(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055299
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】発熱体内蔵床構造、および発熱体埋設床構造工法
(51)【国際特許分類】
E04B 5/43 20060101AFI20230411BHJP
E04B 5/32 20060101ALI20230411BHJP
E04B 5/48 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
E04B5/43 Z
E04B5/32 Z
E04B5/48 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164517
(22)【出願日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】511124301
【氏名又は名称】株式会社ヒヨリジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】高野 進
(72)【発明者】
【氏名】高野 健
(57)【要約】 (修正有)
【課題】内蔵される発熱体の保護を十全に行うことのできる発熱体内蔵床構造、およびその工法を提供する。
【解決手段】発熱体内蔵床構造10は、コンクリ―トなどのセメント使用製品製の基盤部1と、基盤部1上に載置された発熱体内蔵のセメント使用製品製ブロックであるところの発熱ブロック2と、発熱ブロック2上に被覆されたセメント使用製品製の被覆部6とからなる構成であり、基盤部1および被覆部6によって発熱ブロック2が埋め込まれた状態が形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント使用製品製の基盤部と、該基盤部上に載置された発熱体内蔵のセメント使用製品製ブロックであるところの発熱ブロックと、該発熱ブロック上に被覆されたセメント使用製品製の被覆部とからなることを特徴とする、発熱体内蔵床構造。
【請求項2】
前記発熱ブロックは前記基盤部および被覆部によって埋め込まれた状態となっていることを特徴とする、請求項1に記載の発熱体内蔵床構造。
【請求項3】
前記基盤部および被覆部は、前記発熱ブロック以上の圧縮強さを備えていることを特徴とする、請求項1、2のいずれかに記載の発熱体内蔵床構造。
【請求項4】
前記被覆部の上には仕上げ材部が設けられており、該仕上げ材部よりも該被覆部の方が大きい圧縮強さを備えていることを特徴とする、請求項1、2、3のいずれかに記載の発熱体内蔵床構造。
【請求項5】
前記基盤部、前記発熱ブロック、および前記被覆部いずれもの圧縮強さが70N/mm2以上であることを特徴とする、請求項1、2、3、4のいずれかに記載の発熱体内蔵床構造。
【請求項6】
前記基盤部、前記発熱ブロック、および前記被覆部に用いられるセメント使用製品の組成は同一であることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5のいずれかに記載の発熱体内蔵床構造。
【請求項7】
前記基盤部、前記発熱ブロック、または前記被覆部の少なくともいずれかのセメント使用製品としてMUGクリート(商標登録出願中商標)が用いられることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6のいずれかに記載の発熱体内蔵床構造。
【請求項8】
発熱体内蔵のセメント使用製品製ブロックであるところの発熱ブロックが埋設された床構造を得る工法であって、
該床構造を設ける面上にセメント使用製品製の基盤部を形成するための基盤部用セメント使用製品すなわち基盤部用材を載置する基盤部用材載置過程と、
ついで該基盤部用材上に該発熱ブロックを載置する発熱ブロック載置過程と、
ついで該発熱ブロック上にセメント使用製品製の被覆部を形成するための被覆部用セメント使用製品すなわち被覆部用材を載置する被覆部用材載置過程と
を備えてなることを特徴とする、発熱体埋設床構造工法。
【請求項9】
前記基盤部用材載置過程にて載置される基盤部用材が固まらないうちに前記発熱ブロック載置過程がなされることを特徴とする、請求項8に記載の発熱体埋設床構造工法。
【請求項10】
