(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055231
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】電動油圧式ポリップ型グラブバケット
(51)【国際特許分類】
B66C 3/02 20060101AFI20230411BHJP
【FI】
B66C3/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164383
(22)【出願日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】504005781
【氏名又は名称】株式会社日立プラントメカニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】岸本 至康
(72)【発明者】
【氏名】首藤 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】河原 康人
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004EA35
3F004PA08
3F004PB07
(57)【要約】
【課題】チップ状やペレット状に加工された粒状の取扱物を掴む際に多くの掴み量を確保し、効率よく掴むことができるとともに、掴み時の動作をスムーズにできる電動油圧式ポリップ型グラブバケットを提供すること。
【解決手段】粒状の取扱物を搬送するための幅広のシェルSLを複数備えた電動油圧式ポリップ型グラブバケットのシェルSLを構成する掻き寄せ板SPが、シェルSLの骨組みであるシェルアームSAの外側に取り付けられた構造で、かつ、シェルSLの膨らみ寸法BDをシェルSLの差し込み寸法IDの60%以上となるようにする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状の取扱物を搬送するための幅広のシェルを複数備えた電動油圧式ポリップ型グラブバケットであって、前記グラブバケットのシェルを構成する掻き寄せ板が、シェルの骨組みであるシェルアームの外側に取り付けられた構造で、かつ、シェルの膨らみ寸法をシェルの差し込み寸法の60%以上となるようにしたことを特徴とする電動油圧式ポリップ型グラブバケット。
【請求項2】
前記シェルを構成する掻き寄せ板の外側に、シェルを堆積した取扱物に差し込む方向と直交する方向に補強部材を設けるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の電動油圧式ポリップ型グラブバケット。
【請求項3】
前記シェルを構成する掻き寄せ板の外側に、シェルを堆積した取扱物に差し込む方向と平行に摩耗部材を設けるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動油圧式ポリップ型グラブバケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にチップ状やペレット状に加工された粒状の取扱物を効率よく掴むことができる電動油圧式ポリップ型グラブバケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素排出量削減の必要性に伴いバイオマス発電設備が各所で建設されるようになり、バイオマス燃料である木片チップを効率よくクレーン運搬するためのバケットクレーンが必要となり、それに用いられる木片チップ等のチップ状やペレット状に加工された粒状の取扱物を専用に取り扱うグラブバケットが求められていた。
【0003】
ところで、バイオマス発電設備と類似の運用を行う設備としてごみの焼却場があり、ごみの焼却炉ホッパ投入用クレーンのグラブバケットとして広く使用されている電動油圧式ポリップ型グラブバケットがある(例えば、特許文献1~3参照。)。
この電動油圧式ポリップ型グラブバケットは、開いた時に放射方向に大きく爪を開く形状で、この形状により、グラブバケットを着床させた時の安定性が良く、掴み動作も安定し、かつ、掴み時に広い範囲を掻き寄せることから、多くの掴み量を確保できるという特徴がある。
【0004】
本発明は、この電動油圧式ポリップ型グラブバケットの特徴を生かしつつ、チップ状やペレット状に加工された粒状の取扱物を効率よく掴むことができる電動油圧式ポリップ型グラブバケットを提供しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭60―100386号公報
