(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055488
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】リーンバーンエンジン用燃料組成物
(51)【国際特許分類】
C10L 1/06 20060101AFI20230411BHJP
【FI】
C10L1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164913
(22)【出願日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】内木 武虎
(72)【発明者】
【氏名】小畠 健
(72)【発明者】
【氏名】安武 優希
(57)【要約】
【課題】リーンバーンエンジンのリーン限界を拡大させることが可能であるリーンバーンエンジン用燃料組成物を提供すること。
【解決手段】炭素数7及び8の炭化水素の含有量が、燃料組成物全量を基準として、25体積%以上である、リーンバーンエンジン用燃料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数7及び8の炭化水素の含有量が、燃料組成物全量を基準として、25体積%以上である、リーンバーンエンジン用燃料組成物。
【請求項2】
炭素数7及び8のイソパラフィンの含有量が、燃料組成物全量を基準として、6体積%以上である、請求項1に記載のリーンバーンエンジン用燃料組成物。
【請求項3】
50容量%留出温度(T50)が50℃以上である、請求項1又は2に記載のリーンバーンエンジン用燃料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リーンバーンエンジン用燃料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、理論空燃比より薄い混合気で燃料を燃焼させるリーンバーンエンジンが知られている。このようなリーンバーンエンジン用の燃料としては、例えば、特許文献1に、アルキレートガソリン、接触改質ガソリン、軽質接触分解ガソリン及びコーカーライトガソリンよりなる群から選ばれた1種以上のガソリンを配合したことを特徴とするリーンバーンエンジン用燃料組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リーンバーンエンジンにおいて、安定運転が可能な空燃比(空気/燃料)の上限はリーン限界と称され、このリーン限界を拡大することで、燃費の向上、燃焼の安定化等が期待される。
【0005】
そこで本発明の一側面は、リーンバーンエンジンのリーン限界を拡大させることが可能であるリーンバーンエンジン用燃料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、炭素数7及び8の炭化水素の含有量が、燃料組成物全量を基準として、25体積%以上である、リーンバーンエンジン用燃料組成物に関する。
【0007】
一態様において、リーンバーンエンジン用燃料組成物に含まれる炭素数7及び8のイソパラフィンの含有量は、燃料組成物全量を基準として、6体積%以上であってよい。
【0008】
一態様において、リーンバーンエンジン用燃料油組成物の50容量%留出温度(T50)は50℃以上であってよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一側面によれば、リーンバーンエンジンのリーン限界を拡大させることが可能であるリーンバーンエンジン用燃料組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0011】
本実施形態の燃料組成物は、炭素数7及び8の炭化水素の含有量(炭素数7の炭化水素の含有量及び炭素数8の炭化水素の含有量の合計)が、燃料組成物全量を基準として、25体積%以上である。
【0012】
本実施形態の燃料組成物では、炭素数7及び8の炭化水素を25体積%以上含有することで、リーン限界の拡大が可能となる。このため、本実施形態の燃料組成物は、リーンバーンエンジン用燃料組成物として(特に、リーン限界が2以上の超希薄燃焼用として)好適に用いることができる。また、本実施形態の燃料組成物では、炭素数7及び8の炭化水素を25体積%以上含有することで、正味熱効率が向上する。
【0013】
なお、本明細書中、燃料組成物における各成分の含有量は、JIS K 2536-2「石油製品-成分試験方法 第2部:ガスクロマトグラフによる全成分の求め方」に記載の方法で測定される値を示す。