前記被覆部用材載置過程の後に仕上げ材部を設ける仕上げ過程を備え、本床構造の完成後、該仕上げ材部よりも前記被覆部の方が大きい圧縮強さを備えていることを特徴とする、請求項8、9のいずれかに記載の発熱体埋設床構造工法。
【請求項11】
前記基盤部、前記発熱ブロック、および前記被覆部に用いられるセメント使用製品の組成は同一であることを特徴とする、請求項8、9、10のいずれかに記載の発熱体埋設床構造工法。
【請求項12】
前記基盤部、前記発熱ブロック、または前記被覆部の少なくともいずれかのセメント使用製品としてMUGクリート(商標登録出願中商標)が用いられることを特徴とする、請求項8、9、10、11のいずれかに記載の発熱体埋設床構造工法。
【請求項13】
前記基盤部または前記被覆部の少なくともいずれかにおいて、下記<A>、<B>、または<C>の少なくともいずれかに示す圧縮強さを得られることを特徴とする、請求項8、9、10、11、12のいずれかに記載の発熱体埋設床構造工法。
<A> 材齢3時間以内に25N/mm2以上
<B> 材齢24時間以内に30N/mm2以上
<C> 材齢28日以内に60N/mm2以上
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発熱体内蔵床構造、および発熱体埋設床構造工法に係り、特に、産業用冷凍冷蔵庫、食品工場、水産加工場、厨房などにおける発熱体内蔵の床構造形成技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業用冷凍冷蔵庫では設備の大型化に伴い、物品の収納効率を高めるため、搬送はフォークリフトによってなされており、使用頻度の増加とともに庫内の床面損傷が増加してくる。特に出入り口付近においては、庫内外の温度差が大きい上フォークリフトの通行頻度も高い場所であるため、損傷が激しくなり、氷結の発生することが多い。それによるフォークリフト運転中の事故、荷崩れ、人身事故や防熱扉の破損などの危険性が増大する。
【0003】
従前は、建設工事の際にフロアヒータを埋設することで対処していたところ、損傷などによりフロアヒータの交換が必要となった場合には、交換作業により長期に亘り冷凍冷蔵庫の運転を停止しなければならないという問題があった。かかる問題を解決するために出願人は、発熱体を内蔵したコンクリートブロック(コンクリートヒータ)を開発し、これを用いてフロア(床)を構成するという工法を編み出した(特公平1-14367号公報 「コンクリートヒータの製造方法」)。これによって交換時の長期運転停止という問題が解決できたのみならず、施工時間短縮、コスト低減も実現することができた。
【0004】
しかし、フロアヒーティングシステムに使用する発熱の利用効率をより高めること、また強度も高めること、さらに製造時に脱型しやすくて作業性にも優れたものとすること、という各課題があったため、その改良技術を出願人はさらに考案した(後掲特許文献1)。すなわち、発熱体を内蔵したコンクリート製のブロックにおいて、下面からの放熱を防止するために、ブロックの下面に設けられた不織布またはガラス繊維布からなる離型容易化層に塗布された断熱塗料によって断熱塗料層として形成された断熱構造を設けることを主とする考案である。
【0005】
また、地震その他の災害によって損壊した場合でも最小限の修復によって利用できる可能性を少しでも高め、被害を最小限に留めることのできる発熱体内蔵床構造をも考案した(後掲特許文献2)。すなわち、複数のコンクリート製の発熱体内蔵ブロックが敷設されて形成されており、発熱体を構成する回路が各発熱体内蔵ブロックごとに独立して設けられている構成の床構造である。また、各電線引き出し部を、変形が容易で破断しにくい柔軟構造部材を用いて形成することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3176093号公報「発熱体内蔵コンクリートブロック」
【特許文献2】実用新案登録第3176094号公報「発熱体内蔵床構造、発熱体内蔵コンクリートブロックおよびフロアヒーティングシステム」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように出願人は、発熱体内蔵床構造の改良技術を複数提供してきたが、さらに検討すべき課題はある。それは、床構造に内蔵する発熱体の保護についてである。床の施工においては、その最表面に、防カビ等を目的とする仕上げ材の層を設ける。仕上げ材層は、その上を直接フォークリフト等相当の荷重を有する物体が走行し、また重量物の載置や落下による衝撃は仕上げ材層が直接受ける。そのため、仕上げ材としては相応の強度(曲げ強さ、圧縮強さ)を備えたものが用いられる。そして通常、仕上げ材の下部構造には、仕上げ材ほどの強度は不要であるとの考えから、仕上げ材よりも強度の低い材料が施工される。
