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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055435
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】チャック
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/30 20060101AFI20230411BHJP
   B23B 31/173 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
B23B31/30 A
B23B31/173
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164820
(22)【出願日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】大塚 誠
(72)【発明者】
【氏名】日高 和紀
【テーマコード(参考)】
3C032
【Fターム(参考)】
3C032HH11
3C032KK11
(57)【要約】
【課題】シリンダ内蔵チャックにおいて、その部品点数を削減し、厚さの低減を図るとともに、軽量化が可能なチャックを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様によれば、ボデーの正面でワークを把握するチャックが提供される。このチャックは、ウェッジプランジャと、複数の把握部と、第1及び第2のシリンダ室とを備える。ボデーの内部には、ウェッジプランジャを軸方向に移動可能に収容する単一の収容空間が形成される。複数の把握部は、ウェッジプランジャの移動に応じて、径方向に移動することにより、ワークを把握又は開放可能に構成される。第1及び第2のシリンダ室は、収容空間の一部であり、軸方向の正面側及び背面側にそれぞれ位置する。第1又は第2のシリンダ室に作動流体を供給することにより、ウェッジプランジャを軸方向に移動させるように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボデーの正面でワークを把握するチャックであって、
ウェッジプランジャと、複数の把握部と、第1及び第2のシリンダ室とを備え、
前記ボデーの内部には、前記ウェッジプランジャを軸方向に移動可能に収容する単一の収容空間が形成され、
前記複数の把握部は、前記ウェッジプランジャの移動に応じて、径方向に移動することにより、前記ワークを把握又は開放可能に構成され、
前記第1及び第2のシリンダ室は、前記収容空間の一部であり、軸方向の正面側及び背面側にそれぞれ位置し、
前記第1又は第2のシリンダ室に作動流体を供給することにより、前記ウェッジプランジャを軸方向に移動させるように構成される、もの。
【請求項2】
請求項1に記載のチャックにおいて、
前記ボデーは、ボデー本体と、カバーとを備え、
前記ボデー本体は、前記正面に開口する開口部を有し、
前記カバーは、前記開口部を塞ぐように、前記ボデー本体に装着され、
前記ウェッジプランジャは、その軸方向の正面側の面に、背面側に凹む凹部を有し、
前記カバーの一部は、前記凹部に挿入され、
前記第1のシリンダ室は、前記凹部と、前記凹部に挿入されている前記カバーの一部とで囲まれる空間である、もの。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のチャックにおいて、
前記ボデーは、第1の通路と、第1の封止材と、第2の通路と、第2の封止材とを有し、
前記第1の通路は、前記第1のシリンダ室に連通するとともに、前記正面に開放し、
前記第1の封止材は、前記第1の通路の前記第1のシリンダ室と反対側に装着され、
前記第2の通路は、前記第2のシリンダ室に連通するとともに、前記正面に開放し、
前記第2の封止材は、前記第2の通路の前記第2のシリンダ室と反対側に装着される、もの。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載のチャックにおいて、
前記ボデーは、工作機械に接続可能なアダプタをさらに備え、
前記アダプタの一部は、前記ウェッジプランジャの径方向の中心部を軸方向に貫通し、
前記ウェッジプランジャは、軸方向に移動可能に構成され、
