(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055490
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20230411BHJP
【FI】
F16K31/04 A
F16K31/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164915
(22)【出願日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000101514
【氏名又は名称】アドバンス電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079050
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 憲秋
(74)【代理人】
【識別番号】100201879
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】笹尾 起美仁
【テーマコード(参考)】
3H062
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062AA15
3H062BB10
3H062BB31
3H062CC02
3H062DD01
3H062EE06
3H062FF38
3H062FF39
3H062FF40
3H062GG04
3H062GG06
3H062HH03
3H062HH10
(57)【要約】
【課題】機能停止時の流体遮断機能を備えるとともに、より効果的に流体の微量調節を行うことが可能な電動弁を提供する。
【解決手段】作動軸50は伝達係合部52を後部に有する軸本体51と、第1ねじ部56と、第2ねじ部57とを有し、第1ねじ部56に弁機構体60が螺合されるとともに第2ねじ部57に停止部材80が螺合され、弁機構体60の後退時には第2ねじ部57と第1ねじ部56のピッチの差分に応じて弁機構体60が後退されて開弁され、弁機構体60の前進時には第2ねじ部57と第1ねじ部56のピッチの差分に応じて弁機構体60が前進されて閉弁され、開弁時の機能停止では加圧気体の供給停止によりばね部材Sの付勢力が停止部材80に作用して停止部材80が作動軸50及び弁機構体60とともに前進されて閉弁して保持し、閉弁時の機能停止では加圧気体の供給停止によりばね部材Sの付勢力が停止部材80に作用して閉弁状態を保持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座が形成された弁室と、前記弁室の後部側に配置された作動室と、前記作動室の後部側に配置された電動式駆動機構を有する駆動室とが形成されたハウジングと、
前記電気駆動機構により軸回転される作動軸と、
前記作動軸と連結されるとともに前記作動軸の作動により進退動する弁機構体と、
前記弁機構体に取り付けられるとともに前記弁室にダイアフラムと一体に配置されて前記弁座を開閉する弁体と、
を備えた電動弁であって、
前記作動室には、シリンダ部内に加圧気体を供給するエア供給部が設けられているとともに、前記弁機構体と別部材よりなる停止部材と、前記停止部材を常時弁室方向に付勢するばね部材とが前記シリンダ部内に配置されていて、
前記作動軸は、前記電動式駆動機構の伝達部材に周方向に係合する伝達係合部を後部に有する軸本体と、前記軸本体の前部に形成された第1ねじ部と、前記軸本体の前記第1ねじ部の後側に形成された前記第1ねじ部よりピッチが大きい第2ねじ部とを有し、前記伝達部材に対して進退可能であるとともに、前記電動式駆動機構の作動により軸回転する前記伝達部材を介して軸回転されるように構成され、
前記弁機構体は、前記作動軸の前記第1ねじ部と螺合する弁機構体側ねじ溝部を有し、前記作動室に周方向に回転不能かつ進退自在に嵌挿されており、
前記停止部材は、前記作動軸に貫通されて前記作動軸の前記第2ねじ部と螺合する停止部材側ねじ溝部を有し、前記作動室の前記シリンダ部内に周方向に回転不能かつ進退自在に嵌挿されていて、前記電動弁の作動時には前記シリンダ部への前記加圧気体の供給により前記ばね部材の付勢力に抗して常時前記駆動室側に付勢保持され、
前記弁機構体の後退移動の際には、前記軸本体が前記電動式駆動機構により前記伝達部材を介して一方向に軸回転されることにより、前記第2ねじ部のピッチに応じて前記作動軸が後退されるとともに、前記第2ねじ部と前記第1ねじ部のピッチの差分に応じて前記弁機構体が後退されて前記弁体を前記弁座から離隔され、
前記弁機構体の前進移動の際には、前記軸本体が前記電動式駆動機構により前記伝達部材を介して他方向に軸回転されることにより、前記第2ねじ部のピッチに応じて前記作動軸が前進されるとともに、前記第2ねじ部と前記第1ねじ部のピッチの差分に応じて前記弁機構体が前進されて前記弁体を前記弁座に近接させて閉鎖され、
開弁時に前記電動弁が機能停止した場合には、前記加圧気体の供給停止により前記ばね部材の付勢力が前記停止部材に作用することによって、前記停止部材が前記作動軸及び前記作動軸の前記第1ねじ部と螺合する前記弁機構体とともに弁室方向へ前進されて、前記弁体は前進されて前記弁座を閉鎖させて保持し、
閉弁時に前記電動弁が機能停止した場合には、前記加圧気体の供給停止により前記ばね部材の付勢力が前記停止部材に作用することによって前記弁体による前記弁座の閉弁状態を保持する
ことを特徴とする電動弁。
【請求項2】
弁座が形成された弁室と、前記弁室の後部側に配置された作動室と、前記作動室の後部側に配置された電動式駆動機構を有する駆動室とが形成されたハウジングと、
前記電気駆動機構により軸回転される作動軸と、
前記作動軸と連結されるとともに前記作動軸の作動により進退動する弁機構体と、
前記弁機構体に取り付けられるとともに前記弁室にダイアフラムと一体に配置されて前記弁座を開閉する弁体と、
を備えた電動弁であって、
前記作動室には、シリンダ部内に加圧気体を供給するエア供給部が設けられているとともに、前記弁機構体と別部材よりなる停止部材と、前記停止部材を常時弁室方向に付勢するばね部材とが前記シリンダ部内に配置されていて、
前記作動軸は、前記電動式駆動機構の伝達部材に周方向に係合する伝達係合部を後部に有する軸本体と、前記軸本体の前部に形成された第1ねじ部と、前記軸本体の前記第1ねじ部の後側に形成された前記第1ねじ部よりピッチが小さい第2ねじ部とを有し、前記伝達部材に対して進退可能であるとともに、前記電動式駆動機構の作動により軸回転する前記伝達部材を介して軸回転されるように構成され、
前記弁機構体は、前記作動軸の前記第1ねじ部と螺合する弁機構体側ねじ溝部を有し、前記作動室に周方向に回転不能かつ進退自在に嵌挿されており、
前記停止部材は、前記作動軸に貫通されて前記作動軸の前記第2ねじ部と螺合する停止部材側ねじ溝部を有し、前記作動室の前記シリンダ部内に周方向に回転不能かつ進退自在に嵌挿されていて、前記電動弁の作動時には前記シリンダ部への前記加圧気体の供給により前記ばね部材の付勢力に抗して常時前記駆動室側に付勢保持され、
前記弁機構体の後退移動の際には、前記軸本体が前記電動式駆動機構により前記伝達部材を介して一方向に軸回転されることにより、前記第2ねじ部のピッチに応じて前記作動軸が前進されるとともに、前記第1ねじ部と前記第2ねじ部のピッチの差分に応じて前記弁機構体が後退されて前記弁体を前記弁座から離隔され、
前記弁機構体の前進移動の際には、前記軸本体が前記電動式駆動機構により前記伝達部材を介して他方向に軸回転されることにより、前記第2ねじ部のピッチに応じて前記作動軸が後退されるとともに、前記第1ねじ部と前記第2ねじ部のピッチの差分に応じて前記弁機構体が前進されて前記弁体を前記弁座に近接させて閉鎖され、
開弁時に前記電動弁が機能停止した場合には、前記加圧気体の供給停止により前記ばね部材の付勢力が前記停止部材に作用することによって、前記停止部材が前記作動軸及び前記作動軸の前記第1ねじ部と螺合する前記弁機構体とともに弁室方向へ前進されて、前記弁体は前進されて前記弁座を閉鎖させて保持し、
閉弁時に前記電動弁が機能停止した場合には、前記加圧気体の供給停止により前記ばね部材の付勢力が前記停止部材に作用することによって前記弁体による前記弁座の閉弁状態を保持する
ことを特徴とする電動弁。
【請求項3】
前記停止部材の前進時に、停止部材の前面部と前記シリンダ部の前面部との間に前記エア供給部からの加圧気体の導入が可能な間隙部が形成される請求項1又は2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記弁室と前記弁体とが、PFA又はPTFEからなるフッ素樹脂で形成され、
前記弁体に、前記弁室の前記弁座に対して当接又は前記弁座から後退して開閉する架橋PTFEからなるニードル弁部が接合されているとともに、
前記弁座に、閉弁時に前記ニードル弁部と当接する架橋PTFEからなる当接部材が接合されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電動弁。
【請求項5】
前記弁室がPTFEからなり、前記当接部材がPFAからなる弁座側接合部材を介して前記弁座に接合されている請求項4に記載の電動弁。
【請求項6】
前記弁体がPTFEからなり、前記ニードル弁部がPFAからなる弁体側接合部材を介して前記弁座に接合されている請求項4又は5に記載の電動弁。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれか1項に記載の電動弁の製造方法であって、