【0008】
だが、発熱体内蔵床構造においては、仕上げ材層よりも下部に発熱体が内蔵されるのであり、その保護を十全に行うためには、発熱体周囲の層には十分な強度が備えられていることが望ましい。また、下部層に相当の強度が備えられていることは、仕上げ材が荷重や衝撃によって万一損傷・破壊することがあったとしても、下部層の損傷・破壊を低減ないしは防止することにもつながる。しかし、このような床構造施工技術は未だ提供されていない現状である。
【0009】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の状況を踏まえ、内蔵される発熱体の保護を十全に行うことのできる発熱体内蔵床構造、およびその工法を提供することである。また本発明の課題は、床構造の最表面をなす仕上げ材が荷重や衝撃によって万一損傷・破壊することがあったとしても、下部層の損傷・破壊を有効に低減ないしは防止することのできる発熱体内蔵床構造、およびその工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は上記課題について検討した結果、所定のセメント使用製品を用いて発熱体内蔵のブロックすなわち発熱ブロックを製造し、床構造の形成にあたっては当該仕様等のセメント使用製品を用いて発熱ブロックを上下から保護する層を設ける工法とすることによって解決できることを見出し、これに基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0011】
〔1〕 セメント使用製品製の基盤部と、該基盤部上に載置された発熱体内蔵のセメント使用製品製ブロックであるところの発熱ブロックと、該発熱ブロック上に被覆されたセメント使用製品製の被覆部とからなることを特徴とする、発熱体内蔵床構造。
〔2〕 前記発熱ブロックは前記基盤部および被覆部によって埋め込まれた状態となっていることを特徴とする、〔1〕に記載の発熱体内蔵床構造。
〔3〕 前記基盤部および被覆部は、前記発熱ブロック以上の圧縮強さを備えていることを特徴とする、〔1〕、〔2〕のいずれかに記載の発熱体内蔵床構造。
〔4〕 前記被覆部の上には仕上げ材部が設けられており、該仕上げ材部よりも該被覆部の方が大きい圧縮強さを備えていることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕のいずれかに記載の発熱体内蔵床構造。
【0012】
〔5〕 前記基盤部、前記発熱ブロック、および前記被覆部いずれもの圧縮強さが70N/mm2以上であることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕のいずれかに記載の発熱体内蔵床構造。
〔6〕 前記基盤部、前記発熱ブロック、および前記被覆部に用いられるセメント使用製品の組成は同一であることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕のいずれかに記載の発熱体内蔵床構造。
〔7〕 前記基盤部、前記発熱ブロック、または前記被覆部の少なくともいずれかのセメント使用製品としてMUGクリート(商標登録出願中商標)が用いられることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕のいずれかに記載の発熱体内蔵床構造。
〔8〕 発熱体内蔵のセメント使用製品製ブロックであるところの発熱ブロックが埋設された床構造を得る工法であって、該床構造を設ける面上にセメント使用製品製の基盤部を形成するための基盤部用セメント使用製品すなわち基盤部用材を載置する基盤部用材載置過程と、ついで該基盤部用材上に該発熱ブロックを載置する発熱ブロック載置過程と、ついで該発熱ブロック上にセメント使用製品製の被覆部を形成するための被覆部用セメント使用製品すなわち被覆部用材を載置する被覆部用材載置過程とを備えてなることを特徴とする、発熱体埋設床構造工法。