【0014】
本実施形態の燃料組成物において、炭素数7及び8の炭化水素の含有量は、容量あたりの発熱量が向上することから、好ましくは30体積%以上であり、35体積%以上、40体積%以上、45体積%以上又は50体積%以上であってもよい。炭素数7及び8の炭化水素の含有量は、リーン限界が一層向上することから、好ましくは80体積%以下、75体積%以下、70体積%以下、65体積%以下、60体積%以下又は55体積%以下であってもよい。
【0015】
炭素数7及び8の炭化水素には、例えば、パラフィン(ノルマルパラフィン及びイソパラフィン)、オレフィン、芳香族化合物等の1種又は2種以上が含まれていてよい。
【0016】
本実施形態の燃料組成物において、炭素数7及び8のイソパラフィンの含有量は、耐ノック性が向上することから、燃料組成物全量を基準として、好ましくは6体積%以上であり、8体積%以上、10体積%以上、12体積%以上、15体積%以上又は20体積%以上であってもよい。炭素数7及び8のイソパラフィンの含有量は、リーン限界が一層向上することから、好ましくは50体積%以下、45体積%以下、40体積%以下、35体積%以下、30体積%以下又は25体積%以下であってもよい。
【0017】
炭素数7及び8の炭化水素に占める炭素数7及び8のパラフィンの割合は、例えば10体積%以上であってよく、好ましくは15体積%以上、より好ましくは20体積%以上である。また、炭素数7及び8の炭化水素に占める炭素数7及び8のパラフィンの割合は、例えば35体積%以下であってよく、好ましくは30体積%以下、より好ましくは25体積%以下である。
【0018】
炭素数7及び8の炭化水素に占める炭素数7及び8のノルマルパラフィンの割合は、耐ノック性を向上させる観点から、例えば3体積%以下であってよく、好ましくは2体積%以下、より好ましくは0体積%である。
【0019】
炭素数7及び8の炭化水素に占める炭素数7及び8のイソパラフィンの割合は、耐ノック性が向上することから、好ましくは6体積%以上であり、8体積%以上、10体積%以上、12体積%以上、15体積%以上又は20体積%以上であってもよい。また、炭素数7及び8の炭化水素に占める炭素数7及び8のイソパラフィンの割合は、例えば32体積%以下であってよく、好ましくは28体積%以下、より好ましくは25体積%以下である。
【0020】
炭素数7及び8の炭化水素に占める炭素数7及び8のオレフィンの割合は、リーン限界が向上することから、例えば8体積%以上であってよく、好ましくは12体積%以上、より好ましくは15体積%以上、更に好ましくは20体積%以上である。また、炭素数7及び8の炭化水素に占める炭素数7及び8のオレフィンの割合は、例えば100体積%以下であってよく、好ましくは80体積%以下、より好ましくは60体積%以下、更に好ましくは40体積%以下である。
【0021】
炭素数7及び8の炭化水素に占める炭素数7及び8のナフテンの割合は、リーン限界が一層向上する観点から、例えば10体積%以下であってよく、好ましくは8体積%以下、より好ましくは5体積%以下、更に好ましくは1体積%以下である。
【0022】
炭素数7及び8の炭化水素に占める炭素数7及び8の芳香族化合物の割合は、リーン限界が一層向上する観点から、例えば10体積%以下であってよく、好ましくは5体積%以下、より好ましくは2体積%以下、更に好ましくは1体積%以下である。
【0023】
本実施形態の燃料組成物は、炭素数4~6の炭化水素を更に含有していてよい。炭素数4~6の炭化水素の含有量は、燃料組成物全量を基準として、リーン限界が一層向上する観点から、例えば100体積%以下であってよく、好ましくは80体積%以下、より好ましくは60体積%以下、更に好ましくは40体積%以下である。
【0024】
炭素数4~6の炭化水素には、例えば、炭素数4~6のパラフィン(炭素数4~6のパラフィン及び炭素数4~6のイソパラフィン)、炭素数4~6のオレフィン、炭素数6の芳香族化合物(ベンゼン)等が含まれていてよい。
【0025】
本実施形態の燃料組成物は、炭素数9以上の炭化水素を更に含有していてよい。炭素数9以上の炭化水素の含有量は、燃料組成物全量を基準として、容量あたりの発熱量がより向上する観点から、例えば0.5体積%以上であってよく、好ましくは1体積%以上、より好ましくは2体積%以上、更に好ましくは3体積%以上である。また、炭素数9以上の炭化水素の含有量は、燃料組成物全量を基準として、例えば40体積%以下であってよく、30体積%以下、20体積%以下又は10体積%以下であってもよい。
【0026】
