(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055396
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】フラッシュ蒸気を用いる油脂抽出蒸留設備
(51)【国際特許分類】
C11B 3/12 20060101AFI20230411BHJP
B01D 11/02 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C11B3/12
B01D11/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164744
(22)【出願日】2021-10-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】520002771
【氏名又は名称】藤▲崎▼エンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】512275396
【氏名又は名称】蓮池 ▲昇▼
(74)【代理人】
【識別番号】100096910
【弁理士】
【氏名又は名称】小原 肇
(72)【発明者】
【氏名】蓮池 昇
【テーマコード(参考)】
4D056
4H059
【Fターム(参考)】
4D056AB14
4D056AC02
4D056AC22
4D056BA12
4D056CA13
4D056CA18
4D056CA20
4D056CA22
4D056CA36
4D056CA37
4D056CA40
4H059AA04
4H059BC13
4H059CA12
4H059CA18
4H059CA97
4H059EA21
(57)【要約】
【課題】蒸発缶におけるスチーム使用量を削減し、省エネルギーを促進することができる油脂抽出蒸留設備を提供する。
【解決手段】本発明のフラッシュ蒸気を用いる油脂抽出蒸留設備100は、ミセラを受給しその溶剤ノルマルヘキサンを蒸発させる第2蒸発缶122を備え、第2蒸発缶122は、ミセラを予熱する予熱部122Aと、ミセラを加熱する加熱部122Bと、予熱部122Aにおいてミセラから蒸発するノルマルヘキサンを排出する蒸気放出管122Cと、を有し、フラッシュ蒸気によって予熱部122Aを予熱する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂抽出液を受給しその溶剤を蒸発させる少なくとも一つの蒸発缶を備えた油脂抽出液蒸発設備であって、上記蒸発缶は、上記油脂抽出液を予熱する予熱部と、上記予熱部の下流側に接続されて上記油脂抽出液を加熱する加熱部と、上記予熱部の下流側に上記加熱部と併設されて上記予熱部で上記油脂抽出液から蒸発する溶剤を排出する排気部と、を有し、上記予熱部にフラッシュ蒸気を供給するフラッシュタンクを接続し、上記フラッシュ蒸気によって上記予熱部を予熱することを特徴とするフラッシュ蒸気を用いる油脂抽出蒸留設備。
【請求項2】
上記少なくとも一つの蒸発缶は、上流側に配置された第1蒸発缶と、下流側に配置された第2蒸発缶と、を備え、上記第2蒸発缶は、上記予熱部、上記加熱部及び上記排気部を有し、上記第1蒸発缶及び上記予熱部それぞれに上記フラッシュタンクを接続したことを特徴とする請求項1に記載のフラッシュ蒸気を用いる油脂抽出蒸留設備。
【請求項3】
油脂抽出液を受給しその溶剤を蒸発させる少なくとも一つの蒸発缶を備えた油脂抽出液蒸発設備であって、上記蒸発缶は、上記油脂抽出液を予熱する予熱部と、上記予熱部の下流側に接続されて上記油脂抽出液を加熱する加熱部と、上記予熱部の下流側に上記加熱部と併設されて上記予熱部で上記油脂抽出液から蒸発する溶剤を排出する排気部と、を有し、上記予熱部に高温ドレン水の供給配管を接続し、上記供給配管を介して上記予熱部内に上記高温ドレン水を供給してフラッシュ蒸気及びフラッシュ後の熱水をそれぞれ生成させ、これらのフラッシュ蒸気及び熱水によって上記予熱部を予熱することを特徴とするフラッシュ蒸気を用いる油脂抽出蒸留設備。
