(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055532
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】圧力センサ素子および圧力センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 19/06 20060101AFI20230411BHJP
G01L 9/12 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
G01L19/06 Z
G01L9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164987
(22)【出願日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】添田 将
(72)【発明者】
【氏名】石原 卓也
(72)【発明者】
【氏名】関根 正志
(72)【発明者】
【氏名】松儀 泰明
(72)【発明者】
【氏名】新村 悠祐
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA40
2F055BB01
2F055CC02
2F055DD01
2F055EE25
2F055FF11
2F055FF38
2F055GG12
2F055HH11
(57)【要約】
【課題】圧力変動に対する応答性を確保しつつ、ダイアフラムに堆積する物質によってもたらされるセンサ出力のゼロ点シフトを低減する。
【解決手段】圧力センサ素子は、受圧面2Aaに加わる圧力と測定面2Abに加わる圧力との差によって変形するダイアフラム2Aと、受圧面2Aaに配設された、複数の粒子10aの集合体からなる粒子層10と、測定面2Abに配設されて、ダイアフラム2Aの変形を電気的に検出するセンサ電極部4と、を備える。各粒子10aは、球形状を有する。隣合う粒子10a同士、及び、粒子層10(最下層の粒子10a)とダイアフラム2Aとは、イオン結合又は共有結合といった強固な結合ではなく、静電気による力、ファンデルワールス力、分子間力などの比較的弱い力により点接触で付着している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面に加わる圧力と第2の面に加わる圧力との差によって変形するダイアフラムと、
前記第1の面に配設された、複数の粒子の集合体からなる粒子層と、
前記第2の面に配設されて、前記ダイアフラムの変形を電気的に検出するセンサ部と、
を備える圧力センサ素子。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力センサ素子において、
前記複数の粒子のそれぞれは、他の粒子と100Pa以下の付着力で付着している、
圧力センサ素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の圧力センサ素子において、
前記粒子層は、前記第1の面に100Pa以下の付着力で付着している、
圧力センサ素子。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の圧力センサ素子において、
前記複数の粒子のそれぞれは、前記ダイアフラム以上の耐熱性及び前記ダイアフラム以上の耐食性のうちの少なくとも一方を有する材料から形成されている、
圧力センサ素子。
【請求項5】
請求項4に記載の圧力センサ素子において、
前記複数の粒子のそれぞれの主成分は、サファイア、ニッケル基合金、又は、フッ素樹脂である、
圧力センサ素子。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の圧力センサ素子において、
前記複数の粒子は、劈開面を持たない、
圧力センサ素子。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載の圧力センサ素子において、
前記複数の粒子は、球形状の複数の粒子を含む、
圧力センサ素子。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載の圧力センサ素子において、
前記複数の粒子は、折り重なった針形状の複数の粒子を含む、
圧力センサ素子。
【請求項9】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載の圧力センサ素子において、
前記複数の粒子は、折り重なった板形状の複数の粒子を含む、
圧力センサ素子。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1つに記載の圧力センサ素子を備える圧力センサであり、
前記圧力センサ素子は、静電容量式の圧力センサ素子である、
圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサ素子およびこれを用いた圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、流体の圧力を測定するためのセンサとして、ダイアフラムを備えた圧力センサ素子およびこれを用いた圧力センサが広く使用されている。この圧力センサ素子およびこれを用いた圧力センサにおいては、圧力測定の対象となっている流体(以下、「被測定流体」と称する。)の圧力変化をダイアフラムの変形といった機械的変位の形で捉え、さらにこの機械的変位を電圧等の電気信号として検出したのち、この電気信号から被測定流体の圧力を測定するように構成されている。例えば、静電容量式の圧力センサ素子およびこれを用いた圧力センサにおいては、ダイアフラムの変形を一対の電極間の静電容量の変化として検出し、この静電容量の変化に基づいて、被測定流体の圧力を測定するように構成されている。ここで、上記ダイアフラムは、互いに非連通の状態で隔離された2つの空間に面するように配設されており、これら2つの空間の一方に被測定流体が流出入することで生じる圧力差によって、上記変形がもたらされる構造となっている。
【0003】
上記構成の圧力センサ素子およびこれを用いた圧力センサにおいては、被測定流体の圧力を受けるダイアフラムの受圧面と被測定流体とが接触することになる。このため、上記圧力センサ素子およびこれを用いた圧力センサが、例えば、半導体デバイス等を製造する装置の成膜・エッチングプロセスにおいて使用されている場合、被測定流体に含まれる成膜物質などがダイアフラムの受圧面に付着することになる。このとき、成膜物質などは、連続的な化学反応をともないながら膜を形成するとともに、比較的強い力でダイアフラムの受圧面に凝着する。このような化学反応をともなう成膜過程においては、分子間または結晶格子間で作用する力、いわゆる膜の内部応力が発生する。この内部応力は、ダイアフラムを変形させる。この内部応力に起因したダイアフラムの変形は、センサ出力のゼロ点をシフトさせ、測定精度を低下させるといった問題をもたらす。このため、当該問題を解決するための技術が、従来より提案されている。
【0004】
上記技術として、例えば、特許文献1に記載の先行技術がある。この先行技術は、上記問題を解決するために、被測定流体がダイアフラムの受圧面に到達する前の上流域にバッフルを配設し、このバッフル内の経路を通過する被測定流体の流れが分子流となるように、例えば、上記経路の代表的長さを流体分子の平均自由工程よりも小さくしたことを特徴とする。
【0005】
また、その他の上記技術として、特許文献2に記載の先行技術がある。この先行技術は、上記問題を解決するために、ダイアフラムの受圧面にテーブル型、逆テーパ型または方形波状の構造物を立設して、当該受圧面を非平滑面として形成したことを特徴とする。
【0006】
また、その他の上記技術として、特許文献3に記載の先行技術がある。この先行技術は、上記問題を解決するために、ダイアフラムの形状を、例えば、中央部から周縁部に向かって連続的に剛性が低下するように形成することを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-149946号公報
【特許文献2】特表2009-524024号公報
【特許文献3】特開2010-236949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1に記載の先行技術においては、被測定流体の流れの抵抗を増大させる(コンダクタンスを悪化させる)ことから、圧力変動に対する応答性が悪化するといった課題がある。応答性悪化の課題は、特に、高い応答性が求められるALD(atomic layer deposition;原子層堆積)において顕著となる。
【0009】
また、上述した特許文献2および3に記載の先行技術においても、応答性が確保されている構造であるか否かの十分な検証が必要となる。
【0010】
本発明は、圧力変動に対する応答性を確保しつつ、ダイアフラムに堆積する物質によってもたらされるセンサ出力のゼロ点シフトを低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明に係る圧力センサ素子は、第1の面に加わる圧力と第2の面に加わる圧力との差によって変形するダイアフラムと、前記第1の面に配設された、複数の粒子の集合体からなる粒子層と、前記第2の面に配設されて、前記ダイアフラムの変形を電気的に検出するセンサ部と、を備える。
【0012】
前記複数の粒子のそれぞれは、他の粒子と100Pa以下の付着力で付着していてもよい。
【0013】
前記粒子層は、前記第1の面に100Pa以下の付着力で付着していてもよい。
【0014】
前記複数の粒子のそれぞれは、前記ダイアフラム以上の耐熱性及び前記ダイアフラム以上の耐食性のうちの少なくとも一方を有する材料から形成されていてもよい。
【0015】
前記複数の粒子のそれぞれの主成分は、サファイア、ニッケル基合金、又は、フッ素樹脂であってもよい。
【0016】
前記複数の粒子は、劈開面を持たなくてもよい。
【0017】
前記複数の粒子は、球形状の複数の粒子を含んでもよい。
【0018】
前記複数の粒子は、折り重なった針形状の複数の粒子を含んでもよい。
【0019】
前記複数の粒子は、折り重なった板形状の複数の粒子を含んでもよい。
【0020】
