳疲労を惹起する。この高強度の脳疲労については、その局面中に引き起こされる高強度の脳疲労(この脳疲労は日常的に惹起される脳疲労ではない)を予防又は軽減することが重要である。このため、高強度の脳疲労に対する抵抗性を強化するための機能成分の摂取が望まれていた。このような高強度の脳疲労は疾患ではないため、医薬品ではなく食品であることが好ましく、長期にわたって自分自身の意志で摂取する観点からは、日常的に摂取できるサプリメントが望ましい。
【0004】
ニンニクには、滋養強壮、疲労回復、動脈硬化予防等の機能が報告されており、その機能成分の多くが硫黄原子を含む化合物である。一方、この硫黄原子を含む化合物の多くは、口臭や体臭に影響を及ぼすことが知られている。ニンニクの臭い成分としては、アリシン、ジアリルスルフィド、3-ビニル-4H-1,2-ジチイン、3-ビニル-4H-1,3-ジチイン等が知られている。このため、ニンニクは健康増進には優れているものの、その摂食が控えられがちであり、ニンニクの機能成分を摂取できつつ臭いが低減されたニンニク製品が望まれている。ニンニクの臭いの低減方法として、アリシンの生成を抑えるためにマイクロ波処理が一般的に行われているが、この処理だけでは臭い低減に十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-140343号公報
【特許文献2】特開2014-23449号公報
【特許文献3】特開2018-70602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
臭いが嫌がられるニンニクでは、液体よりも粉末にした後に錠剤化やカプセル化した方が好ましい。また、ニンニクを原料とした粉末は、打錠による錠剤化やカプセル化などの加工に適した流動性を有することが製剤の点から使用しやすい。さらには容量が限定的な錠剤やカプセルに使用されるニンニク粉末はニンニク以外の賦形剤などを含まないことが望ましい。さらに、ニンニク特有の臭いや、摂取後の戻り臭が低減されたニンニク粉末が要望されている。
【0007】
脳疲労、頭の疲れ若しくは倦怠感を予防又は軽減できる、あるいは集中力又は頭の冴えの低下を改善できるサプリメント等の経口組成物の提供が要望されている。
【0008】
本発明は、SAC含有割合が高く、賦形剤なしでも流動性の良いニンニク粉末とその製造方法の提供を一つの目的とする。
本発明は上記経口組成物の提供を一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ニンニク抽出物が酵母に対する強い抗菌作業を有することが知られていた(日本食品微生物学会雑誌, 13(3), 121 (1996))。このことからは、ニンニク抽出物を酵母で発酵させることは難しいと考えられたものの、本発明者らは、マイクロ波処理を行ったニンニクの抽出物を、ペプチド分解酵素処理及び酵母発酵処理の後に粉末化することで、SAC含有割合が高く、流動性が高く、ニンニク特有の臭いが低減されたニンニク粉末を、賦形剤を添加せずとも製造できることを見出した。
また、本発明者らは、SAC含有割合が高いニンニク粉末が、高強度の脳疲労、頭の疲れ若しくは倦怠感を予防又は軽減できる、あるいは集中力又は頭の冴えの低下を改善できることを見出した。
【0010】
本発明は、例えば下記の主題を包含する。
項1.
ニンニク抽出物からニンニク粉末を製造する方法であって、ニンニク抽出物をペプチド分解酵素処理、及び酵母発酵処理する工程(A)を有する、製造方法。
項2.
製造されるニンニク粉末におけるS-アリルシステイン含有割合が10mg/g以上である項1に記載の製造方法。
項3.
製造されるニンニク粉末が、45°以下の安息角を有する、項1又は2に記載の製造方法。
項4.
前記工程(A)が、ニンニク抽出物にペプチド分解酵素及び酵母を添加して実施される、項1~3のいずれかに記載の製造方法。
項5.
前記工程(A)が、ニンニク抽出物をペプチド分解酵素処理する工程、及び(1)当該工程で得られた酵素処理物又は(2)前記酵素処理物にエタノールを添加して得られるエタノール処理液を酵母発酵処理する工程を有する、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
項6.
前記酵母がパン酵母である項1~5のいずれかに記載の製造方法。
項7.
前記酵母がサッカロマイセス属に属する酵母である項1~5のいずれかに記載の製造方法。
項8.
前記ペプチド分解酵素が酸性カルボキシペプチダーゼである項1~7いずれかに記載の製造方法。
項9.
前記酸性カルボキシペプチダーゼがアスペルギルス・オリゼ由来酸性カルボキシペプチダーゼである項8に記載の製造方法。
項10.
前記ニンニク抽出物が水抽出物である項1~9のいずれかに記載の製造方法。
項11.
前記工程(A)で得られた発酵処理物にエタノールを添加して沈殿物を除去する工程を有する、項1~10のいずれかに記載の製造方法。
項12.
S-アリルシステインを10mg/g以上の含有割合で含有するニンニク粉末。
項13.
安息角を測定可能な粉体特性評価装置を用いた流動性評価試験における安息角が45°以下である、項12に記載のニンニク粉末。
項14.
S-アリルシステインの含有割合が20mg/g以上である、項12又は13に記載のニンニク粉末。
項15.
ニンニク臭が低減された、項12~14のいずれかに記載のニンニク粉末。
項16.
戻り臭が低減された、項12~15のいずれかに記載のニンニク粉末。
項17.
S-アリルシステインを有効成分として含有する、高強度の脳疲労を予防又は軽減するための、頭の疲れを予防又は軽減するための、倦怠感を予防又は軽減するための、集中力の低下を改善するための、あるいは頭の冴えの低下を改善するための、経口組成物。
項18.
項12~16のいずれかに記載のニンニク粉末を含有する項17に記載の経口組成物。
項19.