炭素数9以上の炭化水素には、例えば、炭素数9以上のパラフィン(炭素数9以上のパラフィン及び炭素数9以上のイソパラフィン)、炭素数9以上のオレフィン、炭素数9以上の芳香族化合物等が含まれていてよい。
【0027】
本実施形態の燃料組成物における芳香族分は、容量あたりの発熱量を維持する観点から、例えば0.1体積%以上であってよく、好ましくは0.5体積%以上、より好ましくは1体積%以上である。また、本実施形態の燃料組成物における芳香族分は、リーン限界を一層向上させることから、例えば10体積%以下であってよく、好ましくは8体積%以下、より好ましくは6体積%以下である。
【0028】
本実施形態の燃料組成物は、含酸素化合物を更に含有していてもよい。
【0029】
含酸素化合物は、構成元素として酸素を含む有機化合物である。含酸素化合物としては、例えば、含酸素複素環式化合物、含酸素芳香族化合物、含酸素脂肪族化合物等が挙げられる。含酸素化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
含酸素複素環式化合物は、含酸素複素環を有する化合物である。含酸素複素環式化合物としては、例えば、フラン環、テトラヒドロフラン環、エチレンオキシド環、プロピレンオキシド環、ピラン環、テトラヒドロピラン環、ベンゾフラン環、ベンゾピラン環等の含酸素複素環を有する化合物が挙げられる。含酸素複素環式化合物としては、上記効果がより顕著に得られる観点から、フラン環を有する化合物が好ましい。フラン環を有する化合物としては、例えば、フラン、2-メチルフラン、2,5-ジメチルフランが挙げられる。フラン環を有する化合物としては、フラン、2-メチルフランが特に好ましい。
【0031】
含酸素芳香族化合物は、構成元素として酸素を含み、芳香環を有する化合物である。含酸素芳香族化合物としては、例えば、芳香環に直接結合する酸素原子を有する芳香族化合物(例えば、アルコキシベンゼン、フェノール類等)等が挙げられる。アルコキシベンゼンとしては、例えば、アニソール、フェネトール、プロピルオキシベンゼン等が挙げられる。アルコキシベンゼンとしては、沸点範囲の観点から、アニソール及びフェネトールが好ましい。
【0032】
含酸素脂肪族化合物としては、例えば、アルコール類、エーテル類等(例えば、エタノール、イソブチルアルコール、ETBE(エチル-tert-ブチルエーテル)等が挙げられる。
【0033】
含酸素化合物としては、エタノールが好ましい。
【0034】
本実施形態の燃料組成物において、含酸素化合物の含有量は、燃料組成物全量を基準として、例えば50体積%以下であってよく、好ましくは45体積%以下、より好ましくは40体積%以下、更に好ましくは35体積%以下である。また、本実施形態の燃料組成物が含酸素化合物を含有するとき、その含有量は、燃料組成物全量を基準として、例えば3体積%以上であってよく、5体積%以上又は10体積%以上であってもよい。
【0035】
本実施形態の燃料組成物は、上記以外の他の成分を更に含有していてもよい。他の成分としては、例えば、清浄分散剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、表面着火防止剤、氷結防止剤、助燃剤、帯電防止剤、着色剤、防錆剤、水抜き剤、識別剤、着臭剤、摩擦調整剤等が挙げられる。これらの他の成分の合計含有量は、燃料組成物の全量に対して、例えば1体積%以下であってよく、0.5体積%以下が好ましく、0.1体積%以下がより好ましい。また、上記の他の成分の合計含有量は、燃料組成物全量を基準として、例えば0.001体積%以上であってよく、0.002体積%以上であってもよい。
【0036】
清浄分散剤としては、通常使用される清浄分散剤を用いることができ、例えば、コハク酸イミド、ポリアルキルアミン、ポリエーテルアミンなどのガソリン清浄分散剤として公知の化合物を用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、N,N’-ジイソプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジイソブチル-p-フェニレンジアミン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、ヒンダードフェノール類等が挙げられる。金属不活性化剤としては、例えば、N,N’-ジサリチリデン-1,2-ジアミノプロパンのようなアミンカルボニル縮合化合物等が挙げられる。表面着火防止剤としては、例えば、有機リン系化合物等が挙げられる。氷結防止剤としては、例えば、多価アルコール又はそのエーテル等が挙げられる。