上記課題を解決するための本発明に係る圧力センサは、上記圧力センサ素子を備える圧力センサであり、前記圧力センサ素子は、静電容量式の圧力センサ素子である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、圧力変動に対する応答性を確保しつつ、ダイアフラムに堆積する物質によってもたらされるセンサ出力のゼロ点シフトを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る圧力センサ素子の縦断面図である。
【
図4】
図4は、
図1の圧力センサ素子を備えた静電容量式の圧力センサの縦断面図である。
【
図5】
図5は、堆積物質が堆積した様子を示す図である。
【
図6】
図6は、堆積物質が堆積した様子を示す図である。
【
図7】
図7は、堆積物質が堆積した様子を示す図である。
【
図8】
図8は、他の例の粒子層の一部の平面図である。
【
図9】
図9は、他の例の粒子層の一部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の好ましい実施の形態の1つである静電容量式の圧力センサ素子1およびこれを用いた静電容量式の圧力センサ100を、第1の実施の形態として
図1ないし
図7に基づいて説明する。ここで、説明文中の前後方向、上下方向および左右方向は、
図1に示された圧力センサ素子1および
図4に示された圧力センサ100の紙面に対する奥行き方向、上下方向および左右方向としてそれぞれ定義する。また、各図は概念図であって、図示された内容は、必ずしも実際の圧力センサ素子および圧力センサと一致するものではない。また、断面図では、奥に見えるものが省略されている(例えば
図4)。
【0024】
〔圧力センサ素子1の構成〕
はじめに、圧力センサ100に組み込まれて使用される圧力センサ素子1の構成を、縦断面図である
図1に基づいて説明する。
【0025】
圧力センサ素子1は、圧力センサ100(
図4)内に導入される被測定流体Lの圧力変化を機械的変位として捉え、さらにこの機械的変位を電気信号(例えば、電圧信号)として検出する要素である。圧力センサ素子1は、例えば、平面視において1cm角の正方形状を呈した薄板形状を有する。圧力センサ素子1は、ダイアフラム2Aと、ダイアフラム2Aを支持する支持部2Bと、ダイアフラム2A及び支持部2Bとともに容量室C1を形成する台座3と、容量室C1の内部に収容されたセンサ電極部4と、圧力センサ100の構成要素である後述の2つの電極リードピン51(
図4)に電気的にそれぞれ接続されるコンタクトパッド5a及び5bとから主に構成されている。圧力センサ素子1は、さらに、ダイアフラム2Aに配設された(所定の配置で設けられた)、複数の粒子10aの集合体(
図2参照)からなる全体として薄膜状の粒子層10が設けられている。
【0026】
[ダイアフラム2A]
ダイアフラム2Aは、真空圧に維持された基準室としての容量室C1と、後述する導入部20Vと連通することで被測定流体Lが流出入する空間C2とを隔離する境界壁を形成し、かつ被測定流体Lの圧力変化に応じて変形する機械的要素である。ダイアフラム2Aは、支持部2Bととも一体的に形成されており、例えば、酸化アルミニウムの単結晶体であるサファイア、多結晶アルミナまたはニッケル基合金のいずれか1つを主成分とした材料から形成されている。
【0027】
ダイアフラム2Aは、平坦なシート状、ここでは、薄い円盤状を呈し、その軸心が、圧力センサ素子1の軸心(この軸心は(後述する圧力センサ100の軸心と同軸である)と一致するように配設されている。ダイアフラム2Aは、空間C2側(
図1では上方)に向いた、被測定流体Lの圧力を受ける受圧面2Aaと、受圧面2Aaとは反対の、台座3とともに容量室C1を画成する測定面2Abとを備える。ダイアフラム2Aは、受圧面2Aaに加わる被測定流体Lの圧力と測定面2Abに加わる容量室C1の圧力つまり基準圧力との差によって変形する。受圧面2Aaに粒子層10が形成されている。また、測定面2Abの中央には、センサ電極部4を構成する後述の可動電極4aが形成されている。
【0028】
[支持部2B]
支持部2Bは、環状形状であり、その外側壁が平面視1cm角の四角柱の側壁をなしている。支持部2Bの中央は貫通しており、その内周壁には、ダイアフラム2Aが接続されている。この内周壁は、ダイアフラム2Aよりも上側の部分が下側の部分よりも外周側に凹んだ円筒形状を有する。支持部2Bとダイアフラム2Aとの接続部分は、ダイアフラム2Aの変形時に固定端として機能する。
【0029】
[台座3]
台座3は、ダイアフラム2Aを支持しつつ、上述したように、ダイアフラム2Aとともに、センサ電極部4が収容される容量室C1を画成する。台座3は、平面視1cm角の薄板部材からなる。容量室C1を介してダイアフラム2Aの測定面2Abに対向する台座3の固定面3aの可動電極4aに対向する位置には、センサ電極部4を構成する後述の固定電極4bが形成されている。
【0030】
[センサ電極部4]
