(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055430
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】苗箱供給装置及びそれを備えた苗移植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20230411BHJP
A01C 11/00 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
A01C11/02 301B
A01C11/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164800
(22)【出願日】2021-10-06
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000231981
【氏名又は名称】日本甜菜製糖株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510243528
【氏名又は名称】サークル機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 大晃
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 泰明
(72)【発明者】
【氏名】今村 城久
【テーマコード(参考)】
2B060
【Fターム(参考)】
2B060AA10
2B060AB05
2B060AD08
2B060AE01
2B060BA04
2B060CB02
2B060CB04
2B060CB06
2B060CB07
2B060CB09
2B060CB13
2B060CB25
2B060CB26
2B060CB27
(57)【要約】
【課題】苗移植機に対して苗箱を自動的に供給、回収する苗箱供給装置及びそれを備えた苗移植機を提供する。
【解決手段】
苗箱供給装置21は、苗箱を苗移植機の苗箱受入部と待機位置との間で移送可能な移送手段33と、複数の苗箱を載置し、載置された複数の苗箱を順次、待機位置を通して移動可能な可動苗台31と、を備える。苗箱供給装置21は、移送手段33によって、空になった苗箱13を苗箱受入部から待機位置へ、また、紙筒苗群を収容した苗箱を待機位置から苗箱受入部へ移送し、可動苗台31によって、待機位置から空苗箱を移動させ、また、苗群を収容した苗箱を待機位置へ移動させることにより、自動的に順次、空苗箱を苗搬送部から回収する共に、紙筒苗群を収容した苗箱を苗箱受入部に供給することができる。これにより、作業者の労力を軽減することができる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗箱に収納された紙筒苗群から紙筒苗列を分離して、分離された前記紙筒苗列の各紙苗筒を順次、圃場に移植する苗移植機に、苗箱を供給する苗箱供給装置であって、
前記苗箱を前記苗移植機の苗箱受入部と待機位置との間で移送可能な移送手段と、
複数の前記苗箱を載置し、載置された複数の前記苗箱を順次、前記待機位置を通して移動可能な可動苗台と、を備えることを特徴とする苗箱供給装置。
【請求項2】
前記移送手段は、前記苗箱を把持するクレーンユニットと、該クレーンユニットを昇降させる昇降ユニットと、前記可動苗台に対して直交する方向に延び、前記クレーンユニットを案内する案内部と、を備え、
前記クレーンユニットは、前記待機位置から前記案内部に従って移動することを特徴とする請求項1に記載の苗箱供給装置。
【請求項3】
前記可動苗台は、移植機の進行方向に沿って前後方向に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の苗箱供給装置。
【請求項4】
前記可動苗台は、前記苗箱を2段積みで載置することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の苗箱供給装置。
【請求項5】
