(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055353
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】ルーパー制御装置、ルーパー制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B21C 47/00 20060101AFI20230411BHJP
B65H 23/188 20060101ALI20230411BHJP
B21B 38/06 20060101ALI20230411BHJP
B21B 38/00 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
B21C47/00 F
B65H23/188
B21B38/06
B21B38/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164654
(22)【出願日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 純
(72)【発明者】
【氏名】空尾 謙嗣
【テーマコード(参考)】
3F105
4E026
【Fターム(参考)】
3F105AA08
3F105AB11
3F105BA02
3F105BA18
3F105CA15
3F105CA16
3F105CB01
3F105DA02
3F105DA12
3F105DB05
4E026AA04
4E026AA12
4E026AA18
4E026HA02
4E026HA06
(57)【要約】
【課題】 ルーパー台車を備えるループ貯蔵装置において同期位置を目標位置としてルーパー台車の位置を制御する際の帯状体の張力の制御精度を向上させる。
【解決手段】 ルーパー位置制御部220は、同期位置制御の実行時に、ルーパー台車206とレール208との間の静止摩擦力が発生しないように同期位置を基準同期位置L
sから変更後同期位置L
vに変更する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上工程の設備から搬送される帯状体を一時的に貯め込んで下工程の設備に払い出すループ貯蔵装置における前記帯状体の貯め込み量を調整するために移動路を移動するルーパー台車の位置を制御するルーパー制御装置であって、
前記ルーパー台車の位置を同期位置に制御しているときに、前記ルーパー台車と前記移動路との間の静止摩擦力が発生しないように前記同期位置を変更する同期位置設定変更部を有する、ルーパー制御装置。
【請求項2】
前記同期位置は、予め設定された同期位置の基準値である基準同期位置を含む、請求項1に記載のルーパー制御装置。
【請求項3】
前記同期位置設定変更部は、前記基準同期位置に前記ルーパー台車が位置しているときの前記ループ貯蔵装置における前記帯状体の貯め込み量よりも、前記ループ貯蔵装置における前記帯状体の貯め込み量が少なくなるように前記同期位置を変更する、請求項2に記載のルーパー制御装置。
【請求項4】
前記同期位置設定変更部は、前記同期位置を、第1同期位置および第2同期位置に交互に変更し、
前記第1同期位置は、前記基準同期位置であり、
前記第2同期位置は、前記第1同期位置に前記ルーパー台車が位置しているときの前記ループ貯蔵装置における前記帯状体の貯め込み量よりも、前記ループ貯蔵装置における前記帯状体の貯め込み量が少なくなる前記ルーパー台車の位置である、請求項2または3に記載のルーパー制御装置。
【請求項5】
前記同期位置設定変更部は、前記同期位置を変更した後、前記ループ貯蔵装置における帯状体の貯め込み量を変更するために前記ルーパー台車の移動を開始する前に、前記同期位置を前記基準同期位置に戻す、請求項2~4のいずれか1項に記載のルーパー制御装置。
【請求項6】
前記同期位置設定変更部は、前記上工程または前記下工程の設備で前記帯状体に対する処理を開始するまでの残り時間に基づいて、前記同期位置を前記基準同期位置に戻すか否かを判定し、前記同期位置を前記基準同期位置に戻すと判定すると、前記同期位置を前記基準同期位置に戻す、請求項5に記載のルーパー制御装置。
【請求項7】
変更後の前記同期位置は、周期的に変動し、
前記同期位置設定変更部は、前記上工程または前記下工程の設備で前記帯状体に対する処理を開始するまでの残り時間と、前記ルーパー台車が前記基準同期位置に到達する周期である同期位置到達周期と、に基づいて、前記同期位置を前記基準同期位置に戻すか否かを判定する、請求項6に記載のルーパー制御装置。
【請求項8】
前記同期位置設定変更部は、前記ループ貯蔵装置における帯状体の貯め込み量を変更するために前記ルーパー台車が前記基準同期位置から移動した後、前記ルーパー台車が前記基準同期位置に戻ると、前記同期位置を、前記基準同期位置から変更する、請求項2~7のいずれか1項に記載のルーパー制御装置。
【請求項9】
前記ルーパー台車を移動させるためのモータは、連続静止運転が可能なモータである、請求項1~8のいずれか1項に記載のルーパー制御装置。
【請求項10】
変更後の前記同期位置は、周期的に変動する、請求項1~9のいずれか1項に記載のルーパー制御装置。
【請求項11】
前記移動路は、前記帯状体を搬送するラインの設置面に敷設されている、請求項1~10のいずれか1項に記載のルーパー制御装置。
【請求項12】
上工程の設備から搬送される帯状体を一時的に貯め込んで下工程の設備に払い出すループ貯蔵装置における前記帯状体の貯め込み量を調整するために移動路を移動するルーパー台車の位置を制御するルーパー制御方法であって、
前記ルーパー台車の位置を同期位置に制御しているときに、前記ルーパー台車と前記移動路との間の静止摩擦力が発生しないように前記同期位置を変更する同期位置設定変更ステップを有する、ルーパー制御方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載のルーパー制御装置の各手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーパー制御装置、ルーパー制御方法、およびプログラムに関し、特に、ループ貯蔵装置の動作を制御するために用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
鋼帯(帯状鋼板)等の帯状体を連続的に処理する連続処理ラインにおいては、先行する帯状体の後端と後行する帯状体の先端とが接続された状態で搬送される。連続処理ラインにおいて帯状体を処理する際に帯状体の搬送速度を一時的に減速または停止させる必要が生じる場合がある。例えば、先行する帯状体の後端と後行する帯状体の先端とを接続する場合や、先行する帯状体の後端側を切断する場合に、帯状体の搬送速度を一時的に減速または停止させる必要が生じる。このような場合に帯状体の搬送速度を変えずに帯状体を連続的に処理することができるように、連続処理ラインにはループ貯蔵装置が設置される。ループ貯蔵装置では、ループ貯蔵装置よりも上工程から搬送された帯状体を一時的に貯留することと、一時的に貯留した帯状体をループ貯蔵装置よりも下工程に払い出すことと、が実行される。ループ貯蔵装置において帯状体の進行方向はロールにより変更される。このようにして進行方向が変更される帯状体の長さをロールの位置を変更することで調整することにより、ループ貯蔵装置で一時的に貯留される帯状体の長さが調整される。
【0003】
ループ貯蔵装置には、ロールの位置を変更するためにルーパー台車が設置される(なお、ルーパー台車は、ループカー等とも呼ばれる)。ルーパー台車を予め定められた位置から移動させることにより、ロールの位置を変更することが実行される。この予め定められた位置を同期位置と呼んでいる。ルーパー台車を制御する技術として特許文献1には、ルーパー台車の軸受部分等の摺動面において静止摩擦抵抗が働く状態から動摩擦抵抗が働く状態への過渡的な段階でのルーパー台車の不安定な運動を規制して帯状体に対する張力変動を抑制するために、ルーパー台車が帯状体の貯め込み量を増加する方向と減少する方向とに周期的に移動させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ルーパー台車の位置の目標位置に対する偏差(ルーパー位置基準とルーパー位置フィードバック値との差)に対応する速度と、ブライドルロールの速度基準と、周期的に変化する速度基準と、を加算する。このようにして周期的に変化する速度基準を加算すると、ルーパー台車の位置の目標位置に対する偏差が大きくなり、ルーパー台車の位置の変更量が過剰または過少になる虞がある。すなわち、前述したようにして周期的に変化する速度基準を加算することは、ルーパー台車の位置の目標位置に対する偏差を小さくすることと相反する動作になる。よって、ルーパー台車の位置制御を適切に実行することができない可能性がある。このため、ループ貯蔵装置に貯め込まれている帯状体の張力の実績値が指令値と乖離する虞がある。特に、帯状体の張力の実績値が指令値より低い場合、帯状体がその幅方向において蛇行する虞がある。そうすると、帯状体の形状の不良が生じる虞があり、場合によっては、帯状体の破断や、ループ貯蔵装置等の設備の損傷といった深刻な操業トラブルが生じる虞がある。
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、ルーパー台車を備えるループ貯蔵装置において同期位置を目標位置としてルーパー台車の位置を制御する際に、帯状体の張力の実績値と指令値とが乖離することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のルーパー制御装置は、上工程の設備から搬送される帯状体を一時的に貯め込んで下工程の設備に払い出すループ貯蔵装置における前記帯状体の貯め込み量を調整するために移動路を移動するルーパー台車の位置を制御するルーパー制御装置であって、前記ルーパー台車の位置を同期位置に制御しているときに、前記ルーパー台車と前記移動路との間の静止摩擦力が発生しないように前記同期位置を変更する同期位置設定変更部を有する。
【0008】
本発明のルーパー制御方法は、上工程の設備から搬送される帯状体を一時的に貯め込んで下工程の設備に払い出すループ貯蔵装置における前記帯状体の貯め込み量を調整するために移動路を移動するルーパー台車の位置を制御するルーパー制御方法であって、前記ルーパー台車の位置を同期位置に制御しているときに、前記ルーパー台車と前記移動路との間の静止摩擦力が発生しないように前記同期位置を変更する同期位置設定変更ステップを有する。
【0009】
本発明のプログラムは、前記ルーパー制御装置の各手段としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ルーパー台車を備えるループ貯蔵装置において同期位置を目標位置としてルーパー台車の位置を制御する際に、帯状体の張力の実績値と指令値とが乖離することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】連続溶融めっきラインの構成の一例を示す図である。
【
図2】入側ルーパーの構成の一例を示す模式図である。
【
図3】ルーパー台車が備える、滑車、ワイヤー、およびドラムの構成の一例を示す図である。
【
図4】ルーパー張力制御部の機能的な構成の一例を示す図である。
【
図5A】入側速度および中央速度と時間との関係と、ルーパー台車位置および同期位置と時間との関係の一例を概念的に示す図である。
【
図5B】板張力およびドラムトルクと時間との関係の一例を概念的に示す図である。
【
図6】板張力指令値と板張力実績値とが乖離する理由を説明する図である。
【
図7】第1実施形態におけるルーパー位置制御部の機能的な構成の一例を示す図である。
【
図8】第1実施形態における同期位置設定変更部の動作の一例を説明する図である。
【
図9】同期位置偏差とルーパー台車速度との関係の一例を示す図である。
【
図10】第1実施形態におけるルーパー位置制御方法の一例を説明するフローチャートである。
【
図11】第2実施形態におけるルーパー位置制御部の機能的な構成の一例を示す図である。
【
図12】第2実施形態における同期位置設定変更部の動作の一例を説明する図である。
【
図13】第2実施形態におけるルーパー位置制御方法の一例を説明するフローチャートである。
【
図14】第3実施形態におけるルーパー位置制御部の機能的な構成の一例を示す図である。
【
図15】第3実施形態における同期位置設定変更部の動作の一例を説明する図である。
【
図16】第3実施形態におけるルーパー位置制御方法の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
なお、長さ、位置、大きさ、間隔等、比較対象が同じであることは、厳密に同じである場合の他、発明の主旨を逸脱しない範囲で異なるもの(例えば、設計時に定められる公差の範囲内で異なるもの)も含むものとする。また、各図において、表記および説明の都合上、構成の一部を簡略化または省略している。また、各図において、x-y-z座標は、各図の向きの関係を示す。x-y-z座標を表記する記号として、〇(白丸)の中に●(黒丸)が付されている記号は、紙面の奥側から手前側に向かう方向が正の方向を示す軸であることを示す。
【0013】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態を説明する。
<連続処理ライン>
本実施形態では、連続処理ラインにループ貯蔵装置を適用する場合を例示する(以下、ループ貯蔵装置をルーパーと呼ぶ)。連続処理ラインでは、先行する帯状体の後端と後行する帯状体の先端とを接続して複数の帯状体を連続的に処理する。本実施形態では、このような連続処理ラインとして連続溶融めっきラインを例示する。
図1は、本実施形態のループ貯蔵装置の適用例である連続溶融めっきラインの構成の一例を示す図である。
図1において、帯状体の一例である鋼帯Sはy軸の正の方向に搬送され、鋼帯Sの幅方向がx軸方向である場合を例示する。
【0014】
図1において、ペイオフリール101には、冷間圧延工程で製造された冷延コイルが取り付けられる。ペイオフリール101に取り付けられた冷延コイルから巻き戻された鋼帯Sは、製造ラインに供給される。なお、ペイオフリール101aに取り付けられた冷延コイルの製造ラインへの供給が終了すると、ペイオフリール101bに取り付けられた冷延コイルの製造ラインへの供給が実行される。すなわち、ペイオフリール101a、101bに取り付けられた冷延コイルは、製造ラインへ交互に供給される。
【0015】
冷延コイルから巻き戻された鋼帯Sは、溶接設備102に搬送される。溶接設備102は、冷延コイルから巻き戻された鋼帯Sの先端と、当該鋼帯Sに先行して搬送されている鋼帯Sの後端とを溶接して接合する。なお、ここでは、連続処理ラインとして連続溶融めっきラインを例示し、冷延コイルから巻き戻された鋼帯Sが帯状体である場合を例示するが、帯状体は冷延コイルから巻き戻された鋼帯Sに限定されない。例えば、帯状体は熱延コイルから巻き戻された鋼帯Sであっても良い。
