(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055400
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 3/46 20060101AFI20230411BHJP
E05D 15/10 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
E06B3/46
E05D15/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164755
(22)【出願日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】八田 知樹
【テーマコード(参考)】
2E014
2E034
【Fターム(参考)】
2E014AA01
2E014FA04
2E014FB03
2E014FC01
2E014FC03
2E034GA08
2E034GB13
(57)【要約】
【課題】本開示の目的は、複数の戸体を容易に展開することができる建具の技術を提供することにある。
【解決手段】ある態様の建具10は、第1戸体1と、第2戸体2と、第1戸体1に第2戸体2を連結する連結機構3と、を備える。連結機構3は、第1戸体1に回動可能に支持されるアーム部材32と、アーム部材32の可動端に設けられる係合部材34と、を有する。係合部材34は、第2戸体2の上面にその長手方向に延びるガイド溝5にスライド可能に係合する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1戸体と、
第2戸体と、
前記第1戸体に前記第2戸体を連結する連結機構と、
を備え、
前記連結機構は、前記第1戸体に回動可能に支持されるアーム部材と、前記アーム部材の可動端に設けられる係合部材と、を有し、
前記係合部材は、前記第2戸体の上面にその長手方向に延びるガイド溝にスライド可能に係合する、建具。
【請求項2】
前記第1戸体を前記第2戸体の前に重ねた第1状態で、前記第1戸体を戸先方向に移動させたとき、前記係合部材は前記ガイド溝を戸先方向に移動し、前記第1戸体と前記第2戸体とが横方向に並んだ第2状態に至り、
前記第2状態で、前記第1戸体を戸尻方向に移動させたとき、前記係合部材は前記ガイド溝を戸尻方向に移動して前記第1状態に至る、請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記ガイド溝は、戸尻側から戸先側に延在する第1溝部と、前記第1溝部の延伸端から斜め後方に延在する第2溝部と、を含む、請求項1または2に記載の建具。
【請求項4】
前記ガイド溝は、前記第2戸体の上框に装着される溝形成部材に形成される、請求項1から3のいずれか1項に記載の建具。
【請求項5】
前記アーム部材は、前記第1戸体の上框に装着されるアーム支持部材に支持される、請求項1から4のいずれか1項に記載の建具。
【請求項6】
前記第2戸体は、当該戸体を下から支持するボールを有するボール機構を備え、前記ボールは、下向きに突出して回転可能に支持される、請求項1から5のいずれか1項に記載の建具。
【請求項7】
前記ボール機構は、前記第2戸体の下框に装着されるボール機構支持部材に支持される、請求項6に記載の建具。
【請求項8】
前記第1戸体および前記第2戸体の少なくとも一方には、戸体の姿勢が変化したときに他方との干渉を回避するための逃げ部が設けられる、請求項1から7のいずれか1項に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1支持枠と第2支持枠とを有する出窓用雨戸が記載されている。この雨戸は、第1支持枠の一端を出窓用サッシ枠の基端部に枢着し、第2支持枠の基端部を第1支持枠の他端に枢着する。第1支持枠には側面雨戸(外雨戸)を設け、第2支持枠には平行状に複数の正面雨戸(内雨戸)を内外に位置させて支持させる。雨戸を閉める時の雨戸の回転半径を小さくするために、側面雨戸と正面雨戸とは、実質的に連結されるとともに所定の姿勢変化が許容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、所定の姿勢変化が許容され、実質的に連結される側面雨戸と正面雨戸の技術が開示されている。しかし、この文献には、複数の戸体を容易に展開する観点からは十分な開示がなされていない。
【0005】