前記弁室の前記弁座に前記当接部材を載置して、抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロックにより前記当接部材を加圧とともに加熱して接合する当接部材接合工程と、
前記弁体に前記ニードル弁部を載置して、前記ヒーティングブロックにより前記ニードル弁部を加圧とともに加熱して接合する弁部接合工程とを有する
ことを特徴とする電動弁の製造方法。
【請求項8】
前記当接部材接合工程が、PFAからなる弁座側接合部材とPTFEからなる弁座又は架橋PTFEからなる当接部材とを拡散接合する弁座側拡散接合工程を有する請求項7に記載の電動弁の製造方法。
【請求項9】
前記弁部接合工程が、PFAからなる弁体側接合部材とPTFEからなる弁体又は架橋PTFEからなるニードル弁部とを拡散接合する弁体側拡散接合工程を有する請求項7又は8に記載の電動弁の製造方法。
【請求項10】
前記弁部接合工程は、PFA又はPTFEからなるブロック体に架橋PTFEからなるブロック体を載置して、前記ヒーティングブロックにより前記架橋PTFEからなるブロック体を加圧とともに加熱して接合した後に、前記PFA又はPTFEからなるブロック体を切削加工により弁体に形成するとともに、前記架橋PTFEからなるブロック体を切削加工によりニードル弁部に形成する切削工程を有する請求項7ないし9のいずれか1項に記載の電動弁の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモータによって作動される電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造の流路構造では、ポンプ等の流体の供給源に接続された流路に、流体圧力を調節する調圧弁、流体の流量を調節する流量調節弁、流体を遮断又は通過可能とする開閉弁等が適宜に配置される。この種の半導体製造においては、薬液や超純水等の流体を微量に調節して供給する工程が行われる場合がある。
【0003】
流体の供給を微量に調節する際には、例えば、流量調節弁として、ニードル状の弁体の進退によって流出部のオリフィスの開口量を調節する電動弁が使用される(特許文献1参照)。電動弁は、ステッピングモータ等の電動式駆動機構により作動される装置であって、電気制御の操作により装置の維持管理の自由度が大きく、流量変化等の制御を容易に行うことができる利点がある。
【0004】
ところで、この種の流路構造において流体が遮断される場合、通常の作動時には流量調節弁(電動弁)の閉鎖により流体が遮断されるが、停電等により動力が停止したり、緊急停止ボタンを作動させたりした場合には開閉弁の閉鎖により流体が遮断される。従来の流路構造にあっては、配管内に流量調節弁等の他に緊急停止用の開閉弁を個別に配置する必要があり、コストの増大や装置の大型化等の問題が生じて改善が求められている。
【0005】
また近年では、半導体製造における大規模集積化、加工の微細化が進み、2023年には配線ピッチ3nmの半導体デバイスが量産される計画がある。そこで、半導体製造の分野では、より効果的に流体の微量調節を行うことが可能な電動弁が求められている。さらに、微細な配線幅の半導体製造では、その製造工程内における流体の流通経路での微細なゴミ(パーティクル)の混入が、製品の歩留まりに大きな影響を与える。歩留まりを維持するためには、パーティクルを配線ピッチの半分以下のサイズとして流体の清浄度を維持しながら流通させることが要求される。
【0006】
流量調節弁等に使用される電動弁等の弁装置では、腐食性の高い薬液が使用されることが多いため、ハウジングや弁体等の各部を構成する材料として、耐食性や耐薬品性等に優れたPTFEやPFA等のフッ素樹脂が使用される。従来の弁装置では、ダイアフラム部にPTFE、弁部にPFAを使用する等、部材の部位に応じて性質の異なる材料を使用し、組み合わせて構成することある。その際、PTFEとPFAをインサート成形や溶着により結合させた後、切削加工によりダイアフラムや弁部等の所定形状に形成することが提案されている(特許文献2、特許文献3参照)。
【0007】
フッ素樹脂においては、PTFEやPFAと同等の耐食性等の性質を有し、耐摩耗性に優れた材料として架橋PTFEが知られている。この架橋PTFEは、材料自体の製造工程が多く高額であることから、各部材の全体を構成する材料として使用するには不向きであるが、半導体製造プロセスの微細化に伴う清浄度のさらなる改善の観点から、架橋PTFEの優れた耐摩耗性は極めて有用である。そこで、架橋PTFEを使用する場合に、経済的でより高い清浄度を維持することができる電動弁を適切に製造することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実登3227404号公報
【特許文献2】国際公開第2017/221877号
【特許文献3】2020-200840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、機能停止時の流体遮断機能を備えるとともに、より効果的に流体の微量調節を行うことが可能な電動弁を提供するものである。また、架橋PTFEを使用する場合に経済的でより高い清浄度を維持することができる電動弁の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、請求項1の発明は、弁座が形成された弁室と、前記弁室の後部側に配置された作動室と、前記作動室の後部側に配置された電動式駆動機構を有する駆動室とが形成されたハウジングと、前記電気駆動機構により軸回転される作動軸と、前記作動軸と連結されるとともに前記作動軸の作動により進退動する弁機構体と、前記弁機構体に取り付けられるとともに前記弁室にダイアフラムと一体に配置されて前記弁座を開閉する弁体と、を備えた電動弁であって、前記作動室には、シリンダ部内に加圧気体を供給するエア供給部が設けられているとともに、前記弁機構体と別部材よりなる停止部材と、前記停止部材を常時弁室方向に付勢するばね部材とが前記シリンダ部内に配置されていて、前記作動軸は、前記電動式駆動機構の伝達部材に周方向に係合する伝達係合部を後部に有する軸本体と、前記軸本体の前部に形成された第1ねじ部と、前記軸本体の前記第1ねじ部の後側に形成された前記第1ねじ部よりピッチが大きい第2ねじ部とを有し、前記伝達部材に対して進退可能であるとともに、前記電動式駆動機構の作動により軸回転する前記伝達部材を介して軸回転されるように構成され、前記弁機構体は、前記作動軸の前記第1ねじ部と螺合する弁機構体側ねじ溝部を有し、前記作動室に周方向に回転不能かつ進退自在に嵌挿されており、前記停止部材は、前記作動軸に貫通されて前記作動軸の前記第2ねじ部と螺合する停止部材側ねじ溝部を有し、前記作動室の前記シリンダ部内に周方向に回転不能かつ進退自在に嵌挿されていて、前記電動弁の作動時には前記シリンダ部への前記加圧気体の供給により前記ばね部材の付勢力に抗して常時前記駆動室側に付勢保持され、前記弁機構体の後退移動の際には、前記軸本体が前記電動式駆動機構により前記伝達部材を介して一方向に軸回転されることにより、前記第2ねじ部のピッチに応じて前記作動軸が後退されるとともに、前記第2ねじ部と前記第1ねじ部のピッチの差分に応じて前記弁機構体が後退されて前記弁体を前記弁座から離隔され、前記弁機構体の前進移動の際には、前記軸本体が前記電動式駆動機構により前記伝達部材を介して他方向に軸回転されることにより、前記第2ねじ部のピッチに応じて前記作動軸が前進されるとともに、前記第2ねじ部と前記第1ねじ部のピッチの差分に応じて前記弁機構体が前進されて前記弁体を前記弁座に近接させて閉鎖され、開弁時に前記電動弁が機能停止した場合には、前記加圧気体の供給停止により前記ばね部材の付勢力が前記停止部材に作用することによって、前記停止部材が前記作動軸及び前記作動軸の前記第1ねじ部と螺合する前記弁機構体とともに弁室方向へ前進されて、前記弁体は前進されて前記弁座を閉鎖させて保持し、閉弁時に前記電動弁が機能停止した場合には、前記加圧気体の供給停止により前記ばね部材の付勢力が前記停止部材に作用することによって前記弁体による前記弁座の閉弁状態を保持することを特徴とする電動弁に係る。
【0011】