〔9〕 前記基盤部用材載置過程にて載置される基盤部用材が固まらないうちに前記発熱ブロック載置過程がなされることを特徴とする、〔8〕に記載の発熱体埋設床構造工法。
【0013】
〔10〕 前記被覆部用材載置過程の後に仕上げ材部を設ける仕上げ過程を備え、本床構造の完成後、該仕上げ材部よりも前記被覆部の方が大きい圧縮強さを備えていることを特徴とする、〔8〕、〔9〕のいずれかに記載の発熱体埋設床構造工法。
〔11〕 前記基盤部、前記発熱ブロック、および前記被覆部に用いられるセメント使用製品の組成は同一であることを特徴とする、〔8〕、〔9〕、〔10〕のいずれかに記載の発熱体埋設床構造工法。
〔12〕 前記基盤部、前記発熱ブロック、または前記被覆部の少なくともいずれかのセメント使用製品としてMUGクリート(本願出願時に商標登録出願中商標)が用いられることを特徴とする、〔8〕、〔9〕、〔10〕、〔11〕のいずれかに記載の発熱体埋設床構造工法。
〔13〕 前記基盤部または前記被覆部の少なくともいずれかにおいて、下記<A>、<B>、または<C>の少なくともいずれかに示す圧縮強さを得られることを特徴とする、〔8〕、〔9〕、〔10〕、〔11〕、〔12〕のいずれかに記載の発熱体埋設床構造工法。
<A> 材齢3時間以内に25N/mm2以上
<B> 材齢24時間以内に30N/mm2以上
<C> 材齢28日以内に60N/mm2以上
【発明の効果】
【0014】
本発明の発熱体内蔵床構造、および発熱体埋設床構造工法は上述のように構成されるため、従来とは異なり発熱ブロックを内蔵する構造が発熱ブロックよりも低強度とはならず、したがって、床下に内蔵される発熱体の保護を十全に行うことができる。また、床構造の最表面をなす仕上げ材が荷重や衝撃によって万一損傷・破壊することがあったとしても、本発明では仕上げ材よりも下部層の方を高強度とすることができ、これにより下部層の損傷・破壊を有効に低減ないしは防止することができるため、内蔵される発熱体の保護も十全になされる。
【0015】
従来、コンクリートなどセメント使用製品を用いる構成の床構造では、その最表面をなす仕上げ材部として高強度の材質、たとえば40?50N/mm2の仕上げ材が用いられ、その下方の構造はこれよりも低強度である。つまり、仕上げ材部において上方からの衝撃を受け止め、緩和し、下方構造の破壊・損傷を防止する。したがって、耐衝撃性を越える荷重が仕上げ材部にかかった場合には、これが破壊・損傷するとともに、下部構造にも影響が及ぶ。しかし、仕上げ材部よりも被覆部の方が大きい圧縮強さを備えている構成の本発明によれば、線荷重として仕上げ材部にかかる衝撃荷重を所定の分散角で面荷重に変え、仕上げ材部が耐性を有しない荷重をも受け止めてこれを緩和し、発熱ブロックが含まれる被覆部以下の下部構造を保護することができる。
【0016】
さらに、所定のセメント使用製品を用いる構成の本発明発熱体内蔵床構造および発熱体埋設床構造工法によれば、通常であればセメント使用製品による床構造の安定化には28日程度を要するところ、ごく短期間、すなわち数日以内にも28日養生時程度の強度を得ることができる。工法各過程終了後3時間程度でも、ほぼ無収縮で、相当程度の強度が得られる。したがって、工期短縮の効果が著しい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明発熱体内蔵床構造に係る発熱ブロックの構成例について外観を示す三面図である。
【
図3】本発明発熱体内蔵床構造の基本構成を概念的に示す断面視説明図である。
【
図4】本発明発熱体内蔵床構造に係る発熱ブロックの別の構成例を示す要部の断面視説明図である。
【
図5】仕上げ材部を備えた本発明発熱体内蔵床構造の基本構成を概念的に示す断面視説明図である。
【
図6】本発明発熱体埋設床構造工法の基本構成を示すフロー図である。
【
図7】本発明発熱体埋設床構造工法の別の構成を示すフロー図である。
【
図8】本発明発熱体内蔵床構造の実施例を示す断面視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明発熱体内蔵床構造に係る発熱ブロックの構成例について外観を示す三面図である。また、
図2は
図1中X-X切断面の断面図、