本開示の目的の1つは、複数の戸体を容易に展開可能な建具の技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の建具は、第1戸体と、第2戸体と、第1戸体に第2戸体を連結する連結機構と、を備える。連結機構は、第1戸体に回動可能に支持されるアーム部材と、アーム部材の可動端に設けられる係合部材と、を有する。係合部材は、第2戸体の上面にその長手方向に延びるガイド溝にスライド可能に係合する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の建具の第1状態を示す正面図である。
【
図7】
図1の建具のアダプタおよびボール機構を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本願発明者は、雨戸など、引戸を有する建具を検討し、次の新たな認識を得た。例えば、戸袋に戸体(パネル)を格納するタイプの雨戸において、戸体を展開して窓の屋外側を覆うときには、手を戸袋に挿入して複数の戸体を順に引き出して移動させる作業を行う。この作業は、複数の戸体を戸袋から引き出す動作が煩雑で時間もかかる。戸袋の屋外側(後側)にある戸体を室内側に手で引き寄せる動作も容易でない。
【0009】
展開された戸体を戸袋に格納するときには、複数の戸体を順に戸袋内に移動させ、戸袋の室内側(前側)から屋外側(後側)に押し込む作業を行う。この作業は、戸車の移動容易方向である横方向と直交する前後方向に戸体を移動させるため、摩擦抵抗が大きく作業者の負担も大きい。以下、実施形態を参照して、複数の戸体の展開と格納とを容易に行いうる建具の技術を説明する。
【0010】
以下、実施形態の一例を説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、適宜、構成要素の一部を省略、拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。本明細書で言及する構造及び形状に、言及している内容に厳密に一致する構造及び形状のみでなく、寸法誤差、製造誤差等の誤差の分だけずれた構造及び形状も含む。各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられる。この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって本開示の構成が限定されるものではない。以下の実施形態は、本開示の内容理解を助けるために例示するものであり、本開示の構成を限定するものではない。
【0012】
[実施形態]
図1-
図9を参照する。本開示の実施形態は建具10である。建具10は、建物の窓の屋外側を覆うように設けられる雨戸として好適に設けられる。
図1、
図2に示すように、実施形態の建具10は、第1戸体1と、第2戸体2と、第1戸体1に第2戸体2を連結する連結機構3とを備える。第1戸体1と第2戸体2とは、連結された状態で一方を横方向に移動させると、他方も追随して横方向に移動する。以下、横方向の移動を「スライド」ということがある。第1戸体1と第2戸体2を総称するときは単に戸体という。なお、以下の図では、一部を破断して示すことがある。
【0013】
建具10の第1状態から第3状態への姿勢変化を説明する。
図1、
図2に示す第1状態は、前後方向で第1戸体1が第2戸体2の前に重ねられた状態である。この状態で両方の戸体を戸袋7に格納することができる。第1戸体1を第2戸体2の前に重ねて戸袋7に格納した状態を格納状態という。
【0014】
図3、
図4に示す第2状態は、第1戸体1と第2戸体2とが横方向に並んだ状態である。この例では、第1戸体1は第2戸体2の戸先側に並んでいる。この状態では、第1戸体1は戸袋7から引き出されており、第2戸体2は未だ戸袋7内に収容されている。この状態を中間状態という。
図5に示す第3状態では、第1戸体1および第2戸体2は、横方向に並んだ状態で、両方とも戸袋7から引き出されている。この状態を展開状態という。なお、以下の図では、平面視のアーム支持部材38を外形輪郭で示すことがある。
【0015】
以下、便宜的に、戸体の上下に沿った鉛直な方向を「上下方向」といい、戸体の左右に沿った水平な方向を「横方向」という。横方向は戸体のスライド方向である。横方向において、展開する際のスライド方向を単に「スライド方向」といい、その反対方向を「反スライド方向」という。戸体の厚みに沿った方向を「前後方向」という。前後方向で屋外側から屋内側に向かう方向を「前」、「前方」といい、その逆側を「後」、「後方」という。このような方向の表記は建具10の使用姿勢を制限するものではなく、建具10は任意の姿勢で使用されうる。横方向寸法を「横幅」と、上下方向寸法を「上下幅」と、前後方向寸法を「前後幅」と表記することがある。建具10の展開時の横方向移動において、戸体の先頭側を「戸先」といい、戸体の後尾側を「戸尻」という。したがって、格納時の横方向移動では、戸尻が先頭で戸先が後尾になる。
【0016】
図3、