センサ電極部4は、ダイアフラム2Aの変形を電気的に検出する電気素子であって、ダイアフラム2Aの測定面2Abに配設された、互いに対向する一対の電極からなる。この一対の電極のうちの一方は、測定面2Abに形成され、ダイアフラム2Aの変形により移動する可動電極4aであり、他方は、台座3の固定面3aに形成された固定電極4bである。これら可動電極4aと固定電極4bとは、所定の静電容量をもつコンデンサを構成している。つまり、圧力センサ素子1は、静電容量式の圧力センサ素子である。
【0031】
[コンタクトパッド5]
コンタクトパッド5は、センサ電極部4との間で電気的に接続する部位であって、台座3の固定面3aと反対側に位置する面上に配設された一対のコンタクトパッド5a、5bから構成されている。これら一対のコンタクトパッド5a、5bは、例えば、金又は白金から形成されている。コンタクトパッド5a、5bは、所定の配線(図示せず)を通じて、容量室C1内に配設された可動電極4aおよび固定電極4bとそれぞれ電気的に接続している。
【0032】
[粒子層10]
ダイアフラム2Aの受圧面2Aaに配設された粒子層10は、
図2及び
図3に示すように、長球形状の複数の粒子10a(例えば、粉体)の集合体からなる。各粒子10aは、ダイアフラム2Aと同等の耐熱性および耐食性を備えていることが望ましい。本実施の形態における粒子10aは、その主成分がダイアフラム2Aの主成分と同一の材料、すなわち、サファイア、多結晶アルミナまたはニッケル基合金のいずれか1つから形成されている。粒子10aの主成分は、ダイアフラム2Aの主成分と同一の材料でなくてもよく、フッ素樹脂であってもよい。
【0033】
粒子層10では、例えば、上下方向に複数の粒子10aが重なっている。つまり、粒子10aを前後左右の2次元状に配列した粒子10aの層(上下方向における粒子10a)を1層とすると、粒子層10は、複数の層を含む。
図2では、粒子10aは、2層分、積み重ねられている。粒子層10は、1層であってもよい。隣合う粒子10a同士、及び、粒子層10(より具体的には、最下層の粒子10a)とダイアフラム2Aとは、イオン結合又は共有結合といった強固な結合ではなく、静電気による力、ファンデルワールス力、分子間力などの比較的弱い力により点接触で付着している。この付着力の詳細についは後述する。
【0034】
粒子層10の形成方法としては、乾式および湿式がある。乾式の形成方法としては、例えばエアロゾルデポジション(AD)法、スプレードライ法、噴霧熱分解法などがある。湿式の形成方法としては、コロイドプロセス、沈殿法、水熱分解法、ゾルゲル法などがある。湿式の形成方法では、ボトムアップで粒子の配列およびパターニングが可能で、所望の領域に所望の厚さで粒子を整列させることが可能となる。
【0035】
粒子層10の形成では、粒子10aを熱処理して焼結するとよいが、焼結により粒子10a同士の付着が強くなってしまう。本実施の形態では、弱い付着を目指すため、熱処理を行う場合でも通常の焼結温度より低い温度での処理にとどめるとよい。粒子10a自体の形成プロセスにおいても、粒子10aが溶解して強固に付着しない様に、投入エネルギーを低くするなど、形成条件の最適化を行うとよい。
【0036】
粒子10aの大きさ、例えば、長手方向の長さは、数百nmサイズであってもよい。粒子10aの大きさは、粒成長を長くすることでμmサイズとしてもよいし、逆に粒成長を抑制することで100nm未満としてもよい。例えば、アルミナゾルを用いたゾルゲル法の場合では、数~400nmサイズの粒子10aを作製可能である。
【0037】
粒子層10は、被測定流体Lの圧力をダイアフラム2Aとともに受けるので、ダイアフラム2Aの変形を阻害しないよう、ダイアフラム2Aとともに変形可能に形成される。この変形可能な粒子層10の厚さの上限は、ダイアフラム2Aの厚さ、粒子10aの充填率、及びMackenzieの理論などから近似的に換算される。前記の充填率は、粒子10aの密度であり、粒子層10を立方体又は円柱体などの空間範囲に近似したときのその空間範囲で配置可能な粒子10aの最大数を100%とした率とする。特に限定するものではないが、前記の充填率が70%だとすると、粒子層10の厚みは、例えば、ダイアフラム2Aの厚みの約0.87%以下が好ましい。前記の充填率が100%だとすると、粒子層10の厚みは、例えば、ダイアフラム2Aの厚みの約0.34%以下が好ましい。粒子10aの充填率が更に低くなれば、粒子層10をさらに厚くしてもダイアフラム2Aの変形つまり圧力センサ素子1のセンサ精度には影響しない。粒子層10の好ましい厚さは、粒子10aの充填率に依る。
【0038】
〔圧力センサ100の構成〕
次に、圧力センサ素子1が組み込まれた静電容量式の圧力センサ100の構成を、縦断面図である
図4に基づいて説明する。
【0039】
圧力センサ100は、圧力センサ素子1と、ケーシング20と、ケーシング20内に収容された台座プレート30と、この台座プレート30に接合しかつケーシング20に固定された支持ダイアフラム40と、ケーシング20内外を導通接続する電極リード部50とを備える。
【0040】
[ケーシング20]