助燃剤としては、例えば、有機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、高級アルコール硫酸エステル等が挙げられる。帯電防止剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。着色剤としては、例えば、アゾ染料等が挙げられる。防錆剤としては、例えば、有機カルボン酸又はその誘導体類、アルケニルコハク酸エステル等が挙げられる。水抜き剤としては、例えば、ソルビタンエステル類等が挙げられる。識別剤としては、例えば、キリザニン、クマリン等が挙げられる。着臭剤としては、例えば、天然精油合成香料等が挙げられる。摩擦調整剤としては、例えば、高級カルボン酸モノグリセリド及び高級カルボン酸のアミド化合物の混合物等が挙げられる。
【0037】
本実施形態の燃料組成物の初留点は、10℃以上、15℃以上又は20℃以上であってよく、45℃以下、40℃以下、35℃以下であってよい。本実施形態の燃料組成物の5容量%流出温度(T5)は、25℃以上、30℃以上又は35℃以上であってよく、55℃以下、50℃以下又は45℃以下であってよい。本実施形態の燃料組成物の10容量%流出温度(T10)は、45℃以上、50℃以上又は55℃以上であってよく、55℃以下、50℃以下又は45℃以下であってよい。本実施形態の燃料組成物の20容量%流出温度(T20)は、45℃以上、50℃以上又は55℃以上であってよく、70℃以下、65℃以下又は60℃以下であってよい。本実施形態の燃料組成物の30容量%流出温度(T30)は、50℃以上、55℃以上又は60℃以上であってよく、80℃以下、75℃以下又は70℃以下であってよい。本実施形態の燃料組成物の40容量%流出温度(T40)は、55℃以上、60℃以上又は65℃以上であってよく、90℃以下、80℃以下又は70℃以下であってよい。本実施形態の燃料組成物の50容量%流出温度(T50)は、50℃以上、55℃以上、60℃以上又は70℃以上であってよく、100℃以下、90℃以下又は80℃以下であってよい。本実施形態の燃料組成物の60容量%流出温度(T60)は、60℃以上、65℃以上又は70℃以上であってよく、110℃以下、100℃以下又は90℃以下であってよい。本実施形態の燃料組成物の70容量%流出温度(T70)は、100℃以上、110℃以上又は120℃以上であってよく、100℃以下、90℃以下又は80℃以下であってよい。本実施形態の燃料組成物の80容量%流出温度(T80)は、90℃以上、100℃以上又は110℃以上であってよく、150℃以下、140℃以下又は130℃以下であってよい。本実施形態の燃料組成物の90容量%流出温度(T90)は、100℃以上、110℃以上又は120℃以上であってよく、140℃以下、130℃以下又は120℃以下であってよい。本実施形態の燃料組成物の95容量%流出温度(T95)は、115℃以上、120℃以上又は125℃以上であってよく、160℃以下、150℃以下又は140℃以下であってよい。本実施形態の燃料組成物の97容量%流出温度(T97)は、120℃以上、125℃以上又は135℃以上であってよく、165℃以下、155℃以下又は145℃以下であってよい。本実施形態の燃料組成物の蒸留の終点は、130℃以上、135℃以上又は140℃以上であってよく、170℃以下、160℃以下又は150℃以下であってよい。
【0038】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例0039】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
燃料組成物用原料として軽質分解ガソリン(LCCG)と中質分解ガソリン(MCCG)とを準備した。軽質分解ガソリン(LCCG)及び中質分解ガソリン(MCCG)の性状は以下のとおりである。
軽質分解ガソリン(LCCG):炭素数4~6の炭化水素の含有量がLCCG全量を基準として84.0容量%、炭素数7~8の炭化水素の含有量がLCCG全量を基準として15.2容量%、初留点が36.0℃、10容量%流出温度(T10)が44.5℃、50容量%流出温度(T50)が56.0、90容量%流出温度(T90)が84.5℃、終点が186.0℃
中質分解ガソリン(MCCG):炭素数4~6の炭化水素の含有量がMCCG全量を基準として84.0容量%、炭素数7~8の炭化水素の含有量がMCCG全量を基準として0.3容量%、初留点が136℃、10容量%流出温度(T10)が143.5℃、50容量%流出温度(T50)が151.5℃、90容量%流出温度(T90)が167.0℃、終点が186.0℃
【0041】