苗箱に収納された紙筒苗群から紙筒苗列を分離して、分離された前記紙筒苗列の各紙苗筒を順次、圃場に移植する苗移植機であって、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の苗箱供給装置を備えることを特徴とする苗移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙筒苗を圃場に植付する苗移植機に苗箱を供給する苗箱供給装置及びそれを備えた苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場を走行しながら自動的に苗箱に収容された紙筒苗群から紙筒苗列を分離して、さらに個別の紙筒苗ごとに、圃場に植え付ける苗移植機が知られている。このような苗移植機では、圃場での移植作業中に、苗箱が空になったとき、作業者が手作業で空箱を回収すると共に、新たな苗箱をセットする必要がある。また、特許文献1には、苗箱載置部から複数の苗箱を順次、作業者に自動的に供給し、作業者が供給された苗箱内の紙筒苗群を手動で供給コンベアに供給して、空となった苗箱を手動で取り除くようにして、作業者を補助する苗移植機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、圃場における苗移植作業では、作業者が1日に数百個の空の苗箱を移植機から回収及び苗箱を移植機にセットすることがあり、紙筒苗群を収納した苗箱は約25kgの重量を有しているため、作業者に多大の負担がかかるという問題がある。また、特許文献1に記載されたものでは、作業者の労力をある程度軽減することができるが、作業者が手作業で空苗箱を取り除く必要があるので、依然として作業に手間がかかり、作業者に負担となっている。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、苗箱を自動的に供給、回収して、作業者の労力を軽減することができる苗箱供給装置及びそれを備えた苗移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の苗箱供給装置は、苗箱に収納された紙筒苗群から紙筒苗列を分離して、分離された前記紙筒苗列の各紙苗筒を順次、圃場に移植する苗移植機に、苗箱を供給する苗箱供給装置であって、前記苗箱を前記苗移植機の苗箱受入部と待機位置との間で移送可能な移送手段と、複数の前記苗箱を載置し、載置された複数の前記苗箱を順次、前記待機位置を通して移動可能な可動苗台と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、移送手段によって空になった苗箱を苗箱受入部から待機位置へ、また、紙筒苗群を収容した苗箱を待機位置から苗箱受入部へ移送し、可動苗台によって待機位置から空の苗箱を移動させ、また、苗群を収容した苗箱を待機位置へ移動させることにより、自動的に順次、空の苗箱を苗箱受入部から回収すると共に、紙筒苗群を収容した苗箱を苗箱受入部に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る苗箱供給装置を適用した苗移植機の概略平面図である。
【
図3】
図1に示す苗箱供給装置の可動苗台の概略正面図である。
【
図5】
図1に示す苗箱供給装置の移送手段の概略正面図である。
【
図7】
図5に示す移送手段のクレーンユニットの稼働状態を示す図であり、(a)はクレーンユニットの開状態の概略正面図であり、(b)はクレーンユニットの閉状態の概略正面図である。
【
図8】
図1に示す苗移植機の苗分離部及び苗搬送部の概略平面図である。
【
図9】
図5に示す移送手段による空苗箱の移送動作を示す図である。
【
図10】
図5に示す移送手段による苗箱の移送動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態を添付した図を参照して説明する。
まず、本実施形態に係る苗箱供給装置を適用した苗移植機を説明する。なお、添付した図については、図中の符号の向きにあわせて、図の上下左右などの位置を定めることとする。以下の説明において、便宜上、
図1,