前記第1のシリンダ室及び前記第2のシリンダ室の少なくとも一方に、前記作動流体を供給する作動流体通路が前記アダプタ内に形成されている、もの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
産業機械等の分野において、ワーク(被加工物)を把握するチャックが利用されている。このようなチャックは、ワークの中心軸を回転軸に一致させるように、ジョーと呼ばれる把握部でワークを把握する。そして、ジョーの開閉は、チャックの主軸下部にシリンダを取り付け、シリンダからチャック内に作動流体を供給することにより行われる。
【0003】
また、特許文献1に開示されるように、シリンダを内蔵したチャック(以下、「シリンダ内蔵チャック」とも記載する。)も知られている。しかしながら、シリンダ内蔵チャックでは、チャックを構成する部品の点数が多くなるとともに、シリンダを外部に取り付けるタイプの一般的なチャックと比較し、チャックの厚さも大きくなり易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05-253713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では上記事情に鑑み、シリンダ内蔵チャックにおいて、その部品点数を削減し、厚さの低減を図るとともに、軽量化が可能なチャックを提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、ボデーの正面でワークを把握するチャックが提供される。このチャックは、ウェッジプランジャと、複数の把握部と、第1及び第2のシリンダ室とを備える。ボデーの内部には、ウェッジプランジャを軸方向に移動可能に収容する単一の収容空間が形成される。複数の把握部は、ウェッジプランジャの移動に応じて、径方向に移動することにより、ワークを把握又は開放可能に構成される。第1及び第2のシリンダ室は、収容空間の一部であり、軸方向の正面側及び背面側にそれぞれ位置する。第1又は第2のシリンダ室に作動流体を供給することにより、ウェッジプランジャを軸方向に移動させるように構成される。
【0007】
かかる一態様によれば、シリンダ内蔵チャックにおいて、所定の部材を一体化することにより、部品点数を削減し、厚さの低減を図るとともに、軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るチャック1の斜視図である。
図2】実施形態に係るチャック1の正面図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4図2のB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組合せ可能である。
【0010】
図1は、本実施形態に係るチャック1の斜視図である。図2は、実施形態に係るチャック1の正面図である。図3は、図2のA-A線断面図である。図4は、図2のB-B線断面図である。
【0011】
1.全体構成
図1に示されるように、チャック1は、ボデー2と、ボデー2に取り付けられた複数(本実施形態では、3つ)の把握部Jとを備え、ボデー2の正面でワーク(不図示)を把握する。各把握部Jは、ボデー2におけるガイド溝2Gに対して挿入可能に構成されるマスタージョー3と、マスタージョー3上に取り付けられ且つワークの外周部を把握する把握面41を有するトップジョー4と、トップジョー4をマスタージョー3に固定するためのトップジョーボルト(不図示)とを有する。ここでは、トップジョー4は、ワークの外周部を把握する把握面41を有しているが、ワークの内周部を把握する把握面を有しても構わない。また、1つのトップジョー4に2本のトップジョーボルトが挿入されるが、本数はチャックやジョーの大きさ等によりこれに限定されるものではない。
【0012】
ボデー2は、その正面側が回転軸Rに直交するように、その背面側が旋盤等の工作機械に固定されて用いられる。以下の説明で方向を示す際、適宜、この向きに従って、正面側、背面側、軸方向(回転軸Rが延在する方向)、周方向(回転軸Rの回りの方向)、径方向(回転軸Rを中心とするその半径の方向)等を用いる。ボデー2は、その正面において径方向に設けられたガイド溝2Gを備え、マスタージョー3がガイド溝2Gに収容される。また、ボデー2は、マスタージョー3を開閉させるためのウェッジプランジャ7を内蔵する。
【0013】