項1~11のいずれかに記載の製造方法で製造されたニンニク粉末を含有する項17に記載の経口組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、SAC含有割合の高いニンニク粉末とその製造方法を提供できる。
本発明は、流動性の高いニンニク粉末の製造方法を提供できる。
本発明は、高強度の脳疲労を予防又は軽減するための、SACを有効成分として含有する経口組成物を提供できる。
本発明は、脳の疲れの抑制、倦怠感の抑制、集中力の低下の抑制、又は頭の冴えの低下の抑制のための、SACを有効成分として含有する経口組成物を提供できる。
本発明の製造方法で製造されたニンニク粉末は、ニンニク特有の臭いが低減されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】脳疲労負荷による脳疲労度を決定する方法の概略図である(試験例2)。
図2】2回目のVASアンケート時点で、1回目のVASアンケートから増加した脳疲労度を示す、グラフである(試験例2)。
図3】強度の高い脳疲労負荷試験後の脳疲労度を試験した結果を表すグラフである(試験例3)。
図4】脳疲労負荷後の「頭の疲れ」の上昇の程度を表すグラフである(試験例4)。
図5】脳疲労負荷後の「倦怠感」の上昇の程度を表すグラフである(試験例4)。
図6】脳疲労負荷後の「集中力」の低下の程度を表すグラフである(試験例4)。
図7】脳疲労負荷後の「頭の冴え」の低下の程度を表すグラフである(試験例4)。
図8】戻り臭を感じたテスターの割合を表すグラフである(試験例6)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書中の記号及び略号は、特に限定のない限り、本明細書の文脈に沿い、本発明が属する技術分野において通常用いられる意味に理解できる。
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含することを意図して用いられる。
本明細書において「ニンニク粉末」はニンニクを原料として製造されるニンニク由来の粉末である。好適には、ニンニク由来成分以外の他の成分を含有しないニンニク粉末である。
本明細書において、「高強度の脳疲労」は日常生活により生ずる脳疲労の強度と比較してそれより強度の高い脳疲労である。
【0014】
ニンニク粉末の製造方法
本発明のニンニク粉末の製造方法では、ニンニク抽出物をペプチド分解酵素処理、及び酵母発酵処理し、これにより、SAC含有割合が原料のニンニクよりも増加したニンニク粉末を製造する。この製造方法では、ペプチド分解酵素処理及び酵母発酵処理によって、SAC含有割合が高く、流動性の高いニンニク粉末を、賦形剤を添加せずとも製造することができる。また、本発明のニンニク粉末の製造方法では、ニンニク粉末質量に対するSAC含有質量が高い(例えば10mg/g以上)のニンニク粉末を製造することができる。
【0015】
さらに、本発明の製造方法で製造されたニンニク粉末は流動性が高い(例えば、安息角が45°以下)。このため、一般的な打錠機を用いて錠剤化する際に、原料粉末として、賦形剤を含有しないニンニク粉末を用いても錠剤化(打錠)できる。また、本発明のニンニク粉末は、流動性が高いため、打錠機内でのホッパーや配管の詰まりの発生が抑制され、直接打錠機に送っても打錠することができる、いわゆる直打が可能になる。つまり、本発明の製造方法で得られるニンニク粉末は流動性が高いため、打錠による錠剤化に適している。一方、流動性が低いニンニク粉末を用いると、その粉末のみでは打錠による錠剤化が困難であるため、打錠の前に、流動性を高めるための造粒化工程(この工程でニンニク粉末に賦形剤が添加される)が必要となる。このため、コストが高く、工程が多くなってしまう。
【0016】
本発明の製造方法では、ニンニク抽出物を使用する。ニンニク抽出物は公知のものを使用できる。ニンニク抽出物は、ニンニクを抽出溶媒で抽出して製造してもよい。ニンニク抽出物は、抽出処理後の抽出液だけでなく、抽出処理されたニンニクを含んでもよいが、抽出済みのニンニクはその後の粉末処理までのいずれかの段階で固液分離手段等によって分離除去される。抽出対象のニンニクとしては、生ニンニク、乾燥ニンニク、塩蔵ニンニクなどが挙げられ、生ニンニクが好ましい。ニンニクは球根部が使用されることが好ましく、さらに皮等を除去して鱗片部を使用することがより好ましい。
【0017】
ニンニクは加熱処理されていることが好ましい。ニンニク中の酵素を失活又は酵素反応を抑制でき、ニンニク特有の臭いが低減されるためである。加熱処理は、例えば蒸気処理、マイクロ波処理等であり、マイクロ波処理が簡便に実施できるため、好ましい。
ニンニクは抽出に適した形態に加工されてもよい。例えば、ミキサー等を使用してニンニクを破砕して、小片化又はペースト化することにより抽出が容易になる。
【0018】
抽出溶媒としては水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール)、アセトン、酢酸エチル、ヘキサンなどが挙げられ、好ましくは水、エタノールまたは水とエタノールの混合液であり、より好ましくは水である。例えばニンニクを過剰量の抽出溶媒で、10℃以上、抽出溶媒の沸点程度以下、例えば沸点より5℃低い温度以下で処理することによってニンニク抽出物を得ることができる。抽出温度は、例えば10℃~100℃、30℃~100℃、40℃~100℃、60℃~100℃等とでき、好ましくは80℃~100℃、より好ましくは90℃~100℃である。抽出時間は、抽出温度、抽出時の撹拌条件等に基づいて適宜設定できるが、例えば10分~24時間、好ましくは20分~4時間、より好ましくは20分~2時間、特に好ましくは20分~90分である。抽出溶媒の量及び抽出時間は公知の方法を参照して適宜変更できる。
【0019】
ニンニク抽出物はそのまま次の処理に供しても、固液分離して得られるニンニク抽出液として次の処理に供しても、濃縮して得られる濃縮物として次の処理に供してもよく、そのまま供することが好ましい。
本発明の製造方法では、ニンニクを抽出溶媒で抽出してニンニク抽出物を得る工程を含んでもよい。
【0020】
ペプチド分解酵素処理
ペプチド質分解酵素処理では、ニンニク抽出物をペプチド分解酵素を使用した酵素反応に供する。ペプチド分解酵素処理と酵母発酵処理を同時に実施してもよい。ニンニク抽出物をペプチド分解酵素で処理することによって、処理前と比較して処理後のSAC量が増加する。
【0021】
ペプチド分解酵素としては、アミド結合を加水分解するものであれば限定されず、例えばぺプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、プロテアーゼ、アミノペプチダーゼ等が挙げられる。ペプチド分解酵素は、分解の形式の違いにより、エンド型酵素やエキソ型酵素に分類され、また、最適pHの違いによって、中性、酸性又はアルカリ性酵素に分類されるが、いずれに分類されるものであってもよい。ペプチド分解酵素としては、エキソ型の酸性カルボキシペプチダーゼが好ましい。また、アスペルギルス・オリゼ由来のペプチド分解酵素も好ましい。アスペルギルス・オリゼ由来のエキソ型の酸性カルボキシペプチダーゼがより好ましい。ペプチド分解酵素は1種でも2種以上組み合わせても使用できる。