溶接設備102において先行する鋼帯Sと接合された鋼帯Sは、入側ルーパー103に搬送される。ここで、ペイオフリール101から入側ルーパー103までを入側セクション(第1セクション)と呼んでいる。入側ルーパー103は、上工程の設備の一例である溶接設備102から搬送される鋼帯Sを一時的に貯め込んで下工程の設備の一例である焼鈍炉104に払い出す。焼鈍炉104は、鋼帯Sを連続焼鈍する。
【0016】
先行する鋼帯Sの後端と後行する鋼帯Sの先端とを溶接設備102で溶接する際には、これらの鋼帯Sの搬送を一時的に停止する必要がある。このような場合、入側ルーパー103は、入側ルーパー103で貯め込んでいる鋼帯Sの貯め込み量を減らしながら鋼帯Sを焼鈍炉104に払い出す。このようにすることにより、入側ルーパー103よりも下工程(焼鈍炉104等)における鋼帯Sの搬送速度を低下させることなく、鋼帯Sを連続的に処理することができる。
【0017】
めっき設備105は、焼鈍炉104で連続焼鈍された鋼帯Sの表面に対して溶融亜鉛めっき等により連続的にめっき処理を施す。調質圧延機106は、めっき設備105でめっき処理が施された鋼帯Sを調質圧延する。ここで、焼鈍炉104から調質圧延機106までを中央セクション(第2セクション)と呼んでいる。
【0018】
調質圧延機106で調質圧延された鋼帯Sは、出側ルーパー107に搬送される。出側ルーパー107は、上工程の設備の一例である調質圧延機106から搬送される鋼帯Sを一時的に貯め込んで下工程の設備の一例である切断設備108に払い出す。テンションリール109は、鋼帯Sを巻き取り、めっき済コイルとする。なお、テンションリール109aへの鋼帯Sの巻き取りが終了すると、テンションリール109bへの鋼帯Sの巻き取りが実行される。すなわち、テンションリール109a、109bへの鋼帯Sの巻き取りは、交互に実行される。切断設備108は、出側ルーパー107とテンションリール109との間の位置に設置される。切断設備108は、テンションリール109への鋼帯Sの巻き取り量(長さ)が所定量になると、鋼帯Sを幅方向(x軸方向)に切断する。ここで、出側ルーパー107からテンションリール109までを出側セクション(第3セクション)と呼んでいる。
【0019】
鋼帯Sを切断設備108で切断する際には、当該鋼帯Sの搬送を一時的に停止する必要がある。このような場合、出側ルーパー107は、出側ルーパー107で貯め込んでいる鋼帯Sの貯め込み量を増やしながら鋼帯Sを切断設備108に払い出す。このようにすることにより、出側ルーパー107よりも上工程(中央セクション)における鋼帯Sの搬送速度を低下させることなく、鋼帯Sを連続的に処理することができる。
【0020】
なお、連続溶融めっきライン自体は公知の技術で実現することができ、
図1に例示するものに限定されない。また、連続溶融めっきラインは、
図1に例示する設備の他、公知の連続溶融めっきラインが備える設備を備えていても良い。連続溶融めっきラインは、鋼帯Sを搬送するための搬送ロール等、不図示の各種のロールを備える。
【0021】
図1において、ルーパー制御装置110は、入側ルーパー103および出側ルーパー107の動作を制御する装置である。
速度制御装置111(111a~111b)は、ルーパー制御装置110からの指令に基づいて、鋼帯Sの搬送速度を制御する。速度制御装置111aは、入側ルーパー103よりも上流側(y軸の負の方向側)の鋼帯Sの搬送速度を制御する。速度制御装置111bは、出側ルーパー107よりも下流側(y軸の正の方向側)における鋼帯Sの搬送速度を制御する。ルーパー制御装置110と速度制御装置111a~111bとの通信形態は、有線通信であっても無線通信であっても良い。
【0022】
ここで、入側ルーパー103および出側ルーパー107は、同じ構成を有する。前述したように入側ルーパー103は、上工程の設備において鋼帯Sの搬送速度を低下させて0(零)にする際に、鋼帯Sの貯め込み量を減らしながら鋼帯Sを下工程の設備に払い出す。これに対し出側ルーパー107は、下工程の設備において鋼帯Sの搬送速度を低下させて0(零)にする際に、鋼帯Sの貯め込み量を増やしながら鋼帯Sを下工程の設備に払い出す。したがって、出側ルーパー107の説明においては、入側ルーパー103の説明に対し、以下の置き換えを行うことになる。まず、上工程の設備(溶接設備102)を、下工程の設備(切断設備108)に置き換える。また、入側ルーパー103よりも上流側(y軸の負の方向側)の鋼帯Sの搬送速度を、出側ルーパー107よりも下流側の鋼帯Sの搬送速度に置き換える。また、上工程の設備(溶接設備102)における操業のために鋼帯Sの搬送を停止させる際に入側ルーパー103において鋼帯Sの貯め込み量を減らす動作を、下工程の設備(切断設備108)における操業のために鋼帯Sの搬送を停止させる際に出側ルーパー107において鋼帯Sの貯め込み量を増やす動作に置き換える。また、速度制御装置111bの説明は、速度制御装置111aの説明において、入側ルーパー103よりも上流側(y軸の負の方向側)の鋼帯Sの搬送速度を、出側ルーパー107よりも下流側における鋼帯Sの搬送速度に置き換えたものとなる。以上のことから、以下では、入側ルーパー103および速度制御装置111aを例に挙げて説明し、出側ルーパー107および速度制御装置111bについての詳細な説明を省略する。
なお、連続溶融めっきラインには、ルーパー制御装置110および速度制御装置111a~11b以外にも、連続溶融めっきラインを制御する不図示の制御装置が設置される。当該不図示の制御装置は、公知の技術で実現することができるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0023】
<ループ貯蔵装置(入側ルーパー103)>
図2は、入側ルーパー103の構成の一例を示す模式図である。
図2には、ルーパー制御装置110および速度制御装置111aも併せて示す。なお、
図2において、鋼帯Sに付している記号(>、<)は、鋼帯Sの搬送方向を示す記号であり、当該記号の先端に向かう方向に鋼帯Sが搬送されることを示す。
図2において、入側ルーパー103は、入側ロールモータ201(201a~201b)と、入側ブライドルロール202(202a~202b)と、ルーパーロール203(203a~203h)と、中央側ロールモータ204(204a~204b)と、中央側ブライドルロール205(205a~205b)と、ルーパー台車206と、ルーパーモータ207と、レール208と、張力検知器209と、速度検知器210と、を備える。
【0024】
入側ロールモータ201a~201bは、速度制御装置111aによる制御に従って回転する。入側ロールモータ201a~201bの回転速度によって、入側ルーパー103よりも上流側(y軸の負の方向側)の鋼帯Sの搬送速度が定められる。以下の説明では、入側ルーパー103よりも上流側(y軸の負の方向側)の鋼帯Sの搬送速度を、入側速度と呼ぶ。本実施形態では、入側ロールモータ201a~201bは、三相交流モータである。ただし、入側ロールモータ201a~201bは、三相交流モータに限定されず、三相以外の交流モータであっても、直流モータであっても良い。
【0025】
入側ブライドルロール202a~202bは、入側ロールモータ201a~201bの回転に伴って回転する駆動ロールである。入側ブライドルロール202a~202bの回転速度に基づいて入側速度が定まる。また、入側ブライドルロール202a~202bによって鋼帯Sの進行方向が変更される。
【0026】
ルーパーロール203a~203hは、入側ルーパー103に一時的に貯留される鋼帯Sの進行方向を変更するための無駆動ロール(モータにより駆動しないロール)である。本実施形態では、入側ルーパー103がいわゆる横型ルーパーである場合を例示する。横型ルーパーとは、ルーパー台車206の移動方向(レール208の延設方向)と、鋼帯Sが受ける重力の方向とのなす角度が略90°になるように鋼帯Sが搬送されるように構成されるルーパーである。したがって、ルーパーロール203a~203hは、鋼帯Sの幅方向(x軸方向)から見た場合に、ルーパー台車206の移動方向(y軸方向)における鋼帯Sの進行方向が交互に変わるように配置される。また、ルーパーロール203a~203eは移動しないのに対し、ルーパーロール203f~203hは、ルーパー台車206に取り付けられており、ルーパー台車206の移動に伴って移動する。また、ルーパーロール203cには、入側ルーパー103に貯留されている鋼帯Sにかかる張力を検知する張力検知器209が取り付けられている。なお、張力検知器209が取り付けられる位置は、入側ルーパー103内または入側ルーパー103付近を搬送中の鋼帯Sの張力を検知できる位置であれば、入側ルーパー103内のルーパーロール203a~203h(
図2ではルーパーロール203c)に限定されない。
【0027】
中央側ロールモータ204a~204bは、不図示の速度制御装置による制御に従って回転する。中央側ロールモータ204a~204bの回転速度によって、中央セクションにおける鋼帯Sの搬送速度が定められる。以下の説明では、中央セクションにおける鋼帯Sの搬送速度を、中央速度と呼ぶ。中央速度は、中央セクションの設備(焼鈍炉104、めっき設備105、調質圧延機106)の能力および状態等に応じて定まる。本実施形態では、中央側ロールモータ204a~204bは、三相交流モータである。ただし、中央ロールモータ204a~204bは、三相交流モータに限定されず、三相以外の交流モータであっても、直流モータであっても良い。
【0028】
中央側ブライドルロール205a~205bは、中央側ロールモータ204a~204bの回転に伴って回転する駆動ロールである。中央側ブライドルロール205a~205bの回転速度に基づいて中央速度が定まる。また、中央側ブライドルロール205a~205bによって鋼帯Sの進行方向が変更される。
【0029】
ルーパー台車206は、移動路の一例であるレール208上を移動する。本実施形態では、レール208は、連続溶融めっきラインの設置面(床面)に沿って敷設されている。前述したように本実施形態では、入側ルーパー103がいわゆる横型ルーパーである場合を例示し、レール208の延設方向(ルーパー台車206の移動方向)と、鋼帯Sが受ける重力の方向とのなす角度が略90°である場合を例示する。具体的に、ルーパー台車206がy軸方向に移動し、鋼帯Sがz軸の負の方向に重力を受ける場合を例示する。前述したようにルーパーロール203f~203hは、ルーパー台車206に取り付けられている。このため、ルーパーロール203f~203hは、ルーパー台車206の移動に伴い、y軸方向に移動する。
【0030】
図2において、y軸の正の方向側を貯め込み側と呼び、y軸の負の方向側を払い出し側とも呼ぶ。
図2に示すように本実施形態では、ルーパー台車206がy軸の最も負の方向側(払い出し側)に位置するときのルーパー台車206のy軸方向の位置を原点0として、ルーパー台車206のy軸方向の位置を定めるものとする。したがって、ルーパー台車206のy軸方向の位置の値は0(零)以上の値を有する。ルーパー台車206がy軸の正の方向側(貯め込み側)に移動すると、入側ルーパー103における鋼帯Sの貯め込み量は増加する。一方、ルーパー台車206がy軸の負の方向側(払い出し側)に移動すると、入側ルーパー103における鋼帯Sの貯め込み量は減少する。ここで、ルーパー台車206のy軸方向の位置は、例えば、ルーパー台車206の重心におけるy軸方向の位置である。以下の説明では、ルーパー台車206のy軸方向の位置を、単にルーパー台車206の位置と呼ぶ。
【0031】
入側速度と中央速度とが同じ期間(溶接設備102での溶接を実行するために入側速度を変更していない期間)においては、ルーパー台車206が同期位置に位置するようにルーパー台車206の位置は制御される。
図2では、ルーパー台車206の同期位置の基準値である基準同期位置をL
sと表記する。後述するように本実施形態では、基準同期位置L
sを基準にして同期位置が変更される。ルーパー台車206の基準同期位置L
sは、例えば、溶接設備102での溶接を実行するために溶接設備102の位置で鋼帯Sを停止させる時間として想定される時間と、中央速度として想定される速度とに基づいて、溶接設備102の位置で鋼帯Sを停止させている間に入側ルーパー103に貯め込まれている鋼帯Sの払い出し量が不足しないように予め設定される。ルーパー台車206が基準同期位置L
sよりもy軸の正の方向側(貯め込み側)に移動すると、入側ルーパー103に鋼帯Sが貯め込まれる。一方、ルーパー台車206が基準同期位置L
sよりもy軸の負の方向側(払い出し側)に移動すると、入側ルーパー103に貯め込まれている鋼帯Sは中央セクション(焼鈍炉104)に払い出される。
【0032】
図2において、ルーパー台車206は、滑車211と、ワイヤー212と、ドラム213と、台車本体部214と、を備える。台車本体部214は、レール208の上に位置する車輪214aと、滑車211およびルーパーロール203f~203h等を支持する架台214bとを有する。
ドラム213にはルーパーモータ207が取り付けられている。ルーパーモータ207は、ドラム213を回転させるためのモータである。本実施形態では、ルーパーモータ207は、三相交流モータである。ルーパーモータ207は、三相交流モータに限定されず、三相以外の交流モータであっても、直流モータであっても良い。ただし、ルーパーモータ207は、連続静止運転が可能なモータであるのが好ましい。連続静止運転が可能なモータとは、仮にルーパー台車206が静止しても、帯状体Sの張力に対抗するトルクを出力することが可能モータである。連続静止運転が可能なモータをルーパーモータ207として用いることにより、仮にルーパー台車206が静止してもルーパーモータ207の運転を止める必要がなくなり、後述するルーパー張力制御部230による制御応答を速くすることができる。
【0033】
また、ルーパーモータ207として直流モータを用いると、同期位置制御の実行時に、同一の整流子に電流が流れ続けるため、モータが耐熱温度を上回る温度まで発熱する虞がある。これに対し、ルーパーモータ207として、交流モータを用いることにより、仮にルーパー台車206が静止しても同一のロータコイルに電流が流れ続けることを抑制することができ、特別な構成を有していなくても連続静止運転が可能になる。
ドラム213は、ルーパーモータ207の回転に伴い回転する。ルーパーモータ207には、ルーパーモータ207の回転速度を検知する速度検知器210が取り付けられている。ドラム213の回転に伴い、ドラム213へのワイヤー212の巻き取りと、ドラム213からのワイヤー212の巻き戻しとが実行される。