請求項2の発明は、弁座が形成された弁室と、前記弁室の後部側に配置された作動室と、前記作動室の後部側に配置された電動式駆動機構を有する駆動室とが形成されたハウジングと、前記電気駆動機構により軸回転される作動軸と、前記作動軸と連結されるとともに前記作動軸の作動により進退動する弁機構体と、前記弁機構体に取り付けられるとともに前記弁室にダイアフラムと一体に配置されて前記弁座を開閉する弁体と、を備えた電動弁であって、前記作動室には、シリンダ部内に加圧気体を供給するエア供給部が設けられているとともに、前記弁機構体と別部材よりなる停止部材と、前記停止部材を常時弁室方向に付勢するばね部材とが前記シリンダ部内に配置されていて、前記作動軸は、前記電動式駆動機構の伝達部材に周方向に係合する伝達係合部を後部に有する軸本体と、前記軸本体の前部に形成された第1ねじ部と、前記軸本体の前記第1ねじ部の後側に形成された前記第1ねじ部よりピッチが小さい第2ねじ部とを有し、前記伝達部材に対して進退可能であるとともに、前記電動式駆動機構の作動により軸回転する前記伝達部材を介して軸回転されるように構成され、前記弁機構体は、前記作動軸の前記第1ねじ部と螺合する弁機構体側ねじ溝部を有し、前記作動室に周方向に回転不能かつ進退自在に嵌挿されており、前記停止部材は、前記作動軸に貫通されて前記作動軸の前記第2ねじ部と螺合する停止部材側ねじ溝部を有し、前記作動室の前記シリンダ部内に周方向に回転不能かつ進退自在に嵌挿されていて、前記電動弁の作動時には前記シリンダ部への前記加圧気体の供給により前記ばね部材の付勢力に抗して常時前記駆動室側に付勢保持され、前記弁機構体の後退移動の際には、前記軸本体が前記電動式駆動機構により前記伝達部材を介して一方向に軸回転されることにより、前記第2ねじ部のピッチに応じて前記作動軸が前進されるとともに、前記第1ねじ部と前記第2ねじ部のピッチの差分に応じて前記弁機構体が後退されて前記弁体を前記弁座から離隔され、前記弁機構体の前進移動の際には、前記軸本体が前記電動式駆動機構により前記伝達部材を介して他方向に軸回転されることにより、前記第2ねじ部のピッチに応じて前記作動軸が後退されるとともに、前記第1ねじ部と前記第2ねじ部のピッチの差分に応じて前記弁機構体が前進されて前記弁体を前記弁座に近接させて閉鎖され、開弁時に前記電動弁が機能停止した場合には、前記加圧気体の供給停止により前記ばね部材の付勢力が前記停止部材に作用することによって、前記停止部材が前記作動軸及び前記作動軸の前記第1ねじ部と螺合する前記弁機構体とともに弁室方向へ前進されて、前記弁体は前進されて前記弁座を閉鎖させて保持し、閉弁時に前記電動弁が機能停止した場合には、前記加圧気体の供給停止により前記ばね部材の付勢力が前記停止部材に作用することによって前記弁体による前記弁座の閉弁状態を保持することを特徴とする電動弁に係る。
【0012】
請求項3の発明は、前記停止部材の前進時に、停止部材の前面部と前記シリンダ部の前面部との間に前記エア供給部からの加圧気体の導入が可能な間隙部が形成される請求項1又は2に記載の電動弁に係る。
【0013】
請求項4の発明は、前記弁室と前記弁体とが、PFA又はPTFEからなるフッ素樹脂で形成され、前記弁体に、前記弁室の前記弁座に対して当接又は前記弁座から後退して開閉する架橋PTFEからなるニードル弁部が接合されているとともに、前記弁座に、閉弁時に前記ニードル弁部と当接する架橋PTFEからなる当接部材が接合されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電動弁に係る。
【0014】
請求項5の発明は、前記弁室がPTFEからなり、前記当接部材がPFAからなる弁座側接合部材を介して前記弁座に接合されている請求項4に記載の電動弁に係る。
【0015】
請求項6の発明は、前記弁体がPTFEからなり、前記ニードル弁部がPFAからなる弁体側接合部材を介して前記弁座に接合されている請求項4又は5に記載の電動弁に係る。
【0016】
請求項7の発明は、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の電動弁の製造方法であって、前記弁室の前記弁座に前記当接部材を載置して、抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロックにより前記当接部材を加圧とともに加熱して接合する当接部材接合工程と、前記弁体に前記ニードル弁部を載置して、前記ヒーティングブロックにより前記ニードル弁部を加圧とともに加熱して接合する弁部接合工程とを有することを特徴とする電動弁の製造方法に係る。
【0017】
請求項8の発明は、前記当接部材接合工程が、PFAからなる弁座側接合部材とPTFEからなる弁座又は架橋PTFEからなる当接部材とを拡散接合する弁座側拡散接合工程を有する請求項7に記載の電動弁の製造方法に係る。
【0018】
請求項9の発明は、前記弁部接合工程が、PFAからなる弁体側接合部材とPTFEからなる弁体又は架橋PTFEからなるニードル弁部とを拡散接合する弁体側拡散接合工程を有する請求項7又は8に記載の電動弁の製造方法に係る。
【0019】
請求項10の発明は、前記弁部接合工程は、PFA又はPTFEからなるブロック体に架橋PTFEからなるブロック体を載置して、前記ヒーティングブロックにより前記架橋PTFEからなるブロック体を加圧とともに加熱して接合した後に、前記PFA又はPTFEからなるブロック体を切削加工により弁体に形成するとともに、前記架橋PTFEからなるブロック体を切削加工によりニードル弁部に形成する切削工程を有する請求項7ないし9のいずれか1項に記載の電動弁の製造方法に係る。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明に係る電動弁によると、弁座が形成された弁室と、前記弁室の後部側に配置された作動室と、前記作動室の後部側に配置された電動式駆動機構を有する駆動室とが形成されたハウジングと、前記電気駆動機構により軸回転される作動軸と、前記作動軸と連結されるとともに前記作動軸の作動により進退動する弁機構体と、前記弁機構体に取り付けられるとともに前記弁室にダイアフラムと一体に配置されて前記弁座を開閉する弁体と、を備えた電動弁であって、前記作動室には、シリンダ部内に加圧気体を供給するエア供給部が設けられているとともに、前記弁機構体と別部材よりなる停止部材と、前記停止部材を常時弁室方向に付勢するばね部材とが前記シリンダ部内に配置されていて、前記作動軸は、前記電動式駆動機構の伝達部材に周方向に係合する伝達係合部を後部に有する軸本体と、前記軸本体の前部に形成された第1ねじ部と、前記軸本体の前記第1ねじ部の後側に形成された前記第1ねじ部よりピッチが大きい第2ねじ部とを有し、前記伝達部材に対して進退可能であるとともに、前記電動式駆動機構の作動により軸回転する前記伝達部材を介して軸回転されるように構成され、前記弁機構体は、前記作動軸の前記第1ねじ部と螺合する弁機構体側ねじ溝部を有し、前記作動室に周方向に回転不能かつ進退自在に嵌挿されており、前記停止部材は、前記作動軸に貫通されて前記作動軸の前記第2ねじ部と螺合する停止部材側ねじ溝部を有し、前記作動室の前記シリンダ部内に周方向に回転不能かつ進退自在に嵌挿されていて、前記電動弁の作動時には前記シリンダ部への前記加圧気体の供給により前記ばね部材の付勢力に抗して常時前記駆動室側に付勢保持され、前記弁機構体の後退移動の際には、前記軸本体が前記電動式駆動機構により前記伝達部材を介して一方向に軸回転されることにより、前記第2ねじ部のピッチに応じて前記作動軸が後退されるとともに、前記第2ねじ部と前記第1ねじ部のピッチの差分に応じて前記弁機構体が後退されて前記弁体を前記弁座から離隔され、前記弁機構体の前進移動の際には、前記軸本体が前記電動式駆動機構により前記伝達部材を介して他方向に軸回転されることにより、前記第2ねじ部のピッチに応じて前記作動軸が前進されるとともに、前記第2ねじ部と前記第1ねじ部のピッチの差分に応じて前記弁機構体が前進されて前記弁体を前記弁座に近接させて閉鎖され、開弁時に前記電動弁が機能停止した場合には、前記加圧気体の供給停止により前記ばね部材の付勢力が前記停止部材に作用することによって、前記停止部材が前記作動軸及び前記作動軸の前記第1ねじ部と螺合する前記弁機構体とともに弁室方向へ前進されて、前記弁体は前進されて前記弁座を閉鎖させて保持し、閉弁時に前記電動弁が機能停止した場合には、前記加圧気体の供給停止により前記ばね部材の付勢力が前記停止部材に作用することによって前記弁体による前記弁座の閉弁状態を保持するため、機能停止時の流体遮断機能を備えて単独で流量調節弁と緊急停止用の開閉弁として使用することができ、配管内に流量調節弁と開閉弁とを個別に配置する必要がなくなり、コストの低減や装置の小型化を図ることができるとともに、正確かつ容易に流体の微量調節を行うことができる。
【0021】
請求項2の発明に係る電動弁によると、弁座が形成された弁室と、前記弁室の後部側に配置された作動室と、前記作動室の後部側に配置された電動式駆動機構を有する駆動室とが形成されたハウジングと、前記電気駆動機構により軸回転される作動軸と、前記作動軸と連結されるとともに前記作動軸の作動により進退動する弁機構体と、前記弁機構体に取り付けられるとともに前記弁室にダイアフラムと一体に配置されて前記弁座を開閉する弁体と、を備えた電動弁であって、前記作動室には、シリンダ部内に加圧気体を供給するエア供給部が設けられているとともに、前記弁機構体と別部材よりなる停止部材と、前記停止部材を常時弁室方向に付勢するばね部材とが前記シリンダ部内に配置されていて、前記作動軸は、前記電動式駆動機構の伝達部材に周方向に係合する伝達係合部を後部に有する軸本体と、前記軸本体の前部に形成された第1ねじ部と、前記軸本体の前記第1ねじ部の後側に形成された前記第1ねじ部よりピッチが小さい第2ねじ部とを有し、前記伝達部材に対して進退可能であるとともに、前記電動式駆動機構の作動により軸回転する前記伝達部材を介して軸回転されるように構成され、前記弁機構体は、前記作動軸の前記第1ねじ部と螺合する弁機構体側ねじ溝部を有し、前記作動室に周方向に回転不能かつ進退自在に嵌挿されており、前記停止部材は、前記作動軸に貫通されて前記作動軸の前記第2ねじ部と螺合する停止部材側ねじ溝部を有し、前記作動室の前記シリンダ部内に周方向に回転不能かつ進退自在に嵌挿されていて、前記電動弁の作動時には前記シリンダ部への前記加圧気体の供給により前記ばね部材の付勢力に抗して常時前記駆動室側に付勢保持され、