図2,
図4,
図8及び
図11における左方向(左側)を前方向(前方側)又は進行方向と定義するとともに右方向(右側)を後方向(後方側)又は後退方向と定義する。
【0010】
図1及び
図2に示すように、苗移植機1は、連結フレーム7を介して、トラクタ4に連結され、牽引されて走行し、圃場2を移動しながら圃場2に紙筒苗19を植え付けるものである。苗移植機1は、紙筒苗群15(
図8参照)から紙筒苗列17(
図8参照)を分離させる苗分離部23と、苗箱11を受入して苗箱11に収納された紙筒苗群15を苗分離部23へ搬送する苗搬送部25と、紙筒苗群15を収納した苗箱11を苗搬送部25に供給する苗箱供給装置21と、を備える。また、苗移植機1は、苗分離部23から供給された紙筒苗列17の紙筒苗19(
図2及び
図8参照)を個別に苗植付部29へ転送する苗転送部27と、紙筒苗19を圃場2の植付溝(図示せず)に植え付ける苗植付部29と、備える。
【0011】
(苗箱供給装置)
図1及び
図2に示すように、苗箱供給装置21は、紙筒苗群15を収納した苗箱11(
図10等参照)の苗搬送部25への供給及び空となった苗箱13(以下、空苗箱13という、
図9等参照)の苗搬送部25からの回収を自動に行うものである。苗箱供給装置21は、複数の苗箱11及び空苗箱13を載置する可動苗台31と、苗箱11及び空苗箱13を移送する移送手段33と、を備える。
【0012】
可動苗台31は、
図1、
図3,
図4及び
図11に示すように、苗搬送部25の側方に配置され、支持フレーム9によって、支持されている。可動苗台31は、苗移植機1の前後方向に延びる載置台41と、載置台41を苗移植機1の前後方向に移動させる移動機構43と、移動機構43の駆動源であるモータ45と、可動レール47と、固定レール49と、を備える。載置台41は、苗箱11を
図4における左右方向(苗移植機1の進行及び後退方向)に沿って案内、保持するように凹状を呈し、苗箱11を載置台41の長手方向に沿った所定間隔で保持する複数の位置決め部55(ローラ)を備える。位置決め部55は、載置台41に所定間隔で配置され、苗箱11の底部の凹部に係合することにより、苗箱11を保持する。載置台41は、前方側(
図4の左側)の底部の中央に、移動機構43の第2チェーン65(後述参照)に連結される連結搬送金具51を備える。また、載置台41には、載置台41のたわみを防ぐ補強フレーム53が連結搬送金具51を挟むように設けられている。
【0013】
移動機構43は、主動スプロケット57と、搬送スプロケット59と、受動スプロケット61と、主動スプロケット57及び搬送スプロケット59に巻回された第1チェーン63と、搬送スプロケット59及び受動スプロケット61に巻回された第2チェーン65と、を備える。モータ45と搬送スプロケット59はフレーム56に取り付けられている。搬送スプロケット59及び受動スプロケット61は、ステー48により、固定レール49に回転可能に取り付けられている。主動スプロケット57は、可動苗台31の前方側に位置し、モータ45の駆動軸45aに連結されている(
図3参照)。搬送スプロケット59は、主動スプロケット57の上方に位置し、2つのスプロケットから構成され、一方のスプロケット59aに第1チェーン63が巻回され、他方のスプロケット59bに第2チェーン65が巻回されている。受動スプロケット61は、可動苗台31の後方側に位置する(
図4参照)。この構成により、モータ45の駆動力が、順次、主動スプロケット57、第1チェーン63、搬送スプロケット59の一方のスプロケット59a、他方のスプロケット59b、第2チェーン65、及び、受動スプロケット61に伝達される。これにより、第2チェーン65の回転(正転又は逆転)によって、第2チェーン65と連結された連結搬送金具51が移動する。その結果、載置台41が苗移植機1の前後方向に移動可能となる。
【0014】
