(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055448
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】パンツ型吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/49 20060101AFI20230411BHJP
A61F 13/51 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
A61F13/49 312A
A61F13/51
A61F13/49 410
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164841
(22)【出願日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 基成
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA12
3B200BA12
3B200BB03
3B200BB09
3B200BB11
3B200CA03
3B200CA06
3B200DA01
3B200DA21
(57)【要約】
【課題】着用者自身で引き上げやすく、股部分のフィット性が良好な中重度用のパンツ型吸収性物品を提供することができる。
【解決手段】液透過性のトップシート、吸収体、及び液不透過性のバックシート、をこの順に有する吸収性パッドと、ベース不織布及び縦横伸縮複合シートを積層してなる外装体と、を備え、外装体が、前側胴回り領域、股下領域、及び後側胴回り領域を備え、前側胴回り領域の両側縁部と後側胴回り領域の両側縁部とがそれぞれサイドシール部で接合されることにより、ウエスト開口部と、脚開口部と、を有し、外装体は、前側胴回り領域及び後側胴回り領域に前記縦横伸縮複合シートを、股下領域にベース不織布をそれぞれ有し、縦横伸縮複合シートとベース不織布とは、股下領域の近傍において、重複領域を有している、パンツ型吸収性物品を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシート、吸収体、及び液不透過性のバックシート、をこの順に有する吸収性パッドと、ベース不織布及び縦横伸縮複合シートを積層してなる外装体と、を備えるパンツ型吸収性物品であって、
前記外装体が、前側胴回り領域、股下領域、及び後側胴回り領域を備え、
パンツ型吸収性物品が、前記前側胴回り領域の両側縁部と前記後側胴回り領域の両側縁部とがそれぞれサイドシール部で接合されることにより、前記前側胴回り領域及び前記後側胴回り領域の上部にウエスト開口部と、前記前側胴回り領域及び前記後側胴回り領域の間の前記股下領域の左右両側に脚開口部と、を有し、
前記外装体は、前記前側胴回り領域及び前記後側胴回り領域に前記縦横伸縮複合シートを、前記股下領域に前記ベース不織布をそれぞれ有し、
前記縦横伸縮複合シートと前記ベース不織布とは、前記前側胴回り領域及び前記後側胴回り領域のそれぞれの前記股下領域の近傍において、重複領域を有していることを特徴とする、パンツ型吸収性物品。
【請求項2】
前記縦横伸縮複合シートは、肌当接面側から、不織布、縦伸縮フィルム、不織布、不織布、横伸縮フィルム、不織布の順に積層されていることを特徴とする、請求項1に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項3】
前記縦横伸縮複合シートの長手方向における150%伸長時の張力が、1.5N/30mm以上6.0N/30mm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項4】
前記前側胴回り領域、前記股下領域及び前記後側胴回り領域の長手方向における合計の寸法が、630mm以上670mm以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦横伸縮複合シートを有するパンツ型吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ドラッグストア等の店頭では、軽失禁用のパンツ型吸収性物品や中重度用のパンツ型吸収性物品が市販されている。失禁の程度が軽度の人を対象とする、吸収容量が少ない軽失禁用のパンツ型吸収性物品の商品としては、ウエスト周りがへそ下に位置する「ローライズ」タイプのパンツ型吸収性物品が知られている。
【0003】
