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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005525
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】圧接端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/2452 20180101AFI20230111BHJP
【FI】
H01R4/2452
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107509
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小西 雄一
【テーマコード(参考)】
5E012
【Fターム(参考)】
5E012AA08
(57)【要約】
【課題】電線の上方向の抜け出しが規制され一枚の金属板から形成できる圧接端子
【解決手段】
導体部が絶縁材で覆われた電線Wを接続する圧接端子1であって導体部に接続する圧接部10と電線Wの反圧接方向の移動を抑制する電線保持部50とを備える。圧接部10と電線保持部50とが導電性の連続した打ち抜き材から成形される。圧接端子1は底壁20を備えた箱体状で前後方向に沿って圧接部10と電線保持部50とが備わる。圧接部10は底壁20の前端及び後端の延長上に備わり、電線保持部50は底壁20の左端及び右端の延長上の一対の側壁30の一片から成る。

【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体部が絶縁材で覆われた電線を接続する圧接端子であって、
前記圧接端子は前記導体部に接続する圧接部と前記電線の反圧接方向の移動を抑制する電線保持部とを備え、前記圧接部と前記電線保持部とが導電性の連続した打ち抜き材から成形されるところに特徴を有する圧延端子。
【請求項2】
請求項1に記載の圧接端子は底壁を備えた箱体状で、前記電線が延びる前後方向に沿って前記圧接部と前記電線保持部とが備わるところに特徴を有する圧接端子。
【請求項3】
請求項2に記載の圧接部は前記底壁の前記前端又は前記後端のうち少なくとも一端の延長上に備わり、請求項2に記載の電線保持部は前記底壁の前記左端及び前記右端の延長上の一対の側壁の一片から成るところに特徴を有する圧接端子。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の圧接端子は上面にカバーが備わり、前記カバーは裏面に前記電線を押さえる電線押え部を複数個所備えるところに特徴を有する圧接端子。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の圧接端子は前記圧接部及び前記電線保持部を2個ずつ備えるところに特徴を有する圧接端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電線に接続する圧接端子に関する。
【0002】
導体部の周面が非導電性の被覆材で覆われた電線に対して、電線の接続部近傍の押圧だけで導電性の接続具に電気的機械的に接続できる圧接端子が広く知られている。たとえば特許文献1に記載の圧接端子は、圧接板と土台部とから成る一対の圧接ユニットで構成され、中央部に備わる連結部で繋がるものである。圧接板は2枚の圧接刃が向き合う姿勢で備わり中央部にU字状の圧接スロットが形成されている。圧接スロットの上端はテーパー状で押圧前の半円弧状の電線下部を安定的に受け止めている。電線は押圧されてU字状部を下方に沈み込み、その過程で電線の被覆部は両側面に位置する圧接刃に当接し切開される。圧接刃の一部は被覆部を通過して導体部に食い込む。このようにして安定した接続状態が確保されるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-181673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、特許文献1に記載の圧接端子は電線と安定した電気的接続状態が得られるものではある。