図3は本発明発熱体内蔵床構造の基本構成を概念的に示す断面視説明図である。これらに示すように本発熱体内蔵床構造10は、セメント使用製品製の基盤部1と、基盤部1上に載置された発熱体内蔵のセメント使用製品製ブロックであるところの発熱ブロック2と、発熱ブロック2上に被覆されたセメント使用製品製の被覆部6とからなることを、基本的な構成とする。
図3に示すように本発熱体内蔵床構造10は、基盤部1および被覆部6によって発熱ブロック2が埋め込まれた状態が形成されている構造である。発熱ブロック2は床面の氷結防止等に有効である。
【0019】
図2に示すように本発熱体内蔵床構造10に内蔵されている発熱ブロック2は、発熱体3がセメント使用製品が硬化してなるセメント使用製品部5の中に内蔵された構造を有することを基本とし、発熱体3としては電熱ヒータを好適に用いることができる。さらに、下面からの放熱を防止するための断熱構造4を備えた構成とすることもできる。この場合、断熱構造4は、たとえばブロック2の下面に断熱塗料4bを用いて形成された構造とすることができる。さらに断熱塗料4bは、ブロック2下面に設けられた離型容易化層4aに塗布されている構成としてもよい。この場合、離型容易化層4aとしては、不織布やガラス繊維布を好適に用いることができる。
【0020】
本発明発熱体内蔵床構造10としては、施工された床における構造の態様も、また、所定寸法にて形成された床構造製品の態様も、いずれも該当する。前者は、所定の工法によって形成される構造である。一方、後者は、所定の製造方法および規格によって製造される、発熱体を内蔵した床構造を構成するための基礎製品の形をとることができる。かかる基礎製品を複数用い、現場に敷設することによって、発熱体を内蔵する所望の床の構造が形成される。
【0021】
本発熱体内蔵床構造10の基盤部1および被覆部6は、発熱ブロック2以上の圧縮強さを備えた構成とすることができる。すなわち、基盤部1および被覆部6は、発熱ブロック2と同じ圧縮強さのものとしてもよいし、発熱ブロック2よりも大きい圧縮強さとしてもよい。かかる構成により、基盤部1や被覆部6は発熱ブロック2以上の圧縮強さでもって、上方からの衝撃荷重など周囲からの衝撃を受けることができる。
【0022】
なお
図4は、本発明発熱体内蔵床構造に係る発熱ブロックの別の構成例を示す要部の断面視説明図である。図示するように発熱ブロック12は、コンクリート15cを主体として形成し、さらに一部または全体に繊維補強コンクリートまたは繊維補強モルタル15dを用いることもできる。また、発熱体13が補強構造により補強された構造とすることが望ましく、たとえば図示するように、補強筋17f
やメッシュ筋17e
等の鉄筋を好適に用いることができる。
【0023】
図5は、仕上げ材部を備えた本発明発熱体内蔵床構造の基本構成を概念的に示す断面視説明図である。図示するように本発熱体内蔵床構造210の被覆部6の上には仕上げ材部8が設けられた構成とすることができ、さらに、仕上げ材部8よりも被覆部6の方が大きい圧縮強さを備えたものとすることができる。仕上げ材は、耐摩耗作用、耐衝撃作用、防カビ作用を目的として形成されるものであり、特に、十分な耐衝撃作用を得るために、40?50N/mm
2など相当の圧縮強さないしは圧縮応力度を備えたものが用いられる。
【0024】
本発熱体内蔵床構造210では、かかる耐衝撃作用等を備えた仕上げ材部8を設けることに加え、その下部構造であるところの被覆部6や基盤部1の圧縮強さないしは圧縮応力度を仕上げ材部8よりも大きくする構成をとることができる。これにより、線荷重として仕上げ材部8にかかる衝撃荷重を、たとえば45°等の所定の分散角で面荷重に変え、仕上げ材部8が耐性を有しない荷重をも受け止めてこれを緩和し、発熱ブロック2が含まれる被覆部6以下の下部構造を有効に保護することができる。したがって、発熱ブロック2の破壊・損傷防止効果が高い。
【0025】
たとえば、上述の通り従来の仕上げ材の圧縮強さは40?50N/mm2程度であるが、本発熱体内蔵床構造210の基盤部1、発熱ブロック2、および被覆部6の圧縮強さを、いずれも仕上げ材部8を大きく越える60N/mm2以上、ないしは70N/mm2以上とすることができる。基盤部1、発熱ブロック2、および被覆部6の圧縮強さは、いずれも等しくしてもよいし、また上述のように前2者をより大きな圧縮強さのものとして形成されることとしてもよい。一方、前2者を発熱ブロック2よりも小さい圧縮強さのものとして形成されている例も、本発明からは除外されない。