軽質分解ガソリンを87体積%、中質分解ガソリンを13体積%の割合で混合し、下記表1に示す組成の燃料組成物を得た。なお、燃料組成物の組成は、JIS K 2536-2「石油製品-成分試験方法 第2部:ガスクロマトグラフによる全成分の求め方」により測定された値を示す。また、燃料組成物の蒸留性状を下記表2に示す。
【0042】
得られた燃料組成物を用いて、以下の方法でリーン限界の測定及び正味熱効率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0043】
<リーン限界の測定>
リーン限界は、下記の試験エンジンを使用し、回転数2000rpm、図示平均有効圧力700kPa、トルク最大となる最小進角点火時期(MBT)の条件下で空気過剰率を変更することで測定した。リーン限界は、図示平均有効圧力の変動率が3%を超える点における空気過剰率とした。なお、空気過剰率とは試験時の混合気の空燃比を燃料組成物の理論空燃比で除したものであり、当量比φの逆数となる。
(試験エンジン)
ボア×ストローク:75mm×127.5mm(ボア:ストローク=1:1.7)
圧縮比:14
噴射圧:0.3MPa
インジェクション方式:ポート噴射(PFI)
燃料噴射装置:マルチポイントインジェクション(MPI)
過給システム:スーパーチャージャ(最大供給圧力:80kPaG)
排気ガスの再循環(EGR):なし
バルブタイミング:変更可
タンブル流動強化システム:ポート形状及び強化アダプタ
点火装置:コイル20連(サイクル内複数回点火可能)
【0044】
<正味熱効率の測定>
正味熱効率は、上記の試験エンジンを使用し、エンジン回転数2000rpm、正味平均有効圧力0.4MPa、かつリーン限界下での燃料消費量を測定し、出力を投入熱量で除することで算出した。投入熱量は、燃料消費量と燃料組成物の持つ真発熱量から算出した。真発熱量は、JIS K 2279に規定されている総発熱量、JIS K 2275-1に規定されている水分、石油学会法JIS-5S-65-4に規定されている水素含有量を用い、JIS K 2279 附属書2 に規定されている真発熱量推定方法を用いて算出した。
【0045】
(実施例2)
軽質分解ガソリンを79体積%、中質分解ガソリンを21体積%の割合で混合し、下記表1に示す組成の燃料組成物を得た。得られた燃料組成物を用いて、実施例1と同様にリーン限界の測定及び正味熱効率の測定を行った。結果を表1に示す。また、燃料組成物の蒸留性状を下記表2に示す。
【0046】
(実施例3)
軽質分解ガソリンを65体積%、中質分解ガソリンを35体積%の割合で混合し、下記表1に示す組成の燃料組成物を得た。得られた燃料組成物を用いて、実施例1と同様にリーン限界の測定及び正味熱効率の測定を行った。結果を表1に示す。また、燃料組成物の蒸留性状を下記表2に示す。
【0047】
(比較例1)
軽質分解ガソリンを66体積%、重質分解ガソリンを34体積%の割合で混合し、下記表1に示す組成の燃料組成物を得た。得られた燃料組成物を用いて、実施例1と同様にリーン限界の測定及び正味熱効率の測定を行った。結果を表1に示す。また、燃料組成物の蒸留性状を下記表2に示す。
【0048】
(比較例2)
軽質分解ガソリンを59.4体積%、重質分解ガソリンを30.6体積%、エタノールを10.0体積%の割合で混合し、下記表1に示す組成の燃料組成物を得た。得られた燃料組成物を用いて、実施例1と同様にリーン限界の測定及び正味熱効率の測定を行った。結果を表1に示す。また、燃料組成物の蒸留性状を下記表2に示す。
【0049】
(比較例3)
軽質分解ガソリンを50.8体積%、重質分解ガソリンを26.2体積%、ETBE(エチル-tert-ブチルエーテル)を23.0体積%の割合で混合し、下記表1に示す組成の燃料組成物を得た。得られた燃料組成物を用いて、実施例1と同様にリーン限界の測定及び正味熱効率の測定を行った。結果を表1に示す。また、燃料組成物の蒸留性状を下記表2に示す。
【0050】
(比較例4)
燃料組成物として、下記表1に示す組成のレギュラーガソリン相当燃料組成物を準備した。準備した燃料組成物を用いて、実施例1と同様にリーン限界の測定及び正味熱効率の測定を行った。結果を表1に示す。また、燃料組成物の蒸留性状を下記表2に示す。
【0051】
(比較例5)
燃料組成物として、下記表1に示す組成のハイオクガソリン相当燃料組成物を準備した。準備した燃料組成物を用いて、実施例1と同様にリーン限界の測定及び正味熱効率の測定を行った。結果を表1に示す。また、燃料組成物の蒸留性状を下記表2に示す。
【0052】
なお、表1中、各成分の割合を示す数値の単位は体積%である。
【0053】
【0054】