【0022】
ニンニク抽出物とペプチド分解酵素を接触させることによりペプチド分解酵素処理を実施できる。ペプチド分解酵素の使用量は、酵素反応が進行する限り、限定されず、適宜の量とできるが、原料のニンニク100gに対し、例えば0.01~50g、0.1~20g、0.5~10g等とでき、好ましくは1~5gである。
【0023】
酵素処理温度は、酵素反応が進行する限り特に制限されず、したがって、使用する酵素に応じて適宜選択すればよい。酵素処理温度は、例えば4℃以上70℃未満、4~60℃、10℃以上70℃未満、10~60℃等とでき、好ましくは30~60℃であり、より好ましくは40℃~60℃である。
酵素処理時間は、酵素処理温度、酵素処理時の撹拌条件等に基づいて適宜設定できるが、例えば30分~48時間、好ましくは30分~36時間、より好ましくは1時間~24時間である。
酵素使用量、酵素処理温度及び酵素処理時間は適宜変更できる。酵素処理後はペプチド分解酵素を失活させるために酵素処理物を加熱してもよい。加熱温度は使用する酵素の耐熱性等に応じて適宜選択できる。加熱温度は、例えば70~100℃、80~100℃等で失活させることができる。
【0024】
酵素処理によって得られた酵素処理物は、酵母発酵処理に供されてもよい。酵素処理と酵母発酵処理を同時に行ったときは、酵素及び発酵処理物が得られるが、この処理物は粉末化に適しているため、この処理物をそのまま、好ましくはこの処理物中の固形分を除去して得られる液状又はペースト状物を、酵母発酵処理の原料として使用できる。
【0025】
ペプチド分解酵素処理物のエタノール処理
酵素処理によって得られた酵素処理物(好ましくは酵素処理物から沈殿物が除去された上清(酵素処理液))をエタノール処理してもよい。エタノール処理をすると、不要な多糖やタンパク質等を沈殿させることができる。
【0026】
エタノール処理は、酵素処理物(好ましくは酵素処理液)にエタノールを添加して、生じる沈殿物を除去し、得られる液からエタノールを除去する処理である。本発明では、このエタノール処理で得られる処理液を酵母発酵処理に供してもよい。
【0027】
エタノールの添加は、添加により沈殿が生成する限り特に制限されず、処理条件は適宜選択すればよい。添加されるエタノールの量は、酵素処理液とエタノールの総体積を100%とした場合のエタノールの濃度が、例えば10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは40%以上となる量である。このエタノール濃度は、例えば99%以下、98%以下、95%以下、93%以下、90%以下等であって良い。エタノール濃度の下限値と上限値は適宜組み合わせられて、エタノール濃度の範囲を形成することができる。
エタノール処理における沈殿を生成させる際の温度は、例えば-80~70℃であってよく、好ましくは-40~0℃である。エタノール処理における沈殿を生成させる際の時間は、沈殿が生じる限り特に限定されないが、例えば0.5時間~72時間、1時間~36時間等であってよい。
【0028】
エタノール処理において、沈殿物の除去は、公知の適切な固液分離方法、例えば遠心分離等により実施できる。
固液分離により得られた処理液に含まれるエタノールは、公知の適切な分離方法、例えば減圧濃縮等により除去される。
エタノールが除去された処理液(エタノール処理液)は、酵母発酵処理に供することができる。本発明において、酵素処理物には、当該処理液が包含される。
【0029】
酵母発酵処理
酵母発酵処理では、ペプチド分解酵素処理物を、酵母を使用した発酵処理に供する。酵母発酵処理をペプチド分解酵素処理と同時に実施してもよい。あるいは、酵母発酵処理では、ペプチド分解酵素処理物のエタノール処理によって得られるエタノール処理液をペプチド分解酵素処理物として酵母発酵処理に供することもできる。
ペプチド分解酵素処理物を、そのまま乾燥して粉末化しようとしても容易に粉末化できないが、酵母発酵処理を実施すると粉末化が容易になる。また、酵母発酵処理物を粉末化したものは流動性が高いため、打錠による成型や顆粒の製造に適している。
【0030】
酵母としては、パン酵母、ビール酵母、酵母ブロック、酵母ペースト、酵母エキス等が挙げられ、パン酵母又は酵母ブロックが好ましく、パン酵母がより好ましい。また、酵母は、サッカロマイセス属、チゴサッカロマイセス属、トルラ酵母属等に属する酵母であってよく、サッカロマイセス属に属する酵母が好ましい。また、酵母の形態は液状、固体状、ペースト状等があるが乾燥した酵母が好ましい。酵母は1種でも2種以上組み合わせても使用できる。乾燥パン酵母は、一般的にパン製造時に使用される工業的に最も多く製造されており、安全性、価格、品質安定性、入手のしやすさ、保存性の点で有利である。
【0031】
ペプチド分解酵素処理物を酵母と接触させることにより酵母発酵処理を実施できる。酵母発酵処理をペプチド分解酵素処理と同時に実施する場合では、ニンニク抽出物と酵母を接触させることにより酵母発酵処理を実施できる。酵母の使用量は、発酵が進行する限り、限定されず、適宜の量とできるが、原料のニンニク100gに対し、例えば0.01~50g、0.01~20g、0.1~10g、0.3~50g、0.3~20g、0.3~10g、0.5~50g、0.5~20g等とでき、好ましくは、0.5~10g、より好ましくは0.5~6gである。
【0032】
発酵処理温度は、発酵が進行する限り特に制限されず、したがって、使用する酵母に応じて適宜選択すればよい。発酵処理温度は、例えば10~60℃等とでき、好ましくは20~50℃、より好ましく20~40℃である。
発酵処理時間は、発酵処理温度、発酵処理時の撹拌条件等に基づいて適宜設定できるが、例えば30分~48時間、好ましくは30分~36時間、より好ましくは1時間~24時間である。
酵母使用量、発酵処理温度及び発酵処理時間は適宜変更できる。
【0033】
発酵処理物は、公知の適切な固液分離方法、例えば遠心分離等に供されて、沈殿物が除去され、発酵処理液とされることが、粉末化が容易になる点から好ましい。本発明では、発酵処理液も発酵処理物に包含される。
発酵処理後は、発酵処理物を加熱して酵母を失活させてもよい。加熱温度は使用する酵母に応じて適宜選択できる。加熱温度は、例えば60~100℃、70~100℃等で失活させることができる。
【0034】
工程(A)で得られた発酵処理物にエタノールを添加して沈殿物を除去する工程
工程(A)で得られた酵母発酵処理物(ニンニク抽出物にペプチド分解酵素及び酵母を添加して酵素反応及び発酵をして得られた処理物を含む)をエタノール処理してもよい。エタノール処理をすると、不要な多糖やタンパク質等を沈殿させることができる。
ここでのエタノール処理は、酵母発酵処理物にエタノールを添加し、生じる沈殿を除去する。エタノール処理によって液部を得、この液部を粉末化処理に供することにより、ニンニク粉末を製造することもできる。
【0035】