【0026】
また、基盤部1、発熱ブロック2、および被覆部6に用いられるセメント使用製品は、その組成が同一のものとすることができる。同一組成のセメント使用製品をいずれの部位にも用いることで、本発熱体内蔵床構造10等の製造工程をより簡素化できる。また、これによって、基盤部1、発熱ブロック2、および被覆部6の全てを、同一の圧縮強度とすることができる。
【0027】
本発熱体内蔵床構造10等に用いるセメント使用製品としては、株式会社ヒヨリジャパン等が取り扱うMUGクリート(商標登録出願中商標)、M・U・Gクリート(商標登録出願中商標に類似する商標)(以下、「MUGクリート(商標登録出願中商標)等」)を好適に採用することができる。MUGクリート(商標登録出願中商標)等は、従来用いられてきた仕上げ材の圧縮強さを大きく越える60N/mm2以上の圧縮強さを実現できるセメント使用製品であり、しかもほとんど収縮することなくごく短期間で安定的な強度を得られるため、本発明には最適である。
【0028】
MUGクリート(商標登録出願中商標)等は、基盤部1、前記発熱ブロック2、または被覆部6のいずれか一または二に用いることとしてもよいが、これら本発明発熱体内蔵床構造10等を構成する全要素において、共通して用いることがより望ましい。つまり、基盤部1、被覆部6形成用のセメント使用製品として、および発熱ブロック2製造用のセメント使用製品として、いずれもMUGクリート(商標登録出願中商標)等を用いることが、本発明の所期の効果を十分に得る上で推奨される。
【0029】
図6は、本発明発熱体埋設床構造工法の基本構成を示すフロー図である。図の一点鎖線の下方に示すのは、本フローの各過程における使用要素である。図示するように本発熱体埋設床構造工法は、発熱体内蔵のセメント使用製品製ブロックであるところの発熱ブロックが埋設された床構造10を得る工法であって、床構造を設ける面上にセメント使用製品製の基盤部を形成するための基盤部用セメント使用製品すなわち基盤部用材1Bを載置する基盤部用材載置過程P1と、ついで基盤部用材1B上に発熱ブロック2を載置する発熱ブロック載置過程P2と、ついで発熱ブロック2上にセメント使用製品製の被覆部を形成するための被覆部用セメント使用製品すなわち被覆部用材6Cを載置する被覆部用材載置過程P3とを備えてなることを主たる構成とする。
【0030】
かかる構成の本工法によれば、まず基盤部用材載置過程P1において、床構造を設ける面上にセメント使用製品製の基盤部を形成するための基盤部用材1Bが載置され、ついで発熱ブロック載置過程P2において、基盤部用材1B上に発熱ブロック2が載置され、ついで被覆部用材載置過程P3において、発熱ブロック2上にセメント使用製品製の被覆部を形成するための被覆部用材6Cが載置される。最下部に載置された基盤部用材1Bはその上に発熱ブロック2を載置した状態でいずれ硬化して基盤部2となり、発熱ブロック2の上に載置された被覆部用材6Cはいずれ硬化して被覆部6となり、最終的に、発熱ブロック2が埋設された床構造10が得られる。
【0031】
なお、本発熱体埋設床構造工法では、基盤部用材載置過程P1にて載置される基盤部用材1Bが固まらないうちに、発熱ブロック載置過程P2がなされることが望ましい。そのようにすることによって、基盤部1と発熱ブロック2の下面との間の隙間発生を防止し、両者が密着した構造を得られ、床構造全体の強度をより高めることができる。なお、かかる工法により基盤部1の発熱ブロック2が載置されていない箇所は、前出
図3等に示したように若干盛り上がって形成される。
【0032】
図7は、本発明発熱体埋設床構造工法の別の構成を示すフロー図である。図示する本発明工法では、被覆部用材載置過程P3の後に仕上げ材部8を設ける仕上げ過程P4を備える。これにより、仕上げ材部8を備えた発熱体埋設床構造210が得られる。なお、被覆部用材載置過程P3では、本床構造210の完成後に仕上げ材部8よりも被覆部2の方が大きい圧縮強さを備える構造を得られるような被覆部用材6Cを用いる。被覆部用材6Cのみならず、基盤部用材1Bとしてもそのような仕様のものを用いることができる。発熱ブロック2用のセメント使用製品も同様である。
【0033】
なお、