前記弁機構体の後退移動の際には、前記軸本体が前記電動式駆動機構により前記伝達部材を介して一方向に軸回転されることにより、前記第2ねじ部のピッチに応じて前記作動軸が前進されるとともに、前記第1ねじ部と前記第2ねじ部のピッチの差分に応じて前記弁機構体が後退されて前記弁体を前記弁座から離隔され、前記弁機構体の前進移動の際には、前記軸本体が前記電動式駆動機構により前記伝達部材を介して他方向に軸回転されることにより、前記第2ねじ部のピッチに応じて前記作動軸が後退されるとともに、前記第1ねじ部と前記第2ねじ部のピッチの差分に応じて前記弁機構体が前進されて前記弁体を前記弁座に近接させて閉鎖され、開弁時に前記電動弁が機能停止した場合には、前記加圧気体の供給停止により前記ばね部材の付勢力が前記停止部材に作用することによって、前記停止部材が前記作動軸及び前記作動軸の前記第1ねじ部と螺合する前記弁機構体とともに弁室方向へ前進されて、前記弁体は前進されて前記弁座を閉鎖させて保持し、閉弁時に前記電動弁が機能停止した場合には、前記加圧気体の供給停止により前記ばね部材の付勢力が前記停止部材に作用することによって前記弁体による前記弁座の閉弁状態を保持するため、機能停止時の流体遮断機能を備えて単独で流量調節弁と緊急停止用の開閉弁として使用することができ、配管内に流量調節弁と開閉弁とを個別に配置する必要がなくなり、コストの低減や装置の小型化を図ることができるとともに、正確かつ容易に流体の微量調節を行うことができる。
【0022】
請求項3の発明に係る電動弁によると、請求項1又は2の発明において、前記停止部材の前進時に、停止部材の前面部と前記シリンダ部の前面部との間に前記エア供給部からの加圧気体の導入が可能な間隙部が形成されるため、機能停止後に容易かつ適切に電動弁を復帰させることが可能となる。
【0023】
請求項4の発明に係る電動弁によると、請求項1ないし3の発明において、前記弁室と前記弁体とが、PFA又はPTFEからなるフッ素樹脂で形成され、前記弁体に、前記弁室の前記弁座に対して当接又は前記弁座から後退して開閉する架橋PTFEからなるニードル弁部が接合されているとともに、前記弁座に、閉弁時に前記ニードル弁部と当接する架橋PTFEからなる当接部材が接合されているため、弁部と弁座の接触時のパーティクルの発生を効果的に抑制することができる。
【0024】
請求項5の発明に係る電動弁によると、請求項4の発明において、前記弁室がPTFEからなり、前記当接部材がPFAからなる弁座側接合部材を介して前記弁座に接合されているため、PTFEからなる弁座に架橋PTFEからなる当接部材を容易に接合させることができる。
【0025】
請求項6の発明に係る電動弁によると、請求項4又は5の発明において、前記弁体がPTFEからなり、前記ニードル弁部がPFAからなる弁体側接合部材を介して前記弁座に接合されているため、PTFEからなる弁体に架橋PTFEからなるニードル弁部を容易に接合させることができる。
【0026】
請求項7の発明に係る電動弁の製造方法によると、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の電動弁の製造方法であって、前記弁室の前記弁座に前記当接部材を載置して、抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロックにより前記当接部材を加圧とともに加熱して接合する当接部材接合工程と、前記弁体に前記ニードル弁部を載置して、前記ヒーティングブロックにより前記ニードル弁部を加圧とともに加熱して接合する弁部接合工程とを有するため、PFA又はPTFEからなる弁座と架橋PTFEからなる当接部材、及びPFA又はPTFEからなる弁体と架橋PTFEからなるニードル弁部を、高分子の絡みによる摩擦接合の強度を超える溶融接合に近い強固な接合強度で接合することができる。
【0027】
請求項8の発明に係る電動弁によると、請求項7の発明において、前記当接部材接合工程が、PFAからなる弁座側接合部材とPTFEからなる弁座又は架橋PTFEからなる当接部材とを拡散接合する弁座側拡散接合工程を有するため、PTFEの弁座と架橋PTFEの当接部材とを容易に接合させることができる。
【0028】
請求項9の発明に係る電動弁によると、請求項7又は8の発明において、前記弁部接合工程が、PFAからなる弁体側接合部材とPTFEからなる弁体又は架橋PTFEからなるニードル弁部とを拡散接合する弁体側拡散接合工程を有するため、PTFEの弁体と架橋PTFEのニードル弁部とを容易に接合させることができる。
【0029】
請求項10の発明に係る電動弁によると、請求項7ないし9の発明において、前記弁部接合工程は、PFA又はPTFEからなるブロック体に架橋PTFEからなるブロック体を載置して、前記ヒーティングブロックにより前記架橋PTFEからなるブロック体を加圧とともに加熱して接合した後に、前記PFA又はPTFEからなるブロック体を切削加工により弁体に形成するとともに、前記架橋PTFEからなるブロック体を切削加工によりニードル弁部に形成する切削工程を有するため、弁体にニードル弁部を容易かつ確実に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電動弁の全開時の縦断面図である。
【
図2】
図1の電動弁の弁機構体移動時の縦断面図である。
【
図4】作動軸の後部側と電動式駆動機構の伝達部材との構造を表した概略横断面図である。
【
図6】全開時の機能停止中における弁機構体近傍の拡大断面図である。
【
図7】弁機構体移動時の機能停止中における弁機構体近傍の拡大断面図である。
【
図8】閉弁時の機能停止中における弁機構体近傍の拡大断面図である。
【
図9】機能停止時の停止部材の前面部側近傍の拡大断面図である。
【
図10】テーパーシール部が形成されたニードル弁部を有する電動弁の全開時の弁室の拡大断面図である。
【
図11】テーパーシール部が形成されたニードル弁部を有する電動弁の閉弁時の弁室の拡大断面図である。
【
図12】フラットシール部が形成されたニードル弁部を有する電動弁の全開時の弁室の拡大断面図である。
【
図13】フラットシール部が形成されたニードル弁部を有する電動弁の閉弁時の弁室の拡大断面図である。
【
図14】接合装置により弁座に当接部材を接合させる工程を表した要部概略断面図である。
【
図15】弁座に弁座側接合部材を介して当接部材を接合させる工程を表した要部概略断面図である。
【
図16】弁体にニードル弁部を接合させる工程を表した要部概略断面図である。
【
図17】弁体に弁体側接合部材を介してニードル弁部を接合させる工程を表した要部概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1~3に示す本発明の一実施形態に係る電動弁10は、主に半導体製造工場や半導体製造装置等の流体管路に配設される流量調節弁であって、流体の流量の調節や遮断を行うように構成される。この電動弁10は、ハウジング11と、作動軸50と、弁機構体60と、弁体70とを備える。
【0032】
電動弁10では、流体と接触するハウジング11、弁体70等の各部が耐食性及び耐薬品性の高い材料で構成される。例えば、PTFE、PFA、PVDF等のフッ素樹脂である。フッ素樹脂は、切削等により所望する形状に容易に加工することができる。また、この電動弁10では、純水、アンモニア水、フッ酸、過酸化水素水、塩酸、オゾン水、水素水、酸素水、界面活性剤等の薬液、水素、酸素等のガス等の被制御流体が流通される。
【0033】
ハウジング11は、弁座25が形成された弁室20と、弁室20の後部側に配置された作動室30と、作動室30の後部側に配置された駆動室40とが形成される。図において、符号21は弁室20の一側に接続された被制御流体の流入部、22は弁座25を介して弁室20の他側に接続された被制御流体の流出部である。
【0034】
作動室30には、加圧気体を供給するエア供給部35が設けられているとともに、後述する弁機構体60と別部材よりなる停止部材80と、停止部材80を常時弁室20方向に付勢するばね部材Sとが配置されている。図において、符号31は作動室30内に形成されたシリンダ部、32はシリンダ部31の前側(弁室20側)において後述する弁機構体60を進退可能に保持する弁機構体保持ブロック、33はシリンダ部31の前面部に相当する弁機構体保持ブロック32の後端面である。
【0035】
エア供給部35は、作動室30のシリンダ部31内に加圧気体を供給する部位であり、公知の電空レギュレータ等の調圧装置(図示せず)に接続される。このエア供給部35では、シリンダ部31の前面側(弁機構体保持ブロック32の後端面33側)に加圧気体の供給孔36が形成され、当該電動弁10の作動中は常時加圧気体の供給が行われる。
【0036】
駆動室40は、電動式駆動機構41を有する。電動式駆動機構41は、適宜の演算装置(図示せず)の制御により進退量を調節して後述の作動軸50を軸回転させる部材である。電動式駆動機構41としては、作動軸50の回転量を精度良く制御できるものであれば特に限定されず、例えば、ステッピングモータ、サーボモータ、超音波モータ等が好適に用いられる。電動式駆動機構41に関して、42はロータ、43は配線部、44はフロントブランケット、45はロータ42により後述の作動軸50を軸回転させる伝達部材、46は伝達部材45の回転体、47は回転体46から前側(作動室30側)に突出して形成された伝達部材45の棒状体である。なお、電動式駆動機構41のフロントブランケット44は、作動室30のシリンダ部31の後面部であるとともに、後述のばね部材Sの後側ばね受け部に相当する。