【0034】
図3は、ルーパー台車206が備える、滑車211、ワイヤー212、およびドラム213の構成の一例を示す図である。
図3は、
図2に示すルーパー台車206を上から(z軸に沿って)見た図である。ここでは、
図3(a)に示す動滑車タイプのルーパー台車206と、
図3(b)に示す定滑車タイプのルーパー台車206を例示する。
【0035】
図3(a)に示す動滑車211aは、回転自在となるようにルーパー台車206の台車本体部214に取り付けられている。動滑車211aの回転軸はz軸に略平行である。ワイヤー212の延設方向は、動滑車211aの位置で反転する。ワイヤー212の一端は、位置が固定されて動かない固定端215に固定されている。ワイヤー212の他端は、ドラム213aに取り付けられている。ルーパーモータ207の回転軸とドラム213aの回転軸とは同軸であり、x軸に略平行である。ルーパーモータ207の回転に伴いドラム213aおよび動滑車211aが回転してドラム213aにおけるワイヤー212の巻き取り量が変更される。
【0036】
図3(b)に示す定滑車211bは、ルーパー台車206の本体に取り付けられている。定滑車211bは回転しない。ワイヤー212の延設方向は、定滑車211bの位置で反転する、ワイヤー212の一端および他端は、ドラム213bに取り付けられている。ルーパーモータ207の回転軸とドラム213aの回転軸とは同軸であり、x軸に略平行である。ルーパーモータ207の回転に伴いドラム213bが回転してドラム213bにおけるワイヤー212の巻き取り量が変更される。
ルーパー台車206は、
図3(a)に示す動滑車タイプであっても
図3(b)に示す定滑車タイプであっても良い。
【0037】
<ルーパー制御装置110>
次に、ルーパー制御装置110について説明する。本実施形態では、ループ貯蔵装置として入側ルーパー103を例に挙げてルーパー制御装置110の機能および処理を例示するが、前述したように、出側ルーパー107を制御する場合には、以下のルーパー制御装置110の説明において、溶接設備102を切断設備108に置き換え、入側速度を出側速度(出側ルーパー107よりも下流側の鋼帯Sの搬送速度)に置き換え、溶接設備102における操業のために鋼帯Sの搬送を停止させる際に入側ルーパー103において鋼帯Sの貯め込み量を減らす動作を、切断設備108における操業のために鋼帯Sの搬送を停止させる際に出側ルーパー107において鋼帯Sの貯め込み量を増やす動作に置き換えれば良い。したがって、出側ルーパー107を制御する場合のルーパー制御装置110の詳細な説明を省略する。
【0038】
図2に示すようにルーパー制御装置110は、ルーパー位置制御部220と、ルーパー張力制御部230と、を備える。ルーパー位置制御部220は、ルーパー台車206の位置を制御する。本実施形態では、ルーパー位置制御部220は、入側速度を操作することによりルーパー台車206の位置を制御する。具体的にルーパー位置制御部220は、入側速度の指令値である入側速度指令値を速度制御装置111aおよびルーパー張力制御部230に出力する。速度制御装置111aは、入側速度指令値に応じた回転速度になるような励磁電流を入側ロールモータ201a~201bに流すことにより、入側ロールモータ201a~201bを制御する。
【0039】
ルーパー張力制御部230は、入側ルーパー103に一時的に貯め込まれている鋼帯Sの張力を制御する。本実施形態では、ルーパー張力制御部230は、ルーパーモータ207を操作することにより鋼帯Sの張力を制御する。具体的にルーパー張力制御部230は、入側ルーパー103に貯め込まれている鋼帯Sの張力の指令値に対する実績値の偏差を打ち消すようなルーパーモータ207のトルクを算出し、算出したトルクが発生するような励磁電流を生成してルーパーモータ207に出力することにより、ルーパーモータ207を制御する。ここで、ルーパーモータ207のトルクは、ドラム213のトルクに対応する。そこで、以下の説明では、ルーパーモータ207のトルクを、ドラムトルクと呼ぶ。
なお、ルーパー制御装置110のハードウェアは、例えば、処理装置(例えば中央処理装置)、記憶装置(例えば主記憶装置および補助記憶装置)、および各種のインターフェース装置を備える情報処理装置、または専用のハードウェアを用いることにより実現される。
【0040】
<<ルーパー張力制御部230>>
図4は、ルーパー張力制御部230の機能的な構成の一例を示す図である。
操業実績取得部401は、連続溶融めっきラインにおける操業実績値を取得する。例えば、操業実績取得部401は、張力検知器209で検知された鋼帯Sにかかる張力と、速度検知器210で検知されたルーパーモータ207の回転速度と、を取得する。以下では、張力検知器209で検知された鋼帯Sにかかる張力を板張力実績値と呼ぶ。また、ルーパーモータ207の回転速度は、ルーパー台車206の移動速度に対応する。以下では、速度検知器210で検知されたルーパーモータ207の回転速度を台車速度実績値と呼ぶ。なお、ここでは、説明を簡単にするため、ルーパーモータ207の回転速度を台車速度実績値とする場合を例示する。しかしながら、より正確に台車速度実績値を定める際には、ルーパーモータ207の回転速度と、ルーパーモータ207のギア比と、ドラム213bの外径Dと、滑車のタイプ(滑車が動滑車および定滑車)と、に基づいて、台車速度実績値を算出するのが好ましい。例えば、台車速度実績値は、台車速度実績値[mpm]=モータ回転速度[rpm]×(1/ギア比[-])×πD[m]/C[-]により算出される(ただし、Cは、定滑車の場合に1、動滑車の場合に2となる変数である)。
【0041】
操業指令取得部402は、連続溶融めっきラインにおける操業指令を取得する。本実施形態では、操業指令取得部402が、連続溶融めっきラインにおける操業指令を、外部装置であるライン管理コンピュータ420から取得する場合を例示する。ライン管理コンピュータ420は、連続溶融めっきラインにおける操業を管理するコンピュータである。例えば、操業指令取得部402は、入側ルーパー103に貯め込まれる鋼帯Sにかかる張力の指令値と、中央速度の指令値と、を取得する。以下の説明では、入側ルーパー103に貯め込まれる鋼帯Sにかかる張力の指令値を板張力指令値と呼び、中央速度の指令値を中央速度指令値と呼ぶ。また、操業指令取得部402は、入側速度の指令値をルーパー位置制御部220から取得する。以下の説明では、入側速度の指令値を入側速度指令値と呼ぶ。なお、ルーパー制御装置110とライン管理コンピュータ420との通信形態は、有線通信であっても、無線通信であっても良い。また、ライン管理コンピュータ420の中にルーパー制御装置110が含まれていても良い。また、連続溶融めっきラインにおける操業指令(板張力指令値、中央速度指令値、入側速度指令値など)の少なくとも1つは、例えば、オペレータが手動で設定しても良い。このようにする場合、操業指令取得部402は、例えば、ルーパー制御装置110のユーザインターフェースを用いてオペレータが設定した操業指令を取得する。
【0042】
張力偏差算出部403は、入側ルーパー103に貯め込まれる鋼帯Sにかかる張力の、指令値に対する実績値の偏差を算出する。以下の説明では、入側ルーパー103に貯め込まれる鋼帯Sにかかる張力の、指令値に対する実績値の偏差を、板張力偏差と呼ぶ。本実施形態では、張力偏差算出部403は、板張力指令値から板張力実績値を減算することにより、板張力偏差を算出する。
PI制御部404は、PI制御を実行して板張力偏差を打ち消すような張力の変更量である張力変更量を算出する。
張力加算部405は、板張力指令値と張力変更量とを加算することにより、板張力偏差を打ち消すような張力を算出する。
【0043】
トルク換算部406は、張力加算部405により算出された張力をトルクに換算する。例えば、トルク換算部406は、ルーパーモータ207のトルクと、入側ルーパー103に貯め込まれている鋼帯Sの張力との関係式を予め記憶しており、この関係式を用いて張力加算部405により算出された張力をトルクに換算する。なお、関係式に代えてルックアップテーブルを用いても良い。
【0044】
メカロス補償部407は、ルーパー台車206における機械的損失を補償するトルクの補償量を算出する。例えば、メカロス補償部407は、ルーパー台車206の移動速度と、トルクの補償量との関係式を予め記憶しており、この関係式と台車速度実績値とを用いてトルクの補償量を算出する。なお、関係式に代えてルックアップテーブルを用いても良い。
第1トルク加算部408は、トルク換算部406で換算されたトルクと、メカロス補償部407で算出されたトルクの補償量とを加算する。この加算値は、板張力偏差を打ち消すようなトルクに対し、ルーパー台車206における機械的損失が補償されたトルクである。以下の説明では、このようにしてルーパー台車206における機械的損失が補償されたトルクを第1補償後トルクと呼ぶ。
【0045】
慣性補償部409は、ルーパー台車206に生じる慣性を補償するトルクの補償量を算出する。例えば、慣性補償部409は、台車速度実績値を一階微分することによりルーパー台車206の加速度を算出し、ルーパー台車206の加速度に定数を乗算した値をトルクの補償量として算出する。
第2トルク加算部410は、第1トルク加算部408で算出された第1補償後トルクと、慣性補償部409で算出されたトルクの補償量とを加算する。この加算値は、第1補償後トルクに対し、ルーパー台車206に生じる慣性が補償されたトルクである。すなわち、この加算値は、板張力偏差を打ち消すようなトルクに対し、ルーパー台車206における機械的損失と、ルーパー台車206に生じる慣性とが補償されたトルクである。以下の説明では、このようにしてルーパー台車206における機械的損失と、ルーパー台車206に生じる慣性とが補償されたトルクを第2補償後トルクと呼ぶ。
【0046】
速度差算出部411は、入側速度指令値と中央速度指令値との差を算出する。本実施形態では、速度差算出部411は、入側速度指令値から中央速度指令値を減算することにより、入側速度指令値と中央速度指令値との差を算出する。以下の説明では、入側速度指令値と中央速度指令値との差を、入側中央速度差と呼ぶ。
【0047】
台車速度換算部412は、速度差算出部411で算出された入側中央速度差を、ルーパー台車206の移動速度に換算する。例えば、台車速度換算部412は、連続溶融めっきラインにおける鋼帯Sの搬送速度と、ルーパー台車206の移動速度との関係式を予め記憶しており、この関係式を用いて速度差算出部411で算出された入側中央速度差を、ルーパー台車206の移動速度に換算する。なお、関係式に代えてルックアップテーブルを用いても良い。このようにして台車速度換算部412により換算されるルーパー台車206の移動速度は、ルーパー台車206の移動速度の指令値に対応する。以下の説明では、台車速度換算部412により換算されるルーパー台車206の移動速度を、台車速度指令値と呼ぶ。
【0048】
速度偏差算出部413は、台車速度指令値に対する台車速度実績値の偏差を算出する。以下の説明では、台車速度指令値に対する台車速度実績値の偏差を、台車速度偏差と呼ぶ。本実施形態では、速度偏差算出部413は、台車速度指令値から台車速度実績値を減算することにより、台車速度偏差を算出する。
【0049】
ASR(Automatic Speed Regulator)補償部414は、台車速度偏差を補償するトルクの補償量を算出する。例えば、ASR補償部414は、台車速度偏差にゲインを乗算することにより、台車速度偏差を補償するトルクの補償量を算出する。これにより、後述するルーパー位置制御部220による同期位置の変更に応じてルーパー台車206が移動して入側速度が変化した場合でも、鋼帯Sの張力の変動を抑制する(板張力指令値に板張力実績値を近づける)ことができる。
【0050】
第3トルク加算部415は、第2トルク加算部410で算出された第2補償後トルクとASR補償部414で算出されたトルクの補償量とを加算する。この加算値は、第2補償後トルクに対し、ルーパー台車206の移動速度の指令値に対する実績値の差が補償されたトルクである。すなわち、この加算値は、板張力偏差を打ち消すようなトルクに対し、ルーパー台車206における機械的損失と、ルーパー台車206に生じる慣性と、ルーパー台車206の移動速度の指令値に対する実績値の差とが補償されたトルクである。以下の説明では、このようにしてルーパー台車206における機械的損失と、ルーパー台車206に生じる慣性と、ルーパー台車206の移動速度の指令値に対する実績値の差とが補償されたトルクを、第3補償後トルクと呼ぶ。本実施形態では、第3補償後トルクが、入側ルーパー103に貯め込まれている鋼帯Sの張力の指令値と実績値との差を打ち消すトルク(ドラムトルク)として算出される。
【0051】
駆動部416は、インバータ回路を備え、第3トルク加算部415で算出された第3補償後トルクに対応する励磁電流を生成してルーパーモータ207に出力する。
なお、ルーパー張力制御部230の構成は
図4に示す構成に限定されず、公知の張力制御器を用いても良い。例えば、ルーパー張力制御部230は、板張力偏差を入力とし、ルーパーモータ207のトルク(ドラムトルク)を出力とするPI制御器を用いて、板張力偏差を打ち消すようなドラムトルクを算出しても良い。また、駆動部416をルーパー張力制御部230の外部に設置しても良い。
【0052】
<<知見>>
ここで、本発明者らが見出した知見について説明する。
図5Aおよび
図5Bは、ルーパー台車206の一般的な位置制御の一例を説明する図である。
図5Aは、入側速度および中央速度と時間との関係と(上のグラフ)、ルーパー台車位置(ルーパー台車206の位置)および同期位置と時間との関係(下のグラフ)の一例を概念的に示す図である。
図5Bは、板張力(入側ルーパー103に貯め込まれている鋼帯Sの張力)およびドラムトルク(ルーパーモータ207のトルク)と時間との関係の一例を概念的に示す図である。
図5Aの上のグラフにおいて、入側速度501を実線で示し、中央速度502を破線で示す。
図5Aの下のグラフにおいて、ルーパー台車206の位置511を実線で示し、同期位置512を破線で示す。
【0053】
時刻t1は、溶接設備102での溶接を実行するために入側速度を下げること(減速)を開始し、ルーパー台車206が同期位置512(基準同期位置Ls)から払い出し側(y軸の負の方向側)に移動を開始する時刻である。時刻t2は、溶接設備102での溶接が終了し、入側速度501を上げること(加速)を開始する時刻である。時刻t3は、ルーパー台車206が貯め込み側(y軸の正の方向側)に移動を開始する時刻である。時刻t4は、入側速度501が中央速度502と同じになり、ルーパー台車206の位置511が同期位置512(基準同期位置Ls)に戻る時刻である。
【0054】
また、
図5Aの上のグラフにおいて、ONと表記している期間は、ルーパー台車206の位置511が同期位置512(基準同期位置L