本実施形態では、3つのマスタージョー3及びこれに対応する3つのトップジョー4を有するものとして説明しているが、把握するワークの形状、把握方法、チャック1の大きさ、トップジョー4の大きさ等によっては、2つ又は4つ以上のマスタージョー3及びトップジョー4を有するものとして実施してもよい。特に、チャック1は、正面(図3及び図4中の上面)からみて3等分した位置ごとにマスタージョー3、トップジョー4及びトップジョーボルトが配置されていることに留意されたい。これらは同一のため、その内の一箇所のみについて説明するものとする。
【0014】
マスタージョー3は、逆T字状をなし、ボデー2におけるガイド溝2G(図1参照)に収容されている。マスタージョー3は、ガイド溝2Gに沿って開閉可能に構成される。トップジョー4は、トップジョーボルトによりマスタージョー3に固定されている。マスタージョー3及びトップジョー4は、例えば、それらに形成されたセレーション(不図示)の山と谷を互いに噛み合わせて、ピッチ単位で、その相対位置を調節できるように構成されてもよい。山及び谷が連続する方向が、トップジョー4の位置をマスタージョー3に対して調節する調節方向となる。セレーションによってマスタージョー3とトップジョー4との相対位置を確定させた後、トップジョーボルトを螺合させることで、マスタージョー3に対するトップジョー4の相対位置を固定することができる。
【0015】
マスタージョー3は、トップジョー4が取り付けられる正面側とは逆の背面側に、ウェッジ部32を備える。図3に示されるように、ウェッジ部32は、その端面を接触面32aとして後述のウェッジプランジャ7によって押圧可能に構成されている。
【0016】
マスタージョー3の開閉に関連するウェッジプランジャ7がボデー2に内蔵されている。図3に示されるように、ウェッジプランジャ7は、その内部にT溝71を備え、T溝71にウェッジ部32が係合する。また、ウェッジプランジャ7は、作動流体の押圧力により軸方向に移動可能に構成されている。
【0017】
ウェッジプランジャ7の内部に設けられたT溝71は、背面側から正面側に向かって回転軸Rに近づくように設けられている。そのため、ウェッジプランジャ7が正面側から背面側に向かって軸方向に移動すると、ウェッジプランジャ7におけるT溝71とマスタージョー3におけるウェッジ部32との係合によって、マスタージョー3が径方向内側に移動する。一方、ウェッジプランジャ7が背面側から正面側に向かって軸方向に移動すると、マスタージョー3が径方向外側に移動する。
【0018】
すなわち、ウェッジプランジャ7は、ボデー2の内部において軸方向に、背面側又は正面側に移動可能に配置され、3つのマスタージョー3は、ウェッジプランジャ7の移動に応じて、ガイド溝2Gに沿って(径方向に)移動することにより開閉する。これにより、3つのトップジョー4は、ワークを把握又は開放することができる。
【0019】
ボデー2は、ボデー本体21と、カバー22とを備える。ボデー本体21は、正面側のフロント部材211と背面側のリア部材212とで構成されている。フロント部材211(ボデー本体21)は、正面に開口する開口部211aを有する。カバー22は、開口部211aを塞ぐように、フロント部材211に装着されている。
【0020】
さらに、ボデー2(チャック1)は、工作機械に接続可能なアダプタ23を備える。アダプタ23の種類を工作機械の種類に応じて変更することにより、チャック1を異なる種類の工作機械に接続することができる。これにより、チャック1の製造コストの削減を図ることができる。なお、チャック1は、工作機械に装着された固定板24により位置決めされつつ、工作機械に取り付けられる。
【0021】
チャック1は、これを組み立てた状態で、ボデーの内部に、フロント部材211、リア部材212、カバー22及びアダプタ23により形成された単一の収容空間20を備える。この収容空間20に、ウェッジプランジャ7が、その軸方向の移動が許容されつつ収容されている。すなわち、ウェッジプランジャ7は、ボデー2にガイドされつつ、軸方向に移動する。
【0022】
ウェッジプランジャ7は、円盤状をなしており、その径方向の中心部を軸方向に貫通する貫通孔72を有する。アダプタ23は、工作機械に接続する接続部231と、接続部231から正面側に突出する軸部232とを有する。そして、アダプタ23の一部である軸部232がウェッジプランジャ7の貫通孔72に挿通されている。これにより、ウェッジプランジャ7は、ボデー2のみならず、軸部232(アダプタ23)にガイドされつつ、軸方向に移動(摺動)可能に構成されている。このため、ウェッジプランジャ7の軸方向への移動が安定する。