エタノールの添加は、添加により沈殿が生成する限り特に制限されず、処理条件は適宜選択すればよい。添加されるエタノールの量は、発酵処理液とエタノールの総体積を100%とした場合のエタノールの濃度が、例えば10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは40%以上となる量である。このエタノール濃度は、例えば99%以下、98%以下、95%以下、93%以下、90%以下等であって良い。エタノール濃度の下限値と上限値は適宜組み合わせられて、エタノール濃度の範囲を形成することができる。
エタノール処理における沈殿を生成させる際の温度は、例えば-80~70℃であってよく、好ましくは-40~0℃である。エタノール処理における沈殿を生成させる際の時間は、沈殿が生じる限り特に限定されないが、例えば。例えば0.5時間~72時間、1時間~36時間等であってよい。
【0036】
沈殿物の除去は、公知の適切な固液分離方法、例えば遠心分離等により実施できる。
固液分離により得られた処理液に含まれるエタノールは、公知の適切な分離方法、例えば減圧濃縮等により除去される。
エタノールが除去された処理液は、粉末化処理に供することができる。本発明において、発酵処理物には、当該処理液が包含される。
【0037】
粉末化処理
酵母発酵処理で得られた発酵処理物(酵母発酵処理をペプチド分解酵素処理と同時に実施して得られる発酵処理物を含む)は、ペプチド分解酵素処理物よりも粉末化に適している。酵母発酵処理物が固形分(ニンニク由来固形物、酵素、酵母等)を含む場合は、固形分を除去して得られる液状物(ペースト状物を含む)を、粉末化原料として使用することが好ましい。固形分を除去する方法には、公知の固液分離方法のうち適切なものを選択して適用できる。例えば、遠心分離法、珪藻土濾過法、フィルター濾過法、フィルタープレス法、沈殿法等を適用でき、固液分離時間、コスト、処理量の観点から遠心分離法が好ましい。
【0038】
発酵処理物は乾燥及び粉末化される。乾燥方法は、凍結乾燥、噴霧乾燥、熱風乾燥法、吸着乾燥法、マイクロ波処理乾燥法等であってよく、凍結乾燥又は噴霧乾燥が好ましく、噴霧乾燥がより好ましい。噴霧乾燥では乾燥と粉末化が実行される。発酵処理物は、必要に応じて、粉末化の前に濃縮されてもよく、この場合、発酵処理物の濃縮液が粉末化処理に供される。乾燥及び粉末化の各種条件は、粉末が得られる限り特に制限されない。また、乾燥物が固まっている場合や粗い粒子の場合は、粉砕を行っても良い。粉砕物を篩に通して粉末粒子径を均一にしてもよい。
【0039】
本発明の製造方法では、ニンニク粉末質量1gに対するSAC含有割合が15mg以上となるニンニク粉末を製造することも可能である。また、本発明の製造方法では、流動性が高いニンニク粉末を製造することができる。このため、本発明の製造方法は、本発明のニンニク粉末の製造法としても有用である。換言すると、本発明のニンニク粉末は本発明の製造方法で製造することができる。
【0040】
ニンニク粉末
本発明のニンニク粉末は、ニンニク粉末質量1gに対してSACを10mg/g以上の割合で含有してよい。SAC含有割合は、12mg/g以上、14mg/g以上、16mg/g以上、20mg/g以上、30mg/g以上、40mg/g以上であってよく、80mg/g以下、70mg/g以下、60mg/g以下、50mg/g以下であってよい。これらの下限値及び上限値を適宜組み合わせてSAC含有割合とすることができる。
【0041】
ニンニク粉末におけるSAC含有割合は高速液体クロマトグラフィー等で分析することによって特定できる。
本発明のニンニク粉末は、SAC含有割合が高くても流動性が高く粉末化に適しているため、ニンニク粉末を事前に造粒せずとも錠剤化が可能である。したがって、本発明のニンニク粉末は賦形剤を含有しない形態を包含する。
【0042】
本発明のニンニク粉末は、流動性が高い。本発明のニンニク粉末は、その安息角が、50°以下であってよく、好ましくは45°以下、より好ましくは40°以下である。安息角は、粉体特性評価装置を使用した流動性評価試験よって特定する。
【0043】
例えば、安息角を測定可能な粉体特性評価装置(例えば、パウダテスタPT-X型(ホソカワミクロン社))を用い、付属の説明書に従って、トレー(安息角テーブル)の上に粉体を自然落下で落とし、トレーの上に堆積した粉体の山にバックライトを当て、生じた影を撮影し、撮影画像中の山の斜面と底面のなす角度を測定する。粉体特性評価装置は、粉体物性評価装置と称されることもある。装置によって測定される安息角が異なる場合は前記のパウダテスタPT-X型にて測定される安息角を本発明における安息角とする。
【0044】
打錠機の臼の中にニンニク粉末を入れて打錠すること(一般的には直打とも呼ばれる。)ができると、簡便及び低コストで錠剤化が可能となる。安息角が45°以下のニンニク粉末を粉末原料とするとこの直打が可能である。
一方、安息角が45°を超えるニンニク粉末では直打による錠剤化が困難となるため、ニンニク粉末に賦形剤を添加して造粒した後、錠剤化する。このため、錠剤化までの工程が多く、コストも高い。
【0045】
本発明のニンニク粉末は、SACの含有割合が高く、錠剤化に適した流動性を有するため、SACを有効成分とする固形の経口組成物、特にSACを有効成分とする錠剤の原料として有用である。
【0046】
経口組成物
本発明の経口組成物は、高強度の脳疲労を予防又は軽減するために、頭の疲れを予防又は軽減するために、倦怠感を予防又は軽減するために、集中力の低下を改善するために、あるいは頭の冴えの低下を改善するために、SACを有効成分として含有する。高強度の脳疲労は、日常生活で生ずる脳疲労とは異なり、より強度の高い脳における疲労である。
強度の高い脳疲労は、例えば、受験、会議、満員電車、長時間のパソコン作業等であり、1種単独でも2種以上組み合わされてもよい。強度の高い脳疲労は、例えば、VASアンケート(評価軸長さとして10cmを使用)による評価において、脳疲労負担の前と比較して、後の脳疲労度(ΔVAS)が10mm以上となる脳疲労であり、好ましくは12mm以上、より好ましくは15mm以上、特に好ましくは20mm以上となる脳疲労である。倦怠感、集中力、及び頭の冴えは、経口組成物分野において通常使用される意味で理解される。
【0047】
本発明の経口組成物におけるSACの含有量は、高強度の脳疲労を予防又は軽減できる、頭の疲れを予防又は軽減できる、倦怠感を予防又は軽減できる、集中力の低下を改善できる、あるいは頭の冴えの低下を改善できる限り特に制限されない。SAC含有量は、経口組成物全体質量に対して、例えば、0.0002~3質量%、0.0005~3質量%、0.001~3質量%、0.0005~2.7質量%、0.001~2.7質量%等とできる。
【0048】
本発明のニンニク粉末及び本発明の製造方法で製造されたニンニク粉末はSAC含有割合が高いため、本発明の経口組成物はSAC源としてこれらのニンニク粉末を含有することが好適である。本発明の経口組成物におけるこれらニンニク粉末の含有量は、経口組成物の形態や、経口組成物に含有させる所望のSAC量に応じて適宜選択できるため、特に制限されない。例えば、サプリメントであればニンニク粉末のみからなる錠剤とすることもできる一方で、おにぎりにニンニク粉末が混ぜ込まれる場合はニンニク粉末含有割合は非常に少なくてもよい。本発明の経口組成物におけるニンニク粉末の含有量は、経口組成物全体質量に対して、例えば、0.02~100質量%、0.05~100質量%、0.1~100質量%、0.05~90質量%、0.1~90質量%等とできる。