これらは軽装を重視した設計で、着用者に着用を感じさせないよう工夫がなされている。一方、失禁の程度が中重度の人を対象とする、吸収容量が比較的多い中重度用のパンツ型吸収性物品としては、ウエスト周りがへそ上に位置するタイプのパンツ型吸収性物品が知られている。これらは、ローライズタイプとは異なり、吸収後の吸収性物品の重量によるずれ落ち軽減を配慮した設計で、着用者に着用中にずれ落ちない工夫がなされている。
【0004】
ローライズタイプのパンツ型吸収性物品の先行技術文献として、例えば特許文献1には、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる縦方向と該縦方向に直交する横方向とを有し、体液を吸収保持する吸収体と、該吸収体の非肌対向面側に配された外装体とを具備し、前身頃及び後身頃それぞれにおける該外装体の該縦方向に沿う両側縁部どうしが接合されて一対のサイドシール部、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部が形成されているパンツ型吸収性物品であって、外装体は、相対的に着用者の肌から遠い側に配置され、横方向に伸縮性を有する伸縮性不織布を含む外層シートと、相対的に着用者の肌から近い側に配置され、該伸縮性不織布とは異なる色の非伸縮性不織布を含む内層シートとの積層構造を有し、積層構造において、外層シートと内層シートとは、横方向に間欠配置された複数の接合部にて接合されており、パンツ型吸収性物品の自然状態において、内層シートが、接合部を底部に有し縦方向に延びる複数の凹条部と、該凹条部間に位置する中空の凸条部とからなる襞構造を有する、パンツ型吸収性物品が開示されている。
【0005】
また、ウエスト周りがへそ上に位置するタイプのパンツ型吸収性物品の先行技術文献として、特許文献2には、ウエスト開口部と一対のレッグ開口部とを有するパンツ型の使い捨ておむつであって、おむつの腹側部及び背側部それぞれにおけるウエスト開口部とレッグ開口部との間に、おむつ着用時の圧力が1.1~2.5kPaとなされている領域が存在し且つ該領域の幅が15~35mmであり、おむつの展開状態において、長手方向中心線から腹側部の領域の中心位置までの距離が180~220mmであり、且つ長手方向中心線から背側部の領域の中心位置までの距離が180~220mmであり、おむつ着用時のウエスト開口部の圧力が0.3~1.5kPaとなされているパンツ型使い捨ておむつが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-104287号公報
【特許文献2】特開2006-061680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、一般的な中重度用のパンツ型吸収性物品は、股上が深く、ウエスト周りがへそよりも上に位置する傾向にある。具体的には、一般的なパンツ型の中重度用吸収性物品における外装体のウエスト端部の位置は、着用者のへそよりも上部(例えば、13号マネキンに着用させると、Mサイズでへそ上約5cmとなる)に接する程度に設計されている。
【0008】
このように股上が深い為、パンツ型吸収性物品を装着しようとする着用者は、パンツ型吸収性物品の足回り開口部に両足を通した後、ウエスト周りを両手でつかんで引き上げる際に、吸収性本体を股部にフィットさせるためには、肘を折り畳みながら腕を体の高い位置まで動かさなければならなかった。
【0009】
この装着時の動きは、特に介護施設に入所中の、筋力の低下等様々な要因により腕を高い位置まで上げにくい高齢者にとって行いにくいものであった。そのため、高齢者にとっては引き上げが不十分で、吸収性本体と股部分との距離が生じ、結果として着用時の股部分のフィット性が甘くなる傾向があるという問題があった。身体と吸収性物品との間に生じる隙間は、着用中に体液漏れの発生につながるため、これらの課題の解決が市場で求められていた。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、着用者自身で引き上げやすく、股部分のフィット性が良好な中重度用のパンツ型吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者は鋭意検討を行い、外装体の前側胴回り領域及び後側胴回り領域に縦横伸縮複合シートを、股下領域にベース不織布をそれぞれ設け、縦横伸縮複合シートとベース不織布とが重複領域を有していることで、着用者自身で引き上げやすく、股部分のフィット性が良好な中重度用のパンツ型吸収性物品とすることができ、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
【0012】