【請求項4】
上記少なくとも一つの蒸発缶は、上流側に配置された第1蒸発缶と、下流側に配置された第2蒸発缶と、を備え、上記第2蒸発缶は、上記予熱部、上記加熱部及び上記排気部を有し、上記第1蒸発缶及び上記予熱部それぞれに高温ドレン水の供給配管を接続したことを特徴とする請求項3に記載のフラッシュ蒸気を用いる油脂抽出蒸留設備。
【請求項5】
上記すくなくとも一つの蒸発缶から受給する油脂抽出液中の残留溶剤を除去する油脂塔を備え、上記油脂塔は、上記蒸発缶からの油脂抽出液を受給する塔本体と、上記塔本体内に挿入されて上記蒸発缶からの油脂抽出液中に蒸気をバブリングさせる蒸気吹き込み部を有することを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のフラッシュ蒸気を用いる油脂抽出蒸留設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物油の製造工程で用いられる油脂抽出蒸留設備に関し、更に詳しくは、フラッシュ蒸気を用いて省エネルギー化を図った油脂抽出蒸留設備に関する。
【背景技術】
【0002】
植物油の製造では、菜種、とうもろこし胚芽あるいは大豆等の植物油原料から菜種油、とうもろこし油あるいは大豆油などの油脂を採油する。採油方法としては、圧搾法、抽出法及び圧油法がある。菜種、とうもろこし胚芽等のように油脂成分が多い植物油原料では、原料を圧搾して油脂成分を搾り出す圧搾法が採用されている。大豆等のように油脂成分が20%に満たない油脂成分の少ない植物油原料では、加熱などの前処理後押し潰してフレーク状にした植物油原料(以下、「フレーク」と称す。)から油脂成分を溶剤(例えば、ノルマルヘキサン)によって抽出する抽出法が採用されている。また。菜種、とうもろこし胚芽等の圧搾後の搾り粕にも油脂成分が10数%程度残留しているため、ノルマルヘキサンを用いて搾り粕から油脂成分を抽出する、圧搾法と抽出法を組み合わせた圧抽法が採用されている。抽出法や圧抽法ではフレークや搾り粕(以下、「フレーク等」と称す。)から油脂成分を注した後、抽出液を例えば350~240torrほどの減圧下で加熱してノルマルヘキサンを蒸発させて油脂を得る油脂抽出蒸発設備が用いられる。
【0003】
上記油脂抽出蒸発設備は、例えば
図6に示すように、抽出部10及び蒸発部20を備え、抽出部11においてフレーク等から抽出液(以下、「ミセラ」と称す)。を得た後、ミセラを減圧下の蒸発部20へ供給し、ここでノルマルヘキサンを蒸発させて回収すると共に大豆油等の油脂を得ている。
【0004】
抽出部10は、コンベア式抽出機(以下、単に「抽出機」と称す。)11、その上流側と下流側にそれぞれ付設された、抽出前後のフレーク等を搬送する第1、第2搬送機11A.11B、抽出機11内にノルマルヘキサンを供給する溶剤ポンプ12、抽出機11からのミセラ(例えば油脂20%、ノルマルヘキサン80%)を貯留するミセラタンク13、後述する蒸発部20内の溶剤セパレータから供給されるノルマルヘキサン液を加熱する溶剤加熱器14、抽出機11から第2搬送機11Bを介して搬入されるフレーク等内に含まれるノルマルヘキサンを除去する脱溶剤器15を備えている。以下ではノルマルヘキサンに含まれる油脂の含有率をミセラ濃度と称する。ノルマルヘキサン中の油脂含有率が20%であれば、ミセラ濃度20%と称する。また、脱溶剤器15は脱溶剤されたフレーク等を焼く機能が付されている。脱溶剤器15の上部と下部にはそれぞれ第3、第4搬送機15A、15Bが付設されており、脱溶剤器15は第2、第3搬送機11B、15Aを介して抽出機111側からのノルマルヘキサンを含んでいるレーク等が搬入され、第4搬送機15Bを介して脱溶剤されたフレーク等を搬出する。脱溶剤器15の上部にはスクラバー15Cが取り付けられ、スクラバー15Cによって脱溶剤器15から上昇するノルマルヘキサンガス内に含まれる微粉を除塵する。また、脱溶剤器15からのノルマルヘキサンガスはスクラバー15Cを介し、例えば約60~75℃のノルマルヘキサンガスを蒸発部20側へ供給するように構成されている。また、ミセラタンク13は蒸発部20側へ抽出機11において生成した例えば約55℃~65℃のミセラを供給するように構成されている。