【0049】
本発明の経口組成物には、必要に応じて、賦形剤、タンパク質、糖類、ビタミン類、ミネラル類、フラボノイド類、キノン類、ポリフェノール類、アミノ酸、核酸、必須脂肪酸、清涼剤、結合剤、甘味料、崩壊剤、滑沢剤、着色料、香料、安定化剤、防腐剤、徐放調整剤、界面活性剤、光沢剤、溶解剤、湿潤剤、二酸化ケイ素等を、1種単独で又は2種以上組み合わせて、適宜の量で配合することができる。また、本発明の経口組成物は、必要に応じて、コーティング剤(例えば、白糖、酵母細胞壁、ゼイン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)で被覆されていてもよいし、また2以上の層で被覆されていてもよい。
【0050】
賦形剤としては、例えば、マルチトール、ラクトース、乳糖水和物、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、デンプン、シクロデキストリン、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。
甘味料としては、マルチトール、トレハロース、キシリトール、ソルビトール、ラクチトール、エリスリトールなどが挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、繊維素グリコール酸カルシウムなどが挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、タルクなどが挙げられる。
タンパク質としては、例えば、大豆ホエイ、乳ホエイ、ゼラチンなどが挙げられる。
糖類としては、例えば、デンプン、デキストリン、単糖、ブドウ糖、果糖、結晶セルロース、ガム類などが挙げられる。
ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、カロチン類、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD群、ビタミンE、ビタミンK群、ビタミンP、ビタミンQ、ナイアシン、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン、イノシトール、コリン、葉酸などが挙げられる。
ミネラル類としては、例えば、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、銅、鉄、マンガン、亜鉛、セレンなどが挙げられる。
【0051】
本発明の経口組成物は、本発明のニンニク粉末を原料とでき、このニンニク粉末が錠剤化に適していることから、錠剤の形態が好適であるが、他の経口摂取に適した形態、例えば、液剤、カプセル剤、顆粒剤等であってもよい。
【0052】
本発明の経口組成物は、例えば、食品(食品添加物を包含する)、医薬品組成物、医薬部外品等であってよく、食品が好適である。食品としては、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、保健用食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品などであってよい。サプリメントが好適である。
【0053】
本発明の経口組成物の製造方法は特に限定されず、適宜公知の経口組成物の製法をそのまま適用または適宜変更して適用して製造できる。好適には、本発明の製造方法で製造されたニンニク粉末を原料とし、これに公知の経口組成物の製法を適用した製造方法である。
【0054】
本発明の経口組成物において、SAC摂取量は適宜選択され得る。有効量としては1日当たり1mg以上が好適と見込まれる。このため、SAC摂取量としては、1日当たり、0.3mg~20mg、好ましくは1~10mgであり、より好ましくは2~5mgである。SAC摂取回数は、1日当たり、適宜選択され得る。例えば、SAC摂取回数は、1日当たり、1回、2回、3回、4回、5回等とできる。
本発明の一実施形態は、S-アリルシステインを有効成分として含有する、高強度の脳疲労を軽減するための、頭の疲れを予防又は軽減するための、倦怠感を予防又は軽減するための、集中力の低下を改善するための、あるいは頭の冴えの低下を改善するための、経口組成物であって、SACが1日当たり、0.3~20mg経口摂取される、経口組成物である。
【0055】
本発明の経口組成物の摂取期間は、適宜選択され得る。例えば、摂取期間は、少なくとも約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、約15日、約16日、約17日、約18日、約19日、約20日、約21日、約22日、約23日、約24日、約25日、約26日、約27日、約28日、約29日、約30日、約31日であり得る。ある実施態様では、摂取期間は約3日間~約21日間であり、好ましくは約7日間~約14日間である。
本発明の一実施形態は、S-アリルシステインを有効成分として含有する、高強度の脳疲労を軽減するための、頭の疲れを予防又は軽減するための、倦怠感を予防又は軽減するための、集中力の低下を改善するための、あるいは頭の冴えの低下を改善するための、経口組成物であって、約3日間~約21日間にわたって摂取される経口組成物である。
【実施例0056】
以下、実施例等によって本発明の一実施態様を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0057】
(SAC含量の測定)
SAC含量は高速液体グラフィー(HPLC)で測定した。試料が粉末の場合は、ニンニク粉末を100 mg秤量し、10 mLの20 mM ホウ酸緩衝液(pH 9.2)に溶解し、溶解液を作製した。また、試料が液体の場合は、固形分濃度が10 mg/mLになるように20 mM ホウ酸緩衝液(pH 9.2)で希釈し、希釈液を作製した。この溶解液または希釈液を20 mM ホウ酸緩衝液(pH 9.2)で5倍に希釈し、得られた液0.1 mLに、アセトニトリルに溶解した10 mM ダンシルクロライド(東京化成工業株式会社)を0.25 mLと20 mM ホウ酸緩衝液(pH 9.2)を0.65 mLとを添加し、遮光下、室温で15分反応し、SACをダンシルクロライドでラベル化した。得られた反応液をHPLCで分析した。HPLC装置は島津HPLC LC-20A(株式会社島津製作所)を使用した。分析用カラムはKINETEX C18(直径4.6 mm x 長さ250 mm)(株式会社島津ジーエルシー)を使用し、30%メタノールを含む50 mM 酢酸緩衝液(pH 5.0)から50分で70%メタノールの同緩衝液になるよう直線的なグラジエント溶出を行った。ラベル化されたSACの検出は、250 nmの紫外光吸収で行った。測定結果を東京化成工業社製の試薬S-Allyl-L-cysteine(製品番号:A1468)を標品として使用して作成した検量線と比較して、SAC含量を特定した。