可動レール47及び固定レール49は、互いに組み合わせることにより、スライドレールとして構成され、可動レール47に取付けられた載置台41を支持すると共に、載置台41の移動を安定させるものである。可動レール47は、苗移植機1の前後方向に延びる断面視クランク型のレールであり、長手璧47aと、上部脚部47bと、下部脚部47cとを備える。可動レール47は、連結搬送金具51と補強フレーム53との間に配置されるように左右一対で設けられている。可動レール47は、長手璧47aには、補強フレーム53に対向する面に、可動レール47の長手方向に沿って所定の間隔を置いて設けられた上下段のローラ67a,67bを備える。可動レール47の上部脚部47bは、載置台41の底面に取付けられている。
【0015】
固定レール49は、苗移植機1の前後方向に延びる断面視コの字型のレールであり、長手璧49aと、上部脚部49bと、下部脚部49cと、を備える。固定レール49は、連結搬送金具51と補強フレーム53との間に位置するように一対で設けられ、可動レール47を案内する。長手璧49aは、連結搬送金具51に対向する、下部脚部49c側の面に、固定レール49の長手方向に沿って所定の間隔を置いて設けられたローラ69を備える。上部脚部49b及び下部脚部49cは、連結搬送金具51に向かって延びるように配置される。上部脚部49bは、可動レール47の下段のローラ67bをオーバーラップし、可動レール47の上下段のローラ67a,67bとの間に配置される。下部脚部49cが支持フレーム9に取付けられている。
【0016】
図2,
図5,
図6及び
図7に示すように、移送手段33は、苗箱11及び空苗箱13を把持して、苗搬送部25の載置位置P1と、可動苗台31の待機位置P2との間で移送するものであり、苗搬送部25に跨るように設けられている。ここで、苗搬送部25の載置位置P1とは、苗箱11を苗搬送部25の受入コンベア145(後述参照)上に載置する位置である(
図8の破線参照)。また、可動苗台31の待機位置P2とは、可動苗台31においてクレーンユニット75による苗箱11の把持動作が行われる位置であって、前後方向に移動する載置台41を予め定められた箇所で停止させる位置である(
図11の一点鎖線参照)。移送手段33は、苗箱11の状態、すなわち、苗搬送部25に載置された苗箱11内の紙筒苗群15の残量に応じて、作業者によって稼働を実行させるようにしてもよく、又は、苗箱11の状態を検出するセンサを設けて、センサから情報に応じて、制御装置によって稼働を制御するようにしてもよい。
【0017】
移送手段33は、苗移植機1の本体フレーム3に設けられる移送支持部71と、案内部73と、苗箱11を把持するクレーンユニット75と、クレーンユニット75を昇降させる昇降ユニット77と、クレーンユニット75を苗移植機1の進行方向に対して左右方向に移動させる移動ユニット79と、を備える。移送支持部71は、苗移植機1の本体フレーム3の上部に設けられ、案内部73を支持する。案内部73は、クレーンユニット75を左右方向に案内するものであり、苗移植機1の左右方向に延びるチェーンラック式のレール81(チェーンラックレール)と、苗移植機1の左右方向に延び、クレーンユニット75の移動を安定させるための一対の補助レール83,83と、を備える。クレーンユニット75、昇降ユニット77及び移動ユニット79は、支持部材85(
図2参照)に取付けられ、一体型のユニットとして構成される。
【0018】
クレーンユニット75は、フレーム87と、苗箱11を挟持する挟持アーム89と、挟持アーム89の開閉動作の駆動源である正転又は逆転可能な挟持モータ91と、を備える。挟持アーム89は、取付ピン101によりフレーム87
の両端部に回動可能に取り付けられるフック93,93と、ラック95a(
図2参照)とにより形成される。挟持アーム89は、挟持モータ91により上下方向に移動可能な可動バー95と、一端が取付ピン102によりフック93,93と回動可能に連結され、他端が取付ピン103により可動バー95と回動可能に連結される連結バー97,97と、を備える。挟持モータ91は、フレーム87に支持され、その駆動軸(図示せず)にピニオン99(
図2参照)が取付けら
れている。ピニオン99は、可動バー95のラック95aに噛合う。これにより、挟持モータ91の駆動によってピニオン99が回転することで、ピニオン99に噛合うラック95aを有する可動バー95が上下方向に移動することができる。
