(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055344
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】パッケージ、パッケージの製造方法、および、糸巻取装置
(51)【国際特許分類】
B65H 54/32 20060101AFI20230411BHJP
B65H 54/02 20060101ALI20230411BHJP
B65H 54/28 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
B65H54/32
B65H54/02 C
B65H54/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164637
(22)【出願日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】高安 孝治
【テーマコード(参考)】
3F056
【Fターム(参考)】
3F056AA05
3F056AB01
3F056AC00
3F056CA01
(57)【要約】
【課題】パッケージ解舒時の解舒テンションを低下させる。
【解決手段】本開示のパッケージ100は、コーン型巻取管120と、糸層110とを備えている。巻取管120は、中心軸Cから第1角度θ傾斜したテーパ形状の巻取面を有する。糸層110は、巻取管120の巻取面と同傾斜の巻取表面が形成されるように糸を巻き取ったものである。糸層110は、巻取管120に接し、第1トラバース幅W1を有する第1糸層111と、第1糸層111上にあり、第1糸層111からの距離の増加に伴って減少する第2トラバース幅W2を有する第2糸層112と、第2糸層112上にあり、第3トラバース幅W3を有する第3糸層113と、を備える。第1トラバース幅W1は、第3トラバース幅W3に対して、W1×1/2≦W3≦W1×2/3の関係を満たす。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸から第1角度傾斜したテーパ形状の巻取面を有するコーン型巻取管と、
前記巻取面と同傾斜の巻取表面が形成されるように糸を巻き取った糸層と、
を備えたパッケージであって、
前記糸層は、
巻取管に接し、第1トラバース幅W1を有する第1糸層と、
前記第1糸層上にあり、前記第1糸層からの距離の増加に伴って減少する第2トラバース幅W2を有する第2糸層と、
前記第2糸層上にあり、第3トラバース幅W3を有する第3糸層と、
を備え、
第1トラバース幅W1は、第3トラバース幅W3に対して、以下の関係を満たす、パッケージ。
W1×1/2 ≦ W3 ≦ W1×2/3
【請求項2】
前記第3糸層の厚みT3は、前記第2糸層の厚みT2よりも厚く、
前記第3糸層の厚みT3は、前記第1糸層の厚みT1よりも厚い、
請求項1に記載のパッケージ。
【請求項3】
前記第1糸層の前記第1トラバース幅W1は、前記巻取管からの距離に関係なく一定、または、前記巻取管からの距離が増加するに伴い減少しており、前記第2糸層に隣接する前記第1糸層の第1トラバース幅W1eは、前記巻取管に隣接する前記第1糸層の第1トラバース幅W1sの90%以上であり、
前記第3糸層に隣接する前記第2糸層の第2トラバース幅W2eは、前記第1糸層に隣接する前記第2糸層の第2トラバース幅W2sの50%以上90%以下であり、
前記第3糸層の前記第3トラバース幅W3は、前記巻取管からの距離に関係なく一定、または、前記第2糸層からの距離が増加するに伴い減少しており、前記第3糸層の外表面の第3トラバース幅W3eは、前記第2糸層に隣接する前記第3糸層の第3トラバース幅W3sの90%以上である、
請求項2に記載のパッケージ。
【請求項4】
前記第2糸層に隣接する前記第1糸層の前記第1トラバース幅W1eは、前記第1糸層に隣接する前記第2糸層の前記第2トラバース幅W2sに等しく、
前記第3糸層に隣接する前記第2糸層の前記第2トラバース幅W2eは、前記第2糸層に隣接する前記第3糸層の前記第3トラバース幅W3sに等しい、
請求項3に記載のパッケージ。
【請求項5】
前記第1糸層の厚みT1は、前記第2糸層の厚みT2よりも厚い、
請求項1~4のいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項6】
前記コーン型巻取管の小径側の各糸層の端面を、各糸層の小径側端面とし、前記コーン型巻取管の大径側の各糸層の端面を、各糸層の大径側端面としたとき、
前記コーン型巻取管の中心線を通る断面図で見たとき、
前記第3糸層の大径側端面は、前記コーン型巻取管の巻取面に垂直に形成されている、
請求項1~5のいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項7】
前記コーン型巻取管の小径側の各糸層の端面を、各糸層の小径側端面とし、前記コーン型巻取管の大径側の各糸層の端面を、各糸層の大径側端面としたとき、
前記コーン型巻取管の中心線を通る断面図で見たとき、
前記第2糸層の大径側端面または小径側端面の前記巻取面に垂直な方向に対する傾斜角は、途中で変化している、
請求項1~6のいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項8】
前記コーン型巻取管の小径側の各糸層の端面を、各糸層の小径側端面とし、前記コーン型巻取管の大径側の各糸層の端面を、各糸層の大径側端面としたとき、
前記コーン型巻取管の中心線を通る断面図で見たとき、
前記第2糸層の大径側端面の前記巻取面に垂直な方向に対する傾斜角は、大径側端面の前記巻取面に垂直な方向に対する傾斜角と異なる、
請求項1~7のいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項9】
中心軸から第1角度傾斜したテーパ形状の巻取面を有するコーン型巻取管を準備するステップと、
巻取面と同傾斜の巻取表面が形成されるように糸を巻き取り、糸層を形成するステップと、
を備えたパッケージの製造方法であって、
前記糸層を形成するステップは、
(a)前記巻取管上に、第1トラバース幅W1で、第1糸層を形成するステップと、
(b)前記第1糸層上に、次第に減少する第2トラバース幅W2で、第2糸層を形成するステップと、
(c)前記第2糸層上に、第3トラバース幅W3で、第3糸層を形成するステップと、