【0005】
蒸発部20は、第1、第2蒸発缶21、22及び油脂塔23を備え、減圧下の第1、第2蒸発缶21、22においてミセラのノルマルヘキサンを順次蒸発させ、真空度が徐々に 高くなる油脂塔23において残留ノルマルヘキサンを除去し、微量のノルマルヘキサンを含む油脂を得る。第1蒸発缶21には脱溶剤器15から供給される加熱ノルマルヘキサン(例えば60~70数℃)を用いてミセラタンク13から第1蒸発缶21に供給される例えば50数℃のミセラを加熱してノルマルヘキサンを蒸発させ、第1コンデンサ24においてノルマルヘキサンを凝縮させて溶剤セパレータ25で回収する。第1蒸発缶21において得られる例えばミセラ濃度60%のミセラは第2蒸発缶22へ供給される。第2蒸発缶22では例えば360torrの減圧下でミセラがスチームを用いて更に加熱されてノルマルヘキサンが蒸発してミセラ濃縮96%のミセラが生成し、蒸発したノルマルヘキサンが第1コンデンサ24において凝縮し溶剤セパレータ25で回収される。このように第2蒸発缶22では大半のノルマルヘキサンが除去される。油脂塔23は、上下に分割され、下部が上部より高真空になっている。上下の分割部には、それぞれ複数の棚段が設けられ、濃縮されたミセラが各棚段を流下する間にスチームで加熱されてノルマルヘキサンが徐々に除去される。油脂塔23において除去されたノルマルヘキサンは第2コンデンサ26で凝縮され溶剤セパレータ25で回収される。この液化した溶剤には少量の水が含まれているため、溶剤セパレータ25において溶剤から水が分離されて、水回収部27において水が回収される。溶剤セパレータ25で回収された溶剤は配管を介して溶剤加熱器14へ戻される。
【0006】
従来の油脂抽出蒸発設備は、例えば
図6に示すように、抽出部10及び蒸発部20を備え、抽出部11においてフレーク等からミセラを得た後、ミセラを蒸発部20へ供給し、ここでミセラからノルマルヘキサンを回収すると共に大豆油等の油脂を得ている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、
図6に示す従来の油脂抽出蒸留設備の場合には、第1蒸発缶21ではミセラの加熱に脱溶剤器15から供給される加熱ノルマルヘキサンガスと水蒸気を用いるため、ミセラは加熱用熱源としては十分でなく、第2蒸発缶22の負荷が大きくなる。また、第2蒸発缶22では缶全長に亘ってスチーム加熱を行うため、第2蒸発缶22の途中でノルマルヘキサンが蒸発し始め、本来加熱すべきミセラ以外にノルマルヘキサン蒸気をも余分に加熱するため、本来必要とされるスチーム使用量よりも多くのスチームが消費されるという課題があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、蒸発缶におけるスチーム使用量を削減し、省エネルギーを促進することができる油脂抽出蒸留設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に記載のフラッシュ蒸気を用いる油脂抽出蒸留設備は、油脂抽出液を受給しその溶剤を蒸発させる少なくとも一つの蒸発缶を備えた油脂抽出液蒸発設備であって、上記蒸発缶は、上記油脂抽出液を予熱する予熱部と、上記予熱部の下流側に接続されて上記油脂抽出液を加熱する加熱部と、上記予熱部の下流側に上記加熱部と併設されて上記予熱部で上記油脂抽出液から蒸発する溶剤を排出する排気部と、を有し、上記予熱部にフラッシュ蒸気を供給するフラッシュタンクを接続し、上記フラッシュ蒸気によって上記予熱部を予熱することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