【0019】
ここで、挟持アーム89の開閉動作について、
図7を参照して説明する。
図7(a)に示すように、挟持モータ91によって可動バー95を上昇させることにより、連結バー97,97が取付ピン103を軸として回動し、連結バー97,97の先端(フック93,93との連結側)が互いに近接する方向に移動する。このとき、フック93,93は、その中央部が取付ピン101により回動可能にフレーム87に取付けられていると共に、一端(フック93の爪部の反対側)が取付ピン102により連結バー97,97の先端と回動可能に連結されていることから、取付ピン101、101を軸として、その爪部が互いに離間する方向に回動することとなる。その結果、挟持アーム89が開いた状態(開状態)となる。
一方、
図7(b)に示すように、挟持モータ91によって、可動バー95を下降させることで、連結バー97,97が取付ピン103を軸として回転し、連結バー97,97の先端(取付ピン102のある部分)が互いに離間する方向に移動する。このとき、フック93,93は、取付ピン101、101を軸として、その爪部が互いに近接する方向に回動することとなる。その結果、挟持アーム89が閉じた状態(閉状態)となる。
【0020】
図5に示すように、昇降ユニット77は、正転又は逆転可能な昇降用モータ105と、昇降用モータ105の駆動軸105aに取付けられた大歯車107(スパーギヤ、
図2参照)と、大歯車107と噛合う小歯車109(ピニオンギヤ、
図2参照)と、小歯車109と噛合うラック111aを有するラックバー111と、を備える。ラックバー111は、その一端(下方端部)がクレーンユニット75のフレーム87に連結されている。この構成により、昇降用モータ105の駆動によって大歯車107及び小歯車109が回転することで、小歯車109に噛合うラック111aを有するラックバー111が上下方向に移動することができる。その結果、ラックバー111に連結されたクレーンユニット75を上昇又は下降させることができる。
【0021】
移動ユニット79は、正転又は逆転可能な移動用モータ113と、移動用モータ113の駆動軸113aに取付られ、チェーンラックレール81に噛合うスプロケット115と、一対の補助レール83,83に沿って転動する溝付ローラ117と、移動用モータ113及び溝付ローラ117を支持するフレーム120と、を備える。溝付ローラ117は、補助レール83を挟むように複数の上段ローラ117a及び複数の下段ローラ117b(図示では、2つ)からなり、取付ピン118によって、回転可能にフレーム120に取付けられている。この構成により、移動用モータ113の駆動によってスプロケット115が回転することで、チェーンラックレール81に沿って移動すると共に、溝付ローラ117,117が一対の補助レール83,83に沿って移動し、クレーンユニット75を左右方向に移動させることができる。
【0022】
(苗分離部)
図1,
図2及び
図8に示すように、苗分離部23は、苗移植機1のサブフレーム5に設けられている。サブフレーム5は、苗移植機1の本体フレーム3の上部に設けられている。苗分離部23は、苗搬送部25の搬送路153上の紙筒苗群15から先頭の第1列の紙筒苗列17を分離(剥離)させるものである。苗分離部23は、搬送路153上の紙筒苗群15から先頭の第1列の紙筒苗列17を分離(剥離)させる分離装置119と、搬送路153上の紙筒苗群15の第2列の紙筒苗列17を押さえる苗押さえ装置121と、を備える。なお、分離装置119によって、紙筒苗群15から先頭の第1列の紙筒苗列17を分離させる機構は、従来の苗移植機における分離装置及び苗押さえ装置(例えば特開平09-275718、特願2020-72878)と同様であるので、分離装置119及び苗押さえ装置121については概略のみ説明する。
【0023】