を備え、
第1トラバース幅W1は、第3トラバース幅W3に対して、以下の関係を満たすパッケージの製造方法。
W1×1/2 ≦ W3 ≦ W1×2/3
【請求項10】
前記第3糸層の厚みT3は、前記第2糸層の厚みT2よりも厚く、
前記第3糸層の厚みT3は、前記第1糸層の厚みT1よりも厚く、形成する
請求項9に記載のパッケージの製造方法。
【請求項11】
中心軸から第1角度傾斜したテーパ形状の巻取面を有するコーン型巻取管と、前記巻取面と同傾斜の巻取表面が形成されるように糸を巻き取った糸層と、を備えたパッケージを作成する糸巻取装置であって、
巻取管に巻き取られる糸を綾振りする綾振糸ガイドと、
前記綾振糸ガイドを駆動する綾振糸ガイド駆動部と、
前記綾振糸ガイド駆動部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
(a)前記巻取管上に、第1トラバース幅W1で、第1糸層を形成し、
(b)前記第1糸層上に、次第に減少する第2トラバース幅W2で、第2糸層を形成し、
(c)前記第2糸層上に、第3トラバース幅W3で、第3糸層を形成する、
制御モードを備えた糸巻取装置であって、
第1トラバース幅W1は、第3トラバース幅W3に対して、以下の関係を満たす、
糸巻取装置。
W1×1/2 ≦ W3 ≦ W1×2/3
【請求項12】
前記制御部は、前記制御モードにより、
前記第3糸層の厚みT3は、前記第2糸層の厚みT2よりも厚く、
前記第3糸層の厚みT3は、前記第1糸層の厚みT1よりも厚く形成する、
請求項11に記載の糸巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パッケージ、パッケージの製造方法、および、糸巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テーパ形状の巻取面を有する巻取管の表面に、糸巻取装置を用いて糸を巻き取った糸層を形成したコーン巻パッケージが知られている。コーン巻パッケージを作製する糸巻取装置は、巻取管を回転させながら、糸を綾振りして、トラバース幅に渡る糸層を形成する。このような糸巻取装置としては、アームトラバース型の巻取装置(特許文献1)、ベルトトラバース型の巻取装置(特許文献2)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-214984号公報
【特許文献2】特開2007-161449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のコーン巻パッケージは、パッケージの糸を解舒する際に、パッケージ径が大きくなるにつれて、解舒テンションも大きくなり、パッケージの糸を解舒する工程において、糸切れが発生するという課題があった。
【0005】
本開示の目的は、パッケージ径の大小に関わらず解舒テンションの変化が少ないパッケージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のパッケージは、
中心軸から第1角度傾斜したテーパ形状の巻取面を有するコーン型巻取管と、
前記巻取面と同傾斜の巻取表面が形成されるように糸を巻き取った糸層と、を備えたパッケージである。前記糸層は、巻取管に接し、第1トラバース幅W1を有する第1糸層と、前記第1糸層上にあり、前記第1糸層からの距離に従って減少する第2トラバース幅W2を有する第2糸層と、前記第2糸層上にあり、第3トラバース幅W3を有する第3糸層と、を備える。第1トラバース幅W1は、第3トラバース幅W3に対して、以下の関係を満たす。
W1×1/2 ≦ W3 ≦ W1×2/3
【0007】
本開示のパッケージは、最表面にトラバース幅が狭い第3糸層を有しており、パッケージ径が大きい場合に解舒テンションが高くなるのを防ぐことが出来る。これにより、パッケージ径が小さく解舒テンションが問題とならない状態においては、糸の巻き量を減少させず、パッケージ径が大きい場合に解舒テンションが高くなる状態においては、糸の巻き量を減少させて解舒テンションが高くなるのを防いでいる。パッケージ径の大小に関わらず解舒テンションの変化が少なくなり、かつパッケージとして巻き取られる糸量の減少率も最低限に留めることが出来る。
【0008】
前記第3糸層の厚みT3は、前記第2糸層の厚みT2よりも厚く、前記第3糸層の厚みT3は、前記第1糸層の厚みT1よりも厚い。
【0009】
前記第1糸層の前記第1トラバース幅W1は、前記巻取管からの距離に関係なく一定、または、前記巻取管からの距離が増加するに伴い減少しており、前記第2糸層に隣接する前記第1糸層の第1トラバース幅W1eは、前記巻取管に隣接する前記第1糸層の第1トラバース幅W1sの90%以上であってもよい。
【0010】
前記第3糸層に隣接する前記第2糸層の第2トラバース幅W2eは、前記第1糸層に隣接する前記第2糸層の第2トラバース幅W2sの50%以上90%以下であってもよい。
【0011】
前記第3糸層の前記第3トラバース幅W3は、前記巻取管からの距離に関係なく一定、または、前記第2糸層からの距離が増加するに伴い減少しており、前記第3糸層の外表面の第3トラバース幅W3eは、前記第2糸層に隣接する前記第3糸層の第3トラバース幅W3sの90%以上であってもよい。
【0012】
前記第2糸層に隣接する前記第1糸層の前記第1トラバース幅W1eは、前記第1糸層に隣接する前記第2糸層の前記第2トラバース幅W2sに等しくてもよい。
【0013】
前記第3糸層に隣接する前記第2糸層の前記第2トラバース幅W2eは、前記第2糸層に隣接する前記第3糸層の前記第3トラバース幅W3sに等しくてもよい。いいかえると、前記糸層のトラバース幅は、連続的であってもよい。
【0014】
前記第1糸層の厚みT1は、前記第2糸層の厚みT2よりも厚くてもよい。
【0015】
前記コーン型巻取管の小径側の各糸層の端面を、各糸層の小径側端面とし、前記コーン型巻取管の大径側の各糸層の端面を、各糸層の大径側端面としたとき、前記コーン型巻取管の中心線を通る断面図で見たとき、前記第3糸層の大径側端面は、前記コーン型巻取管の巻取面に垂直に形成されていてもよい。
【0016】
前記コーン型巻取管の小径側の各糸層の端面を、各糸層の小径側端面とし、前記コーン型巻取管の大径側の各糸層の端面を、各糸層の大径側端面としたとき、前記コーン型巻取管の中心線を通る断面図で見たとき、前記第2糸層の大径側端面または小径側端面の前記巻取面に垂直な方向に対する傾斜角は、途中で変化していてもよい。
