(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055226
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】吸水処理材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A01K 1/015 20060101AFI20230411BHJP
【FI】
A01K1/015 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164375
(22)【出願日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】321000026
【氏名又は名称】株式会社大貴
(74)【代理人】
【識別番号】100179327
【弁理士】
【氏名又は名称】大坂 憲正
(72)【発明者】
【氏名】吉永 隼士
【テーマコード(参考)】
2B101
【Fターム(参考)】
2B101AA13
2B101AA20
2B101GB08
(57)【要約】
【課題】誤食時の安全性が高い吸水処理材、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】吸水処理材1は、吸水性を有する複数の粒状体10を備えている。各粒状体10は、米粉を主材料としている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性を有する複数の粒状体を備え、
前記各粒状体は、米粉を主材料とすることを特徴とする吸水処理材。
【請求項2】
請求項1に記載の吸水処理材において、
前記各粒状体に占める前記米粉の重量割合は、50%以上である吸水処理材。
【請求項3】
請求項2に記載の吸水処理材において、
前記各粒状体に占める前記米粉の重量割合は、80%以上である吸水処理材。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の吸水処理材において、
前記各粒状体は、粒状の芯部と、前記芯部を覆う被覆部とを有する吸水処理材。
【請求項5】
請求項4に記載の吸水処理材において、
前記米粉は、前記芯部及び前記被覆部の双方に含有されている吸水処理材。
【請求項6】
請求項4に記載の吸水処理材において、
前記米粉は、前記芯部及び前記被覆部のうち前記芯部にのみ含有されている吸水処理材。
【請求項7】
請求項1乃至3の何れかに記載の吸水処理材において、
前記各粒状体は、被覆されていない造粒物からなる吸水処理材。
【請求項8】
請求項7に記載の吸水処理材において、
前記各粒状体は、実質的に前記米粉のみからなる吸水処理材。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載の吸水処理材において、
前記各粒状体は、食品材料のみからなる吸水処理材。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れかに記載の吸水処理材において、
前記各粒状体は、有機物のみからなる吸水処理材。
【請求項11】
吸水性を有する複数の粒状体を形成する粒状体形成工程を含み、
前記粒状体形成工程においては、前記各粒状体が米粉を主材料とするように、前記複数の粒状体を形成することを特徴とする吸水処理材の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の吸水処理材の製造方法において、
前記粒状体形成工程においては、前記各粒状体に占める前記米粉の重量割合が50%以上となるように、前記複数の粒状体を形成する吸水処理材の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の吸水処理材の製造方法において、
前記粒状体形成工程においては、前記各粒状体に占める前記米粉の重量割合が80%以上となるように、前記複数の粒状体を形成する吸水処理材の製造方法。
【請求項14】
請求項11乃至13の何れかに記載の吸水処理材の製造方法において、
前記粒状体形成工程は、粒状の複数の芯部を形成する芯部形成工程と、前記各芯部を覆うように被覆部を形成する被覆部形成工程とを含む吸水処理材の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の吸水処理材の製造方法において、
前記芯部形成工程においては、前記米粉を含有する前記芯部を形成し、
前記被覆部形成工程においては、前記米粉を含有する前記被覆部を形成する吸水処理材の製造方法。
【請求項16】
請求項14に記載の吸水処理材の製造方法において、
前記芯部形成工程においては、前記米粉を含有する前記芯部を形成し、
前記被覆部形成工程においては、前記米粉を含有しない前記被覆部を形成する吸水処理材の製造方法。
【請求項17】
請求項11乃至13の何れかに記載の吸水処理材の製造方法において、
前記粒状体形成工程においては、前記各粒状体が被覆されていない造粒物からなるように、前記複数の粒状体を形成する吸水処理材の製造方法。
【請求項18】
請求項17に記載の吸水処理材の製造方法において、
前記粒状体形成工程においては、前記各粒状体が実質的に前記米粉のみからなるように、前記複数の粒状体を形成する吸水処理材の製造方法。
【請求項19】
請求項11乃至18の何れかに記載の吸水処理材の製造方法において、
前記粒状体形成工程においては、前記各粒状体が食品材料のみからなるように、前記複数の粒状体を形成する吸水処理材の製造方法。
【請求項20】
請求項11乃至19の何れかに記載の吸水処理材の製造方法において、