の請求項2に記載のフラッシュ蒸気を用いる油脂抽出蒸留設備は、請求項1に記載の発明において、上記少なくとも一つの蒸発缶は、上流側に配置された第1蒸発缶と、下流側に配置された第2蒸発缶と、を備え、上記第2蒸発缶は、上記予熱部、上記加熱部及び上記排気部を有し、上記第1蒸発缶及び上記予熱部それぞれに上記フラッシュタンクを接続したことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の請求項3に記載のフラッシュ蒸気を用いる油脂抽出蒸留設備は、油脂抽出液を受給しその溶剤を蒸発させる少なくとも一つの蒸発缶を備えた油脂抽出液蒸発設備であって、上記蒸発缶は、上記油脂抽出液を予熱する予熱部と、上記予熱部の下流側に接続されて上記油脂抽出液を加熱する加熱部と、上記予熱部の下流側に上記加熱部と併設されて上記予熱部で上記油脂抽出液から蒸発する溶剤を排出する排気部と、を有し、上記予熱部に高温ドレン水の供給配管を接続し、上記供給配管を介して上記予熱部内に上記高温ドレン水を供給してフラッシュ蒸気及びフラッシュ後の熱水をそれぞれ生成させ、これらのフラッシュ蒸気及び熱水によって上記予熱部を予熱することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の請求項4に記載のフラッシュ蒸気を用いる油脂抽出蒸留設備は、請求項3に記載の発明において、上記少なくとも一つの蒸発缶は、上流側に配置された第1蒸発缶と、下流側に配置された第2蒸発缶と、を備え、上記第2蒸発缶は、上記予熱部、上記加熱部及び上記排気部を有し、上記第1蒸発缶及び上記予熱部それぞれに高温ドレン水の供給配管を接続したことを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の請求項5に記載のフラッシュ蒸気を用いる油脂抽出蒸留設備は、求項1~請求項4のいずれか1項に記載の発明において、上記すくなくとも一つの蒸発缶から受給する油脂抽出液中の残留溶剤を除去する油脂塔を備え、上記油脂塔は、上記蒸発缶からの油脂抽出液を受給する塔本体と、上記塔本体内に挿入されて上記蒸発缶からの油脂抽出液中に蒸気をバブリングさせる蒸気吹き込み部を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、蒸発缶におけるスチーム使用量を削減し、省エネルギーを促進することができる油脂抽出蒸留設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の油脂抽出蒸留設備の第1の実施形態を示す構成図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態の油脂抽出蒸留設備を示す構成図である。
【
図3】本発明の第3の実施形態の油脂抽出蒸留設備を示す構成図である。
【
図4】本発明の第4の実施形態の油脂抽出蒸留設備を示す構成図である。
【
図5】本発明の第5の実施形態の油脂抽出蒸留設備の要部を拡大して示す摸式図である。
【
図6】従来の油脂抽出蒸留設備を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1~
図5に示す実施形態に基づいて本発明の油脂抽出蒸留設備について説明する。
【0017】
本実施形態の油脂抽出蒸留設備は、
図1に示すように、大豆のフレーク等に含まれる油脂を抽出してミセラを生成する抽出部110と、抽出部110から供給されるミセラのノルマルヘキサンを蒸発させて大豆油を得る蒸発部120と、を備えている。
【0018】