図4を参照する。第1戸体1は、戸体本体14と、連結機構3と、ボール機構6とを有する。戸体本体14は、パネル15と、上框16と、下框17と、縦框18、19とを有する。上框16と、下框17と、縦框18、19とは、パネル15を囲む矩形の枠を構成し、パネル15を支持する。縦框18は戸先11に設けられる戸先框であり、縦框19は戸尻12に設けられる戸尻框である。連結機構3は、第1戸体1に第2戸体2を連結するための機構である。
【0017】
第2戸体2は、戸体本体24と、第2戸体2の上面の長手方向(横方向)に延びるガイド溝5と、ボール機構6とを有する。戸体本体24は、パネル25と、上框26と、下框27と、縦框28、29とを有する。上框26と、下框27と、縦框28、29とはパネル25を囲む矩形の枠を構成し、パネル25を支持する。縦框28は戸先21に設けられる戸先框であり、縦框29は戸尻22に設けられる戸尻框である。
【0018】
第1戸体1は、上框16の上面に装着されるアーム支持部材38と、下框17の下面に装着されるボール機構支持部材68とを有する。第2戸体2は、上框26の上面に装着される溝形成部材58と、下框27の下面に装着されるボール機構支持部材68とを有する。アーム支持部材38、溝形成部材58およびボール機構支持部材68を総称するときはアダプタ8という。
図7に示すように、アダプタ8は、上框および下框と同じ横幅と前後幅を有し、上下に薄い部材である。
【0019】
図6、
図7に示すように、アーム支持部材38は、下方に突出して上框16の上面に設けられた凹部72に嵌め込まれる突出部385を有し、溝形成部材58は、下方に突出して上框26の上面に設けられた凹部72に嵌め込まれる突出部585を有する。ボール機構支持部材68は、上向きに突出して下框17および下框27の下面に設けられた凹部74に嵌め込まれる突出部685を有する。
【0020】
図6は、
図2のA-A線に沿った縦断面である。この図に示すように、連結機構3は、第1戸体1に回動可能に支持されるアーム部材32と、アーム部材32の可動端に設けられる係合部材34とを有する。アーム部材32は、基端側に貫通孔35を有する。アーム支持部材38は、上段部381と、上段部381よりも1段低い中段部382と、中段部382に形成されたタップ孔383を有する。この例の中段部382は、第1戸体1の前後幅の約50%の前後幅と、前後幅に略等しい横幅を有する。中段部382は、第1戸体1の前後中心から後端にわたって延在し、横方向には戸尻側の端部まで延在している。
【0021】
ボルト36の先端が、ワッシャ37と貫通孔35を貫通して、タップ孔383にねじ込まれる。この構成により、アーム部材32は、ボルト36を中心に回動可能にアーム支持部材38に装着される。係合部材34は、アーム部材32の可動端から下方に突出するピン部材であり、平面視で円形の断面を有する。係合部材34とアーム部材32は一体的に形成される。アーム部材32は、アーム支持部材38に取り付けられた状態で、上段部381よりも上方に突出してもよいが、この例では、上段部381以下の範囲に嵌め込まれる。
【0022】
図2に示すように、係合部材34は、第2戸体2の上面にその長手方向に延びるガイド溝5にスライド可能に係合する。溝形成部材58は、上段部581と、上段部581よりも1段低い中段部582を有する。この例の中段部582は、横方向に延在し、第2戸体2の前後幅の約50%の前後幅を有し、第2戸体2の前後中心から前端にわたって形成されている。中段部582には、ガイド溝5が形成されている。溝形成部材58の中段部582の高さは、アーム支持部材38の中段部382の高さと等しい。
【0023】
図2に示すように、ガイド溝5は、第1溝部51と、第2溝部52とを含む。第1溝部51は、戸尻22側の基端511から戸先21側の延伸端512に向かって延在する。第1溝部51は、カーブしていてもよいが、この例では中段部582の前後中心に沿って直線的に延びている。第1溝部51は、第2戸体2の前後中心線よりも前に位置する。第2溝部52は、第1溝部51の延伸端512から斜め後方に延在する。第2溝部52は、直線的に延びていてもよいが、この例では、斜め前向きの凸曲線に沿って延びている。ガイド溝5の溝幅は、係合部材34のスライドを許容するように、係合部材34の外形にマージンを加えて設定される。
【0024】
図7に示すように、戸体は、横方向に所定の間隔で配置された2つのボール機構6を有する。ボール機構6は、球状のボール62と、ボール62を収容する直方体のボール収容部63と、ボール収容部63から上方に突出する円筒形の突起部64とを有する。ボール収容部63は、ボール62を回転可能に収容する収容空間を有する。ボール62は、ボール収容部63に収容された状態で下方に突出して戸体を下から支持する。ボール収容部63の収容空間の寸法は、ボール62の回転を許容するようにボール62の外形にマージンを加えて設定される。ボール機構6は、ボール機構支持部材68の下面から上向に凹む凹部686に嵌め込まれる。ボール62の各方向への回転が許容されるため、戸体を横方向および前後方向へ移動するときの摩擦抵抗を減らすことができる。