しかし、電線は圧接端子の圧接刃に側面方向から挟持された状態で圧接スロットに収まるものなので、解放状態の上方向の抜け出しを抑制する装置は備わらない。そのために、電線に圧接端子との接続を解くような、たとえば上方向の力が作用した場合には、電線は圧接端子との安定的な接続状態が維持されなくなるおそれがあるものである。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、一枚の金属板から形成できるものであって電線の上方向の抜け出しが抑制された圧接端子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る圧接端子は、(1)導体部が絶縁材で覆われた電線を接続する圧接端子であって、前記圧接端子は前記導体部に接続する圧接部と前記電線の反圧接方向の移動を抑制する電線保持部とを備え、前記圧接部と前記電線保持部とが導電性の連続した打ち抜き材から成形されるところに特徴を有するものである。
【0007】
この発明によれば、圧接端子は電線の導体部に接続する圧接部と、電線の上方向の抜け出しを抑制する電線保持部とを備え、圧接部と電線保持部とは一枚の打ち抜き材から形成されるものである。これにより、電線の上方向の抜け出しが抑制されるものであって一枚の金属板から形成できる圧接端子が得られる。
【0008】
好ましくは、本発明に係る圧接端子は、(2)底壁を備えた箱体状で前記電線が延びる前後方向に沿って前記圧接部と前記電線保持部とが備わるところに特徴を有するものである。
【0009】
この発明によれば、圧接部と電線保持部とが直線上に備わり外形が箱体状の圧接端子が得られる。
【0010】
好ましくは、本発明に係る圧接端子は、(3)上記(2)に記載の圧接部は前記底壁の前記前端又は前記後端のうち少なくとも一端の延長上に備わり、上記(2)に記載の電線保持部は前記底壁の前記左端及び前記右端の延長上の一対の側壁の一片から成るところに特徴を有するものである。
【0011】
この発明によれば、矩形状の底壁を中央にして一方の対向する一対の辺のうち少なくとも一辺には圧接部が備わり、他方の対向する一対の辺には電線保持部が備わるので、生産部門における材料歩留まりが良好な圧接端子が得られる。
【0012】
好ましくは、本発明に係る圧接端子は、(4)上面にカバーが備わり、前記カバーは裏面に前記電線を押さえる電線押え部を複数個所備えるところに特徴を有するものである。
【0013】
この発明によれば、電線の抜け出しを抑制するカバーが備わる圧接端子が得られる。
【0014】
好ましくは、本発明に係る圧接端子は、(5)前記圧接部及び前記電線保持部を2個づつ備えるところに特徴を有するものである。
【0015】
この発明によれば、矩形状の底壁を中央にして一方の対向する一対の辺には圧接部が備わり、他方の対向する一対の辺には電線保持部が備わるので、材料歩留まりが良好な圧接端子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態に係る圧接端子であって、(1)は外観斜視図、(2)は平面図である。
図2図2は、同圧接端子に電線が圧接された状態を示す外観斜視図である。
図3図3は、同圧接端子に電線が圧接される工程であって、(1)は圧接金型が電線を圧接する状態を示す斜視図、(2)は圧接金型の要部断面図である。
図4図4は、同圧接端子と電線が圧接された圧接端子に被せられるカバーであって、(1)は分離された状態の外観斜視図、(2)はカバーの要部断面図である。
図5図5は、本発明に係る第2実施形態であって圧接部が一方にのみ備わる圧接端子の外観斜視図である。
図6図6は、本発明に係る第3実施形態であって電線保持部が一方にのみ備わる圧接端子の外観斜視図である。
図7図7は、本発明に係る第4実施形態であって電線保持部が圧接部の内側に備わる圧接端子の外観斜視図である。
図8図8は、本発明に係る第5実施形態であって2個の圧接端子を同時に覆うカバーの外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係るコネクタを図面に従って説明する。図1は、本発明の実施形態に係る圧接端子であって、(1)は外観斜視図、(2)は平面図である。図2は、同圧接端子に電線が圧接された状態を示す外観斜視図である。図3は、同圧接端子に電線が圧接される工程であって、(1)は圧接金型が電線を圧接する状態を示す斜視図、(2)は圧接金型の要部断面図である。図4は、同圧接端子と電線が圧接された圧接端子に被せられるカバーであって、(1)は分離された状態の外観斜視図、(2)はカバーの要部断面図である。なお、本発明の技術的範囲は本実施形態に限定的に解釈されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の変更は種々行ない得るものである。