【0017】
前記コーン型巻取管の小径側の各糸層の端面を、各糸層の小径側端面とし、前記コーン型巻取管の大径側の各糸層の端面を、各糸層の大径側端面としたとき、前記コーン型巻取管の中心線を通る断面図で見たとき、前記第2糸層の大径側端面の前記巻取面に垂直な方向に対する傾斜角は、大径側端面の前記巻取面に垂直な方向に対する傾斜角と異なっていてもよい。
【0018】
本開示のパッケージの製造方法は、中心軸から第1角度傾斜したテーパ形状の巻取面を有するコーン型巻取管を準備するステップと、
巻取面と同傾斜の巻取表面が形成されるように糸を巻き取り、糸層を形成するステップと、
を備える。前記糸層を形成するステップは、
(a)前記巻取管上に、第1トラバース幅W1で、第1糸層を形成するステップと、
(b)前記第1糸層上に、次第に減少する第2トラバース幅W2で、第2糸層を形成するステップと、
(c)前記第2糸層上に、第3トラバース幅W3で、第3糸層を形成するステップと、
を備える。
第1トラバース幅W1は、第3トラバース幅W3に対して、以下の関係を満たす。
W1×1/2 ≦ W3 ≦ W1×2/3
【0019】
前記パッケージの製造方法において、
前記第3糸層の厚みT3は、前記第2糸層の厚みT2よりも厚く、
前記第3糸層の厚みT3は、前記第1糸層の厚みT1よりも厚く、形成する。
【0020】
本開示の糸巻取装置は、心軸から第1角度傾斜したテーパ形状の巻取面を有するコーン型巻取管と、前記巻取面と同傾斜の巻取表面が形成されるように糸を巻き取った糸層と、を備えたパッケージを作成する糸巻取装置である。糸巻取装置は、
巻取管に巻き取られる糸を綾振りする綾振糸ガイドと、
前記綾振糸ガイドを駆動する綾振糸ガイド駆動部と、
前記綾振糸ガイド駆動部を制御する制御部を備える。
前記制御部は、
(a)前記巻取管上に、第1トラバース幅W1で、第1糸層を形成し、
(b)前記第1糸層上に、次第に減少する第2トラバース幅W2で、第2糸層を形成し、
(c)前記第2糸層上に、第3トラバース幅W3で、第3糸層を形成する、
制御を行う。第1トラバース幅W1は、第3トラバース幅W3に対して、以下の関係を満たす。
W1×1/2 ≦ W3 ≦ W1×2/3
【0021】
前記制御部は、前記制御モードにより、
前記第3糸層の厚みT3は、前記第2糸層の厚みT2よりも厚く、
前記第3糸層の厚みT3は、前記第1糸層の厚みT1よりも厚く形成する。
【発明の効果】
【0022】
本開示のパッケージは、パッケージ径が大きい段階においても、比較的解舒テンションが小さくできる。したがって、パッケージ解舒時におけるテンションの最大値を小さくすることができ、糸に対するダメージを小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】パッケージ100の構成を説明する図である。巻取管120の中心軸Cの一方側が中心軸Cを通る断面を示す断面図であり、他方側が、外面を示す図である。
図2において、点a~nは、断面図上の点である。
【
図3】パッケージの製造方法のプロセスを説明するフローチャートである。
【
図4】パッケージS1、P1において、トラバース幅と糸層の厚み(巻取管の表面からの距離)との関係を示す図である。
【
図5】パッケージS2、P2において、トラバース幅と糸層の厚み(巻取管の表面からの距離)との関係を示す図である。
【
図6】パッケージS1、P1について、パッケージ解舒時の解舒テンションの時間依存性を示す図である。横軸について、時間0は、解舒が終了する時刻であり、時間が増加するにしたがって時間を遡って、パッケージ径が大きい状態の時間を示している。
【
図7】パッケージS2、P2について、パッケージ解舒時の解舒テンションの時間依存性を示す図である。横軸について、時間0は、解舒が終了する時刻であり、時間が増加するにしたがって時間を遡って、パッケージ径が大きい状態の時間を示している。
【
図8A】比較例のパッケージの解舒テンション測定を模式的に説明する図である。
【
図8B】実施例のパッケージの解舒テンション測定を模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.第1実施形態
(1)糸巻取装置10
第1実施形態の糸巻取装置10は、巻取管の表面に糸を巻き取り、糸層を形成する装置である。言い換えると、パッケージ製造装置である。糸巻取装置10は、糸20を綾振り、トラバース幅、トラバース位置を制御しながらパッケージに巻き取ることができる。このようなトラバース幅、トラバース位置を制御可能な糸巻取装置としては、アームトラバース型の巻取装置や、ベルトトラバース型の巻取装置がある。本実施形態の糸巻取装置10は、
図1に示すように、アームトラバース型の巻取装置である。
【0025】
糸巻取装置10は、給糸ボビン21から巻きだした糸20を巻取管120上に巻き取る。糸巻取装置10は、給糸ボビン21から巻取管120に向かって順に、バルーンコントローラ12と、テンション付与装置13と、スプライサ装置14と、クリアラ(糸品質測定器)15と、パッケージ形成装置16と、を備えている。
【0026】
バルーンコントローラ12は、規制部材40を備えている。給糸ボビン21の芯管に被さる規制部材40を給糸ボビン21からの糸の解舒と連動して下降させることにより、給糸ボビン21からの糸の解舒を補助するものである。規制部材40は、給糸ボビン21から解舒された糸の回転と遠心力によって給糸ボビン21上部に形成されたバルーンに対し接触し、当該バルーンに適切なテンションを付与することによって糸の解舒を補助する。規制部材40の近傍には前記給糸ボビン21のチェース部を検出するためのセンサが備えられており、このセンサがチェース部の下降を検出すると、それに追従して規制部材40を例えばステッピングモータ(図略)によって下降させることができる。ステッピングモータの代わりにエアシリンダーを採用することもできる。
【0027】
テンション付与装置13は、走行する糸20に所定のテンションを付与するものである。テンション付与装置13としては、例えば、固定の櫛歯36に対して可動の櫛歯37を配置するゲート式のものを用いることができる。可動側の櫛歯37は、櫛歯同士が噛み合わせ状態又は解放状態になるように、例えばロータリ式に構成されたソレノイド38により回動することができる。このテンション付与装置13によって、巻き取られる糸20に一定のテンションを付与し、パッケージ100の品質を高めることができる。なお、テンション付与装置13には、上記ゲート式のもの以外にも、例えばディスク式のものを採用することができる。また、ソレノイド38の代わりにステッピングモータを採用することもできる。