(1)本発明の第1の態様は、液透過性のトップシート、吸収体、及び液不透過性のバックシート、をこの順に有する吸収性パッドと、ベース不織布及び縦横伸縮複合シートを積層してなる外装体と、を備えるパンツ型吸収性物品であって、上記外装体が、前側胴回り領域、股下領域、及び後側胴回り領域を備え、パンツ型吸収性物品が、上記前側胴回り領域の両側縁部と上記後側胴回り領域の両側縁部とがそれぞれサイドシール部で接合されることにより、上記前側胴回り領域及び上記後側胴回り領域の上部にウエスト開口部と、上記前側胴回り領域及び上記後側胴回り領域の間の上記股下領域の左右両側に脚開口部と、を有し、上記外装体は、上記前側胴回り領域及び上記後側胴回り領域に上記縦横伸縮複合シートを、上記股下領域に上記ベース不織布をそれぞれ有し、上記縦横伸縮複合シートと上記ベース不織布とは、上記前側胴回り領域及び上記後側胴回り領域のそれぞれの上記股下領域の近傍において、重複領域を有していることを特徴とする、パンツ型吸収性物品である。
【0013】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の吸収性物品であって、上記縦横伸縮複合シートは、肌当接面側から、不織布、縦伸縮フィルム、不織布、不織布、横伸縮フィルム、不織布の順に積層されていることを特徴とするものである。
【0014】
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載のパンツ型吸収性物品であって、上記縦横伸縮複合シートの長手方向における150%伸長時の張力が、1.5N/30mm以上6.0N/30mm以下であることを特徴とするものである。
【0015】
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載の吸収性物品であって、上記前側胴回り領域、上記股下領域及び上記後側胴回り領域の長手方向における合計の寸法が、630mm以上670mm以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、着用者自身で引き上げやすく、股部分のフィット性が良好な中重度用のパンツ型吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係るパンツ型吸収性物品の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るパンツ型吸収性物品を吸収性パッド側から見た平面図である。
【
図3】
図2のY
1-Y
1線における外装体の断面図である。
【
図4】本発明の実施形態におけるパンツ型吸収性物品が備える外装体の製造工程を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0019】
また、本明細書の説明において、パンツ型吸収性物品1の着用時とは、パンツ型吸収性物品1の着用時及び着用後の少なくとも一方をいう。パンツ型吸収性物品1の長手方向とは、パンツ型吸収性物品1が着用されたときに着用者の前後にわたる方向であり、図中、符号Yで示す方向である。また、パンツ型吸収性物品1の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向であり、図中、符号Xで示す方向である。さらに、肌当接面とは、外装体等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に配される面であり、非肌当接面とは、吸収体等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側(衣類側)に向けられる面である。このとき、パンツ型吸収性物品1の積層方向とは、パンツ型吸収性物品1の各部材が積層される方向であり、図中、符号Zで示す方向である。
また、体液とは、尿や軟便中の水分等の体内から体外に排泄された液体をいう。さらに、パンツ型吸収性物品1としては、特に中重度用紙おむつが例示されるが、これに限定されるものではなく、その他のパンツ型吸収性物品であってもよい。
【0020】
<パンツ型吸収性物品>
図1は、本発明の実施形態に係るパンツ型吸収性物品1の斜視図である。また、
図2は、
図1のパンツ型吸収性物品1を吸収性パッド側から見た(パンツ型吸収性物品1を展開した状態の)平面図である。
図1及び
図2に示すように、パンツ型吸収性物品1は、液透過性のトップシート、吸収体、及び液不透過性のバックシート、をこの順に有する吸収性パッド10と、ベース不織布25及び27並びに縦横伸縮複合シート26を積層してなる外装体20と、を備える。
また、外装体20は、
図2に示すように前側胴回り領域A、股下領域B、及び後側胴回り領域Cを有している。このとき、前側胴回り領域Aの両側縁部と後側胴回り領域Cの両側縁部とがそれぞれサイドシール部21で接合されることにより、