【0018】
本実施形態に係る圧接端子1は、図1に示されるように、底壁20を備えた箱体状で前後方向に沿って電線Wと電気的機械的に接続する圧接部10と、電線Wの上抜けを抑止する電線保持部50とを備える。また左右側面には左右の側壁30、30が備わる。
【0019】
圧接端子1は、導電性で金属の圧延材料からなる。圧延材料は所定の大きさで供給され圧接端子1の展開形状に切り出された切り出し片から曲げ加工等によって最終的な製品形状が得られる。圧接端子1は、小型化が望まれるとともに生産面からは材料歩留まりの向上が望まれるものである。本実施形態の圧接端子1はこれらの課題を考慮し考案されたものである。
【0020】
圧接端子1は、図1に示されるように、矩形状の底壁20の前端及び後端からは垂直上方向に一対の圧接部10、10が延びていて、底壁20の左端及び右端からは垂直上方向に一対の側壁30、30が延びている。側壁30は、正面視T字状で上半部は下半部に比べて幅広である。また、側壁30の上半部は、前端部及び後端部共に内向きに延ばされて前面及び後面で電線保持部50の一部を構成する保持片51となる。保持片51の先端部は上面が斜めにカットされたテーパー状であり、左側壁30の延長部から成る保持片51と右側壁30の延長部から成る保持片51とが対峙する前面及び後面上方部にV字状の電線受け部52が形成される。
【0021】
電線保持部50は、図1に示されるように、保持片51が左右方向から等しく中央に向かって延びていて先端に近づくほどに隙間を狭くしている。一対の保持片51、51で形成される隙間の最も狭いところは、負荷が加わらない通常状態の電線Wの外形よりは小さいものではあるが、圧接時に加わる力に応じて変形する電線被覆部の最も狭まった幅寸法に比べては大きいものである。このように調整された隙間を備えた電線保持部50は、安定的に圧接状態の電線Wを保持することができる。
【0022】
電線保持部50は、図2に示されるように、下面に備わる電線保持面53で電線Wの上抜けを抑制し電線Wを圧接位置で保持する。
【0023】
電線保持部50は、図1図2に示されるように、左右側壁30、30の前後方向に沿って延びる保持片51が内向きに90度曲げられた、一組の曲げ起こし片から成る。電線保持部50は、正面視V字状で押圧前の電線Wが安定的にV字状の電線受け部52で保持される。電線受け部52の左右方向の中心と、圧接部10の圧接スロット12の左右方向の中心とは一致している。
【0024】
圧接部10は、図1に示されるように、底壁20の前後方向に延びた延長部の切り起こし片である。圧接部10は、左右方向の中央部に下方向に切り開かれた圧接スロット12を備えている。圧接スロット12は、電線Wの導体部を受ける部分であって下端はU字状で閉じている。上端は開口しており、間口には誘いの曲面が形成されている。圧接スロット12の両サイドは、圧接刃11が迫りほぼ平行状態である。
【0025】
圧接部10には、図2に示されるように、電線Wが圧接される。電線Wは、圧接スロット12の上端の位置から押し下げられて下端の圧接位置に収まる。圧接状態で電線Wの中央部の導体部は、圧接部10の圧接刃11に接続する。圧接刃11が導体部の一部に食い込み両者の界面では金属学的な接続状態が形成される。電線Wの押し込み過程で導体部の周囲の被覆部は、圧接刃11により切開される。被覆材は導体部と圧接刃11との接続には影響を及ぼさない。
【0026】
圧接部10は、図1、図に示されるように、圧接端子1の前後に離間して一対備わる。また、電線保持部50も圧接部10の外側に一対備わる。圧接スロット12と電線保持部50の隙間とは、直線上に位置する。電線Wの中心線はその直線に一致する。
【0027】
<圧接過程>