【0023】
カバー22は、その径方向の中心部を軸方向に貫通する貫通孔221を有する。この貫通孔221に軸部232の正面側の端部が嵌合している。これにより、カバー22とアダプタ23とが連結されている。また、ウェッジプランジャ7は、その軸方向の正面側の面に、背面側に凹む凹部73を有する。この凹部73には、図3に示されるように、カバー22の一部である背面側の部分が液密的に挿入されている。当該カバー22の背面側の外周部分は、ボデー2とともに、ウェッジプランジャ7が軸方向に移動(摺動)する際のガイドとして機能することができる。かかる構成により、ウェッジプランジャ7の軸方向への移動がより安定する。
【0024】
以上のような構成によれば、従来のシリンダ内蔵チャックにおける、プランジャと環状ピストンとを一体化させた構成のウェッジプランジャ7を使用するため、その部品点数を削減し、厚さの低減を図るとともに、軽量化を実現したチャック1を提供することができる。その結果、ワークの広い加工スペースを確保することができるとともに、加工すべきワークの質量を増大させることもできる。
【0025】
ここで、図4に示されるように、ボデー2の軸方向での最大長さ(最大高さ)をH[mm]とし、ボデー2の軸方向と直交する方向での最大長さ(最大幅)をL[mm]としたとき、L/Hが1.7以上であることが好ましい。具体的には、L/Hの下限値は、例えば、1.7,1.75,1.8,1.85,1.9,1.95,2,2.05,2.1,2.15,2.2,2.25,2.3,2.35,2.4,2.45,2.5,2.55,2.6,2.65,2.7,2.75,2.8,2.85,2.9,2.95,3,3.05,3.1,3.15,3.2,3.25,3.3,3.35,3.4,3.45,3.5,3.55,3.6,3.65,3.7,3.75,3.8,3.85,3.9,3.95,4であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。かかる範囲のL/Hの値であれば、チャック1の厚さが十分に低減できていると判断することができる。
【0026】
また、チャック1の質量は、チャック1を装着する工作機械の大きさに応じて増減するため、特に限定されない。
【0027】
2.シリンダ室の構成
本節では、シリンダ室について説明する。チャック1は、収容空間20の一部に、第1のシリンダ室5と第2のシリンダ室6とを有する。第1のシリンダ室5は、ボデー2とウェッジプランジャ7とに囲まれる空間として形成され、軸方向の正面側に位置する。一方、第2のシリンダ室6は、ボデー2とウェッジプランジャ7とに囲まれる空間として形成され、軸方向の背面側に位置する。そして、チャック1は、第1のシリンダ室5又は第2のシリンダ室6に作動流体を供給することにより、ウェッジプランジャ7を軸方向に移動させるように構成される。このように、収容空間20の一部を作動流体が供給すされるシリンダ室とし、残りの部分を作動流体が供給されない空の空間とすることにより、ウェッジプランジャ7の円滑な軸方向への移動が可能となる。なお、第1のシリンダ室5と第2のシリンダ室6への作動流体の供給機構については、後に詳述する。ここで、図4に示される構成では、作動流体として、例えば、作動油、オイル等の油(圧油)が好ましく用いられる。以下では、作動流体が油であるものとして説明を続ける。
【0028】
本実施形態では、第1のシリンダ室5は、カバー22とウェッジプランジャ7とで形成された空間により構成されている。具体的には、第1のシリンダ室5は、凹部73と、凹部73に挿入されているカバー22の一部とで囲まれる空間である。かかる構成により、チャック1の厚さをより低減することができる。一方、第2のシリンダ室6は、リア部材212とアダプタ23とウェッジプランジャ7とで形成された空間により構成されている。
【0029】
ボデー2は、第1の通路25と、プラグ(第1の封止材)26とを有する。第1の通路25は、カバー22を軸方向に貫通して形成されている。これにより、第1の通路25は、第1のシリンダ室5に連通するとともに、ボデー2の正面に開放する。プラグ26は、第1の通路25の正面側の開口部(第1の通路25の第1のシリンダ室5と反対側)に装着されている。
【0030】