【0037】
作動軸50は、電動式駆動機構41により軸回転される部材であって、軸本体51と、第1ねじ部56と、第2ねじ部57とを有する。軸本体51は、電動式駆動機構41の伝達部材45に周方向に係合する伝達係合部52を後部に有し、伝達部材45に対して進退可能であるとともに、電動式駆動機構41の作動により軸回転する伝達部材45を介して軸回転されるように構成される。
【0038】
ここで、作動軸50は、
図1~3に示すように、伝達係合部52に伝達部材45の回転体46から突出した棒状体47が嵌挿されることによって、伝達部材45と連結される。伝達部材45と作動軸50との連結構造は、伝達部材45の軸回転により棒状体47を介して軸回転可能かつ棒状体47に対して軸方向に進退可能な構造であれば特に限定されない。実施形態では、
図4に示すように、伝達部材45の棒状体47が平板状に形成されており、作動軸の伝達係合部52は伝達部材45の棒状体47が摺動可能に嵌挿される断面視四角形状の孔部として形成されている。そして、作動軸50の断面視四角形状の伝達係合部52が伝達部材45の平板状の棒状体47と回転方向で係合しているため、電動式駆動機構41により伝達部材45が軸回転することによって、その棒状体47を介して作動軸50が軸回転される。また、伝達部材45の棒状体47と作動軸50の伝達係合部52とが軸方向で摺動可能であるため、作動軸50が伝達部材45に対して進退可能となる。
【0039】
第1ねじ部56は、軸本体51の前部に形成されたねじ山部分である。また、第2ねじ部57は、軸本体51の係合部52と第1ねじ部56と間に形成された第1ねじ部56のッチと異なるピッチのねじ山部分である。実施形態では、第2ねじ部57のピッチが第1ねじ部56のピッチより大きく形成されている。なお、第2ねじ部57のピッチを第1ねじ部56のピッチより小さく形成することも可能である。
【0040】
弁機構体60は、作動軸50と連結されるとともに作動軸50の作動により進退動する部材であって、後部に作動軸50の第1ねじ部56と螺合する弁機構体側ねじ溝部61を有する。この弁機構体60は、作動室30に周方向に回転不能かつ進退自在に嵌挿される。実施形態では、
図5に示すように、作動室30の弁機構体保持ブロック32に公知のスプライン嵌合構造により嵌挿されている。また、実施形態の弁機構体60では、後端部62に複数の突起部65が設けられている。
【0041】
弁体70は、弁機構体60に取り付けられるとともに、弁室20にダイアフラム75と一体に配置されて弁座25を開閉する部材である。この弁体70は、弁機構体60の進退動に伴って進退することにより弁座25に対して着座又は弁座25から後退して弁座25を開閉する弁部71を有する。弁部71の形状は、フラット形状やニードル形状等、弁座25の開閉を確実に行うことが可能であれば特に限定されない。図示した実施形態の弁部71は、フラット形状のシール部72を有するフラット弁部である。ダイアフラム75は、薄肉の可動膜からなり、弁室20内を流通する被制御流体の作動室30側への浸入を防止する。
【0042】
停止部材80は、作動軸50に貫通されて作動軸50の第2ねじ部57と螺合する停止部材側ねじ溝部82を有する。また、停止部材80は、作動室30のシリンダ部31内に周方向に回転不能かつ進退自在に嵌挿されていて、電動弁10の作動時にはシリンダ部31への加圧気体の供給によりばね部材Sの付勢力に抗して常時駆動室40側に付勢保持される。実施形態の停止部材は、作動室30のシリンダ部31に公知のスプライン嵌合構造により嵌挿されている(図示省略)。図において、符号81は停止部材80内に凹状に形成されてばね部材Sに押圧される前側ばね受け部である。
【0043】
ばね部材Sは、停止部材80と電動式駆動機構41との間に配置されて、停止部材80を常時弁室20方向に付勢する弾性部材である。ばね部材Sは、停止部材80を付勢する弾性部材であれば特に限定されないが、簡素な構成で安価な公知のコイルばねが好適である。
【0044】
次に、第2ねじ部57のピッチが第1ねじ部56のピッチより大きく形成された第1実施形態の電動弁10の平常時の作動について説明する。なお、平常時の作動では、エア供給部35から作動室30のシリンダ部31内へ常時加圧気体が供給されて、ばね部材Sの付勢力に抗して停止部材80が常時駆動室40側、すなわちシリンダ部31の後面部に相当する電動式駆動機構41のフロントブランケット44側に付勢保持されている。
【0045】
電動弁10の作動時において、
図1に示す弁機構体60の後退移動の際、つまり開弁時(弁座25の開放時)では、まず電動式駆動機構41により伝達部材45を介して軸本体51が一方向(作動軸50の後退方向)に軸回転される。この時、作動軸50は、第1ねじ部56が弁機構体60の弁機構体側ねじ溝部61に螺合されているとともに、第1ねじ部56よりピッチが大きい第2ねじ部57が停止部材80の停止部材側ねじ溝部82に螺合されている。
【0046】
ここで、停止部材80が作動室30のシリンダ部31内に周方向に回転不能に嵌挿されて加圧気体により駆動室40側に付勢保持されていることから、停止部材80が作動軸50の回動によって供回りすることがなく、作動軸50は第2ねじ部57のピッチに応じて後退される。一方、弁機構体60が作動室30に周方向に回転不能かつ進退自在に嵌挿されて、第2ねじ部57よりピッチが小さい第1ねじ部56と螺合して作動軸50に連結されていることから、弁機構体60は作動軸50の回動によって供回りせずに第2ねじ部57と第1ねじ部56のピッチの差分に応じて後退される。そして、弁機構体60の後退により、弁体70が弁座25から離隔されて開弁状態とされる。特に、図示のように後退した弁機構体60の後部(突起部65)が停止部材80の前面部83に当接した場合は、弁機構体60の後退量が最大となり、弁座25が全開とされる。
【0047】
続いて弁機構体60の前進移動の際は、
図2に示すように、電動式駆動機構41により伝達部材45を介して軸本体51が他方向(作動軸50の前進方向)に軸回転される。その際、停止部材80が作動軸50の回動によって供回りすることがなく、加圧気体により駆動室40側に付勢保持されていることから、作動軸50は第2ねじ部57のピッチに応じて前進される。一方、弁機構体60が作動軸50の回動によって供回りすることなく作動室30に進退自在に嵌挿されていることから、弁機構体60は第2ねじ部57と第1ねじ部56のピッチの差分に応じて前進される。弁機構体60は、前進により停止部材80から離隔されて弁室20方向へ移動され、これに伴って弁体70が弁座25に近接される。そして、弁機構体60が継続して前進することにより、
図3に示すように、弁体70が弁座25に当接されて閉弁(閉鎖)状態となる。
【0048】
ここで、上記のように、第2ねじ部57のピッチを第1ねじ部56のピッチより大きく形成した際の、第2ねじ部57と第1ねじ部56のピッチの差分に応じた弁機構体60の進退動について、第1ねじ部56のピッチを0.5mm、第2ねじ部57のピッチを1.0mmとして具体的に説明する。例えば作動軸50を一方向へ一回転させた場合、作動軸50は、第2ねじ部57のピッチである1.0mmだけ後退する。一方、弁機構体60は、第2ねじ部57と第1ねじ部56のピッチの差分である0.5mmだけ後退するように作動する。また、作動軸50を他方向へ一回転させると、作動軸50は、第2ねじ部57のピッチである1.0mmだけ前進する。一方、弁機構体60は、第2ねじ部57と第1ねじ部56のピッチの差分である0.5mmだけ前進するように作動する。このように、第2ねじ部57のピッチを第1ねじ部56のピッチより大きく形成してそのピッチの差分に応じて弁機構体60を進退させることにより、弁体70の移動量の微調整を容易かつ正確に行うことができる。そのため、第2ねじ部57のピッチと第1ねじ部56のピッチとの差分を適宜調整することによって、正確かつ容易に流体の微量調節を行うことが可能となる。
【0049】
次に、本発明の電動弁10の機能停止の際の作動について説明する。ここで、機能停止とは、電動弁10の作動中に停電等による電力停止や緊急停止ボタン(図示せず)の操作による緊急停止等の非常事態において、エア供給部35からの加圧気体の供給が停止された状態である。実施形態の電動弁10では、非常事態の発生により、まず加圧気体の供給が停止され、次いで電力停止等により電動弁10の動力が停止される。動力停止により電動式駆動機構41の作動が停止されることから、作動軸50は軸回転されない。この作動軸50には、第1ねじ部56に弁機構体60が螺合して連結されているとともに、第2ねじ部57に停止部材80が螺合して連結されていることから、伝達部材45の棒状体47に対して作動軸50と弁機構体60と停止部材80とが一体に進退可能な状態となる。なお、機能停止の手順はこれに限定されず、非常事態に際して加圧気体の供給停止と電動式駆動機構41の作動停止が行われればよい。
【0050】
本発明の電動弁10は、開弁時に機能停止した場合には、加圧気体の供給停止によりばね部材Sの付勢力が停止部材80に作用することによって、停止部材80が作動軸50及び作動軸50の第1ねじ部56と螺合する弁機構体60とともに弁室20方向へ前進されて、弁体70が前進されて弁座25を閉鎖させて保持する。また、閉弁時に機能停止した場合には、加圧気体の供給停止によりばね部材Sの付勢力が停止部材80に作用することによって弁体70による弁座25の閉弁状態を保持する。そこで、電動弁10の作動時の状態に応じた機能停止時の作動をより具体的に述べる。