前記粒状体形成工程においては、前記各粒状体が有機物のみからなるように、前記複数の粒状体を形成する吸水処理材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吸収する吸水処理材、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の吸水処理材としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。同文献に記載された吸水処理材は、吸水性を有する多数の粒状体からなる動物用の排泄物処理材である。各粒状体は、乾燥竹材を粉砕した竹粉砕片及びベントナイトを主原料としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の吸水処理材は、通常、多数の粒状体が箱型のトイレに敷設された状態で使用される。しかしながら、動物が、トイレに敷設されている粒状体を誤って食べてしまうことがある。このことは、動物の健康を損なう要因となる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、誤食時の安全性が高い吸水処理材、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による吸水処理材は、吸水性を有する複数の粒状体を備え、上記各粒状体は、米粉を主材料とすることを特徴とする。
【0007】
この吸水処理材においては、米粉を主材料とする粒状体が設けられている。ここで、主材料とは、各粒状体を構成する1又は2以上の材料のうち、当該粒状体に占める重量割合が最大のものをいう。このように食品材料である米粉を主材料とすることにより、動物が粒状体を誤食した場合であっても、動物の健康被害を小さく抑えることができる。
【0008】
また、本発明による吸水処理材の製造方法は、吸水性を有する複数の粒状体を形成する粒状体形成工程を含み、上記粒状体形成工程においては、上記各粒状体が米粉を主材料とするように、上記複数の粒状体を形成することを特徴とする。
【0009】
この製造方法においては、米粉を主材料とする粒状体が形成される。このように食品材料である米粉を主材料とすることにより、製造後の吸水処理材においては、動物が粒状体を誤食した場合であっても、動物の健康被害を小さく抑えることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、誤食時の安全性が高い吸水処理材、及びその製造方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明による吸水処理材の一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明による吸水処理材の一実施形態を示す模式図である。吸水処理材1は、処理対象となる液体を吸収する吸水処理材であって、複数の粒状体10を備えている。各粒状体10の粒径は、例えば、5mm以上20mm以下である。ここで、粒径は、各粒状体10を内包しうる最小の球の直径として定義される。本実施形態において吸水処理材1は、猫や犬等の動物の排泄物(主に尿)を吸収する排泄物処理材である。吸水処理材1は、例えば、複数の粒状体10が箱型のトイレに敷設された状態で使用される。
【0014】
各粒状体10は、吸水性を有している。粒状体10が吸水性を有するというには、次の試験により測定される吸水率が40%以上であることが必要である。まず、内径10cm、目開き1mmの篩に50g相当の粒状体10(サンプル)を入れる。篩の下には、空のビーカーを設置する。そして、サンプルに対し、外筒の内径3cm、筒先の内径4mmのシリンジ(テルモ社製60mlシリンジ)を用いて、30mlの水を10秒かけて滴下する。1分間放置した後、ビーカー内の水量を計測する。滴下した水量(30ml)から計測された水量を引いた値の、滴下した水量に対する割合をもって吸水率とする。すなわち、ビーカー内の水量が18ml以下であれば、吸水率が40%以上となるため、粒状体10が吸水性を有するといえる。
【0015】
各粒状体10は、米粉を主材料としている。すなわち、各粒状体10を構成する材料の中で、米粉の重量割合が最大である。各粒状体10に占める米粉の重量割合は、50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。米粉は、アルファ型であってもよいし、ベータ型であってもよい。また、各粒状体10は、2種類以上の米粉を含有していてもよい。その場合、「米粉の重量割合」は、各粒状体10に含有された全ての米粉の重量割合の合計に等しい。
【0016】
各粒状体10は、食品材料のみからなることが好ましい。すなわち、粒状体10を構成する米粉以外の材料も、全て食品材料であることが好ましい。食品材料には、着色料等の食品添加物も含むものとする。また、各粒状体10は、有機物のみからなることが好ましい。
【0017】
図2は、粒状体10を示す模式図である。各粒状体10は、芯部12(造粒物)、及び被覆部14を有している。芯部12は、粒状をしている。かかる粒状の形状としては、例えば、球、円柱、及び楕円体が挙げられる。芯部12は、液体を吸水及び保水する機能を有している。芯部12は、米粉を含有している。芯部12の主材料は、米粉である。ここで、芯部12の主材料とは、芯部12を構成する1又は2以上の材料(芯部材料)のうち、芯部12に占める重量割合が最大のものをいう。芯部12は、米粉以外の吸水性材料を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。米粉以外の吸水性材料としては、例えば、紙類、茶殻、プラスチック類、及びオカラが挙げられる。これらの材料のうちオカラは、食品材料に該当する。一方、紙類、茶殻及びプラスチック類は、食品材料に該当しない。
【0018】
紙類は、パルプを主体とする材料をいう。紙類としては、例えば、通常の紙の他にも、塩ビ壁紙分級物(塩ビ壁紙を分級することにより得られる紙)、フラッフパルプ、製紙スラッジ、及びパルプスラッジが挙げられる。プラスチック類としては、例えば、紙おむつ分級物(紙おむつを分級することにより得られるプラスチック)を用いてもよい。オカラは、乾燥オカラであることが好ましい。
【0019】