【0058】
(流動性の評価)
安息角を測定可能な粉体特性評価装置であるパウダテスタPT-X型(ホソカワミクロン社)を用い、付属の説明書に従って、トレー(安息角テーブル)の上に粉体を落とし、トレーの上に堆積した粉体の山にバックライトを当て、生じた影を撮影し、撮影画像中の山の斜面と底面のなす角度を安息角とした。
【0059】
実施例1:ニンニク粉末の製造
生のニンニク球根から皮を除去して得られたニンニクの鱗片600gをマイクロ波処理にてニンニク中の酵素を失活させた後、水1.2Lを加えて、ミキサーでペースト状になるまで破砕及び撹拌した。ペースト状の破砕物について90℃で30分間抽出を行った。得られた水抽出物を30℃まで冷却し、ペプチド分解酵素(スミチームACP-G;新日本科学工業株式会社製)を15g添加して45℃で15時間酵素反応させた後、18gの乾燥パン酵母(オリエンタル酵母工業株式会社製)を添加して30℃で15時間、発酵させた。得られた処理物を加熱処理(90℃、30分間)することで酵素と酵母を失活させた後、加熱処理物を遠心分離処理(3,000rpm、10分間)して沈殿物を除去した。得られた遠心分離上清液を回転式減圧濃縮器で504mLまで濃縮し、濃縮液を凍結乾燥機で乾燥させ、次いで粉砕することによって、賦形剤を添加することなく、126gのニンニク粉末を得た。得られた粉末は安息角が32°の流動性の良い物性であり、SAC含量は18.0mg/gであった。
【0060】
実施例2:ニンニク粉末の製造
ニンニクの鱗片10,000gを使用し、実施例1と同様にして、遠心分離上清液を6.9L得た。当該上清液を噴霧乾燥処理(スプレードライヤーCNK-SDD-1;中部熱工業株式会社)することによって、賦形剤を添加することなく、2.3kgのニンニク粉末を得た。得られた粉末は安息角が45°以下の流動性の良い物性であり、SAC含量は14.0mg/gであった。
【0061】
比較例1:ニンニク粉末の製造
実施例1と同様にして、ニンニクの鱗片600gからニンニクの水抽出物を得た。得られた水抽出物を遠心分離処理し(3,000rpm、20分間)、沈殿物を除去した。得られた遠心分離上清液を回転式減圧濃縮器で552mLまで濃縮し、濃縮液を凍結乾燥機で乾燥及び粉砕させることによって138gのニンニク粉末を得た。得られた粉末は安息角が48°の流動性が良くない物性であったが、SAC含量は0.13mg/gであった。本例では、ペプチド分解酵素処理及び酵母発酵処理が実施されていない。
【0062】
比較例2:ニンニク粉末の製造(酵母発酵処理なし)
実施例1と同様にして、ニンニクの鱗片600gからニンニクの水抽出物を得た。得られた水抽出物を30℃まで冷却し、ペプチド分解酵素(スミチームACP-G;新日本科学工業株式会社製)を15g添加し30℃で15時間、酵素反応させた。得られた酵素処理物を加熱処理(90℃、30分間)することで酵素を失活させた後、加熱処理物を遠心分離処理(3,000rpm、20分間)して沈殿物を除去した。得られた遠心分離上清液を回転式減圧濃縮器で515mLまで濃縮し、濃縮液を凍結乾燥機で乾燥させたところアメ状となり、粉末を得ることができなかった。本例では、酵母発酵処理が実施されていない。
【0063】
実施例3:ニンニク粉末の製造
生のニンニク球根から皮を除去して得られたニンニクの鱗片10,000gをマイクロ波処理にてニンニク中の酵素を失活させた後、水20Lを加えて、粉砕機でペースト状になるまで破砕及び撹拌した。ペースト状の破砕物について90℃で30分間抽出を行った。得られた水抽出物を30℃まで冷却し、ペプチド分解酵素(スミチームACP-G;新日本科学工業株式会社製)を500g添加して45℃で15時間酵素反応させた後、600gの乾燥パン酵母(オリエンタル酵母工業株式会社製)を添加して30℃で15時間、発酵させた。得られた処理物を加熱処理(90℃、30分間)することで酵素と酵母を失活させた後、加熱処理物を遠心分離処理(3,000rpm、30分間)して沈殿物を除去した。得られた遠心分離上清液を回転式減圧濃縮器で6,312mLまで濃縮し、濃縮液を噴霧乾燥処理(スプレードライヤー CNK-SDD-1;中部熱工業株式会社)で乾燥及び粉砕することによって、賦形剤を添加することなく、2,104gのニンニク粉末を得た。得られた粉末は安息角が45°以下の流動性の良い物性であり、SAC含量は21.3mg/gであった。
【0064】
調製例1:酵素反応液の調製(酵母発酵なし)
生のニンニク球根から皮を除去して得られたニンニクの鱗片4,800gをマイクロ波処理にてニンニク中の酵素を失活させた後、水9,600mLを加えて、ミキサーでペースト状になるまで破砕及び撹拌した。ペースト状の破砕物について90℃で30分間抽出を行った。得られた水抽出物を30℃まで冷却し、ペプチド分解酵素(スミチームACP-G;新日本科学工業株式会社製)を240g添加して45℃で15時間酵素反応させ13,848mLの酵素反応液を得た。この酵素反応液を加熱処理(90℃、30分間)することで酵素を失活させて、この酵素反応液を遠心分離処理(3,000rpm、30分間)して沈殿物を除去し、10,464mLの酵素反応液上清を得た。尚、酵素反応液上清中の固形分を赤外線水分計で測定し、固形分あたりのSAC含量を求めたところ10.0mg/gであった。
【0065】
比較例3:酵素反応液の75%エタノール沈殿による沈殿物除去:上清の粉末化
調製例1で得られた酵素反応液上清220mLに、エタノール濃度が75%となる量のエタノールを添加し、氷点下20℃で一晩以上静置した。遠心分離にて上清を回収し凍結乾燥及び粉砕して16gの粉末を得た。得られた粉末はべたつきが強く、安息角を測定するまでもなく45°超であることが明らかであった。粉末中のSAC含量は17.2mg/gであった。
【0066】
実施例4:酵素反応液の75%エタノール沈殿よる沈殿物の除去:上清を酵母発酵後、粉末化
調製例1で得られた酵素反応液上清2,180mLに、エタノール濃度が75%となる量のエタノールを添加し、氷点下20℃で一晩以上静置した後、遠心分離にて上清を回収した。上清を濃縮してエタノールを除去し、30gの乾燥パン酵母(オリエンタル酵母工業株式会社製)を添加し、攪拌しながら30℃、15時間反応させた。反応終了後、加熱処理(90℃、30分間)で失活させた後、704mLまで減圧濃縮した。その後、凍結乾燥及び粉砕して70gの粉末を得た。得られた粉末の安息角は45°以下であり、性状は良好であった。粉末中のSAC含量は32.4mg/gであった。
【0067】
調製例2:ニンニク抽出エキス末の調製(酵母発酵あり)
生のニンニク球根から皮を除去して得られたニンニクの鱗片1,800gをマイクロ波処理にてニンニク中の酵素を失活させた後、水3,600mLを加えて、ミキサーでペースト状になるまで破砕及び撹拌した。ペースト状の破砕物について90℃で30分間抽出を行った。得られた水抽出物を30℃まで冷却し、ペプチド分解酵素(スミチームACP-G;新日本科学工業株式会社製)を90g添加して45℃で15時間酵素反応させ5,193gの酵素反応液を得た。この酵素反応液に54gの乾燥パン酵母(オリエンタル酵母工業株式会社製)を添加し、攪拌しながら30℃で15時間、発酵させた。得られた処理物を加熱処理(90℃、30分間)することで酵素と酵母を失活させた後、加熱処理物を遠心分離処理(3,000rpm、30分間)して沈殿物を除去し、3,683mLの反応液上清を得た。反応液上清中の固形分は396gであり、固形分あたりのSAC含量は、13.3mg/gであった。