【0051】
まず、
図1に示す弁座25の全開時に機能が停止された場合、ばね部材Sの付勢力に抗して停止部材80を駆動室40側へ付勢保持していたエア供給部35からの加圧気体の供給が停止されて、停止部材80に対してばね部材Sの付勢力が作用して弁室20方向へ押圧される。この時、機能停止により作動軸50の回動が停止されて、作動軸50と弁機構体60と停止部材80とが伝達部材45の棒状体47に対して一体に進退可能であることから、ばね部材Sにより弁室20方向へ押圧された停止部材80とともに、作動軸50と弁機構体60とが一体に弁室20方向へ前進される。
【0052】
このように、弁座25の全開時に機能が停止されると、ばね部材Sの付勢力によって作動軸50と弁機構体60と停止部材80とが一体に前進するため、
図6に示すように、弁機構体60を介して弁体70が前進されて、弁座25が閉鎖(閉弁)される。そして、停止部材80は、ばね部材Sにより常時弁室20方向へ付勢されているため、当該機能停止中は、ばね部材Sの付勢力によって閉弁状態が保持される。
【0053】
図2に示す弁座25の全開ではない開放時、すなわち弁機構体60の移動時(前進移動時又は後退移動時)に機能が停止された場合、まず弁機構体60は、停止部材80から離隔され、かつ、弁体70が弁座25に当接されない開放位置で移動が停止される。一方、停止部材80は、全開時の機能停止と同様に、エア供給部35からの加圧気体の供給停止により、ばね部材Sの付勢力が作用して弁室20方向へ押圧される。そのため、ばね部材Sにより弁室20方向へ押圧された停止部材80とともに、作動軸50と弁機構体60とが一体に弁室20方向へ前進される。
【0054】
このように弁機構体60の移動時に機能が停止されると、弁機構体60が停止部材80から離隔された開放位置から前進するため、
図7に示すように、弁機構体60を介して弁体70が前進されて、弁座25が閉鎖(閉弁)される。この時、作動軸50と弁機構体60と停止部材80とが一体に前進することから、停止部材80は、図示のように弁機構体60の移動距離と等しい距離を前進して、弁機構体60の停止とともに停止される。そして、停止部材80に対してばね部材Sの弁室20方向への付勢力が常時作用していることから、当該機能停止中は、ばね部材Sの付勢力によって閉弁状態が保持される。
【0055】
図3に示す弁座25のの閉鎖時(閉弁時)に機能が停止された場合、まず弁機構体60は、弁体70が弁座25に当接されて閉鎖する位置で停止される。一方、停止部材80は、エア供給部35からの加圧気体の供給停止により、ばね部材Sの付勢力が作用して弁室20方向へ押圧される。ここで、作動軸50と弁機構体60と停止部材80とは一体に進退可能に構成されているが、弁体70が弁座25に当接されて弁機構体60が前進不可能であることにより、
図8に示すように、作動軸50及び停止部材80もともに前進されず、停止部材80は駆動室40側、すなわち電動式駆動機構41のフロントブランケット44に当接された後退位置で停止される。そして、停止部材80に対してばね部材Sの弁室20方向への付勢力が常時作用していることから、閉鎖時の機能停止中では、機能停止前(作動中)の閉弁状態のまま作動軸50と弁機構体60と停止部材80とが移動することなく、ばね部材Sの付勢力によって閉弁状態が保持される。
【0056】
機能停止後、機能が復帰された場合、エア供給部35からの加圧気体の供給が再開されて、停止部材80が加圧気体によってばね部材Sの付勢力に抗して駆動室40側に付勢保持される。そして、開放時(全開含む)に機能停止していた場合には、作動軸50と弁機構体60とが停止部材80と一体に後退されて作動が再開され、閉鎖時に機能停止していた場合には、閉鎖状態のまま作動が再開される。
【0057】
また、上記の機能復帰に際して、例えば全開時に機能停止された場合には、停止部材80がシリンダ部31内の弁室20側(前側)に位置する。そこで、
図9に示すように、停止部材80の前面部83とシリンダ部31の前面部(弁機構体保持ブロック32の後端面33)との間にエア供給部35からの加圧気体の導入が可能な間隙部Gが形成されることが好ましい。この間隙部Gにより、機能停止後に復帰させる際に、エア供給部35からの加圧気体が停止部材80の前面部83とシリンダ部31の前面部との間に効率よく導入されて、加圧気体による付勢力が停止部材80の前面部83に作用しやすくなる。そのため、機能停止後に容易かつ適切に電動弁10を復帰させることが可能となる。
【0058】
図9(a)は、弁機構体60の後端部62に複数の突起部65が形成されて、閉弁時に突起部65が弁機構体保持ブロック32の後端面33からシリンダ部31内へ突出する構造である。
図9(b)は、閉弁時の弁機構体60の後端部62が弁機構体保持ブロック32の後端面33からシリンダ部31内へ突出する構造である。これらの構造では、弁機構体60の後部をシリンダ部31内へ突出させて、前進した停止部材80の前面部83とシリンダ部31の前面部とを隔離させるように構成される。
【0059】
図9(c)は、停止部材80の前面部83に突出部84を形成し、突出部84が弁機構体60の後端部62に当接される構造である。この構造では、停止部材80と弁機構体60の後端部62との当接位置が停止部材80の前面部83より前側となるため、閉弁時の弁機構体60の後部が弁機構体保持ブロック32の後端面33より前側であっても停止部材80の前面部83とシリンダ部31の前面部とを隔離させることができる。
【0060】
停止部材80の前進時にシリンダ部31の前面部側に間隙部Gを形成する構造は、上記の例に限定されず、例えば突起部を停止部材側や停止部材と弁機構体の双方に設ける等、適宜に構成することができる。
【0061】
次に、図示は省略するが、第2ねじ部57のピッチが第1ねじ部56のピッチより小さく形成された第2実施形態の電動弁10の平常時の作動について説明する。弁機構体60の後退移動の際、つまり開弁時(弁座25の開放時)では、まず軸本体51が電動式駆動機構41により伝達部材45を介して一方向(作動軸50の前進方向)に軸回転されることにより、停止部材80が作動軸50の回動によって供回りすることがなく、第2ねじ部57のピッチに応じて作動軸50が前進される。一方、弁機構体60は、第2ねじ部57よりピッチが大きい第1ねじ部56と螺合して作動軸50に連結されていることから、作動軸50の回動によって供回りせずに第1ねじ部56と第2ねじ部57のピッチの差分に応じて後退され、開弁状態(全開含む)とされる。
【0062】
続いて弁機構体60の前進移動の際は、電動式駆動機構41により伝達部材45を介して軸本体51が他方向(作動軸50の後退方向)に軸回転される。その際、停止部材80が作動軸50の回動によって供回りすることがなく、第2ねじ部57のピッチに応じて作動軸50が後退される。一方、弁機構体60は、作動軸50の回動によって供回りすることなく第1ねじ部56と第2ねじ部57のピッチの差分に応じて前進され、閉弁(閉鎖)状態とされる。
【0063】
ここで、上記のように、第2ねじ部57のピッチを第1ねじ部56のピッチより小さく形成した際の、第1ねじ部56と第2ねじ部57のピッチの差分に応じた弁機構体60の進退動について、第1ねじ部56のピッチを1.5mm、第2ねじ部57のピッチを1.0mmとして具体的に説明する。例えば作動軸50を一方向へ一回転させた場合、作動軸50は、第2ねじ部57のピッチである1.0mmだけ前進する。一方、弁機構体60は、第1ねじ部56と第2ねじ部57のピッチの差分である0.5mmだけ後退するように作動する。また、作動軸50を他方向へ一回転させると、作動軸50は、第2ねじ部57のピッチである1.0mmだけ後退する。一方、弁機構体60は、第1ねじ部56と第2ねじ部57のピッチの差分である0.5mmだけ前進するように作動する。このように、第2ねじ部57のピッチを第1ねじ部56のピッチより小さく形成してそのピッチの差分に応じて弁機構体60を進退させることにより、弁体70の移動量の微調整を容易かつ正確に行うことができる。そのため、第1ねじ部56のピッチと第2ねじ部57のピッチとの差分を適宜調整することによって、正確かつ容易に流体の微量調節を行うことが可能となる。
【0064】
以上図示し説明したように、本発明の電動弁10では、作動時にエア供給部35からの加圧気体の供給により、停止部材80をばね部材Sの付勢力に抗して常時駆動室40側に付勢保持して平常通りに弁機構体60の作動を可能としており、開放(開弁)中の機能停止時では加圧気体の供給停止により、ばね部材Sの付勢力によって停止部材80が弁室20側へ押圧され、作動軸50と弁機構体60と停止部材80とを一体に前進させて閉弁し保持するように構成され、閉鎖(閉弁)中の機能停止時では加圧気体の供給停止により、ばね部材Sの付勢力によって停止部材80が弁室20側へ押圧されて閉弁状態を保持するように構成される。そのため、機能停止時に適切に流体を遮断することができる。したがって、本発明の電動弁10では、単独で流量調節弁と緊急停止用の開閉弁として機能させることが可能となって、配管内に流量調節弁と開閉弁とを個別に配置する必要がなくなり、コストの低減や装置の小型化を図ることができる。
【0065】