【特許文献2】実開昭59―97990号公報
【特許文献3】特公昭38―4026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電動油圧式のポリップ型グラブバケットは、グラブバケットを開いた時の容積が大きいことが特徴で、汎用の電動油圧式のポリップ型グラブバケットでは、閉じた時の掴み容積に対して開いた時の容積が約3倍程度の容積になり、広い範囲の取扱物を圧縮しながらシェルの中に大量に抱え込むことができる。
しかしながら、木片チップ等の圧縮されない取扱物をポリップ型グラブバケットで掴もうとすると、圧縮しようとする動きが抵抗になり、掴み途中で止まってしまい、取扱物を零れ落としながら掴む必要があった。
【0007】
さらに、木片チップ等のチップ状やペレット状に加工された粒状の取扱物は、さらさらとした粒状であるため、ごみのように取扱物が絡み合わず、掴んだ時にシェルとシェルの間に隙間があると掴んだ取扱物が零れ落ちるためシェルとシェルの間に隙間ができない幅広の掻き寄せ板が必要であったが、幅広の掻き寄せ板は、堆積した取扱物に挿入する際の抵抗が大きく差し込み力が弱くなり、また、掻き寄せ板を広くしたことによる強度上の問題もあった。
【0008】
本発明は、これらの問題点に鑑み、チップ状やペレット状に加工された粒状の取扱物を掴む際に多くの掴み量を確保し、効率よく掴むことができるとともに、掴み時の動作をス
ムーズにできる電動油圧式ポリップ型グラブバケットを提供することを第1の目的とする。
【0009】
また、本発明は、掻き寄せ板を堆積した取扱物に差し込む時の抵抗を軽減するとともに、幅広の掻き寄せ板の強度を確保できる電動油圧式ポリップ型グラブバケットを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記第1の目的を達成するため、本発明の電動油圧式ポリップ型グラブバケットは、粒状の取扱物を搬送するための幅広のシェルを複数備えた電動油圧式ポリップ型グラブバケットであって、前記グラブバケットのシェルを構成する掻き寄せ板が、シェルの骨組みであるシェルアームの外側に取り付けられた構造で、かつ、シェルの膨らみ寸法をシェルの差し込み寸法の60%以上となるようにしたことを特徴とする。
このように、シェルの差し込み寸法に対する膨らみ寸法を大きく取ることで、開いた状態の容積に対する閉じた状態のシェル内の容積を約2倍程度以下になるようにし、かつ、掻き寄せ板をシェルアームの内側でなく外側に取り付け、閉じた状態のシェル内の容積を大きくした。
これにより、掴み途中に停止してしまう現象を緩和し、円滑な掴み動作を行い、多くの掴み量を確保できる。
【0011】
また、上記第2の目的を達成するため、本発明の電動油圧式ポリップ型グラブバケットは、前記シェルを構成する掻き寄せ板の外側に、シェルを堆積した取扱物に差し込む方向と直交する方向に補強部材を設けるようにしたことを特徴とする。
掴んだ取扱物がシェルとシェルとの間の隙間から零れ落ちるのを防ぐために採用された幅広の掻き寄せ板の外側に、堆積した取扱物に刺し込む方向と直交する方向に補強部材を設け、この補強部材により掻き寄せ板と堆積した取扱物の密着状態を剥す役割を持たせることで幅広の掻き寄せ板を堆積した取扱物に差し込む時の抵抗を軽減するとともに、幅広の掻き寄せ板の強度を確保できる。
【0012】
この場合において、前記シェルを構成する掻き寄せ板の外側に、シェルを堆積した取扱物に差し込む方向と平行に摩耗部材を設けるようにすることができる。
この摩耗部材は、壁体の近くを掴む場合や床面上の堆積物の堆積量が少ない部分を掴む時に、摩耗部材が壁や床面を擦ることで、摩耗部材を摩耗させ、掻き寄せ板が壁や床面を擦って摩耗することを防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電動油圧式ポリップ型グラブバケットによれば、木片チップ等のチップ状やペレット状に加工された粒状の取扱物に対し、多くの掴み量と円滑な動作が得られ、取扱物の搬送効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の電動油圧式ポリップ型グラブバケットの外観図である。
【
図2】汎用の電動油圧式ポリップ型グラブバケットの外観図である。
【
