(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055450
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】安全機構
(51)【国際特許分類】
F16P 3/00 20060101AFI20230411BHJP
B65G 23/44 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
F16P3/00
B65G23/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164845
(22)【出願日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】592127965
【氏名又は名称】NKE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167438
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100166800
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 裕治
(72)【発明者】
【氏名】荒木 悠平
(57)【要約】
【課題】、挿通体と貫通孔との間の隙間を覆うことができる安全機構を提供する。
【解決手段】安全機構は、貫通孔87内を挿通体93が移動する装置の安全機構であり、貫通孔87を覆い且つ挿通体93に回動可能に支持されるカバー3と、挿通体93の移動によりカバー3を貫通孔87を覆う状態で回動させるガイド5とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔内を挿通体が移動する装置の安全機構において、
前記貫通孔を覆い且つ前記挿通体に回動可能に支持されるカバーと、
前記挿通体の移動により前記カバーを前記貫通孔を覆う状態で回動させるガイドとを
備える、
安全機構。
【請求項2】
前記ガイドは、前記挿通体の移動方向に対して交差する方向の両側のうち、少なくとも一方側に配され、
前記カバーにおける前記ガイドと対向する側の端面は、前記挿通体の移動に伴い、前記カバーが前記貫通孔を覆う状態で前記カバーが前記挿通体の周りを回動するように構成されている、
請求項1に記載の安全機構。
【請求項3】
前記挿通体は前記貫通孔における第1の位置と第2の位置との間を移動し、
前記カバーは、前記挿通体が前記第1の位置に位置する際に前記第2の位置に向かって延伸すると共に前記貫通孔を覆う第1領域と、前記挿通体が前記第2の位置に位置する際に前記第1の位置に向かって延伸すると共に前記貫通孔を覆う第2領域とを有し、
前記第1領域と前記第2領域との間の一方の角度が180度未満である、
請求項1又は2に記載の安全機構。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記挿通体の挿通方向から見ると、第1方向に長い円弧状をし、
前記ガイドは、前記第1領域と前記第2領域との間の前記一方の側に設けられ、前記カバーの前記ガイド側の端面と対向する面に、前記挿通方向から見ると円弧状をする円弧領域を有する、
請求項3に記載の安全機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通孔内を挿通体が移動する装置の安全機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
貫通孔内を挿通体が移動する装置において、挿通体と貫通孔との間に手や異物が侵入するのを防止する安全機構が設けられている。安全機構として、「パーツ把持部を支持し、曲線部を有する所定軌道を移動するヘッド部1と、ヘッド部1を所定軌道に沿って移動させる駆動部と、カバー本体4と回転カバー5を有するカバー2を備え、カバー本体4は所定軌道が位置する平面と平行な区画板部4aを有し、区画板部4aは所定軌道に沿った軌道孔6を有し、回転カバー5は、軌道孔6をカバーする大きさで、区画板部4aに並列して回転自在に設けられ、径方向に長い切欠き8を有し、ヘッド部1は、軌道孔6及び切欠き8に挿通されて、軌道孔6に沿って移動可能であり、切欠き8は、ヘッド部1が長手方向に沿って移動可能であるとともに短手方向への移動が規制される」機構が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記機構では、特許文献1の
図6の(イ)に示すように、ヘッド部(挿通体)1の位置によっては、回転カバー(カバー)により、ヘッド部(挿通体)1と軌道孔(貫通孔)6との間の隙間が覆われない場合が生じる。なお、ここでの()内の用語は、本発明で使用している用語である。