また、ボデー2は、第2の通路27と、プラグ(第2の封止材)28とを有する。第2の通路27は、リア部材212の径方向外側に向かって延在し、途中で屈曲した後、リア部材212及びフロント部材211を軸方向に貫通して形成されている。これにより、第2の通路27は、第2のシリンダ室6に連通するとともに、ボデー2の正面に開放する。プラグ28は、第2の通路27の正面側の開口部(第2の通路27の第2のシリンダ室6と反対側)に装着されている。
【0031】
3.作動流体の供給機構の構成
本節では、作動流体の供給機構について説明する。図4に示されるように、アダプタ23の背面には、作動流体を供給するための供給口238,239が形成されている。
【0032】
供給口238は、アダプタ23、リア部材212、フロント部材211、リア部材212及びアダプタ23に連続して形成された作動流体通路18(図4中、実線で示す。)を介して第1のシリンダ室5に接続されている。また、作動流体通路18の途中であるフロント部材211の内部には、チェックバルブ8が設けられている。
【0033】
一方、供給口239は、アダプタ23、リア部材212、フロント部材211、リア部材212及びアダプタ23に連続して形成された作動流体通路19(図4中、実線で示す。)を介して第2のシリンダ室6に接続されている。また、作動流体通路19の途中であるフロント部材211の内部には、チェックバルブ9が設けられている。
【0034】
また、供給口238は、アダプタ23、リア部材212及びフロント部材211に連続して形成されたチェックバルブ通路11(図4中、点線で示す。)を介してチェックバルブ9に接続されている。
【0035】
一方、供給口239は、アダプタ23、リア部材212及びフロント部材211に連続して形成されたチェックバルブ通路12(図4中、点線で示す。)を介してチェックバルブ8に接続されている。
【0036】
チェックバルブ8,9は、弁座(不図示)に付勢手段であるスプリング8S,9Sによって付勢されるポペット弁8P,9Pと、作動流体通路18,19からの作動流体の圧力によって移動操作されるピストン(不図示)とを備える。そして、供給側と被供給側との作動流体通路18,19内の作動流体の圧力差が所定以上になると、ポペット弁8P,9Pがスプリング8S,9Sによる付勢力に抗して移動して開放状態となり、所定以下になると、ポペット弁8P,9Pが弁座に密着されて閉塞状態となる。
【0037】
なお、チェックバルブ通路11,12を介して作動流体を供給してピストンを操作することにより、スプリング8S,9Sによる付勢力に抗して開放状態とすることができる。
【0038】
本実施形態では、アダプタ23は、ボデー本体21に対して固定されており、軸方向に移動しない。このため、第1のシリンダ室5及び第2のシリンダ室6の双方に、作動流体を供給する作動流体通路18,19がアダプタ23内に形成されている。かかる構成によっても、チャック1の厚さの低減を図ることができる。
【0039】
4.把握部の開閉動作
本節では、把握部Jの開閉操作について説明する。把握部Jを閉側へ径方向(径方向内側)に移動させる場合、まず、供給口238へ作動流体を供給する。供給された作動流体は、チェックバルブ8を経由し、作動流体通路18を介して移送され、第1のシリンダ室5を満たす。これにより、ウェッジプランジャ7が軸方向背面側(図4中、下側)に移動する。このとき、ウェッジプランジャ7におけるT溝71とマスタージョー3におけるウェッジ部32との係合によって、マスタージョー3が閉側へ径方向に移動する。これにより、マスタージョー3に固定されたトップジョー4も閉側へ径方向に移動する。
【0040】
また、このとき、供給口239への作動流体の供給を停止しておく。ウェッジプランジャ7の軸方向への移動により、第2のシリンダ室6の容積が減少するので、第2のシリンダ室6を満たす作動流体は、作動流体通路19を介して移送され、供給口239から排出される。
【0041】
なお、供給口238に供給された作動流体は、チェックバルブ通路11を介して、チェックバルブ9にも供給され、チャック1の使用中に作動流体による圧力がダウンした場合に、その圧力を保持する。
【0042】
一方、把握部Jを開側へ径方向(径方向外側)に移動させる場合、まず、供給口239へ作動流体を供給する。供給された作動流体は、チェックバルブ9を経由し、作動流体通路19を介して移送され、第2のシリンダ室6を満たす。これにより、ウェッジプランジャ7が軸方向正面側(図4中、上側)に移動する。このとき、ウェッジプランジャ7におけるT溝71とマスタージョー3におけるウェッジ部32との係合によって、マスタージョー3が開側へ径方向に移動する。これにより、マスタージョー3に固定されたトップジョー4も開側へ径方向に移動する。