また、作動軸50に第1ねじ部56と第1ねじ部56よりピッチが大きい第2ねじ部57が形成されて第2ねじ部57と第1ねじ部56のピッチの差分に応じて弁機構体60の進退させる、又は第1ねじ部56と第1ねじ部56よりピッチが大小さい第2ねじ部57が形成されて第1ねじ部56と第2ねじ部57のピッチの差分に応じて弁機構体60の進退させることにより、弁体70の移動量の微調整が可能であるため、正確かつ容易に流体の微量調節を行うことが可能となる。
【0066】
次に、より高い清浄度を維持することを可能とするために、架橋PTFEを使用する場合について、
図10~17を用いて説明する。
図10~13に示す電動弁10A,10B(各図は弁室の拡大断面図)では、例えば、弁室20と弁体70aとをPFA又はPTFEからなるフッ素樹脂で形成し、弁体70aに弁座25に対して当接又は弁座25から後退して開閉する架橋PTFEからなるニードル弁部73が接合されるとともに、弁座25に閉弁時にニードル弁部73と当接する架橋PTFEからなる当接部材26が接合される。
【0067】
架橋PTFEは、分子同士が架橋反応して構成されたPTFEであり、例えば放射線架橋等の適宜の架橋方法により作成される。架橋PTFEは、PTFEに対して1000倍以上の耐摩耗性を有し、荷重による変形が生じにくく耐変性に優れる。特に、常温や高温のいずれでもPTFEより耐変性に優れている。また、架橋PTFEは、切削、溶接、及び貼り付け等の加工性、耐薬品性、非粘着性、電気特性、耐腐食性、清浄度等がPFAやPTFEと同等である。
【0068】
図10~13に示す例では、互いに接触する弁座25の当接部材26とニードル弁部73とが耐摩耗性に優れた架橋PTFEで構成される。半導体製造等の高い清浄度が求められる分野では、弁部もしくは弁座(当接部材)の一方を架橋PTFEとしても、他方のフッ素樹脂(PTFEやPFA)を削ってしまってパーティクルの発生を抑制する効果が十分に得られない。そこで、弁座25の当接部材26とニードル弁部73の双方を架橋PTFEとすることによって、弁部と弁座(当接部材)の接触時のパーティクルの発生を効果的に抑制することができる。
【0069】
図10,11に示す電動弁10Aは、流出部22のオリフィス径が大径に形成され、弁座25の当接部材26に当接するテーパーシール部74aが形成されたニードル弁部73aを有する。図示の実施形態のニードル弁部73aでは、テーパーシール部74aが流出部22のオリフィス径未満の径の位置から傾斜角度が緩やかな角度に変化するように形成される。また、当接部材26は、オリフィス径が大径の流出部22に対応した環状に形成される。
【0070】
図12,13に示す電動弁10Bは、流出部22のオリフィス径が小径に形成され、弁座25の当接部材26に当接するフラットシール部74bが形成されたニードル弁部73bを有する。図示の実施形態のニードル弁部73bでは、流出部22のオリフィス径と略同径の位置にフラットシール部74bが形成されて、閉弁時には当接部材26の上面側に当接される。また、当接部材26は、オリフィス径が小径の流出部22に対応した環状に形成される。
【0071】
PFAやPTFEと架橋PTFEとの接合は、加圧・加熱接合により行うことができる。また、弁室20がPTFEからなる場合には、
図10~
図13に示すように、架橋PTFEからなる当接部材26は、PFAからなる弁座側接合部材90を介して弁座25に接合されることが好ましい。同様に、弁体70aがPTFEからなる場合には、架橋PTFEからなるニードル弁部73は、PFAからなる弁体側接合部材95を介して弁体70aに接合されることが好ましい。
【0072】
ここで、弁座25と当接部材26とを接合する当接部材接合工程と、弁体70aとニードル弁部73とを接合する弁部接合工程について
図14~17を用いて具体的に説明する。
図14に示す符号100はこれらの接合工程に用いる接合装置であり、
図15~17においては、接合装置100はヒーティングブロック110を図示して、その他の部位は省している。
【0073】
接合装置100は、当接部材26やニードル弁部73等を加圧とともに直接加熱して弁座25や弁体70aに接合させるヒーティングブロック110を有する。ヒーティングブロック110は、ニクロム線等の発熱体を有し、ヒーターケーブル111から電力が供給されて発熱する抵抗加熱により加熱を行う。また、ヒーティングブロック110の加熱部110a表面は平滑であることが好ましく、実施形態では表面粗さ(算術平均粗さ:Ra)が0.03μmである。このヒーティングブロック110の加熱部110aには、必要に応じてフッ素ガスによる腐食防止のためのDLC(ダイアモンドライクカーボン)コーティングが施される。
【0074】
図において、符号112はヒーティングブロック110が取り付けられる可動ブロック、113はヒーティングブロック110による加圧時に所定の荷重を加えるための溶着圧力調整用ウエイト、114は可動ブロックに連結されてヒーティングブロックを昇降させる空圧シリンダーや電動シリンダー等の昇降手段、115は接合装置100の支柱、116は支柱に支持された固定プレート、117はヒーティングブロック110の加熱部110aの温度を検出する温度センサー、118は可動ブロック112の変異を検出する変位センサーである。
【0075】
当接部材接合工程では、弁室20の弁座25に当接部材26を載置して、抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロック110により当接部材26を加圧とともに加熱して接合が行われる。また、弁部接合工程では、弁体70aにニードル弁部73を載置して、抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロック110によりニードル弁部73を加圧とともに加熱して接合が行われる。
【0076】
図14に示す例は、PFAからなる弁座25に、架橋PTFEからなる当接部材26を接合する当接部材接合工程を表す。この接合工程では、PFAの弁座25の弁座側当接部25aに、架橋PTFEの当接部材26が設置されて、ヒーティングブロック110が当接部材26に当接される。この時、ヒーティングブロック110に溶着圧力調整用ウエイト113による荷重が加わるため、架橋PTFEの当接部材26は、加圧されながら架橋PTFEの融点以上の温度で加熱されて、軟化又は半融解される。当接部材26側から加圧とともに加熱されることにより、PFAの弁座25は当接部材26との接触界面で伝熱加熱されて、融解される。これにより、架橋PTFEの当接部材26とPFAの弁座25とが、高分子の絡みによる摩擦接合の強度を超える溶融接合に近い強固な接合強度で接合される。
【0077】
なお、弁座25に接合される当接部材26は、弁座25との接合前に切削加工等により環状に加工したり、円状部材として弁座25に接合させた後に切削加工等により環状に加工したりする等、適宜に加工することができる。また、接合後に加工する場合、流出部22のオリフィスが形成される前の弁座25に当接部材26を接合させて、オリフィスの形成とともに当接部材26を環状に加工することも可能である。
【0078】
図15に示す例は、PTFEからなる弁座25に架橋PTFEからなる当接部材26を接合する当接部材接合工程を表し、PFAからなる弁座側接合部材90と弁座25又は当接部材26とを拡散接合する弁座側拡散接合工程を有する。図示の弁座側拡散接合工程では、弁座25の弁座側当接部25aに、PFAからなる弁座側接合部材90を介して当接部材26が設置され、抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロック110により架橋PTFEの当接部材26を加圧とともに加熱して、弁座25と弁座側接合部材90と当接部材26とを同時に接合させる。この時、当接部材26は加熱により軟化又は半融解され、PFAからなる弁座側接合部材90及びPTFEからなる弁座25の弁座側当接部25aは、当接部材26側から加圧とともに加熱されることによって、当接部材26と弁座側接合部材90との接触界面、及び弁座側接合部材90と弁座側当接部25aとの接触界面で伝熱加熱されて、融解される。これにより、架橋PTFEの当接部材26と、PFAの弁座側接合部材90と、PTFEの弁座25とが、高分子の絡みによる摩擦接合の強度を超える溶融接合に近い強固な接合強度で接合される。
【0079】
また、図示しないが、弁座側拡散接合工程では、当接部材26と弁座側接合部材90とを接合させた後に、これらを弁座25に接合させてもよい。当接部材26と弁座側接合部材90とを接合する場合、弁座側接合部材90に当接部材26を載置して、ヒーティングブロック110により当接部材26が加圧とともに加熱されて、当接部材26と弁座側接合部材90が接合される。そして、一体となった当接部材26と弁座側接合部材90が弁座25に設置されて、ヒーティングブロック110により当接部材26が加圧とともに加熱されて、当接部材26と弁座側接合部材90と弁座25とが接合される。
【0080】
さらに、弁座側拡散接合工程では、弁座25と弁座側接合部材90とを接合させた後に、当接部材26を接合させてもよい。弁座25と弁座側接合部材90とを接合する場合、弁座25の弁座側当接部25aに弁座側接合部材90を載置して、ヒーティングブロック110により弁座側接合部材90が加圧とともに加熱されて、弁座側接合部材90と弁座25が接合される。そして、弁座25に接合された弁座側接合部材90に当接部材26が設置されて、ヒーティングブロック110により当接部材26が加圧とともに加熱されて、当接部材26と弁座側接合部材90と弁座25とが接合される。