【0025】
図2、
図8を参照して、建具10の展開動作における姿勢変化を説明する。展開動作では、使用者が戸体にスライド方向の力を加えることにより、建具10は、第1状態から第2状態を経て第3状態に至る。
図2に示すように、第1状態では、第1戸体1は第2戸体2の前に重なる。このとき、アーム部材32は、斜め左後方に回転しており、係合部材34は第1溝部51の基端511の近傍に位置する。
【0026】
第1状態から、第1戸体1にスライド方向(図中左向き)の力Sを加えると、第1戸体1は戸先側に移動し、
図8(A)に示すように係合部材34は第1溝部51をスライド方向に移動する。このとき、係合部材34は、第1溝部51の前縁513に当接した状態で移動する。さらに、第1戸体1をスライド方向に移動させると、係合部材34は、第1溝部51から第2溝部52に移動し、
図8(B)に示すように、係合部材34は、第2溝部52の戸先側の斜面522に当接した状態で、第2溝部52を斜め後方に移動する。
【0027】
係合部材34が斜面522に当接した状態で、第1戸体1にスライド方向の力Sを加えると、その力の分力Fが斜面522に付与される。この結果、第2戸体2の戸先側は、分力Fによって斜め前方に移動し、このとき、第2戸体2は戸袋7から引き出され、
図8(C)に示す第2状態に至る。さらに、
図8(C)の状態で、第1戸体1にスライド方向の力Sを加えると、第2戸体2は、第1戸体1に追随して、矢印Pで示すようにスライド方向に移動し、
図4に示す第3状態に至る。
【0028】
図8に示すように、第1戸体1と第2戸体2の姿勢変化過程で、第1戸体1の戸尻12の後角が第2戸体2の戸先21の前角に干渉することがある。そこで、本実施形態では、第1戸体1の戸尻12および第2戸体2の戸先21の少なくとも一方には、戸体の姿勢が変化したときに他方との干渉を回避するための逃げ部213が設けられる。
【0029】
図8の例では、逃げ部213は、第2戸体2の戸先21の前角を後退させることによって形成された傾斜部214を含む。この例の傾斜部214は、戸先21から斜め前向きに傾斜する。傾斜部214は、平面視で直線的な外形形状を有してもよいが、この例では、平面視で斜め前向きの凸曲線に沿った外形形状を有する。
【0030】
図9、
図2を参照して、建具10の格納動作における姿勢変化を説明する。格納動作では、使用者は、戸体に反スライド方向の力Rを加えることにより、建具10は、第3状態から第2状態を経て第1状態に至る。
【0031】
第2状態から第1状態に至る過程では、戸体は
図9(A)と
図9(B)の過程を経由する。第2状態で、第1戸体1に反スライド方向の力Rを加えると、第1戸体1は戸尻側に移動し、係合部材34は、第2溝部52の戸先21とは反対側の斜面524に当接した状態で、第2溝部52を斜め前方に移動する。
【0032】
係合部材34が斜面524に当接した状態で、第1戸体1に反スライド方向の力Rを加えると、その力Rの分力Gが斜面524に付与される。このことにより、第2戸体2の戸先側は、分力Gによって斜め後方に移動する。この結果、第2戸体2は第1戸体1の後側に回り込み、
図9(B)に示す状態に至る。さらに、第1戸体1に反スライド方向の力Rを加えると、係合部材34は、第1溝部51の後縁514に当接した状態で反スライド方向に移動する。このとき、力Rの分力Gが後縁514に付与される。このことにより、第2戸体2は後方の戸袋7に押し込まれ、
図2に示す第1状態に至る。
【0033】
以上のように構成された建具10の特徴を説明する。建具10は、第1戸体1と、第2戸体2と、第1戸体1に第2戸体2を連結する連結機構3と、を備える。連結機構3は、第1戸体1に回動可能に支持されるアーム部材32と、アーム部材32の可動端に設けられる係合部材34と、を有する。係合部材34は、第2戸体2の上面にその長手方向に延びるガイド溝5にスライド可能に係合する。
【0034】
この構成によれば、第1戸体1と第2戸体2の一方を移動させることにより、他方を一緒に移動させることができる。これにより、複数の戸体の展開と格納とが容易になり、使用者の負担を軽減できる。
【0035】
実施形態では、第1戸体1を第2戸体2の前に重ねた第1状態で、第1戸体1を戸先方向に移動させたとき、係合部材34はガイド溝5を戸先方向に移動し、第1戸体1と第2戸体2とが横方向に並んだ第2状態に至る。また、第2状態で、第1戸体1を戸尻方向に移動させたとき、係合部材34はガイド溝5を戸尻方向に移動して第1状態に至る。この場合、戸体の展開動作と格納動作における使用者の負担を軽減できる。