s)となるようにルーパー台車206の位置を制御している期間である。一方、OFFと表記している期間は、ルーパー台車206の位置が同期位置512となるようにルーパー台車206の位置を制御していない期間である。
図5Aに示す例では、溶接設備102での溶接を実行するために入側速度を変更していない期間(時刻t
1よりも前の期間と時刻t
4よりも後の期間)では、入側速度501と中央速度502とは同じであり、ルーパー台車206の位置511は基準同期位置L
sで固定される。
【0055】
本発明者らは、
図5Aのルーパー台車206の位置511に示すように、溶接設備102での溶接を実行するために入側速度501を変更していない期間にルーパー台車206の位置を基準同期位置L
sに固定すると、
図5Bに示すように板張力指令値521を増加させて、ルーパーモータ207のトルクの実績値(トルク実績値522)が増加しても、板張力実績値523は増加せずに、板張力実績値523と板張力指令値521との乖離が大きくなるという知見を得た。すなわち、ルーパー台車206が静止状態の場合、板張力指令値の変更に対して板張力実績値が追従せずに、鋼帯Sの張力の制御精度が低下する。発明が解決しようとする課題の欄に記載したように、鋼帯Sの張力(板張力実績値)が板張力指令値より低いと、鋼帯Sがその幅方向において蛇行する虞がある。そうすると、鋼帯Sの形状の不良の発生が生じる虞があり、場合によっては、鋼帯Sの破断や、ループ貯蔵装置等の設備の損傷といった深刻な操業トラブルが生じる虞がある。
【0056】
図6は、板張力指令値521と板張力実績値523とが乖離する理由を説明する図である。
図6(a)は、静止しているルーパー台車206の移動を開始するときに生じる力の一例を概念的に示す図である。
図6(b)は、摩擦力と外力との関係の一例を概念的に示す図である。
【0057】
図6(a)では、静止しているルーパー台車206が貯め込み側(y軸の正の方向側)に移動を開始する場合を例示する。この場合、ルーパー台車206には、鋼帯Sの張力(板張力)に基づく払い出し側(y軸の負の方向側)への外力が働く(
図6(a)の傍らに板張力と記載している白抜きの矢印線を参照)。また、ルーパー台車206には、ルーパーモータ207(ドラム213)のトルクに基づく貯め込み側への外力が働く(
図6(a)の傍らにドラムトルクと記載している白抜きの矢印線を参照)。これらの外力の他に、静止しているルーパー台車206には、ルーパー台車206とレール208との間の静止摩擦力が払い出し側に生じる(
図6(a)の傍らに摩擦力と記載している白抜きの矢印線を参照)。
図6(b)に示すように、物体と当該物体の接触面との間の最大静止摩擦力を上回る外力が与えられなければ、物体に外力が与えられても当該物体は移動しない。したがって、静止しているルーパー台車206を貯め込み側に移動させるためには、ドラムトルクに基づく外力から板張力に基づく外力を減算した値が、ルーパー台車206とレール208との間の最大静止摩擦力よりも大きくなる必要がある(ドラムトルクに基づく外力-板張力に基づく外力>最大静止摩擦力)。
【0058】
以上のように、ルーパー台車206を備えるループ貯蔵装置(入側ルーパー103)では、静止しているルーパー台車206を移動させるために、ルーパー台車206とレール208との間の最大静止摩擦力よりも大きな外力をルーパー台車206に与えなければならない。例えば、ループ貯蔵装置における帯状体Sの貯め込み量の増大や、ループ貯蔵装置とその周辺設備との設置スペースの取り合いに対応するために、ルーパー台車206が大型化すると、ルーパー台車206の質量が増加する。そうすると、ルーパー台車206とレール208との間の最大静止摩擦力が大きくなり、当該最大静止摩擦力の影響が大きくなる。このような観点から、ルーパー台車206の位置を同期位置に制御するに際し、ルーパー台車206を移動させるために、速度指令値(入側速度指令値)そのものを変更すると、発明が解決しようとする課題の欄で説明したように、ルーパー台車206の位置を適切に制御することができない。そこで、本発明者らは、ルーパー台車206の位置を同期位置に制御するに際し、ルーパー台車206とレール208との間の静止摩擦力が発生しないように同期位置を変更することを着想した。以下にこのようにしてルーパー台車206の位置を制御するルーパー位置制御部220の一例を説明する。なお、入側ルーパー103においては、溶接設備102の位置で鋼帯Sを停止させる場合、鋼帯Sの中央セクションへの払い出しのためにルーパー台車206は基準同期位置Lsから移動する。一方、出側ルーパー107においては、切断設備108の位置で鋼帯Sを停止させる場合、出側ルーパー107における鋼帯Sの貯め込みのためにルーパー台車206は基準同期位置Lsから移動する。
【0059】
<<ルーパー位置制御部220>>
図7は、ルーパー位置制御部220の機能的な構成の一例を示す図である。
操業実績取得部701は、連続溶融めっきラインにおける操業実績値を取得する。例えば、操業実績取得部701は、速度検知器210で検知されたルーパーモータ207の回転速度(台車速度実績値)を取得する。
【0060】
操業指令取得部702は、連続溶融めっきラインにおける操業指令を取得する。本実施形態では、操業指令取得部702が、連続溶融めっきラインにおける操業指令を、ライン管理コンピュータ420から取得する場合を例示する。例えば、操業指令取得部702は、中央速度の指令値と、溶接準備開始指令と、溶接完了指令と、を取得する。なお、
図7では、表記の都合上、操業指令取得部702から入側速度指令生成部708に向かう矢印線の傍らに、溶接準備開始指令と溶接完了指令を溶接指令と総称して表記している。
【0061】
溶接準備開始指令は、溶接設備102での溶接を実行するために入側速度を下げること(減速)を開始するタイミング(
図5(a)および後述する
図8に示す時刻t
1)で出力される。このタイミングは、例えば、鋼帯Sの後端の位置が、溶接設備102よりも上流側(y軸の負の方向側)に所定の距離だけ離れた位置に到達したタイミングである。例えば、ペイオフリール101からの鋼帯S(冷延コイル)の巻き戻しが開始されてからの経過時間の範囲で入側速度の実績値を一階積分した値が、当該鋼帯Sの先端のペイオフリール101からのy軸方向における距離になる。この距離を時々刻々と算出することにより、当該鋼帯Sの先端の位置を追跡(トラッキング)する。そして、当該鋼帯Sの先端の位置と、当該鋼帯Sの全長とに基づいて、当該鋼帯Sの後端の位置を追跡(トラッキング)する。このトラッキングの結果に基づいて、鋼帯Sの後端の位置が、溶接設備102よりも上流側に所定の距離だけ離れた位置に到達したか否かを判定する。また、溶接設備102よりも上流側に所定の距離だけ離れた位置に鋼帯Sの有無を検知するための不図示のセンサを設置し、当該センサを用いて、鋼帯Sの後端の位置が、溶接設備102よりも上流側に所定の距離だけ離れた位置に到達したか否かを判定しても良い。当該センサは、例えば、鋼帯Sの搬送経路を挟んで相互に対向するように配置された投光器および受光器を備える。投光器から投光された光を受光器が受光していない状態から受光した状態になった場合に、鋼帯Sの端部が検知される。
【0062】
溶接完了指令は、溶接設備102での溶接が終了し、入側速度を上げること(加速)を開始するタイミング(
図5Aおよび後述する
図8に示す時刻t
2)で出力される。このタイミングは、例えば、溶接設備102での溶接作業が完了したタイミングである。溶接作業が完了すると溶接設備102から溶接作業完了信号がライン管理コンピュータ420に送信される。ライン管理コンピュータ420は、溶接作業完了信号を受信すると、溶接完了指令をルーパー制御装置110に送信する。
【0063】
位置算出部703は、台車速度実績値に基づいて、ルーパー台車206の現在位置を算出する。例えば、位置算出部703は、ルーパー台車206の位置が基準同期位置L
sであるときをルーパー台車206の現在位置の初期値として、台車速度実績値を一階積分した値をルーパー台車206の現在位置に加算または減算することによりルーパー台車206の現在位置を更新する。本実施形態では、
図2に示すようにy軸の向きを定める。したがって、ルーパー台車206が貯め込み側に移動している場合に台車速度実績値が取得された場合には、台車速度実績値を一階積分した値がルーパー台車206の現在位置に加算される。一方、ルーパー台車206が払い出し側に移動している場合に台車速度実績値が取得された場合には、台車速度実績値を一階積分した値がルーパー台車206の現在位置から減算される。
【0064】
基準同期位置設定部704には、ルーパー台車206の基準同期位置Lsが予め設定されている。基準同期位置設定部704は、基準同期位置Lsを同期位置設定変更部705に出力する。
【0065】
同期位置設定変更部705は、入側ルーパー103における鋼帯Sの貯め込み量を変更するために(入側速度と中央速度とに差が生じていない場合よりも入側ルーパー103における鋼帯Sの貯め込み量が少なくなるように)ルーパー台車206が基準同期位置Lsから移動した後、ルーパー台車206の位置が基準同期位置Lsに戻ると、ルーパー台車206とレール208との間の静止摩擦力が発生しないように同期位置を変更する。前述したように本実施形態では、入側ルーパー103を例に挙げて説明する。ループ貯蔵装置が出側ルーパー107である場合、前記の「入側ルーパー103における鋼帯Sの貯め込み量を変更するために(入側速度と中央速度とに差が生じていない場合よりも入側ルーパー103における鋼帯Sの貯め込み量が少なくなるように)」は、「出側ルーパー107における鋼帯Sの貯め込み量を変更するために(中央速度と出側速度とに差が生じていない場合よりも出側ルーパー107における鋼帯Sの貯め込み量が多くなるように)」となる。
【0066】
図8は、同期位置設定変更部705の動作の一例を説明する図である。
図8の上のグラフは、入側速度および中央速度と時間との関係の一例を示すグラフである。
図8の上のグラフにおいて、入側速度801を実線で示し、中央速度802を破線で示す。
図8の下のグラフは、ルーパー台車位置(ルーパー台車206の位置)および同期位置と時間との関係の一例を示すグラフである。
図8の下のグラフにおいて、ルーパー台車206の位置811を実線で示し、同期位置812を破線で示す。
【0067】
また、
図5Aを参照しながら説明したように、時刻t
1は、溶接設備102での溶接を実行するために入側速度を下げること(減速)を開始し、ルーパー台車206が同期位置812から払い出し側(y軸の負の方向側)に移動を開始する時刻である。時刻t
2は、溶接設備102での溶接が終了し、入側速度801を上げること(加速)を開始する時刻である。時刻t
3は、ルーパー台車206が貯め込み側(y軸の正の方向側)に移動を開始する時刻である。時刻t
4は、入側速度801が中央速度802と同じになり、ルーパー台車206の位置811が同期位置812(基準同期位置L
s)に戻る時刻である。
【0068】
また、
図8の上のグラフにおいて、ONと表記している期間は、ルーパー台車206の位置が同期位置812となるようにルーパー台車206の位置を制御している期間である。一方、OFFと表記している期間は、ルーパー台車206の位置811が同期位置812となるようにルーパー台車206の位置を制御していない期間である。
【0069】
前述したように、
図5Aに示す例では、溶接設備102での溶接を実行するために入側速度を変更していない期間(時刻t
1よりも前の期間と時刻t
4よりも後の期間)では、入側速度501と中央速度502とは同じであり、ルーパー台車206の位置511は基準同期位置L
sで固定される。一方、
図8に示すように本実施形態では、溶接設備102での溶接を実行するために入側速度を変更していない期間において、同期位置812が、基準同期位置L
sを基準として周期的に変動するようにする。
【0070】
ルーパー台車206の位置が
図8に示す位置811になるようにルーパー台車206の位置を制御するために、本実施形態では、同期位置設定変更部705は、同期位置変動分生成部705aと、同期位置変動分加算部705bと、同期位置制御選択部705cと、同期位置選択部705dと、を有する。以下の説明では、ルーパー台車206が同期位置812に位置するようにルーパー台車206の位置を制御することを、同期位置制御と呼ぶ。ルーパー台車206が同期位置812に位置するようにルーパー台車206の位置を制御せずに、溶接設備102での溶接を実行するために入側速度が変更されるようにルーパー台車206の位置を制御することを、非同期位置制御と呼ぶ。
図8に示す例では、時刻t
1よりも前の期間と時刻t
2よりも後の期間において同期位置制御が実行され、時刻t
1から時刻t
2までの期間で非同期位置制御が実行される。
【0071】
同期位置変動分生成部705aは、基準同期位置L
sに対する同期位置の変動分ΔLを生成して同期位置変動分加算部705bに出力する。以下の説明では、基準同期位置L
sに対する同期位置の変動分の時間波形を、同期位置変動波形と呼ぶ。本実施形態では、同期位置変動分生成部705aは、一定の周期T
aで変動する時間波形を基準同期位置L
sに対する同期位置変動波形ΔLとして生成する。
図8の下のグラフに示す例では、同期位置変動分生成部705aは、例えば、一定の周期T
aで変動し、正負の振幅の絶対値が同じ(最大値および最小値が同じ)三角波を同期位置変動波形ΔLとして生成する。なお、同期位置変動波形ΔLは三角波に限定されない。例えば、三角波に代えて例えば正弦波を同期位置変動波形ΔLとして用いても良い。また、正負の振幅の絶対値は同じでなくても良い。
【0072】
同期位置変動分加算部705bは、基準同期位置設定部704から出力されたルーパー台車206の基準同期位置Lsに、同期位置変動分生成部705aから出力された同期位置変動波形ΔLを加算して同期位置選択部705dに出力する。以下の説明では、基準同期位置Lsに同期位置変動波形ΔLを加算した同期位置を変更後同期位置Lvと呼ぶ。
【0073】
同期位置制御選択部705cは、位置算出部703で算出されたルーパー台車206の現在位置と、操業指令取得部702により取得された溶接完了指令と、に基づいて、変更後同期位置Lvを用いる同期位置制御と、基準同期位置Lsを用いる同期位置制御とのいずれかの一方の同期位置制御を選択する。以下の説明では、変更後同期位置Lvを用いる同期位置制御を、変動同期位置制御と呼び、基準同期位置Lsを用いる同期位置制御を、固定同期位置制御と呼ぶ。
【0074】
前述したように溶接完了指令は、溶接設備102での溶接が終了し、入側速度について(加速)を開始するタイミング(
図8に示す時刻t
2)で出力される。また、同期位置制御は、このタイミングで開始する。同期位置制御の開始時には、固定同期位置制御を実行する。ルーパー台車206の位置811を基準同期位置L