ケーシング20は、圧力センサ100の外枠(筐体)を形成するとともに、後述する台座プレート30および支持ダイアフラム40を介して圧力センサ素子1を支持し、また、被測定流体Lが流出入する導入部20Vを画成する。ケーシング20は、例えば、アッパーハウジング21、ロアハウジング22及びカバー23を含む。これらは、当該順序で積み重なるようにして構成されている。アッパーハウジング21、ロアハウジング22及びカバー23は、例えば、耐食性の金属であるインコネルからなり、溶接により接合されている。
【0041】
アッパーハウジング21は、径の大きな大径円筒部21aと径の小さな小径円筒部21bとから形成され、かつこれら2つの部分が同軸となるように連結されたロート形状の部位である。大径円筒部21aの下部開口端には、支持ダイアフラム40を介してロアハウジング22の上部開口端が接続する。また、アッパーハウジング21の内周壁は、被測定流体Lが流入する導入部20Vを画成する。
【0042】
ロアハウジング22は、アッパーハウジング21とカバー23との間に介在する円筒体形状を呈した部位であり、その下部開口端は、カバー23と接続する。また、ロアハウジング22は、カバー23、支持ダイアフラム40、台座プレート30及び圧力センサ素子1とともにケーシング20内に独立した真空の基準真空室20Wを画成する。なお、基準真空室20Wには、所望の真空度を維持するために、いわゆるゲッター(図示せず)と呼ばれる気体吸着物質が配置されている。基準真空室20Wは、圧力センサ素子1の容量室C1と台座3に設けられた不図示の貫通孔と介して連通してもよい。これにより、容量室C1が基準真空室20Wと同じ真空度に保たれる。
【0043】
カバー23は、略円盤状のプレートからなり、カバー23の所定位置には電極リード挿通孔23aが形成されている。電極リード挿通孔23aには、シール性確保のためのハーメチックシール60を介して電極リード部50が挿入及び固定されている。
【0044】
[台座プレート30及び支持ダイアフラム40]
台座プレート30は、圧力センサ素子1を支持する部位であって、第1の台座プレート31と第2の台座プレート32とから構成されている。
【0045】
第1の台座プレート31および第2の台座プレート32は、例えば、酸化アルミニウムの単結晶体であるサファイアからなる。第1の台座プレート31および第2の台座プレート32は、いずれもケーシング20の内面から離間した位置にあって、前者は支持ダイアフラム40の上面に接合され、後者は支持ダイアフラム40の下面に接合されている。
【0046】
支持ダイアフラム40は、上面に第1の台座プレート31が接合され下面に第2の台座プレート32が接合された状態で、その外周部(周囲縁部)がアッパーハウジング21の下部開口端およびロアハウジング22の上部開口端に挟まれながら溶接等により接合されている。これにより、支持ダイアフラム40は、台座プレート30をケーシング20の内面から離した状態で支持する。
【0047】
台座プレート30及び支持ダイアフラム40からなるユニットの中央には、ダイアフラム2Aの受圧面2Aaに向く空間C2と被測定流体Lが流入する導入部20Vとを連通させるための導入孔20Xが開口している。
【0048】
[電極リード部50]
電極リード部50は、電極リードピン51と金属製のシールド52とを備え、電極リードピン51は金属製のシールド52にガラスなどの絶縁性材料からなるハーメチックシール53によってその中央部分が埋設されている。そして、電極リードピン51の一端はケーシング20の外部に露出しており、図示しない配線によって圧力センサ100の出力を、外部の信号処理部に伝達するように構成されている。また、電極リードピン51の他方の端部には導電性を有するコンタクトバネ55が接続されている。
【0049】
〔圧力センサ100の動作態様〕
次に、圧力センサ素子1が組み込まれた圧力センサ100の動作態様について説明する。なお、以下の説明では、圧力センサ100は、蒸着又はCVD(Chemical Vapor Deposition)(ALDを含む)などを用いた成膜装置内の所定の場所に取付けられた真空計であるものとする。圧力センサ100は、使用時、被測定流体Lが冷えないように不図示のヒータにより加熱される。
【0050】
上記構成からなる圧力センサ素子1(
図1~
図3)およびこれが組み込まれた圧力センサ100(
図4)においては、所定の圧力を有する被測定流体Lが、圧力センサ100の導入部20Vに流入したのち、空間C2を通じてダイアフラム2Aの受圧面2Aaに到達する。これにより、受圧面2Aaと真空圧が維持された容量室C1に面した測定面2Abとの間に圧力差が生じ、この圧力差によりダイアフラム2Aが変形する。ダイアフラム2Aが変形すると、測定面2Abに配設された可動電極4aは、台座3の固定面3aに配設された固定電極4bに向けて変位し、これら2つの電極間の距離が縮まる。この結果、可動電極4aと固定電極4bとから構成されたセンサ電極部4の静電容量が変化する。このセンサ電極部4の静電容量の変化に対応した電気信号(例えば、電圧信号)は、電極リード部50を通じて圧力センサ100の外部に設けられた信号処理部へと伝達され、この信号処理部において、既存の方法によって被測定流体Lの圧力が算出(計測)される。
【0051】