本発明が解決しようとする課題は、簡単な構造で、挿通体と貫通孔との間の隙間を覆うことができる安全機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る安全機構は、貫通孔内を挿通体が移動する装置の安全機構において、前記貫通孔を覆い且つ前記挿通体に回動可能に支持されるカバーと、前記挿通体の移動により前記カバーを前記貫通孔を覆う状態で回動させるガイドとを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、簡単な構造で、挿通体と貫通孔との間の隙間を覆うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】搬送装置のテンション付与機構の側面図であり、(a)は組み立て状態の図であり、(b)は幅方向の外方側のプレートを外した状態の図である。
【
図3】実施形態の安全機構を組み込んだ状態を示し、(a)は幅方向の外方側のプレートを外した状態の側面図であり、(b)は幅方向の外方側のプレートとアームとを外した状態の斜視図である。
【
図5】実施形態の安全機構と、直線状のカバーを用いた安全機構との使用状態を比較する図であり、(a)は固定軸が長孔の上部側に位置する状態を示し、(b)は固定軸が長孔の下部側に位置する状態を示す。
【
図6】長孔が直線状をしている形態を示し、(a)は固定軸が長孔の上部側に位置する状態を示し、(b)は固定軸が長孔内を上部から下部に移動する状態を示す図である。
【
図7】ガイドが第1領域と第2領域との間の角度が大きい側に設けられた形態を示し、(a)は固定軸が長孔の上部側に位置する状態を示し、(b)は固定軸が長孔の下部側に位置する状態を示す。
【
図8】円弧状以外のカバーの形態を示し、(a)はガイドが貫通孔に位置する形態を示し、(b)はガイドがカバーの外側に位置する形態を示す。
【
図9】安全機構を適用できる段積み段ばらし装置の概略図であり(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<概要>
本発明の一態様に係る第1の安全機構は、貫通孔内を挿通体が移動する装置の安全機構において、前記貫通孔を覆い且つ前記挿通体に回動可能に支持されるカバーと、前記挿通体の移動により前記カバーを前記貫通孔を覆う状態で回動させるガイドとを備える。これにより、挿通体が移動しても、貫通孔を覆う状態でカバーがガイドされる。
本発明の別態様に係る第2の安全機構は、第1の安全機構において、前記ガイドは、前記挿通体の移動方向に対して交差する方向の両側のうち、少なくとも一方側に配され、前記カバーにおける前記ガイドと対向する側の端面は、前記挿通体の移動に伴い、前記カバーが前記貫通孔を覆う状態で前記カバーが前記挿通体の周りを回動するように構成されている。これにより、カバーが貫通孔を覆う状態で回動するように、可動カバーとガイドとの対向部分を構成することで実施でき、簡易な構成で実施できる。
本発明の別態様に係る第3の安全機構は、第1又は第2の安全機構において、前記挿通体は前記貫通孔における第1の位置と第2の位置との間を移動し、前記カバーは、前記挿通体が前記第1の位置に位置する際に前記第2の位置に向かって延伸すると共に前記貫通孔を覆う第1領域と、前記挿通体が前記第2の位置に位置する際に前記第1の位置に向かって延伸すると共に前記貫通孔を覆う第2領域とを有し、前記第1領域と前記第2領域との間の一方の角度が180度未満である。これにより、カバーにおける、第1の位置と第2の位置とを結ぶ方向の寸法を小さくできる。
本発明の別態様に係る第4の安全装置は、前記貫通孔は、前記挿通体の挿通方向から見ると、第1方向に長い円弧状をし、前記ガイドは、前記第1領域と前記第2領域との間の前記一方の側に設けられ、前記カバーの前記ガイド側の端面と対向する面に、前記挿通方向から見ると円弧状をする円弧領域を有する。これにより、カバーをスムーズにガイドできる。
【0009】
<実施形態>
実施形態に係る安全機構1は、チェーン部材やベルト部材を利用し且つ被搬送物を搬送する搬送装置7に設けられている例として、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、
図1及び
図2には安全機構1が設けられていない。
【0010】
1.全体構成
一例としての安全機構1は、チェーン部材を利用した搬送装置7に設けられている。ここで、被搬送物が搬送される方向を搬送方向とする。
搬送装置7は、
図1に示すように、1個又は複数個設けられたコンベアユニット70と、コンベアユニット70を駆動するための駆動ユニット72と、テンション付与機構74とを有する。