図1に示すように前側胴回り領域A及び後側胴回り領域Cの上部にウエスト開口部2と、前側胴回り領域A及び後側胴回り領域Cの間の股下領域Bの左右両側に脚開口部3と、を有する構造となる。
【0021】
パンツ型吸収性物品1の、長手方向の寸法(前側胴回り領域A、股下領域B及び後側胴回り領域Cの長手方向における合計の寸法)は630mm以上670mm以下であることが好ましく、640mm以上650mm以下であることがより好ましい。長手方向の寸法が上記の数値範囲内であることにより、着用時の股上部分が浅くなり(ローライズ型となり)、着用者が自分自身でパンツ型吸収性物品1を引き上げやすくなる。
また、幅方向の寸法は特に限定されないが、450mm以上850mm以下であることが好ましい。
【0022】
<吸収性パッド>
本発明の実施形態に係るパンツ型吸収性物品1に備えられる吸収性パッド10は上述したように液透過性のトップシート、吸収体、及び液不透過性のバックシート、をこの順に有する(製造されるときは、非肌当接面側から逆の順番で積層される)。なお、吸収性パッド10の形状は特に限定されないが、股下領域Bでのフィット性を考慮して、
図2に示すような略砂時計型であることが好ましい。
なお、吸収性パッド10の長手方向の寸法は、特に限定されないが、400mm以上600mm以下であることが好ましい。また、吸収性パッド10の幅方向の寸法は、特に限定されないが、50mm以上120mm以下であることが好ましい。
【0023】
(トップシート)
トップシートは、体液が吸収体へと移動するような液透過性を備えた基材から形成されればよく、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布など公知の親水性不織布等を使用できる。また、トップシートには、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシートには、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。
強度及び加工性の点から、トップシートの坪量は、15g/m2以上40g/m2以下であることが好ましく、18g/m2以上30g/m2以下であることがより好ましい。トップシートの形状としては特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体へと誘導するために必要とされる、吸収体を覆う形状であればよい。
【0024】
(バックシート)
バックシートは、吸収体が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、通気性又は非通気性の不透液性のプラスチックフィルムを使用できる。
【0025】
強度及び加工性の点から、バックシートの坪量は、15g/m2以上60g/m2以下であることが好ましく、17g/m2以上35g/m2以下であることがより好ましい。バックシートに通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシートにエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0026】
(吸収体)
吸収体は、基材としての吸収性繊維及び高吸収性ポリマー(以下、SAPとも称する)を含むことが好ましい。
【0027】
(吸収性繊維)
吸収性繊維は、一般に吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュー、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。フラッフパルプとしては、木材パルプ(例えば、サウザンパインやダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP))、合成繊維、樹脂繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。吸収体に、基材としての吸収性繊維にフラッフパルプを用いた場合、吸収性繊維の坪量は、特に限定されないが、50g/m2以上400g/m2以下であることが好ましく、100g/m2以上350g/m2以下であることがより好ましい。これにより、吸収体により多くの体液を吸収させることができる。
【0028】
(SAP)
吸収体が含むSAPとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。
また、SAPの坪量は、特に限定されないが、100g/m2以上800g/m2以下であることが好ましく、120g/m2以上450g/m2以下であることがより好ましい。坪量が100g/m2より小さい場合、体液を吸収する量が少なくなるため好ましくなく、800g/m2よりも大きい場合、吸収体製造時に安定的に製造することが難しいため好ましくない。