sに戻すためである。したがって、同期位置制御選択部705cは、操業指令取得部702により溶接完了指令が取得された場合に、固定同期位置制御を実行することを選択する。また、同期位置制御選択部705cは、固定同期位置制御を実行すると判定した後、ルーパー台車206の位置811が基準同期位置L
sに初めて到達した場合に、変動同期位置制御を実行することを選択する。
【0075】
なお、非同期位置制御が実行されている期間(OFFの期間)においては、変動同期位置制御および固定同期位置制御のいずれが選択されていても良い。この期間において固定同期位置制御を選択する場合、例えば、以下のようにすれば良い。前述したように、非同期位置制御は、溶接設備102での溶接を実行するために入側速度を下げること(減速)を開始するタイミング(
図8に示す時刻t
1)で開始する。溶接準備開始指令は、このタイミングで出力される。そこで、例えば、非同期位置制御が実行されている期間(
図8に示すOFFの期間)において同期位置を基準同期位置L
sに設定する場合、同期位置制御選択部705cは、操業指令取得部702により溶接準備開始指令が取得されたときに固定同期位置制御を選択すれば良い。
【0076】
同期位置制御選択部705cは、変動同期位置制御を実行するか否かを選択しても良い。例えば、ルーパー制御装置110のユーザインターフェースを用いてオペレータが変動同期位置制御を実行するか否かを指示するようにしても良い。このようにする場合、入側速度指令生成部708は、オペレータが変動同期位置制御を実行することを指示すると、前述したようにして固定同期位置制御または変動同期位置制御を選択する。一方、オペレータが変動同期位置制御を実行しないことを指示すると、入側速度指令生成部708は、固定同期位置制御を選択し続け、変動同期位置制御を選択しない。
【0077】
同期位置選択部705dは、同期位置制御選択部705cによる選択の結果に基づいて、基準同期位置Lsおよび変更後同期位置Lvのいずれか一方を選択して同期位置偏差算出部706に出力する。同期位置選択部705dは、同期位置制御選択部705cにより固定同期位置制御が選択された場合、基準同期位置Lsを選択する。一方、同期位置制御選択部705cにより変動同期位置制御が選択された場合、同期位置選択部705dは、変更後同期位置Lvを選択する。
【0078】
図7に示す例では、同期位置選択部705dは、同期位置制御選択部705cにより固定同期位置制御が選択された場合、スイッチ705fを閉じる(オンする)と共にスイッチ705eを開ける(オフする)。これにより、基準同期位置L
sおよび変更後同期位置L
vのうち基準同期位置L
sのみが加算器705gに出力される。そして、加算器705gから基準同期位置L
sが同期位置偏差算出部706に出力される。一方、同期位置制御選択部705cにより変動同期位置制御が選択された場合、同期位置選択部705dは、スイッチ705eを閉じる(オンする)と共にスイッチ705fを開ける(オフする)。これにより、基準同期位置L
sおよび変更後同期位置L
vのうち変更後同期位置L
vのみが加算器705gに出力される。そして、加算器705gから同期位置偏差算出部706に変更後同期位置L
vが出力される。
【0079】
同期位置偏差算出部706は、同期位置設定変更部705から出力された基準同期位置Lsまたは変更後同期位置Lvに対する、位置算出部703により算出されたルーパー台車206の現在位置の偏差を算出する。以下の説明では、この偏差を、同期位置偏差と呼ぶ。本実施形態では、同期位置偏差算出部706は、基準同期位置Lsまたは変更後同期位置Lvから、ルーパー台車206の現在位置を減算することにより、同期位置偏差を算出する。
【0080】
速度換算部707は、同期位置偏差をルーパー台車206の速度に換算する。例えば、速度換算部707は、同期位置偏差と、ルーパー台車206の速度との関係式を予め記憶しており、この関係式を用いて同期位置偏差をルーパー台車206の速度に換算する。
図9は、同期位置偏差とルーパー台車速度(ルーパー台車206の速度)との関係901の一例を示す図である。
図9では、非同期位置制御が実行されている場合に同期位置偏差が所定値よりも大きい場合には、ルーパー台車速度(ルーパー台車206の速度)が上限値v
uに固定される場合を例示する。以下の説明では、同期位置偏差をルーパー台車206の速度に換算したものを、同期位置偏差速度換算値と称する。なお、同期位置制御が実行されている場合のルーパー台車速度(ルーパー台車206の速度)の最大値については、
図9に示す上限値v
uを用いても、当該上限値以外の上限値v
uを用いても良い。同期位置制御が実行されている場合のルーパー台車速度(ルーパー台車206の速度)の最大値は、例えば、
図9に示す上限値v
uよりも低い値としても良い。
【0081】
入側速度指令生成部708は、操業指令取得部702により取得された指令(溶接準備指令、溶接完了指令、および中央速度指令値)と、速度換算部707により算出された同期位置偏差速度換算値とに基づいて、入側速度指令値を生成し、速度制御装置111aおよびルーパー張力制御部230に送信する。入側速度指令生成部708による処理の具体例を以下に説明する。
【0082】
まず、入側速度指令生成部708は、操業指令取得部702により取得された溶接準備開始指令および溶接完了指令に基づいて、ルーパー台車206の位置の制御として同期位置制御および非同期位置制御の何れの制御を用いるかを判定する。
図8を参照しながら説明したように、非同期位置制御は、溶接設備102での溶接を実行するために入側速度を下げること(減速)を開始するタイミング(
図8に示す時刻t
1)で開始する。また、非同期位置制御は、溶接設備102での溶接が終了し、入側速度801を上げること(加速)を開始するタイミング(
図8に示す時刻t
2)で終了し、このタイミングで同期位置制御が開始する。
【0083】
したがって、入側速度指令生成部708は、操業指令取得部702により溶接準備開始指令が取得されると、同期位置制御を停止し、非同期位置制御を実行すると判定する。この場合、入側速度指令生成部708は、同期位置制御フラグをオフすると共に、入側速度指令値を0(零)に設定して速度制御装置111aおよびルーパー張力制御部230に送信する。同期位置制御フラグは、同期位置制御を実行している場合にオンされ、非同期位置制御を実行している場合にオフされる。同期位置制御フラグをオンするとは、例えば、同期位置制御フラグとしてメモリの所定の記憶領域に記憶される値を0(零)から1に変更することをいう。一方、同期位置制御フラグをオフするとは、例えば、同期位置制御フラグとしてメモリの所定の記憶領域に記憶される値を1から0(零)に変更することをいう。
【0084】
また、入側速度指令生成部708は、操業指令取得部702により溶接完了指令が取得されると、非同期位置制御を停止し、同期位置制御を実行すると判定する。この場合、入側速度指令生成部708は、同期位置制御フラグをオンすると共に、操業指令取得部702により取得された中央速度指令値と速度換算部707により算出された同期位置偏差速度換算値とを加算した値を入側速度指令値として生成して速度制御装置111aおよびルーパー張力制御部230に送信する。
【0085】
次に、
図10のフローチャートを参照しながら、本実施形態のルーパー位置制御部220を用いたルーパー位置制御方法の一例を説明する。なお、ここでは、説明を簡単にするため、速度検知器210で台車速度実績値が検知される度に、操業実績取得部701により台車速度実績値が取得されているものとする。また、ライン管理コンピュータ420から操業指令(中央速度指令値、溶接準備開始指令、溶接完了指令)が送信される度に、操業指令取得部702により操業指令が取得されているものとする。また、基準同期位置設定部704、同期位置変動分生成部705aから、基準同期位置L
s、同期位置変動波形ΔLがそれぞれ出力されているものとする。また、同期位置制御フラグの初期値はオフであるものとする。
【0086】
まず、ステップS1001において、位置算出部703は、台車速度実績値に基づいて、ルーパー台車206の現在位置を算出する。
次に、ステップS1002において、同期位置変動分加算部705bは、基準同期位置設定部704から出力されたルーパー台車206の基準同期位置Lsに、同期位置変動分生成部705aから出力された同期位置変動波形ΔLを加算して変更後同期位置Lvを算出する。
【0087】
次に、ステップS1003において、入側速度指令生成部708は、操業指令取得部702により溶接準備開始指令が取得されたか否かを判定する。この判定の結果、操業指令取得部702により溶接準備開始指令が取得された場合(ステップS1003でYESの場合)、ステップS1004の処理が実行される。ステップS1004において、入側速度指令生成部708は、同期位置制御フラグがオンされているか否かを判定する。この判定の結果、同期位置制御フラグがオンされている場合(ステップS1004でYESの場合)、同期位置制御は実行されないので、ステップS1005の処理が実行され、入側速度指令生成部708は、同期位置制御フラグをオフする。そして、ステップS1006の処理が実行される。一方、ステップS1004の判定の結果、同期位置制御フラグがオンされていない場合(ステップS1004でNOの場合)、ステップS1005の処理は省略されてステップS1006の処理が実行される。
【0088】
ステップS1006において、入側速度指令生成部708は、入側速度指令値を0(零)に設定する。
次に、ステップS1007において、入側速度指令生成部708は、入側速度指令値を速度制御装置111aおよびルーパー張力制御部230に送信する。
次に、ステップS1008において、ルーパー位置制御部220は、連続亜鉛めっきラインにおける鋼帯Sの搬送が終了することにより操業が終了したか否かを判定する。ステップS1008の判定の方法は、特に限定されない。例えば、ルーパー位置制御部220は、連続亜鉛めっきラインに鋼帯Sが存在しないことが不図示のセンサにより検知された場合に、操業が終了したと判定しても良い。また、ルーパー位置制御部220は、オペレータによって、ルーパー制御装置110に対して、操業が終了したことを指示するための入力操作が実行された場合に、操業が終了したと判定しても良い。
【0089】
この判定の結果、操業が終了する場合(ステップS1008でYESの場合)、
図10のフローチャートによる処理は終了する。一方、操業が終了しない場合(ステップS1008でNOの場合)、ステップS1001の処理が再び実行される。
【0090】
前述したステップS1003の判定の結果、操業指令取得部702により溶接準備開始指令が取得されなかった場合(ステップS1003でNOの場合)、ステップS1009の処理が実行される。ステップS1009において、入側速度指令生成部708は、操業指令取得部702により溶接完了指令が取得されたか否かを判定する。この判定の結果、操業指令取得部702により溶接完了指令が取得された場合(ステップS1009でYESの場合)、同期位置制御を開始する必要がある。この場合、ステップS1010の処理が実行される。ステップS1010において、入側速度指令生成部708は、同期位置制御フラグをオンする。
【0091】
次に、ステップS1011において、同期位置制御選択部705cは、同期位置制御として固定同期位置制御を選択する。なお、ステップS1010からステップS1011に処理が移行した場合には、ステップS1011において、同期位置制御が開始されるので、固定同期位置制御および変動同期位置制御のうち、同期位置制御として最初に実行される固定同期位置制御が選択される。
次に、ステップS1012において、同期位置選択部705dは、ステップS1011における同期位置制御選択部705cの選択の結果に基づいてスイッチ705e、705fをそれぞれオフ、オンすることにより同期位置として基準同期位置Lsを選択する。
次に、ステップS1013において、同期位置偏差算出部706は、ステップS1011で選択された基準同期位置Lsと、ステップS1001で算出されたルーパー台車206の現在位置とに基づいて、同期位置偏差を算出する。
【0092】
次に、ステップS1014において、速度換算部707は、ステップS1012で算出された同期位置偏差をルーパー台車206の速度に換算することにより同期位置偏差速度換算値を算出する。
次に、ステップS1015において、入側速度指令生成部708は、中央速度指令値とステップS1014で算出された同期位置偏差速度換算値とを加算した値を入側速度指令値として生成する。そして、前述したステップS1007の処理が実行され、ステップS1015で生成された入側速度指令値は、速度制御装置111aおよびルーパー張力制御部230に送信される。
【0093】
前述したステップS1009の判定の結果、操業指令取得部702により溶接完了指令が取得されていない場合(ステップS1009でNOの場合)、ステップS1016の処理が実行される。ステップS1016において、同期位置制御選択部705cは、同期位置制御フラグがオンされているか否かを判定する。この判定の結果、同期位置制御フラグがオンされていない場合(ステップS1016でNOの場合)、非同期位置制御が実行されていることになる。この場合、前述したステップS1006の処理が実行され、入側速度指令値が0(零)に設定されて非同期位置制御が実行される。
【0094】
一方、同期位置制御フラグがオンされている場合(ステップS1016でYESの場合)、同期位置制御が実行されることになる。この場合、ステップS1017において、同期位置制御選択部705cは、同期位置制御フラグがオフからオンに切り替わった後に、ルーパー台車206が基準同期位置Lsに到達済みであるか否かを判定する。この判定の結果、ルーパー台車206が基準同期位置Lsに到達済みでない場合(ステップS1017でNOの場合)、同期位置制御として固定同期位置制御が実行されるので、前述したステップS1011の処理が実行される。
【0095】
一方、ルーパー台車206が基準同期位置Lsに到達済みである場合(ステップS1017でYESの場合)、同期位置制御として変動同期位置制御が実行される。この場合、ステップS1018において、同期位置制御選択部705cは、同期位置制御として変動同期位置制御を選択する。
次に、ステップS1019において、同期位置選択部705dは、ステップS1018における同期位置制御選択部705cの選択の結果に基づいてスイッチ705e、705fをそれぞれオン、オフすることにより同期位置として変更後同期位置Lvを選択する。
【0096】
次に、ステップS1020において、同期位置偏差算出部706は、ステップS1018で選択された変更後同期位置Lvと、ステップS1001で算出されたルーパー台車206の現在位置とに基づいて、同期位置偏差を算出する。