図6、7いずれに示した工法でも、基盤部1、発熱ブロック2、および被覆部6に用いられるセメント使用製品の組成は同一のものとすることができる。また、基盤部1、発熱ブロック2、または被覆部6の少なくともいずれかのセメント使用製品として、MUGクリート(本願出願時に商標登録出願中商標)等を好適に用いることができる。全てのセメント使用製品としてMUGクリート(本願出願時に商標登録出願中商標)等を用いることが、本発明工法において最適である。
【0034】
本発明工法によって得られる発熱体埋設床構造10等は、特徴的な圧縮強さを備える。それは下記<A>?<C>の少なくともいずれかに示す圧縮強さである。
<A> 材齢3時間以内に25N/mm2以上
<B> 材齢24時間以内に30N/mm2以上
<C> 材齢28日以内に60N/mm2以上
かかる特性は、上記MUGクリート(本願出願時に商標登録出願中商標)等を用いることによって得ることができる。
【実施例0035】
本発明の実施例を説明するが、本発明がこれに限定されるものではない。
図8は、本発明発熱体内蔵床構造の実施例を示す断面視説明図である。図示するように本実施例発熱体内蔵床構造310は、基盤部31と被覆部36の間に発熱ブロック32が埋設され、表面には仕上げ材部38が設けられた形態の構造である。施工現場において、所定のセメント使用製品、発熱ブロック、および仕上げ材を用いて形成された構造である。図中、「600」、「40」等の寸法を示す数字があるが、これらは一例であり、本発明がかかる仕様に限定されるものではない。「74.8」等の圧縮強度を示す数値等も同様である。また、「σc」は圧縮応力度である。
【0036】
基盤部31、被覆部36形成用、および発熱ブロック31製造用のセメント使用製品としてはMUGクリート(本願出願時に商標登録出願中商標)を用いた。図中では、M・U・Gクリート(出願商標に類似する商標)として示している。MUGクリート(本願出願時に商標登録出願中商標)は、所定のセメント製品、減水剤、および所定の骨材が所定割合で配合されてなる製品である。使用時はこれに加水し、混練して軟ペースト状にする。
【0037】
発熱ブロック32としてはヒートコンパル(登録商標 株式会社ヒヨリジャパン)を用いた。これは、MUGクリート(本願出願時に商標登録出願中商標)を試用した二次製品であり、中に発熱体が内蔵されている。その具体的構造例は、前出
図4に示した通りである。圧縮強度ないしは圧縮応力度は74.8N/mm
2である。これは、通常の仕上げ材の1.46?1.88倍もの強度である。
【0038】
工法は、まず基盤部31用にMUGクリート(本願出願時に商標登録出願中商標)を現場で所定深さで打設し、これが硬化しないうちに発熱ブロック32・ヒートコンパル(登録商標)をその上に置き、ついで被覆部36用として
MUGクリート(本願出願時に商標登録出願中商標)を所定深さで打設することにより進められる。なお、深さ(厚さ)を示す図中右部の数字は一例であり、これに限定
【0039】
被覆部36が硬化した後、その上に仕上げ材部38が、適宜の厚さで施工される。仕上げ材としては、アトミックス社製、BASF社製など適宜のものを用いる。おおむね、40?50N/mm2の圧縮強度ないしは圧縮応力度を有する。すなわち、仕上げ材の1.46?1.88倍もの強度を、基盤部31-発熱ブロック32―被覆部36からなる下部構造は備えている。
【0040】
本発熱体内蔵床構造310の上方から鉛直下方に衝撃荷重Pを加えた場合、これが本発熱体内蔵床構造310の表面部において、分散角45°で面荷重となる。衝撃荷重が面で支えられ、また、下部構造は仕上げ材部38を大きく越える74.8N/mm2もの高強度であり、内蔵されている発熱ブロック32の破壊・損傷防止効果は十分である。
【0041】
なお、実施例で用いたMUGクリート(本願出願時に商標登録出願中商標)の物理試験を行った。その結果を下記に記す。異なる試験法による2つの試験例であるが、いずれにしても、通常であれば28日の材齢を要する程度の圧縮強度が、MUGクリート(本願出願時に商標登録出願中商標)では3時間程度で得られ、硬化が速いことが示された。しかも、硬化状態はほぼ無収縮であった。
【0042】
【0043】
本発明の発熱体内蔵床構造、および発熱体埋設床構造工法によれば、床下に内蔵される発熱体の保護を十全に行うことができる。その上、工期を大幅に短縮することもできる。したがって、産業用冷凍冷蔵庫、食品工場、水産加工場、厨房などにおける床工事分野、および関連する全分野において、産業上利用性が高い発明である。