ここで、被測定流体Lには、被測定流体Lの圧力を受圧するダイアフラム2Aの受圧面2Aa及び粒子層10に堆積する堆積物質S(
図5~
図7参照)が含まれる。堆積物質Sには、例えば、ウェハ等の基板上に所定の成分からなる膜を生成するための成膜物質(主生成物)が含まれる。また、成膜プロセスがALDなどを含むCVDの場合、堆積物質Sには、反応副生成物が含まれることもある。堆積物質Sの大部分は、受圧面2Aa上の粒子層10に堆積するが、一部は、粒子層10を構成する複数の粒子10aの隙間を通り受圧面2Aaにも堆積する。ここで、粒子層10が無い場合、堆積物質Sは受圧面2Aaに堆積し、堆積した堆積物質Sは受圧面2Aaに凝着して膜を形成する。この膜の形成時、内部応力が発生し、この内部応力により膜は収縮又は膨張する。このとき、膜は、膜の凝着先である受圧面2Aaととも収縮又は膨張しようとするが、ダイアフラム2A自体は当該膜ほど伸縮しないので、膜の収縮又は膨張の力は、ダイアフラム2Aを断面弓なりに変形させる。この実施の形態では、粒子層10により、この変形を抑制する。以下、この低減のメカニズムについて以下説明する。なお、以下の説明では、堆積した堆積物質Sを、以下では堆積物SAともいう。
【0052】
成膜装置で行われる成膜の方法が蒸着などの場合、堆積物質Sの直進性が高くなる。この場合、堆積物質Sは、
図5に示すように、粒子層10の粒子10aの影となる部分には堆積しない。従って、堆積物SAは、不連続な小堆積物SBの集合から構成されることになる。なお、
図5では図示していないが、粒子層10を構成する複数の粒子10aの隙間を通ってダイアフラム2Aの受圧面2Aaに到達する堆積物質Sもあるため、小堆積物SBは、ダイアフラム2Aにも形成される。この場合、堆積物SAを構成する各小堆積物SBは小さいので、各小堆積物SBの凝着時に発生する内部応力は、堆積物SAそれぞれで小さく、ダイアフラム2Aへの影響は限定的となる。従って、ダイアフラム2Aの変形が抑制される。
【0053】
堆積物質Sの堆積が多い場合、
図6に示すように堆積物SAは連続的な膜状に形成される。このような場合、小堆積物SBの内部応力ないしこの内部応力による堆積物SAの収縮又は膨張の力が大きくなり、この大きな力が粒子10aに作用する。しかし、粒子10a同士の付着力が上述のように弱いため、前記の収縮又は膨張の力は、粒子10aを前記付着力に抗して移動させる。例えば、
図6の矢印Aに示すように、堆積物SAが収縮する場合、この収縮に伴って粒子10aが矢印Bのように移動する。さらに、前記の収縮又は膨張の力は、粒子11aを個別に変形させ得るが、上述のように付着力が弱いことで、粒子10a同士が離れやすく、粒子10aの変形も起きやすい。これらのようにして、前記の収縮又は膨張の力は、粒子10aの変形及び移動に変換されることで吸収される。さらに、粒子10aのダイアフラム2Aに対する付着力も弱いため、前記の収縮又は膨張の力は、ダイアフラム2Aに付着した粒子10aの移動(
図6の矢印C参照)つまり粒子層10の剥離に変換されることで吸収される。これらにより、内部応力による前記の収縮又は膨張の力は、ダイアフラム2Aに伝達され難く、これにより、ダイアフラム2Aの変形が抑制される。なお、堆積物SAは、収縮又は全体として断面弓なりに反るように変形することもある。この場合、断面弓なりに反る方向に応じて、堆積物SAの中央又は周縁部の粒子10aがダイアフラム2Aから離れるように移動する(
図6の矢印D参照)。これによりダイアフラム2Aの変形が抑制されてもよい。
【0054】
成膜装置で行われる成膜の方法がCVD法などの場合、堆積物質Sの直進性が低く、堆積物質Sの回り込み度が大きい。この場合、堆積物質Sは、
図7に示すように、粒子層10の粒子10aの影となる部分にも堆積する。このような場合であっても、粒子層10を設けない場合の堆積物質Sによる膜よりも内部応力は小さくなり、ダイアフラム2Aの変形はある程度抑制される。また、堆積物質Sの堆積量が多い場合であっても、上記と同様に粒子10aの変形及び又は移動(粒子層10の剥離を含む)により、堆積物SAの収縮又は膨張は吸収され、ダイアフラム2Aの変形が抑制される。
【0055】
粒子10a同士の付着力、及び又は、粒子10aとダイアフラム2Aとの付着力は、粒子層10に作用する力、具体的には、堆積物質Sからなる堆積物SAの内部応力に起因する力(上記収縮又は膨張による力)よりも小さく、その他の力、例えば、被測定流体Lが空間C2に流出入する際に作用する力よりも大きいとよい。これにより、前者の力が作用すると粒子10aは移動又は粒子層10がダイアフラム2Aから剥離するが、後者の力によっては粒子10a同士が離れるないし粒子層10がダイアフラム2Aから剥離することが防止される。このような付着力の上限値は、例えば、100Pa(N/m2)である。また、粒子層10がダイアフラム2Aよりも地面側に位置する姿勢で圧力センサ素子1ないし圧力センサ100が設置された場合に粒子層10が自重によって脱落しない付着力が好ましい。さらに、圧力センサ素子1ないし圧力センサ100の搬送があっても、かつ、真空引きがあっても、粒子10a同士の付着及び粒子10aのダイアフラム2Aへの付着が解除されない付着力が好ましい。