【0028】
スプライサ装置14は、クリアラ15が糸欠点を検出して行う糸切断時、又は給糸ボビン21からの解舒中の糸切れ時等に、給糸ボビン21側の下糸と、パッケージ100側の上糸とを糸継ぎするものである。このような上糸と下糸とを糸継ぎする糸継装置としては、機械式のものや、圧縮空気等の流体を用いるもの等を使用することができる。
【0029】
クリアラ15は、クリアラヘッド49と、アナライザ52とを備えている。クリアラヘッド49は、糸20の太さを検出するためのセンサが配置されている。アナライザ52は、センサからの糸太さ信号を処理する。クリアラ15は、センサからの糸太さ信号を監視することにより、スラブ等の糸欠陥を検出するように構成されている。クリアラヘッド49の近傍には、クリアラ15が糸欠点を検出したときに直ちに糸20を切断するためのカッタ39が設けられている。
【0030】
スプライサ装置14の下側には下糸案内パイプ25が、上側には上糸案内パイプ26が、設けられている。下糸案内パイプ25は、給糸ボビン21側の下糸を捕捉してスプライサ装置14に案内する。上糸案内パイプ26は、パッケージ100側の上糸を捕捉してスプライサ装置14に案内する。また、下糸案内パイプ25と上糸案内パイプ26は、それぞれ軸33,35を中心にして回動可能に構成されている。下糸案内パイプ25の先端には吸引口32が形成され、上糸案内パイプ26の先端にはサクションマウス34が備えられている。下糸案内パイプ25及び上糸案内パイプ26には適宜の負圧源がそれぞれ接続されており、吸引口32及びサクションマウス34に吸引流を発生させて、上糸及び下糸の糸端を吸引捕捉できるように構成されている。
【0031】
パッケージ形成装置16は、クレードル23と、トラバース装置27と、接触ローラ29とを備えている。クレードル23は、巻取管120を着脱可能に支持する。巻取管120は、紙管であってもプラスチック式の芯管であってもよい。トラバース装置27は、糸20をトラバースさせるためのアーム式のトラバース装置である。接触ローラ29は、巻取管120の周面又はパッケージ100の周面に接触して従動回転可能である。
【0032】
クレードル23は、回動軸48を中心に回動可能に構成されており、巻取管120への糸20の巻取に伴う糸層径の増大を、クレードル23が回動することによって吸収できるように構成されている。また、クレードル23及びトラバース装置27は、図に示すようにコーン形状のパッケージ100を形成可能に構成されている。
【0033】
クレードル23の巻取管120を挟持する部分にはパッケージ駆動モータ41が取り付けられている。パッケージ駆動モータ41によって巻取管120を回転駆動して糸20を巻き取る。パッケージ駆動モータ41のモータ軸は、巻取管120をクレードル23に支持させたときに、巻取管120と相対回転不能に連結されるようになっている(いわゆるダイレクトドライブ方式)。パッケージ駆動モータ41の動作はパッケージ駆動制御部42により制御され、このパッケージ駆動制御部42はユニット制御部50からの運転信号を受けて前記パッケージ駆動モータ41の運転/停止を制御するように構成している。
【0034】
クレードル23にはパッケージ回転センサ43が取り付けられている。パッケージ回転センサ43は、クレードル23に取り付けられた巻取管120の回転(巻取管120に形成された糸層110の回転)を検出するように構成されている。この巻取管120の回転検出信号は、パッケージ回転センサ43から、パッケージ駆動制御部42やユニット制御部50へ送信される。更に、回転検出信号は、後述するトラバース制御部46に入力される。
【0035】
回動軸48には、クレードル23の角度(回動角)を検知するための角度センサ(パッケージ径取得部)44が取り付けられている。この角度センサ44は例えばロータリエンコーダからなり、クレードル23の角度に応じた角度信号をユニット制御部50に対して送信するように構成されている。クレードル23はパッケージ100が巻き太るに従って角度が変化するので、クレードル23の回動角を前記角度センサ44によって検出することにより、パッケージ100の糸層の径を検知することができる。これにより、トラバース装置27をパッケージ糸層径に応じて制御することで、糸の綾振りを適切に行うことができる。また、角度センサ44で取得された糸層110の径は、ユニット制御部50からパッケージ駆動制御部42へ転送される。
【0036】
トラバース装置27は、支軸のまわりに旋回可能に構成した細長状のアーム部材28と、このアーム部材28の先端に形成されたフック状のトラバースガイド(綾振糸ガイド)11と、アーム部材28を駆動するトラバースガイド駆動モータ(綾振糸ガイド駆動部)45と、を備える。前記トラバースガイド駆動モータ45はサーボモータにより構成されており、アーム部材28を
図1の矢印のように往復旋回運動させることにより、糸20の綾振りを行う構成になっている。
【0037】
トラバースガイド駆動モータ45の作動パッケージ駆動により制御される。トラバース制御部46は、専用のマイクロプロセッサによるハードウェア等から構成されており、ユニット制御部50からの信号を受けてトラバースガイド駆動モータ45の運転/停止を制御するように構成されている。
【0038】
トラバース装置27にはロータリエンコーダからなるトラバースガイド位置センサ47が取り付けられている。トラバースガイド位置センサ47は、アーム部材28の旋回位置(ひいては、トラバースガイド11の位置)を検出して、位置信号をトラバース制御部46へ送信する。
【0039】
本実施形態では
図1に示すように、パッケージ駆動モータ41とトラバースガイド駆動モータ45とが別々に設けられており、巻取管120とトラバースガイド11とは別個独立に駆動(制御)される。これにより、糸20の綾振りを柔軟に変更制御しながら巻取管120に糸20を巻き取ることができる。
【0040】
トラバース制御部46は、トラバースガイド駆動モータ45の作動を制御してテーパ巻を制御する。
【0041】
糸巻取装置10は、さらに制御部を備える。制御部は、ユニット制御部50と、トラバース制御部46と、パッケージ駆動制御部42と、を含む。