コンベアユニット70は、搬送方向と直交する方向に間隔をおいて2個あり、連結部材76により連結されている。
ここで、被搬送物の搬送方向を搬送装置7の長手方向又は単に長手方向ともいい、駆動ユニット72の駆動軸78が延伸する方向や2個のコンベアユニット70が並設する方向を搬送装置7の幅方向又は単に幅方向ともいい、搬送装置7の長手方向と幅方向とに直交する方向を上下方向ともいう。
【0011】
2.各部
(1)コンベアユニット等
コンベアユニット70は、搬送方向に延伸するフレーム80と、フレーム80の搬送方向の一端(駆動ユニット72)側に設けられたスプロケット(図示省略)と、フレーム80の搬送方向の他端に設けられた従動ローラ82(
図2の(b)参照)と、スプロケットと従動ローラ82とを巻回して循環移動するチェーン部材84とを備える。なお、従動ローラ82は一対のプレート86を介して、それぞれフレーム80に回転可能に固定される。なお、チェーン部材84は、内リンクと外リンクとが連結されているが、図では、便宜上ベルト状をしている。
【0012】
(2)テンション付与機構
テンション付与機構74は循環移動(周回)するチェーン部材84にテンションを付与する。
テンション付与機構74は、
図2に示すように、クラッチ軸周りの1方向への回転を許容するワンウェイクラッチを有するクラッチユニット90と、クラッチユニット90のクラッチ軸に接続され且つクラッチ軸周りに回転可能なアーム92と、アーム92に回転可能に支持され且つチェーン部材84にテンションを付与するテンションプーリ94とを備える。これにより、アーム92は、クラッチ軸の周りをテンションが付与される方向である第1方向にのみ回転可能となる。
テンションプーリ94は、一対のアーム92により固定支持される固定軸93(
図3の(b)参照)に回転可能に支持されている。一対のアーム92は、
図1に示すように、一対のプレート86の外側に配されている。つまり、固定軸(本発明の「挿通体」の一例に相当する)93は、一対のプレート86の長孔(本発明の「貫通孔」の一例に相当する)87を挿通して、プレート86の外側でねじ96によりアーム92に固定されている。
【0013】
(3)安全機構
主に、
図3を用いて説明する。
安全機構1は、プレート86の長孔87(
図1参照)と、当該長孔87内を移動する固定軸93との間に、指、異物等が挟まれるのを防止する機能を主として有している。
安全機構1は、長孔87を覆い且つ固定軸93に回動可能に支持されたカバー3と、固定軸93の移動に合わせてカバー3を回動させるガイド5とを有している。このように安全機構1は簡単な構造で構成されている。
ここで、固定軸93は、長孔87の長手方向(長孔87の固定軸93の移動方向)の一端(上端)と他端(下端)との間を、一方向(テンションが作用する方向)に移動する。上端は本発明の「第1の位置」の一例に、下端は本発明の「第2の位置」の一例にそれぞれ相当する。
ガイド5は、固定軸93の移動方向に対して交差する方向の両側のうち、少なくとも一方側であるクラッチユニット90側に配されている。換言すると、ガイドは、長孔87を挟む方向の一方側に配されている。
【0014】
(3-1)カバー
カバー3は、金属板、樹脂板等により構成されている。カバー3は固定軸93が挿通する挿通部30を有する。ここでは、挿通部30は貫通孔により構成される。なお、貫通孔の符号も「30」とする。これにより、カバー3は、固定軸93に回動可能に支持されることとなる。ここでは、固定軸93は円柱状をし、貫通孔30も略同じ大きさの円形状をしている。これにより、固定軸93周りのカバー3の回動がスムーズになる。
カバー3は、貫通孔30を挿通する固定軸93が長孔87の上端(一端)に位置する(
図4の(a)の状態を参照)状態で、長孔87の下端(他端)に向かって延伸すると共に長孔87を覆う第1領域31と、貫通孔30を挿通する固定軸93が長孔87の下端(他端)に位置する(
図4の(c)の状態を参照)状態で、長孔87の上端(一端)に向かって延伸すると共に長孔87を覆う第2領域32と、第1領域31と第2領域32との間に位置する中間領域34とを有している。なお、中間領域34に貫通孔30が設けられている。
ここでは、第1領域31と第2領域32は略同じような長さ及び形状をしている。
【0015】
第1領域31と第2領域32との間の角度は、180度未満に構成されている。ここでは、長孔87が上下方向に長い円弧状をしている。第1領域31と第2領域32とは、その間の角度が100~120度の範囲で延伸している。つまり、カバー3は、固定軸93の延伸方向(カバーの厚み方向)から見ると、全体として、「V」字状、「U」字状、円弧状、又はこれらに似た形状をしている(以下、円弧状とする)。