圧接型60は、図3に示されるように、最も外側にある第1電線押え部62、ひとつ内側にある第2電線押え部61及び中央にある電線保持部63からなる。第1電線押え部62と、第2電線押え部61とは前後離間して一対ずつ備わる。そして電線保持部63は、中央に一個のみ備わる。
【0028】
電線Wの圧接工程は、図3に示されるように、開口部を上に向けて所定位置に電線Wがセットされた状態の圧接端子1に対しておこなわれる。圧接型60は、上方から降ろされて電線Wの一部に接触する。電線Wは、被覆部を変形させながら圧接型60の降下に応じて沈んでいく。
【0029】
第1電線押え部62と、第2電線押え部61とは、ほぼ同時に電線Wに接触する。圧接型60の降下に応じて、第1電線押え部62と、第2電線押え部61とは、電線Wを下方に沈める。第1電線押え部62と、第2電線押え部61との間に位置する電線Wは、外形を変形させて電線保持部50の隙間を通過する。これとほぼ同時に第2電線押え部61の内側に位置する電線Wは、圧接スロット12を下方に移動する。電線Wが圧接スロット12を下方に移動する過程で圧接刃11は、左右両側面から電線Wの被覆部を貫通して内部の導体部に接続する。圧接刃11は導体部に食い込むように接続する。圧接型60の最降下位置で電線Wは、下面を圧接端子1の底壁20に接触させて圧接位置に達する。このとき、電線Wの導体部は、圧接スロット12のU字状の底面に当接する。また、電線保持部50の電線保持面53には、電線W上面の被覆部が当接する。また、圧接型60の中央部に備わる電線保持部63は、前後一対備わる圧接部10、10の間に位置し、電線Wの浮き上がりを抑制する。
【0030】
<カバー>
圧接端子1は、図4に示されるように、蓋状のカバー70が装着されてもよい。カバー70が装着されることで圧接端子1から電線Wが上抜けする事態が一層抑制される。カバー70は、蓋状で内側に電線押え部71、72と、電線保持部73とを備える。電線押え部は、第1電線押え部72と、第2電線押え部71とからなり、夫々前後離間して一対備わる。電線保持部73は、中央部に一個備わる。第1電線押え部72と、第2電線押え部71とは、協働して電線保持部50の下方で保持された電線Wを上抜けしないように保持する。また、電線保持部73は、前後離間して備わり、圧接部10、10の間に位置する電線の浮き上がりを抑制する。
【0031】
<効果>
・圧接部10の外側に電線保持部50が備わるので電線Wの上抜けが抑制された圧接端子1が得られる。
・圧接部10と、電線保持部50とが一体的に形成されるので、小型低背化に有利な圧接端子1が得られる。
・矩形状の底壁20の4辺の対向位置に、一対の圧接部10、10と、一対の電線保持部50、50とが形成されるので、材料歩留まりの優れた圧接端子1が得られる。
・矩形状の底壁20の4辺に一対の圧接部10、10と、一対の電線保持部50、50とが備わるので、一組の塑性金型で形成される圧接端子1が得られる。
【0032】
<第2実施形態>
図5は、本発明に係る第2実施形態であって圧接部10が一方にのみ備わる圧接端子1の外観斜視図である。
このように構成要素の一部を変更した場合でも概ね上述した効果は得られる。
【0033】
<第3実施形態>
図6は、本発明に係る第3実施形態であって電線保持部50が一方にのみ備わる圧接端子1の外観斜視図である。
このように構成要素の一部を変更した場合でも概ね上述した効果は得られる。
【0034】
<第4実施形態>
図7は、本発明に係る第4実施形態であって電線保持部50が圧接部10の内側に備わる圧接端子1の外観斜視図である。
このように構成要素の一部を変更した場合でも概ね上述した効果は得られる。
【0035】
<第5実施形態>
図8は、本発明に係る第5実施形態であって2個の圧接端子を同時に覆うカバー70aの外観斜視図である。
このように構成要素の一部を変更した場合でも概ね上述した効果は得られる。
【符号の説明】
【0036】
1 圧接端子
10 圧接部
11 圧接刃
12 圧接スロット
20 底壁
30 側壁
50 電線保持部
51 保持片
52 電線受け部
53 電線保持面
60 圧接型
61 第2電線押え部
62 第1電線押え部
63 電線保持部
70 カバー
700 上壁
710 側壁
71 第2電線押え部
72 第1電線押え部
73 電線保持部
W 電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8