【0068】
実施例5:40%エタノール沈殿よる沈殿物の除去:上清の粉末化
調製例2で得られた反応液上清879mL(固形分95g)に、エタノール濃度が40%になるようにエタノールを添加し、-20℃で一晩以上静置した。遠心分離により沈殿物を除去後、上清を283mLまで減圧濃縮した。その濃縮液を凍結乾燥及び粉砕することにより、85gの粉末を得た。得られた粉末の性状は、安息角が45°以下の良好な粉末であった。粉末中のSAC含量は14.9mg/gであった。
【0069】
実施例6:80%%エタノール沈殿よる沈殿物の除去:上清の粉末化
調製例2で得られた反応液上清1,778mL(固形分192g)に、エタノール濃度が80%になるようにエタノールを添加し、-20℃で一晩以上静置した。遠心分離により沈殿物を除去後、上清を197mLまで減圧濃縮した。その濃縮液を凍結乾燥及び粉砕することにより59gの粉末を得た。得られた粉末の性状は、安息角が45°以下の良好な粉末であった。粉末中のSAC含量は40.3mg/gであった。
【0070】
実施例7:酵母量0.5%
調製例1で得られた酵素反応液1,731mL(原料のニンニク鱗片重量に換算すると 600g)に対して3g(原料のニンニク鱗片重量の0.5%)のドライイースト(オリエンタル酵母工業株式会社、商品名:ドライイースト)を添加し、攪拌しながら30℃で18時間、発酵させた。得られた処理物を加熱処理(90℃、30分間)することで酵素と酵母を失活させた後、遠心分離を行い反応液上清を得た。この反応液上清を凍結乾燥及び粉砕することによって150gの粉末を得た。得られた粉末の性状は良好であり、安息角は45°以下であった。また、この粉末中のSAC含量は、11.3mg/gであった。
【0071】
実施例8:酵母量1%
調製例1で得られた酵素反応液1,731 mL(原料のニンニク鱗片重量に換算すると 600g)に対して6g(原料のニンニク鱗片重量の1%)のドライイースト(オリエンタル酵母工業株式会社、商品名:ドライイースト)を添加し、攪拌しながら30℃で18時間、発酵させた。得られた処理物を加熱処理(90℃、30分間)することで酵素と酵母を失活させた後、遠心分離を行い反応液上清を得た。この反応液上清を凍結乾燥及び粉砕することによって114gの粉末を得た。得られた粉末の性状は良好であり、安息角は45°以下であった。また、この粉末中のSAC含量は、12.2mg/gであった。
【0072】
実施例9;(酵母量2%)
調製例1で得られた酵素反応液1,731mL(原料のニンニク鱗片重量に換算すると 600g)に対して12g(原料のニンニク鱗片重量の2%)のドライイースト(オリエンタル酵母工業株式会社、商品名:ドライイースト)を添加し、攪拌しながら30℃で18時間、発酵させた。得られた処理物を加熱処理(90℃、30分間)することで酵素と酵母を失活させた後、遠心分離を行い反応液上清を得た。この反応液上清を凍結乾燥及び粉砕によって102gの粉末を得た。得られた粉末の性状は良好であり、安息角は45°以下であった。また、この粉末中のSAC含量は、12.9mg/gであった。
【0073】
試験例1:ニンニク粉末の流動性(安息角)の比較
実施例1~9及び比較例1~3で得られたニンニク粉末の流動性を評価するために、粉体特性評価装置(パウダテスタ、モデルPT-X;ホソカワミクロン株式会社製)にて安息角を測定した。その結果、比較例1で得られたニンニク粉末の安息角は48°であり、実施例1で得られたニンニク粉末の安息角は32°であった。実施例1で得られた粉末は比較例2で得られた粉末より、明らかに流動性が良く、顆粒化や錠剤化に適した粉末であることが明らかになった。安息角が45°以下を合格(○)、45°超を不合格(×)と評価し、SAC濃度が10mg/g以上且つ安息角が合格の例を「○」と判定し、それ以外の例を「×」と判定した。その結果を表1に示した。
【0074】
【表1】
【0075】
実施例10:ニンニク粉末を配合した錠剤(経口組成物)の製造
実施例2で得られたニンニク粉末を使用して打錠して錠剤を製造した。錠剤1錠(273mg(素錠260mg、コーティング量13mg))当たりの組成は、ニンニク粉末が100mg(SACとして1mg)、マルチトールが78mg、デンプンが39mg、結晶セルロースが35mg、二酸化ケイ素が4mg、ステアリン酸カルシウムが4mgであった。得られた錠剤に酵母細胞壁とグリセリンの混合液をコーティング基剤とし、クチナシ及びタマリンドの色素を加えた液を用いてコーティングすることで、臭い、味及び色をマスキングしたSACニンニク錠を調製した。ニンニク粉末の代わりに同量のマルチトールを配合した以外は同様にしてコーティングされた錠剤を製造し、プラセボ錠とした。この2種類の錠剤を試験例2及び3のヒト試験に使用した。
【0076】
試験例2:脳疲労度評価試験
20歳代から50歳代までの健康な男女22名にて、Visual Analogue Scale(VAS)アンケートを用いて、脳疲労度を評価した。当該VASアンケートには、10cmの直線の左端に「疲れを全く感じない最良の感覚」と表示があり、右端には「なにもできないほど疲れ切った最悪の感覚」の表示がある。VASアンケートでは、被験者がその10cmの直線の上に印を入れることで評価時の被験者の脳疲労度が評価される。その直線の中間点を0とし、印の位置が中間点の右側であれば脳疲労があったと評価され、左側であれば疲労がなかったと評価される。脳疲労があった場合は、中間点から右側の印までの距離で、アンケート回答時点の脳疲労の程度(脳疲労度)が評価される。
被験者を2群(1群11名)に分け、対照群と脳疲労負荷群とした。
【0077】
脳疲労負荷群では、1回目のVASアンケートで脳疲労度を評価した後にVASアンケート用紙を回収した。回収後、直ちに、被験者に、脳疲労負荷試験を実施した。つまり、脳の認知機能検査であるコグニトラックス試験(CNS社)実施することで、脳へ強度の高い疲労負荷をかけ、強度の強い脳疲労が起こりやすい状態とした。試験時間は約1時間である。この試験では、言語記憶テスト、視覚記憶テスト、指たたきテスト、SDC記憶テスト、ストループテスト、注意シフトテスト、持続処理テスト、表情認知テスト、論理思考テスト、及び4パート持続処理テストの10種のテストが実施された。この試験では、日常生活の脳への負荷を超える負荷が脳にかかるため、被験者は高強度の脳疲労を感じることとなる。
【0078】
この脳疲労負荷試験後、直ちに、2回目のVASアンケートを実施した。2回目のVASアンケートの内容は1回目の内容と同じである。脳疲労負荷試験前である1回目のVASアンケートを基準に、2回目のVASアンケートで「何もできないほど疲れ切った最悪の感覚」に動いた距離、即ち[2回目のVASアンケートの左からの距離]マイナス[1回目のVASアンケートの左からの距離]の長さをΔVASとした。この式においてプラス値が大きいほど「疲労の悪化」、マイナス値が大きいほど「疲労の改善」の値となる。