【0097】
次に、ステップS1021において、速度換算部707は、ステップS1020で算出された同期位置偏差をルーパー台車206の速度に換算することにより同期位置偏差速度換算値を算出する。
次に、ステップS1022において、入側速度指令生成部708は、中央速度指令値とステップS1021で算出された同期位置偏差速度換算値とを加算した値を入側速度指令値として生成する。そして、前述したステップS1007の処理が実行され、ステップS1022で生成された入側速度指令値は、速度制御装置111aおよびルーパー張力制御部230に送信される。
【0098】
<まとめ>
以上のように本実施形態では、ルーパー位置制御部220は、同期位置制御の実行時に、ルーパー台車206とレール208との間の静止摩擦力が発生しないように同期位置を基準同期位置Lsから変更後同期位置Lvに変更する。したがって、同期位置制御を実行するに際し、ルーパー台車206とレール208との間の静止摩擦力が発生しないようにすることができる。よって、板張力指令値の変更に対して板張力実績値が追従せずに、鋼帯Sの張力の制御精度が低下することを抑制することができる。このように本実施形態では、入側ルーパー103において鋼帯Sの張力の実績値と指令値とが乖離することを抑制することができ、鋼帯Sの張力の制御精度を向上させることができる。これにより、鋼帯Sがその幅方向に蛇行することを抑止することができる。
【0099】
また、本実施形態では、ルーパー台車206は、連続溶融めっきラインの設置面(床面)に沿って(y軸方向に)移動する。本実施形態では、ルーパー台車206とレール208との間に大きな最大静止摩擦力が生じる場合でも、同期位置制御を実行するに際し、ルーパー台車206とレール208との間の静止摩擦力を発生させないようにすることができる。
【0100】
なお、前述したように本実施形態では、ループ貯蔵装置として入側ルーパー103を例に挙げてルーパー制御装置110の機能および処理を例示した。しかしながら、ルーパー制御装置110の制御対象となるループ貯蔵装置は、入側ルーパー103に限定されず、例えば出側ルーパー107であっても良い。
また、本実施形態では、移動路の一例であるレール208が連続溶融めっきラインの設置面(床面)に沿って敷設されている場合を例示した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、連続溶融めっきラインの設置面(床面)に垂直な方向(鉛直方向)または重力方向(z軸方向)にレールが設置され、ルーパー台車が連続溶融めっきラインの設置面(床面)に垂直な方向(鉛直方向)または重力方向(z軸方向)に移動するようにしても良い。例えば、入側ルーパー103および出側ルーパー107は、縦型ルーパーであっても良い。縦型ルーパーとは、ルーパー台車206の移動方向と、鋼帯Sが受ける重力の方向とのなす角度が略0°になるように鋼帯Sが搬送されるように構成されるルーパーである。
また、本実施形態では、連続処理ラインが連続溶融めっきラインである場合を例示したが、連続処理ラインは、連続溶融めっきラインに限定されず、ループ貯蔵装置が設置されるラインであれば、どのようなラインであっても良い。
【0101】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を説明する。第1実施形態では、一定の周期T
aで変動する波形(三角波)を同期位置変動波形ΔLとして基準同期位置L
sに加算することにより変更後同期位置L
vを算出する場合を例示した。このようにすると、変更後同期位置L
vの時間波形は、基準同期位置L
sを中心に振動する波形になる。この場合、ルーパー台車206が基準同期位置L
sに位置するときよりも、ループ貯蔵装置で貯め込んでいる鋼帯Sの長さが長くなる(貯め込み量が多くなる)場合がある。ループ貯蔵装置で貯め込んでいる鋼帯Sの長さが長くなると、ループ貯蔵装置において鋼帯Sがその幅方向に蛇行する可能性が高まる。そこで、本実施形態では、基準同期位置にルーパー台車が位置しているときよりも、ループ貯蔵装置における帯状体の貯め込み量が少なくなるように同期位置を変更する場合について説明する。このように本実施形態と第1実施形態とは、同期位置制御を実行しているときの同期位置の算出方法が主として異なる。したがって、本実施形態の説明において、第1実施形態と同一の部分については、
図1~
図10と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。なお、本実施形態でも第1実施形態と同様に、ループ貯蔵装置の適用先が
図1に示す連続溶融めっきラインである場合を例示する。また、本実施形態でも第1実施形態と同様に、ルーパー制御装置110の制御対象となるループ貯蔵装置が入側ルーパー103である場合を例示する。
【0102】
<ルーパー制御装置110>
本実施形態においても第1実施形態と同様に、ルーパー制御装置110は、ルーパー位置制御部220と、ルーパー張力制御部230と、を備える。ルーパー張力制御部230は、第1実施形態と同じものである。本実施形態では、ルーパー位置制御部220の機能の一部が
図7に示した第1実施形態のルーパー位置制御部220と異なる。
【0103】
<<ルーパー位置制御部220>>
図11は、ルーパー位置制御部220の機能的な構成の一例を示す図である。
図7と
図11とを比較すれば明らかなように、
図11に示す本実施形態のルーパー位置制御部220は、
図7に示す第1実施形態のルーパー位置制御部220の基準同期位置設定部704、同期位置設定変更部705を、それぞれ、第1同期位置設定部1101、同期位置設定変更部1102にしたものである。以下に、第1同期位置設定部1101および同期位置設定変更部1102が有する機能の一例を説明する。
【0104】
第1同期位置設定部1101には、ルーパー台車206の基準同期位置Lsが第1同期位置Ls1として予め設定されている。第1同期位置設定部1101は、第1同期位置Ls1を同期位置設定変更部1102に出力する。本実施形態では、説明の都合上、基準同期位置Lsを第1同期位置Ls1と呼ぶが、第1同期位置設定部1101と基準同期位置設定部704とは同じものである(すなわち、Ls1=Lsである)。
【0105】
同期位置設定変更部1102は、第1実施形態の同期位置設定変更部705と同様に、入側ルーパー103における鋼帯Sの貯め込み量を変更するためにルーパー台車206が基準同期位置である第1同期位置Ls1から移動した後、ルーパー台車206の位置が基準同期位置である第1同期位置Ls1に戻ると、ルーパー台車206とレール208との間の静止摩擦力が発生しないように同期位置を変更する。
【0106】
図12は、同期位置設定変更部1102の動作の一例を説明する図である。
図12は、
図8に対応する図である。
図12の上のグラフは、入側速度および中央速度と時間との関係の一例を示すグラフである。
図12の上のグラフにおいて、入側速度1201を実線で示し、中央速度1202を破線で示す。
図12の下のグラフは、ルーパー台車位置(ルーパー台車206の位置)および同期位置と時間との関係の一例を示すグラフである。
図12の下のグラフにおいて、ルーパー台車206の位置1211を実線で示し、同期位置1212を破線で示す。
【0107】
なお、
図12において、時刻t
1~t
4、ON、OFFは、
図8に示すものと同じ意味を有する。すなわち、時刻t
1は、溶接設備102での溶接を実行するために入側速度を下げること(減速)を開始し、ルーパー台車206が同期位置1212から払い出し側に移動を開始する時刻である。時刻t
2は、溶接設備102での溶接が終了し、入側速度1201を上げること(加速)を開始する時刻である。時刻t
3は、ルーパー台車206が貯め込み側に移動を開始する時刻である。時刻t
4は、入側速度1201が中央速度1202と同じになり、ルーパー台車206の位置1211が同期位置1212(第1同期位置L
s1)に戻る時刻である。また、ONと表記している期間は、同期位置制御を実行している期間である。一方、OFFと表記している期間は、非同期制御を実行している期間である。
【0108】
図8に示すように第1実施形態では、同期位置制御が実行されている期間(ONと表記している期間)において、変更後同期位置L
vが基準同期位置置L
sよりも貯め込み側(y軸の正の方向側)に移動することがある。一方、
図12に示すように本実施形態では、ルーパー位置制御部220は、同期位置制御が実行されている期間において、同期位置が第1同期位置L
s1(基準同期位置L
s)よりも貯め込み側に移動しないようにする。このようにするための具体例として、ルーパー位置制御部220は、ルーパー台車206の位置1211が第1同期位置L
s1になると同期位置を第2同期位置L
s2(<L
s1)に変更することと、ルーパー台車206の位置1211が第2同期位置L
s2になると同期位置を第1同期位置L
s1に変更することと、を交互に実行する。第2同期位置L
s2は、第1同期位置L
s1よりも払い出し側(入側ルーパー103における鋼帯Sの貯め込み量が少なくなる側(y軸の負の方向側))の位置である。このようにすることにより、
図12に示すように、同期位置制御が実行されている場合、ルーパー台車206の位置1211は、第1同期位置L
s1または第1同期位置L
s1よりも払い出し側の位置になる。
【0109】
ルーパー台車206の位置が
図12に示す位置1211になるようにルーパー台車206の位置を制御するために、本実施形態では、同期位置設定変更部1102は、第2同期位置設定部1102aと、同期位置制御選択部1102bと、同期位置切替部1102cと、同期位置選択部1102dと、を有する。
【0110】
第2同期位置設定部1102aには、ルーパー台車206の第2同期位置Ls2が予め設定されている。第2同期位置設定部1102aは、第2同期位置Ls2を同期位置選択部1102dに出力する。
【0111】
同期位置制御選択部1102bは、位置算出部703で算出されたルーパー台車206の現在位置と、操業指令取得部702により取得された溶接完了指令と、に基づいて、変動同期位置制御と固定同期位置制御とのいずれかの同期位置制御を選択すると共に、同期位置制御フラグのオンオフを実行する。同期位置制御選択部1102bは第1実施形態の同期位置制御選択部705cと同じである。
【0112】
同期位置切替部1102cは、同期位置制御を実行しているときにルーパー台車206が第1同期位置Ls1に到達すると、同期位置を第2同期位置Ls2に切り替える。また、同期位置切替部1102cは、同期位置制御を実行しているときにルーパー台車206が第2同期位置Ls2に到達すると、同期位置を第1同期位置Ls1に切り替える。
【0113】
同期位置選択部1102dは、同期位置制御選択部1102bによる選択の結果と、同期位置切替部1102cによる切り替えの結果と、に基づいて、第1同期位置Ls1および第2同期位置Ls2のいずれか一方を選択して同期位置偏差算出部706に出力する。
【0114】
図11に示す例では、同期位置選択部1102dは、同期位置制御選択部1102bにより固定同期位置制御が選択された場合、スイッチ1102eを閉じる(オンする)と共にスイッチ1102fを開ける(オフする)。これにより、第1同期位置L
s1および第2同期位置L
s2のうち第1同期位置L
s1のみが加算器1102iに出力される。そして、加算器1102iから第1同期位置L
s1が同期位置偏差算出部706に出力される。
【0115】
一方、同期位置制御選択部1102bにより変動同期位置制御が選択された場合、同期位置選択部1102dは、スイッチ1102eを開ける(オフする)と共にスイッチ1102fを閉じる(オンする)。また、同期位置切替部1102cにより第2同期位置Ls2から第1同期位置Ls1に同期位置が切り替えられた場合、同期位置選択部1102dは、スイッチ1102gを閉じる(オンする)と共にスイッチ1102hを開ける(オフする)。これにより、第1同期位置Ls1および第2同期位置Ls2のうち第1同期位置Ls1のみが加算器1102jに出力される。そして、加算器1102jから加算器1102iに第1同期位置Ls1が出力される。このとき、スイッチ1102eは開いているので、加算器1102iには第1同期位置Ls1のみが入力される。したがって、加算器1102iから同期位置偏差算出部706に第1同期位置Ls1が出力される。一方、同期位置切替部1102cにより第1同期位置Ls1から第2同期位置Ls2に同期位置が切り替えられた場合、同期位置選択部1102dは、スイッチ1102gを開ける(オフする)と共にスイッチ1102hを閉じる(オンする)。これにより、第1同期位置Ls1および第2同期位置Ls2のうち第2同期位置Ls2のみが加算器1102jに出力される。そして、加算器1102jから加算器1102iに第2同期位置Ls2が出力される。このとき、スイッチ1102eは開いているので、加算器1102iには第2同期位置Ls2のみが入力される。したがって、加算器1102iから同期位置偏差算出部706に第2同期位置Ls2が出力される。
【0116】
本実施形態では、以上のようにしてルーパー台車206の位置1211が第1同期位置Ls1になると同期位置を第2同期位置Ls2に変更することと、ルーパー台車206の位置1211が第2同期位置Ls2になると同期位置を第1同期位置Ls1に変更することと、を交互に実行する。
【0117】
次に、
図13のフローチャートを参照しながら、本実施形態のルーパー位置制御部220を用いたルーパー位置制御方法の一例を説明する。
図10のフローチャートの説明と同様に、ここでも説明を簡単にするため、速度検知器210で台車速度実績値が検知される度に、操業実績取得部701により台車速度実績値が取得されているものとする。また、ライン管理コンピュータ420から操業指令(中央速度指令値、溶接準備開始指令、溶接完了指令)が送信される度に、操業指令取得部702により操業指令が取得されているものとする。また、第1同期位置設定部1101、第2同期位置設定部1102aから、第1同期位置L
s1、第2同期位置L
s2がそれぞれ出力されているものとする。また、同期位置制御フラグの初期値はオフであり、スイッチ1102e、1102f、1102g、1102hの初期状態は、それぞれ、オン、オフ、オン、オフであるものとする。
【0118】
まず、ステップS1301において、位置算出部703は、台車速度実績値に基づいて、ルーパー台車206の現在位置を算出する。
次に、ステップS1302において、入側速度指令生成部708は、操業指令取得部702により溶接準備開始指令が取得されたか否かを判定する。この判定の結果、操業指令取得部702により溶接準備開始指令が取得された場合(ステップS1302でYESの場合)、ステップS1303の処理が実行される。ステップS1303~S1307の処理は、