図3】汎用の電動油圧式ポリップ型グラブバケットの掴み容積の説明図である。
【
図4】本発明の電動油圧式ポリップ型グラブバケットの掴み容積の説明図である。
【
図5】本発明の電動油圧式ポリップ型グラブバケットのシェルの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の電動油圧式ポリップ型グラブバケットについて、図面を用いて実施例に基づいて説明する。
【0016】
図1に、本発明の電動油圧式ポリップ型グラブバケットの一実施例を示す。
この電動油圧式ポリップ型グラブバケットは、木片チップ等のチップ状やペレット状に加工された粒状の取扱物を効率よく掴むようにシェルSLの形状を工夫している。
これに対して、
図2は、ごみ等を掴むのに使われている汎用の電動油圧式ポリップ型グラブバケットである。
【0017】
図1の電動油圧式ポリップ型グラブバケット及び
図2の汎用の電動油圧式ポリップ型グラブバケットは共に、胴TKの部分から複数のシェルSLが取り付けられ、各シェルSLには一対の油圧シリンダOCが取り付けられ、胴TKの内部に収納された油圧ユニットにより油圧シリンダOCを動作させ、シェルSLが開閉操作される。
シェルSLは、通常は4枚から6枚又はそれ以上の枚数が取り付けられ、グラブバケットの容積が多くなるにつれてシェルSLの枚数を増やす。
シェルSLを全開すると、シェルSLが放射方向に大きく開くのが電動油圧式ポリップ型グラブバケットの特徴で、その大きく開いた形状からグラブバケットを開いて着床する時に安定していて、放射方向の広い範囲から取扱物を描き集めてきて多くの取扱物をシェル内部に収納して掴むのが電動油圧式ポリップ型グラブバケットに共通の特徴である。
【0018】
図1の本発明の電動油圧式ポリップ型グラブバケットは、掴んだ粒状の取扱物を落とさないように掴んだ時のシェルSL同士の間に隙間を無くした構造になっており、幅広の掻き寄せ板SPを用いている。
図2の汎用の電動油圧式ポリップ型グラブバケットは、ごみ等の取扱物を対象にしており、開いた時にシェルが槍状の形状になり、ごみ等の取扱物に良く刺さり、掴んだ時にはシェルSL同士の隙間があるが、掴んだ取扱物が互いに絡み合い圧縮されてシェルSLの中に収まり、シェルSL同士の隙間から零れ落ちることなく、大量の取扱物を掴むことができる。
【0019】
図3(1)に汎用の電動油圧式ポリップ型グラブバケットを開いている状態を示す。
各シェルSLの先端には硬質金属で作られた爪TAが取り付けられ、取扱物の上に槍形状の尖った複数のシェルSLを突き刺すことで、胴TKの下面が堆積した取扱物の上面に着床する。
この時、堆積した取扱物の中にシェルSLが差し込み寸法IDだけ差し込まれる。
これにより、シェルSLの中に切り取り容積CCの容積の取扱物が収まり、油圧シリンダOCを伸張させてシェルアームSAを押し込み、シェルSLを閉じていく。
シェルSLは、骨組みとなるシェルアームSAの内側に掻き寄せ板SPが張設され、シェルアームSAとシェルアームSAから横に張り出した補強部材RPが掻き寄せ板SPを後方から支持しながら、掻き寄せ板SPで取扱物を掻き集める。
【0020】
図3(2)に汎用の電動油圧式ポリップ型グラブバケットを閉じている状態を示す。
この時のシェルSLで抱え込んでいる取扱物の容積が掴み容積GCである。
図3(1)に示す切り取り容積CCが、掴み容積GCに対して約3倍もの容積になるのが、汎用の電動油圧式ポリップ型グラブバケットの特徴で、多くの容積の取扱物を圧縮しながらシェルSL内に収容し掴むことができる。ここで、シェルSL内に圧縮収容しきれない取扱物は、シェルSL間の隙間から適度に排出され、掴み過ぎて掴み動作途中で動作が停止してしまうことを抑制し、円滑な掴みが得られる。
【0021】
これに対して、本発明の電動油圧式ポリップ型グラブバケットは、閉じた状態で取扱物が零れ落ちることがないように設けられた幅の広いシェルSLを、
図4(1)状態で、堆積した取扱物に差し込むことで、胴TKの下面が堆積した取扱物の上面に着床する。
この時、堆積した取扱物の中にシェルSLが差し込み寸法IDだけ差し込まれる。
これにより、シェルSLの中に切り取り容積CCの容積の取扱物が収まり、油圧シリンダOCを伸張させてシェルアームSAを押し込み、シェルSLを閉じていく。
この状態から