抽出部110は、フレーク等の油脂成分を抽出するコンベア式抽出機(以下、単に「抽出機」と称す。)111と、その上流側、下流側それぞれに付設された第1、第2搬送機111A.111Bと、抽出機111内でコンベアにより搬送されるフレーク等に上方からノルマルヘキサンを配管を介して供給する溶剤ポンプ112と、抽出機111から排出されるミセラを一時的に貯留するミセラタンク113と、後述する蒸発部120内の溶剤セパレータから供給されるノルマルヘキサン及び抽出機111から排気されるノルマルヘキサンを加熱する溶剤加熱器114と、抽出機111から第2搬送機111Bを介して搬入されるフレーク等中に含まれるノルマルヘキサンを除去する脱溶剤器115と、を備えている。また、脱溶剤器115の上部と下部にはそれぞれ第3、第4搬送機115A、115Bが付設されており、脱溶剤器115は第2、第3搬送機111B、115Aを介して抽出機111から搬出されるノルマルヘキサンを含むフレーク等が搬入され、第4搬送機115Bを介して脱溶剤されたフレーク等を搬出する。脱溶剤器115の上部にはスクラバー115Cが取り付けられ、スクラバー115Cが脱溶剤器115から上昇するノルマルヘキサンガス中の微粉を除塵した後、水蒸気を含むノルマルヘキサンガスが下流側の蒸発部120側へ供給されるように構成されている。また、ミセラタンク113は蒸発部120側へ抽出機111において生成したミセラを供給するように構成されている。
【0019】
蒸発部120は、減圧下で例えばミセラ濃度20%のミセラを従来と同様の減圧下で加熱してノルマルヘキサンを蒸発させて段階的に濃縮する第1、第2蒸発缶121、122と、第2蒸発缶122から供給される濃縮ミセラ中の残留ノルマルヘキサンを除去して高純度の油脂を生成する油脂塔123と、を備えている。第1蒸発缶121は、従来と同様に脱溶剤器115から供給される加熱ノルマルヘキサンガスを用いてミセラタンク113から供給されるミセラを例えばミセラ濃度60%まで濃縮し、第2蒸発缶122へ供給するように構成されている。第1蒸発缶121から蒸発して放出されるノルマルヘキサンガスは第1コンデンサ124において冷却された後、溶剤セパレータ125で溶剤として回収する。溶剤セパレータ125は、配管によって抽出部110の溶剤加熱器114と配管を介して接続され、溶剤セパレータにおいて溶剤として回収されたノルマルヘキサンが溶剤加熱器114に戻される。ここまでは従来と同様に構成されている。
【0020】
而して、本実施形態では、第2蒸発缶122が予熱部122Aと加熱部122Bとに分割され、予熱部122Aがミセラの上流側に位置し、加熱部122Bが予熱部122Aの下流側に位置し、互いに配管で接続されている。予熱部122Aは、後述するようにフラッシュ蒸気によってミセラが予熱し、加熱部122Bの手前でミセラからノルマルヘキサンを蒸発させてミセラ内にノルマルヘキサンガスの気泡が含まれない状態にした後、加熱部122B内ではミセラ濃縮液のみを加熱するように工夫されている。
【0021】
また、予熱部122Aと加熱部122Bの接続配管から蒸気放出管122Cが分岐し、加熱部122Bと蒸気放出管122Cの分岐点には覗き窓122Dが設けられている。この覗き窓122Dにおいて予熱部122Aで発生するノルマルヘキサンガスの様子と加熱部122Bへ向かう濃縮ミセラの様子を確認することができる。予熱部122Aの下端には第1蒸発缶121からの濃縮60%のミセラが流入する配管が接続されている。加熱部122Aの濃縮ミセラの出口には油脂塔123の上部のミセラの入口が配管を介して接続されている。また、加熱部122Bの上端と蒸気放出管122Cには第1コンデンサ124が接続され、加熱部122Bと蒸気放出管122Cから放出されるノルマルヘキサンガスが溶剤として凝縮し、溶剤セパレータ125へ供給されるようになっている。第2蒸発缶122の加熱部122Bでは大半のノルマルヘキサンが除去され、例えば濃度96%のミセラが油脂塔123へ供給される。
【0022】
油脂塔123は、