【0029】
吸収体において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成したものでもよく、吸収性繊維間にSAP粒子を固着したシートでもよい。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体の形状の安定化の目的から、吸収体を包むような、キャリアシートを設けてもよい(図示しない)。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュー、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。また、キャリアシートを複数備える場合は、複数のキャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0030】
(立体ギャザー)
吸収性パッド10は更に、着用者の排泄した体液の左右への漏れ(横漏れ)を防止するため、トップシートの肌当接面側において、長手方向に沿って撥水性又は防水性のシートを有する一対の一対の立体ギャザーを備えていてもよい(図示しない)。吸収性パッド10の幅方向における立体ギャザーの外端はバックシートに固定され、その内端はトップシートに固定され、その中央はトップシートに固定されない自由端となるように、立体ギャザーが配される。
【0031】
<外装体>
本発明の実施形態に係るパンツ型吸収性物品1は、吸収性パッド10に加えて、ベース不織布25及び27並びに縦横伸縮複合シート26を積層してなる外装体20を備える。外装体20は、前側胴回り領域A及び後側胴回り領域Cに縦横伸縮複合シート26を、股下領域Bにベース不織布25及び27をそれぞれ有している。このとき、ベース不織布25は外装体20の肌当接面側に配置され、ベース不織布27は外装体20の非肌当接面側に配置される。また、縦横伸縮複合シート26とベース不織布25及び27とは、前側胴回り領域A及び後側胴回り領域Cのそれぞれの股下領域B近傍において、重複領域である重なりしろ22を有している。
縦横伸縮複合シート26(横方向だけでなく、縦方向にも伸びるような生地)を前側胴回り領域A及び後側胴回り領域Cに使用することで、縦方向に張力が生まれるため、引き上げの際に股下部分がシートの張力で引き上げられることをサポートし、着用者自身で引き上げやすいパンツ型吸収性物品1とすることができる。また、引き上げを十分に行うことにより、股下部分がフィットし損なうことを防ぐことができ、フィット感の向上及び漏れ防止にもつながる。なお、この場合における縦方向とはパンツ型吸収性物品1の長手方向、横方向とはパンツ型吸収性物品1の幅方向である。
【0032】
また、縦横伸縮複合シート26は、前側胴回り領域A及び後側胴回り領域Cにのみ設ける(ベース不織布25及び27は前側胴回り領域A及び後側胴回り領域Cには設けず、
図2及び
図3に示すように、重なりしろ22で縦横伸縮複合シート26と積層させる)。縦横伸縮複合シート26は、後述する不織布とフィルム同士を溶着した際に生じる通気孔により良好な通気性を生じることができ、フィット感の向上につながる。なお、前側胴回り領域A及び後側胴回り領域Cにベース不織布25及び27が存在すると通気性が低下するため、前側胴回り領域A及び後側胴回り領域Cにはベース不織布25及び27が無いことが好ましい。
【0033】
このとき、縦横伸縮複合シート26は、例えば
図3に示すように、肌当接面側から、不織布261、縦伸縮フィルム262、不織布263、不織布264、横伸縮フィルム265、不織布266の順に(Z軸方向と反対方向に)積層される。このように縦方向及び横方向にそれぞれ伸縮するフィルムを複数の不織布間に挟持することで、縦方向にも横方向にも伸縮する縦横伸縮複合シート26を形成することができ、シートが縦方向にも張力が生まれるため、引き上げの際にシートの張力で股下部分が引き上げられることをサポートし、自分自身で引き上げやすいパンツ型吸収性物品1とすることができる。
また、縦横伸縮複合シート26の長手方向における150%伸長時の張力が、1.5N/30mm以上6.0N/30mm以下であることが好ましく、2.0N/30mm以上4.5N/30mm以下であることがより好ましい。張力が1.5N/30mm未満であると外装体20が柔らかすぎて引き上げのサポート効果が得られず、張力が6.0N/50mmを超えると、外装体20が硬くて伸びないため、パンツ型吸収性物品1を着用者自身で引き上げにくい。
【0034】