【0079】
このようにして得られた疲労度を、脳疲労負荷に起因する脳疲労度と位置付けた。脳疲労負荷による脳疲労度を決定する方法の概略を図1に示す。
対照群では、脳疲労負荷試験を実施せずに、同様に2回のVASアンケートのみを実施した。
その結果、対照群との比較によって、脳疲労負荷によって、高強度の脳の疲労が起こっていることが明らかになった(図2)。本方法は、脳疲労度評価試験として適していることが分かった。
【0080】
試験例3:高強度の脳疲労に対するSAC含有ニンニク粉末含有錠剤の作用
20歳代から50歳代までの健康な男女22名を各群11名ずつの2群に分けた。各群、実施例3で製造したSACニンニク錠(1錠当たりSAC1mg含有)またはプラセボ錠を、毎朝食後に2錠(SACニンニク錠から1日当たり2mgのSACを摂取)を4週間継続摂取する二重盲検平行群間法にて試験を実施した。脳疲労度の評価は、摂取前、摂取2週間後および4週間後に、試験例2と同様にして実施した。
その結果、摂取前の脳疲労度はニンニク投与群及びプラセボ群で差はなかったが、摂取2週間目の脳疲労度はプラセボ群に対しSACニンニク摂取群で低下し、摂取4週間目の脳疲労度はプラセボ群に対しSACニンニク摂取群で明確に低下した(図3)。この結果より、2mgのSACを含んだニンニク粉末には、高強度の脳への疲労負荷であっても脳疲労度を軽減できる作用があることが明らかになった。
【0081】
試験例4:SAC含有ニンニク粉末含有錠剤のその他の作用
試験例3の試験実施時に脳疲労に関する別項目のVASアンケートを行い、摂取2週間目及び4週間目において、脳の疲れの低減効果(図4)、倦怠感の低減効果(図5)、集中力の低下抑制効果(図6)、頭の冴えの低下抑制効果(図7)が認められた。これらの結果からも、2mgのSACを含んだニンニク粉末には、脳疲労改善効果があることが明らかになった。なお、VASアンケートの項目は、脳(頭)の疲れ、倦怠感(けだるさ)、集中力、頭の冴え、である。アンケート用紙には、各項目ごとに、10cmの直線の左端に「最良の状態」と表示があり、右端には「最悪の状態」の表示がある。脳疲労負荷前である1回目のVASアンケートを基準に、2回目のVASアンケートで「最悪の状態」方向に動いた距離、即ち[2回目のVASアンケートの左からの距離]マイナス[1回目のVASアンケートの左からの距離]の長さをΔVASとした。この式で算出されるプラス値が大きいほど「悪い状態」(脳疲労の大きい状態)、マイナス値が大きいほど「良い状態」(脳疲労の小さい状態)となる。
【0082】
試験例5:酵母発酵処理によるニンニク特有の臭いの低減効果
比較例1で得られたニンニク粉末または実施例2で得られたニンニク粉末を終濃度が0.25%、0.5%、1%になるように40℃の温水にそれぞれ溶解し、得られた水溶液をニンニク特有の臭いの評価に使用した。パネラーとしての25歳から60歳の健康な男性4人及び女性3人(合計7人)が上記水溶液の臭いを評価した。その結果、比較例1で得られたニンニク粉末の水溶液では、0.25%濃度において7名中6名がニンニク特有の臭いを感じ、0.5及び1%濃度においては7名全員がニンニク特有の臭いを感じた。一方、実施例2で得られたニンニク粉末の水溶液では、0.25%及び0.5%濃度において7名中1名がニンニク特有の臭いを感じ、1%濃度において7名中2名がニンニク特有の臭いを感じた。以上の結果から、比較例1(酵母発酵なし)のニンニク粉末に比べて実施例1(酵母発酵あり)のニンニク粉末の方がニンニク特有の臭いが明らかに低減されていた。このことより、酵母発酵処理がニンニク特有の臭いの低減に有効であることが明らかになった。
【0083】
試験例6:戻り臭の低減効果
比較例1(酵母発酵なし)で得られたニンニク粉末または実施例2(酵母発酵あり)で得られたニンニク粉末をそれぞれ200mgずつハードカプセルに入れ、これをサンプルとした。テスターは29歳から59歳の健康な男女12人(男性6人及び女性6人)とした。テスターがサンプルを水で服用し、30分経過する毎に、空気を飲み込み、その反動にてゲップを行い、その際のニンニクの戻り臭の有無を評価した。評価は、120分経過するまで行った。結果を図8に示す。図8中、各経過時間において、左側のバーが比較例1で得られたニンニク粉末を摂取したテスターのうち戻り臭を感じた割合を示し、右側のバーが実施例2で得られたニンニク粉末を摂取したテスターのうち戻り臭を感じた割合を示す。その結果、実施例2のニンニク粉末は、比較例1のニンニク粉末よりも、戻り臭が明らかに低減されていた。酵素処理及び酵母発酵処理が、戻り臭の低減に有効であることが明らかになった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-03-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニンニク抽出物からニンニク粉末を製造する方法であって、ニンニク抽出物をペプチド分解酵素処理、及び酵母発酵処理する工程(A)を有する、製造方法。
【請求項2】
製造されるニンニク粉末におけるS-アリルシステイン含有割合が10mg/g以上である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
製造されるニンニク粉末が、45°以下の安息角を有する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程(A)が、ニンニク抽出物にペプチド分解酵素及び酵母を添加して実施される、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記工程(A)が、ニンニク抽出物をペプチド分解酵素処理する工程、及び(1)当該工程で得られた酵素処理物又は(2)前記酵素処理物にエタノールを添加して得られるエタノール処理液を酵母発酵処理する工程を有する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記酵母がパン酵母である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記酵母がサッカロマイセス属に属する酵母である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ペプチド分解酵素が酸性カルボキシペプチダーゼである請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項9】
前記酸性カルボキシペプチダーゼがアスペルギルス・オリゼ由来酸性カルボキシペプチダーゼである請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ニンニク抽出物が水抽出物である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項11】
前記工程(A)で得られた発酵処理物にエタノールを添加して沈殿物を除去する工程を有する、請求項1又は2に記載の製造方法。