【0056】
〔効果など〕
本実施の形態によれば、ダイアフラム2Aの受圧面2Aaに複数の粒子10aの集合体からなる粒子層10を設けたので、当該粒子10aにより、堆積物質Sが堆積した堆積物SAを不連続の細切れとすることができる。これにより、上記で説明したように、堆積物質Sの凝着時の内部応力に起因するダイアフラム2Aの変形が抑制される。さらに、本実施形態では、被測定流体Lの流れの抵抗を増大させる要因となるバッフルなどの部材ではなく、ダイアフラム2Aに直接形成した粒子層10により、ダイアフラム2Aの変形を抑制しているため、被測定流体Lの圧力変動に対する応答性が確保される。このように、本実施の形態に係る圧力センサ素子1及び圧力センサ100では、被測定流体Lの圧力変動に対する応答性が確保されるとともに、ダイアフラム2Aの受圧面2Aaに堆積する物質によってもたらされるセンサ出力のゼロ点シフトが低減される。
【0057】
さらに、本実施形態では、堆積物質Sの凝着時の内部応力による堆積物SAの圧縮又は膨張の力が、粒子10aの変形、及び又は、粒子10aの移動に変換されることで吸収されるので、ダイアフラム2Aの変形がより抑制され、前記のゼロ点シフトがより低減される。
【0058】
さらに、本実施形態では、堆積物質Sの凝着時の内部応力による堆積物SAの圧縮又は膨張の力が、粒子10aをダイアフラム2Aから離れる方向に移動させる力、換言すると粒子層10をダイアフラム2Aから剥離に変換されることで吸収されるので、ダイアフラム2Aの変形がより抑制され、前記のゼロ点シフトがより低減される。
【0059】
さらに、本実施形態では、粒子層10を設けるだけで、ゼロ点シフトが低減されるので、比較的安価に、ゼロ点シフトの低減が可能となる。また、粒子層10は、事後的に交換できる。このため、例えば、堆積物質Sの堆積量が多くなってきたときに粒子層10を交換することで、圧力センサ素子1を長く使用することができる。
【0060】
粒子層10を構成する複数の粒子10aのそれぞれは、ダイアフラム2A以上の耐熱性及びダイアフラム2A以上の耐食性のうちの少なくとも一方を有する材料から形成されているとよい。このような構成により、圧力センサ素子1及び圧力センサ100の使用可能な条件(圧力センサ100の使用時の加熱温度及び被測定流体Lの種類)が粒子層10により狭まってしまうことが抑制される。なお、粒子層10は、ダイアフラム2Aと同等の熱膨張係数を有するとよい。これにより、圧力センサ100の使用時の加熱により、ダイアフラム2Aと粒子層10との熱膨張率の差によりダイアフラム2Aが変形してしまうことが抑制される。以上のような条件を満たす粒子10aの主成分としては、サファイア、ニッケル基合金、又は、フッ素樹脂が挙げられる。他の例として、各粒子10aとダイアフラム2Aとの両者の主成分を、サファイア、多結晶アルミナ、又は、ニッケル合金とするとよい。これにより、耐熱性、耐食性、及び、熱膨張係数を両者で同等とすることができる。
【0061】
この実施の形態における各粒子10aは、上述のように長球形状であるため、劈開面を持たない。粒子10aに劈開面があると、この劈開面により粒子10a同士又は粒子10aとダイアフラム2Aとが、粒子層10の形成過程における熱処理などで互いに強固に固定されてしまうおそれがある。粒子10aが劈開面を持たないことにより、この不都合が抑制される。粒子10aは、例えば磨砕されることで、劈開面を有さない形状となる。各粒子10aの形状は任意であり(詳細は後述)、粒子10aは、劈開面を有さない形状として、真球形状(後述の変形例参照)などの長球形状以外の他の球形状、及び、平坦な面を有さない形状などであってもよい。
【0062】
〔変形例など〕
上記実施の形態の構成は適宜変更可能である。例えば、上記で説明した各部材などの構成要素の形状などは適宜変更可能である。例えば、粒子10a同士の付着力及び又は粒子10aとダイアフラム2Aとの付着力は、比較的強い力であってもよい。粒子10a同士の付着力及び又は粒子10aとダイアフラム2Aとの付着は、上記実施の形態では接着剤などの介在物を介在させない態様であるが、当該付着は、弱い力と強い力とのいずれかにかかわらず、接着剤又は融着などにより実現されてもよい。
【0063】
複数の粒子10aは、例えば、球形状の複数の粒子を含むものであればよい。上記実施の形態では、複数の粒子10aのそれぞれが前記球形状の一例である長球形状であるが、複数の粒子10aのそれぞれが真球形状であってもよい。複数の粒子10aの一部が球形状で、残りが他の形状(例えば、後述の針形状又は板形状)であってもよい。また、複数の粒子10aは、上記実施の形態では規則的に整列しているが、不規則に配置されてもよい。
図8に、複数の粒子10aのそれぞれを真球形状として不規則に配置した例を示す。このように不規則に配置されても、上記と同様の効果が得られる。また、不規則な整列を採用すれば、粒子10aを規則的に整列させる手間が省けるので、製造コストが抑えられる。
【0064】
粒子層10を、
図9及び