図10のステップS1004~S1008の処理と同じである。
【0119】
すなわち、ステップS1303において、入側速度指令生成部708は、同期位置制御フラグがオンされているか否かを判定する。この判定の結果、同期位置制御フラグがオンされている場合(ステップS1303でYESの場合)、ステップS1304において、入側速度指令生成部708は、同期位置制御フラグをオフする。そして、ステップS1305の処理が実行される。一方、ステップS1303の判定の結果、同期位置制御フラグがオンされていない場合(ステップS1303でNOの場合)には、ステップS1304の処理は省略されてステップS1305の処理が実行される。
【0120】
入側速度指令生成部708は、ステップS1305において、入側速度指令値を0(零)に設定し、ステップS1306において、入側速度指令値を速度制御装置111aおよびルーパー張力制御部230に送信する。
次に、ステップS1307において、ルーパー位置制御部220は、連続亜鉛めっきラインにおける鋼帯Sの搬送が終了することにより操業が終了したか否かを判定する。この判定の結果、操業が終了する場合(ステップS1307でYESの場合)、
図13のフローチャートによる処理は終了する。一方、操業が終了しない場合(ステップS1307でNOの場合)、ステップS1301の処理が再び実行される。
【0121】
前述したステップS1302の判定の結果、操業指令取得部702により溶接準備開始指令が取得されなかった場合(ステップS1302でNOの場合)、ステップS1308の処理が実行される。ステップS1308において、入側速度指令生成部708は、操業指令取得部702により溶接完了指令が取得されたか否かを判定する。この判定の結果、操業指令取得部702により溶接完了指令が取得された場合(ステップS1308でYESの場合)、同期位置制御を開始する必要がある。この場合、ステップS1309の処理が実行される。ステップS1309において、入側速度指令生成部708は、同期位置制御フラグをオンする。
【0122】
次に、ステップS1310において、同期位置制御選択部1102bは、同期位置制御として固定同期位置制御を選択する。なお、ステップS1309からステップS1310に処理が移行した場合には、ステップS1310において、同期位置制御が開始されるので、固定同期位置制御および変動同期位置制御のうち、同期位置制御として最初に実行される固定同期位置制御が選択される。
次に、ステップS1311において、同期位置選択部1102dは、ステップS1310における同期位置制御選択部1102bの選択の結果に基づいて、スイッチ1102e、1102fをそれぞれオン、オフすることにより同期位置として第1同期位置Ls1を選択する。なお、このタイミングにおいては、スイッチ1102g、1102hの状態はオンであってもオフであっても構わない。
【0123】
次に、ステップS1312において、同期位置偏差算出部706は、ステップS1311で選択された第1同期位置Ls1と、ステップS1301で算出されたルーパー台車206の現在位置とに基づいて、同期位置偏差を算出する。
次に、ステップS1313において、速度換算部707は、ステップS1312で算出された同期位置偏差をルーパー台車206の速度に換算することにより同期位置偏差速度換算値を算出する。
次に、ステップS1314において、入側速度指令生成部708は、中央速度指令値とステップS1313で算出された同期位置偏差速度換算値とを加算した値を入側速度指令値として生成する。そして、前述したステップS1306の処理が実行され、ステップS1314で生成された入側速度指令値は、速度制御装置111aおよびルーパー張力制御部230に送信される。
【0124】
前述したステップS1308の判定の結果、操業指令取得部702により溶接完了指令が取得されていない場合(ステップS1308でNOの場合)、ステップS1315の処理が実行される。ステップS1315において、同期位置制御選択部705cは、同期位置制御フラグがオンされているか否かを判定する。この判定の結果、同期位置制御フラグがオンされていない場合(ステップS1315でNOの場合)、非同期位置制御が実行されていることになる。この場合、前述したステップS1305の処理が実行され、入側速度指令値が0(零)に設定されて非同期位置制御が実行される。
【0125】
一方、同期位置制御フラグがオンされている場合(ステップS1315でYESの場合)、同期位置制御が実行されることになる。この場合、ステップS1316において、同期位置制御選択部1102bは、同期位置制御フラグがオフからオンに切り替わった後に、ルーパー台車206が第1同期位置Ls1に到達したか否かを判定する。この判定の結果、ルーパー台車206が第1同期位置Ls1に到達した場合(ステップS1316でYESの場合)、ステップS1317において、同期位置制御選択部1102bは、同期位置制御として変動同期位置制御を選択する。
【0126】
次に、ステップS1318において、同期位置切替部1102cは、同期位置を第2同期位置Ls2に切り替える。
次に、ステップS1319において、同期位置選択部1102dは、ステップS1317における同期位置制御選択部1102bの選択の結果と、ステップS1318における同期位置切替部1102cの切り替えの結果と、に基づいてスイッチ1102e、1102f、1102g、1102hをそれぞれオフ、オン、オフ、オンすることにより同期位置として第2同期位置Ls2を選択する。
【0127】
次に、ステップS1320において、同期位置偏差算出部706は、ステップS1319で選択された第2同期位置Ls2(または後述するステップS1326で選択された第1同期位置Ls1)と、ステップS1301で算出されたルーパー台車206の現在位置とに基づいて、同期位置偏差を算出する。
【0128】
次に、ステップS1321において、速度換算部707は、ステップS1320で算出された同期位置偏差をルーパー台車206の速度に換算することにより同期位置偏差速度換算値を算出する。
次に、ステップS1322において、入側速度指令生成部708は、中央速度指令値とステップS1321で算出された同期位置偏差速度換算値とを加算した値を入側速度指令値として生成する。そして、前述したステップS1306の処理が実行され、ステップS1322で生成された入側速度指令値は、速度制御装置111aおよびルーパー張力制御部230に送信される。
【0129】
前述したステップS1316の判定の結果、ルーパー台車206が第1同期位置Ls1に到達していない場合(ステップS1316でNOの場合)、ステップS1323の処理が実行される。ステップS1323において、同期位置制御選択部1102bは、同期位置制御として変動同期位置制御を選択した状態であるか否かを判定する。この判定の結果、同期位置制御として変動同期位置制御を選択した状態でない場合(ステップS1323でNOの場合)、前述したステップS1310の処理が実行される。
【0130】
一方、同期位置制御として変動同期位置制御を選択した状態である場合(ステップS1323でYESの場合)、ステップS1324の処理が実行される。ステップS1324において、同期位置制御選択部1102bは、同期位置制御フラグがオフからオンに切り替わった後に、ルーパー台車206が第2同期位置Ls2に到達したか否かを判定する。この判定の結果、ルーパー台車206が第2同期位置Ls2に到達した場合(ステップS1324でYESの場合)、同期位置制御として変動同期位置制御が実行される。この場合、ステップS1325において、同期位置制御選択部1102bは、同期位置制御として変動同期位置制御を選択する。
【0131】
次に、ステップS1326において、同期位置切替部1102cは、同期位置を第1同期位置Ls1に切り替える。
次に、ステップS1327において、同期位置選択部1102dは、ステップS1325における同期位置制御選択部1102bの選択の結果と、ステップS1326における同期位置切替部1102cの切り替えの結果と、に基づいてスイッチ1102e、1102f、1102g、1102hをそれぞれオフ、オン、オン、オフすることにより同期位置として第1同期位置Ls1を選択する。そして、前述したステップS1320の処理が実行される。
【0132】
(まとめ)
以上のように本実施形態では、ルーパー位置制御部220は、基準同期位置である第1同期位置Ls1にルーパー台車206が位置しているときの入側ルーパー103における鋼帯Sの貯め込み量よりも、入側ルーパー103における鋼帯Sの貯め込み量が少なくなるように同期位置を変更する。したがって、同期位置制御を実行しているときの入側ルーパー103における鋼帯Sの貯め込み量が多くなる(鋼帯Sの長さが長くなる)ことを抑制することができる。よって、入側ルーパー103において鋼帯Sがその幅方向に蛇行することをより確実に抑止することができる。また、このようにするに際し本実施形態では、ルーパー位置制御部220は、同期位置を、第1同期位置Ls1および第2同期位置Ls2(<Ls1)に交互に変更するので、同期位置の設定を容易に実行することができる。
【0133】
本実施形態では、第1同期位置Ls1および第2同期位置Ls2に同期位置を切り替える場合を例示した。しかしながら、第1同期位置Ls1にルーパー台車206が位置しているときよりも、入側ルーパー103における鋼帯Sの貯め込み量が少なくなるように同期位置を変更していれば、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、第1同期位置Ls1および2つ以上の他の同期位置(<Ls1)の3つ以上の同期位置に同期位置を切り替えても良い。また、本実施形態においても第1実施形態で説明した種々の変形例を採用しても良い。
【0134】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を説明する。第1実施形態で説明したように、溶接設備102での溶接を実行するために溶接設備102の位置で鋼帯Sを停止させている間に、入側ルーパー103に貯め込まれている鋼帯Sは中央セクション(焼鈍炉104)に払い出す。第1実施形態および第2実施形態では、同期位置制御が実行されている間は、同期位置を変更してルーパー台車206の位置811、1211が常に変更される場合を例示した。このようにすると、例えば、同期位置制御から非同期位置制御に移行するタイミング(時刻t
1)において、ルーパー台車206が基準同期位置L
s(第1同期位置L
s1)よりも払い出し側に位置することが生じ得る。この場合、溶接設備102での溶接を実行するために溶接設備102の位置で鋼帯Sを停止させている間に、入側ルーパー103において中央セクション(焼鈍炉104)に払い出す鋼帯Sが不足する虞がある。そこで、本実施形態では、ルーパー台車が基準同期位置(第1基準位置)に到達して同期位置を変更した後(すなわち、同期位置制御を開始した後)、入側ルーパー103における鋼帯Sの貯め込み量を変更するためにルーパー台車の移動を開始する前(すなわち、同期位置制御から非同期位置制御に移行する前)に同期位置を基準同期位置L
s(第1基準位置L
s1)に戻す。このように本実施形態と第1実施形態とは、同期位置制御を実行しているときの同期位置の算出方法の一部が主として異なる。したがって、本実施形態の説明において、第1~第2実施形態と同一の部分については、
図1~
図13と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。なお、本実施形態でも第1~第2実施形態と同様に、ループ貯蔵装置の適用先が
図1に示す連続溶融めっきラインである場合を例示する。また、本実施形態でも第1~第2実施形態と同様に、ルーパー制御装置110の制御対象となるループ貯蔵装置が入側ルーパー103である場合を例示する。また、本実施形態では、第1実施形態のルーパー位置制御部220において、同期位置制御から非同期位置制御に移行する前に同期位置を基準同期位置L
sに戻す場合を例示する。
【0135】
<ルーパー制御装置110>
本実施形態においても第1実施形態と同様に、ルーパー制御装置110は、ルーパー位置制御部220と、ルーパー張力制御部230と、を備える。ルーパー張力制御部230は、第1実施形態と同じものである。本実施形態では、ルーパー位置制御部220の機能の一部が
図7に示した第1実施形態のルーパー位置制御部220と異なる。
【0136】
<<ルーパー位置制御部220>>
図14は、ルーパー位置制御部220の機能的な構成の一例を示す図である。
図7と
図14とを比較すれば明らかなように、
図14に示す本実施形態のルーパー位置制御部220は、
図7に示す第1実施形態のルーパー位置制御部220の操業実績取得部701、同期位置設定変更部705を、それぞれ、操業実績取得部1401、同期位置設定変更部1402にしたものである。以下に、操業実績取得部1401および同期位置設定変更部1402が有する機能の一例を説明する。
【0137】
操業実績取得部1401は、第1実施形態の操業実績取得部701と同様に、連続溶融めっきラインにおける操業実績値を取得する。ただし、本実施形態の操業実績取得部1401は、台車速度実績値に加え、入側コイル残長を取得する。本実施形態では、ライン管理コンピュータ420から入側コイル残長が取得される場合を例示する。入側コイル残長は、次に溶接設備102で後端が溶接される鋼帯Sの後端から、溶接設備102における鋼帯Sの溶接位置までの、鋼帯Sの搬送方向(y軸方向)の距離である。以下の説明では、次に溶接設備102で後端が溶接される鋼帯Sを次溶接鋼帯Sと呼ぶ。
【0138】
入側コイル残長は、例えば、次溶接鋼帯Sの後端の位置の追跡(トラッキング)の結果と、溶接設備102における次溶接鋼帯Sの溶接位置とに基づいて算出される。なお、鋼帯Sの後端の位置を追跡(トラッキング)する手法の一例は、第1実施形態で説明した通りである(溶接準備開始指令を出力するタイミングの一例の説明を参照)。
【0139】
同期位置設定変更部1402は、第1実施形態の同期位置設定変更部705と同様に、入側ルーパー103における鋼帯Sの貯め込み量を変更するためにルーパー台車206が基準同期位置Lsから移動した後、ルーパー台車206の位置が基準同期位置Lsに戻ると、ルーパー台車206とレール208との間の静止摩擦力が発生しないように同期位置を変更する。
【0140】
図15は、同期位置設定変更部1402の動作の一例を説明する図である。
図15は、
図8に対応する図である。
図15の上のグラフは、入側速度および中央速度と時間との関係の一例を示すグラフである。
図15の上のグラフにおいて、入側速度1501を実線で示し、中央速度1502を破線で示す。
図15の下のグラフは、ルーパー台車位置(ルーパー台車206の位置)および同期位置と時間との関係の一例を示すグラフである。