【0036】
実施形態では、ガイド溝5は、戸尻側から戸先側に延在する第1溝部51と、第1溝部51の延伸端512から斜め後方に延在する第2溝部52と、を含む。この場合、第1戸体1の移動によって、第2戸体2を前後に移動させることができる。
【0037】
実施形態では、ガイド溝5は、第2戸体2の上框26に装着される溝形成部材58に形成される。この場合、予めガイド溝5が形成された溝形成部材58を戸体に装着することにより、現場での作業工数を減らせる。
【0038】
実施形態では、アーム部材32は、第1戸体1の上框16に装着されるアーム支持部材38に支持される。この場合、予めアーム部材32が組み込まれたアーム支持部材38を戸体に装着することにより、現場での作業工数を減らせる。
【0039】
実施形態では、第2戸体2は、戸体を下から支持するボール62を有するボール機構6を備える。ボール62は、下向きに突出して回転可能に支持される。この場合、ボール機構6を備えるため、戸体の横方向及び前後方向の移動における摩擦抵抗が減り、使い勝手が改善される。
【0040】
実施形態では、ボール機構6は、第2戸体2の下框27に装着されるボール機構支持部材68に支持される。この場合、予めボール機構6が組み込まれたボール機構支持部材68を戸体に装着することにより、現場での作業工数を減らせる。
【0041】
実施形態では、第1戸体1および第2戸体2の少なくとも一方には、戸体の姿勢が変化したときに他方との干渉を回避するための逃げ部213が設けられる。この場合、第1戸体1と第2戸体2の姿勢を変化させる場合の動作が円滑になる。
【0042】
以上が実施形態の説明である。
【0043】
以下、変形例を説明する。変形例の図面及び説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成を重点的に説明する。
【0044】
図10を参照してガイド溝5の変形例を説明する。本変形例のガイド溝5は、第1溝部51および第2溝部52に加えて第3溝部53を有する点で実施形態と相違し、他の構成は同様である。よって、重複する説明を省き、第3溝部53を重点的に説明する。第3溝部53は、第2溝部52の延伸端526から後方に延びる。この場合、係合部材34が第3溝部53の縁に対して実質的に垂直に当接するため、横方向に移動させる力を効率的に伝達することができる。
【0045】
[その他の変形例]
実施形態の説明では、戸体の姿勢変化過程で、傾斜部214は、第1戸体1の戸尻12と接触しない例を示したが、これに限定されない。姿勢変化過程で、傾斜部は、第1戸体と接触してもよいし、姿勢変化過程で第1戸体をガイドするように構成されてもよい。
【0046】
実施形態の説明では、係合部材34とアーム部材32は一体的に形成される例を示したが、これに限定されない。係合部材34とアーム部材32は、別々に形成されて接合されてもよい。
【0047】
実施形態の説明では、第1戸体1と第2戸体2の両方にボール機構6が設けられる例を示したが、これに限定されない。ボール機構は、一方の戸体に設けられ、他方の戸体には設けられなくてもよい。
【0048】
実施形態の説明では、建具10が第1戸体1と第2戸体2の2枚の戸体で構成される例を示したが、これに限定されない。建具は3枚以上の戸体を含んで構成されてもよい。この場合、中間の戸体は、横方向に延びるガイド溝と、戸尻側に設けられた連結機構とを有してもよい。
【0049】
以上の構成要素の任意の組み合わせも、実施形態及び変形例を抽象化した技術的思想の態様として有効である。たとえば、実施形態に対して他の実施形態の任意の説明事項を組み合わせてもよいし、変形例に対して実施形態及び他の変形例の任意の説明事項を組み合わせてもよい。
【0050】
以上、実施形態及び変形例を説明した。実施形態及び変形例を抽象化した技術的思想を理解するにあたり、その技術的思想は実施形態及び変形例の内容に限定的に解釈されるべきではない。前述した実施形態及び変形例は、いずれも具体例を示したものにすぎず、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との表記を付して強調している。しかしながら、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【符号の説明】
【0051】
10 建具、 1 第1戸体、 2 第2戸体、 3 連結機構、 5 ガイド溝、 6 ボール機構、 11、21 戸先、 12、22 戸尻、 16、26 上框、 17、27 下框、 32 アーム部材、 34 係合部材、 38 アーム支持部材、 51 第1溝部、 52 第2溝部、 58 溝形成部材、 62 ボール、 68 ボール機構支持部材。