被覆部14は、芯部12を覆っている。被覆部14は、芯部12の表面の全体を覆っていてもよいし、芯部12の表面の一部のみを覆っていてもよい。被覆部14は、使用時に液体を吸収した粒状体10どうしを接着させて固まりにする機能(固まり形成機能)を有している。被覆部14は、米粉を含有している。被覆部14の主材料は、米粉である。ここで、被覆部14の主材料とは、被覆部14を構成する1又は2以上の材料(被覆材料)のうち、被覆部14に占める重量割合が最大のものをいう。被覆部14は、米粉以外の吸水性材料を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。
【0020】
被覆部14は、接着性材料を含有している。接着性材料としては、例えば、澱粉、CMC(カルボキシメチルセルロース)、PVA(ポリビニルアルコール)、デキストリン、及び吸水性ポリマーが挙げられる。吸水性ポリマーは、例えばポリアクリル酸ナトリウムである。これらの材料のうち澱粉、CMC、PVA及びデキストリンは、食品材料に該当する。一方、吸水性ポリマーは、食品材料に該当しない。
【0021】
続いて、本発明による吸水処理材の製造方法の一実施形態として、吸水処理材1の製造方法の一例を説明する。この製造方法は、粒状体形成工程を含んでいる。
【0022】
粒状体形成工程は、複数の粒状体10を形成する工程である。粒状体形成工程は、芯部形成工程、及び被覆部形成工程を含んでいる。芯部形成工程は、複数の芯部12を形成する工程である。芯部形成工程においては、造粒装置を用いて芯部材料を造粒することにより、造粒物である複数の芯部12を形成する。造粒装置としては、例えば押出造粒機を用いることができる。造粒に先立って、芯部材料には、粉砕、混練、加水等の前処理が必要に応じて行われる。本実施形態においては、芯部材料に米粉が主材料として含まれており、米粉を主材料とする芯部12が形成される。
【0023】
被覆部形成工程は、被覆部14を形成する工程である。この工程においては、コーティング装置等を用いて、各芯部12の表面に粉体状の被覆材料を付着させることにより、被覆部14を形成する。被覆材料の付着は、例えば、散布又は噴霧により行うことができる。本実施形態においては、被覆材料にも米粉が主材料として含まれており、米粉を主材料とする被覆部14が形成される。その後、篩分け(分粒)、乾燥等の後処理が必要に応じて行われる。以上により、複数の粒状体10からなる吸水処理材1が得られる。
【0024】
本実施形態の効果を説明する。本実施形態においては、米粉を主材料とする粒状体10が形成される。このように食品材料である米粉を主材料とすることにより、吸水処理材1においては、動物が粒状体10を誤食した場合であっても、動物の健康被害を小さく抑えることができる。したがって、誤食時の安全性が高い吸水処理材1、及びその製造方法が実現されている。
【0025】
誤食時の安全性を高めるには、各粒状体10に占める米粉の重量割合が大きい方が有利である。かかる観点から、各粒状体10に占める米粉の重量割合は、50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
【0026】
各粒状体10は、芯部12及び被覆部14からなる複層構造(二層構造)を有している。これにより、芯部12及び被覆部14に別々の機能を担わせることができる。例えば、本実施形態の場合、吸水・保水機能を主に芯部12に担わせ、固まり形成機能を被覆部14に担わせている。
【0027】
被覆部14は、接着性材料を含有している。これにより、被覆部14に固まり形成機能を付与することができる。ただし、被覆部14に接着性材料を含有させることは、必須でない。
【0028】
米粉は、芯部12及び被覆部14の双方に含有されている。この場合、米粉が芯部12又は被覆部14の何れか一方にしか含有されていない場合に比して、各粒状体10に占める米粉の重量割合を大きく設定しやすくなる。
【0029】
各粒状体10が食品材料のみからなる場合、誤食時の安全性を特に高くすることができる。
【0030】
各粒状体10が有機物のみからなる場合、焼却処分に適した粒状体10を得ることができる。この場合、使用済みの粒状体10を可燃ゴミとして捨てることができるため、ユーザにとっての利便性が向上する。
【0031】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。上記実施形態においては、米粉が芯部12及び被覆部14の双方に含有されている場合を例示した。しかし、米粉は、芯部12又は被覆部14の何れか一方にのみ含有されてもよい。米粉が芯部12にのみ含有される場合、被覆材料の選択の自由度を高めることができる。
【0032】
上記実施形態においては、各粒状体10が、芯部12及び被覆部14からなる複層構造を有する場合を例示した。しかし、被覆部14を設けることは必須でない。すなわち、各粒状体10は、被覆されていない造粒物(芯部12)のみからなる単層構造を有していてもよい。その場合、被覆材料が不要となるため、吸水処理材1の製造コストを削減することができる。
【0033】
上記実施形態において各粒状体10は、実質的に米粉のみからなってもよい。ここで、「実質的に米粉のみからなる」とは、粒状体10の吸水性を阻害しない限り、色素、香料等の添加材料が各粒状体10に含有されていてもよいという趣旨である。その場合であっても、各粒状体10に占める添加材料の重量割合は1%以下(すなわち、米粉の重量割合が99%以上)であることが好ましい。このように各粒状体10が実質的に米粉のみからなる場合、誤食時の安全性を一層高くすることができる。
【0034】
上記実施形態においては、吸水処理材1が排泄物処理材である場合を例示した。しかし、吸水処理材1は、嘔吐物を吸収する嘔吐物処理材、又は生ゴミ(生ゴミに含まれる水分)を吸収する生ゴミ処理材であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 吸水処理材
10 粒状体
12 芯部(造粒物)
14 被覆部