図2に示すように、分離装置119は、紙筒苗群15の第1列の紙筒苗列17の前側面に当接させる苗分離板123と、苗分離板123に当接させた紙筒苗列17に係合させる複数の苗分離針125と、を備える。苗分離板123は、ロボットアーム(図示省略)によって、操作される操作フレーム127に設けられる。苗分離針125は、回動フレーム129に設けられる。回動フレーム129は、電動モータ(油圧モータへの置き換えも可能、図示省略)の駆動によって、操作フレーム127に対して軸131を中心に回動可能である。複数の苗分離針125は、軸131を中心とする円弧に沿うように湾曲して延び、紙筒苗列17の隣接する紙筒苗19間の間隔と同一間隔をあけて左右方向に一列に配置される。
【0024】
図2に示すように、苗押さえ装置121は、搬送路153上の紙筒苗群15の第2列の紙筒苗列17に各紙筒苗19の内側に挿入される複数の苗押さえ針133と、苗押さえ針133を昇降させる昇降機構135と、を備える。昇降機構135は、複数の苗押さえ針133が第2列の紙筒苗列17の隣接する紙筒苗19間の間隔と同一間隔をあけて左右方向に一列に配置される昇降部材137と、前端部に昇降部材137が設けられるリンク部139と、リンク部139の後端部に回動可能に接続させる苗押さえシリンダ部141と、を備える。
【0025】
(苗搬送部)
図1,
図2及び
図8に示すように、苗搬送部25は、紙筒苗群15を搬送する箇所が2系列(
図1参照)からなり、搬送フレーム149の前端部(苗移植機1の前方側)に設けられる供給コンベア143と、搬送フレーム149の後端部(苗移植機1の後方側)に設けられる受入コンベア145と、供給コンベア143と受入コンベア145との間に設けられる転載コンベア147と、を備える。供給コンベア143、受入コンベア145及び転載コンベア147は、紙筒苗群15の搬送路153を構成する。供給コンベア143及び転載コンベア147は、駆動ベルトコンベアからなり、受入コンベア145は、苗箱11を受け入れる苗箱受入部(後述の載置位置P1に相当)であり、駆動ローラコンベアからなる。供給コンベア143、受入コンベア145及び転載コンベア147は、駆動源(図示省略、例えば、電動モータ)によって駆動される。搬送フレーム149には、供給コンベア143及び転載コンベア147を挟んだ左右両端側に、供給コンベア143上の紙筒苗群15及び転載コンベア147上の紙筒苗群15を案内する一対の搬送補助ベルト151,151が設けられている。
【0026】
(苗転送部)
図2に示すように、苗転送部27は、搬送路153上の紙筒苗群15から分離された第1列の紙筒苗列17を受け入れる苗送りコンベア155と、苗送りコンベア155によって搬送された紙筒苗列17の紙筒苗19を苗植付部29に供給する植付供給コンベア157を備える。苗送りコンベア155は、紙筒苗列17を植付供給コンベア157に搬送する。植付供給コンベア157は、上下方向に延びる左右一対の無端ベルト(図示せず)によって構成され、苗送りコンベア155上の紙筒苗列17から、先頭の紙筒苗19を順次挟み込んで苗植付部29へ送る。
【0027】
(苗植付部)
図2に示すように、苗植付部29は、本体フレーム3の下部に設けられて圃場2に植付溝(図示せず)を形成する溝切器159と、溝切器159によって形成された植付溝へ紙筒苗19を植え付ける植付ディスク161と、本体フレーム3に設けられた、紙筒苗19を圃場2に固定する左右一対の鎮圧輪163(図示では、左側の鎮圧輪のみを示す)とを備える。苗植付部29は、2枚のゴム板からなる植付ディスク161による従来の挟み植付方式(例えば特開2001-286204)であり、植付供給コンベア157から搬送された紙筒苗19を2枚のゴム板によって挟み込み、圃場2の植付溝へ投下する。植付溝へ投下された紙筒苗19は、左右一対の鎮圧輪163(
図2では宙に浮いているが、実際には接地している)によって圃場2に固定される。
【0028】
次に、一実施形態に係る苗箱供給装置21による空苗箱13(13A)の回収及び苗箱11(11A)の供給動作について説明する。なお、以下の説明では、苗箱11が可動苗台31の載置台41に2段積みで載置されている場合について説明する。
図9及び
図11に示すように、苗搬送部25にある空苗箱13Aを可動苗台31の載置台41に移送する動作(回収動作)において、可動苗台31の載置台41の、空苗箱13Aを載置可能な空き状態の箇所を待機位置P2(