【0081】
このように、PTFEの弁座25に架橋PTFEの当接部材26を接合する場合には、両者の間にPFAの弁座側接合部材90を介在させることが好ましい。これは、PTFEや架橋PTFEの溶融粘度が大きいのに対し、PFAの溶融粘度が小さいことから、PTFEや架橋PTFEの接合面が比較的粗い場合(例えば、算術平均粗さ:Raが0.4μm)でも、PFAがPTFEや架橋PTFEの粗い接合面に対応して溶融して十分な接合強度が得られるためである。したがって、PTFEの弁座25と架橋PTFEの当接部材26との間にPFAの弁座側接合部材90を介在させることによって、PTFEの弁座25と架橋PTFEの当接部材26とを容易に接合させることができる。
【0082】
なお、PTFEの弁座に架橋PTFEの当接部材を直に接合することも可能である。この場合、PTFEや架橋PTFEの接合面が粗いと十分な接合強度を得ることが困難となることから、接合面の算術平均粗さ(Ra)を0.1μm未満とすることが好ましい。これにより、溶融粘度が大きいPTFEと架橋PTFEとを適切に接合させることができる。
【0083】
図16に示す例は、PFAからなる弁体70aに架橋PTFEからなるニードル弁部73を接合する弁部接合工程を表す。この弁部接合工程は、弁体70aの成形前のPFAからなるブロック体B1と、ニードル弁部73の成形前の架橋PTFEからなるブロック体B2とを接合させた後に、ブロック体B1を切削加工により弁体70aに形成するとともに、ブロック体B2を切削加工によりニードル弁部73に形成する切削工程を行うことが好ましい。
【0084】
図16に示す弁部接合工程では、弁体70aとなるPFAのブロック体B1に、ニードル弁部73となる架橋PTFEのブロック体B2が載置され、架橋PTFEのブロック体B2が抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロック110により加圧とともに加熱される。この時、架橋PTFEのブロック体B2は加熱により軟化又は半融解され、PFAのブロック体B1は架橋PTFEのブロック体B2側から加圧とともに加熱されることによって、架橋PTFEのブロック体B2との接触界面で伝熱加熱されて、融解される。これにより、PFAのブロック体B1と架橋PTFEのブロック体B2とが、高分子の絡みによる摩擦接合の強度を超える溶融接合に近い強固な接合強度で接合される。
【0085】
PFAのブロック体B1と架橋PTFEのブロック体B2の接合後、切削加工によりブロック体B1が切削されて弁体70aが形成されるとともに、切削加工によりブロック体B2が切削されてニードル弁部73が形成される。このように、弁体70aの成形前のブロック体B1と、ニードル弁部73の成形前のブロック体B2とを接合した後に、切削工程によってブロック体B1を弁体70a、ブロック体B2をニードル弁部73にそれぞれ形成することにより、弁体70aにニードル弁部73を容易かつ確実に接合することができる。
【0086】
図17に示す例は、PTFEからなる弁体70aに架橋PTFEからなるニードル弁部73を接合する工程を表し、PFAからなる弁体側接合部材95とPTFEからなる弁体70a又は架橋PTFEからなるニードル弁部73とを拡散接合する弁体側拡散接合工程を有する。図示の弁体側拡散接合工程では、弁体70aとなるPTFEのブロック体B3に、PFAからなる弁体側接合部材95を介してニードル弁部73となる架橋PTFEのブロック体B2が載置され、抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロック110により架橋PTFEのブロック体B2を加圧とともに加熱して、PTFEのブロック体B3とPFAの弁体側接合部材95と架橋PTFEのブロック体B2とを同時に接合させる。この時、架橋PTFEのブロック体B2は加熱により軟化又は半融解され、PFAの弁体側接合部材95及びPTFEの弁体70aは、架橋PTFEのブロック体B2側から加圧とともに加熱されることによって、架橋PTFEのブロック体B2と弁体側接合部材95との接触界面、及び弁体側接合部材95とPTFEのブロック体B3との接触界面で伝熱加熱されて、融解される。これにより、架橋PTFEのブロック体B2と、PFAの弁体側接合部材95と、PTFEのブロック体B3とが、高分子の絡みによる摩擦接合の強度を超える溶融接合に近い強固な接合強度で接合される。
【0087】
また、図示しないが、弁体側拡散接合工程では、架橋PTFEのブロック体B2と弁体側接合部材95とを接合させた後に、これらをPTFEのブロック体B3に接合させてもよい。ブロック体B2と弁体側接合部材95とを接合する場合、弁体側接合部材95にブロック体B2を載置して、ヒーティングブロック110によりブロック体B2が加圧とともに加熱されて、弁体側接合部材95とブロック体B2とが接合される。そして、一体となったブロック体B2と弁体側接合部材95がブロック体B3に設置されて、ヒーティングブロック110によりブロック体B2が加圧とともに加熱されて、ブロック体B2と弁体側接合部材95とブロック体B3とが接合される。
【0088】
さらに、弁体側拡散接合工程では、PTFEのブロック体B3と弁体側接合部材95とを接合させた後に、架橋PTFEのブロック体B2を接合させてもよい。ブロック体B3と弁体側接合部材95とを接合する場合、ブロック体B3に弁体側接合部材95を載置して、ヒーティングブロック110により弁座側接合部材90が加圧とともに加熱されて、弁体側接合部材95とブロック体B3が接合される。そして、ブロック体B3に接合された弁体側接合部材95に架橋PTFEのブロック体B2が設置されて、ヒーティングブロック110によりブロック体B2が加圧とともに加熱されて、ブロック体B2と弁体側接合部材95とブロック体B3とが接合される。
【0089】
PTFEのブロック体B3と弁体側接合部材95を介して架橋PTFEのブロック体B2が接合された後、切削加工によりブロック体B3が切削されて弁体70aが形成されるとともに、切削加工によりブロック体B2及び弁体側接合部材95が切削されて弁体側接合部材95が介在されたニードル弁部73が形成される。これにより、弁体70aに弁体側接合部材95を介してニードル弁部73を容易かつ確実に接合することができる。
【0090】
このように、PTFEの弁体70aに架橋PTFEのニードル弁部73を接合する場合には、両者の間にPFAの弁体側接合部材95を介在させることが好ましい。これは、PTFEの弁座25と架橋PTFEの当接部材26とを接合する場合と同様に、PTFEや架橋PTFEの接合面が比較的粗い場合(例えば、算術平均粗さ:Raが0.4μm)でも、PFAを介在させることによって十分な接合強度が得られるためである。したがって、弁体側接合部材95の介在により、PTFEの弁体70aと架橋PTFEのニードル弁部73とを容易に接合させることができる。なお、PTFEの弁体に架橋PTFEのニードル弁部を直に接合することも、PTFEの弁座に架橋PTFEの当接部材を直に接合する場合と同様に可能である。
【0091】
なお、本発明の電動弁は、前述の実施形態のみに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の一部を適宜に変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上の通り、本発明の電動弁は、機能停止時の流体遮断機能を備えて単独で流量調節弁と緊急停止用の開閉弁とを兼用させることができるとともに、正確かつ容易に流体の微量調節を行うことができる。そのため、半導体製造等に使用される電動弁の代替品として有望である。
【符号の説明】
【0093】
10,10A,10B 電動弁
11 ハウジング
20 弁室
21 流入部
22 流出部
25 弁座
25a 弁座側当接部
26 当接部材
30 作動室
31 シリンダ部
32 弁機構体保持ブロック
33 弁機構体保持ブロックの後端面
35 エア供給部
40 駆動室
41 電動式駆動機構
42 電動式駆動機構のロータ
43 電動式駆動機構の配線部
44 電動式駆動機構のフロントブランケット
45 電動式駆動機構の伝達部材
46 伝達部材の回転体
47 伝達部材の棒状体
50 作動軸
51 軸本体
52 伝達係合部
56 第1ねじ部
57 第2ねじ部
60 弁機構体
61 弁機構体側ねじ溝部
62 弁機構体の後端部
65 突起部
70,70a 弁体
71 弁部
72 フラット形状のシール部
73,73a,73b ニードル弁部
74a ニードル弁部のテーパーシール部
74b ニードル弁部のフラットシール部
75 ダイアフラム
80 停止部材
81 前側ばね受け部
82 停止部材側ねじ溝部
83 停止部材の前面部
84 停止部材の突出部
90 弁座側接合部材
95 弁体側接合部材
100 接合装置
110 ヒーティングブロック
110a ヒーティングブロックの加熱部
111 ヒーターケーブル
112 可動ブロック
113 溶着圧力調整用ウエイト
114 昇降手段
115 支柱
116 固定プレート
117 温度センサー
118 変位センサー
B1,B2,B3 ブロック体
G 間隙部
S ばね部材
S1 補助付勢部材