【0042】
ユニット制御部50は、CPUと、RAMと、ROMと、I/Oポートと、を備える。ROMには、糸巻取装置10の各部を制御するためのプログラムが記録されている。I/Oポートには、トラバース制御部46、パッケージ駆動制御部42、糸巻取装置10の各部、設定器64が接続されており、相互に、制御情報の通信が可能である。
【0043】
複数台の糸巻取装置10が並べて配置され、一式の自動ワインダ(糸巻取器)としてもよい。一式の自動ワインダは、複数台の糸巻取装置10のユニット制御部50を制御する制御部を有してもよい。そして、複数台の糸巻取装置10のユニット制御部50を制御する制御部に設定器64を備えていてもよい。設定器64は、制御部に設けられ、さらにユニット制御部50ごとに備えられていてもよい。
【0044】
設定器64は、各糸巻取装置10が備えるユニット制御部50との間で各種情報を送受信し、複数の糸巻取装置10を集中管理できるように構成されている。設定器64は図略のディスプレイと入力キーを備えており、前記各ユニット制御部50に対して各種の設定値を送信することができる。
【0045】
(2)パッケージ100
本実施形態のパッケージ100は、
図2に示すように、巻取管120と、糸層110とを備えている。
【0046】
巻取管120は、テーパ形状の巻取面を有するコーン型巻取管である。
図2の断面図で見ると、巻取表面b-mは、中心軸Cに対して第1角度θだけ傾斜している。第1角度θは、3°以上6°以下である。巻取管120は、小径側端面121と、大径側端面122とを有している。
【0047】
糸層110は、巻取管120の巻取表面と同傾斜(第1角度θ)の巻取表面が形成されるように糸を巻き取ったものである。したがって、
図2の断面図でみると、糸層110の最外面である外周面は、巻取管120の中心軸Cに対して、第1角度θだけ傾斜している。
【0048】
糸層110のトラバース幅Wは、厚みT方向に巻取管120に接する面から糸層110の表面に向かって、単調に減少している。よって、糸層110の表面のトラバース幅Weは、糸層110の巻取管120と接する面におけるトラバース幅Wsより小さい。糸層110の厚みTは、20mm以上130mm以下で形成することができるが、形成するのが糸の巻き量を多くする目的から60mm以上130mm以下で形成することが好ましい。
【0049】
糸層110は、第1糸層111と、第2糸層112と、第3糸層113とを備えている。
【0050】
第1糸層111は、巻取管120上に配置されている。第1糸層111の第1トラバース幅W1は、巻取管120からの距離に関係なく一定、または、巻取管120からの距離が増加するに伴い減少している。第2糸層112に隣接する第1糸層111の第1トラバース幅W1eは、巻取管120に隣接する第1糸層111の第1トラバース幅W1sの90%以上100%以下である。
【0051】
第1糸層111の厚みT1は、10mm以上、60mm以下としてもよい。第1糸層111の厚みT1が10mm未満であると、糸層110全体の糸量を多くするのが困難になる。第1糸層111の厚みT1が60mmを超えると、解舒バルーンを適切に発生させ、解舒テンションを下げるのが困難になる。この意味においては、細い糸を用いる場合ほど、第1糸層111の厚みT1を小さくする必要があり、例えば、40mm以下とする。
【0052】
第2糸層112は、第1糸層111上に配置されている。第2糸層112の第2トラバース幅W2は、第1糸層111からの距離が増加するに伴い減少している。第3糸層113に隣接する第2糸層112の第2トラバース幅W2eは、第1糸層111に隣接する第2糸層112の第2トラバース幅W2sの50%以上90%以下である。第2糸層112の第2トラバース幅W2の減少率は、第1糸層111の第1トラバース幅W1の減少率および第3糸層113の第3トラバース幅W3の減少率よりも大きい。ここでトラバース幅Wの減少率とは、厚みT方向の同じ長さに対してトラバース幅Wが減少する割合である。
【0053】
第2糸層112は、2層以上の糸層から構成されていてもよい。例えば、
図2に示すパッケージ100においては、第2糸層112は、第1糸層111に接する第4糸層112aと、第3糸層113に接する第5糸層112bと、の2層から構成されている。
図2においては、第4糸層112aのトラバース幅W2の減少率は、第5糸層112bのトラバース幅W2の減少率よりも大きい。逆に、第4糸層112aのトラバース幅W2の減少率は、第5糸層112bのトラバース幅W2の減少率よりも小さくてもよい。
【0054】
第2糸層112において、トラバース幅W2の減少率は、巻取管120の小径側と大径側とで異なっていてもよい。
図2のパッケージ100においては、第2糸層112の小径側の端面d-eにおいて、トラバース幅W2の減少率が大きく、巻取管120の中心軸C方向から見て急斜面が形成されているが、大径側の端面k-jにおいては、トラバース幅W2の減少率が小さく、斜面は緩やかな傾斜である。また、
図2においては、第2糸層112において、小径側の端面の屈曲点e、大径側の端面の屈曲点jは、ともに、第4糸層112aと第5糸層の界面を構成している。小径側の端面の屈曲点と、大径側の端面の屈曲点は、同一の糸層の界面に形成されていなくてもよい。言い換えると、小径側の端面の屈曲点と、大径側の端面の屈曲点は、第1糸層111の表面から異なる距離の位置に配置されていてもよい。
【0055】
第3糸層113は、第2糸層112上に配置されている。第3糸層113の第3トラバース幅W3は、第2糸層112からの距離に関係なく一定、または、第2糸層112からの距離が増加するに伴い減少している。第3糸層113の表面の第3トラバース幅W3e(We)は、第2糸層112に隣接する第3糸層113の第3トラバース幅W3sの90%以上100%以下である。
【0056】
図2の断面図において、第3糸層113の巻取管120の大径側端面h-iは、巻取管120の巻取表面b-mに垂直に形成されている。ここで垂直とは、完全に垂直な場合だけでなく、略垂直な場合、85°以上95°以下、より好ましくは、87°以上93°以下の場合を含む。
【0057】
同様にして、
図2の断面図において、第3糸層113の巻取管120の小径側端面g-fは、巻取管120の巻取表面b-mに垂直に形成されている。ここで垂直とは、完全に垂直な場合だけでなく、略垂直な場合、85°以上95°以下、より好ましくは、87°以上93°以下の場合を含む。