ここでは、角度が100~120度となっている第1領域31と第2領域32との間にガイド5が設けられている。カバー3におけるガイド5側の端面35は、固定軸93の移動に伴い、カバー3が長孔87を覆う状態でカバー3が固定軸93の周りを回動するように構成されている。ここでは、固定軸93の挿通方向から見ると、中間領域34のガイド5側の端面36が円弧状をし、第1領域31のガイド5側の端面37が中間領域34の端面36からその接線方向に延伸する直線状をし、第2領域32のガイド5側の端面38が中間領域34の端面36からその接線方向に延伸する直線状をしている。なお、第1領域31及び第2領域32のガイド5側の端面37,38は、直線状でなく曲線状であってもよい。
カバー3におけるガイド5と反対側の端面39は、固定軸93の移動に伴ってカバー3が回動した際に、周辺部材と干渉しないように構成されている。ここでは、全体として円弧状をしている。
【0016】
カバー3とガイド5は、固定軸93が長孔87の上端に位置する(
図4の(a)の状態を参照)状態で、第1領域31の先端(固定軸93と反対側の端)がガイド5より長孔87の長手方向(つまり、第1領域31の延伸方向である)の外側(
図4の(a)で下側)に位置し、第2領域32の先端(固定軸93と反対側の端)がガイド5よりも長孔87の長手方向と直交する方向(つまり、第2領域32の延伸方向である)の外側(
図4の(a)で左側)に位置するように、構成されている。
カバー3とガイド5は、固定軸93が長孔87の下端に位置する(
図4の(c)の状態を参照)状態で、第1領域31の先端(固定軸93と反対側の端)がガイド5より長孔87の長手方向と直交する方向(つまり、第1領域31の延伸方向である)の外側(
図4の(c)で左側)に位置し、第2領域32の先端(固定軸93と反対側の端)がガイド5よりも長孔87の長手方向(つまり、第2領域32の延伸方向である)の外側(
図4の(c)で上側)に位置するように、構成されている。
【0017】
(3-2)ガイド
ガイド5は、固定軸93に回動可能に支持されたカバー3を、長孔87が覆われた状態で、固定軸93の移動に伴って固定軸93周りに回動させるようにガイドする。具体的には、ガイド5は、カバー3の端面35と接触することで、ガイド機能を果たす。
ガイド5は、板状をし、プレート86に固定されている。ガイド5におけるカバー3側の端面は、固定軸93の移動に伴い、カバー3が長孔87を覆う状態でカバー3が固定軸93の周りを回動するように構成されている。ガイド5は、固定軸93が第1の位置に位置している場合(
図4の(a)の状態である)にカバー3の第2領域32と干渉しないように構成され、固定軸93が第2の位置に位置している場合(
図4の(c)の状態である)にカバー3の第1領域31と干渉しないように構成されている。
ここでは、固定軸93の挿通方向から見ると、ガイド5の端面51は円弧状する円弧領域53をカバー3側に有している。円弧領域53の両端は、円弧の中心を通り且つ長孔87の長手方向に沿って延伸する仮想線との交点よりもカバー3と反対側に位置する。換言すると、円弧領域53の中心角が180度以上である。
ガイド5の端面51は、長孔87に沿って延伸する直線領域55をカバー3と反対側に有する。
【0018】
3.動作
テンションプーリ94がプレート86の長孔87に沿って、上端(第1の位置)から下端(第2の位置)に移動する動作を
図4を用いて説明する。なお、ここでは、テンションプーリ94の移動を固定軸93の移動として説明する。
(1)固定軸93が長孔87の上端に位置する状態が、
図4に示す(a)の状態である。この状態では、カバー3の第1領域31が下方に延伸し、第2領域32が下方と直交する横方向に延伸し、カバー3の端面35がガイド5に当接する。なお、この状態では、長孔87は第1領域31及び中間領域34により完全に覆われている。
(2)固定軸93が長孔87内を上端から下方に移動すると、固定軸93の移動に伴って、カバー3はガイド5によりカバー3の端面35がガイドされつつ回動する。なお、ここでは、回動する向きは時計周りである。
さらに、固定軸93が下方に移動すると、やがて、長孔87の長手方向の略中央に固定軸93が位置する。この状態が
図4に示す(b)の状態である。この状態では、カバー3の中間領域34側の端面35がガイド5に当接する。また、この状態では、第1領域31が下方に対してガイド5がある側に延伸するように、カバー3は傾斜している。なお、この状態でも、長孔87は、第1領域31、第2領域32及び中間領域34により完全に覆われている。