本発明の実施形態に係る縦横伸縮複合シート26を構成する不織布261、263、264及び266としては、従来からパンツ型吸収性物品の外装体に用いられる不織布をいずれも使用でき、例えば、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、これらの2種以上の積層体等が挙げられる。2種以上の積層体は、例えば、ホットメルト系接着剤、熱溶着、超音波溶着等により接合される。不織布261、263、264及び266は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなる繊維を構成繊維として含むことが好ましい。また、不織布261、263、264及び266におけるそれぞれの不織布は異種でも同種でも良い。なお、所定の張力を有する縦横伸縮複合シート26を得る観点から、不織布261、263、264及び266の坪量は好ましくは13g/m2以上30g/m2以下であることが好ましく、15g/m2以上25g/m2以下であることがより好ましい。
【0035】
本実施形態の縦横伸縮複合シート26を構成する縦伸縮フィルム262及び横伸縮フィルム265としては、伸縮性を備えたものであれば特に限定はないが、フィルム化により伸縮性を示す合成樹脂からなるフィルムが好ましい。該合成樹脂としては、例えば、ポリエステル系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、これらの2種以上のアロイ等が挙げられる。これらのなかでも、コスト及び伸縮性能の観点から、ポリウレタン系樹脂を含むフィルムが好ましく、ポリウレタン系樹脂からなるフィルムがより好ましい。所定の張力を有する縦横伸縮複合シート26を得る観点から、縦伸縮フィルム262及び横伸縮フィルム265の厚みはそれぞれ35μm以上60μm以下であることが好ましく、縦伸縮フィルム262及び横伸縮フィルム265のそれぞれの伸縮方向の伸び率は220%以上800%以下であることが好ましい。
【0036】
(伸縮部材)
また、外装体20は、
図2に示すように、股下領域Bの脚開口部3を形成する部分の周囲に脚回り伸縮部材23と、前側胴回り領域A及び後側胴回り領域Cのそれぞれの長手方向端部に胴回り伸縮部材24と、を含むことが好ましい。脚回り伸縮部材23及び胴回り伸縮部材24としては特に限定されず、例えば、糸ゴム等を使用できる。脚回り伸縮部材23及び胴回り伸縮部材24を有することにより、胴回り及び股下周りの部位におけるフィット感が向上する。
【0037】
<パンツ型吸収性物品の製造方法>
パンツ型吸収性物品1の製造方法としては、まず外装体20を製造する工程がある。
図4に本発明の実施形態に係るパンツ型吸収性物品1が有する外装体20の製造工程を示す。なお、図中における外装体20の幅方向はパンツ型吸収性物品1の幅方向であり、かつ、外装体20の搬送方向(MD方向)である。
まず、
図4(a)に示すように、ベース不織布27に不織布266、横伸縮フィルム265及び不織布264を順番に積層し、接合して
図4(b)に示すような横方向に伸縮性を有する不織布とする。このとき、ベース不織布27は上述したように前側胴回り領域A及び後側胴回り領域Cには設けられないため、ベース不織布27を他の部材で挟持するような形で積層する。なお、用いる接合手段としては熱溶着又は超音波溶着であることが好ましいが、超音波溶着であることがより好ましい。
次に、
図4(c)に示すように横方向に伸縮性を有する不織布の上に不織布263、縦伸縮フィルム262、不織布261及びベース不織布25を順番に積層し、接合して
図4(d)に示すような外装体20を得る。なお、不織布263、縦伸縮フィルム262、不織布261を積層した縦方向に伸縮性を有する不織布は、既に積層して接合されたものが市販されているため、
図4(c)に示すように積層済みの市販されているものを用いてもよい。市販されているものとしては、例えばGPF社製Optiflex-s 23641WGU等が挙げられる。
【0038】
外装体20を製造した後は、従来のパンツ型吸収性物品と同様にして製造できる。例えば、外装体20の肌当接面側の所定位置(主に股下領域B)に吸収性パッド10を固着することにより、パンツ型吸収性物品1が得られる。こうして得られるパンツ型吸収性物品1は、所定の順序で折り畳んで袋詰めすることにより、製品化される。
【0039】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0040】
1 パンツ型吸収性物品
2 ウエスト開口部
3 脚開口部
10 吸収性パッド
20 外装体
21 サイドシール部
22 重なりしろ
23 脚回り伸縮部材
24 胴回り伸縮部材
25、27 ベース不織布
26 縦横伸縮複合シート
261、263、264、266 不織布
262 縦伸縮フィルム
265 横伸縮フィルム
A 前側胴回り領域
B 股下領域
C 後側胴回り領域