【0058】
第1トラバース幅W1は、第3トラバース幅W3に対して、以下の式(1)の関係を満たす。
W1×1/2 ≦ W3 ≦ W1×2/3 (1)
【0059】
第3トラバース幅W3が、第1トラバース幅W1の1/2以上でないと、糸層110全体の糸量を大きくするのが困難になる。また、第3トラバース幅W3が第1トラバース幅W1の2/3以下とすることにより、解舒バルーンを適切に発生させ、解舒テンションを低い値にするのが可能になる。
【0060】
なお、上記で説明した通り、一のパッケージ100において、第1トラバース幅W1、または、第3トラバース幅W3は一定でない場合がある。その場合は、上記(1)式において、第1トラバース幅W1としては、巻取管120と隣接する第1トラバース幅W1sを用い、第3トラバース幅W3としては、第3糸層113の表面の第3トラバース幅W3eを用いてもよい。
【0061】
また、第3糸層113の厚みT3は、第2糸層112の厚みT2よりも厚い。第3糸層113の厚みT3は、第1糸層111の厚みT1よりも厚い。第1糸層111の厚みT1は、第2糸層112の厚みT2よりも厚い。
【0062】
図2に示すパッケージ100においては、第2糸層112に隣接する第1糸層111の第1トラバース幅W1eは、第1糸層111に隣接する第2糸層112の第2トラバース幅W2sに等しい。そして、第3糸層113に隣接する第2糸層112の第2トラバース幅W2eは、第2糸層112に隣接する第3糸層113の第3トラバース幅W3sに等しい。つまり、
図2に示すパッケージ100においては、トラバース幅Wは、糸層110の巻取管120に接する側から糸層110の表面に向かって、連続的に変化している。トラバース幅Wは、連続的に変化しなくてもよい。たとえば、第1糸層111と第2糸層112との間、第2糸層112と第3糸層113との間で不連続に変化してもよい。
【0063】
(3)パッケージの製造方法
本実施形態のパッケージ100の製造方法を、
図3のフローチャートを用いて説明する。糸巻取装置10に、糸20を巻いた給糸ボビン21と、巻取管120をセットする。そうして、巻取管120に糸20を巻き取り、糸層110を形成する。糸層110を形成する工程は、詳細には、以下のステップ(a)~(c)を含んでいる。ステップ(a)~(c)とは、
(a)巻取管120上に、第1トラバース幅W1で、第1糸層111を形成するステップ、
(b)第1糸層111上に、次第に減少する第2トラバース幅W2で、第2糸層112を形成するステップ、
(c)第2糸層112上に、第3トラバース幅W3で、第3糸層113を形成するステップ、
である。上記において糸層110,第1糸層111,第2糸層112、第3糸層113については、「(2)パッケージ100」で説明した通りである。
【0064】
糸巻取装置10において、糸層110のトラバース幅、トラバース位置を設定するには、オペレータは、設定器64に対して、これらを入力することによって、パッケージの形状の設計を行う。
【0065】
具体的な、パッケージの設計事例を、
図4、
図5に例示する。
図4、5において、縦軸は、「糸層」と表示され、糸層110の厚みT、または、巻取管120の表面からの距離を示している。横軸は、「トラバース幅」と表示されており、トラバース幅およびトラバース位置を示している。たとえば、トラバース幅0mmの位置は、
図2のパッケージ100の断面図において、糸層110の巻取管120と接する面において最も小径側端面121に近い点xを通り、巻取管120の表面b-mと直交する直線上を意味する。同様に、トラバース幅155mmの位置は、
図2のパッケージ100の断面図において、糸層110の巻取管120と接する面において最も大径側端面122に近い点lを通り、巻取管120の表面b-mと直交する直線上を意味する。
【0066】
図4は、本開示の実施例のパッケージS1と比較例のパッケージP1の糸層110のトラバース幅W、トラバース位置の設計例を示している。実施例のパッケージS1と比較例のパッケージP1とでは、用いる糸の種類、糸の量は同じである。異なるのは、糸層110のトラバース幅W、トラバース位置の設計であり、結果として糸層110の形状である。
【0067】
図4のパッケージS1において、糸層110の厚みTが、0mm~25mmが第1糸層111であり、25mm~50mmが第2糸層112であり、50mm~90mmが第3糸層113である。第1糸層111および第3糸層113においては、トラバース幅Wは一定である。パッケージ100の断面図で見ると、第1糸層111の小径側端面および大径側端面は、巻取管120の表面に垂直である。同様に、第3糸層113の小径側端面および大径側端面は、巻取管120の表面に垂直である。
【0068】
パッケージS1においては、糸層の厚みTが25mm~50mmの第2糸層112は、糸層の厚みTが25mm~40mmの第4糸層112aと、糸層の厚みTが40mm~50mmの第5糸層の2層から構成されている。第2糸層112は、厚みTの増加に伴って、トラバース幅Wが減少しており、変化率は、厚みTが40mmの所で不連続に変化している。第2糸層112の小径側端面および大径側端面には、スロープの変化点が存在している。パッケージS1において、第2糸層112のトラバース幅W2の変化率(減少率)は、小径側端面の方が大径側端面よりも大きい。また、糸層110の厚みTが0mmの位置から最表面の90mmの位置まで、トラバース幅Wは、連続的に変化している。したがって、第3糸層113の小径側端面と第1糸層111の小径側端面との距離は、第3糸層113の大径側端面と第1糸層111の大径側端面との距離よりも大きい。
【0069】
比較例のパッケージP1は、トラバース幅W、トラバース位置が一定である。
【0070】
図5には、
図4とは異なる糸(
図4の糸より太い糸)を用いたパッケージS2、P2の、糸層110のトラバース幅W、トラバース位置の設計例を示している。実施例のパッケージS2と比較例のパッケージP2とでは、用いる糸の種類、糸の量は同じである。異なるのは、糸層110のトラバース幅W、トラバース位置の設計であり、結果として糸層110の形状である。
【0071】