図11(a)の一点鎖線参照)に配置する。さらに、移動ユニット79の移動用モータ113を駆動して、クレーンユニット75を案内部73に沿って待機位置P2から真横(
図9における左方向)に移動させ、クレーンユニット75(挟持アーム89)を空苗箱13Aの上方に移動させる(
図9(a)参照)。そして、昇降ユニット77の昇降用モータ105を駆動させて、挟持アーム89を所定の位置まで下降させる。所定の位置まで下降させた後、挟持モータ91を駆動させて、挟持アーム89を開いた状態(開状態)にする(
図9(a)参照)。そして、再度、挟持アーム89を、フック93,93が空苗箱13Aの取手孔13aに引掛かる位置まで下降させる(
図7(a)参照)。なお、挟持アーム89の開動作は、挟持アーム89を空苗箱13A上に位置させたときでもよく、又は、挟持アーム89の下降中に行ってもよい。
【0029】
そして、挟持モータ91を駆動させて、挟持アーム89を閉じて、挟持アーム89のフック93,93を空苗箱13Aの取手孔13aに引掛け、空苗箱13Aを把持した状態とする(
図9(b)参照)。この状態で、昇降用モータ105を駆動させて、挟持アーム89を所定の位置まで上昇させる(
図9(c)参照)。その後、挟持モータ91を可動苗台31(載置台41)の待機位置P2の上方まで、案内部73のチェーンラックレール81及び一対の補助レール83,83に沿って右方向に移動させる(
図9(d)参照)。
【0030】
そして、挟持アーム89を待機位置P2の上方に配置した後、昇降用モータ105を駆動させて、所定の位置まで下降させ、載置台41上に載置する(
図9(e)及び
図11(b)参照)。そして、挟持アーム89を開いて、空苗箱13Aとの把持状態を解除して、その後、挟持アーム89を所定の位置まで上昇させる(
図9(f)参照)。これにより、空苗箱13Aの移送が完了する。
【0031】
一方、
図10及び
図11に示すように、可動苗台31に載置された、紙筒苗群15を収納した苗箱11Aを苗搬送部25の受入コンベア145(苗箱受入部)上に移送する動作(供給動作)において、空苗箱13Aを回収した後、可動苗台31のモータ45を駆動させて、載置台41を可動苗台31の後方側に移動させ、紙筒苗群15を収納した苗箱11Aを待機位置P2に配置する(
図10(a)参照)。その後、昇降用モータ105を駆動させて、紙筒苗群15を収納した苗箱11A上に配置された挟持アーム89を所定の位置まで下降させる。挟持アーム89が所定の位置に達した後、挟持モータ91を駆動させて、挟持アーム89を開く。その後、再度、挟持アーム89を、フック93,93が苗箱11Aの取手孔11aに引掛かる位置まで下降させ(
図7(a)参照)、挟持モータ91を駆動して、挟持アーム89を閉じる。その結果、挟持アーム89が苗箱11Aを把持する(
図10(b)参照)。
【0032】
そして、挟持アーム89が苗箱11Aを把持した状態で、昇降用モータ105を駆動させて、挟持アーム89を所定の位置まで上昇させる(
図10(c)参照)。その後、移動用モータ113を駆動して、挟持アーム89を案内部73のチェーンラックレール81及び一対の補助レール83,83に沿って左方向に移動させて、苗搬送部25の載置位置P1(
図8の破線参照)の上方に配置する(
図10(d)参照)。
【0033】
そして、昇降用モータ105を駆動して、苗箱11Aを受入コンベア145に載置するまで、挟持アーム89を下降させる(
図10(e)参照)。苗箱11Aを受入コンベア145に載置した状態で、挟持アーム89を開いて、苗箱11Aとの把持状態を解除して、その後、挟持アーム89を所定の位置まで上昇させる(
図10(f)参照)。これにより、苗箱11Aの移送が完了する。
【0034】
ここで、紙筒苗群15を収納した苗箱11Aを受入コンベア145に供給した後、苗箱11Aが空となった場合、空苗箱13B(苗箱11A)を載置台41に再度載置(回収)するために、移動機構43によって、載置台41を苗移植機1の前方側に移動させ、最初に回収した苗箱11Aが載置された場所を待機位置P2に配置する。そして、上述の空苗箱13Aの回収動作を同様に行い、最初に回収した空苗箱13A上に空苗箱13Bに載置する(