(3)固定軸93が長孔87内を中央から下方に移動すると、固定軸93の移動に伴って、カバー3はガイド5によりカバーの端面35がガイドされながら回動する。
さらに、固定軸93が下方に移動すると、やがて、長孔87の下端に固定軸93が位置する。この状態が
図4に示す(c)の状態である。この状態では、第2領域32が長孔87に沿って上方に延伸するように、カバー3は傾斜している。なお、この状態でも、長孔87は、第2領域32及び中間領域34により完全に覆われている。
(4)このように、固定軸93が長孔87の上端から下端に移動する場合でも、固定軸93と長孔87との間の隙間が露出することなく、カバー3により覆われる。
【0019】
4.カバーの大きさ
長孔87が第1方向(ここでは、上下方向である)に長い場合、第1方向にしか移動しないカバーと、実施形態で説明したカバー3との大きさの違いについて
図5を用いて説明する。
上下方向に長いカバー903は、
図5の(a)及び(b)に示すように、長孔87の全てを覆うことが可能な大きさをしている。
固定軸93が長孔87の上端に位置している場合、
図5の(a)に示すように、円弧状のカバー3は、その第2領域32が横方向に向かって延伸している。このため、固定軸93から上方への延伸量を比べると、上下に長いカバー903に対して円弧状のカバー3はL1だけ短くできる。
固定軸93が長孔87の下端に位置している場合、
図5の(b)に示すように、円弧状のカバー3は、その第1領域31が横方向に向かって延伸している。このため、固定軸93から下方への延伸量を比べると、上下に長いカバー903に対して円弧状のカバー3はL2だけ短くできる。
このように、実施形態で説明したカバー3は、上下方向に長い、換言すると上下方向にのみ移動するカバー903に比べて、上下方向の寸法を小さくできる。これにより、安全機構を収容するスペースを小さくできる。
【0020】
5.その他
(1)長孔(貫通孔)
安全機構1は、第1方向(上下方向)に長い円弧状の長孔87に設けられていたが、他の形状の貫通孔に対しても設けることができる。
他の形状としては、第1方向に長い矩形状の長孔があり、
図6を用いて説明する。
プレートには、第1方向に延伸する長孔87Aが設けられ、当該長孔87A内を挿通体93が第1方向に沿って移動する。
カバー3Aは、第1領域31Aと第2領域32Aと中間領域34Aを有し、中間領域34Aに挿通部(貫通孔)を有する。第1領域31Aと第2領域32Aは、その間の角度が80~130度の範囲となっている。第1領域31A及び第2領域32Aは、カバー3Aが挿通体93の周りに回動しても、長孔87Aを覆うように構成されている。カバー3Aのガイド5A側の端面35Aは、中間領域34Aに対応する部分が円弧状をし、第1領域31Aと第2領域32Aに対応する部分は中間領域34Aの円弧から接線方向に延伸するように構成されている。
ガイド5Aは、ここでは円柱状又は円盤状をし、第1領域31Aと第2領域32Aとの間の角度が小さい側に設けられている。
【0021】
(2)ガイド位置
安全機構1は、第1領域31と第2領域32との間の角度が小さい側の第1領域31と第2領域32との間に配されているが、角度の大きい側の第1領域と第2領域との間に配されてもよく、
図7を用いて説明する。
長孔87は、第1方向に長く、ここでは、円弧状に湾曲し、当該長孔87内を挿通体93が移動する。
カバー3Bは、第1領域31Bと第2領域32Bと中間領域34Bを有し、中間領域34Bに挿通部(貫通孔)を有する。第1領域31Bと第2領域32Bは、その間の角度が80~130度の範囲となっている。第1領域31B及び第2領域32Bは、カバー3Bが挿通体93の周りに回動しても、長孔87を覆うように構成されている。
ガイド5Bは、第1領域31Bと第2領域32Bとの間の角度が大きい側に設けられている。
カバー3Bにおけるガイド5B側の端面35Bと、ガイド5Bにおけるカバー3B側の端面53Bは、挿通体93の長孔87内の移動に伴い、カバー3Bが長孔87Bを覆う状態で挿通体93の周りを回動するように構成されている。ここでは、カバー3Bの端面35B及びガイド5Bの端面53Bは、円弧状をしている。なお、ガイド5Bの形状は、挿通体93の移動に伴いカバー3Bが回動できるような端面53Bを有していればよく、カバー3Bと対向しない端面の形状は特に限定するものではないが、安全機構1Bの大きさを考慮すると、
図7に示すような、「L」字状、円弧状等が好ましい。
【0022】
(3)カバーの形状
カバー3,3A,3Bは、「V」字状、「U」字状、「L」字状、円弧状、これらに似た形状をしていたが、他の形状であってもよい。
他の形状としては、
図8に示すように、円形状、楕円形状、これらに似た形状であってもよい。
カバー3Cは、