図4(2)の閉じた状態に移行する際に、幅広の掻き寄せ板SPが木質チップ等の粒状の取扱物をシェルSLを閉じて内部に抱え込もうとするが、木質チップ等の粒状の取扱物が圧縮をしないことと、幅広のシェルSLの間の隙間が少なく、掴みきれない取扱物を排出し難い構造であることから、これが抵抗となる。この抵抗により、汎用の電動油圧式ポリップ型グラブバケットの掻き寄せ板SPを単純に幅広にしただけのグラブバケットで掴むと、シェルアームSAを押し込む油圧シリンダOCが、その抵抗を押し切れず途中で停止してしまい、円滑な掴みができない。
【0022】
このため、シェルSLの差し込み寸法IDに対する膨らみ寸法BDの比を、汎用の電動油圧式ポリップ型グラブバケットが、1:0.4程度であるのに対し、本発明の電動油圧式ポリップ型グラブバケットでは、1:0.6以上とし、大きく膨らませたシェルSL構造としている。
また、汎用の電動油圧式ポリップ型グラブバケットが、シェルアームSAの内側に掻き寄せ板SPを張設しているのに対し、本発明の電動油圧式ポリップ型グラブバケットでは、シェルアームSAの外側に掻き寄せ板SPを張設している。
このシェルSLの膨らみ寸法を大きく膨らますことと、掻き寄せ板SPをシェルアームSAの外側に取り付けることで、切り取り容積CCに対する掴み容積GCの比を、汎用の電動油圧式ポリップ型グラブバケットが、約3:1であるのに対し、本発明の電動油圧式ポリップ型グラブバケットは、約2:1に抑えている。
これにより、開いた状態から閉じた状態に移行する時の取扱物を圧縮しようとする力を緩和し、掴み動作の途中で、動作が停止する現象が生じることを防止し、円滑に掴み動作を行うとともに、多くの粒状の取扱物を掴むことができる。
【0023】
図5(1)は、本発明の電動油圧式ポリップ型グラブバケットの幅広のシェルSLを、掴み側である内側から見た図で、
図5(2)は側面から、
図5(3)は掴み側の反対側の外側から見た図である。
本発明の電動油圧式ポリップ型グラブバケットの幅広のシェルSLの掻き寄せ板SPの補強を行うのに当たり、
図5(1)に示すように、掻き寄せ板SPの内側に補強部材を取り付けると、掴んだ取扱物を開放する時に補強部材RPが引っ掛かりとなり円滑に落下しない。
このため、
図5(3)に示すように、掻き寄せ板SPの外側に、シェルSLの差し込む方向と直交する方向に補強部材RPを設けるようにしている。
補強部材RPには、本実施例においては、等辺山形鋼を用い、掻き寄せ板SPの2箇所に、掻き寄せ板SPの全幅に亘って設けるようにしている。
この補強部材RPは、幅広のシェルSLを堆積した取扱物に差し込む時、取扱物と掻き寄せ板SPとの密着状態を剥し、取扱物と掻き寄せ板SPとの摩擦抵抗を軽減するものであり、本発明の電動油圧式ポリップ型グラブバケットを開いて堆積した取扱物に刺し込む時の動作を円滑にし、かつ、幅広の掻き寄せ板SPの強度を確保している。
【0024】
また、
図5(3)に示すように、掻き寄せ板SPの外側に、シェルSLの差し込む方向と平行に摩耗部材ARを設けるようにしている。
摩耗部材ARには、本実施例においては、丸鋼等の棒鋼を溶接して取り付けるようにしているが、この摩耗部材ARが経年使用で摩耗してくると、摩耗部材ARの部分に肉盛り溶接補修を行い厚みを増すことで、継続して使用し続けることができる。
この摩耗部材ARは、壁体の近くを掴む場合や床面上の堆積物の堆積量が少ない部分を掴む時に、摩耗部材ARが壁や床面を擦ることで、摩耗部材ARを摩耗させ、掻き寄せ板SPが壁や床面を擦って摩耗することを防止することができる。
【0025】
以上、本発明の電動油圧式ポリップ型グラブバケットについて、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の電動油圧式ポリップ型グラブバケットは、チップ状やペレット状に加工された粒状の取扱物を掴む際に多くの掴み量を確保し、効率よく掴むことができるとともに、掴み時の動作をスムーズにできることから、二酸化炭素排出量削減で建設が盛んなバイオマス発電の燃料である木片チップのクレーン搬送に最適なグラブバケットとして産業上有効に活用されるほか、チップ状やペレット状に加工された粒状の取扱物のクレーン搬送の用途に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0027】
TK 胴
OC 油圧シリンダ
SL シェル
SA シェルアーム
SP 掻き寄せ板
TA 爪
RP 補強部材
AR 摩耗部材
CC 切り取り容積
GC 掴み容積
ID 差し込み寸法
BD 膨らみ寸法