図1に示すように上下に分割され、下部123Aが上部123Bより高真空になっている。上下の分割部には、それぞれ複数の棚段が設けられ、濃縮ミセラが各棚段を流下する間にスチームで加熱されてノルマルヘキサンが蒸発して徐々に除去される。また、下部123A内の棚段の下方に蒸気吹き込み部123Cが配置され、高真空下で棚段から流下する油脂内に蒸気をバブリングさせ、バブリング時の気泡表面から油脂中の微量の残留ノルマルヘキサンがガス化して完全に除去され、実質的にノルマルヘキサンを含まない高純度の油脂が得られる。油脂塔123において除去されたノルマルヘキサンが第2コンデンサ126で凝縮され溶剤セパレータ125で回収する。尚、127は溶剤セパレータ125に付帯する水回収部である。
【0023】
また、第2蒸発缶122の予熱部122Aのシェル側上部にフラッシュタンク128が接続されている。このフラッシュタンク128には高温ドレン水が供給されて、常圧下のフラッシュタンク128内で高温ドレン水からフラッシュ蒸気が発生するようになっている。このフラッシュ蒸気がフラッシュタンク128から配管を介して予熱部122Aのシェル側内に供給され、第1蒸発缶121から供給されるミセラを予熱し、加熱部122Bへ達する前にミセラからノルマルヘキサンの一部を蒸発させるようにしてある。つまり、本実施形態では予熱部122Aにおいてフラッシュ蒸気が再利用され、予熱部122A内で予めノルマルヘキサンの一部を蒸発させ、加熱部122Bではノルマルヘキサンの気泡をなくしてミセラを効率よく加熱し、第2蒸発缶122B全体におけるスチームの使用量を削減するようにしている
【0024】
予熱部122A内で蒸発したノルマルヘキサンガスは上述したように蒸気放出管122Cから放出され、加熱部122へは蒸気を含まないミセラ濃度84%まで濃縮したミセラが流入するようになっている。加熱部122Bへ流入するミセラの様子は覗き窓122Dから確認することができる。加熱部122Bではノルマルヘキサンガスを含まない状態の濃縮ミセラが通過するため、予熱部122A内と相俟ってノルマルヘキサンを効率的に蒸発させ、従来よりも少ないスチーム使用量で高濃度に濃縮された例えば濃度96%のミセラを生成させることができる。つまり、フラッシュタンク128内で高温ドレン水から得られるフラッシュ蒸気を再利用することで第2蒸発缶122でのスチーム使用量を削減し、省エネルギーを促進することができる。また、予熱部122Aと加熱部122Bは配管を介して連通し、加熱部122Bで使用されたスチームが予熱部122Aで使用されたフラッシュ蒸気と一緒にドレン水として排出されるようになっている。また、フラッシュタンク128と予熱部122Aは周方向の複数個所で等間隔を空けて接続されていても良い。これにより予熱部122A全周面でミセラを効率よく加熱し、加熱部122Bではミセラをより効率よく加熱し、ミセラの処理能力を高めることができる。
【0025】
以上説明したように本実施形態によれば、第2蒸発缶122を予熱部122Aと加熱部122Bに分割し、フラッシュタンク128から予熱部122Aにフラッシュ蒸気を供給し、フラッシュ蒸気を再使用してミセラを予熱するようにしたため、第2蒸発缶122で余計なノルマルヘキサンの気泡を加熱することがなく、第2蒸発缶122でのスチームの使用量を格段に節約することができ、省エネルギーを促進することができる。
【0026】
図2は本発明の第2の実施形態を示す構成図である。本実施形態の油脂抽出蒸留設備100Aは、抽出部110は上記実施形態と実質的に同一に構成されているため、上記実施形態と同一の符号を付してその説明を省略し、蒸発部120について説明する。
【0027】
本実施形態では、
図2に示すように、蒸発部120は、第1、第2蒸発缶121、122及び油脂塔123を主体に構成されている。上記実施形態との相違点は、基本的には、第1蒸発缶121にもフラッシュタンク128が接続されている点、及び油脂塔123が棚段を有しない点にある。
【0028】
図2に示すように、第1蒸発缶121のシャル側上部にはフラッシュタンク128が接続され、フラッシュタンク128で生成するフラッシュ蒸気を第1蒸発缶121に供給し、フラッシュ蒸気を再利用して第1蒸発缶121を加熱し、内部を通るミセラを加熱する。