図5のパッケージS2において、糸層110の厚みTが、0mm~40mmが第1糸層111であり、40mm~65mmが第2糸層112であり、65mm~138mmが第3糸層113である。第1糸層111および第3糸層113においては、トラバース幅Wは一定である。パッケージ100の断面図で見ると、第1糸層111の小径側端面および大径側端面は、巻取管120の表面に垂直である。同様に、第3糸層113の小径側端面および大径側端面は、巻取管120の表面に垂直である。
【0072】
パッケージS2の第2糸層112は、厚みTの増加に伴って、トラバース幅Wが減少している。第2糸層112のトラバース幅W2の変化率(減少率)は、小径側端面と大径側端面とで異なっている。パッケージS2においてもパッケージS1と同様に、第3糸層113の小径側端面と第1糸層111の小径側端面との距離は、第3糸層113の大径側端面と第1糸層111の大径側端面との距離よりも大きい。
【0073】
比較例のパッケージP2は、トラバース幅W、トラバース位置が一定である。
【0074】
(4)解舒テンションの測定
図4、5のパッケージS1、S2、P1、P2について、解舒テンションを測定したので、その結果について説明する。
【0075】
図8Aおよび8Bは、解舒テンション測定を模式的に示す図である。
図8Aは従来のパッケージを用いた場合、
図8Bは、本実施形態のパッケージを用いた場合である。解舒テンションの測定は、
図8Aまたは8Bに示すように、巻取管の小径側から糸を解舒しながらテンションの測定を行う。解舒速度は、1200m/minであり、パッケージに巻き取られた全ての糸を解舒している間、継続して解舒テンションの測定を行う。
【0076】
図6および7は、解舒テンションの測定結果を示す。
図6、7で縦軸は解舒テンションの測定値を、横軸は解舒の時間を示している。解舒テンションの値は変動しており、
図6、7の測定点は、その時刻において所定の時間の平均値である。横軸については、時間0は解舒を終了した時刻を示し、時間が正の方向は、解舒終了時点から遡った時間を示している。時間0では糸層の厚みTは0であり、時間軸の正の方向(右)へ行くほど、糸層の厚みTが大きい状態での測定に相当する。
【0077】
図6に示すように、本実施例のパッケージS1においては、径が大きい場合も小さい場合も解舒テンションは、低い値を示しているが、比較例のパッケージP1においては、特に大径側(時間が約5000s以上)において解舒テンションが大きくなっている。
【0078】
図6より太い糸を用いた
図7の場合も、
図6と同様の傾向を示しており、本実施例のパッケージS2においては、径が大きい場合(時間が約5000s以上)に、比較例のパッケージP1よりも小さい解舒テンションの値を示す。
【0079】
次に、このように、本実施例のパッケージS1、S2が低い解舒テンションを示す理由について、考察する。
【0080】
図8Aに示すように、トラバース幅が一様な比較例のパッケージにおいては、特に糸層が大径時に、巻取管の大径側の糸が解舒されるときに、糸が解除される位置よりも糸層(パッケージ)の小径側の表面で摩擦を起こし、解舒テンションを高くする。
図8A、
図8Bのパッケージの周面に太線で描かれた部分は、糸が解舒される際に摩擦が発生する部分を示したものである。また、解舒バルーンが適切にできにくいという課題も生じる。これに対して、本実施形態のパッケージにおいては、内側の第1糸層111の厚みT1が薄く、かつ、外側の第3糸層113のトラバース幅W3が狭く作られている。そこで、本実施形態のパッケージにおいては、
図8Bに示すように、外側の第3糸層113の解舒時に糸の擦れる範囲が狭く、解舒テンションを低く抑えることができる。また、解舒バルーンが適切に形成されやすいメリットも生じる。
【0081】
2.実施形態の特徴
上記実施形態は、下記のようにも説明できる。
【0082】
本開示のパッケージ100は、コーン型巻取管120と、糸層110とを備えている。巻取管120は、中心軸Cから第1角度θ傾斜したテーパ形状の巻取面を有する。
【0083】
糸層110は、巻取管120の巻取面と同傾斜の巻取表面が形成されるように糸を巻き取ったものである。糸層110は、巻取管120に接し、第1トラバース幅W1を有する第1糸層111と、第1糸層111上にあり、第1糸層111からの距離の増加に伴って減少する第2トラバース幅W2を有する第2糸層112と、第2糸層112上にあり、第3トラバース幅W3を有する第3糸層113と、を備える。
【0084】
第1トラバース幅W1は、第3トラバース幅W3に対して、以下の関係を満たす。
W1×1/2 ≦ W3 ≦ W1×2/3 (1)
【0085】
また、第3糸層113の厚みT3は、第2糸層112の厚みT2よりも厚い。第3糸層113の厚みT3は、第1糸層111の厚みT1よりも厚い。
【0086】
3.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本開示の糸巻取装置は、複数の糸巻取装置を並べて利用する自動ワインダに適用できる。また、本開示のパッケージは、幅広い繊維を製造する繊維機械に適用できる。
【符号の説明】
【0088】
10 糸巻取装置
12 バルーンコントローラ
13 テンション付与装置
14 スプライサ
15 クリアラ
16 パッケージ形成装置
20 糸
21 給糸ボビン
23 クレードル
27 トラバース装置
29 接触ローラ
40 規制部材
41 パッケージ駆動モータ
42 パッケージ駆動制御部
45 トラバースガイド駆動モータ
46 トラバースガイド駆動制御部
50 ユニット制御部
64 設定部
100 パッケージ
110 糸層
111 第1糸層
112 第2糸層
113 第3糸層
112a 第4糸層
112b 第5糸層
120 巻取管
121 巻取管の小径側端面
122 巻取管の大径側端面
T 糸層の厚み
W 糸層のトラバース幅
C 巻取管の中心軸
S1、S2 実施例のパッケージ
P1、P2 比較例のパッケージ
θ 第1角度
【手続補正書】
【提出日】2022-12-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸から第1角度傾斜したテーパ形状の巻取面を有するコーン型巻取管と、
前記巻取面と同傾斜の巻取表面が形成されるように糸を巻き取った糸層と、
を備えたパッケージであって、
前記糸層は、
巻取管に接し、第1トラバース幅W1を有する第1糸層と、
前記第1糸層上にあり、前記第1糸層からの距離の増加に伴って減少する第2トラバース幅W2を有する第2糸層と、