図10に示すような、複数の粒子11aの集合体からなる粒子層11に変更してもよい。複数の粒子11aは、折り重なった針形状(ウィンスカー形状を含む)の複数の粒子11aを含むものであればよい。粒子層12を構成する全粒子11aの一部は、針形状以外の形状であってもよい。
図9及び
図10では、粒子層11を構成する粒子11a全てが針形状となっている。針形状の粒子11aの配列は、不規則となっている。折り重なった針形状の複数の粒子11aにより、堆積物質Sの堆積物を上記実施の形態のように分断できるので、ダイアフラム2Aの変形が抑制される。さらに、折り重なった針形状の複数の粒子11aによれば、球形状の粒子10aよりも粒子11aの周囲の空間が大きくなりやすく、従って、上記堆積物の収縮などにより粒子11aが移動する及び又は粒子11aが個別に変形する際、その移動距離及び又は変形量を大きくできる。さらに、粒子11a同士の接触面積が減り、粒子10a同士の強固な固着も抑制されることもある。これらにより、上記収縮などの力がよりダイアフラム2Aに伝わり難く、従って、ダイアフラム2Aが変形し難い。
【0065】
粒子層10を、
図11に示すような、複数の粒子12aの集合体からなる粒子層12に変更してもよい。複数の粒子12aは、折り重なった板形状の複数の粒子12aを含むものであればよい。粒子層12を構成する全粒子12aの一部は、板形状以外の形状であってもよい。
図11では、粒子層12を構成する粒子12a全てが板形状となっている。板形状の粒子11aの配列は、不規則となっている。折り重なった板形状の複数の粒子11aにより、堆積物質Sの堆積物を上記実施の形態のように分断できるので、ダイアフラム2Aの変形が抑制される。さらに、板形状の複数の粒子12aが折り重なるつまり不規則に重なることにより、球形状の粒子10aよりも粒子12aの周囲の空間が大きくなりやすく、従って、上記堆積物の収縮などにより粒子12aが移動する及び又は粒子11aが個別に変形する際、その変形量及び又は移動距離を大きくできる。さらに、粒子11a同士の接触面積が減り、粒子10a同士の強固な固着も抑制されることもある。これらにより、上記収縮などの力がよりダイアフラム2Aに伝わり難く、従って、ダイアフラム2Aが変形し難い。
【0066】
粒子層11などを構成する複数の粒子は円柱形状であってもよく、また、複数の粒子それぞれは、各粒子間で同じ形状を有さない不定形であってもよい。粒子同士又は粒子とダイアフラム2Aとは点接触ではなく、線接触あるいは面接触してもよい。
【0067】
粒子10aのサイズ(例えば、長手方向の長さ。真球の場合は、直径など)及び粒子層11の厚みは任意であり、例えば、被測定流体Lの圧力を測定するためのダイアフラム2Aの変形を阻害せず、かつ、堆積物質Sの堆積によるダイアフラム2Aの変形を抑制するサイズ及び厚みが採用される。粒子10aのサイズとしては、例えば、1nm~500μm、より詳細には50nm~300μmの範囲内の任意のサイズが採用される。なお、粒子層10は、例えば、600個以上、1万個以上、1000万個以上の数(数千万もあり得る)の粒子10aの集合体からなる。粒子10aの充填率も任意である。
【0068】
粒子層10~12は、ダイアフラム2Aの受圧面2Aaの全領域に形成されてもよいし、一部領域のみに形成されてもよい。一部領域にのみ粒子層10~12を形成する場合に、粒子層10~12は、ダイアフラム2Aにおける堆積物質Sの堆積物の影響により変形しやすい箇所に形成されるとよい。
【0069】
圧力センサ素子1および圧力センサ100は、いずれもセンシング方式が静電容量式であるが、本発明は、当該センシング方式のそれに限定されるわけではない。例えば、抵抗ゲージを貼り付け又はスパッタ等により成膜した歪ゲージ式や半導体ピエゾ抵抗式等、ダイアフラムの変形を電気信号として検出するセンシング方式を備えた全ての圧力センサ素子及びこれを用いた圧力センサに対して適用され得る。圧力センサ素子及びこれを用いた圧力センサの使用先の成膜装置以外の各種装置となり得る。
【0070】
〔発明の範囲〕
以上、実施の形態及び変形例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施の形態及び変形例に限定されるものではない。例えば、本発明には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る、上記の実施の形態及び変形例に対する様々な変更が含まれる。上記実施の形態及び変形例に挙げた各構成は、矛盾の無い範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0071】
1…圧力センサ素子、2A…ダイアフラム、2Aa…受圧面、2Ab…測定面、2B…支持部、3…台座、3a…固定面、4…センサ電極部、4a…可動電極、4b…固定電極、5…コンタクトパッド、5a…コンタクトパッド、5b…コンタクトパッド、10~12…粒子層、10a~12a…粒子、20…ケーシング、30…台座プレート、40…支持ダイアフラム、50…電極リード部、51…電極リードピン、52…シールド、53…ハーメチックシール、55…コンタクトバネ、60…ハーメチックシール、100…圧力センサ、C1…容量室、C2…空間。