図1に示す従来の第1蒸発缶121は脱溶剤器115から供給されるノルマルヘキサンガスの余熱を利用しているため、ノルマルヘキサンガスの温度が低く熱容量が小さく、第1蒸発缶121でのミセラの濃縮が十分ではなかった。これに対して、本実施形態では第1蒸発缶121でもフラッシュ蒸気を利用するため、フラッシュ蒸気の熱容量が脱溶剤器115からの加熱ノルマルヘキサンガスの熱容量より大きく、第1蒸発缶121を通るミセラをより強く加熱し、ミセラ中のノルマルヘキサンの蒸発量を増やしてミセラを効果的に濃縮し、延いてはミセラの処理能力を高めることができる。
【0029】
また、第2蒸発缶122は、
図1に示すものと同様に、予熱部122A、加熱部122B、蒸気放出管122C及び覗き窓122Dを備えて構成されているため、フラッシュ蒸気を再利用して第1蒸発缶121から供給されるミセラを効率よく加熱し、ミセラを効率的に濃縮することができる。本実施形態では、蒸気放出管122Cが加熱部122Bの蒸気滞留部に接続され、予熱部122Aで発生したノルマルヘキサンガスが加熱部122Bで発生したルマルヘキサンガスと合流するようになっている。従って、第1、第2蒸発缶121、122からのノルマルヘキサンガスが合流して第1コンデンサ124へ供給され、ここでノルマルヘキサンガスが凝縮、液化し、溶剤セパレータ125へ供給されるように構成されている。
【0030】
図2に示すように、第1蒸発缶122から濃縮ミセラを受給する油脂塔123は、
図2に示すように塔本体123Aが下部123A、上部123Bに分割され、下部123Aと上部123Bは配管を介して連通している。下部123A、上部123Bにはそれぞれ蒸気吹き込み管123Cが挿入され、高真空に調整された上下部123A、123B内の油脂に蒸気吹き込み管123Cから水蒸気を吹き込んでバブリングさせて効率よく微量のノルマルヘキサンを除去し、実質的にノルマルヘキサンを含まない油脂を得ることができる。
図1に示す油脂塔123は、既設の油脂塔123を改造して塔本体123Aの下端に気吹き込み管123Cを設けたため、塔高が高いが、本実施形態では塔高が低くコンパクトに構成されているにも拘わらず、ノルマルヘキサンを確実に除去することができる。
【0031】
尚、本実施形態では、脱溶剤器115から排出される加熱後のノルマルヘキサンガスは、排熱コレクタ129へ供給され、排熱コレクタ129内で液化したノルマルヘキサンは溶剤セパレータ125へ供給される。また、排熱コレクタ129内のノルマルヘキサンガスは凝縮器124Aを介して溶剤セパレータ125へ供給される。
【0032】
以上説明したように本実施形態によれば、上記実施形態による効果に加えて、フラッシュ蒸気により第1蒸発缶121を効率的に機能させることができ、油脂抽出蒸留設備100Aの処理量を増やすことができる。しかも、油脂塔123では上下2段の蒸気吹き込み管123Cによって実質的にノルマルヘキサンを含まない高純度の油脂を得ることができる。
【0033】
図3は本発明の第3の実施形態を示す構成図である。本実施形態の油脂抽出蒸留設備100Bは第1蒸発缶121を省略し。油脂塔123をコンパクト化したこと以外は、実質的に第2の実施形態と同様に構成されている。本実施形態の油脂抽出蒸留設備100Bは植物油原料の処理量が少ない場合に好ましく適用される。
【0034】
本実施形態では、第1図、
図2に示す第1蒸発缶121が省略されているため、ここでは第2蒸発缶122を単に蒸発缶122と称す。蒸発缶122は、
図3に示すように、ミセラタンク113と蒸発缶122の予熱部122Aが直に接続され、ミセラタンク113から予熱部122Aへミセラが直接供給されるようになっている。蒸発缶122が一基だけであるため、上記各実施形態の場合より蒸発缶122でのミセラの滞留時間が長くなり、単位時間当たりの処理量が少なくなる。また、油脂塔123も第2の実施形態と比較して蒸気吹き込み管123Cが一つと少なく、処理量が少なくなっている。油脂塔123でも第2の実施形態と同程度の品質の油脂を得ることができる。