【0043】
また、このとき、供給口238への作動流体の供給を停止しておく。ウェッジプランジャ7の軸方向への移動により、第1のシリンダ室5の容積が減少するので、第1のシリンダ室5を満たす作動流体は、作動流体通路18を介して移送され、供給口239から排出される。
【0044】
なお、供給口239に供給された作動流体は、チェックバルブ通路12を介して、チェックバルブ8にも供給され、チャック1の使用中に作動流体による圧力がダウンした場合に、その圧力を保持する。
【0045】
5.エア抜き操作
本節では、エア抜き操作について説明する。まず、チャック1の正面を鉛直上向きとした状態で、低圧で、上述したように把握部Jの開閉を行う。
【0046】
そして、把握部Jの開時にはプラグ26を若干緩め、把握部Jの閉時にはプラグ28を若干緩める。この操作を繰り返し行うことにより、第1のシリンダ室5、第2のシリンダ室6、作動流体通路18,19、チェックバルブ通路11,12、第1の通路25及び第2の通路27内に貯留したエアを排出することができる。
【0047】
チャック1の工作機械への取付作業は、通常、チャック1の正面を鉛直上向きとした状態(原点位置)で行うため、プラグ26,28を、チャック1の正面側に装着するように構成すれば、プラグ26,28の作業性を高めることができる。
【0048】
6.その他
以上のように、本実施形態によれば、シリンダ内蔵チャックにおいて、その部品点数を削減し、厚さの低減を図るとともに、軽量化が可能なチャック1を実現することができる。その結果、ワークの広い加工スペースを確保することができるとともに、加工すべきワークの質量を増大させることもできる。
【0049】
なお、本実施形態に係るチャック1を以下の態様で実施することもできる。
【0050】
前述の実施形態では、作動流体が油(圧油)であるものとして説明したが、これに代えて、空気(圧縮空気)を用いることができ、他の液体や気体を用いることもできる。
【0051】
アダプタ23に関連して、作動流体通路18,19のいずれか一方のみを、アダプタ23内に形成するようにしてもよい。
【0052】
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記チャックにおいて、前記ボデーは、ボデー本体と、カバーとを備え、前記ボデー本体は、前記正面に開口する開口部を有し、前記カバーは、前記開口部を塞ぐように、前記ボデー本体に装着され、前記ウェッジプランジャは、その軸方向の正面側の面に、背面側に凹む凹部を有し、前記カバーの一部は、前記凹部に挿入され、前記第1のシリンダ室は、前記凹部と、前記凹部に挿入されている前記カバーの一部とで囲まれる空間である、もの。
前記チャックにおいて、前記ボデーは、第1の通路と、第1の封止材と、第2の通路と、第2の封止材とを有し、前記第1の通路は、前記第1のシリンダ室に連通するとともに、前記正面に開放し、前記第1の封止材は、前記第1の通路の前記第1のシリンダ室と反対側に装着され、前記第2の通路は、前記第2のシリンダ室に連通するとともに、前記正面に開放し、前記第2の封止材は、前記第2の通路の前記第2のシリンダ室と反対側に装着される、もの。
前記チャックにおいて、前記ボデーは、工作機械に接続可能なアダプタをさらに備え、前記アダプタの一部は、前記ウェッジプランジャの径方向の中心部を軸方向に貫通し、前記ウェッジプランジャは、軸方向に移動可能に構成され、前記第1のシリンダ室及び前記第2のシリンダ室の少なくとも一方に、前記作動流体を供給する作動流体通路が前記アダプタ内に形成されている、もの。
もちろん、この限りではない。
【0053】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0054】
1 :チャック
11 :チェックバルブ通路
12 :チェックバルブ通路
18 :作動流体通路
19 :作動流体通路
2 :ボデー
20 :収容空間
21 :ボデー本体
211a :開口部
22 :カバー
23 :アダプタ
25 :第1の通路
26 :プラグ
27 :第2の通路
28 :プラグ
3 :マスタージョー
4 :トップジョー
5 :第1のシリンダ室
6 :第2のシリンダ室
7 :ウェッジプランジャ
73 :凹部
R :回転軸
図1
図2
図3
図4