前記第2糸層上にあり、第3トラバース幅W3を有する第3糸層と、
を備え、
第1トラバース幅W1は、第3トラバース幅W3に対して、以下の関係を満たす、パッケージ。
W1×1/2 ≦ W3 ≦ W1×2/3
【請求項2】
前記第3糸層の厚みT3は、前記第2糸層の厚みT2よりも厚く、
前記第3糸層の厚みT3は、前記第1糸層の厚みT1よりも厚い、
請求項1に記載のパッケージ。
【請求項3】
前記第1糸層の前記第1トラバース幅W1は、前記巻取管からの距離に関係なく一定、または、前記巻取管からの距離が増加するに伴い減少しており、前記第2糸層に隣接する前記第1糸層の第1トラバース幅W1eは、前記巻取管に隣接する前記第1糸層の第1トラバース幅W1sの90%以上であり、
前記第3糸層に隣接する前記第2糸層の第2トラバース幅W2eは、前記第1糸層に隣接する前記第2糸層の第2トラバース幅W2sの50%以上90%以下であり、
前記第3糸層の前記第3トラバース幅W3は、前記巻取管からの距離に関係なく一定、または、前記第2糸層からの距離が増加するに伴い減少しており、前記第3糸層の外表面の第3トラバース幅W3eは、前記第2糸層に隣接する前記第3糸層の第3トラバース幅W3sの90%以上である、
請求項2に記載のパッケージ。
【請求項4】
前記第2糸層に隣接する前記第1糸層の前記第1トラバース幅W1eは、前記第1糸層に隣接する前記第2糸層の前記第2トラバース幅W2sに等しく、
前記第3糸層に隣接する前記第2糸層の前記第2トラバース幅W2eは、前記第2糸層に隣接する前記第3糸層の前記第3トラバース幅W3sに等しい、
請求項3に記載のパッケージ。
【請求項5】
前記第1糸層の厚みT1は、前記第2糸層の厚みT2よりも厚い、
請求項1~4のいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項6】
前記コーン型巻取管の小径側の各糸層の端面を、各糸層の小径側端面とし、前記コーン型巻取管の大径側の各糸層の端面を、各糸層の大径側端面としたとき、
前記コーン型巻取管の中心線を通る断面図で見たとき、
前記第3糸層の大径側端面は、前記コーン型巻取管の巻取面に垂直に形成されている、
請求項1~5のいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項7】
前記コーン型巻取管の小径側の各糸層の端面を、各糸層の小径側端面とし、前記コーン型巻取管の大径側の各糸層の端面を、各糸層の大径側端面としたとき、
前記コーン型巻取管の中心線を通る断面図で見たとき、
前記第2糸層の大径側端面または小径側端面の前記巻取面に垂直な方向に対する傾斜角は、途中で変化している、
請求項1~6のいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項8】
前記コーン型巻取管の小径側の各糸層の端面を、各糸層の小径側端面とし、前記コーン型巻取管の大径側の各糸層の端面を、各糸層の大径側端面としたとき、
前記コーン型巻取管の中心線を通る断面図で見たとき、
前記第2糸層の小径側端面の前記巻取面に垂直な方向に対する傾斜角は、大径側端面の前記巻取面に垂直な方向に対する傾斜角と異なる、
請求項1~7のいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項9】
中心軸から第1角度傾斜したテーパ形状の巻取面を有するコーン型巻取管を準備するステップと、
巻取面と同傾斜の巻取表面が形成されるように糸を巻き取り、糸層を形成するステップと、
を備えたパッケージの製造方法であって、
前記糸層を形成するステップは、
(a)前記巻取管上に、第1トラバース幅W1で、第1糸層を形成するステップと、
(b)前記第1糸層上に、次第に減少する第2トラバース幅W2で、第2糸層を形成するステップと、
(c)前記第2糸層上に、第3トラバース幅W3で、第3糸層を形成するステップと、
を備え、
第1トラバース幅W1は、第3トラバース幅W3に対して、以下の関係を満たすパッケージの製造方法。
W1×1/2 ≦ W3 ≦ W1×2/3
【請求項10】
前記第3糸層の厚みT3は、前記第2糸層の厚みT2よりも厚く、
前記第3糸層の厚みT3は、前記第1糸層の厚みT1よりも厚く、形成する
請求項9に記載のパッケージの製造方法。
【請求項11】
中心軸から第1角度傾斜したテーパ形状の巻取面を有するコーン型巻取管と、前記巻取面と同傾斜の巻取表面が形成されるように糸を巻き取った糸層と、を備えたパッケージを作成する糸巻取装置であって、
巻取管に巻き取られる糸を綾振りする綾振糸ガイドと、
前記綾振糸ガイドを駆動する綾振糸ガイド駆動部と、
前記綾振糸ガイド駆動部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
(a)前記巻取管上に、第1トラバース幅W1で、第1糸層を形成し、
(b)前記第1糸層上に、次第に減少する第2トラバース幅W2で、第2糸層を形成し、
(c)前記第2糸層上に、第3トラバース幅W3で、第3糸層を形成する、
制御モードを備えた糸巻取装置であって、
第1トラバース幅W1は、第3トラバース幅W3に対して、以下の関係を満たす、
糸巻取装置。
W1×1/2 ≦ W3 ≦ W1×2/3
【請求項12】
前記制御部は、前記制御モードにより、
前記第3糸層の厚みT3は、前記第2糸層の厚みT2よりも厚く、
前記第3糸層の厚みT3は、前記第1糸層の厚みT1よりも厚く形成する、
請求項11に記載の糸巻取装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
前記コーン型巻取管の小径側の各糸層の端面を、各糸層の小径側端面とし、前記コーン型巻取管の大径側の各糸層の端面を、各糸層の大径側端面としたとき、前記コーン型巻取管の中心線を通る断面図で見たとき、前記第2糸層の小径側端面の前記巻取面に垂直な方向に対する傾斜角は、大径側端面の前記巻取面に垂直な方向に対する傾斜角と異なっていてもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
トラバースガイド駆動モータ45の作動は、トラバース制御部46により制御される。トラバース制御部46は、専用のマイクロプロセッサによるハードウェア等から構成されており、ユニット制御部50からの信号を受けてトラバースガイド駆動モータ45の運転/停止を制御するように構成されている。