【0035】
以上説明したように本実施形態でも上記各実施形態と同様にフラッシュ蒸気を再利用することで省エネルギーを促進することができる。
【0036】
図4は本発明の第4の実施形態を示す構成図である。本実施形態の油脂抽出蒸留設備100Cは、同図に示すように、フラッシュタンクに代えて高温ドレン水の供給配管130を第1蒸発缶121及び第2蒸発缶122の予熱部122Aに直接接続したこと以外は
図2に示す油脂抽出蒸留設備100Aと同様に構成されている。そのため、
図2と同様に部分には同一符号を付してその説明を省略し、第2の実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0037】
本実施形態では高温ドレン水の供給配管130が二方向に分岐し、2つの分岐管130A、130Bが第1蒸発缶121と予熱部122Aそれぞれに直接接続されている。従って、高温ドレン水が2つの分岐管130A、130Bから第1蒸発缶121と予熱部122Aそれぞれのシェル側へ直接供給されるようになっている。この供給配管130の2つの分岐管130A、130Bそれぞれの先端が第1蒸発缶121と予熱部122A内に挿入され、それぞれの先端に取り付けられたノズル(図示せず)を介して第1蒸発缶121、予熱部122Aそれぞれのシェル側に高温ドレン水を噴射させ、フラッシュ蒸気と100℃の熱水を生成させる。従って、本実施形態ではフラッシュ蒸気と熱水を利用して第1蒸発缶121と予熱部122A内を通るミセラをそれぞれ加熱するようにしてある。
【0038】
また、第1蒸発缶121と予熱部122Aには分岐管131A、131B及びこれらが合流する排出管131を介してドレンタンク132が接続され、このドレンタンク132において第1蒸発缶121と予熱部122Aのシェル側内で生成するドレン水を回収し、ドレンタック132から例えばボイラー(図示せず)へ戻すようにしてある。
【0039】
本実施形態によれば、高温ドレン水を第1蒸発缶121と第2蒸発缶122の予熱部122A内へ直接供給するため、高温ドレン水の熱エネルギーをより効果的に利用し、油脂精製能力を高めることができる。
【0040】
また、供給管130の分岐管130Aの第1蒸発缶121との接続部は、
図5(a)、(b)に示すように構成することができる。即ち、第1蒸発缶121のシェル上部に大径部121Aを設け、この部分に分岐管130Aを接続するようにする。この分岐管130Aは、第1蒸発缶121の大径部121Aを囲むリング部130A
1と、このリング部130A
1の3箇所に等間隔を空けて配置されたノズル130A
2と、を有し、3箇所のノズル130A
2が第1蒸発缶121の大径部121A内に挿入され、3箇所のノズル130A
1からシェル内に高温ドレン水を噴射するようになっている。また、第2蒸発缶122の予熱部122Aに高温ドレン水を供給する分岐管130Bも分岐管130Aと同様に構成することができる。尚、
図5において、121Bはミセラの流れるパイプである。
【0041】
このような構成により第1蒸発缶121及び予熱部122A全体に高温ドレン水を満遍なく供給し、それぞれのミセラ全体を均一に加熱することができる。このような構成はフラッシュタンクからフラシュ蒸気を供給する第1、第2の実施形態にも適用することができる。
【0042】
尚、本発明は上記各実施形態に何ら制限されるものではなく、本発明の趣旨に反しない限り、各構成要素を必要に応じて適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0043】
100、100A、100B、100C 油脂抽出蒸留設備
120 蒸発部
121 第1蒸発缶
122 第2蒸発缶
122A 予熱部
122B 加熱部
122C 蒸気放出管(排気部)
123 油脂塔
123A 塔本体
123C 蒸気吹き込み管
128 フラッシュタンク
130 高温ドレン水の供給配管