図15の下のグラフにおいて、ルーパー台車206の位置1511を実線で示し、同期位置1512を破線で示す。
【0141】
なお、
図15において、時刻t
1~t
4、ON、OFFは、
図8に示すものと同じ意味を有する。すなわち、時刻t
1は、溶接設備102での溶接を実行するために入側速度を下げること(減速)を開始し、ルーパー台車206が同期位置1512から払い出し側に移動を開始する時刻である。時刻t
2は、溶接設備102での溶接が終了し、入側速度1201を上げること(加速)を開始する時刻である。時刻t
3は、ルーパー台車206が貯め込み側に移動を開始する時刻である。時刻t
4は、入側速度1501が中央速度1502と同じになり、ルーパー台車206の位置1211が同期位置1512に戻る時刻である。また、ONと表記している期間は、同期位置制御を実行している期間である。一方、OFFと表記している期間は、非同期制御を実行している期間である。
【0142】
また、
図15において、時刻t
5は、同期位置制御を実行している期間に、同期位置1512を変更後同期位置L
vから基準同期位置L
sに戻す時刻である。ここで、時刻t
5から時刻t
1までの時間は短い方が好ましい。すなわち、同期位置1512を変更後同期位置L
vから基準同期位置L
sに戻すタイミングは、同期位置制御から非同期位置制御に移行する直前であるのが好ましい。したがって、同期位置制御が実行されている場合において非同期位置制御に移行する直前においては、ルーパー台車206の位置1511は基準同期位置L
sに位置する。
【0143】
ルーパー台車206の位置が
図15に示す位置1511になるようにルーパー台車206の位置を制御するために、本実施形態では、同期位置設定変更部1402は、同期位置変動分生成部705aと、同期位置変動分加算部705bと、同期位置制御選択部705cと、同期位置変更判定部1402aと、同期位置選択部1402bと、を有する。同期位置変動分生成部705a、同期位置変動分加算部705b、および同期位置制御選択部705cは、第1実施形態で説明した通りである。以下に、同期位置変更判定部1402aおよび同期位置選択部1402bが有する機能の一例を説明する。
【0144】
同期位置変更判定部1402aは、入側ルーパー103よりも上工程の設備の一例である溶接設備102で鋼帯Sに対する処理(溶接)を開始するまでの残り時間に基づいて、同期位置1512を変更後同期位置Lvから基準同期位置Lsに戻すか否かを判定する。以下の説明では、溶接設備102で鋼帯Sに対する処理(溶接)を開始するまでの残り時間を、溶接開始までの残り時間と呼ぶ。なお、出側ルーパー107を制御対象とする場合、同期位置変更判定部1402aは、出側ルーパー107よりも下工程の設備の一例である切断設備108で鋼帯Sに対する処理(切断)を開始するまでの残り時間に基づいて、同期位置を変更後同期位置Lvから基準同期位置Lsに戻すか否かを判定することになる。
【0145】
第1実施形態で説明したように変更後同期位置L
vは、基準同期位置L
sに対し同期位置変動波形ΔLを加算することにより算出される。同期位置変動波形ΔLは、一定の周期T
aで変動し、正負の振幅の絶対値が同じ(最大値および最小値が同じ)三角波である。したがって、ルーパー台車206の位置が変更後同期位置L
vに位置するようにルーパー台車206の位置を制御すると、ルーパー台車206は周期的に繰り返し基準同期位置L
sに到達する。ここで、ルーパー台車206が基準同期位置に到達する周期を同期位置到達周期と呼ぶこととする。同期位置到達周期は、
図15においてT
bで示す期間である。
【0146】
同期位置変更判定部1402aは、溶接開始までの残り時間が予め設定された時間以下になった場合に、同期位置1512を変更後同期位置Lvから基準同期位置Lsに戻すと判定しても良い。しかしながら、前述したように本実施形態では、ルーパー台車206は周期的に繰り返し基準同期位置Lsに到達する。そこで、同期位置変更判定部1402aは、溶接開始までの残り時間と同期位置到達周期Tbとに基づいて、同期位置1512を変更後同期位置Lvから基準同期位置Lsに戻すか否かを判定する。具体的に本実施形態では、同期位置変更判定部1402aは、溶接開始までの残り時間が同期位置到達周期Tb以下になった場合に、同期位置1512を変更後同期位置Lvから基準同期位置Lsに戻すと判定する。
【0147】
溶接開始までの残り時間は、例えば以下の(1)式で算出される。
溶接開始までの残り時間(min.)=入側コイル残長(m)/入側速度指令値(mpm) ・・・(1)
入側コイル残長として、例えば、操業実績取得部1401により取得された入側コイル残長の現在値(最新値)を用いれば良い。入側速度指令値として、例えば、入側速度指令生成部708で生成されている入側速度指令値の現在値(最新値)を用いれば良い。
【0148】
なお、出側ルーパー107を制御対象とする場合、溶接開始までの残り時間は、切断開始までの残り時間になり、入側コイル残長は、出側コイル残長になる。切断開始までの残り時間は、切断設備108で鋼帯Sに対する処理(切断)を開始するまでの残り時間となる。出側コイル残長は、次に切断設備108で切断される鋼帯Sの切断予定箇所から、テンションリール109までの、鋼帯Sの搬送方向(y軸方向)の距離である。以下の説明では、次に切断設備108で切断される鋼帯Sを次切断鋼帯Sと呼ぶ。出側コイル残長は、例えば、以下のようにして算出される。テンションリール109には、テンションリール109が1回転する度にパルス信号を1つ出力する不図示のパルスジェネレータが設置されている。次切断鋼帯Sのテンションリール109に対する巻き取りが開始してから当該パルスジェネレータから出力されるパルス信号の数を計数する。当該パルス信号の計数値と、テンションリール109の径と、次切断鋼帯Sの厚みとに基づいて、テンションリール109に巻き取られている次切断鋼帯Sの長さが算出される。テンションリール109に巻き取られている次切断鋼帯Sの長さと、次切断鋼帯Sの切断予定箇所と、テンションリール109の位置とに基づいて、次切断鋼帯Sの切断予定箇所の位置を追跡(トラッキング)する。次切断鋼帯Sの切断予定箇所は、例えば、次切断鋼帯Sのからの距離で表される。
【0149】
同期位置到達周期T
bは、例えば以下の(2)式で算出される。
同期位置到達周期(min.)=オシレーション振幅(m)/ルーパー台車の最大移動速度(mpm) ・・・(2)
オシレーション振幅は、同期位置変動波形ΔLの最大値から最小値を減算した値であり、
図15では、Aと表している。ルーパー台車の最大移動速度として、例えば、同期位置制御が実行されている場合の(ルーパー台車206の速度)の最大値(例えば、
図9に示すルーパー台車速度の上限値v
u)を用いれば良い。また、(2)式の右辺の分母において、ルーパー台車206の最大移動速度ではなく、ルーパー台車206の速度の現在値を用いても良い。例えば、入側速度指令値の現在値から中央速度指令値の現在値を減算した値をストランド数で割った値を、(2)式のルーパー台車の最大移動速度に代えて用いても良い。ストランド数は、ループ貯蔵装置におけるパス(ループ貯蔵装置の移動方向と平行に進行するパス(鋼帯Sの経路)の数である。
図2に示す例では、ループ貯蔵装置の移動方向と平行に進行するパスは、y軸の正の方向に向かう経路とy軸の負の方向に向かう経路のであり、パスの数は6である。
【0150】
同期位置選択部1402bは、同期位置制御選択部705cによる選択の結果と、同期位置変更判定部1402aの判定の結果と、に基づいて、基準同期位置Lsおよび変更後同期位置Lvのいずれか一方を選択して同期位置偏差算出部706に出力する。第1実施形態の同期位置選択部705dと同様に同期位置選択部1402bは、同期位置制御選択部705cにより固定同期位置制御が選択された場合、基準同期位置Lsを選択する。一方、同期位置制御選択部705cにより変動同期位置制御が選択された場合、同期位置選択部705dは、変更後同期位置Lvを選択する。また、同期位置選択部1402bは、変更後同期位置Lvを選択しているときに、同期位置変更判定部1402aにより、同期位置1512を変更後同期位置Lvから基準同期位置Lsに戻すと判定された場合、基準同期位置Lsを選択する。
【0151】
次に、
図16のフローチャートを参照しながら、本実施形態のルーパー位置制御部220を用いたルーパー位置制御方法の一例を説明する。
図16のフローチャートは、
図10のフローチャートのS1017とS1011、S1018との間にステップS1601~S1603の処理が追加されたものになる。したがって、ここでは、ステップS1601~S1603の処理についてのみ説明する。
【0152】
ステップS1017の判定の結果、ルーパー台車206が基準同期位置Lsに到達済みである場合(ステップS1017でYESの場合)、ステップS1601の処理が実行される。ステップS1601において、同期位置変更判定部1402aは、(1)式の計算を実行することにより、溶接開始までの残り時間を算出する。
【0153】
次に、ステップS1602において、同期位置変更判定部1402aは、(2)式の計算を実行することにより、同期位置到達周期Tbを算出する。
次に、ステップS1603において、同期位置変更判定部1402aは、溶接開始までの残り時間と同期位置到達周期Tbとに基づいて、同期位置1512を変更後同期位置Lvから基準同期位置Lsに戻すか否かを判定する。具体的に、同期位置変更判定部1402aは、溶接開始までの残り時間が同期位置到達周期Tb以下である場合に、同期位置1512を変更後同期位置Lvから基準同期位置Lsに戻すと判定し、そうでいない場合に、同期位置1512を変更後同期位置Lvから基準同期位置Lsに戻さないと判定する。
【0154】
この判定の結果、同期位置1512を変更後同期位置Lvから基準同期位置Lsに戻す場合(ステップS1603でYESの場合)、ステップS1011以降の処理が実行される。一方、同期位置1512を変更後同期位置Lvから基準同期位置Lsに戻さない場合(ステップS1603でNOの場合)、ステップS1018の処理が実行される。
【0155】
<まとめ>
以上のように本実施形態では、ルーパー位置制御部220は、溶接開始までの残り時間に基づいて、同期位置1512を変更後同期位置Lvから基準同期位置Lsに戻すか否かを判定する。そして、ルーパー位置制御部220は、同期位置1512を変更後同期位置Lvから基準同期位置Lsに戻すと判定すると、同期位置1512を変更後同期位置Lvから基準同期位置Lsに戻す。したがって、溶接設備102での溶接を実行するために溶接設備102の位置で鋼帯Sを停止させている間に、入側ルーパー103において中央セクション(焼鈍炉104)に払い出す鋼帯Sが不足することを抑制することができる。
【0156】
また、本実施形態では、同期位置変更判定部1402aは、溶接開始までの残り時間と同期位置到達周期Tbとに基づいて、同期位置1512を変更後同期位置Lvから基準同期位置Lsに戻すか否かを判定する。したがって、同期位置変動波形ΔLに応じたタイミングで、同期位置1512を変更後同期位置Lvから基準同期位置Lsに戻すか否かを判定することができる。
【0157】
なお、本実施形態においても第1~第2実施形態で説明した種々の変形例を採用しても良い。また、本実施形態を第2実施形態に適用する場合には、例えば、
図13のステップS1323(YES)とステップS1324との間でステップS1601~S1603の処理が実行され、ステップS1603でYESと判定された場合にステップS1310の処理が実行されるようにすれば良い。
【0158】
なお、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。また、本発明の実施形態は、PLC(Programmable Logic Controller)により実現されてもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用のハードウェアにより実現されてもよい。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0159】
101 ペイオフリール
102 溶接設備
103 入側ルーパー
104 焼鈍炉
105 めっき設備
106 調質圧延機
107 出側ルーパー
108 切断設備
109 テンションリール
110 ルーパー制御装置
111 速度制御装置
201 入側ロールモータ
202 入側ブライドルロール
203 ルーパーロール
204 中央側ロールモータ
205 中央側ブライドルロール
206 ルーパー台車
207 ルーパーモータ
208 レール
209 張力検知器
210 速度検知器
211 滑車
212 ワイヤー
213 ドラム
214 台車本体部
214a 車輪
214b 架台
215 固定端
220 ルーパー位置制御部
230 ルーパー張力制御部
401 操業実績取得部
402 操業指令取得部
403 張力偏差算出部
404 PI制御部
405 張力加算部
406 トルク換算部
407 メカロス補償部
408 第1トルク加算部
409 慣性補償部
410 第2トルク加算部
411 速度差算出部
412 台車速度換算部
413 速度偏差算出部
414 ASR補償部
415 第3トルク加算部
416 駆動部
420 ライン管理コンピュータ
501 入側速度
502 中央速度
511 ルーパー台車の位置
512 同期位置
521 板張力指令値
522 トルク実績値
523 板張力実績値
701 操業実績取得部
702 操業指令取得部
703 位置算出部
704 基準同期位置設定部
705 同期位置設定変更部
705a 同期位置変動分生成部
705b 同期位置変動分加算部
705c 同期位置制御選択部
705d 同期位置選択部
705e~705f スイッチ
705g 加算器
706 同期位置偏差算出部
707 速度換算部
708 入側速度指令生成部
801 入側速度
802 中央速度
811 ルーパー台車の位置
812 同期位置
901 同期位置偏差とルーパー台車速度との関係
1101 第1同期位置設定部
1102 同期位置設定変更部
1102a 第2同期位置設定部
1102b 同期位置制御選択部
1102c 同期位置切替部
1102d 同期位置選択部
1102e~1102h スイッチ
1102i~1102j 加算器
1201 入側速度
1202 中央速度
1211 ルーパー台車の位置
1212 同期位置
1402 同期位置設定変更部
1402a 同期位置変更判定部
1402b 同期位置選択部
1501 入側速度
1502 中央速度
1511 ルーパー台車の位置
1512 同期位置
A オシレーション振幅
Ls 基準同期位置
Ls1 第1同期位置
Ls2 第2同期位置
Lv 変更後同期位置
S 鋼帯
Ta 同期位置変動波形の周期
Tb 同期位置到達周期
ΔL 同期位置変動波形