図11(d)参照)。その結果、空苗箱13Bを回収することができる。
【0035】
そして、次の紙筒苗群15が収納された苗箱11Bを受入コンベア145に供給する場合、移動機構43によって、載置台41を苗移植機1の後方側に移動させ、載置台41に苗箱11Bを載置した場所を待機位置P2に配置する(
図11(e)参照)。そして、上述の最初の苗箱11Aの供給動作を同様に行うことで、次の苗箱11Bが受入コンベア145に供給される。このように、上述の回収動作と、供給動作とを繰り返すことにより、受入コンベア145上の空苗箱13を載置台41に回収しつつ、載置台41に載置された紙筒苗群15を収納した複数の苗箱11を順次、受入コンベア145に供給することができる(
図11(f)参照)。
【0036】
ここで、上述の苗箱供給装置21による苗箱11の回収動作及び供給動作は、2系列からなる苗搬送部25の一方の系列(
図9及び
図10の右側の系列)に対して説明しているが、苗搬送部25の他方の系列(
図9及び
図10の左側の系列)において、クレーンユニット75を苗搬送部25の他方の系列側まで移動させ、可動苗台31(
図9及び
図10の左側)を利用して、上述の回収動作及び供給動作を行うことで、苗搬送部25の他方の系列に対しても空苗箱13の回収及び苗箱11の供給を行うことができる。
【0037】
一実施形態に係る苗箱供給装置21を適用した苗移植機1によれば、次のような作用効果を得ることができる。
移送手段33のクレーンユニット75は、苗箱11を把持して、苗箱11を苗搬送部25の受入コンベア145に載置する載置位置P1と、空苗箱13を可動苗台31の載置台41に載置する待機位置P2との間で全自動で移動することができるので、作業者の労力を軽減することができる。
【0038】
また、苗箱供給装置21を適用した苗移植機1によれば、空苗箱13の回収及び苗箱11の供給に応じて、可動苗台31の載置台41を適宜待機位置P2に配置することで、クレーンユニット75は、昇降ユニット77及び移動ユニット79によって、上下方向及び左右方向の移動のみで、苗箱11及び空苗箱13を受入コンベア145又は載置台41に移送することができる。これにより、クレーンユニット75の動作工程を少なくすることができ、苗箱11及び空苗箱13の移送を速めることができるので、作業効率を高めることができる。
【0039】
なお、上記一実施形態に係る苗箱供給装置21を適用した苗移植機1において、1機のクレーンユニット75で、2系列からなる苗搬送部25に苗箱11を供給すると共に、空苗箱13を可動苗台31の載置台41に回収するようにしているが、2系列のそれぞれに対応したクレーンユニット75、すなわち、2機のクレーンユニット75で構成するようにしてもよい。これにより、作業効率をより高めることができる。
【0040】
また、一実施形態に係る苗箱供給装置21において、可動苗台31は、苗搬送部25の2系列を挟んで、その両側方に配置しているが、苗搬送部25の一方側のみに設けるようにしてもよい。
【0041】
さらに、一実施形態に係る苗箱供給装置21において、苗搬送部25が2系列からなるが、単系列としてもよい。この場合、例えば、苗搬送部25の両側方に可動苗台31を備え、一方の可動苗台31を受入コンベア145に供給するための紙筒苗群15を収納した苗箱11を載置するものとし、他方の可動苗台31を空苗箱13を回収するためだけのものとしてもよい。
【0042】
上述の一実施形態に係る苗箱供給装置21において、可動苗台31の載置台41に載置される苗箱11及び空苗箱13は、2段で載置されているが、1段、3段等の段数を適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…苗移植機、11…苗箱、13…空苗箱、15…紙筒苗群、17…紙筒苗列、19…紙筒苗、21…苗箱供給装置、31…可動苗台、33…移送手段、145…受入コンベア(苗箱受入部)、P1…載置位置、P2…待機位置