図8の(a)に示すように、貫通孔30Cを有し、貫通孔30Cにガイド5Cが配されている。この場合も、カバー3Cは、第1領域31Cと第2領域32Cと中間領域34Cを有している。
カバー3Cにおいて、貫通孔30Cの挿通体93と反対側の開口端面35Cはガイド5Cによりガイドされるガイド面となる。カバー3Cにおける開口端面35Cと、ガイド5Cにおける挿通体93と反対側の端面53Cは、挿通体93の長孔87内の移動に伴い、カバー3Cが長孔87を覆う状態で挿通体93の周りを回動するように構成されている。
カバー3Dは、
図8の(b)に示すように、第1領域31Dと第2領域32Dと中間領域34Dを有している。カバー3Dにおいて、第1領域31Dと第2領域32Dとの間の角度が大きい側の端面35Dはガイド5Dによりガイドされるガイド面となる。カバー3Dにおける端面35Dと、ガイド5Dにおけるカバー3D側の端面53Dは、挿通体93の長孔87内の移動に伴い、カバー3Dが長孔87を覆う状態で挿通体93の周りを回動するように構成されている。
【0023】
<変形例>
以上、実施形態に係る安全機構1について説明したが、これらの実施形態に限られるものではなく、例えば、以下のような変形例であってもよい。また、実施形態と変形例とを組み合わせたものでもよいし、変形例同士を組み合わせたものでもよい。また、実施形態や変形例に記載していない例や要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。
1.装置
実施形態では、チェーン部材やベルト部材を利用し且つ被搬送物を搬送する搬送装置のテンション機構に安全機構1が設けられた例について説明したが、貫通孔内を挿通体が移動するような装置であれば安全機構を設けることができる。
そのような装置として、搬送装置以外に、
図9に示すような、一対のフレーム103間でコンテナ等の被積載物を上下動させる段積み段ばらし装置101等がある。
段積み段ばらし装置101は、被積載物を支持するフック105が先端に取り付けられた軸体107が、フレーム103の上下に長い貫通孔109をフレーム103の内側から外側へと挿通し、フレーム103の外側でプレート111により支持される構造を有している。このような段積み段ばらし装置101の貫通孔109と軸体107との間に安全機構を設けることができる。
【0024】
2.挿通体の移動方向
(1)挿通体93は長孔87内をテンションが作用する一方向にのみ移動していたが、長孔の長手方向の両方向に挿入体は移動してもよいし、一方向と反対方向のみに移動してもよい。
(2)挿通体93は、長孔87の一端(上端)と他端(下端)との間を移動可能とされていたが、長孔87の一端よりも他端側の位置(第1の位置である)と、長孔87の他端よりも一端側の位置(第2の位置である)との間を、一方向(上向き、下向きを含む)又は両方向に移動してもよい。
【0025】
3.カバー
(1)挿通部30は、円形状の貫通孔により構成されていたが、カバー3が挿通体93の周りを回動できればよく、例えば、方形形状、楕円形状、五角形等の多角形状、これらに似た形状の貫通孔であってもよいし、円形状、方形形状、楕円形状、多角形状、これらに似た形状の一部が欠けたような形状であってもよい。
(2)第1領域31と第2領域32は、同じ形状・大きさ・厚みであったが、異なる形状、異なる大きさ、異なる厚みであってもよい。
(3)カバー3は、プレート86の内側に配されていたが、プレート86の外側(アームがある側)に設けられてもよいし、両側に設けられてもよい。
(4)一対のプレート86に貫通孔が設けられ、貫通孔と挿通体との組み合わせが2組あり、当該2組に対して安全機構1が設けられていたが、貫通孔と挿通体との組み合わせは、1組、3組以上でもよく、人の指や異物が入りそうな箇所に安全機構1を設けてもよい。
【0026】
4.ガイド
(1)ガイド5,5Bは、固定軸93の移動方向に対して交差する方向の一方側に配されてたが、カバーが挿入体の移動に伴って貫通孔を覆いつつ回動するように構成できれば、交差する方向の両側に配されてもよい。但し、部品点数、組立工数、重量の観点からは交差する方向の一方に配する方が好ましい。また、ガイドの位置、大きさ等は、安全機構を設ける装置のスペースを考慮して決定してもよい。
(2)ガイド5の端面は、カバー3側と反対側に直線領域55(
図3参照)を有していたが、ガイドは、全体として円形状をしてもよいし、三日月(弓状)状をしてもよい。三日月は、カバー3側の端面が円弧状をし、カバー3と反対側の端面も円弧状をする。
【符号の説明】
【0027】
1 安全機構
3 カバー
3a 貫通孔
5 ガイド
86 プレート
87 長孔(貫通孔)
93 固定軸(挿通体)